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2007年7月31日 (火)

7月31日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 喜ばしいことに傲慢自公お灸記念日にすることができました。6月はじめから続けてきたこの地方紙・主要紙の社説とコラムの資料としての採録活動もやり抜くことができました。

 当初始めた時には投票日までのつもりでしたが、結果が分かった後の政局とそれに対するマスコミ論調も興味深いので、投開票日3日後の8月1日まで記録することにします。

 どのようなマスコミをわれわれは目撃したのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】

(2007年7月31日朝刊)

[参院第一党]民主党が試される番だ

安倍首相の指導力に疑問

 参院選は民主党が六十議席を獲得し、結党以来初めて参院第一党になった。

 自民党は勝敗の鍵を握った二十九の一人区で、わずか六議席を得たにすぎない。改選議席六十四を三十七に減らしたのは歴史的惨敗と言っていい。

 しかも、岡山で参院幹事長を務める片山虎之助氏が落選。青木幹雄参院議員会長のお膝元・島根でも国民新党が推す新人が当選し議席を失っている。

 四国ではすべての議席を民主党と同党などが支援する候補者に取って代わられた。

 格差にあえぐ地方の反乱であり、本来は自民党が強い地域で多くの議席を失ったことで、安倍内閣はレームダック(死に体)状態に陥る可能性もある。

 自民党が議席を減らした原因には、民主党が訴えた「都市と地方の格差」を同党が軽視したことも要因としてある。

 さらに言えば、安倍晋三首相が強調する「美しい国づくり」や「戦後レジーム(体制)からの脱却」、「税財政の構造改革」より先に「緊急の課題として取り組むべきことがあるのではないか」との国民の思いである。

 地方が抱える経済的苦境はそれほど深刻であり、自民党はこの問題に答え切れなかったと言わざるを得ない。

 安倍首相は三十日の記者会見で「負けた責任は私にある」と述べた。だが一方で、「私が進める改革路線は国民の理解を得ている。辞任せず改革を進めていきたい」とも話している。

 本当にそうだろうか。記者団が問うた責任論は、国民誰もが聞きたい重要な問題と言っていい。しかし、首相はこの質問にきちんと答えなかった。

 首相には国民に対し「なぜ辞任しないか」という理由を説明する責任があるはずなのに、国民が納得するような理由は示さなかった。これでは自民党支持者だけでなく、党内でも理解は得られまい。

 総理の座に残るのであれば、首相は早急に衆院を解散し国民の信を問うのが筋だろう。今選挙で有権者が出した答えは「安倍政治不信任」であり、与党に投票した有権者にも批判があることを忘れてはなるまい。

論争で政権担当能力示せ

 民主党は三十二の改選議席を大幅に伸ばした。

 小沢一郎代表はこの勢いをかって早期の衆院解散、総選挙を求めると思われる。だが、参院運営では野党第一党として議長、各委員会の委員長ポストを得ることになる。

 どのような運営を行うのか国民は注視しているのであり、その意味で民主党は、野党各党・会派との連携も視野に入れていいのではないか。

 言うまでもないが、衆院で三分の二を確保している与党が通した法案に、やはり“数の力”で反対を繰り返せば、せっかく得た国民の支持もすぐに得られなくなる。

 少なくとも民主党が参院を舞台に政争を繰り広げれば、与党と何ら変わらないということになり、「良識の府」としての参院の役割さえもが問われてくることを認識したい。

 国会は論議の場である。年金問題は言うに及ばず「政治とカネ」の問題、道州制を軸にした地方改革、公務員改革についても徹底的に、時間をかけて論議していくことだ。

 国民が求めるのは何よりも政策論争であり、民主党は論争を通して政権担当能力を示す責務があることを肝に銘じる必要があろう。

沖縄問題の解決に全力を

 沖縄選挙区で当選した糸数慶子氏は三十七万六千四百六十票を獲得。西銘順志郎氏=自民公認・公明推薦=との票差は約十二万票もあった。

 社民党比例区の山内徳信氏は十四万五千六百六十六票を得て、六年の任期を終えて引退した大田昌秀氏の後を継いだ。

 糸数氏と山内氏は県立読谷高校での生徒と教師の関係で、まさに師弟が手を携えて国会に乗り込むことになる。

 永田町では「沖縄問題」は風化したという声も耳にする。だが、日米同盟が強化され、在日米軍基地が再編されようとしている今こそ、もう一度政府、与党に「沖縄問題」の解決を強く訴えるべきであり、そのためにも両氏の手腕が問われることになる。

 沖縄問題に醒めた安倍政権に県民の声をどう訴えていくか。「平和の二議席」が果たす役割はこれまで以上に重要だ。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月31日 朝刊 1面)

 よい記事とは読者にとって分かりやすい記事だ、と教わった。そのため、できるだけ統一した用字用語の基準に基づいて書くのだということも。しかし言葉を取り巻く状況は、時代とともに変化している。

 障害者の「障害」の表記を「障がい」に変更する動きがある。「害」の字が持つ否定的意味合いを嫌ってのことだ。沖縄市が「障がい福祉課」としたのは二〇〇四年。ひらがな表記は当事者団体、施設へと広がる。

 県歯科医師会からも、新聞報道で一般的に使われている「虫歯」を「むし歯」に代えてほしいとの提案があった。子どもに「虫が歯を食べる」という間違った知識を与えないためである。

 国が「痴呆」に代わる呼称として「認知症」を採用したのは三年前。ちょうど患者自らが思いを語り始めた時期で、尊厳を大切にし、地域で支える取り組みを促した。

  新聞用語の取り決めが載った『記者ハンドブック』には、差別語、不快用語が列挙されている。その言い換えも。だが、単に言葉を代えただけで差別や誤解はな くならない。むしろ問題はその奥にある思想。認知症の名称が一気に浸透したのは、当事者を主人公にした活動が繰り広げられたからという。

 日々の新聞作りの中で、例外的表記を求める執筆者、取材相手が増えている。原則は「使われた側の立場に立って考えること」。当事者の声に耳を傾けることで見えてくるものもある。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

安倍首相続投 民意を軽く見ては困る

 参院選は躍進した民主党を軸に野党が過半数を制した。消えた年金、政治とカネ、相次ぐ閣僚の失言などの問題で後手後手に回り、対応に追われた安倍晋三首相(自民党総裁)の政治手腕に、有権者が痛烈な批判を浴びせた形だ。
 「政と官」に対する国民の不信は根深い。これをぬぐい去るには政権の側によほどの覚悟と、強力な布陣、国民を納得させるだけの具体策が必要だろう。
 歴史的惨敗を喫した安倍政権にそのエネルギーが残っているか疑わしいが、首相は選挙の最終結果を待たずに続投を表明した。続投は一夜明けた自民党の役員会で正式に了承され、公明党との連立も維持されることになった。
 実にあっさりの感がある。有権者が自公政権に突き付けた事実上の不信任は、そんなに軽いものだったのかと思う。与野党逆転が政局にさほど影響を及ぼさないとすれば参院の存在意義や、民主主義の根幹を成す選挙制度そのものが問われかねない。
 かつて参院選で大敗した宇野、橋本内閣は退陣し、自民党は新首相を据えて局面を打開してきた。今回は有力な後継者がいない党内事情もあるが、安倍氏の続投表明会見などを見る限り、猛省している様子は伝わってこない。
 「改革続行が使命」「美しい国づくりにまい進する」などという相変わらずのフレーズでは国民は納得しない。首相の座に居座るなら、少なくとも民意に沿った政策の転換が必要だ。有権者を軽く見てもらっては困る。
 確かに、首相指名権は衆院にある。与党が衆院で3分の2を占めている以上、続投もやむなしとの受け止めはあるだろう。しかし、衆院の多数をバックに国民不在、民意軽視の手法を続ければいずれ政権は立ち行かなくなる。
  懸念材料はまだある。憲法改正の問題だ。自民党は今選挙で公約の筆頭に「2010年の改憲案発議」を掲げ、国民の信を問うた。選挙で信任は得られなかった が、改憲に前向きな民主党を巻き込みたい考えだ。国民投票法の3年後施行を見据え、改憲発議の環境整備を加速させる可能性は否定できない。参院は任期6年 だから、今回の当選者は任期中に発議を議論することになる。参院で第1党となった民主党の責任は重い。
 ただ、選挙戦を見ても分かるように、ほかに優先度の高いテーマはいくつもある。まずは消えた年金の救済策だ。将来的に持続可能な安心できる制度設計も欠かせない。政治とカネの問題は小手先でなく、抜本的改革が求められる。格差社会の解消も急ぎたい。
 首相が執行部と内閣の刷新で局面を乗り切れるか。リーダーシップがあらためて問われている。

(7/31 9:39)

小田実氏死去 体現した平和力を学びたい

 旅行記「何でも見てやろう」や、ベトナム反戦などの平和運動で知られる作家の小田実さんが亡くなった。最近は作家の大江健三郎さんらと「9条の会」の呼び掛け人となり、護憲を訴えていたが、改憲を旗印とする安倍政権の参院選惨敗を見届けるかのような最期になった。
 小田さんは好奇心が旺盛な人だった。深い洞察力と、バイタリティーあふれる行動力で権力に立ち向かっていただけに「気骨の人」を失った気がしてならない。
 高校時代に小説を書き始め、米国留学の後、欧州や中近東、アジアなどを放浪し「何でも見てやろう」を発表した。帰国後に「ベトナムに平和を! 市民連合」(ベ平連)を結成。ニューヨーク・タイムズ紙への反戦の全面広告や、脱走米兵の援助などユニークな活動を繰り広げた。
 著作も多く、米国と広島双方の市民の側から描いた長編小説「HIROSHIMA」でアジア・アフリカ作家会議のロータス賞を受賞。在日韓国人の義父を描いた小説「『アボジ』を踏む」は川端康成文学賞を受けた。
 単なる好奇心で終わらず、精力的に動き回る行動派作家の草分け的存在ともいえる。ベ平連の活動実態を批判されたりもしたが、戦後民主主義をリードした一人であることは疑いなく、体現した「平和力」「市民力」など学ぶべき点は多い。
 常に「市民」の側に身を置き続けた小田さんの原点には、戦火を逃げ惑った大阪大空襲の体験があった。旧日本軍による中国爆撃のニュース映画を何げなく見ていた幼い自分が、やがて空襲を受ける側になる。そこで「加害者はいずれ被害者になる」という思いが芽生えた。
  思いは確信へと変わり、小田さんを平和運動へと駆り立てる。2004年、那覇市で開かれた「9条の会」発足記念講演会で小田さんは「世界の紛争を解決する のは日本国憲法にしかできない。憲法は民主主義だけでなく、平和と結合している。前文は世界に通じる普遍的な原理だ」と説いた。言葉の重みをかみしめた い。

(7/31 9:38)

【琉球新報・金口木舌】

 廃棄物同然のくず肉で作ったミートボール。原料100キロの豚肉から作られた130キロのハム
▼ミートホープの食肉偽装ではなく、食品添加物のすご腕営業マンだった安部司さんが2005年に発刊した「食品の裏側」(東洋経済新報社)に出てくる話だ。添加物が多用される食品製造の舞台裏が次々と明かされる
▼添加物は面倒な工程や技術が不要で、簡単に一定の品質の物ができる「魔法の粉」だが、うどん屋などでは長年の職人技が捨て去られ、漬物や豆腐、アジの干物の各従業員は「自分の工場で作った物は食べない」と口をそろえる
▼恐るべき実態だ。それだけ生産者と消費者の関係が希薄化している証左だろう。食の安全を揺るがす事件が相次ぐ昨今、消費者は疑心暗鬼にならざるを得ない状況だ
▼ 生産物に注がれる目が厳しさを増す中、沖縄農業の担い手を育成する県立農業大学校は、学生が育てた農畜産物を毎週水曜日に校内食堂で活用する「自産自消の 日」を設定した。開始式で学生代表の垣花勝彦さんは「今、求められているのは安心、安全、おいしさ。そんな農畜産物を作りたい」と宣言
▼自ら作ったものを自ら食べる。食の再生は、原点に返ることから始まるかもしれない。

(7/31 9:36)


【東京新聞・社説】

惨敗の自民 この静けさは一体何だ

2007年7月31日

 参院選の歴史的惨敗で自民党が虚脱状態に陥った。総裁の安倍晋三首相の責任を声高に唱える人もなく、時期も明示されない内閣改造と役員人事へ静まりかえる。これで出直しなどできるのか。

 「挙党態勢」「一致協力」の言葉が弱々しく党幹部たちの口をつく。身内ばかりを集めて、と安倍首相の人事を批判してきた人たちまでが人ごとのように、惨憺(さんたん)たる参院選の結果を語っている。

 政権の支柱でもある参院自民の幹事長が議席を失い、長らく「自民王国」を誇った多くの選挙区で公認候補が次々と討ち死にした。参院のドン・青木幹雄議員会長は早々に引責辞任を表明した。中川秀直党幹事長も辞表を出している。

 政権政党を自負するならば、直ちに態勢を整え直すか、少なくともそのスケジュールを示さないといけない。「続投を宣言するならなぜ直ちに内閣改造に着手しないのか」と、首相の緩慢さを責める声は聞こえても、まるで犬の遠ぼえのようだ。

 敗軍の将の首相は三十日、記者会見して引き続き政権を担当する決意を述べた。さすがに表情は暗く、選挙中にも青木氏が述べていた「参院で与党が半数を割れば内閣は死に体になる」との警句を実感させた。

 「厳しい」「反省」を何度も繰り返した首相は、続投の理由を「ここで逃げてはならない」「政治空白は許されない」と説明した。国民に約束した「改革」の遂行へ責任を果たすためなのだという。

 安倍政治そのものが退けられたのではないか、との問いには、自身の基本路線は選挙戦を通じても国民の理解を得られた、と言い張った。

 そして与党圧倒多数の衆院の解散・総選挙を求める声が出ていることには「しかるべきときに政権の信を問う」とかわし、出直し態勢づくりについても「しかるべきときに内閣改造、役員人事を行い人心を一新する」と語るにとどまった。

 かつての自民党なら、ここで首相批判が噴出したはずである。政治空白をつくっているのは首相ではないか、これでは国民が決定的に離れてしまう、と。

 静まりかえる党内は、ここで騒げば改造人事を前に得策でないと、皆が縮こまっているようにも見える。

 惨敗の中でも首相の出身派閥は他派をしのぎ、衆参とも一番の数になった。「寄らば大樹」がまん延しているかのようだ。

 これでは党は劣化する一方だ。いずれ避けられない総選挙へ衆院の若手たちは、この事態を見過ごしておれるのだろうか。抗争するエネルギーのあったころが懐かしくもなる。

女性の躍進 議場の景色は変わるか

2007年7月31日

 参院選で女性の躍進が目立った。今春の統一地方選に続き、当選者数が過去最多となった。それでも世界的に見ると、日本はまだまだ少ない。この流れを止めず「先進国」入りを目指したい。

 傍聴席から見下ろすと、紺やグレーの背広を着た男性議員ばかりの議場はドブネズミ色に見えるという。ある女性国会議員の嘆きだ。国会が男性中心の社会だということを象徴する景色なのだろう。この選挙で変わるか。

 女性の当選者は選挙区と比例代表を合わせて二十六人となり、三年前の前回参院選より十一人増えた。「マドンナ旋風」で社会党が大勝した一九八九年参院選の二十二人を上回り、過去最多となった。

 当選者数だけでなく、東京選挙区では民主の女性新人候補が百万票を超える得票でトップ当選を果たし、自民の女性新人も同じ党の男性ベテラン候補を弾(はじ)き飛ばした。「姫の虎退治」といわれた岡山や「竹下・青木王国」の島根では、若い女性候補が自民の壁を打ち破った。

 今年四月の統一地方選でも、前半選の道府県議選で、女性当選者は百九十人と過去最多を更新した。後半戦の市議選では女性が千百二十二人と三回連続で千人を突破し、全議席の14%を占めて過去最高となった。

 民意を広く政治に反映するためにも女性の政界進出は欠かせない。こうした傾向が本物なら歓迎したい。

 しかし、世界各国の議員交流を進める列国議会同盟(IPU)によると、下院(日本は衆院)または一院制議会に占める女性議員の比率では日本は9・4%で、九十九位。参院は非改選組も含め女性議員は四十二人に増え、全議席の17%となるが、それでも「平均点」にすぎない。

 政党にはさらなる女性候補の発掘や挑戦しやすい環境づくりなどに取り組んでもらいたい。

 ある女性の衆院議員は参院選での躍進について「有権者は若い女性候補に『しがらみのなさ』を見いだし、男性のベテラン候補に『古い政治』を感じたのではないか」という。ならば、政治を変えるという重い責任を負ったことになる。

 女性候補の多くは年金や教育、子育てなど「生活」重視を訴えた。私たちの暮らしをどうにかしてほしい。そんな有権者の切実な声を吸収したものであるなら、なおさらだ。

 かつて女性の参院議員が党派を超えて「配偶者からの暴力の防止等に関する法律」(ドメスティックバイオレンス新法)をつくり成立させたことがある。議員活動で存在感を示して初めて議場の景色は変わる。

【東京新聞・筆洗】2007年7月31日

 日本の政治史で、石橋湛山元首相の引き際の潔さは特 筆すべきことである。「五つの誓い」を掲げて間もなく、病に倒れた。自民党内では続投を願う声が多かったが、予算審議に出席できないと分かるや、「政治的 良心に従う」と退陣を決断した。在任約二カ月だった▼後を継いだ岸信介元首相はこの潔さを「政治家としては執着性が足りない」と評したという。自民党政権 であっても、首相によって進む道は異なってくる。首相の座という権力に執着することも一つの生き方だろう▼岸氏が生きていれば、孫の安倍晋三首相の決断を 評価したのだろうか。参院選で自民党は結党以来初めて第二党に転落する歴史的な惨敗を喫したが、首相は続投の道を選び、役員会で了承された。「安倍ノーで 一票を投じたのに…」と、釈然としない人も多かろう▼首相の昨日の記者会見を聞いても、なぜ続投なのか、心にすとんと落ちる言葉があったとは思えない。 「首相に就任したとき、国民と約束したことを実現するのが私の責任」と訴えていた。でも自民党総裁選での約束で、国民と直接結んではいない▼投票日の前か ら、どんな結果になっても首相は辞めないとの情報があった。憲法改正という首相が執着する課題に取り組むためだと説明されていたが、会見で首相が踏み込む ことはなかった▼首相の自著には「わたしがこうありたいと願う国をつくるためにこの道(政治家)を選んだのだ」とある。志は確かに大事だが、政治家の志と 人々の願いのズレが拡大すれば、政治的良心の出番もある。


【河北新報・社説】

参院選後の緊迫政局/自民党も民主党も正念場だ

 自民党が参院選で大敗を喫し、世論の次の関心は、政変含みの緊迫した政局がこの先どう動いていくかの一点に絞られる。

 自民、公明の与党党首会談はきのう午後、連立の維持と安倍晋三首相の続投を確認した。

 安倍首相続投の判断は、加藤紘一元自民党幹事長が「本人だけでなく、自民党もずたずたに傷つく」と批判したように、困難極まる“いばらの道”を自ら選択するのと同じだ。

 安倍政権は、失速すれば墜落を避けられない超低空の不安定飛行を続けながら、8月下旬にも内閣の大幅改造と自民党役員人事に着手するとみられる。

 内閣改造では、「政治とカネ」にまつわる一連の問題発覚で政権の足を引っ張った閣僚らの交代が焦点になるだろう。

 しかし、今回の選挙ではこうした問題に機敏に対応できなかった安倍政権の危機管理意識の低さが問われたわけで、選挙後の内閣改造で仕切り直しをしても「後の祭り」でしかない。

 党人事では、引責辞任を表明した中川秀直幹事長の後任もさることながら、同じく辞任する青木幹雄党参院議員会長と岡山選挙区で落選した片山虎之助党参院幹事長が抜けた穴をどう埋めるかが頭の痛いところだ。

 「ミキオハウス」と呼ばれた参院自民党は小泉前首相さえ容易に手を出せなかった“不可侵領域”で、強い指導力を見せた青木・片山コンビに代わる人材は見当たらない。与野党逆転の下での綱渡りの議会運営を誰が仕切ることになるのか。

 内閣改造と党役員人事の一新はこのように、安倍首相の思惑とは裏腹に、政権に浮揚力をつける手だてになるとは考えられない。まして、国民に安倍政権の「リセット感」を印象づける効果はほとんどないだろう。

 手を尽くしても安倍内閣の求心力が低下し続ければ、内閣支持率は完全な危険水域に入り、党内の安倍下ろしの動きが本格化するのは避けられまい。

 そこで、大勝して参院第一党になった民主党はどうか。
 自民、民主の2大政党化の流れが本格化してから実質的に初めての参院の与野党逆転は、同党が勝ち取った最大の成果だ。

 場合によっては、参院史上例のない首相問責決議案を可決させることさえできる。参院に限らず政局全体を動かせる多くのカードを手に、早ければ秋の臨時国会で衆院の解散に追い込むのが基本的な戦略となる。

 しかし、衆院からの送付法案を参院で否決できるからといって、「何でも反対とはいかない」(鳩山由紀夫民主党幹事長)のは当然のことだ。常に国民生活を最優先にしながら法案処理に当たらなければなるまい。

 外交・安全保障や憲法などあいまいさが目立つ政策テーマでは党内合意を急ぐ必要がある。

 こうして自民党との対立軸を鮮明にしつつ柔軟な国会運営に努めるというめりはりの利いた対応を重ねることが世論の信頼を獲得する近道だし、他の野党との協調の幅も広げられよう。

 同党が「政権を担える党」として認められるまでには、まだ幾つかのステップが必要だ。
2007年07月31日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 さもありなんと思わせる米国の心理学者の説がある。ある種のコミュニケーションでは、言語や聴覚による情報よりも視覚情報の比重がずっと大きい。 つまり、見た目が大事▼「外見で人を判断してはいけません」と言うのは、人は他人を外見で判断していることの裏返しだ。先の説は学者の名を取ってメラビア ンの法則などと呼ばれる。言われてみれば誰しも思い当たろう

 ▼ 今回の参院選はクールビズ対ネクタイの勝負だったという見方がある。失礼だが、与党の面々の外見は頼りない疲れたおじさん。炎天下にネクタイ姿の野党党首 のほうが、鬼瓦のようなお顔ながら懸命さは伝わった▼クールビズの極め付きは農水大臣。選挙期間中に、特大の絆創膏(ばんそうこう)を顔に張り、無精ひげ を伸ばしたルーズないでたち。だらしない登場に苦笑した向きも多かったのでは。幼稚さばかりが印象づけられた

 ▼ところで国会議員1人を 養うのに年間にざっと1億円かかる。歳費、文書通信交通滞在費、立法調査費、政党助成金、その他。このコストに見合ったお仕事をしているかどうか▼野球の スター選手並みの年俸だが、活躍しなければ即契約解除の野球と違って参院議員は6年間安泰だ。与野党逆転にふさわしい緊迫した政治を。くれぐれも民話よろ しく6年寝太郎とならぬよう。

2007年07月31日火曜日


【京都新聞・社説】

衆参ねじれ国会  民意生かす政治の再構築を

 参院選で自民党は歴史的な大敗を喫したが、安倍晋三首相の続投を決めた。内閣改造などで人心一新を図り、政権の求心力を維持する構えだ。
 参院は野党が過半数を得た。民主党が参院の第一党となり、史上初めて議長ポストを取って主導権を握ることになる。与党が三分の二という圧倒的な過半数を握る衆院とねじれ現象となった。
 衆院を通過した法案が参院で否決されるという郵政国会のような事態が常習化することも予想されよう。政府・与党の国会運営は極めて難しくなる。安倍政権が法案審議で立ち往生する場面も起きてくるだろう。続投してもいばらの道が待っているのは間違いない。
 二年前の衆院選から一転、参院で野党に過半数を与えた民意は何なのか。
 安倍政権は衆院の絶対多数を背景に憲法改正など戦後体制脱却を掲げて数の論理で強引な国会運営をしてきた。年金問題の怒りが象徴するように、政策課題の設定が政治に求めている国民の感覚とずれていたといわざるを得ない。
 今回の選挙結果は郵政選挙で与党に議席を与えすぎた反省から、いわば参院に法案の拒否権を与えて衆院の暴走をチェックする国民のバランス感覚が働いたとの見方もできまいか。
 与野党双方に民意を生かす政治の実現と国会運営を求め、政権党としての力量を競う機会を与えたといえよう。

 政権運営いばらの道
 安倍首相は記者会見で、続投する理由について「極めて厳しい結果だが、反省すべきは反省して改革を進め、国づくりや経済成長を進める目標に向かって責任を果たしていく」と述べた。
 かつて宇野宗佑、橋本龍太郎の両首相が参院選敗北の責任を取って退陣している。今回は匹敵する大敗にもかかわらずすんなり続投を容認したことに自民党の政党力の衰えを感じる。「ポスト安倍」の人材不足で総裁選の混乱を回避したいというのが本音という。
 敗因は年金など政策課題もさることながら事務所費など閣僚の「政治とカネ」問題へのまずい対処や相次ぐ失言など身内の不祥事である。安倍首相の任命責任は免れないが、内閣改造と党役員人事で党内批判を封じる考えを示した。
 来月中にも行う方針だが、選挙を通じて首相の指導力に疑問符を付けた国民の信頼を取り戻すのは容易ではあるまい。挙党態勢を図れば安倍カラーを鮮明に打ち出すことが難しくなるジレンマにも陥ろう。選挙後最初の試金石だ。
 安倍批判をまともに受けた形で公明党も議席を減らした。連立を維持するが、もともとタカ派的な安倍首相と政策や体質が異なる。今後、政策をめぐって与党内のあつれきも生じよう。過半数割れを機に与野党を超えた政界再編の動きが生じる可能性も否定できない。

 政権交代にも現実味
 民主党の小沢一郎代表は今回参院選で与党を過半数割れに追い込むことに政治生命をかけていた。次のステップとして国会審議の行き詰まりで衆院の解散総選挙に持ち込み、政権交代を実現する戦略だ。第一段階は見事に成功した。
 自民党の金城湯池だった東北や四国など地方の一人区をねらい打ちにして支持基盤を切り崩す選挙戦術でまんまとお株を奪った。都市部でも複数当選を果たすなど二大政党の基盤を固め、政権交代が現実味を帯びてきたといえる。
 その小沢代表が勝利の会見にも姿を現さない。選挙疲れで数日静養するというが、民主党が政権交代を目指すうえで、小沢代表の健康不安が懸念材料に浮上することもありえよう。またぞろ党内で不協和音が頭をもたげかねない。
 さらに今回大勝したとはいえ、必ずしも民主党の実力とはいえない。出口調査などで安倍批判票の受け皿となった実態が明らかになっている。政権政党としての信頼感はまだ不十分だ。
 むしろ参院の主導権を握ったことで国政に対する責任が問われ、政党として力量が試される状況が生まれたといえる。憲法や安全保障など基本政策で党内が結束できるか。対立軸となる政策提言がどこまでやれるか。秋の臨時国会から政権交代への最終試験が始まる。

 参院の機能を見直せ
 野党が過半数を得たことで、今後の国会運営は参院が主戦場になる。これから三年間は現在の勢力分野が続く。
 憲法は衆院の優位性を認め、参院が法案を否決しても衆院で三分の二以上の多数で再議決すれば成立する。現在の与党議席数があれば可能だが、政治的にみれば再議決はなかなか難しい。
 野党は政府の予算案や法案をことごとく参院で否決したり、首相や閣僚の問責決議を可決して政権を追い詰めることは可能だ。参院が法案の生殺与奪の権を握る事態になることは二院制の本旨から逸脱し、国民の批判も強まろう。
 参院は今年で創設六十周年を迎えた。「良識の府」といわれた参院は党派性から超越した大所高所から衆院に対する抑制と補完の機能を期待されている。参院選が政権選択の場であったり、「政局の府」であるのは本末転倒だ。
 衆院のカーボンコピーと侮られたり、参院無用論が登場するのは本来の役割を果たしていないからである。審議方法や内容、政権との距離、選挙制度の見直しなど抜本的な参院改革をすべきだ。
 憲政の常道に反するような衆参ねじれ国会になった今こそ国会のあり方を根本的に見直す好機としたい。

[京都新聞 2007年07月31日掲載]

【京都新聞・凡語】

政治の潮目

 海釣りで「潮目が変わる」醍醐味(だいごみ)を実感したことがある。枝ハリスに魚 がぶつかるようにかかる。あっという間にクーラーボックスが満杯になった ▼もっとも海面を見ている限りでは、変化に気付かなかった。海の中で、異なる二つの潮流がぶつかって、魚たちが沸き立つような状態になっていたようだ▼今 回の参院選も似たような印象をもつ。自民惨敗の原因は、年金や政治とカネの問題だけでなく、“政治の潮目”が変わったことに気付かなかったせいもあるので はなかろうか▼では、政治の潮目が変わったのはいつだろう。独断を恐れずに述べれば、一年前の滋賀県知事選ではなかったか。新幹線の新駅建設を「もったい ない」の一言で覆した県民の選択は、有権者の政治意識が土台から変わり始めた兆しを感じさせた▼旧来型のお任せ民主主義ではなく、税金の使い方や政策の優 先順位を見極めて投票する-こうした態度が全国に広がっている気がする。その結果が参院選に表れたのではないか▼世論調査では、国民が政治に望むものは一 貫して社会保障の充実が一番だ。いかに実現するか。国民の目は与野党の双方に等しく向き出した。大切な税金を、公正かつ有効に使うには。格差を減らす方策 は。負担と給付のあり方は。外交と海外支援は…理念と具体策の是非をめぐって与野党が真剣勝負するのは大歓迎だ。

[京都新聞 2007年07月31日掲載]


【朝日・社説】2007年07月31日(火曜日)付

首相の続投―国民はあぜんとしている

 参院選挙から一夜が明けて、安倍首相が続投を正式に表明した。自民党の役員会、次いで公明党の太田代表との党首会談で、政権の座にとどまることに了承をとりつけた。

 あれだけ明確な有権者の「ノー」の意思表示を、どう受け止めたのか。記者会見でただされた首相は、こう述べた。

 「国民の厳しい審判を厳格に、真摯(しん・し)に受け止め、反省すべきは反省しながら、そして謙虚に、改革、国づくりに向かって責任を果たしていく」

 要するに、厳しい選挙結果は首相に対する不信任ではなく、国民のおしかりと受け止めるということなのだろうか。だとすると、首相はこの歴史的大敗の重さを見誤っていると言うよりない。

 自民37、民主60という獲得議席の差だけではない。朝日新聞の出口調査では、有権者の56%が「他の人に代わってほしい」と首相に辞任を求めた。自民党支持層まで4人に1人が、比例区で民主党に投票したのだ。

 そもそも、首相自身が「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」として、この選挙を信任争いと位置づけたはずである。

 記者会見でそのことを聞かれた首相は、まともに答えようとはしなかった。逆に「人心を一新せよというのが国民の声だと思う」と言い、自らを除く党役員や閣僚を入れ替える考えを示したのはあまりに都合が良すぎないか。

 政治は結果責任だ。政治家は進退によって責任を明らかにする。今回、結果に対して潔く責任を負おうとしない指導者に国民は失望するだろう。「なぜ続投なのか」という疑問と不信は、長くくすぶり続けるに違いない。

 自民党有力者たちの反応にも驚かされた。派閥全盛期の自民党を懐かしむわけではないが、かつての自民党なら責任を問う声が噴き上がったことだろう。

 実際、36議席だった89年の参院選では宇野首相が、44議席だった98年には橋本首相がそれぞれ退陣した。個性の違う別の有力者がそのあとを襲った。

 それが半世紀にわたって政権を担ってきた党の緊張感であり、活力の源でもあった。なのに、いまの有力者から聞こえてくるのは「代わる人材がいない」「本人が決めること」「とりあえず」などの中途半端な声ばかりだ。

 公明党があっさり首相の続投を認めたのも解せない。自民党への逆風のあおりで大敗した面があるのに、連立のあり方も含めて責任問題を総括すべきだ。

 首相は、成長重視の経済政策や格差の是正、「政治とカネ」での新たな対応策など、今後取り組んでいく課題を語った。だが、そうした政策を展開するために欠かせない国民の信任を、首相はまだ一度も得ていない。

 続投するというなら、できるだけ早く衆院の解散・総選挙で有権者の審判を受けるのが筋だ。

小田実氏死去―市民参加の道を示した

 「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)の活動で一時代を築いた作家の小田実さんが亡くなった。常に市民の側から戦後政治を問い続けた人生だった。

 二度と戦争をしてはいけない。その原点は少年時代、大阪の街が米軍機に焼かれ、腐った死体のにおいを忘れられなくなった空襲体験にあった。「やられる側」に立たないと真実は見えない。この信念がその後も貫かれていく。

 戦後は、フルブライト留学生として米ハーバード大に学び、世界各地を歩いた。その体験記「何でも見てやろう」がベストセラーになった。

 ベトナムに介入した米軍が65年に北ベトナムへの爆撃を始めると、ベ平連をつくった。泥沼化するベトナム戦争に反対する市民の声を、デモや集会のかたちで表していった。

 政治運動は、ひとつの世界観を持って主義主張を通すためにやるもの。それが従来の政治活動家の常識だった。これに対してベ平連は、政治には素人の市民が、ベトナム反戦という目的で集まり、それぞれができる範囲で行動するという市民運動のあり方を確立した。

 勤め帰りのサラリーマンや主婦が加わるデモは、ヘルメットをかぶり警官隊と衝突する学生とは一線を画した。その一方で、日本で脱走した米兵をかくまうというユニークさも併せ持っていた。

 こうした市民運動のやり方は、さまざまな住民運動のほか、のちの非営利組織(NPO)や非政府組織(NGO)の活動にも影響を与えた。その原点をたどれば、組織よりも個人の自由な発想を大事にする小田さんの個性があった。

 小田さんはその後も、阪神大震災の被災者救援や、憲法を守る「九条の会」などで、いつも社会にかかわっていくという姿勢を貫いてきた。

 いま、イラク戦争に反対する声が世界に満ち、反戦デモもあちこちで見られるが、日本では大勢の人々が加わる反戦デモは影をひそめた。ベ平連が活発に動いていた時代の熱気は失われた。

 しかし、福祉や教育、海外援助、スポーツなどさまざまな分野で、活動する市民は少なくない。ボランティアで参加する人も、専従で活動する人も、そのかかわり方はまちまちだ。

 世の中がおかしいと感じれば、選挙で「風」や「うねり」となって政治を大きく動かす。無党派層のなかには、そんな人たちもたくさんいる。

 安倍首相への信任選挙といわれた今回の参院選で、かれらは「ノー」を突きつけた。憲法改正で「戦後レジームからの脱却」をめざす首相への異議申し立ての意味もあっただろう。

 何でも見てやろうという好奇心、そして、普通の人々の生活や生命への共感、それをないがしろにする戦争や権力に抵抗する姿勢。小田さんの精神と生き方は、これからの時代にも通用するひとつの指針であるに違いない。

【朝日・天声人語】2007年07月31日(火曜日)付

 きのう75歳で亡くなった小田実(まこと)さんは、存在感のあふれる作家だった。行動派で知られ、60年代には「ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)」の顔となって奔走した。一つの時代が過ぎたと感じる人も多いだろう。

 ともにベ平連をつくった哲学者の鶴見俊輔さんは、小田さんをよく知らないまま運動に呼び込んだ。「たまたま拾ったビンから煙がもくもく出てきて、アラジンのランプみたいに巨人が現れた」と出会いを回想する。並はずれた実行力で運動を広げていった。

 根底にあったのは大阪空襲の体験だ。爆弾の中を必死で逃げた。ふるえながら防空壕(ごう)をはい出し、黒こげの死体を片付けたという。だから米軍の北爆の写真を見たとき、煙の下で起きていることが手に取るように分かった。「される側」の視点である。

  若い頃、世界を歩いて『何でも見てやろう』を書いた。印象深いくだりがある。ユースホステルで徴兵制が話題になった。小田さんが「日本はそんな野蛮な制度 はとっくの昔にかなぐり捨てた」と言うと、様々な国籍の若者の目が輝いたそうだ。そうした体験が、憲法9条への思いにつながっていく。

 末期がんの病床でも、いまの日本の空気を「戦前のようだ」と憂えていた。家族によれば、ここ1カ月はあまり話せなくなっていた。だが、「政治が本当にひどいときは市民は動くもんだ」と何度も口にしたという。

 市民派として、「市民」への信頼を貫いた生涯だった。永眠は奇(く)しくも、その市民が安倍政権に厳しい審判を突きつけた夜だった。


【毎日・社説】

社説:水増し合格 大学の“お手軽入試”が元凶だ

 私立高校が有名大学合格者数を水増ししていたことが相次いで表面化した。昨秋には全国各地の公私立高校で必修科目の履修漏れが発覚した。これも大学合格実績を上げるためのごまかしだ。責められるのは高校だけだろうか。問題は日本の大学入試の貧寒とした実情も映している。

 水増し問題は、成績の良い生徒に多数出願させ、その合格件数を人数にカウントするものだ。大阪の学校の場合、昨年度入試で1人を73の学部や学科に合格させ、数字を大幅に積み上げた。

  なぜ可能なのか。大学入試センター試験の成績だけで合否判定する募集枠を使うからだ。出願先の受験料は高校が負担していた。生徒はセンター試験を1回受け るだけでいい。後は学校が自らの負担で1人の生徒から何十人もの合格者を生み、「進学校」としての評判を高めるという構図だ。

 国公立大受験生向けに79年度から実施された共通1次試験は、受験生の成績で大学が序列化されるなどの弊害が出、90年度にセンター試験になった。大学が受験生に科目を指定するアラカルト方式と、私立も自由に参加し合否判定に利用できることが特徴だ。

  初年度に私立の参加は16校にすぎなかったが、今年度は450校1243学部に上り、大半の私大が何らかの形で使っている。大学の負担が軽減されるうえ に、センター試験だけで判定する枠には広く出願者を集めることができ、受験料収入にも反映する。また国公立も含め、センター試験の科目数を減らして受験生 を集めやすくする大学も相次いだ。

 少子化、全入時代と大学を取り巻く環境は厳しく、私立では深刻な定員割れも目立ち始めた。こうした中で「各大学で試験をもっと工夫し、手間をかけて学生を選べ」と求めるのは無理難題だろうか。決してそうではない。

  一連の問題は、今の「やすきに流れるお手軽入試」だから起きたともいえるのだ。例えば、履修漏れ問題のように世界史も学ばないで大学に入ることができる試 験でいいのか。選択肢で解答するセンター試験のマークシートで何十もの多様な学部・学科に学ぶ適性を判定する、その粗っぽさはどうしたことか。これを改 め、大学の教育目標や理念に照らして学生を選ぶことに踏み出さなければ同じような問題は繰り返し、大学の存在意義そのものも軽くなるだろう。

 もちろん工夫がされていないわけではない。センター入試の設問の改善、各大学個別に受験生の適性、意欲、高校での学力を多面的に見るAO(アドミッション・オフィス)入試や推薦制など、さまざまな試みも進められている。

 だが、AO入試が形骸(けいがい)化し受験生取り込みの青田買いに変じたと指摘される例もある。学生の確保を最優先するようなやすきに流れてはならない。今真に必要なのは効率ではなく、丁寧さなのだ。

 大学入試の内実ある改革は、そこに至る長い教育課程や学力観にも必ずプラスの影響を与える「教育再生」のキーポイントである。

毎日新聞 2007年7月31日 東京朝刊

社説:参院選ショック 安倍首相会見 やはり民意を見誤っている

 参院選での自民党惨敗から一夜明けた30日、安倍晋三首相は記者会見し、改めて続投する意向を表明した。

 見逃せないのは、首相は「すべての責任は私にある」と繰り返す一方で、前夜から「政権の基本路線は多くの国民に理解されており、間違っていない」と語っていることである。本当にそんな認識なのだとすれば、ここでも民意を見誤っているというほかない。

  首相が反省点として挙げたのは年金記録漏れ問題と政治とカネの問題への対応だった。年金問題では「不信を払しょくする努力が足りなかった」とも語った。だ が、この問題に対する首相の最大の責任は、再三指摘している通り、民主党が早々と追及していたにもかかわらず、内閣支持率が急落するまで事の重大性に気づ かなかったことだ。まず、それを首相自身が素直に反省しないと信頼など戻ってこない。

 政治とカネの問題も同様だ。首相は惨敗を受け、政治資金規正法のさらなる改正を自民党に指示したという。しかし、先の国会で成立した改正法は、これもまた再三、ザル法だと指摘されていたものだ。「今ごろになって」というのが多くの国民の思いだろう。

 一方、国民に支持されているという基本路線とは経済の成長路線だという。ところが、「なぜ支持されたと言えるのか」と問われると、首相は「(街頭演説などでの)聴衆の反応で感じた」という。これでは選挙の意味が分かっているのかと疑いたくなるほどだ。

 しかも、首相は安倍政治の中核といえる憲法改正など「美しい国」「戦後レジームからの脱却」路線が国民の支持を得たのかどうかには触れず、「憲法問題は選挙戦では詳しく話す時間がなかった」とかわすだけだった。これも都合のいい解釈である。

 首相が内閣の最大の課題と位置づけてきた憲法改正は、今度の選挙で実現は一段と困難になったとみるべきだ。その現状を認めないと、いくら突然、民主党との協調路線を言い出しても国会運営は前には進まない。

 安倍首相は内閣の大幅改造をする方針も明らかにし、「人心を一新せよというのが国民の声だ」とも語った。しかし、今のような首相の認識、姿勢では「首相も含めて人心一新を」との声は国民の間からなかなか消えないのではなかろうか。

 それでも自民党は30日の役員会で早々と首相の続投を決定した。党内各派閥幹部の多くは押し黙り、首相の責任を求める声はごくわずかしかない。首相が交代しても参院の与野党逆転状況は変わらない。そして、世論の空気を大きく変えるような後継候補も容易には見つからない。

 総裁候補、首相候補を党を挙げて育成してこなかった、ここしばらくのツケが一気に回ってきたということでもあろう。この行き詰まり状況は深刻である。

毎日新聞 2007年7月31日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「ああいう人だとは知らないで、運動に呼び込んじゃったんですよ…

 「ああいう人だとは 知らないで、運動に呼び込んじゃったんですよ。そうしたら、アラジンのランプみたいで、ワーッと巨人になっちゃったんだ」とはベトナム反戦運動に小田実さ んを誘った評論家の鶴見俊輔さんの言葉だ。「ああいう人」とはむろん小田さんのことだ▲まだ1度しか会っていない鶴見さんから「反戦運動をやらないか」と 電話を受けた小田さんは、すぐに「やろう」と応じた。初めての集会のビラは自分で書いた。「呼びかけ 言いたいことは、ただ一つです--『ベトナムに平和 を!』……」▲そのケタ外れにエネルギッシュな行動力とあの風ぼうである。ランプの魔人とはいいえて妙だが、それを巨大化させたのは1960年代の世界的 な価値観の転換の潮流だった。小田さんは、従来の組織やイデオロギーにとらわれない新たな市民運動の旗手というオーラに包まれた▲小田さんの市民運動の 「原風景」をなしたのは、少年時代の大阪空襲だった。焼け野原で見た焼死体は、どんな名誉とも無縁のむごたらしい死であった。小田さんはそれを「難死」と 呼んだ。「『難死』のまえで、その可能性のまえで、人は平等だった」▲鳥のように見下ろす視点ではなく、いつも地をはう虫の視点から人々に呼びかけたの は、むろんその“空襲下の平等”の記憶があったからだ。小田さんにとっての大阪空襲を、いつも同じ釣瓶(つるべ)で水をくみ上げる枯れない井戸にたとえた のも鶴見さんだった▲その小田さんが75歳で亡くなった。「小さな人間」が世界を変える希望を訴えた生涯だったが、自らはランプの巨人のようにちょっと大 きくなりすぎたのかもしれない。それは人の「難死」が続く世界に、全身をもって抗し続けた運動家のジレンマだろう。

毎日新聞 2007年7月31日 東京朝刊


【読売・社説】

衆参ねじれ 必要な政策の推進が大事だ(7月31日付・読売社説)

 衆院で与党、参院で野党がそれぞれ過半数を占める「衆参ねじれ」という参院選後の新たな政治構図は、基本的に政治過程の不安定化を意味する。

 しかも、政界再編などで現在の政党間関係に変化がない限り、この構図は長期間続くだろう。

 不安定な政治状況下でも、重要な政治・政策課題は山積している。とりわけ、国益や国民生活の安定にかかわる政策は粛々と推進していかねばならない。

 ◆試金石はテロ特措法◆

 安倍首相は、「民主党とよく話し、耳を傾ける点は耳を傾けねばならない」としている。参院第1党として参院運営の主導権を握ることになる民主党の鳩山幹事長は、「参院で何でも反対という態度を取るべきではない。大人の政治を行うべきだ」と言う。

 いずれも、責任政党として、当然の姿勢である。

 だが、民主党の場合、そうした態度を貫けるのかどうか、懸念もある。

 試金石は、11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長問題だ。秋の臨時国会の最大の焦点になる。

 アフガニスタンで対テロ作戦に当たる米英軍などへの支援の一環として、インド洋で燃料補給などの活動をしている海上自衛隊艦船の派遣継続は、悪化している現地情勢を見ても、今、打ち切ることは出来ない。

 派遣を中止すれば、テロに対する国際協力活動から脱落したと見なされ、国際社会の信頼を失う恐れがある。

 だが、民主党はテロ特措法の過去3度の延長に、ことごとく反対してきた。これまでは、参院で与党多数の下で、延長の改正テロ特措法が成立したが、今度はそうはいかない。

 参院で否決しても、衆院で3分の2以上の多数で再可決すれば成立するが、成立までに時間を要する。日本国内での延長手続きが混乱すれば、それ自体が、国際社会に誤解を与えかねない。それでも「反対」の態度を取るのかどうか。

 民主党は、政権交代の実現へ、安倍政権を追い詰め、衆院解散・総選挙に追い込むとしている。そのためには、単独で参院の過半数議席がない民主党としては、政府提出法案の処理などで、共産党や社民党などとの共闘が不可欠だ。

 民主党は、共産党や社民党の立場、主張に配慮せざるを得まい。そうなれば野党共闘が足かせとなって、「何でも反対」ではない「大人の政治」をするのが難しくなるのではないか。

 ◆実力者内閣が必要だ◆

 民主党以上に多難な課題を負うのは無論、自民党だ。

 安倍首相は続投を表明したが、政権の求心力が低下している。今後の政権運営は極めて苦しい。根本的な態勢立て直しを急がねばなるまい。

 安倍首相は30日の記者会見で、内閣改造、党役員人事を断行し、「人心一新」を図る意向を表明した。適材適所の「一致協力して全員で政策を前に進めていくチームを作る」という。

 安倍内閣の閣僚は、昨秋の総裁選の論功行賞や、安倍首相に近い議員の起用が目立ち、「論功行賞内閣」「お友達内閣」などと揶揄(やゆ)されもした。不明朗な事務所費問題や相次ぐ失言など、閣僚自身の資質が問われ、求心力を欠いていた。

 これが参院選での逆風を一層強く吹き募らせることにもなった。

 苦境を乗り切るには、内閣・党役員の陣容一新に当たって、党内の有能な実力ある人材を網羅した「実力者内閣」とすることが肝要だろう。党役員人事では、参院で民主党との折衝に当たる参院自民党の態勢作りも重要な要素となる。

 今後は、参院が与野党攻防の主舞台となるが、この際、参院のあり方にも留意する必要がある。参院が政局の焦点ともなる状況が生まれ、議院内閣制の下で参院に本来期待された役割とはますます乖離(かいり)しているからだ。

 ◆問われる参院のあり方◆

 民主党の小沢代表自身、自由党党首時代に、こう主張している。

 「衆院と参院がほぼ同等の権限を持って……参院まで政党化し……衆院との機能分担が出来なくなっている」「衆院で過半数を獲得しても、強いリーダーシップが発揮されない……総選挙で示された国民の総意が現実政治に反映しない」

 衆参二院制の下での議院内閣制は、本来、衆院の多数派が政権を担い、安定した政治運営に当たるはずが、参院がネックとなって、そうはならない状況への批判である。

 これは、今の自民党に、そのまま当てはまる。自民党は衆院で圧倒的な議席を持ち、「強いリーダーシップ」を発揮出来るはずが、参院での与党過半数割れで、それが出来ない。

 小沢代表が、現在、参院で野党が過半数を確保したのをてこに、与党の「強いリーダーシップ」を阻む先頭に立っているのは、政治に政略は付き物とはいえ、皮肉なことだ。

 だが、衆参のねじれや政略を超えて、必要な政策を推進することは、政権を目指す政党の責務である。
(2007年7月31日10時50分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月31日付 編集手帳

 長唄の「紀文大尽(だいじん)」に、放蕩(ほうと う)の限りを尽くして散財の日々を送る二代目、紀国屋文左衛門の述懐がある。「父は巨万の富を積み、われは巨万の富を消す…」◆海路、嵐をついてミカンを 運んで財をなした初代紀文よろしく、小泉前首相が郵政解散の賭けに出て「富」ならぬ「議席」を積んだのは2年前である。小泉改革路線を継承した安倍首相は 今、長唄にいう二代目の心境かも知れない◆評論家の谷沢永一さんは、人の性格のうち「可愛気(かわいげ)」にまさる長所はないと言う。「才能も智恵も努力 も業績も身持ちも忠誠も、すべてを引っくるめたところで、ただ可愛気があるという奴(やつ)には叶(かな)わない」と(新潮社「人間通」)◆ムキになる姿 もどこか憎めなかった小泉氏の、余人にまねのできない長所は可愛気だろう。谷沢さんによれば可愛気とは天性のもので、乏しい人は一段下の長所「律義」を目 指せばいいという。律義なら努力によって手に入る、と◆赤城徳彦農相の事務所費問題で「ルールに従っている」と繰り返した安倍首相の対応は律義からほど遠 い。最上級はないものねだりとしても、一段下の長所まで放棄しては議席が消えるのも道理だろう◆ 年金、政治とカネの宿題が残った。初代とは持ち味の違う二代目である。「精だせば凍る間もなき水車(みずぐるま)」、律義、律義でいくしかない。
(2007年7月31日1時40分  読売新聞)


【産経・社説】


【主張】安倍首相続投 再起へ人心一新を急げ 欠かせない改革堅持の陣容

 参院選で歴史的大敗を喫した安倍晋三首相は、今こそ自民党の総力を結集し、危機を乗り越えるときである。

 首相は30日の記者会見で、8月下旬以降に内閣改造・党役員人事を行う意向を示した。

 だが、それを待たず、8月7日に召集される予定の臨時国会に向けて人事を断行し、国づくりに向けた新たなシフトを示すべきだ。

 時間をおけば、首相の責任を問う声が高まり、党内外から続投への異論が出ることは避けられない。

 今の首相にとっては、国民が改革の担い手として、チャンスをもう一度、与えようと心から思えるような陣容を整えることがなによりも重要だ。

 ≪国づくりの意欲鮮明に≫

 首相の続投方針は、30日の自公党首会談でも確認された。躍進した民主党は「安倍政権は信任されなかった」と主張しており、有権者の間にも続投への違和感はあるだろう。

 その意味で、首相の会見は続投への意欲や、その必然性をうまく説明できるかどうかが注目された。

 年金記録問題が招いた国民の怒りの大きさを再認識し、「政治とカネ」による政治不信を反省して、政治資金規正法の再改正も検討する。地方格差の現状にも、目を向けるとした。

 敗因の分析としては妥当なものといえよう。

 問題は惨敗にもかかわらず続投するという理由である。安倍首相は経済成長を進め、景気回復を国民に実感してもらいたい、という点を強調したが、これは今の首相に直ちに求められているテーマではなかろう。まったく食い足りない。

 憲法改正や教育再生などに象徴される新しい国づくりという大改革について、「なぜ政治家・安倍晋三でなければならないのか」を、どうしてこの大事なときに語れないのか。

 首相は、在任中の憲法改正を目指し、改正手続きのための国民投票法の成立を急ぎ、実現した。教育再生に向けた関連法の整備も進めている。

 その基本路線は、選挙結果にかかわらず評価すべきもので、不変でなければならない。

 今後は、そうした国づくりに向けて真に改革の理念を持つ人材を、優先的に閣内に登用することも大切だ。

 首相は会見で「役所の観点ではなく国民の立場」「政治主導」といった人事の基本的な考え方を示した。

 正しい方向であり、それにしたがって人心一新を図ってもらいたい。経済界からも、政権継続には人事刷新が必要だとの意見が出ている。

 首相は、相次ぐ閣僚の辞任や、政治団体の事務所経費問題をめぐる対応のまずさも率直に認めた。

 任命責任を問われるだけでなく、選挙期間中、首相が自ら問題閣僚の弁明をするような場面もみられた。

 ≪政権内の危機管理も≫

 このような改革とは別次元のトラブル、不祥事について、いちいち首相が対応に追われるような内閣の態勢は、お粗末の一語に尽きる。

 塩崎恭久官房長官は「端的に私の責任だ」とマネジメント上の不手際を認めたが、この種の問題が選挙に影響し、政権基盤を揺るがすことが実証された。この事実をもっと切実に受け止めるべきだ。

 首相が政権発足時に設けた首相補佐官制度も含め、官邸が十分に機能を発揮したとはいえない。

 新憲法制定を掲げる自民党では、党憲法審議会が置かれているものの、改正に向けた推進態勢が整っているとは言い難い。

 態勢強化にあたっては、人選に加えて、関係閣僚との連携がうまくいくかどうかなど、組織として有効に機能させることを再考する必要があるのではないか。

 参院選により、中川秀直幹事長や青木幹雄参院議員会長ら、党首脳クラスが相次いで辞任の意向を表明し、片山虎之助参院幹事長は落選した。

 党役員もおのずと一新されることになるが、参院で主導権を握る民主党との意思疎通をどう図るか。

 国政選挙の候補者選考を抜本的に見直すことなど、政権維持に向けて今後、安倍首相が目配りしなければならない課題は少なくない。

(2007/07/31 05:27)

【産経抄】

 囲碁や将棋の世界には、「勝ち」と「負け」しかない。ところが、トップに近くなればなるほど、「美学」というもうひとつの価値観を大事にする人が出てくる。たとえば、圧倒的に形勢が悪くなっても、相手のミスを期待して負けを認めないのは「美学に反する」というのだ。

 ▼安倍晋三首相はひと一倍、美学にこだわる政治家に違いない。なにしろ、自らの政権公約ともいえる著作に『美しい国へ』という題を付けるくらいだ。それなのに、政権発足してからの10カ月間を振り返ってみてどうだろう。

 ▼ 任命した閣僚の不祥事はとどまるところを知らなかった。極めつきは、赤城徳彦農水相のへらへらした弁明と絆創膏(ばんそうこう)姿だった。それをかばい続 ける首相の姿は、お世辞にも美しいとはいえない。清新なイメージへの好感度が高かっただけに、失望も大きかった。参院選大敗のもっとも大きな要因といえ る。

 ▼にもかかわらず首相は、早々に「続投」を宣言した。きのうの記者会見では、しきりに「反省」を口にしていたが、野党が攻勢を緩めるはずもなく、与党内からも、足を引っ張る動きが出てくる。潔く引いた方がかえって再起の道が開かれる、との助言もあったろう。

 ▼あえて苦難の道、いいかえれば、かっこわるい生き方を選んだところに、首相なりの美学をみる。哲学者の鷲田小彌太さんがいうように「泥まみれの美だって存在する。いな美はつねにとはいわないが、『泥まみれ』とともにあるのだ」(『人生の哲学』海竜社)。

 ▼国民の多くは、首相を目の敵にする一部メディアに同調して、引きずり降ろして拍手喝采(かっさい)したいのだろうか。そうは思わない。逆境の泥にまみれながら、奮闘する姿が美しいのか、見極めたいのだ。

(2007/07/31 05:28)


【日経・社説】

社説 自民も民主も改革の灯を消すな(7/31)

 息の長い経済成長のため今こそ、経済活性化 や「小さな政府」実現への様々な改革が必要なのに、今回の参院選で改革はあまり争点とならなかった。安倍晋三首相は経済改革に関してはほぼ官僚任せで、既 得権益の壁を崩す強い意志が感じられない。民主党に至っては、ついこの間まで改革を掲げていたのに、今回は、ばらまき的な農業補助金構想で農家の票を大量 に集めた。小泉前政権の下でともったばかりの改革の灯を、政争のために消してはならない。

迫力欠いた首相の路線

  首相は経済・財政改革に関してはあまり前面に出さなかった。消費税の増税については成長促進と歳出削減を進め、なるべく増税に頼らない考え方。確かに成長 率が高まれば税収が増える。社会保障費の増加を考えると消費税増税はいずれ避けられないにしても、入札制度の改革などによって国・地方合わせ何兆円もの予 算が削れる可能性がある以上、歳出削減を優先するのは当然だ。

 だが成長促進策や歳出削減の中身があいまいで迫力に欠ける。来年度の公共事業の削減幅をどの程度にするのかも、ついに言わなかった。

  そもそも首相は小泉改革を継承したものの経済への関心は薄かった。戦後体制からの脱却を掲げ憲法改正に道筋をつける国民投票法を制定したほか、教育再生に 力を注いだ。それは良いが、教育論議は途中で「親学」に向かうなど脱線気味で、有能な人材をいかに育てるかという意味のある論議が深まらない。

 経済改革への明確なビジョンと、実現への意欲を見せなければ、ライバルに弱みを突かれるのは当然だ。

  小沢一郎民主党代表は農村地帯に多い1人区で、小規模農家も対象にする戸別所得補償の構想を示し、票を集めた。生産性向上にはつながらない案だが、それを 支持した農家を責められない。政府・自民党が今春から始めた新農業補助金制度は一定規模以上の耕地を持つ農家を対象にし、耕地の大規模化を通じ生産性を高 める内容だが、小さい耕地しか持たない農家への説明や配慮が足りなかったと言われても仕方がない。

 また、農村部など地方の経済が全体に疲弊している問題に有効な政策を出せなかった。地方経済の振興には税源や権限の移譲を含む地方分権が欠かせないが、官僚の抵抗が強く現政権下ではほとんど進展がない。29の1人区で自民党が6議席しか取れなかったのもうなずける。

  農村地帯の抱える問題が解消しなければ、農産物市場を開放できず、自由貿易協定(FTA)や世界貿易機関(WTO)の通商自由化交渉に支障を来す。それは 製造業やサービス業の国際展開を考えると、とても困った問題である。続投を宣言した安倍首相は30日の記者会見で「改革の陰の部分に光を当てなければなら ない」と反省の弁を述べた。地方分権の推進などが急がれよう。

 一方、民主党は小沢代表の下で戸別所得補償のほか、月2万6000円の子 ども手当支給など、有権者の耳に心地よい構想を出した。経済活性化策は中小企業に焦点を絞り、政府系金融機関融資への個人保証の撤廃などを提言する。激化 する国際競争に合わせ経済の構造を大きく変えるような建設的な内容とはいえない。

 菅直人、岡田克也、前原誠司各氏ら、以前の代表は自民党と改革を競ったが、小沢氏のマニフェストには「改革」の二文字がなかった。民主党は改革路線を続けるのかどうか、ぼやけた自画像を描き直すべきだ。

小沢氏、責任ある政策を

 民主党が政府・与党案をすべて参院で拒否するような行動に出れば、改革は停滞する。それが引き金になって自民党と民主党が「ばらまき政策」を競うようになれば最悪だ。両党は本当に重要な問題で政策を協議することも考える必要があろう。

  例えば役人の規律の緩みを正す改革。年金問題は社会保険庁職員のずさんな仕事ぶりが原因だが、それによって国民の政府不信は極みに達している。それを放置 すれば、どちらの党が政権を運営するにしても困るはず。欧米に比べ遅れている会計検査や行政府内の監察、政策評価など「政府の内部統制」を充実させること に両党で取り組んではどうか。

 持続的な成長に不可欠の地球温暖化対策では民主党が排出権取引の導入を提言するなど一歩前に出ている。政権が代わるごとに制度を変えられないこのような問題でも、両党の協調は欠かせない。

 海外の主要国の多くは市場機能を生かすための改革を終えた。英国はサッチャー改革で成長の基礎を築きブレア前政権が医療費増額や若者の就職支援などでバランスをとって15年連続の成長だ。ドイツ経済も労働市場の改革や小売業の規制緩和などが功を奏し好調である。

 民主党には政権交代の可能性が見えてきたが、それを目指すなら、経済改革をこそ競ってほしいものだ。

【日経・春秋】春秋(7/31)

 話すのを聞いていれば誰でも気付くし、新聞に何度も書かれた話題なので、したり顔で言うようなことではないが、やはり「しっかり」は安倍晋三首相の口癖だ。昨日の記者会見でも「しっかりと議論を」「改革をしっかりと実行し」と、しっかり使っていた。

▼ 昨年9月に内閣が発足して、初めて首相官邸に向かう朝の第一声が「しっかりやります」だったし、その前日の記者会見での発言を本紙で見ると17回も出てく る。参院選に惨敗した29日夜には、辞表を持ってきた中川秀直自民党幹事長に声をかけたそうだ。「敗戦処理をしっかり」

▼語源を探ればい くつかの説に行き当たるけれども漢字で書くと「確り」または「聢り」である。「かたくうごかない。信用できる」意味の「確」をあてるのは分かるとして、見 慣れない「聢」は漢和辞典に頼ろう。日本で漢字を結び合わせて作った会意国字で「耳で定かに聞いてきめる意」と『漢字源』にはある。

▼参 院選の極めて厳しい結果から「国民の声を聞く」。そう安倍首相は昨日の会見で繰り返した。参院で第一党になった民主党と「よく話をしながら、その主張に耳 を傾けていかなければ」とも。「反省すべき点は反省する」ならば、まず何を反省すべきか、様々な声に耳を澄ませ「聢り」と考えてもらいたい。


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とりあえずともかく一度は喜んでみる素直さや、現実を直視した冷静な判断、本心を思うと胸が熱くなります。民主党裏切るなよ。

 日共系のいくつかのブログを見て、斜めに構えたすねたような論評を見て「だからお前らは駄目なんだ、人の気持ちが分かっていない」なんてつぶやいたりした。

 それに対して、2007・7・29参院選投票日前、下記のうみおくれクラブゆみちゃんのコメントは、普段の論調から考えて100%民主党が良いなんて全然考えていないことが分かるだけに、読んでいて胸が熱くなりました。

SOBAさん、投票直前TBありがとうございます。天木さんの演説、聴きました。真実の訴え、ほとばしる気迫、受け止めました。
日本の障害者が苦しめられている「障害者自立支援法」がなぜ成立されねばならなかったか、その根底には、日本の政治家たちによる「対米売国」があったからでしょう。しかし現情勢で、全てをすぐに正しい方向へと向けることはできない。
現在では自民党よりマシな民主党に、一票を託すしかないと、ゆみちゃんは思います。

 投票日後、晴天とら日和のとらちゃんの「ばんざーい」シリーズも、同じく普段の驚異的な情報収集力から考えて、民主党内のネオコン一派の存在を当然知っていて、それでもなお素直に喜ぶ姿は微笑ましくもあり、とてもよく分かるし同時に胸が熱くなるのである。

 「積年の恨みざまあみろ~~!」って赤字で大きい字、実にいいな。こう言う感覚がオイラ好きなんだよ。「当選おめでとうございます!!」のイラストも実に癒されます。見てやってください。

 お~ぃ、民主党、みんなの期待を裏切るなよ。もし、裏切ったら、その時はこの雑談日記のSOBAがバナーを引っさげて、猛然と襲いかかるから、覚悟しておけ。(笑)

※物事には順序があり、政治にはタイミングと勢いが必要である。みんなで確認するって言うのも大事なんだよ。難しいことはよく分からんが大衆闘争なんたらって言うのもそういうものなんじゃないのかい、日共系の皆様。(笑)

 以下、晴天とら日和のとらちゃんの「ばんざーい」エントリーです。

2007年7月29日:参議院選挙当選者(勿論野党だけ!)

2007年7月29日:参議院選挙の報道(メモとして)

選挙結果は大変なこと、首相は自ら進退を決めるべき=野田元自治相に言われてやんの。ナサケナイ極地の総理だな!+当選(比 例 区)更新2

積年の恨みざまあみろ~~!

自民1人区で6勝23敗 結党以来2番目の大敗+当選確実(比 例 区)更新1

小沢代表一人区行脚が実る+当選確実(選挙区)=全選挙区確定!東京・自民党候補=丸川氏当選、で、保坂氏が落選。

姫のトラ退治成る!&青木タヌキジジイ地元も野党が勝つ!+当選確実(選挙区)=更新1

参院選:自民大敗か 40議席に届かず? +当選確実(比 例 区)

自民党過半数割れ確実!+当選確実(選挙区)

※参考:バナーストア(倉庫)に置いてある以下課題解決等で既に使っていない旧バナー

1ヶ月もメール問題?なにやってんだバカヤローバナー 疑惑隠しのお手伝い?前原オマエもむかつくバナー

民主のネオコン前原バナー

(画像をクリックすると拡大します)

Ayamarusakigatigaudarou


 ブログエントリーの幅に合わせたタイプ、クリックで640pxに少しだけ拡大します。

Ayamarusakigatigaudarou

 

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2007年7月30日 (月)

今日だけはバナー作るのをやめようと思っていたのだが、会見を見てたらムカムカして。シンゾーの馬鹿野郎~ぉッ!!!

クリックで大きく拡大するタイプと、最初からブログのエントリー幅で見やすい370px幅タイプ。小さいタイプは再度画面クリックでより鮮明になります。最後のコマはきっこさん作成のを使わせていただきました。

安倍の「反省すべきは反省し、でもやめません」バナー

安倍の「反省すべきは反省し、でもやめません」


 370pxのエントリー幅に合わせたタイプ。

安倍の「反省すべきは反省し、でもやめません」バナー
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※雑談日記SOBA制作と明示して頂けるとうれしいです。

※「縮小⇒拡大のバナーのタグを知るには?FireFoxを使えば簡単に知ることができますネ。

 YouTubeです。安倍シンゾーの辞書には「責任」と言う言葉はないらしい。自民党には人がいないと世界に向かって発信したようなものです。自民党はもう立ち腐れる政党と言うことがよく分かった。この映像で確認できます。

↓TBSのです。筑紫哲也さんが出てます。2007・7・29第21回参議院通常選挙、惨敗直後の安倍晋三のKYな続投宣言映像です。

参院選惨敗で安倍晋三首相が続投宣言(2007年7月29日)
http://www.youtube.com/watch?v=_7CxYLAwjgI

念の為mpg

 

↓以下、NHKのは消されました。

06-1_安倍首相 敗戦TV会見 NHK 参院選2007開票速報(07_0729).avi
https://www.youtube.com/watch?v=pLt2RLOPmO4


関連:このエントリーの約2ヶ月後に安倍晋三は緊急入院。
2007年9月22日 (土)
安倍晋三はいったい今でも生きているのか?間接情報ばかりで直接見た人いるの?入院があの松岡が担ぎ込まれた慶応病院とは、。

 

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7月30日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 喜ばしいことに傲慢自公お灸記念日にすることができました。6月はじめから続けてきたこの地方紙・主要紙の社説とコラムの資料としての採録活動もやり抜くことができました。

 当初始めた時には投票日までのつもりでしたが、結果が分かった後の政局とそれに対するマスコミ論調も興味深いので、投開票日3日後の8月1日まで記録することにします。

 どのようなマスコミをわれわれは目撃したのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月30日朝刊)

[参院選開票結果]安倍政治への不信任だ

ねじれ生じ波乱は必至

 参議院が大きく動いた。郵政選挙といわれた二〇〇五年九月の総選挙の際、自民党の側に大きく振れた振り子は、最大といっていい振れ幅で今回、民主党の側に振れた。

 自民党は歴史的な惨敗を喫して参議院第一党の座から転落、公明党を含む与党は過半数を維持することができなかった。

 衆議院では与党が三分の二を超え、参議院では野党が過半数を超えるというねじれが生じたことになる。国政の波乱を予兆させる選挙結果だ。

 沖縄選挙区は野党統一候補で無所属の糸数慶子氏が自民公認・公明推薦の前職西銘順志郎氏を大差で破り、国政への返り咲きを果たした。

 昨年十一月の知事選、四月の参院補選で連敗した野党にとって、今度の参院選は、奈落に沈むか立ち直りのきっかけをつかむか、のがけっぷちの選挙だった。今度の勝利で再生への足掛かりをつかんだことになる。

 参院選の沖縄選挙区はこれまで、中央政治の影響を受けつつも、沖縄に固有の争点を前面に押し出して争われることが多かった。「基地と経済」という復帰以来の争点がそれだ。

 「経済の与党、基地の野党」という構図は、沖縄の選挙事情を語るキーワードであり続けた。

 だが、今度の選挙では、個別の政策争点に加えて、安倍政治そのものが争点化した。選挙期間中、無党派層や自民・公明支持層の一部からもしきりに「安倍政権にお灸を据えたい」という声が聞こえてきた。

 糸数氏が大差で勝ったということは、安倍政治に対して沖縄の有権者が強い拒否反応を示し、「ノー」の審判を下したことを意味する。

 年金問題であらわになった行政不信、「政治とカネ」をめぐる閣僚の不祥事と安倍晋三首相の事後対応のまずさ、うんざりするほど続いた閣僚の失言。今度の選挙は全国的に安倍政権に対する有権者の怒りが爆発した選挙だった、といっていい。

 安倍首相にとっては、就任後初めての本格的な国政選挙だった。その選挙で支持層からも見放され、大敗を喫したことの意味を安倍首相は深刻に受け止める必要がある。

歴史の見直しに危機感

 西銘氏は告示前から逆風にさらされ、最後まで「負の連鎖」をはね返すことができなかった。

 県知事選、参院補選で連勝した勢い。自公と経済界の強固な組織力。かつての革新共闘会議を思わせるような圧倒的な運動量。勝てる要素があったにもかかわらず大敗を喫してしまったのは、逆風がいかに強かったかを物語っている。

 年金問題は沖縄選挙区でも大きな争点になった。「集団自決」(強制集団死)の記述をめぐる教科書検定問題や憲法改正の動きに対しても、有権者は敏感だった。

 歴史認識や戦後体験などウチナーンチュの琴線に触れるテーマが浮上したために、野党支持層だけでなく、広範な有権者から「このまま進むと大変なことになる」という危機感が生まれた。退職教員など沖縄戦や米軍統治を経験した世代の動きが目立ったのも今回の特徴だ。

 西銘陣営は年金や教科書検定問題に対して、選挙期間中、「政府に喝」というチラシを配って政府の対応を批判した。選挙のための選挙用の主張ではなく、選挙後もその姿勢を貫き、喝を入れてほしい。

  暗礁に乗り上げている普天間飛行場の辺野古移設問題について仲井真弘多知事は、難しい判断を迫られることになりそうだ。辺野古移設に明確に反対を示した糸 数氏が当選したことは、参院選とはいえ、それなりの重みを持つものである。安易な妥協を許さない県民意思の表れ、と受け取めたい。

野党は立て直しが急務

 県内の野党各党は、今度の選挙結果で取りあえず一服ついた、といえる。だが、この結果は野党にとって、体制立て直しのための猶予期間が与えられたとみるべきだ。

 かつて革新陣営の「接着剤」の役割を果たしたのは社大党である。だが、今の社大党にその力はない。民主党は影響力を増しつつあるとはいうものの、沖縄ではまだ野党第一党の地位を占めるに至っていない。野党陣営の中にリーダーシップの取れる政党がいなくなったのだ。

 反自公勢力の課題が今度の選挙で克服されたとはいい難い。そのことを冷静に見つめたほうがいい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月30日 朝刊 1面)

 選挙は幸せをつかむための選択である。誰もが親の時代より豊かで、幸せでありたいと願い、人を選び政党を選ぶ。

 六年前、小泉政権が登場して以降、この国を取り巻く状況は様変わりした。「自民党をぶっ壊す」という言葉に多くの人が当時の閉塞感を打ち破ることを期待し、その年の参院選での与党大勝を後押しした。

  振り返れば、痛みに耐えて強くあれ、と国から求められ続けた六年だった。規制緩和、三位一体改革…。強くなれば幸せになれる、と思った。しかし、人は強い 一面もあれば脆い面もある。「勝ち組」「負け組」という格差が生まれ、企業の業績が右肩上がりの一方で、個人の暮らしに景気回復の実感はいまひとつ薄い。

 政治の手のひらに強者は残ったが弱者はこぼれ落ちたままだ。ニート、派遣社員、障害者、年金問題。政治は国民に強さを求めるだけで、こぼれ落ちた人々を救うことに無関心だった、と言わざるを得ない現実が横たわる。

 政治だけではない。耐震偽装や公共工事談合、牛肉偽装など、国民の信頼を欺く事件も相次いだ。誰を信じていいのか。不信と疑心が渦巻き、求めても与えられないというつらさや哀しみを味わった人も多かろう。

 個人の力だけで幸せをつかむには限界がある。それを手助けするのが政治だ。今回の参院選、結果は決まった。痛みに耐えるのはもうご免。今こそ「幸せになりたい」という国民の願いに政治が応える番だ。(平良哲)


【琉球新報・社説】

07参院選 「良識の府」を取り戻せ

 年金問題を最大の争点とした第21回参院選は、29日投開票が行われ、年金問題を追い風にした民主党が躍進し議席を大きく伸ばしたのに対し、自民党は改選議席を大幅に減らし惨敗した。
 与野党が一騎打ちの激しい戦いを繰り広げた沖縄選挙区は、無所属で野党各党から推薦を受けた元職の糸数慶子氏が、自民公認で公明推薦の前職・西銘順志郎氏を破り当選した。
 与党は自民、公明両党の非改選議席を合わせて過半数を割り込んだ。安倍晋三首相は、昨年9月の就任以来、初めて臨んだ全国規模の国政選挙で国民から極めて厳しい審判を下された。
 一方、民主党は参院の第一党に躍り出た。小沢一郎代表が描く次期衆院選での政権交代の道筋が現実味を帯びてきたと言えよう。

自ら招いた逆風

 参院選の結果は、衆院選とは違い、政権選択に直接結び付くものではない。とはいうものの、安倍政権にとっては、今回の選挙結果は不信任を突き付けられたも同然である。
 各種世論調査で与党の劣勢が伝えられた以後、自民党執行部は首相の責任問題の火消しに躍起になってきた。首相自身、続投を表明している。だが今後、進退問題に発展する可能性も否定できない。
 有権者はなぜ民主党に多くの議席を与えたのか。
 重要法案を強調する割には、与党の国民への説明は不十分で、国会では与野党の論議が深まらないまま、対立法案を強引に採決にかける姿勢が目立った。先の通常国会の会期末で乱発した強行採決が好例である。
 衆院で議席の3分の2を占める巨大与党を背景に「数の論理」で押し切る政治手法を推し進め、与野党の合意が軽視される。こうした「安倍政治」への異議申し立てでもある。猛省を促していると受け止めるべきだ。
  国民は、首相が掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」に対しても、もっと丁寧な説明を求めているのではないか。国の行方や国民の暮らしを左右する重要 法案に対して、慎重に論議を尽くすことを政治に強く期待しているはずだ。首相をはじめ、政府与党は国民の期待や願いには耳を傾け、常に謙虚であるべきだ。 今後の国のかじ取りに生かす必要がある。
 与党を惨敗に追い込んだのは言うまでもなく、年金問題を中心に吹き荒れた「逆風」にある。しかし逆風は、決して自然発生的に起きたのではない。その源は、政府与党に発しているのだ。自らまいた種である。

示せるか存在意義

 年金問題だけではない。原爆投下について「しょうがない」と公示直前に発言し辞任した久間章生前防衛相の失言もしかり、説明責任を果たさない赤城徳彦農相の事務所費問題もしかりである。
 首相はこれらの問題に指導力を発揮できなかったばかりか、逆にかばい続けた。国民の怒りを買い、不信が広がり、不安をもたらしたのは当然だ。
 発足から10カ月。この間の「安倍政治」は、沖縄選挙区の行方にも影を落とした。
 米軍普天間飛行場の移設問題では、十分な説明もなく、名護市辺野古海域の環境現況調査(事前調査)で海上自衛隊が投入された。
 文部科学省の歴史教科書の検定では、沖縄戦の「集団自決」をめぐる軍の関与に関する記述が削除・修正された。県民の総意である検定の撤回と記述の復活要求は一顧だにされない。
 いずれも県民にとってはゆるがせにできない重大な事柄だ。新たな基地を造らせないことなどを軸に「平和の1議席」を訴え、平和な暮らしをアピールした糸数氏の勝因にもつながっている。
  自民党の記録的ともいえる大敗で選挙は幕を閉じた。だが年金制度の抜本的な制度の設計、政治とカネの問題など選挙戦で争点になったさまざな問題は片付いて いない。国民の立場に立った制度の在り方をめぐる議論などは、むしろこれからだ。3年後には与党による憲法改正の発議も予想される。
 今の参院は、「良識の府」と呼ぶには懸け離れすぎている。党利党略が優先され、衆院の議決をなぞって追認するだけでは参院の機能は果たせない。今回の結果で参院での論議に緊張が戻ってくることを期待したい。参院の存在意義を示してほしい

(7/30 9:48)

【琉球新報・金口木舌】

 「貧乏には2通りある。暗い貧乏と明るい貧乏。うちは明るい貧乏だからよか」。先日の新報女性サロンで、タレント島田洋七さんが語る「がばい(すごい)ばあちゃん」の内容に抱腹絶倒した
▼がばいばあちゃんは言う。「幸せは、お金が決めるものじゃない。自分自身の心の在り方で決まるんだ」。親元を離れ佐賀の祖母に預けられた島田さんは、貧乏暮らしの中で祖母から生きるヒントをもらった
▼沖縄のおばぁも、テレビドラマや出版物で全国に発信されている。型にはまったとらえ方は気になるが、逆境を笑い飛ばすたくましさや、ちゃめっ気などが共感されているのだろう
▼だが、おばぁ人気の陰で、独り暮らしの高齢者が誰にもみとられず死を迎える「孤独死」があることも忘れてはならない。那覇市では2006年度に8人、本年度は6人(27日現在)。全国で増加が懸念され、国や自治体が対策に乗り出した
▼65歳以上のお年寄りは県全体の16・5%。激烈な沖縄戦から生還し、戦後復興に尽くした世代が、社会から孤立し独りぼっちで死んでいくのは何ともやり切れない
▼夏休みが始まった。学校では教えてくれない人生の知恵がたくさん詰まった、おばぁと遊ぼう。

(7/30 9:45)


【東京新聞・社説】

安倍自民が惨敗 『私の内閣』存立難しく

2007年7月30日

 安倍政治にノーの判定が下された。どんな主張も政策も国民の信頼を失っては実を結べない。参院選の突風はそう教えている。首相の「私の内閣」は存立可能か。

 「小泉・郵政総選挙」から二年足らず。小泉後の安倍晋三政権が信を問うた参院選はまるでオセロゲームのように「黒白」が反転した。

 一議席を争う二十九選挙区で小沢一郎氏の民主など野党が安倍自民党を圧倒した。改選数三や五の大都市圏も自民と公明の候補は押しまくられた。東京、埼玉、神奈川などで民主に、どちらかがはじき出された。

 比例代表では自民得票率が前回参院選をさらに割り込んだ。凋落(ちょうらく)ぶりは目を覆うばかりである。
 「敗因は安倍さん」の声

 選挙の最終盤に自民比例候補の陣営で聞いた悲鳴と落胆が耳に残る。「なんで安倍さん、こんなに人気ないの?」「九年前の橋本政権の参院選最終盤と空気が同じ。負ける」

 橋本政権は必ずしも不人気だったわけでない。が、長い不況に手をこまぬく与党の失政批判に加え、財政政策の首相のブレ発言がたたって自民は大敗。四十四議席だった。

 安倍氏は首相就任十カ月の信任を求めた。教育基本法を変えた、改憲へ国民投票法をつくった、想定外だった年金の記録不備問題も手を打っている、と。

 遊説先では、公務員制度の改革や地域の再生、攻めの農政も掲げて「改革か逆行か」と訴えた。

 戦後生まれ初の日本国首相は戦後体制脱却を唱える。しかし気負いは空転した。語る言葉が目次の域を出ず、戦後の何が悪く、だからどうする、を語れなければ、国民がついていくはずはない。

 首相は気づいていなかったのだろうか。先の国会の強引な運営は支持離れに拍車をかけた。「空気が読めない」-こんな批判が与党にくすぶる中での、橋本政権時の獲得議席も下回る惨敗に、与党からも「敗因は安倍さん」の陰口が聞こえる。
 進行していた基盤の劣化

 野党は国民の年金不安への政府対応、そして閣僚らの失言や不透明なカネの説明不足をめぐっても、後手を繰り返す首相の甘さを突いた。

 政権リーダーの「資質」が焦点になれば反政権側に追い風が吹く。30%前後に下落した内閣支持率は選挙前から与党の劣勢を物語っていた。だが、これほどの逆風の厳しさは、それだけでは説明し切れない。

 自民の支持基盤の甚だしい劣化である。前兆はかねてあった。突然変異のように人気を集めた小泉長期政権で忘れられていた深刻さが、今春の統一地方選で実感されていた。

 四十四道府県議選と主要都市の市議選結果が参院選の自民敗北をかなりの確率で予言している。都市で民主は議席を大幅に伸ばし、自民の金城湯池の農村部でも躍進した。

 今回参院選の一人区でいえば、県議大幅減の岡山や滋賀、九州でも自民の幹部やベテランが敗れた。東北の一人区、四国は全滅。石川、富山ですら自民は苦杯をなめた。

 かろうじて当選できた人も、農家の所得補償などを掲げる小沢民主に守勢に立たされた。縮むパイを蜜月のはずの自民と公明が奪い合う。そんな事態が各地で展開された。

 自公で二議席死守を目指す大都市の選挙区で、公明から自民へパンフ配布の要求があった。実際に配ったかどうか“監視”つきで。終盤には自民の県議一人につき五百票分を融通するよう公明が求めた。

 「こっちだって当落の瀬戸際」と自民陣営。母屋を乗っ取られる、堅い宗教団体票を当てにした連立を続けていれば、支持基盤が弱るのは当たり前だよねぇ、といった自民陣営の運動員の嘆きを聞いた。

 猛烈な逆風は連立与党間にも冷気を吹かせた。そもそも右傾斜の目立つ安倍自民と公明の相互にある違和感は、自公の参院半数割れで増幅されておかしくない。

 忘れるわけにいかないのは、主要な争点が小泉・安倍政権通算六年半の決算でもあったことである。地方・弱者切り捨て政治だ、と格差拡大を攻める野党に、与党の反論は迫力を欠いた。地方の荒廃が進み、都市住民にも不公平感が募る中での「政権審判」選挙だったのだ。

 歴史的といっていい惨敗だが首相は続投するという。自公両党の執行部も退陣はあえて求めていない。ただ求心力の減衰は避けられまい。

 内閣改造で急場をしのぐにも人事は就任来の首相の“鬼門”である。国会はじめ政権の運営は困難を強いられよう。よほどの覚悟が要る。
 速やかな総選挙が常道だ

 勝った民主にはもちろん第一党の重い責任がのしかかる。衆院は与党圧倒多数のままだ。参院の多数野党が政治をかき乱すと映れば、世直しを期待した有権者は裏切られたと思うだろう。悲願の政権も遠のく。

 とはいえ政権との安易な妥協は困る。多少の混乱なら談合よりましである。衆院の与党の暴走を抑え、参院で再考を促せるなら、二院制本来の機能発揮が期待できるからだ。

 首相にも要望する。あなたはいまだ総選挙の洗礼を受けていない。ぜひ、速やかな政権選択選挙を、と。

【東京新聞・筆洗】2007年7月30日

 山形県米沢市には、東京から新幹線なら二時間半弱で 着く。江戸時代には上杉鷹山が改革を断行し、疲弊した藩を立て直した地として知られる▼先日、市内を歩いた。シャッターの下りている店が目につく。「売店 舗」の張り紙は色あせている。「あそこのそば屋は数カ月前、あそこの店は数年前…」。中心部の商店街で、お年寄りが寂しそうに話す▼小泉純一郎前首相が構 造改革を進める過程で、山形3区選出の加藤紘一衆院議員が苦言を呈したことがある。「改革で地方は疲弊している。一度よく見た方がいい」と。小泉氏は東京 の繁栄を例に挙げ、改革の成功を強調。耳を貸さなかったと聞く▼参院選挙で自民党が惨敗し、与党で過半数を確保できなかった。年金や政治とカネの問題、閣 僚の失言と敗因を挙げればいくらでもある。でも米沢市を歩くと小泉、安倍政権下での改革の痛みに耐えてきた人たちの、悲鳴ともいえる怒りが底流にはあった ように感じる。山形選挙区で自民党は十八年ぶりに敗れている▼「改革と成長を止めるな」。安倍晋三首相は選挙中、絶叫していた。改革の成果を実感できてい る人の心には響く、ワンフレーズかもしれない。でも改革により生活が苦しくなった人には「もう止めるしかない」と思わせる効果があったろう▼鷹山は家督を 継ぐ際、<受次(うけつぎ)て/国の司の/身となれば/忘るまじきは/民の父母>と一首詠んでいる。父母たる慈愛をもって改革を行う決意を示したのだと伝 えられる。いつの世にも通じる決意だと、選挙結果が教えてくれる。


【河北新報・社説】

参院選で自民惨敗/戦後政治の潮目は変わるか

 自民党の歴史的敗北である。

 東北の8議席を見ても、自民が2議席に減らし、民主系が6議席を制した。全国的に自民から民主への議席移動は地滑り的だった。

 民意は「安倍政治」を否定しただけではない。安倍政治の下地になっている伝統的な自民党政治そのものも否定したのではないか。

 年金記録不備問題は、かつて自民党と旧社会党が微妙な政治バランスを保った「55年体制」の産物との見方をされた。「窓口端末機の連続操作は45分以内」などと社会保険庁労使が交わした確認事項を見ると否定もできない。

 しかし、55年体制は自民党が政治支配を貫くための巧妙な仕掛けだった。今回の選挙ではこの党のそうした古い体質も問われた。

 「政治とカネ」の問題は、結党から52年の今でも、政治家としての行動倫理が自民党に根づいていないことを示した。「事務所費問題」から閣僚らの志の低さを感じ取った有権者も多いはずだ。

  憲法改正は自民党の歴代首相が積み残した宿題だが、自主憲法制定の党是が安倍政治のもとで息を吹き返した。世論は一般的な改憲手続きに柔軟だが、戦争放棄 の九条改正には厳しい目を向ける。微妙な世論の賛否を束ねて改憲に持っていこうとする安倍政治のスタンスに危うさはなかったか。

 「自民党をぶっ壊す」と強弁した小泉前政権の登場は、硬直を続ける自民党政治を一時的に延命させる仕掛けだったかもしれない。

 昨年9月に小泉政権からバトンを受け取ってスタートした安倍政権では、古い自民党を象徴する党内派閥が復権した。政権初の「骨太の方針07」の周辺には、省庁と癒着する族議員がうごめいた。

 小泉政権時代に施された薄メッキがはがれ、本来の自民党政治の「地金」が浮き出てしまった。それが安倍政治の姿だと言える。

 競争における勝者にばかり光を当てようとする「新自由主義」(市場原理主義)も、小泉構造改革をきっかけに顕著になった自民党の政策思想的な地金である。

 構造改革路線の影である「格差」は小泉前政権の負の遺産として安倍政権に引き継がれた。しかし、安倍政治は効果的な格差是正策を打てないまま、国民生活には実感のない経済成長戦略に走る。

 世論が違和感を抱くこうした政策的なスタンスは、年金や「政治とカネ」問題、国会で相次いだ法案の採決強行、閣僚の問題発言の連発などが重なることにより、マイナスの方向に加速度をつけて転がり落ちていったのではないか。

 衆参両院を車の両輪に例えれば、自民・公明の与党議席が定数の3分の2を超える巨大な車輪(衆院)と油を差しても回りにくい小車輪(参院)で、車体を前に進めるのもままならなくなるだろう。
 有権者は今回の選挙でこうした高い代償を払いながら、地金をむきだしにした安倍自民党に「ノー」を突き付け、少しでも現状を変革できるよう願ったのだろう。

 安倍首相は続投を表明したが、自民党がなすべきことはまず、巨大与党の思い上がりを捨てることだ。参院選敗北のふちから謙虚さを拾い上げなければならない。

 与野党対決の激化で国会運営の摩擦係数は一気に高まるが、政策的には思い切ってウイング(翼)を広げ、野党との協調ののりしろをできる限り多く取るべきだ。

 そのためには、国民各階層の要求と共感をきめ細かく吸収できる党に再生しなければなるまい。

 偏狭なナショナリズム的風潮に流されたり、派閥や官僚・族議員の言動に惑わされたりせず、リベラル勢力を含めた党内のさまざまな主張や思想を尊重できる多様性を持った党を目指すべきだ。

 野党の柱となる民主党は大勝した。しかし、「この党に政権を任せる」という有権者の信頼感を獲得したかというと話は別である。

 次の衆院選で与党を過半数割れに追い込めるだけの政権戦略と政策、それに現実味のある野党連携の舞台を準備しなければ、ポスト自民の資格は得られないだろう。
2007年07月30日月曜日

【河北新報・河北春秋】

 圧勝したのはやはり民主党だった。きのう投票の参院選で、有権者は安倍晋三政権に厳しい審判を下した。暮らしに対する不安が一挙に噴き出したと言 えようか▼「一人区」の自民党の惨敗ぶりが、それを物語る。年金に加え、ますます広がる都市との格差、市場原理一辺倒の農政…。疲弊しあえぐ地方が民主党 に「希望」を託した形だ

 ▼ 老練な選挙戦術もあった。政治家として退路を断ち与野党逆転にかけた小沢一郎代表。勝敗ラインさえ言わない首相をよそに「潔さ」を印象付け、地方に入って は支持拡大に猛進した▼東北の「1人区」でも、フレッシュな民主系新顔3人が初議席をものにした。高校球児で海外経験のある青森の平山幸司さん。秋田の松 浦大悟さんは元民放アナウンサーで地域を肌で知る。共に37歳。山形の舟山康江さんは41歳。元農水官僚で3児のママだ

 ▼厚い自民の地 盤で当選者たちは道を切り開いた。「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」。魯迅『故郷』の一節。道とは希望の例えでもあ る。有権者の「希望」を背に民主党はほかの野党と解散総選挙へ道を探るだろう▼参院を野党に制せられた与党。安倍首相が歩む道は険しい。岐路にも立たされ よう。選挙は終わった。緊迫極まる第二幕が始まる。

2007年07月30日月曜日


【京都新聞・社説】

参院選自民惨敗  安倍政権に「ノー」の審判

 昨年九月に誕生した安倍晋三政権に初の審判が下った。国民が出した答えは、明確な「ノー」だった。
 「天下分け目」と言われた参院選は民主党が大躍進、自民党は惨敗、公明党も議席を大きく減らした。非改選議席を含む参院の勢力は与野党が逆転し、野党が過半数を制した。
 第一党に躍り出た民主など野党が参院の主導権を握ることになる。衆院で可決した法案が参院で否決される事態が続く可能性もあり、そうなれば国会運営は行き詰まろう。
 安倍首相は早々と続投の意向を示したが、責任を問う声や解散総選挙論がでてもおかしくない情勢だ。求心力低下は避けられまい。首相も自民も厳しい局面を迎えている。
 今回の参院選は、「年金選挙」と呼ばれた。五千万件にのぼる不明年金記録など、社会保険庁のずさんな管理が次々と明らかになり、国民の不信や怒りが高まるなか、選挙戦に突入した。
 与党にとって年金が最大の逆風になったことは確かだろう。
 松岡利勝前農相、後任の赤城徳彦農相の事務所費など「政治とカネ」をめぐる問題や閣僚の相次ぐ失言も響いた。
 首相の対応のまずさも政権への不信感を高めたことは間違いない。

声あげた地方と弱者
 「戦後レジーム(体制)」からの脱却と「美しい国」づくりを政権目標に掲げる安倍首相にすれば不本意だろう。
 憲法改正への手続き法である国民投票法などを成立させ、憲法を争点に参院選に臨むつもりだったからだ。
 だが、有権者は「年金」だけで安倍政権を評価したのではあるまい。
 成長路線の陰で、ワーキングプア(働く貧困層)の問題は、深刻さを増すばかりだ。景気回復とはほど遠い中小零細企業、医療など広がる地域間格差。
 小泉前政権が進めた規制緩和と三位一体改革の「負の遺産」とされるが、引き継いだ安倍政権は有効な手を打てず、格差を拡大させたのではないか。
 東北、九州、四国など一人区で自民が大きく負け越したのは、こうした地方の不満が噴出したからにほかなるまい。
 将来への不安も募る。地方や弱い立場の人が安倍政治に不信任を突きつけた。その象徴が年金問題だったといえよう。
 民主も喜んではいられまい。大躍進は「敵失」によるところが大きい。選挙公約で地方や生活者への政策を打ち出し、自民との違いをみせたが、今後は政権を担える実行力を示す必要があろう。
 衆院で多数を占める与党は強引な国会運営への批判を謙虚に受け止めるべきだ。政治の混乱を誰しも望んでいない。
 与野党とも党利党略に固執せず、民意を真摯(しんし)にくみとって国民第一の政治を心がけてもらいたい。

「地歩」を固めた民主
 京都選挙区は、民主前職の松井孝治氏が与党への逆風を生かし、府内全域から支持を集め再選を果たした。自民新人の西田昌司氏は逆風の中、自民や推薦の公明の支持基盤を固め逃げ切った。
 共産新人の成宮真理子氏は、無党派層の一部に食い込み追い上げたが、選挙区での議席獲得は果たせなかった。
 「年金逆風」は京都でも吹き荒れ、松井氏の独走、西田氏の守勢となって表れたといえよう。
 民主は比例区でも着実に票数を重ね、国政レベルでは自民と並ぶ二大政党化の地歩をより確実にしたといえる。京都政界での影響力が強まろう。
 自民は郵政総選挙での保守分裂のしこりや組織力の弱体化などが解消されず、安定した党内運営や結束力の強化が課題として残った。共産は一定の存在感を示したものの、退潮傾向に歯止めがかからず反転攻勢の足掛かりをつかめたとはいえまい。
 年金問題が焦点になったが、当選者には格差や医師不足、中小企業活性化など地元の声も国政に反映してもらいたい。
 選挙結果は来年の京都市長選に影響するのは必至だ。オール与党対共産の二極構図が継続されるのかどうか。各党は早急な戦略構築が迫られよう。

「嘉田旋風」も味方に
 滋賀選挙区は、民主党新人の徳永久志氏が、自民党前職の山下英利氏ら二人に大差をつけ初当選を果たした。
 徳永氏は民主優位の追い風を受けながら、嘉田由紀子知事の新幹線新駅凍結方針に協力した実績などを訴え、無党派層まで広く浸透したのが勝因だろう。
 民主は、これで県の参院議席(二)を独占。衆院を含めた県選出の国会議員数でも六となり自民の四を超えた。
 嘉田知事が誕生した昨夏の県知事選以来、滋賀の政治風土は一変、県民の投票行動は都市型の色彩を一層強めた。環境や女性の権利などを重視する一方、無駄な公共工事、既得権構造に反発する「嘉田党」が大きな勢力になっている。
 逆風が吹いたにせよ、自民が今春まで新幹線新駅推進にこだわり嘉田知事の抵抗勢力と見られたことと、今回の敗北は無関係ではなかろう。先の県議選では過半数を割り、基盤としてきた農村地域でさえ自民離れが起きている。
 深刻な低落傾向に自民が歯止めをかけるには県民ニーズを的確につかみ、政策に生かし実行する以外にない。
 民主は国政「県第一党」の責任を負うことになった。「年金」はもとより医師不足解消、琵琶湖汚濁の解明など県民向け公約も確実に守ってもらいたい。

[京都新聞 2007年07月30日掲載]

【京都新聞・凡語】

参議院選挙を終えて

 民主党が大勝利し、自民党が涙を流した参院選。安倍晋三政権に突風が吹き つけた▼五千万件もの「消えた年金記録」などで有権者の関心が高かった。十二年に一度、参院選と統一地方選が重なる「亥年(いどし)選挙」は投票率が大き く落ち込むと言われるが、三年前の56・5%をも上回った▼亥年選挙は地方議員が自身の選挙で疲れて身が入らないとされるが、今回は期日前投票者数がその ジンクスを打ち破った。実際、総務省が発表した最終集計は国政選挙で初めて一千万人を超し、その結果、六千万票を超える投票総数のうち二割近くを占めたの は驚きだ▼初めて導入された前回は七百万人を上回り、二年前の衆院選で九百万人に近づき、今回の一千万人超と、うなぎ上り。期間が公示翌日から投票日前日 までと長く、利用しやすいことが大きいだろう。駅前や大型店舗の近くに投票所が設けられた地域もあった▼今参院選は在外投票で、従来の比例代表に選挙区も 加えられた。最高裁判決が導入を促し、公選法が改正されたためだが、海外に七十万人を超す対象者がいるという。選挙人名簿登録者こそ少ないが、タイでは前 回を上回る投票があり、海外各地で選挙への関心を高めたようだ▼有権者が抱く生活や政治への不安、不満は大きい。工夫で投票率はさらに高まる可能性があ る。次なる国政選挙への宿題だ。

[京都新聞 2007年07月30日掲載]


【朝日・社説】2007年07月30日(月曜日)付

参院選・自民惨敗―安倍政治への不信任だ

 衝撃的な選挙結果である。

 安倍首相は昨秋の就任以来、この参院選での勝利に狙いを定めて、さまざまな手立てを講じてきた。有権者はその実績に対して、はっきりと「不合格」の審判を下した。

 しかし、首相は結果を厳粛に受け止めるとしながらも「私の国づくりはスタートしたばかり。これからも首相として責任を果たしたい」と述べ、政権にとどまる意向を表明した。まったく理解に苦しむ判断だ。

 ●民意に背く続投表明

 さすがに自民党内にも首相の責任を問う声が出ている。すんなりと続投が受け入れられるとは思えない。首相はもっと真剣に今回の結果を受け止め、潔く首相の座を退くべきである。

  それにしても、すさまじい惨敗ぶりだ。自民党は30議席台へ激減し、ライバル民主党に大きく水をあけられた。非改選議席を加えても、民主党に第1党を奪わ れた。1955年の自民党結党以来、第1党の座を滑り落ちたのは初めてだ。「政権を選ぶ衆院選とは違う」というには、あまりに度を超えた敗北だ。

 公明党も後退し、与党全体で過半数を大きく割り込んだ。与党は衆院で7割の議席を押さえているものの、参院での与野党逆転はこれまでの国会の進め方を根本的に変えることになるだろう。

 全国で、安倍自民党に対する「ノー」の声が渦巻いた。

 「自民王国」のはずだった地方の1人区でばたばたと議席を失い、参院自民党の実力者、片山虎之助幹事長まで落選した。2年前の郵政総選挙で小泉自民党が席巻した大都市部でも、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知で民主党が次々に2人当選を果たした。

 2年前、自民党を大勝させた無党派層が、今度は一気に民主党に動いたのだ。自民支持層のかなりの部分が野党に流れたのは、政権批判の強さを物語る。

 衝撃は自民党内に広がっている。中川秀直幹事長や青木幹雄参院議員会長は辞任する。それでも首相が続投するとなれば、世論の厳しい反応が予想される。

 まして、与野党が逆転した参院を抱え、これからの政局運営や国会審議は格段に難しくなるはずだ。参院で安倍首相らへの問責決議案が出されれば通るのは確実な勢力図だし、混乱と停滞は避けられないのではないか。

 ●1人区の怒り、深刻

 敗北の直接の引き金になったのは、年金記録のずさんな管理に対する国民の怒りだった。さらに、自殺した松岡前農水相や後任の赤城農水相らの「政治とカネ」の問題、久間前防衛相らの暴言、失言の連発が追い打ちをかけた。

 首相にとっては、不運の積み重なりだったと言うこともできる。だが、ひとつひとつの問題の処理を誤り、傷口を広げたのはまさに首相自身だった。

  年金では「浮いたり、消えたり」した支払い記録の不備が次々と明らかになり、後手後手の対応に追われた。政治資金の問題も、松岡氏をかばい続けて自殺とい う結果を招き、後任に起用した赤城氏にも同じような疑惑が発覚。総裁選での論功や自分の仲間を重視する人事の甘さが次々に浮かび上がってしまった。

 その一方で、国会では数を頼みに採決強行の連続。うんざりだ、いい加減にしろ……。広がったのは安倍氏への同情や共感より、安倍政治への基本的な不信ではなかったか。

 選挙結果で注目すべきは、とくに1人区で自民党が不振を極めたことだ。地方の経済が疲弊する一方で、高齢者ばかりの町や村が増える。人々の不安と不満が膨らんでいるのに、自公政権は本気で取り組んでくれない。そうした思いが底流にあると見るべきだ。

 都市で集めた税金を、公共事業などを通じて地方に再配分する。良くも悪くも自民党政治を支えてきたメカニズムだ。それが終わりを告げたのに、代わりの方策が見つからないのだ。

 ●優先課題を見誤った

 地方の疲弊に象徴される格差への国民の不満、将来への不安は、都市住民や若い世代にも共通するものだ。とりわけ弱者の暮らしや安心をどう支えるのか。これこそが、小泉改革を引き継いだ首相が第一に取り組むべき課題だった。

 ところが、首相が持ち出したのは「美しい国」であり、「戦後レジームからの脱却」だった。憲法改正のための国民投票法をつくり、教育基本法を改正し、防衛庁を省に昇格させた。こうした実績を見てほしい、と胸を張ってみせた。

 有権者にはそれぞれ賛否のある課題だろう。だが、それらはいまの政治が取り組むべき最優先課題なのか。そんな違和感が積もり積もっていたことは、世論調査などにも表れていた。

 自民党は成長重視の政策などを打ち出し、実際、景気は拡大基調にある。なのになぜ負けたのか、真剣に分析すべきなのに、首相が「基本路線には(国民の)ご理解をいただいている」と政策継続の構えを見せているのは解せない。

 政治はこれから激動の時代に入る。与野党に求められるのは、衆参で多数派がねじれるという状況の中で、対立だけでなく、お互いの合意をどうつくり、政治を前に進めていくかの努力だ。

 自民党は、これまでのような強引な国会運営はやりたくてもできない。だが、民主党もいたずらに与党の足を引っ張るだけなら、次は国民の失望が自分たちに向かうことを知るべきだ。

 そんな新しい緊張感にあふれる国会を実現するためにも、首相は一日も早く自らの進退にけじめをつける必要がある。

【朝日・天声人語】2007年07月30日(月曜日)付

 古代ギリシャの哲学者タレスは天文学にもたけていた。ある夜、星の観測に熱中するあまり、井戸に気づかずに落ちてしまった。使用人が冷やかした。「あなたは天上のことは知ろうとするが、足元のことはお気づきにならない」

  よく知られた逸話に、安倍自民党の大敗が重なる。首相になってからの安倍さんには、望遠鏡で遠くの空ばかり眺めていた印象が強い。いわく「美しい国」「憲 法改正」「戦後レジーム(体制)からの脱却」……。大構えなテーマは、彼の思い描く夜空に、星座となってきらめいていたのだろう。

 だが足元には疎かったようだ。暮らしを脅かす格差に無頓着だった。政治とカネの醜聞につまずき、年金問題という井戸に落ちた。それからが正念場だったはずだが、腹を据えて空を仰ぎ続けるでもなく、取り繕いに追われた。

 「政治家は次の時代を考え、政治屋は次の選挙を考える」という。首相就任時には、安倍さんは政治家だったかもしれない。だが井戸に落ちてからは、動揺したのかすっかり政治屋になってしまった。脆(もろ)さに失望した人は、自民支持層にも少なくなかっただろう。

 タレスは、万物は水から生まれ、水に還(かえ)ると、宇宙の原理を説いた。その水を庶民に、為政者を舟になぞらえたのは、中国の思想家の荀子だ。「水はすなわち舟を載せ、水はすなわち舟を覆す」

 民衆は政権を支えもするが、不満ならひっくり返す。それが一票の力だろう。舟が覆ってなお、首相は泳ぎ続けるそうだ。民意の波は相当荒いのだけれど。


【毎日・社説】

社説:自民惨敗 民意は「安倍政治」を否定した 衆院の早期解散で信を問え

 参院選は自民党が歴史的敗北を喫した。与党は過半数を大幅に下回り民主党は参院で第1党となった。

 安倍晋三首相にとっては、全国の有権者に審判を仰ぐ初の国政選挙だった。私たちは今回の参院選を「安倍政治」を問う選挙であるとともに、自民、民主両党による2大政党化の進展を占う選挙と位置付けてきた。

 選挙結果について安倍首相は29日夜、「国民の声を厳粛に受け止めなければならない」としながらも、自らの進退については「改革続行、新しい国造りを約束してきた。この約束を果たしていくことが私に課せられた使命だと決意している」と続投する意向を明らかにした。

 与党内には「参院選は政権選択選挙ではなく首相の進退は問われない」という声もある。

 しかし98年の44議席を下回り、40議席を切る大敗北である。今回の結果は国民による「安倍政治」への不信任と受け止めるべきだろう。首相の政治責任はあまりにも明らかであり、続投が民意に沿った判断とは思えない。

 6年任期の参院では3年ごとに議員の半数が改選される。

 このため今後少なくとも3年間は法案成否の主導権は野党に握られる。衆院で再議決する道はあるが混乱は必至だ。

 今後の政策遂行上、まず課題となるのは11月1日で期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長問題である。さらに来年度予算編成との関連で本格的な消費税論議も始めなくてはならない。北朝鮮の核問題に関する6カ国協議への対応など外交上の難問も山積している。

 首相は参院選敗北にもかかわらず続投を決意したからには、早期に衆院を解散し、改めて信を問うべきである。

 ◇身内の論理に不信増す

 自民党大敗の大きな理由は、国民が「安倍政治」は自分たちの方を向いていないと受け止めたからだろう。

 5000万件に及ぶ年金記録漏れに対して当初、政府・与党の反応は鈍かった。首相は追及する民主党議員に対して、年金制度に対して不安をあおると切り返した。

 対策に本腰を入れ出したのは5月下旬に毎日新聞などの世論調査で支持率が急落してからだ。

 年金記録の持ち主を捜すための名寄せ作業を急いだ。保険料支払いを証明できない人に対する給付策も打ち出した。

 しかし国民は参院選対策用のパフォーマンスという疑念を消せなかった。本社世論調査では現行対策について8割が解決策にはならないと回答した。

 「政治とカネ」の問題も首相は甘く見た。佐田玄一郎前行革担当相、松岡利勝前農相、赤城徳彦農相らの事務所経費問題が続いた。

 首相は要領を得ない説明を繰り返す閣僚をかばうばかりで、政府与党全体が不信の目で見られるようになった。

 自民、公明両党の賛成で改正政治資金規正法が成立した。これは資金管理団体だけに限定し、5万円以上の経常経費支出に領収書添付を義務付ける内容だ。

 これも赤城氏の後援会のような団体は規制外で、さっそくザル法の正体を露呈してしまった。

 本来、内閣の重しになるべきベテラン閣僚からは、柳沢伯夫厚生労働相の「産む機械」発言や久間章生前防衛相の「(原爆投下は)しょうがない」発言が飛び出した。それは内閣の緊張感の欠如とともに首相の指導力不足をあらわにする結果となった。

 事務所経費問題に加え、総裁選で支援を受けた仲間で作った「お友だち内閣」の大きなツケが回ったものだろう。このように首相は国民の視点に立つことなく、身内の論理に終始した。それが国民からの不信を決定的なものにした。

 「官から民へ」をキャッチフレーズにした「小泉改革」を継承するのかどうかも不明確だ。

 郵政造反組を復党させたが、これは05年の郵政解散の大義を無視したものだ。首相は親しい議員の復党にこだわったが、小泉純一郎前首相の構造改革路線への抵抗ともみられた。6月の「骨太の方針」も族議員や官僚に配慮し総花的になってしまった。

 一方で参院選の日程をずらしてまで会期を延長して、公務員制度改革関連法などを成立させた。前首相のような政治主導をアピールしたかったのだろう。

 しかし採決の強行を繰り返すドタバタぶりで、かえって国民の信用を失った。

 ◇重い責任を負った民主党

 首相は「戦後レジームからの脱却」を前面に掲げてきた。実際に改正教育基本法や防衛省昇格、国民投票法なども成立させた。集団的自衛権の憲法解釈の見直しについても進めている。

 国民は暮らしの実感から離れた理念先行型の安倍路線に対して明らかに「ノー」と言ったと言える。

 参院で第1党に躍り出た民主党の責任は重い。

 民主党の小沢一郎代表は憲法や安全保障政策などはあえて選挙戦では触れずに、年金や格差是正など生活に焦点を当てた。

 消費税率は据え置き方針をとり、農家に所得補償する「戸別所得補償制度」も打ち出した。

 1人区で自民党を圧倒したのは中央・都市との格差に矛盾を抱く地方の支持を得たためだろう。「市場主義」は、強い者だけが生き残るという不満も吸収した。

 政権政党を目指すならば、まず財源問題をはじめとする具体的な政策を提示し実現への努力が求められる。

 安保政策でも米国との摩擦を覚悟でインド洋やイラクから自衛隊を撤退させることができるか。党内の意見を集約し統一した方向性を打ち出せるか、政権担当能力が問われよう。

毎日新聞 2007年7月30日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:新日米安保が自然承認された1960年6月19日…

 新日米安保が自然承認された 1960年6月19日、首相官邸周辺は抗議のデモで埋まった。危険だという警視総監に、岸信介首相は「おれは動かない」と退避を断る。人けのない官邸で首 相は弟の佐藤栄作氏と「死ぬならここ以外にない」とブランデーをくみ交わした▲この時、岸首相はすでに退陣を決意していた。治安の悪化により予定されてい た米大統領訪日を断念した時、「誰に相談することもできないのだから、自分で決断した」。辞意を表明したのは安保自然承認の4日後、批准書交換の日だった ▲政治対決から経済成長へと戦後政治の歴史的場面転換を生んだ岸内閣退陣だ。だが、岸氏は後に「あの時、もう少しがんばればよかった」とも話している。 「総理は……地位に恋々としてかじりつく必要があるんだ。僕はあっさりしすぎた」(原彬久編「岸信介証言録」毎日新聞社)▲ならば祖父・岸氏の言葉を思い 出しての決断だろうか。過半数を大きく割り込む与党の歴史的大敗となった参院選だが、安倍晋三首相は早々と続投を表明した。ただこれほどにはっきりと示さ れた有権者の安倍政治への拒否反応を無視して政治への信頼をつなぎとめられるのだろうか▲世論調査にも示されたのは、失言や疑惑の絶えぬ内閣を率いる首相 の指導力への不信だ。「美しい国」といった言葉と、その足元の危うさのギャップが目立ったのは首相には不本意かもしれない。だが有権者の多くは、そこに政 治の核心にかかわる意識のズレを感じ取ったのに違いない▲「あっさり」より「地位に恋々としてかじりつく」という祖父と異なる選択が、国民にどんな反発を 呼ぶかは首相も想像がつこう。それが政界の地殻変動を招きかねないのが参院選後の日本政治だ。

毎日新聞 2007年7月30日 東京朝刊


【読売・社説】

参院与野党逆転 国政の混迷は許されない(7月30日付・読売社説)

 「歴史的」な参院選の結果である。1955年の保守合同後、参院で初めて野党が第1党となった。

 続投を表明した安倍首相の政権運営や国会のあり方などに大きな影響を及ぼすのは必至だ。日本の政治構造の変動につながる可能性もある。

 自民党が惨敗し、公明党も不振だった結果、与党は過半数を割った。民主党は大躍進し、第1党に躍り出た。

 民主党には、年金記録漏れや不明朗な事務所費処理、閣僚の軽率な問題発言など、政府・与党の“失策”に対する有権者の批判が追い風となった。

 ◆民主党の責任は重い◆

 景気拡大の実感がないとする地方や労働者などに根強い「格差」への不満も、安倍政権や与党への批判につながったようだ。建設業、農業、郵便局など、自民党の伝統的な組織基盤が揺らぐ1人区に焦点を当てた小沢代表の選挙戦術も奏功したのだろう。

 衆院で与党、参院で野党がそれぞれ過半数を占めるという衆参“ねじれ”現象にあって、参院第1党として、参院運営の主導権を握ることになる民主党の責任は、極めて重い。

 小沢代表はかねて、参院での与党過半数割れの実現を通じて政権交代を目指す、と主張している。政界再編も視野に入れて、政府・与党を衆院解散に追い込む狙いだろう。

 衆院で可決された政府・与党の法案が送付されても、参院で否決や修正が出来る。野党が参院に法案を提出、可決して衆院に送付し、政府・与党を揺さぶることも可能になる。首相や閣僚の問責決議案を可決することも難しいことではあるまい。

 こうしたことが常態化すれば、国政の混迷は避けられない。

 ◆政策の遂行が重要だ◆

 衆院で3分の2を超える勢力を確保する与党は、参院で否決された法案を再可決し、成立させることが出来るが、現実には容易なことではない。

 懸念されるのは、内外の重要政策推進への影響である。

 例えば、年金・医療・介護など社会保障制度を安定させるための財源としての消費税率引き上げを含めた税財政改革である。

 野党はいずれも消費税率引き上げに反対だが、いたずらに対立するだけでは、安定した社会保障制度構築の展望を早期に開くことが困難になる。

 米軍再編問題も、野党は、沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設に、どう取り組むのか。米軍再編推進特措法に反対した民主党の対応によっては、北朝鮮の核の深刻な脅威の下にある日本の平和と安全にとって死活的に重要な日米同盟の信頼を損ないかねない。

 テロ対策特措法の延長問題も、民主党が反対して延長出来ないとなれば、日本は国際平和活動に消極的な国と見なされ、国際社会での発言権の低下を招く恐れがある。

 そうした事態が現実になれば、二院制のあり方や参院の存在意義にも、大きな疑問符を付けられるだろう。

 日本が直面する内外の重要課題を考えれば、民主党は、政略のみに走るのではなく、責任政党としての姿勢をしっかり保つことが重要である。

 自民党の惨敗は、多様な要因が複合した逆風の結果だろう。

 年金記録漏れ問題は、年金行政への不信を生んだ。

 辞任した佐田玄一郎行政改革相や、自殺した松岡利勝農相と後任の赤城農相らの不明朗な事務所費の処理は、「政治とカネ」への疑念を招いた。

 久間章生防衛相が辞任に追い込まれた原爆投下に関する「しょうがない」発言への批判も痛手となった。

 総裁選での論功行賞人事が、こうした問題閣僚の起用につながったとして、安倍首相の任命責任を厳しく問う声もあった。だが、歴代、論功行賞人事のなかった政権はない。

 ◆政権を立て直せるか◆

 最大の争点となった年金や格差の問題は、いずれも過去の政権の“負の遺産”と言うべきものだ。必ずしも、政権発足後10か月の安倍首相に全責任を負わせることは出来まい。

 年金記録漏れは、長年の社会保険庁のずさんな実務処理によって生じた。適切な対応を怠ってきた歴代の内閣の責任が大きい。

 格差の拡大は、「失われた10年」の間、経済再建に有効な手を打てなかったことや、小泉前政権で、竹中平蔵・経済財政相が主導した極端な市場原理主義にも原因がある。

 安倍首相が、小泉政治の行き過ぎた面と一線を画していれば、小泉政治のマイナス面と同罪と見られることはなかっただろう。

 厳しい選挙結果にもかかわらず、安倍首相は、「新しい国づくりに責任を果たす」と繰り返し強調した。引き続き「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法改正や教育再生に取り組む決意の表明である。

 それには、選挙の審判を重く受け止め、民主党との協調も模索しつつ、態勢の立て直しを図らねばならない。
(2007年7月30日3時33分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月30日付 編集手帳

 「掃除の下手な大工は仕事もあかん」と語ったの は、大阪万博の日本庭園をはじめとして生涯に120余りの茶室を手がけた数寄屋大工の中村外二(そとじ)さんである◆駆け出しの職人は木の削り屑(くず) に肌で触れ、道具の使い方や仕事の段取りなどを先輩大工から盗む。掃除が下手であることは基本の学習を怠ってきた証しであり、いい家が造れるはずもない、 と◆自民党の敗北を伝えるテレビの選挙速報を眺めつつ、中村さんの言葉を思い出している。「消えた年金」など敗因は幾つかあれど、閣僚が招いた疑惑を掃除 する安倍首相の手際も響いたようである◆赤城徳彦農相の事務所費問題では、農相に経費の明細を公表させれば疑惑の塵(ちり)は一掃できたのに、しなかっ た。掃除下手の棟梁(とうりょう)に社会保障や外交・安保という大建築が手に負えるか、疑問に感じた有権者もいただろう◆どの木をどんな用途、場所に使う か、「大工は木を知らなあかん」とも中村さんは述べている。続出した閣僚の不始末を顧みれば、“論功行賞の木”や“お友達の木”を重用した10か月前の組 閣人事の罪というほかはない◆安倍首相は引き続き政権を担う意向という。大敗を喫して続投する以上、敗因をきちんと取り除かなければ有権者は納得しない。 木は組み直す。疑惑は掃除する。できなければ棟梁を名乗る資格はない。
(2007年7月30日3時49分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】自民大敗 民主党の責任は大きい

 自民、公明の与党が参院の過半数を大きく割り込む大敗を喫した一方で、安倍晋三首相は続投を表明した。

首相は反省し態勢強化図れ

 日本が取り組むべき内政・外交の課題山積を踏まえ、懸案の解決に不退転の決意を示したのであろう。

 だが、首相はこの敗北をまず真摯(しんし)に反省しなければならない。教訓をいかにくみ取り、安倍政権の態勢をどう立て直すか。内閣改造などを通じて首相の指導力が厳しく問われる。

 他方、民主党は勝利し、参院第一党に躍進した。それだけに民主党は国政上、より大きな責任を負ったことを自覚しなければなるまい。政権を担う責任政党に脱皮することなく、これまでのような対決路線を踏襲していては、いずれ国民から手痛いしっぺ返しを受けることになろう。

 与野党が対立する法案は、衆院を通っても参院で否決される公算が大きいが、国益に資する法案は党派を超えた協力こそが必要なのである。

 与党への逆風は幾つか挙げられる。やはり最後まで吹き続けた逆風は、年金記録の紛失問題だった。政府・与党は受給者らの不安を解消しようと、早急に対応策をまとめて実施したが、不信感を払拭(ふっしょく)することには至らなかった。

 ≪不信感払拭できず≫

 同じく選挙直前に表面化した赤城徳彦農水相の事務所経費問題が、「政治とカネ」をめぐる有権者の政治不信に拍車をかけた。

 さらに敗北の大きな要因は魅力ある候補者を擁立できなかったことにもある。青木幹雄参院議員会長や片山虎之助参院幹事長ら、参院側責任者の選考判断が、時代に合っていないことの表れといえる。

 首相が取り組むべきは、改革路線の担い手にふさわしい清新な候補者の擁立だ。新たな参院執行部人事により、変革を行う好機が現出したのではなかろうか。

  一方、民主党は年金記録紛失問題を追い風に、国民生活重視の立場を打ち出した。憲法、教育を通じた国の再生に力を入れる首相の姿勢から、負担増にあえぐ国 民や地方格差などへの配慮が不足していると判断し、自民党との差別化を図った結果、政権への批判票の受け皿を作ることに成功したといえよう。首相は地方で こうした不満が高まっていることを直視し、有効な対策を実施しなければならない。

 「戦後レジーム(体制)」からの脱却を掲げ、憲法改正を政治日程に乗せ、教育再生の具体化を図るなど、新しい国づくりに向かおうとした安倍首相の政治路線の方向は評価できるが、それを実現させる態勢があまりに不備であったことは否定できない。

 相次ぐ閣僚の辞任などを招いたのも、首相の指導力不足に原因があるといえよう。党役員人事や内閣改造により、突破力や発信力のある人材の登用が不可欠である。

 ≪「対決」では混迷へ≫

 問題は、選挙によって生じた衆参のねじれ現象という新たな政治構造の中で、どのように改革を円滑に実現していくか。与党との対決姿勢を強めてきた民主党が、責任政党にふさわしい立ち居振る舞いをできるかどうかに、大きくかかっている。

 さっそく、秋の臨時国会では海上自衛隊がインド洋で補給活動などを行うためのテロ対策特別措置法の延長措置をとる必要がある。

 民主党は選挙公約で、イラクに派遣されている自衛隊の撤退を掲げたが、日米同盟や国際貢献に不可欠なテーマについて、現実的な対応をとれるかどうかは、テロ特措法への対応が試金石になるだろう。

 憲法改正の核心となる9条や集団的自衛権の行使容認の問題についても、民主党は明確な見解を示すべきだ。

 参院議長ポストの獲得にあたり、民主党は共産、社民両党とも共闘することになるだろう。しかし、野党連合では現実的な外交・安保政策をとることはできまい。

 小沢一郎民主党代表が提唱する政権交代可能な二大政党はよしとするが、衆院解散に追い込むため、これまでのような政局本位で対決路線を続けるのかどうか。民主党は、真に政権を担える勢力たりうるかどうかを証明することが求められている。

(2007/07/30 05:37)

【産経抄】

 「政治は力だ」。こう看破したのは、平民宰相といわれた原敬だ。日本で初めて政党内閣を誕生させながら、凶刃に倒れた原ならではの言葉だが、同じ岩手県出身の後藤新平は「奇怪なる政治的用語」と批判した。

 ▼台湾総督府民政長官や満鉄総裁として、植民地行政に腕をふるい、政界に転じてからは、外相、東京市長、内相などを歴任した。生前は「大風呂敷」ともあだ名されたが、そのスケールの大きい政策が生誕150年を迎えた今年、あらためて脚光を浴びている。

 ▼ その後藤が晩年に情熱を傾けたのが、「政治の倫理化」運動だった。大正14(1925)年に、せっかく普通選挙法が成立したというのに、政界は汚職がはび こり、政党は足の引っ張り合いを続けていた。後藤は脳溢血(いっけつ)と闘いながら、10カ月にわたって全国を遊説して、立憲政治のあるべき姿を国民に訴 えた。

 ▼ちょうど、東京都墨田区の江戸東京博物館で開かれている「後藤新平展」の一角では、倫理化運動のPRのために作られたアニメ映 画が上映されている。肖像写真で登場する後藤が、手段を選ばず政権を奪取しようとする政治家と目先のことしか関心がない官僚を退治する場面もある。

 ▼ まるで、80年後の政治の混乱を見通しているかのようだ。きのう投開票された参院選は、小沢一郎代表が率いる民主党が圧勝した。岩手県水沢出身の小沢氏が 尊敬する人物としてあげるのが原敬だ。原の宿敵だった元老山県有朋の出身地、山口から選出された安倍晋三首相から、力で政権をもぎ取る決意を固めたことだ ろう。

 ▼ただ、内外の情勢が政治の空白を許さないほど逼迫(ひっぱく)していることは、十分承知のはず。もう一人の郷土の偉人、後藤の言葉にも耳を傾けてほしい。

(2007/07/30 07:21)


【日経・社説】

社説 安倍首相はこの審判を厳粛に受け止めよ(7/30)

 第21回参院通常選挙は29日投開 票され、自民党が大敗を喫して与党が過半数を大きく割り込む結果となった。自民党の獲得議席は40に届かず、民主党が目標の55議席を大きく上回って参院 の第1党に躍り出た。年金の記録漏れ問題や閣僚の相次ぐ失態などで有権者の政府不信の声が一気に噴き出した結果と言えよう。安倍晋三首相は引き続き政権を 維持する意向を表明したが、有権者の厳しい審判を厳粛に受け止め、謙虚な政権運営を心がける必要がある。

噴き出した政府不信

  与党である自民、公明両党は衆院で3分の2以上の絶対多数を維持しているが、参院で過半数を大きく割り込んだため、政局の動揺は避けられそうにない。政局 不安によって改革が停滞したり、経済に悪影響が出たりするようなことがあってはならない。この際、与野党の責任ある行動を改めて強く求めたい。

  参院選での与党の敗因ははっきりしている。年金の記録漏れ問題で有権者は政府に裏切られたような感情を抱き、政府不信の声が渦巻いた。この問題が国会で表 面化した際の柳沢伯夫厚労相の対応も迅速・的確だったとは言い難い。内閣支持率の急落に驚いた安倍首相が急きょ、陣頭指揮で網羅的な対策をとりまとめた が、有権者の怒り・不信を鎮めることはできなかった。

 有権者の政府不信に拍車を掛けたのが閣僚の相次ぐ失態である。「政治とカネ」をめ ぐる松岡利勝前農相の自殺は衝撃的であり、久間章生前防衛相の原爆発言は大きな反発を招いた。その後も赤城徳彦農相の事務所費問題や麻生太郎外相の不適切 発言などが続き、安倍内閣の支持率は30%前後に低迷した。安倍首相の任命責任に厳しい目が向けられたのは当然である。

 参院選のカギを 握るとみられた29の1人区で民主党は自民党を圧倒した。これら1人区では地域経済の不振や過疎化に苦しむところが少なくない。農家に対する戸別所得補償 制度や月額2万6000円の子ども手当などの民主党の公約は多分にばらまき的で財源の裏付けも明確ではないが、こうした政策が政府不信の高まりと相まっ て、有権者の一定の支持を集めたことは否定できない。

 その点で小沢一郎民主党代表の地方重視の選挙戦術は極めて巧妙だった。従来、民主党は中国、四国、九州地方では劣勢だったが、今回の参院選ではこれらの地方でも自民党と互角以上の戦いを展開しており、2大政党化の流れは一段と定着してきたといえよう。

  参院選で有権者は安倍首相に厳しい審判を突きつけた。しかし、参院選で負けたからといって首相が辞めなければならないわけではない。参院選は政権選択の選 挙ではない。安倍首相が辞めても次の首相は自民党内のたらい回しで選ばれるから基本的に何も変わらない。参院選の結果で首相が頻繁に変わることは本来、好 ましいことではない。

 そうは言っても、惨敗した安倍首相の求心力低下は避けられず、続投しても政権運営はかなり苦しくなるのは間違いな い。参院では野党が反対する法案は通らなくなる。野党の主張を丸のみするか、衆院の3分の2の多数で再議決するかの二者択一になるが、再議決を何度も繰り 返すことは容易でない。政局は当面、衆院の多数派と参院の多数派が異なる「ねじれ」によって不安定になることは避けられそうにない。

政局不安で停滞招くな

 政局の動揺を収束させるためには早期に衆院を解散して民意を問い直すことが基本的に望ましい。そこで民主党が第1党多数派になれば政権交代となり、自民党が第1党になれば民主党との大連立か、政界再編によって新たな多数派形成をめざすことになるだろう。

  議院内閣制は衆院の多数派が内閣を組織し、議会の信任を得て安定した政治運営を行う仕組みである。日本のように解散のない参院が衆院とほぼ同じ権能を持っ ていると、衆院と参院の多数派が異なる場合にたちまち政権運営は行き詰まる。これは日本の政治の構造上の欠陥・矛盾である。この機会に参院のあり方を根本 的に見直す議論を高めたい。

 政局不安によって改革の動きを停滞させてはならない。日本経済は回復基調にあるが、国際競争の中で安定成長を続けるには不断の構造改革が不可欠である。財政改革や行政改革の手を緩める暇はない。参院選で示された民意を踏まえて年金制度の信頼性確保も待ったなしである。

 参院で第1党に躍り出た民主党の責任は重大である。民主党は早期の衆院解散を求めてさらに攻勢を強める構えだが、国会で何でも反対の方針をとったり、いたずらに政局を混乱させるような行動はとるべきでない。そのような無責任な態度は有権者の失望を招くだけである。

【日経・春秋】春秋(7/30)

 有権者の審判が下った。安倍晋三首相にとって厳しい結果だが、戦い終えた爽快(そうかい)感もあるはずである。名前の1字を共有する同じ長州出身の幕末の志士、高杉晋作も獄に入ったり、対英交渉の藩代表になったりと起伏の多い生涯だった。

▼ 萩(はぎ)の市街地から松本川を渡った旧松本村の丘の上に晋作の墓がある。やはり早世した師、吉田松陰の墓に右後方から寄り添う。近くにある松陰の生誕地 からは城下と日本海が見える。司馬遼太郎は「世に棲(す)む日日」で松陰を聖者、晋作を天衣無縫な天才に描いた。対照的なふたりに「狂」が共通する点も透 視した。

▼大宅壮一の評論に「権勢と反逆を生む山口県」がある。司馬が書いた狂は大宅の「反逆」に通じる。山口県は松陰門下の伊藤博文ら 「権勢」のひとも輩出した。岸信介もそれに連なる。同時代人の共産党指導者、野坂参三も萩出身だったから、山口県人は2頭立て馬車で権力にむかって進んで いる、と大宅は書く。

▼小泉純一郎前首相は父親が鹿児島県出身だが、反逆者の趣に加え、細面で細い目が松陰に似る。後継者の安倍首相は反 逆の高杉か、権勢の伊藤なのか。岸の孫だから伊藤型とみられ、この結果につながったのか。司馬は高杉を「革命家」とし、「権力に淡泊な男」と評した。素顔 の晋三氏は晋作型に近いと聞くが。


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2007年7月29日 (日)

7月29日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 いよいよ投票日当日となりました。今日はこれからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 どのようなマスコミをわれわれは目撃したのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月29日朝刊)

[参院選投票]国政を方向付ける一票だ

 参院選は二十九日、投開票される。安倍晋三首相は昨年九月に就任したが、今回初めて全国規模の国政選挙で国民の審判を受ける。

 参院選では与党の自民、公明両党が計六十四議席を獲得し、非改選議席と合わせて過半数(百二十二議席)を維持できるかどうかが大きな焦点だ。

 安倍政権は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、与野党が対立する重要法案を次々と成立させてきた。選挙では有権者が「安倍政治」を信任するのかどうかが問われている。

 全国的には年金問題、「政治とカネ」の問題、格差の問題などが大きな争点となった。国民の関心は高いようだ。

 沖縄選挙区では自民党公認で現職の西銘順志郎氏=公明推薦=と、野党統一候補で無所属の元参院議員、糸数慶子氏=社民、社大、共産、民主、国民新党推薦=の二人が立候補し、街頭や集会などで支持を呼び掛けてきた。

 西銘氏は沖縄経済の自立的発展へ向けた産業振興や雇用の拡大、那覇空港整備などを中心に訴えてきた。年金問題については、社会保険庁の解体など抜本的な年金改革の断行、政府・与党が一体となった国民の不安解消―に取り組む姿勢を強調してきた。

 糸数氏は年金や暮らし、平和の問題をはじめ歴史教科書問題、憲法改正問題などを中心に訴えてきた。年金問題では政府の対応を批判するとともに、「年金通帳方式」への切り替えや、厚生年金と共済年金、国民年金の一元化などを主張してきた。

 県内では、普天間飛行場移設を中心とする在日米軍再編問題は看過できない重要なテーマである。両候補がどのような主張を展開してきたのか、あらためて点検する必要がある。

 昨年十一月の県知事選、今年四月の参院補選(沖縄選挙区)で自民、公明が支援する候補が当選し、節目の重要選挙で与党の連勝が続いた。県政を基軸にしてみると、参院選で野党側が連敗を阻止し、巻き返しを図ることができるかどうかも焦点の一つだ。

 争点は年金だけではない。格差や教育、外交・安全保障などについても問われる。憲法改正論議は盛り上がっていないが、今選挙での選出議員は同問題の審議に関与することが確実視されるだけに軽視することはできない。

 報道各社の世論調査では、与党の過半数割れを予測する結果も出ている。今選挙の結果次第では安倍首相の進退問題に発展する可能性もある。

 参院選は極めて重要な意義があり、その結果が国政の今後の行方を大きく左右するのは間違いない。一人一人が熟慮を重ね、貴重な一票を投じたい。

[教科書検定撤回]知事の真意が計りかねる

 文部科学省の高校教科書検定で「集団自決(強制集 団死)」の日本軍関与の記述が削除されたことについて、検定撤回と記述の回復を求める声が高まっている。超党派の県民大会開催に向け、県子ども会育成連絡 協議会などでつくる準備実行委員会が発足、全県規模の参加を呼び掛ける。

 歴史を改ざんする動きに県民が怒りと強い危機感を持っていることの現れだ。県内四十一市町村すべての議会が全会一致で意見書を可決、県議会による二度の意見書可決はそうした県民の思いを反映している。

 それにしては県民の総意を代弁すべき県の対応が見えない。とりわけ、仲井真弘多知事の発言は真意がどこにあるのか、はっきりしない。

 知事は二十七日の定例記者会見で、検定撤回をめぐる現状について「かなりの目的(削除撤回)は達成しつつあるのではないかという感じを持っている」と述べた。

  何を指して「かなりの目的は達成しつつある」と見ているのだろうか。今月四日、安里カツ子副知事ら県内の行政・県議会六団体代表の撤回要求に、文科省の布 村幸彦審議官は「審議会が決めたことに口出しできない」と述べ、困難との姿勢を堅持。伊吹文明文科相は「日程上の都合」を理由に、面談にすら応じなかっ た。

 塩崎恭久官房長官は十一日の県議会での異例の再可決を受けても撤回要求に応じる考えはないことを示した。政府が県民の要望に応じる姿勢は見られない。

  知事が県益のため、政府と良好な関係を保つことは重要だろう。ただ、知事のよって立つところは県民の総意だ。やむなく、県民と政府が対峙した場合の対応も おのずとはっきりしている。実際、知事は六月八日には「個人の率直な気持ち」としながらも「当時の社会状況から考えて軍命はあったと思う」と踏み込んでい る。

 「かなりの目的は達成しつつある」と言うなら、何が達成されつつあるのか、県民への説明が必要である。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月29日 朝刊 1面)

 その人やその物に感じられる気高さや上品さ、品位を「品格」と呼ぶ。腰の疲労骨折で夏巡業の休場届けを出しながら、帰国中のモンゴルでサッカーに興じていた姿が映像で流れた横綱朝青龍。感情をストレートに表現するその態度が以前「品格がない」と問題にされた。

 品格とは何だろう。精神的落ち着き、泰然自若さを指すのだろうか。「品格本」がはやりだ。「女性の品格」(PHP新書)がベストセラーになっている。

 著者の坂東眞理子さんは東京大学卒業後、総理府に入省。埼玉県副知事を経て女性初の総領事、内閣府初代男女共同参画局長も務めた。現在は昭和女子大学学長。

 「ネガティブな言葉を使わない」「姿勢を正しく保つ」など、内容はマナー本に近い。まっとうで、当たり前のことを書き連ねているようにも見えるが、それでも本は売れ続けている。

 「品格のある生き方」の章では「神様や仏様など人間を超越した存在から見て恥ずかしいことをしていないと断言できる行動をするのが、人間の品格の基本です」と書いた。

  不二家やコムスン、ミートホープなど民間企業が当たり前のことを守らず不祥事を起こした。お役所の社会保険庁もガタガタだ。企業やお役所だけでなく、政治 の分野でも「品格」を疑われる発言が続出した。奢らず、他人に迷惑をかけない、正しい行動が求められている。品格本のはやりは、まっとうでない社会の裏返 しだ。(崎浜秀也)


【琉球新報・社説】

参院選投開票 権利行使で豊かな明日を

 第21回参院選は、いよいよきょう29日、投開票が行われる。年金、憲法、教育など多くの争点について国民の審判が下る。全国的な争点に加え、県 民にとっては米軍基地、教科書検定など、身近な問題も山積する。各候補者の公約と人物についていま一度しっかりと見極め、確かな1票を投じたい。
  今選挙には、沖縄選挙区(改選1議席)から前職・西銘順志郎候補=自民公認、公明推薦=と、元職・糸数慶子候補=無所属、社民、社大、共産、民主、国民新 党推薦=の2人が立候補。12日の公示以来、一騎打ちの激しい選挙戦を繰り広げてきた。一方、比例代表(同48議席)には、11政党・政治団体から159 人(県内は4人)が届け出て、選挙区ともども票の獲得にしのぎを削った。
 この間、選挙区の両候補とも詳細で明確な公約を発表、マスコミをはじめ チラシ、ポスターなどを通して、県民に対しその是非を精力的に訴えてきた。さらに、全県下をくまなく遊説、自らの実現したい政策をアピールした。従って有 権者が候補者を判断する材料には恐らく、こと欠かない。後はそれらの公約をどう有権者が判断、投票に結び付けるかだ。
 近年、国レベルにとどまら ず地方でも、各種選挙で投票率の低下に歯止めがかからない。特に、若い人たちの選挙離れが指摘されて久しい。いわゆる無党派層とか無関心層と呼ばれる人た ちだ。無党派の人たちには「投票しても何も変わらない」という意識が強いという。逆に考えれば彼らに「変えたい」という気持ちはあるのだろう。ならば、生 活や暮らしを良くするためにも一歩踏み出してほしい。言えるのは「投票しなければ何も変わらない」ということだ。
 むろん、無党派層も含めて無関 心層がこれだけ増えたことは、彼らだけに責任を押し付けるわけにはいかない。政治家の相次ぐ不祥事は、若者をして政治離れを引き起こすのに十分な要素だろ う。加えて年金問題などに見られるように、政治家が指導しなければならない官僚の無責任さも重大だ。しかも同じことがいくら選挙を経ても、繰り返されてや むことがない。
 これでは、有権者の間で政治離れ、選挙離れが進むのも分からないでもない。しかし、ちょっと待ってほしい。わたしたちの生活や暮らしを守るために、あるいは良くするために、選挙で投票するという行動以上に有効な手だてはあるだろうか。
 幸い、本紙が実施した世論調査によると、今回の選挙には県内有権者の8割強が関心を示している。国政レベルの問題だけでなく、県内の懸案事項も念頭に置いて、ぜひ投票所に足を運んでほしい。

(7/29 10:33)

増える心の病 周囲の気配りが肝要だ

 現代病とも言われるうつ病など、心の病に悩む人が増えている。県立総合精神保健福祉センターが設置している「こころの電話相談」に、2006年には過去最多の1299件の相談があった。5年前に比べ、約2・5倍に増えているという。
  また、同センターによると、1989年から2005年までに精神科や心療内科への通院者は約3倍に増えた。これからすると、相談もできない潜在的な悩みを 持つ人が、まだまだ数多くいることが予想される。ほっておくと、自らの命をも奪う病だけに対策は急務だ。本人の自覚はむろん、何より周囲の気配りが重要だ ろう。
 電話相談で増えているのはそのほか、若年層のリストカット(手首を切る自傷行為)や職場のパワーハラスメント、ギャンブル依存症など。心の病に関してが最も多く466件、次いで人間関係164件、酒やギャンブルなどの依存問題が113件などと続く。
  価値観が多様化し、地域や職場での人間関係がより複雑化しつつあるのが現代。心の病は、そのすきを突く。肉体的な疾病とは違って、なかなか病院の扉もたた きずらい。センターによると「うつ病のデイケアを受けたいが勇気がない」などの相談が増えているという。そうして、ますます一人閉じこもるようになり病を 悪化させる。
 こう見てくると、この病には周囲の気配りがいかに大切か、よく分かる。病気への理解はもちろんだが、例えば過重労働の解消や職場環 境、人間関係の改善が必要だ。これは、本人の努力だけではなかなか解決は難しい。早期の発見や治療には、周りの人が手を差し伸べることが肝要だ。
  気になるのは、うつと自殺の関係。全国では減っているにもかかわらず、06年の県内の自殺は前年の24・0人から27・3人に増えた(人口10万人当た り)。センターでは「沖縄ではうつ病が慢性化すると失業し、自殺に追い込まれるケースが多い」と分析する。うつは「風邪と一緒」では決してない。より深刻 な病ということを、まず認識すべきだ。

(7/29 10:32)

【琉球新報・金口木舌】

 沖縄の人の顔は彫りが浅い。高校時代の同級生からそう聞いて一瞬、意表を突かれた
▼その友人は人の顔の骨格を研究、全国各地で顔の面積に対する鼻の高さなどのデータを集めた上での結論、と話していた
▼意外な話だが、研究者の間では知られた話のようだ。形質人類学の土肥直美さんも「(琉球=沖縄の人は)骨で見る限り非常に平坦な顔立ちという結果になる」と話している(共著『沖縄人はどこから来たか』)。沖縄の人とアイヌの人の近縁説も見直しが必要とのこと
▼従来、日本人は南方系の縄文人と大陸から渡ってきた渡来人の混血という説が一般的だった。1万8千年前の港川人は縄文人の直接の祖先とみられてきた。だが港川人と貝塚時代には1万年以上の空白があり、近年は港川人絶滅論も唱えられている
▼さらに10―12世紀のグスク時代、沖縄の人口は爆発的に増え、顔の特徴も変わる。本土から大量の流入があったという説が有力になりつつある
▼最近の調査では、浦添ようどれの英祖王一族の骨から中国南部のDNAを持つ人も見つかったそうだ(上里隆史著『目からウロコの琉球・沖縄史』)。次から次に新事実が明らかになる起源論の研究から目が離せない。

(7/29 10:30)


【東京新聞・社説】


参院選きょう審判 投票して歴史を刻もう

2007年7月29日

 参院選はきょう投開票される。安倍政治を“信任”するのか、それとも「ノー」を突きつけるのか。有権者が審判を下す時がきた。一人一人が思いを込めた一票を。

 逆風が伝えられる安倍晋三首相は「負けるわけにはいかない」と絶叫した。小沢一郎・民主党代表は「与野党逆転できなければ、日本に政権交代はありえない」と政界引退をかけ戦った。

 緊張感ある選挙戦だった。年金や「政治とカネ」、憲法など判断材料もある。いよいよ有権者の出番だ。
問われる「安倍政治」

 参院選は安倍政権ができて初めての全国規模の国政選挙だ。この十カ月の安倍政治はよかったのか、悪かったのかが問われる。

 首相は自民党の悲願だった教育基本法の改正や防衛庁の省昇格を実現した。続いて、先の通常国会で改憲の手続きや役人の天下り規制を定めた法律を次々と成立させた。首相の掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」を形にしたものとされる。

 首相は参院選でこうした「実績」をひっさげて、改憲をはじめ安倍色の強い政策で勝負するはずだった。信任を得て、実現へ弾みをつけたいと考えたのだろう。

 ところが、選挙前に火のついた“消えた年金”記録問題で、風向きが変わった。火消しに追われ「改憲を主要争点に」とはいかなかった。

 それでも首相は三年後の改憲発議を目指そうとしている。参院議員の任期は六年あるから、この選挙で選ばれる人たちは改憲作業に手を染める可能性がある。共産、社民両党は改憲阻止を前面に掲げて支持を訴えた。

 米国向けの弾道ミサイルを撃ち落とすことを可能にするような、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更も、首相の肝いりで議論されている。安倍政治を考える時、憲法は忘れてはならない課題だ。
政権選択の意味合いも

 最大の争点になった「年金」も有権者の関心は記録漏れにとどまらない。政府が選挙期間中、第三者委員会で二十三人の年金記録を回復し、給付を決めても、国民から「選挙目当てでは」と疑う声が漏れる。

 争点は「百年安心」をうたった政府の年金制度を信じるか、民主党などの抜本改革案に乗るか。議論が深まったとはいえないが、各党の公約を読み比べて投票したい。

 「政治とカネ」の問題も見逃せない。閣僚の不透明な事務所費問題は後を絶たず、投票日直前まで赤城徳彦農相から政治活動費の二重計上という新たな問題が出てくる始末だ。

 ほかにも教育や農業、消費税が議論になった。いずれも生活に直結する。すべてをひっくるめて安倍政治への判断が求められる。

 選挙戦終盤になって、自民党の劣勢が伝えられると、首相周辺から「参院選は政権選択の選挙ではない」との大合唱が起こった。参院選で負けても、首相は辞める必要ないと予防線を張ったものだ。

 確かに参院は首相指名選挙のある衆院と違い、与野党が逆転しても直ちに政権交代につながらない。だが、首相は「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」と言っていた。首相の言葉は重い。当然、進退が問われよう。

  野党が参院で主導権を握れば、衆院の優位が認められているとはいえ、政府提出の法案は通りにくくなり、政権運営は難しくなる。早期の衆院解散・総選挙や政 界再編につながる可能性もあり、民主党は政権交代への足がかりをつかむ。「政権選択」の意味合いもある選挙だと確認しておきたい。

 政治学者の間では、今回の参院選は「クリティカル・エレクション(決定的選挙)」になるかもしれないといわれている。米大統領選で三、四十年に一度起こり、政党の支持基盤が入れ替わるなど政治の流れを大きく変える選挙をいう。

 地方の疲弊が大きな影を落としている。九州地方のある選挙区では、自民党候補が街頭演説で地元への公共事業の誘致を訴えていた。小泉政権からの公共事業削減などで地方経済は冷え込み、改革継続を叫ぶ首相との矛盾など気にしていられない。

 そうした地方の窮状を小沢氏が突き、農業政策などで揺さぶった。自民党の金城湯池だった「一人区」の苦戦はこうした影響もある。「自民は地方、民主は都市」とされてきた支持基盤が崩れ、地殻変動を起こす可能性をはらむ選挙となっている。

 十二年に一度、統一地方選と参院選が同じ年に行われる「亥年(いどし)の選挙」だ。政党や支持団体が地方選疲れで動きが鈍り、参院選は低い投票率になる傾向がある。
よく吟味して「二票」を

 しかし、今回は様子が違う。世論調査で七割が「必ず投票する」と答え、期日前投票は一千万票に乗る勢いだ。無党派層の関心も高い。

 参院選では有権者一人一人が選挙区と比例代表の計二票を持つ。比例代表は政党名を書いても候補者名を書いてもいい。各党の政策と政治姿勢をよく吟味しよう。そして、私たちの「二票」で歴史を刻もう。

【東京新聞・筆洗】2007年7月29日

 映画評論家の佐藤忠男さんはカザフスタンの映画で 「これは『七人の侍』の三十六回目のリメークである」という冗談の字幕の出る作品を見たことがあると著書に記している。黒沢明監督の一九五四年の作品『七 人の侍』はそれほど世界の映画に大きな影響を与えたのだろう▼戦国時代、農民は野武士の集団による強奪に苦しんでいたが、自分たちに戦う術(すべ)がな い。ある村が浪人中の侍を雇うことを決意する。長老は「腹の減っている侍を探せ」と指示するが、弱くては意味がない▼村の代表が旅に出て、苦労の末に窮状 を救おうという強い侍を探しだす。侍に米を食べさせるため、自分たちはひもじい思いもするが、竹やりを手に一緒に戦うことで野武士の撃滅に成功した▼ラス トでは農民が笛や太鼓を楽しみながら、生き生きと田植えを始める。遠くで見つめる生き残った三人の侍。戦いに勝ったのは侍ではなく、農民である。これが黒 沢監督のメッセージになる▼共感したのか、作家の塩野七生さんがかつて、「農民は有権者、七人の侍は政治家」と考えてみてはと提案している。有権者が政治 家を過大評価していると、失望して政治不信に陥ってしまう。政治家との関係は困ったときにその都度雇い、用済みとなればお払い箱にする関係で十分という意 味に解釈できる▼今日は参議院選挙の投票日。米ではなく一票により、侍を雇う日になる。映画のような侍が見当たらないと嘆いたとしても、現実には誰かが代 わりに侍を雇ってしまう。農民が人任せでは自分の村を守れない。


【河北新報・社説】

07参院選を問う 今日投票/選択肢ははっきりしている

 暮らしや国の針路をめぐって有権者に重い問いかけをしてきた参院選が投票日を迎えた。
 与党が非改選を含め議席の過半数を維持できるかどうかが最大の焦点だ。言い換えれば、与党が主張する「政治の安定」と野党が戦略的に目指す「政治の緊張」のいずれを選択するかが問われる政治決戦である。

 「いざなぎ」を抜く戦後最長とされる景気の拡大局面を広げ、個人の消費や所得、家計にまで波及させなければならない。
 過半数の議席獲得が約束する政治の安定はそのために不可欠だと、与党は訴え続けてきた。

 正規社員と非正規社員、大都市と地方、そして新たに生み出される貧困…。政治の安定は、好景気の中の二極分化がもたらしたさまざまな格差を是正するためにも必要だと言う。
 安倍晋三首相は「上げ潮路線」と呼ばれる経済成長戦略を軌道に乗せ、その延長上に、憲法改正や教育再生などを柱とする「戦後レジーム(枠組み)からの脱却」や「主張する外交」の実績を重ねたいところだ。

 与党の過半数割れによる政治の不安定化は、安倍首相が政治・経済の将来像としてもうたう「美しい国」の輪郭を不鮮明にしてしまうことでしかない。
 与党とりわけ自民党のこうしたスタンスは、どこまで有権者の心をとらえただろうか。

 一方、民主党など野党が思い描くのは、参院運営の摩擦係数を一気に高めつつ衆院解散に追い込み、その総選挙で野党が過半数を制して政権交代への道を切り開くという基本戦略だ。
 参院の与党過半数割れに伴う政治の緊張はこうした戦略の実現に不可欠だと訴えてきた。

 参院の与野党逆転は「国対政治」がまかり通っていた1980年代から90年代にかけて例がある。しかし、融通無碍(むげ)な与野党妥協路線の中では野党が首相を窮地に追い込むことなどまれだった。
 「いずれが政権を担うのか」が問われる自民、民主の二大政党化時代での参院の与野党逆転は初めてだ。国対政治は通用しない。初の首相問責決議案可決の可能性さえ出てこよう。

 戦後政治史上まれに見る緊迫した与野党対決の局面では、与野党間調整よりも、民主党を中心とする各野党間の路線協議や政策連携の在り方がより鋭く問われることになるだろう。

 年金の記録不備問題や制度改革、「政治とカネ」の問題、格差、憲法、教育、農政、地方の再生と分権…。各党と各党候補者は選挙期間中、それぞれの立場と公約を示しながら、有権者に支持を呼び掛けてきた。
 党や候補者の訴えに触れる―自分の生活や仕事に照らし合わせる―誰(どの党)を支持するか決める。これが有権者が投票行動を決める際の基本動作だ。

 しかし今回はそれに加え、もう一つの作業が私たちに必要ではないか。一つ一つの争点や課題をじっくりとかみ砕き、それを1枚のモザイク画のように集めて「日本はどこに向かったらいいのか」という自分なりの設計図を心の中に描くことだ。
 私たちの1票はだから重い。
2007年07月29日日曜日

【河北新報・河北春秋】

 中国産の冷凍ホウレンソウから基準を超える残留農薬が検出され、問題となったのは5年前のこと。日本は輸入禁止などの措置を取った。中国が日本か らのコメ輸入を禁じたのはその翌年▼カツオブシムシという害虫が見つかったためだという。中国の意趣返しと受け止めた農業関係者は当時、苦笑いしていた。 もともと輸出量自体がわずかで、禁輸処分などどこ吹く風だった

 ▼4年ぶりに日本のコメ輸入が解禁され、北京と上海のデパートで売り出さ れた。あっと驚いたのはその価格だ。宮城産ひとめぼれが60キロ9万円。それでも初日から売れている。これまた驚きだ▼好調な売れ行きの背景の一つは中国 の広範な土壌汚染と言われる。工場廃水などによる重金属の汚染がひどい。農地の1割が汚染されているというのが政府の発表だ。実態はそれを相当上回るだろ う

 ▼従って富裕層を中心に食への危機感は強まる一方。子供に安全な食べ物を与えたいのは当然の心理で、日本の粉ミルクやベビーフードも よく売れる。日本の農産物や食品への潜在的な需要は大きい▼中国が日本のコメの有望な市場になり得るとは、以前ならとても想像できなかったことだ。安全な 食の提供という日本農業の基本スタンスがここに来て生きてきた。さあ、この好機、どう攻めるか。

2007年07月29日日曜日


【京都新聞・社説】

きょう投票  国の針路決める選挙だ

第二十一回参院選は、きょう二十九日が投票日だ。
 与野党どちらが過半数を獲得するか。今後の国政の方向や国のあり方にかかわる重要な選挙といえよう。
 各政党や候補者の政策、訴えをいま一度吟味し、将来を託す大事な一票を投じたい。
 有権者の関心が最も高かったのは「年金」だった。記録不備の問題だけでなく、年金制度をどう再構築するのか、財源はどのように確保するのか。各党が提示した政策を見きわめて判断したい。
 それだけではない。地域格差や住民の負担増、中小企業の活性化…。暮らしの足元の問題が選挙を通じて浮かび上がったが、与野党の論戦は十分深まったといえるかどうか。
 昨年九月に誕生した安倍晋三政権にとって初めての大きな国政選挙だ。安倍政権の十カ月が問われる選挙でもある。
 「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、改正教育基本法や国民投票法など、国の根幹にかかわる重要法を成立させた。
 だが、憲法問題が、選挙中に熱く論じられることはあまりなかった。
 自民党は選挙公約で「三年後の憲法改正の発議」を明記していただけに、野党との活発な本音の議論が聞けなかったのは残念だ。
 「政治とカネ」の問題や閣僚の失言も含め、安倍政権の政策や政治手法を総点検し、慎重に評価したい。
 参院選は、衆院選のように政権選択の選挙ではないとされるが、しばしば政権を揺さぶる。とくに一九八九年以降は政権交代や政界再編の引き金になったこともあった。
 今選挙も結果次第では政局に発展する可能性もあり得る。
 その行方を占う鍵の一つが投票率だ。過去二回の参院選では投票率が全国平均で選挙区、比例代表とも56%台にとどまっている。
 京都は、二〇〇四年の選挙区が54・60%で、滋賀は58・0%だった。
 今年のように統一地方選と同じ年にある参院選は、極端に投票率が下がる傾向がある。今回はどうか。
 共同通信社の全国世論調査では、81・9%の人が「選挙に関心がある」と答えている。参院選としては過去最高の高さだ。前回〇四年の参院選と比べ、10ポイント以上も上昇した。
 全国の投票率が67・5%に跳ね上がった二年前の「郵政総選挙」の調査(88・0%)にほぼ匹敵する高さだ。
 期日前投票も好調だった。二十七日までの集計では、全国平均で前回の一・五三倍の大幅増となった。京都では一・五倍で、滋賀も一・五六倍だった。投票率アップに期待を抱かせる。
 いうまでもなく、国の針路を決めるのは有権者だ。その意識と一票の重みを大切に投票所に足を運びたい。

[京都新聞 2007年07月29日掲載]

高齢者の安全  日常生活の中の「死角」

 新潟県中越沖地震の犠牲者は多くが七十歳以上のお年 寄りだった。古い木造住宅の下敷きになった人が大半で、耐震性に問題があった。地震が起きたとき、自分は大丈夫か、不安に思ったお年寄りは多いだろう。高 齢化が進む中、お年寄りの安心・安全をどう確保するのか。社会全体が問われている。
 不安は災害だけではない。日常生活の中にも”死角“がひそん でいることが、国土交通省国土技術政策総合研究所の調査でわかった。街路や商業施設など公共の場での転倒、転落死は、二十年後には年間五千人以上になると 予測する。二〇〇四年の倍近い数字で、うち96%は六十五歳以上のお年寄りである。同研究所では今後、公共の場での安全対策が課題になると結論づけてい る。
 火災の犠牲者も高齢者が急速に増えている。消防庁によると、全国で昨年、住宅火災で亡くなった約千二百人のうち、六割近くが六十五歳以上だった。京都市でも死者二十一人中、十五人が高齢者で、過去最高になった。
 原因は暖房器具やたばこの消し忘れが多く、逃げ遅れのケースが目立つ。消防関係だけではなく、福祉行政担当者も協力して高齢者世帯への巡回訪問などを強化する必要があるし、住宅用火災警報機の設置も急がねばならない。
  交通事故死も同じような傾向を示す。警察庁によると、昨年一年間の全国の交通事故死者数(六千三百五十二人)のうち、六十五歳以上は44%もあった。京都 府は36%、滋賀県は41%と全国平均を下回ったが、それでも両府県とも高齢の事故死者は四十人以上となった。多いのは歩行中だった。身のこなし方が遅 かったり、とっさの判断力が低下したことなどで、お年寄りが犠牲となるケースが増えている。歩行マナーの再学習や安全運転の技術向上などが欠かせない。
  厚生労働省が公表した二〇〇七年版「高齢社会白書」では、昨秋で日本の六十五歳以上の高齢者人口は過去最高の二千六百六十万人となり、総人口に占める割合 (高齢化率)は20・8%にのぼった。五年後には三千万人を突破し、二〇五五年には国民の二・五人に一人は高齢者という、前例のない高齢社会が現出するこ とになる。労働力や社会保障などに目が向けられがちだが、何をおいてもお年寄りの安全対策を考えなくてはなるまい。
 国は厚生労働省を中心に、地域では自治体を中心に消防、警察、住宅、街路担当なども交えて、高齢者に的を絞った総合的な安全対策を進めねばならないと思う。横断的な組織を作り、現実にどんな危険や被害が想定されるのかを調査する必要がある。
 個別の施策だけではなく、高齢者の命を守る施策大綱的なものも必要になってくるのかもしれない。早期の取り組みによって、高齢者の災禍を着実に防止する責務が社会にある。

[京都新聞 2007年07月29日掲載]

【京都新聞・凡語】

参院選

 「予想」するという行為は難しい。「いかがわしさ」も少々つきまとう。選挙予想や天気 予報も例外でない。時には、まゆにつばをつける必要がある▼きょうは参院選の投開票日。舌戦が終わったといっても、候補者にとって頭痛のたねが残る。投票 日の空模様である。天気が有権者の投票行動を左右するからだ。刻々と変わる雲行きと移り気な有権者の心。この二つを予想しなければならない。イライラが募 るのも無理はない▼投票日が晴れると行楽に出かけ、雨なら家に閉じこもりがちとなる。投票率が高まるのは曇りというのが選挙通の見立て。だが、今回は統一 地方選と参院選が重なり、投票率が下がるという「亥年ジンクス」が絡み、予想がつかない▼投票率の鍵を握るのが無党派層だ。しかしこの無党派層の予想が一 番難しい。ある時には強力な味方になってくれるが意に沿わなければそっぽをむく。付き合い方は雲をつかむより難しい▼今回の参院選は厳しい逆風が吹く中、 与党が過半数を守りきれるかが最大の焦点だ。天気予報では、京滋のきょうの空模様は「曇り、午後は雨で雷を伴う」という。勝利の女神は、与野党のどちらに ほほえむ?▼とはいっても、予想はあくまで予想である。外れることもよくある。「予想」を後ろから読めば「うそよ」になる。選挙は投票箱のふたが閉まるま で分からない。

[京都新聞 2007年07月29日掲載]


【朝日・社説】2007年07月29日(日曜日)付

若者たちへ―その1票に未来がかかる

 国会に用意された121の議席。そこに、どんな政治家を送り込むのか。

 参院選の投票日がやってきた。

 夏休みのまっただ中に投票日がずれ込み、投票率が下がるのではないかと一時は心配された。でも、選挙戦が始まると、有権者の関心は高かった。期日前投票にもたくさんの人が足を運んだ。

 とはいえ、気がかりなのは、若い人たちだ。

 残念ながら、若者の投票率はいつも総じて低い。総務省の抽出調査を見ても、前回の参院選で60代後半の投票率が75%を超えたのに対し、20代前半は32%、20代後半でも37%にとどまった。

 遊びの予定や用事もあるだろう。わざわざ投票所へ出向いても、結果は変わらない。そんな思いがあるかもしれない。

 だが、選挙の結果は間違いなく、これからの暮らしに跳ね返ってくる。

 投票の意味を見いだせないという若者には、二つの視点から考えてほしい。

 一つは、世の中に広がる格差社会の波を、若い世代こそが大きくかぶっているということだ。

 規制緩和が進んだこの10年で、働く現場はすっかり変わった。かつては専門的な分野に限られていた派遣の仕事が、一気に広がった。正社員が減った代わりにパートや派遣の人たちが増えた。

 とりわけ、学校を卒業したときに不況だった20~30代には、正社員の職を得られなかった人が少なくない。景気が回復したいまも、正社員に転じることはむずかしい。

 なかでも厳しいのは、フリーターだ。多くは、技術が身につくような仕事ではなく、食べるのもやっとだ。

 こんな現状を変えたいと思うなら、声を上げることだ。仲間同士で愚痴を言い合っても、世の中は動かせない。

 集会などには参加しにくくても、投票はできるはずだ。将来を見通しながら働ける世の中に、どの政党や政治家なら変えてくれるのか。それを見極めて投票することが現状を変えることにつながる。

 二つ目は年金問題だ。

 「年金が争点では、選挙への興味がわかない」「そもそも金がなくて、保険料も払っていない」。そんな声が若い世代から聞こえてくる。

 だが、蓄えを持ちにくい世代だからこそ、年金はいずれ切実な問題となる。

 収入が少なくて保険料を払えない若い人たちがいるなら、どんな工夫が必要なのか。その手立てを考えてくれそうな政治家を探してはどうか。

 これまで政党や政治家の目は、若い世代を素通りしがちだった。その責任は若者にもある。数が少ない上に、投票率が低ければ、政治家の目に「票にならない人たち」と映ってもしかたない。

 自分たちの抱えている問題を後回しにさせないためには、若者たちの存在を示すしかない。それにはまず、投票所に足を運ぶことだ。

紛争後の支援―「平和構築隊」をつくろう

 早稲田大学大学院で国際関係論を学ぶ井上浩子さんは、国連ボランティアとして、先月の東ティモール総選挙で現地の支援活動に参加した。

 インドネシアからの独立闘争を経て02年に建国された東ティモールには、いまも国連平和維持活動(PKO)が展開する。独り立ちに向けての大事なステップである選挙に、国連の主導で約380人のボランティアが派遣された。

 競争率10倍の難関を突破して、日本からも9人が参加した。うち5人は修士号を持ち、地元のテトゥン語、ポルトガル語を話せる人もいる。「選挙支援を通じて、民主的な国づくりに取り組んでいるという実感が持てた」。現地で会った井上さんは日焼けした顔をほころばせた。

 選挙支援をはじめ、司法制度づくり、元兵士の武装解除、警察や軍の改革などの仕事は「平和構築」と呼ばれる。紛争解決の段階から復興が軌道に乗るまで対象国の国づくりを支え、紛争へ逆戻りしないようにするのだ。

 人口約100万の東ティモールは、この平和構築に一度つまずいた。独立を果たしたものの、国軍と警察の対立をきっかけに昨年5月、大規模な騒乱が起こり、国連はいったん任務を終えたPKOを再派遣せざるをえなくなった。

 PKOと言えば、日本では自衛隊派遣に目が向きがちだ。だが近年は、治安回復と平和の定着を非軍事面で担う文民の専門家へのニーズが高まっている。

 東ティモールでも、総選挙を踏まえて新政権ができれば、警察官や法律家、行政官などの人材育成が急務となる。議会政治を機能させるために政治家同士の対話を促したり、法律や司法制度を整えたりする必要もある。

 こうした平和構築の分野で日本はもっと存在感を発揮すべきだ。開発支援ではすでに実績を積んでいるが、平和構築で要請に応えられる人材の層は薄い。東ティモールはアジアなのに欧州からの派遣要員が目立ち、日本人の専門家は国連ボランティアを含め、十数人しかいない。

 最近、広島大学が平和構築のための人材育成センターを発足させた。日本とアジアから計30人の若者が参加し、9月から1カ月余りの座学の後、東ティモールなどで約5カ月間、研修する予定だ。

 まだ短期間のプログラムだが、一歩前進だ。卒業した若者が確実にこの分野の仕事につけるよう、外務省などが支援してほしい。

 旧ユーゴやアフリカなど、国際社会による紛争後支援が長期化する傾向は強まっている。欧米諸国は平和構築の人材育成と登録に力を入れ始めている。

 政府もそんな前例を参考に、文民の専門家を登録し、必要に応じて迅速に派遣できる「平和構築隊」を構想すべきだ。私たちは、ここにこそ日本が果たすべき大きな役割があると考える。

 平和構築を通じて、平和国家・日本の新しい姿を示していきたい。

【朝日・天声人語】2007年07月29日(日曜日)付

 効き目のほどは知らないが、落雷を避ける呪文を「くわばら、くわばら」と言う。由来は諸説あって、菅原道真の領地だった桑原には雷が落ちなかったから、などと伝わっている。

 「気象庁」を三度唱えるまじないも、昔あった。夏場、生ものを食べる前に唱えると「食あたりしない」と言われた。天気予報が「当たらない」ことに掛けた、きつい冗談だった。

 いまは随分正確になったが、外れることもある。「8月は猛暑」としていた長期予報を、先ごろ「平年並み」に修正した。夏の主役の太平洋高気圧が勢いに欠けるためらしい。梅雨明けも早いはずだったのに、東日本では明けないままに8月も近い。

 短期の予報では、「降水」が当たり外れの基準になる。近年の的中率は、翌日の天気の予報だと8割を超えている。だが気象庁によれば、人々の満足度は数字通りにはいかないらしい。

 明日が遠足の子、慈雨を待つ農家……日々、だれもが、それぞれの「好天」を望んでいる。予報が外れて、前夜の期待感が、朝には落胆に変わる。やり場のない悔しさを味わったことのない人はまれだろう。かくて2割弱の不首尾は、数字以上に人々の不評を買うことになる。

  きょうは参院選投票日である。投票率への影響をにらみつつ、それぞれの候補者の望む「好天」がある。ゆうべの天気予報を見て「当たり」を願った人も、「外 れ」を祈った人もいただろう。明けての結果はさておいて、一有権者としては、晴雨に左右されない投票で「天下分け目」に参加したい。


【毎日・社説】

社説:温暖化技術協力 京都後につながる成果示せ

 日本、米国、オーストラリア、中国、インド、韓国の6カ国で構成する「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)」が、 プロジェクトを具体化する金融支援の検討に入った。行動計画に盛り込まれるプロジェクトを実施した場合の省エネルギー効果や二酸化炭素削減効果の算出も始 めた。

 地球温暖化対策を巡っては、国連の気候変動枠組み条約に基づいた京都議定書が国際的な行動の柱になっている。ただ、京都議定書体 制の難点は最初から中国、インドなど途上国が削減義務を負っていない上、米国やオーストラリアが批准しなかったことだ。これらの国も、枠組み条約は批准し ており、温暖化対策の実施の必要性は認めている。

 京都議定書の対象期間は08年から12年までだ。今年の主要国首脳会議(ハイリゲンダ ム・サミット)では50年までに温室効果ガスの半減を検討することが合意された。その実現には、13年以降、世界最大の排出国である米国や第2位の中国、 第5位のインドを含む枠組みが不可欠だ。APPは主に技術面からクリーンエネルギー開発や温暖化防止に貢献することが狙いだ。日本を除き京都議定書の枠外 の国であるところが特徴だ。6カ国で世界全体の二酸化炭素排出量の約半分を占めている。

 京都議定書後については、現在、削減義務を負っていない国をどう取り込んでいくのか、京都議定書の国別目標を踏襲するのか、別の目標を設定するのかなど、難問が横たわっている。

 では、APPはこの課題にどのように貢献できるのだろうか。

  第一は、先端技術も含めた協力関係を進めることで、省エネや二酸化炭素排出削減への寄与が期待できることだ。日本が議長を務めている鉄鋼タスクフォースで は、先端の省エネ技術を各国が採用した場合、6カ国合計で二酸化炭素排出を年間1億2700万トン削減できると試算している。これは日本の1年間の二酸化 炭素排出量の1割近くに匹敵する。

 セメントや発電、アルミなどでも各種のプロジェクトが計画されており、これらが成果を上げれば削減可能性は大幅に高まる。

 第二は、こうした産業ごとのアプローチを推進していくことで、各国が国全体の二酸化炭素削減量の把握をしやすくなることだ。ひいては、国としての削減目標も立てやすくなる。

  中国、インドも米国と同様に13年以降も国別の削減目標設定に反対だ。しかし、APPによる技術協力が効果を上げれば、経済発展段階を考慮した柔軟な目標 の受け入れも可能になるだろう。エネルギーが成長を制約していることは両国とも認識している。エネルギー消費を増やすことなく経済成長できることは望まし いからだ。

 APPは京都議定書を補完する取り組みと位置付けられている。それならば、なおさら、京都議定書後の枠組みを円滑に動き出させるための、技術的成果を出していくことが求められている。

毎日新聞 2007年7月29日 東京朝刊

社説:’07参院選 きょう投票 緊張感増す選挙の重い一票

 参院選はきょう29日投開票され る。昨年9月に発足した安倍晋三政権には初の本格的国政選挙だけに、「安倍政治」が問われるのは当然だ。第2院の参院だが、政党化も進み、参院選は次期総 選挙までの中間選挙と位置づけられてきた。しかし、今回は新たな対立構図も浮き彫りになっている。

 自民、民主両党を柱とする2大政党化 が進み、政権選択が一大テーマになった。民主党の小沢一郎代表が「今回は与野党逆転をはかれる最後のチャンス」と仕掛けた。安倍首相も当初は、「私と小沢 さん、どっちが首相にふさわしいか問うことになる」と応酬した。だが、「安倍退陣」を招きかねないとの懸念が広がり、政府、与党内での政権選択論は急速に 後退した。

 前国会での論点、年金制度や格差問題も争点として浮上した。毎日新聞の直近の調査では有権者の関心は年金が1番だが、次いで格差、「政治とカネ」が続いた。

 記録漏れ問題で最大の争点になった年金制度では、基礎年金部分の財源は保険料プラス税金の与党案に対し、民主党は制度を一本化し、基礎年金部分は税金でまかなう案をマニフェストに盛り込んだ。財源では互いにあいまいさが残るが、政策論争は評価したい。

  安倍首相は「構造改革」の推進を約束、失業率の低下など経済成長の実績を強調した。「景気回復の明るい兆しを地方に、地域に拡大したい」と、地域間格差の 解消策を訴えた。さらに、民主党の解消策を「彼らは経済成長、景気回復策を一言もいっていない」と、財源が不明確と指弾した。

 一方、小沢代表は過疎地が多い「1人区」を早くから重視し、選挙行脚を続けた。大半は自民党の金城湯池だった。「自民党の多数を許せば、国民一人一人の生活よりも、トータルとしての国家、効率だけを求める政治が続く」と、格差をテコに切り込もうとした。

  公明党は「未来に責任を持つ政治」と連立与党の立場を一段と鮮明にした。対する共産党は「『たしかな野党』として、くらしと平和をまもりぬきます」、社民 党は「9条と年金があぶない」、国民新党は「日本を変えよう!」、新党日本は「おかしいことは、変えていこう」を、メーンスローガンにそれぞれ論陣を張っ た。

 民主党は参院で与野党逆転を図り、衆院を早期解散に追い込み、政権交代を目指す構えだ。一方、与党は「政治が混乱した90年代に戻っては、経済は低迷してしまう」(安倍首相)と、政権の安定が経済復調のカギと力説した。

  衆院に小選挙区比例代表制が導入されて以来、紆余(うよ)曲折はあったものの、2大政党化は進んだ。政権の安定か、政権交代への道筋作りかは、今後しばら くは、国政選挙では一大テーマになるだろう。それに飽き足らない有権者には独自路線の選択もある。緊張感を増す参院選に、有権者はこぞって参加しよう。

毎日新聞 2007年7月29日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「だあれが風を見たでしょう」という童謡がある…

 「だあれが風を見たでしょう」という 童謡がある。「ぼくもあなたも見やしない」と続くように風の正体はどこにも見えない。台風の目のようなものもあるが、風がそもそもどこから吹き始めている のかその起点はわからない▲気象学にはバタフライ効果という言葉がある。「ブラジルで一匹のチョウがはばたくと、米国テキサスで大竜巻が起こる」とよくい われる波及理論だ。カオス(混とん)の中で、初期条件のわずかな差が時間とともに拡大し、結果に大きな違いをもたらすことを表している▲多様で複雑な要素 がからみあって風の流れは変わる。政治の世界でそれを操るのに小泉純一郎前首相は天才的だった。そのあとを受け、順風満帆に走り出したはずの安倍政権はい ま、逆風にさらされている。閣僚の失言やカネをめぐる醜態でお粗末な内閣の姿が明らかになり、足元が揺さぶられている▲きょうは参院選の投票日。その安倍 政権は国民から初の審判を受ける。第1回参院選から60年、統一地方選と重なる「選挙の年」の今回は期せずして「天下分け目」の様相を呈してきた。その結 果次第では、衆院解散から政界再編につながるとの見方も広がっている▲今回の最大の争点は「年金」とされ、政権の危機管理や問題解決の能力が問われてい る。だが、新しく選ばれる参院議員は任期6年のうちに憲法改正に直接かかわる可能性もある。外交、教育、地域再生をめぐる大所高所からの冷静な国民の判断 が求められる▲社会もシステムも臨界状態になるほど小さな羽ばたきが大きな威力を発揮する。特に政治の世界ではそうだ。バタフライ効果を自覚して投票する 人が増えると、社会は変わる。どんな風が巻き起こるのか、しかと目を凝らしたい。

毎日新聞 2007年7月29日 東京朝刊


【読売・社説】

参院選投票日 日本の将来見すえた選択を(7月29日付・読売社説)

 第21回参院選は、きょう29日、投票日を迎えた。

 我が国は、内外ともに大きな変化の渦中にある。激動する世界で確かな地歩を占めるため、国力をどう維持・発展させていくのか。少子高齢化、人口減社会にあって国民生活の安定をどう図るのか。

 国家運営の基本方針の策定や国民生活にかかわる難問の解決に挑む、「国民の代表者」としてふさわしい人物を選び出さなければならない。責任ある選挙公約を掲げている政党はどこか。もう一度、公約の中身を吟味したい。

 安倍首相は、中韓両国との関係改善や、教育の憲法とも言われてきた教育基本法の制定以来初めての改正、憲法改正手続きを定めた国民投票法の成立などの実績を訴えた。これらをどう評価するかも、一つの判断材料だろう。

 選挙後は、結果のいかんを問わず、与野党ともに、重要な政策課題に取り組まなければならないことになる。

 経済の安定成長のための基盤構築、巨額の長期債務を抱える財政の再建、年金や医療、介護など社会保障システムの再構築、それを支えるための消費税率引き上げを含む税制改革、国家公務員制度の改革、憲法改正の論点整理にあたる憲法審査会での論議などである。

 北朝鮮の「核」の廃棄と拉致問題の解決、テロ対策特別措置法の延長をはじめ国際テロ対策なども喫緊の課題だ。

 選ばれる参院議員らは、直ちにこうした問題に対処する責務を負う。課題の解決にあたる能力や資質の持ち主なのかどうか、見極める必要がある。

 選挙結果が、今後の政治動向や国会のあり方に重大な影響を及ぼす可能性があることも、留意しておきたい。

 参院は、1989年参院選で自民党が単独過半数割れしてから、政局を混迷させる火種ともなってきた。

 今回、仮に参院の与野党勢力が逆転すれば、参院での法案処理の主導権は、与党から野党側に移る。

 もちろん、首相指名や予算の議決、条約の承認は衆院が優越する。法案が参院で否決されても、与党は、衆院で3分の2以上の多数で再可決して、成立させることができる。

 だが、現実にはそう簡単なことではあるまい。野党の出方次第では、迅速を要する内外の重要政策の遂行に支障が出たり、国民生活関連の法案すら成立せず、政治の無用の混乱や停滞、空白を招いたりすることもありうる。

 日本の政治は、重大な岐路に直面している。日本の将来を選択する貴重な一票の権利をしっかり行使しよう。
(2007年7月29日1時51分  読売新聞)

消費者金融 規模拡大だけでは描けぬ将来像(7月29日付・読売社説)

 規制強化に苦しむ消費者金融業界が、再編に動き出した。生き残りには、規模拡大だけでなく、新たなビジネスモデルへの転換が求められよう。

 消費者金融3位のプロミスと5位の三洋信販が、経営統合することで合意した。プロミスが株式公開買い付け(TOB)で三洋信販を完全子会社化する。実現すれば、貸付金残高2兆円規模の業界首位グループが誕生する。

 両社に統合を決断させたのは、昨年末に成立した改正貸金業法による、業界の経営環境の深刻化だ。

 改正貸金業法には、貸し付け上限金利の引き下げや、融資額の総量規制などが盛り込まれた。2009年末をめどに実施される。従来のような高金利での融資ができなくなるため、業界各社は融資の申し込みに対する審査を厳しくし、貸付残高は急減している。

 顧客がこれまでに払い過ぎた利息の返還請求も、膨らんでいる。引当金の積み増しを迫られ、大手5社は07年3月期にそろって大幅な赤字決算に転落した。

 市場縮小と利益率低下への対応には、店舗や人員の削減では足りず、統合による経営基盤の強化が必要になった。

 プロミスの神内博喜社長は、記者会見で「規模の確保が急務だ」と危機感を示した。今後も、他の大手や中小業者の間で、再編が続く可能性が大きい。

 だが、規模拡大を競うだけでは、業界の将来展望は開けないだろう。

 低金利で調達した資金を、高金利で貸し付け、大幅な利ざやを稼ぐ。無人契約機などで借り入れを容易にし、融資量を拡大する。そんな消費者金融のビジネスモデルは、もはや成り立たない。

 低金利でも融資できる優良顧客は、銀行など他の業態とも奪い合いになる。その中で、どんな商品やサービスの提供で活路を見いだしていくのか。各社は知恵を絞らねばならない。

 改正貸金業法の成立を受け、テレビCMの放送時間の制限など、新たな自主規制ルールの検討も始まっている。「融資さえすればいい」という従来の業界の姿勢を改めるうえで、実効性のあるものにする必要がある。

 消費者金融業者が融資先を絞れば、借りたくても借りられない人が増える。ヤミ金融などに走らぬように対策を講じるのは、行政の責任だ。

 政府は、4月に多重債務問題改善プログラムを策定し、全国500超の市町村への相談窓口設置などを打ち出した。自治体が円滑に体制を整えられるように、国は、必要なら予算措置を含め、しっかりと後押しするべきだ。
(2007年7月29日1時52分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月29日付 編集手帳

 故郷柴又に帰ってきた車寅次郎は、実らぬ恋でひと 騒動を起こしては家族と口論し、トランクを手にまた旅に出る。映画「男はつらいよ」である◆寅さんはよく旅先で詫(わ)びの葉書(はがき)を出した。「思 い起こせば恥ずかしきことの数々、今はただ後悔と反省の日々を過ごしおりますれば、お忘れくだされたく…」。金釘(かなくぎ)流の筆跡をご記憶の方も多か ろう◆寅さんほどは恋も口論もしないので詫び状はないが、毎年この季節、1枚、2枚と絵葉書が届く。絵を眺め、旅先でも心にかけてくれた人に感謝し、手紙 に縁のある文字を含んだ「文月」から「葉月」に移る夏の愉(たの)しみでもある◆きょうは参院選の投票を済ませて旅行に出るという方もおられよう。投票所 入場券、財布、カメラ…と出がけに確認する持ち物に、住所録を加えてみるのもいいかも知れない◆ 書いたからとて心が伝わるとは限らないが、伝わると信じて書かなければ始まらない。思えば選挙の一票も手紙だろう。投票箱を前にした心境には、恋文を郵便 ポストに投じる瞬間と相通じるものがある◆夜が更ければ、遊説に東奔西走した「旅人」たちから有権者のもとに、テレビの速報番組を通じて返信が届くだろ う。喜色満面の礼状であったり、「今はただ後悔と反省の…」寅さん流詫び状であったり、ともあれ手紙の一日である。
(2007年7月29日1時51分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】混乱と停滞に戻すのか 将来見据えた投票行動を

 この日本をどうするのか。真の改革の担い手にふさわしいのはだれか。安倍内閣10カ月の実績とビジョンに、有権者の審判が下される。

 任期が6年と長く、解散による失職がない議員の選挙でもある。ここ数カ月、世の中を騒がせたテーマに目を奪われ、怒りにまかせて貴重な投票権を行使するわけにはいかない。

 与野党の勢力が激変することも予想されているが、その結果もたらされる政治構造の変化は、日本が向き合う諸課題の解決にとって、ふさわしいものとなるのだろうか。

 ≪「年金」では選べない≫

 改革の立ち遅れは、転換期に立つ日本に重い後遺症をもたらしかねない。長期的視野が必要だ。判断の誤りは重大な結果を有権者に突き付ける選挙であることを、いま一度考えたい。

 今回の参院選への国民の関心が高いことは期日前投票の増加にも表れている。「年金選挙」として醸し出されたムードの影響は大きい。

 年金記録紛失問題は、社会保険庁を舞台に、官僚のずさんな管理と、職員労組の過剰な権利意識の所産であったことを浮き彫りにした。

 それを見過ごしてきた責任は、政治全体にあった。それでも、早急に対応策が整えられ、年金記録問題はひとまず片付いた。この問題だけで与野党の勝ち負けを決めようというのは、どうみても無理がある。

 選挙結果に伴う安倍晋三首相の進退にも関心が向けられている。

 たしかに、平成元年には宇野宗佑首相、10年には橋本龍太郎首相が、それぞれ参院選敗北の責任をとって内閣総辞職した経緯もあった。

 しかし、参院の本来の趣旨は衆院に対する抑制機能にあるはずだ。その選挙が、またもや政局を大きく左右する様相を呈している。政局本位の選挙であってはならない。

 戦後60年を経て、さまざまなシステムにひずみが出てきた。

 安倍首相が目指す憲法改正や教育再生は、新しい国を形作るうえで不可欠だ。公務員制度改革への着手は、官僚主導政治に本格的にメスを入れる試みとなる。税財政のあり方を含む構造改革の推進、少子高齢化対策、地方の再興といった内政課題も急務である。

 核の脅威を振りかざす北朝鮮に、安倍首相は毅然(きぜん)とした姿勢を示し、拉致問題解決を最優先課題としてきた。それだけに、北朝鮮は最近、ことさら安倍首相を批判し、その退陣を心待ちにしているようだ。

 ≪改革の必要性は不変≫

 原則を曲げない対北外交方針は、日米同盟の維持、強化とともに不変でなければならず、いずれも死活的に重要なものである。いまは政治の混乱や停滞が許される状況にはない。

 平成元年の参院選で、自民党の参院過半数割れが生じた後、自民党の下野と細川連立政権の誕生、新進党結成や自社さ政権、自自連立といった政界再編、混乱の時代が続いた。

 首相や政権の枠組みが次々と代わるだけで政治は安定せず、「政界の失われた10年」とも呼ばれた。

 自公連立体制が確立することによって、自民党は参院の過半数割れを意識せずにすんでいた。しかし、この選挙を経て、自公連立でも数が足りない事態が予想されている。

 衆院で与党が圧倒的多数を持っていても、参院で過半数割れすれば、野党が反対する法案はいずれも参院で否決されてしまう。衆院と同様に参院も政党化している現実から、与野党対立の状況は、参院の抑制機能を超えて、法案の成否を決めてしまうのだ。

 野党の賛成も得て成立させようとすれば、政府・与党が思い切った政策を打ち出すことは難しくなる。

 小沢一郎代表が率いる民主党のねらいは、参院を与党過半数割れにしたうえで、安倍首相を衆院解散・総選挙に追い込むことにある。

 その後の政権奪取や政界再編も視野に入れたものだが、日本がどのように改革の道を進んでいくのかについて、シナリオは見えてこない。

 ふさわしい改革とそれを実現できる候補者、政党を見いだすことが、有権者に求められている。

(2007/07/29 05:01)

【産経抄】

 参院選での不毛ななじり合いなど殺伐とした社会の中で、心が温まるようなニュースにめぐり合った。それも大阪発行夕刊の小さな記事である。イラクの駐日大使が中越沖地震の被災地を見舞い、復興支援中の自衛隊を慰問したというのだった。

 ▼ガーニム・ジュマイリ大使である。大使は25日に新潟の柏崎市を訪ね、市長に「イラク国民を代表して」見舞いの言葉を述べた。さらに、陸上自衛隊がサマワから撤退してこの日で1年に当たるとして「友人たちの仕事を見て励ましたい」とも話したのだという。

 ▼夕刊の記事はここまでだった。自衛隊に聞いてみると大使はその後、柏崎市の海浜公園に設けられた陸自の復興支援基地をはじめ、陸海空3自衛隊の支援部隊を律義にもすべて訪問して回った。その間に、住民の避難所も訪ねる。何とも精力的な動きだったようだ。

 ▼震災など大きな災害が起きた場合、現地を訪れる政治家は多い。自分だけ目立とうという「オジャマ虫」さえいる。だが復興のため汗を流している自衛隊員を激励しようという人はあまり見かけない。それだけに、異国の大使の行脚ぶりには、頭が下がる思いがした。

 ▼むろん自衛隊のイラクでの活動への「お礼」の意味もあったのだろう。昨年まで2年半、厳しい風土と危険な環境の中で、自衛隊が果たした人道復興支援は国際的にも高い評価を受けている。大使の精力的で律義な動きは、そのことを雄弁に物語っていたのである。

 ▼しかし日本人はといえば、イラク支援のことなどとっくに忘れてしまったようにさえ思える。日本のための支援活動でもあったのに、参院選で国際貢献はほとんど議論にならなかった。いったい大使の目にはどのように映っていることだろう。

(2007/07/29 05:00)


【日経・社説】

社説 低炭素社会に向け都市構造を集約型に(7/29)

 「地球温暖化対策で政府が動かないな ら、我々が挑戦しなければならない」――ニューヨークのブルームバーグ市長は5月に同市で開いた世界大都市気候変動サミットで、主体的な取り組みの重要性 を訴えた。温暖化対策は今や世界の都市の主要な政策課題になり、石原慎太郎東京都知事は「大量のエネルギー消費地である都市のあり方が、地球の命運をも左 右する」と語っている。

排出権取引に動く東京

 東京都は都内の大規模事業所に二酸化 炭素(CO2)の排出削減を義務づけ、独自に排出権取引制度を創設する方針を打ち出した。政府が導入に消極的な排出上限の設定によるキャップ&トレード型 の市場活用策を、都が率先して導入する考えだ。削減義務を負わない中小企業には省エネ対策を金融面から支援し、大規模事業所が中小企業の削減分を購入でき る仕組みもつくる。

 2020年までに都内の温暖化ガス排出量を2000年比で25%減らす目標を掲げ、08年度にも条例を整える。大規 模新築ビルには一定の水準以上の省エネ性能を要求し、企業や家庭の省エネを促すために減免と課税の両面で独自の税制導入も検討する方針だ。なおあいまいな 部分もあるが、日本の総排出量の5%を占める東京都が意欲的な方針を打ち出したことは評価できる。

 都の推計では都内の総排出量の3分の 1以上をオフィスなどの業務部門が占め、業務部門の05年度の排出量は1990年度比で3割強増えている。日本全体でも業務分野の排出は増えており、オ フィスビルや大型商業施設などのCO2抑制は東京、大阪、名古屋をはじめ、すべての大都市に共通する課題だ。

 欧米の州政府や大都市はす でに独自の温暖化対策に着手している。米国では京都議定書から離脱したブッシュ政権を尻目に、カリフォルニア州、ニュージャージー州などが続々と温暖化ガ スの削減を義務づける州法を制定している。カリフォルニアなど西部5州は共同で排出権取引市場を創設する計画だ。欧州ではロンドン、パリ、ベルリンなど大 都市がそれぞれ独自の削減目標を設けて対策を強力に推し進めている。

 安倍晋三首相は2050年までに世界の温暖化ガスを半減する構想を掲げたが、政府は日本自体の中長期の削減目標を明示できず、思い切った対策を打ち出せない状態だ。

  日本でも各地域の独自の取り組みが注目されるが、地域間の連携を進めるのも有益だろう。都は03年に神奈川、埼玉、千葉の各県と共同でディーゼル車の排ガ ス規制を国に先駆けて導入した。温暖化対策でも、オフィスビルや大規模マンションの省エネ基準導入や再生可能エネルギーの普及などで、より広範な地域の連 携を進めることは可能である。

 CO2の排出量は都市構造との相関性が高く、中心地区の人口密度が低い地域ほど、住民1人当たりの排出量が増える傾向がある。住宅や商業施設が分散していると自動車の利用が増える。就業者1人当たりでみた事務所の床面積も広くなり、業務部門の排出量をその分押し上げる。

  日本の都市構造は戦後しばらくまで、おおむね集約型だった。だが、高度成長期以降、車の利用を前提とする無秩序な郊外の開発が急速に進み、拡散型に変わっ た。徒歩や自転車で行ける範囲に諸機能を配置するコンパクトな街を歴史をかけてつくり上げ、それを維持してきたドイツや英国などの都市とは対照的だ。

公共交通網の再整備を

  この構造を変えるためには都市計画による誘導と交通政策をうまく組み合わせる必要がある。公共施設や商業施設、住宅をなるべく集約し、次世代型路面電車 (LRT)やコミュニティーバスなどの公共交通網で結ぶ。最寄りの駅の駐車場まで車で来てその先は鉄道を使うパークアンドライドの普及や、自転車専用レー ンや駐輪場の整備も有効だろう。

 県庁所在市のうち岡山市や長崎市など路面電車が残っている都市は、車を優先して電車を廃止した都市と比 べ人口当たりの運輸旅客部門の排出量が1割強少ない。富山市は路面電車の整備をてこに街を集約型に変える試みを始めた。福井市や堺市などもLRT導入を検 討中だ。生活関連機能が中心部に集まれば行政サービスの費用を抑えられ、車を運転できない高齢者の利便性も高まる。

 国連人口基金による と08年には世界の人口の半分は都市居住者になる。日本でも都市化の流れは止まらないだろう。長期にわたる継続的な取り組みが必要な温暖化ガスの抑制は、 都市の持続可能性にもかかわる命題だ。高齢化の進展に対応すると同時に低炭素社会の構築を強く意識した都市づくりが問われている。

【日経・春秋】春秋(7/29)

 3年に1度で21回目だから、第1回はちょうど60年前になる。参議院は団塊世代の最年長組と同じ1947(昭和22)年に誕生した。投票は4月20日。下位の半数は任期も半分の3年とされ、以後3年ごとに半数を改選しつつ今日に至っている。

▼ 不正が起こらぬよう占領軍が投票所を監視する中、この月は4つの選挙が立て続いた。5日が知事と市区町村長、20日が参院全国区と地方区、25日が衆院、 30日が都道府県・市区町村議会議員。参院全国区トップは星製薬(現テーオーシー)や星薬科大の創始者である星一氏。作家星新一氏のお父さんだ。

▼ 紙不足の中、投票用紙の調達も簡単ではない。有権者も頭の切り替えが大変で、内務省は記入する名を間違えないよう繰り返し呼びかけた。翌月には現憲法が施 行され、貴族院は58年の歴史を閉じた。第1回国会で衆院の第1党、参院でも緑風会に次ぐ第2会派となった社会党首班の片山内閣が発足。まさに激動の時代 だった。

▼内外の環境に違いはあれ、自由に「1票」を行使できることの大切さは今も同じ。国民が選んだ代表が、国民のための政治を行う。歴史をひもといても、あるいは世界の国々を見回しても、これが決して当たり前のことではないとわかる。ぜひ投票所に足を運びたい。

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2007年7月28日 (土)

7月28日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月28日朝刊)

[平均寿命世界一]「健康長寿」楽しんでこそ

 日本の女性の平均寿命は二十二年連続で世界一になっていることが分かった。日本人の三大死因である、がん、心臓病、脳卒中の治療成績が向上したことが主な要因だという。

 だが「欧米化した食を改善しなければ、世界一を維持するのは難しい」と根源的な問題点を指摘する研究者もおり、今後も世界一を維持できるのかどうか不安な点も多い。

  厚生労働省が公表した二〇〇六年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命は女性が八五・八一歳、男性は七九・〇〇歳だった。男性は〇五年に四位に落ちた位 置から〇四年の二位に順位を戻している。〇五年に比べると女性は〇・二九歳延び、男性〇・四四歳で男女差は〇・一五歳縮まった。

 厚労省が示すように「平均寿命は今後も延びていくと見込まれる」。だが、平均寿命の延びは少子高齢化が進む中、超高齢化社会の足音が一層高まるということではないのか。

 であれば、高齢者が安心して医療を受けられる社会的システムをさらに充実させていくことが重要になる。

 確かに医療技術は世界のトップレベルにある。だが現実に目を向ければ、高齢者の医療負担は以前より増え、誰もが気軽な形で医療福祉制度を享受できるシステムにはなっていない。

 その点も含め、高齢者に目を向けた「健康長寿」の施策をどう充実させるかが課題であり、政治の責任だろう。

 都道府県別平均寿命の発表はまだだが、二〇〇〇年には沖縄の女性は八六・〇一歳で日本一の座にあった。男性は七七・六四歳で、五年前の四位から二十六位に急落した時の「二六ショック」は記憶に新しい。

 沖縄が長寿である要因として、温暖な気候の中でよく運動することが挙げられ、同時にカルシウム摂取量の多さ、塩分の摂取量が全国一少ない―ことが指摘されていた。

 しかし、ここ数年は県民の運動不足は言うに及ばず、ファストフードに見られるような欧米化した食が健康に影響を及ぼしているといわれる。

 〇五年の年齢調整死亡率で明らかなように、男性だけでなく女性も肺疾患、糖尿病、肝疾患の三項目で全国ワーストという事実もある。

 〇六年度県民健康調査でも、体重と身長で割り出す肥満度(BMI)25以上の肥満者は六十代の女性で46・8%、七十代が56・5%と年を重ねるほど多くなり、男性は二十代を含めて七十代まで四割を占めている。

 運動不足の解消は当然として食生活をどう改善していくのか。長寿社会を維持する工夫を皆で考えたい。

[夏休み]自然に触れ合う機会を

 夏休み真っ最中だ。子どもたちは学校生活から解放され、最も楽しい季節であるが、親にとっては子どもたちの世話で、何となくせわしい。

 せっかくの夏休みである。だらだらと過ごしては、あっという間に終わってしまうことになりかねない。普段の生活から得られない様々な体験をする機会だ。親子一緒に計画をたてて、楽しい思い出をつくれるようにしたい。

 たとえば、親子一緒に遊んで子どもの体づくりをしてはどうだろうか。子どもの運動能力が低下しているといわれて久しい。文部科学省の「体力・運動能力調査」によると、今の小学生の運動能力は親の世代にあたる三十年前の子どもと比べて、劣っているという結果が出ている。

  基礎的な運動能力は小学生のときまでに培われるといわれる。この時期に、運動する喜びも芽生える。野外活動など自然の中で豊かな感性もはぐくまれる。ひと 昔前なら、家の外で友達と一緒に思い切り遊ぶことで、運動能力をはぐくんできた。だが、今は子どもたちが集団で遊ぶ光景は年々、見られなくなっている。

 子どもたちも塾や習い事などで多忙だ。家に帰れば、テレビやゲームに夢中になっている。これでは体力は低下するはずだ。夏休みで生活が乱れては、さらに体の動きは鈍くなる。

  水泳などスポーツ教室に通わせるのも一つの手である。学童保育が行事を通して子どもの体力づくりを図るなど地域の取り組みも出ている。でも、この夏休みの 時期、親が一緒に体を動かして、汗をかくさわやかさを伝えてはどうだろう。地域の行事、家族旅行、キャンプなど選択肢は多いが、やはり、自然の中での遊び を増やしたい。

 参加者が減っているというラジオ体操に一緒に出掛けることも、親子の触れ合いが図れる。働き盛りの親にとっては早起きはつらいが、無理せず、週に一、二回の参加から始めてもいい。

 夏休みをどう過ごすかは、親にゆだねられている。親が自然と触れ合う機会を積極的につくってほしい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月28日 朝刊 1面)

 もう二十年近く前のこと。宮古支局から多良間島へ村議選の取材に行った。情勢取材より、立候補予定者の顔写真を撮るのが主な目的だ。これが難渋を極めた。

 「出るかどうかも分からんのに」と、かたくなに撮影を断る“予定者”がいる。自宅の庭には天幕が張られ、人が頻繁に出入りし、すでに本番モードなのに。たまたま一緒に回った他紙の支局長と説得を続ける。

 そのうち「県紙には写真を載せなくてもいい」と言い出した。確かに有権者一人一人まで知り尽くした島だから、あえて新聞に載せる意味もないのかとくじけそうになったが、拝み倒して撮影することができた。

 集落の目抜き通りには手書きポスターも張り出されていた。中には姓でも名前でもなく、誰のことか見当さえつかないものも。だが屋号と知り納得。そこでは最も通りがいいのだろう。選挙には地域柄や人間関係が色濃く反映される。

 宮古といえば首長選挙になるとがぜん熱を帯びる土地柄だ。一票をめぐってしのぎを削り、手荒い手段も横行した。町長選で、投票率は上がりそうかとお年寄りに聞いたら「百%を超えるかもしれない」と答えたという笑い話もある。

 参院選はあす投票日を迎える。小さな島の議員選挙や身近な首長選に比べ、有権者の関心も薄れがちだ。しかし国政選挙とてそれぞれの一票は重い。国の舵とりを、どの政党や議員に委ねるか、大きな選択がかかっている。(山城興朝)


【琉球新報・社説】

NIE全国大会 新聞から知識の世界広がる

 第12回NIE全国大会(主催・日本新聞教育文化財団)が26日から2日間にわたって岡山県で開催された。NIEは「Newspaper in  Education(教育に新聞を)」の略称であり、文字通り、新聞を学校教材として活用してもらう運動だ。今大会では、実践法紹介とその効果の発表があ り、情報を発信する側としては心強い限りだ。
 開催地元の倉敷市立倉敷西小学校は「自ら課題を見つけ、情報発信する力を育てる」ことをテーマに実践校としての研究を進め、今大会で報告した。狙いは、情報源である新聞を通して、興味・関心が学校から家庭、そして地域、社会へと広まっていくことである。
 高校生も体験を発表。新聞記事を読んで感想を書く課題について「書くことは考えることにつながり、自分なりの意見を持つようになった」と述べた。
  琉球新報社は2002年から「出前記者」講座を随時行い、県内学校を回っている。中部の小学校ではこんな例があった。4年生の女児だ。講座で出された「1 週間新聞を読んでみよう」という宿題を実行した女児は、スポーツ面のバスケットの記事に刺激を受け、「明日から一生懸命やろう」と奮起。そのかいあって試 合に出場することができた。そして、新聞を読んでいなかったら「ベンチに座るだけだったかもしれません」と記した。記事を読んだことをきっかけに自分の成 長につなげた好例である。
 那覇市内の小学校ではこんな女児がいた。「鉄の化合物でできたうろこで覆われた脚を持つ珍しい軟体動物」の記事を読み、「いつか自分の目で見てみたい。確かめたい」と記した。この子の将来の夢は「海洋学者」だったが、この記事でますます実現の意欲が高まったことだろう。
 日本新聞教育文化財団はNIE実践校を認定しており、本年度、県内からは那覇市立銘苅小、石嶺中、名護市立大宮小など6校が選ばれた。
 実践方法については、経験校の実例報告を積極的に取り入れてほしい。それを踏まえて発展できる活用法も生まれることだろう。
 サンゴの保護、ごみ問題、平和、バイクの事故など、児童・生徒たちの関心は多分野にわたる。記事に目を留め、理解しようと知恵を働かせることで新しい知識の世界につながっていく。
 岡山の全国大会テーマは「学びあい 世界を広げる」である。「出前記者」講座の経験から言えることは、新聞に接することで、子どもたちの関心のアンテナは確実に広がるということだ。NIE運動の充実のためには、新聞社も協力を惜しまない。

(7/28 9:54)

郵政公社「評価」 態勢固めをして民営化を

 総務省は26日、日本郵政公社の発足から4年間(2003ー06年度)の業績評価と、06年度単年度の評価をそれぞれ郵政行政審議会(総務相の諮問機関)の経営・評価分科会に提出した。
  業績評価は、業績や取り組みが設定した目標どおりに達成されたかどうか、各事業年度ごとに公社内部での自己評価を踏まえ、総務省が5段階で評価する仕組み である。評価の対象となるのは、業務の効率化の程度を示す「事業経費率」や財務状況の健全性を表す「積立金」のほか、「コンプライアンス(法令順守)の徹 底」などである。
 かみ砕いていえば、1年間の事業運営などに関する公社の「通信簿」である。では、通信簿の中身はどうだろう。
 総合点は、残念ながら芳しいとは言い難い。特に中期経営目標に関する4年間の評価にばらつきが見られ、及第点を与えるのはためらわれる。
 具体的には、郵便貯金と簡易生命保険の「財務内容の健全性」については、達成度は大幅に目標を上回っているとして「特A」が付いた。コストの削減努力などが認められた。
 ところが、簡保の「客の満足を高めるサービスの充実」は、下から2番目の「D」の評価となっている。06年度単年度も「D」ランクである。これでは、せっかくの財務面の「特A」が帳消しになりかねない。
 マイナス材料はまだある。公社全体の「コンプライアンスの徹底」に関する項目は、「部内犯罪、個人情報を不適正に取り扱う事案が増加するなど徹底が不十分」と指摘された。「C」評価にとどまったのはいただけない。
  郵政公社の民営化がいよいよ10月から始まる。顧客サービスの充実にしろ、コンプライアンスの徹底にせよ、業績の帰趨(きすう)を左右するほど金融事業の 重要な要素だ。もちろん郵便事業でも変わりない。部内犯罪の再発防止、個人情報の保護対策など、内部態勢をしっかりと固めてから民営化に歩み出してほし い。

(7/28 9:52)

【琉球新報・金口木舌】

 沖縄本島の南部や東海岸の聖地巡りを「東御廻り(あがりうまーい)」と呼び、かつては王族をはじめ、島の人たちが巡礼の道をたどった
▼その1つ、斎場御嶽を訪ねた。琉球の創世神アマミキヨによる琉球開闢(かいびゃく)七御嶽の1つで、聞得大君(きこえおおぎみ)即位の最高秘儀が行われたとされ2000年、世界遺産に登録された
▼その歴史遺産、精神文化を内外に発信し、健康と組み合わせた観光で地域活性化を図ろう、と南城市が取り組んでいる。先日、同市で新報移動編集局「地域づくりフォーラム」が開かれた
▼そこで聖地での服装について「観光客はリゾート気分で、中には肌をあらわにした人もいる。祈りの場として大切に考えているので気を付けてもらいたい」との注文があった。同市発行の東御廻りパンフレットでは、聖地に入る際の一礼や心静かにするよう勧めている
▼が、夏場のこの時期、開放的な服装で聖地を訪ねる人を見掛ける。県内各地には、多くの拝所、御嶽があり、今でも普段は神人(カミンチュ)しか立ち入れない場所もある。たとえ、入れても土足は許されないところも
▼心のよりどころとなる御嶽では、祈りをささげる人たちへの気遣いを忘れてはならない。

(7/28 9:47)


【東京新聞・社説】

株価急落  米住宅バブルが弾けた

2007年7月28日

 米国の住宅ローン焦げ付き問題が深刻化して、世界の株価が急落した。金融市場には「株価下落は一時的」との見方が強いが、住宅バブルの崩壊が背景にあることを考えれば、楽観はできない。

 「いつか崩壊する」と言われ続けた米国の住宅バブルが、ついに弾(はじ)けたようだ。

 六月の新築住宅販売件数は前月比6・6%減と市場の予想を大幅に下回って、二カ月連続の減少になった。中古住宅も前月比3・8%減で、四カ月連続で減少している。住宅メーカー各社の四半期決算は大幅赤字に転落した。

 株価急落は、こうした住宅市場の不振を受けて「銀行や証券など金融機関の経営が悪化するのではないか」との懸念が深まったためだ。

 信用力の低い人を対象にしたサブプライムと呼ばれる高金利の住宅ローンの焦げ付きが増えて、二月には住宅ローン専門会社が倒産した。そこへ新たに、大手証券会社の傘下にあるヘッジファンドの巨額損失も明らかになった。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、先日の議会証言で「サブプライムローンの焦げ付きは、金融機関に最大で一千億ドル(約十二兆円)の損失をもたらす」と警告を発していた。

 住宅価格の値上がりは資産を水膨れさせ、多くの家計が借金を増やして、個人消費に走った。米国の景気拡大は相当部分、こうした借金で賄われた面がある。ところが、いったん上昇が止まると、メカニズムは逆回転を始める。借金返済が間に合わず、焦げ付くのだ。

 まるで、バブル崩壊が始まった十六年前の日本を思い出させるような展開である。当時の日本と違うのは、金融技術が発達して、住宅ローンを担保に組み込んだ金融商品が数多く開発されたことだ。

 高利回りを求めるヘッジファンドは、高リスク商品に投資して荒稼ぎしていた。だが、住宅ローンが焦げ付けば、ファンドは倒れ、ファンドに融資していた銀行も無傷ではいられない。経営トップが責任をとって辞任した欧州の大手銀行もある。

 市場関係者には設備投資や輸出の好調を理由に、経済への影響は小さく「株価もやがて下げ止まる」との楽観論が多い。

 日本も、崩壊当初はそうだった。だが実際には、リスクを無視した過剰融資が構造的に埋め込まれ、住宅金融専門会社(住専)の破たんは銀行の不良債権問題へと拡大していった。米国も油断はできない。ここは、先行きを慎重に見極めるべき局面である。

弁護士脅迫 裁きは法廷で冷静に

2007年7月28日

 遺族感情を害し、いわゆる世間の批判にさらされても、正しいと考える活動をするのが弁護士の使命だ。その行動や自由な司法判断を封じようとする卑劣な脅迫は、法で裁かなければならない。

 一九九九年に起きた山口県光市の母子殺害事件の弁護人を脅迫する手紙が、日本弁護士連合会や新聞社に届いた。事件当時十八歳だった被告を死刑にできないなら弁護人らを銃で処刑する、という内容だ。

 母親と幼い子供の命が奪われた痛ましい事件であり、遺族の心情は察するに余りある。被告に対する憎しみをあおる報道が一部メディアにあふれ、一、二審判決が無期懲役だったことと相まって関心を集めた。

 最高裁が広島高裁に差し戻し、現在は同高裁で審理中だが、上告審、やり直し控訴審における弁護人の行動、弁護方針が多くの人に違和感を抱かせたことも事実だ。

 しかし、刑の量定も、弁護人の主張に対する法的判断も裁判官のみができる。裁判と無関係な人間が特定の行動や司法判断を関係者に強要することは許されない。

 憲法三七条は「刑事被告人はいかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼することができる」と定めている。弁護人の役割は被告に適正な裁判を受けさせ、罪を犯した被告であっても刑罰の適正を確保してその人権を守ることである。

 人類が英知を積み重ねて完成した刑事裁判は、凶悪な事件を起こした被告にも守られるべき人権はあるとの前提で成り立っている。

 役割を忠実に果たしている弁護活動が、被害者感情を害し、社会的批判を受けることもある。そのような場合でも敢然と職責を全うすることが弁護士には求められる。

 国連の「弁護士の役割に関する基本原則」は各国政府に弁護士の安全を保障するよう求めている。

 「政府は、弁護士が脅迫、妨害、困惑あるいは不当な干渉を受けることなく、その専門的職務をすべて果たしうること…を保障する」「弁護士が、その職務を果たしたことにより、安全が脅かされる時には、当局により十分に保護される」-という第一六条の規定である。

 捜査当局は速やかに捜査し、手紙を送った人物に法の裁きを受けさせなければならない。さもなければ弁護活動が委縮し、刑事裁判が形骸(けいがい)化しかねない。

 脅迫は元少年の弁護人たちが死刑廃止論者であることも関係していそうだが死刑廃止の是非は冷静な環境で考えるべき問題だ。特定の事件をもとに感情的に語るのは避けたい。

【東京新聞・筆洗】2007年7月28日

 「ディーヴァ(歌姫)」とはイタリア語でオペラのプ リマドンナのこと。若者たちはアニメの世界で、美しい歌声の女性登場人物にこの名を与える▼目前に迫る参院選の隠れた主役は、都会で職なく居所定まらぬ “ネットカフェ難民”と呼ばれる若者たちだ。かれらの悲しみや寂しさを歌うディーヴァとして、いま静かな人気のシンガーソングライターが、中村中(あた る)さん(22)だ▼彼女のライブコンサートが東京・恵比寿ガーデンホールであると聞き、足を運んだ。開演前の会場に♪窓の外ではリンゴ売り…の井上陽水 『氷の世界』のメロディーが流れる。デビュー一年を記念して発売された新曲『リンゴ売り』のお披露目ライブらしい味な演出だ▼母が口ずさむ研ナオコさんの 『泣かせて』で歌に目覚めたという中村さんは昭和の歌謡曲が大好きだ。昨秋ヒットした『友達の詩(うた)』は十五歳の時の作品。♪手を繋(つな)ぐくらい でいい…友達くらいが丁度(ちょうど)いい…の痛ましい求愛ぶりが、聴く者の胸を締め付け、ファンを増やした▼そして今回の『リンゴ売り』は、性同一性障 害であることを告白した後、あらためて世に問う三年前の作品だ。「正面から愛欲や寂しさに向き合った」愛の歌。♪私を買って下さい…という切羽詰まった叫 びが、崖(がけ)っぷちに立つ若者の心を揺さぶる▼この春、山本耕史さん主演が話題の米ロックミュージカル『ヘドウィグ…』公演に、中村さんは参加した。 訳詞を担当した北丸雄二さんは、『リンゴ売り』に、「女歌を超えた底なしの奈落に浮かぶディーヴァの孤独」を見た。


【河北新報・社説】

高齢者虐待/まず情報の共有を急ぎたい

 高齢者に対する虐待が、東北でも深刻化してきた。23日には、実母(78)に対する傷害容疑で、山形県最上町の男(45)が逮捕された。日常的に虐待を繰り返していた疑いがある。
 暴力や介護放棄からお年寄りを守り、尊厳を保持しながら健やかな生活を送ることを支援する高齢者虐待防止法が施行されたのは昨年4月。この間、幾つかの課題も浮上してきた。

 法では要介護施設で虐待があった場合について都道府県に公表義務を課しているが、虐待の大部分を占める最上町のような家庭でのケースは一部市町村を除いて明らかにされていない。
 そんな中、山形県が市町村の協力を得て、6月に独自に集計した家庭での虐待件数が注目を集めている。2006年度に通報があった65歳以上を対象にした虐待は、179件。被害者の8割が女性、虐待者の7割近くが息子と息子の配偶者という構図が浮かび上がった。

 179件という数字が多いのか、少ないのか―。初めての統計である上に、他県とも比較のしようがない。
 そもそも、虐待という病理に問題意識を持ち、積極的に対応している自治体ほど件数が上がる傾向にあり、件数の多寡だけで判断することはできない。
 虐待の態様は千差万別といわれる。山形県の集計で見えてくるのも大まかな「傾向」にすぎず、実態や解決策を一般化することはかえって危険だろう。

 だが、高齢者虐待防止法で「市町村相互間の連絡調整、情報の提供、助言」などを期待されている都道府県が、情報収集のキーステーションとなることには何の違和感もない。
 付則では法施行後3年をめどに問題点を検討することになっている。プライバシー保護に最大限留意しつつも、対策の前提となる情報の共有について一層、意を用いるべきだ。

 早い段階から社会的関心を集めてきた児童虐待と比べ、高齢者虐待は知見、対策、人材育成面などで後れを取っている。
 マニュアルを作成している自治体もあるが、都市部と農村部などの地域特性、家族構成、経済状態、関係者の性格などが違い、画一的な答えを見いだすのが困難な場合がほとんどだ。

 分かっているのは民生委員、NPO、介護保険サービス事業者、警察、医療関係者など、あらゆる地域資源を動員して早期発見、解決に当たるしかないということだ。
 神奈川県横須賀市や東京都北区は、虐待をしている介護者を対象にメンタルヘルス相談を実施することで、心理的負荷を軽減する取り組みを続けている。

 虐待は「する―される」という閉じた関係に、第三者が介入することによってしか解決されない。
 山形県は27日、弁護士や学識経験者からなる東北では初の「高齢者虐待防止県民会議」を創設した。個別の具体策については専門部会を設けて、検討していくという。高齢社会に一足早く突入した東北であればこそ、「虐待防止モデル」を全国に先駆けて発信していきたい。
2007年07月28日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 「憲政の神様」尾崎行雄が選挙と政治について書いている。「川上の選挙が濁れば、川下の政治も濁るのが当たり前である。腐った水にボウフラがわく ように、腐った選挙からは自堕落政治のボウフラがわく」▼カネはむろん義理や縁といったしがらみは思慮の外に。濁りのない目で政党の公約、候補者を見極め る。そうして投じられた票が多いほどボウフラを減らせる

 ▼ その一票を行使する有権者の出番だ。参院選はあすが投票日。夏休み真っただ中で出足はどうか。各党、各陣営が気にかけるのは、有権者の参加意欲の表れであ る投票率の行方。なにせ勝負を左右しかねない数字だ▼今回は統一地方選と重なる12年に一度の「亥(い)年選挙」。選挙疲れから投票率はガクンと落ちるの が常だ。12年前の44.52%(選挙区)は過去最低。だが、このジンクスが破られそうな雲行きだ

 ▼先日の本紙は「関心ありが81. 9%」との世論調査を紹介。期日前投票(22日現在)も前回の1.5倍と好調だ。年金、格差という暮らし直結の争点をめぐる関心の高さも反映していよう▼ 今回は参院の勢力地図が大きく塗り替わる可能性が取りざたされる。「いかなる政治を希望するか、自分の意思をはっきり決めてかかることが大切だ」。尾崎が 有権者に託すもう一つの願いだ。

2007年07月28日土曜日


【京都新聞・社説】

この月あの年  信頼回復できるか中国製品

「不信」がどっさり(マンガ・岡本治)

 食品から工業産品まで、中国製品の安全性に対する不信が、世界中に広がっている。
 中米のパナマではことし、有毒原料ジエチレングリコールを含んだ中国製せき止め薬を服用した市民約百人が死亡。同じ原料入りの、練り歯磨き粉も見つかっている。
 日本でも、禁止薬剤を使ったウナギや鉛を含んだ土鍋などが売られていた。米国では中国産ペットフードを食べた犬や猫の大量死など、問題が噴出した。
 「危険な中国製品」という評判が、拡大、固定化すれば「世界の工場」となった中国だけでなく世界の生産や貿易に深刻な影響を及ぼしかねない。
 安全を監視する中国の検査態勢や法制に不備があるのは明らかだ。それ以前に利益を最優先する拝金主義の横行が原因と指摘する声もある。
 一年後に北京五輪開催をひかえた中国政府は、悪いイメージを打ち消そうと、批判に対して防戦に必死だ。率先して問題製品の情報を公開し、国際的な安全基準に自らを近づけていくことができるかが、問われている。

国内で早くに問題化
 製品や原材料をめぐる安全上の問題は中国国内では、かなり以前から表面化していた。
 安徽省では、二〇〇四年に偽の粉ミルクが売られ乳児十二人が死亡。広東省でも昨年、有毒な化学製品が使われた注射液で、患者ら十一人が死亡するという出来事があった。
 安全を度外視した業者による粗悪な製品づくりに、国内で有効な対策が取られないまま、経済の急成長とともに輸出品にも問題の多い製品が出回るようになったとみられる。
 規制、監視を強化するには、中国当局の取り組みだけでは不十分だろう。中国製品を輸入する相手国側からの働きかけが重要だ。
 農産物の残留農薬規制へ、日本が昨年五月から採用した「ポジティブリスト制度」は効果が大きかった。一つの成功例として参考になろう。
 規制値が定められていない農薬でも、一定量を超えて残留すれば農産物の販売を原則禁止するこの制度によって、中国農産物の対日輸出は一時、20%近く減少した。
 中国側は反発したが、その後は日本に厳しい検査法の技術援助を求める動きにつながった。
 中国製品を輸入する各国が足並みをそろえて規制を強め、中国側に輸出監視態勢の強化を促す。検査には技術的、経済的支援を惜しまない。そうすることで、互いの信頼関係が生まれ、製品の安全性も確保されるはずだ。

輸出登録制度が必要
 問題噴出で、中国政府はこれまでに対策として、食品の信用度を示すデータの作成、問題企業のブラックリスト整備などを打ち出している。とはいえ、速効は期待できそうにない。
 食品だけに限っても、中国の全メーカーの約35%に当たる十六万社は無許可営業といわれる。従業員が数人の零細企業が70%以上を占め、広い国土で製造現場を特定するのも困難だ。
 製品の安全性と信頼性を高めるには、無許可業者をまず排除したい。そのうえで、安全審査で一定のレベルに達した企業、業者しか輸出資格を認めない輸出登録制度を確立すべきだ。
 場合によっては、米国が要求しているように、中国国内の製造現場や検査の過程に、査察員の派遣を一定期間認める措置も必要だろう。
 中国政府としても、体面にとらわれて反発するのではなく、国際基準に近づく早道と考え協力してはどうか。
 中国製品の安全性問題は、国内にあふれる外国製品のコピーや偽物の横行と同根のようにみえる。
 人権や社会規範の意識が経済成長に追いついていない段階では、人や物の安全は二の次になりやすい。成長が続き中国が先進国に近づくにつれ、国民の安全に対する関心もより高まろう。
 日本は中国製品の問題を、よそ事と見てはいられない。ミートホープ社の偽牛肉コロッケの例もある。中国製品を国産と偽装した商品も後を断たない。厳重な監視と検査態勢を一層、充実させなければならない。

[京都新聞 2007年07月28日掲載]

【京都新聞・凡語】

熱波現象 猛暑対策を

 記録的な猛暑が欧州中南部を襲っている。ルーマニアやギリシャなどでは 先日、最高気温が四五度前後にも。ハンガリーでは熱波の影響で一週間に推定五百人が死亡したという▼イタリアでは山火事で観光客らが海岸に殺到、死者まで 出た。エアコンの集中使用で停電し信号が消えて、交通まひも起こるなど混乱が続いている。欧州では二〇〇三年にも猛暑が原因で数万人が死亡したといわれる だけに、被害の広がりが心配だ▼熱波現象は、欧州に限らず地球規模の広がりをみせる。温室効果ガスの増大による地球温暖化との因果関係が指摘されている。 日本でも近年、高温化は四季を問わず顕著だ▼気象庁が観測した国内最高気温は一九三三(昭和八)年に山形市で記録した四〇・八度だが九〇年代以降、四〇度 以上が急増している。京都市内では、九四年八月に観測史上最高の三九・八度を記録している▼それにしても、四五度とは考えるだけでも汗が出る。四〇度前後 といわれる風呂の温度よりも熱い。灼熱(しゃくねつ)の砂漠にいるようなものだろうか。頼みのエアコンが動かぬなら、日陰に逃げ込むか、水を浴びるか▼そ の前に身近なところから猛暑対策を。道や庭先に水をまく「打ち水」はどうだろう。雨水やエアコンから出る水を利用すれば節水にもなる。決して焼け石に水で もあるまい。涼感が漂うだけでも、汗が引く。

[京都新聞 2007年07月28日掲載]


【朝日・社説】2007年07月28日(土曜日)付

党首の理想―先人に託す改革への思い

 政治に志を立てた者が、歴史上のどんな人物に自分をなぞらえ、理想と仰ぐのか。この人物像を見ると、選んだ側の政治家の人柄や人生観も見えてくる。

 安倍首相が尊敬するのが祖父の岸信介氏であることはよく知られている。戦前に満州国を治め、開戦時の商工相だった。戦後はA級戦犯容疑者。のちに釈放され、「反共」をバネに首相まで上りつめた強運の人でもある。1960年に日米安保条約を改定した。

 戦犯容疑で収監中、岸氏は家族へ頻繁に手紙を出した。

 「新しい日本を本当に美しい形で作り上げるためには、新憲法の真の意味がよく理解され正しく実現されねばならない。上っ面の軽薄な美しい情操の欠けた権利義務だけの口頭の理屈だけでは到底真実の日本は建設できない」

 47年、新憲法の施行から間もないころの一節である。占領下でつくられた憲法への複雑な思い、その後の改憲運動への芽がみてとれる。

 安倍首相の「美しい国」の源流は、ここらあたりにあるのだろうか。

 首相が唱える改革の、向かう先はどこなのか。岸氏が求めた「真実の日本」には、民族としての誇りや気概へのこだわりがふんぷんと漂った。その方向性において、首相は祖父に惹(ひ)かれるのか。

 あるいは、反安保の世論のうねりに抗して安保改定を実現した岸氏の姿に、改革と取り組む自分を重ねるのか。のちに「昭和の妖怪」と呼ばれた老獪(ろうかい)さが参考になるのは、首相にはまだ先の話だ。

 民主党の小沢代表が尊敬するのは、同じ岩手県出身の宰相、原敬である。初の本格的な政党内閣を組織し、藩閥政治と戦った。東京駅で暗殺される。

 「もし、この人が暗殺されなかったら、大正デモクラシーは『ひ弱な花』で終わることなく、軍人や官僚の台頭も避けられたかも知れない」。小沢氏は著書でそう書いている。

 官僚主導を打破し、政権交代が可能な政治を実現する。小沢氏が政治生命をかけるという改革の原型を、先人の中に見いだしているのだろう。

 原は同時に、利益誘導型政治の元祖といわれるような顔も持ち、暗殺の一因にもなった。小沢氏が師と仰ぐ田中角栄元首相の土建政治と重なるのは、もちろん偶然のことだ。

 ちなみに、公明党の太田代表が尊敬するのはインド建国の父ガンジー、社民党の福島党首は南ア初の黒人大統領ネルソン・マンデラ氏、国民新党の綿貫代表は母校慶応の創始者福沢諭吉だそうだ。

 それぞれに改革を唱え、さまざまに戦ってきた人々なのは興味深い。共産党の志位委員長は小学校教師だった父親。

 投票日のあす、党首たちが訴えた改革の方向を見極めよう。手段を、実現力を考えよう。この選挙もいずれは「歴史」になる。その評価にたえられる改革に私たちの票を投じたい。

科学五輪―高校生よ、世界に挑もう

 「物理オリンピックで日本の高校生2人が初の金メダル」「生物で銀」「化学では銅」――。

 そんな成績が世界各地から届く。高校生による科学オリンピックである。

 今年の大会は今月半ばから来月にかけて、イラン、ロシア、カナダなどで、科目ごとに開かれている。日本が参加するのは、すでに終わった物理学、生物学、化学に加え、数学と情報の計5科目だ。

 全国から選ばれた23人の高校生が世界に挑んでいる。各国の高校生と競う一方で、友情を深める。こんな経験は大きな財産になるに違いない。

 科学五輪は科目ごとに歴史も異なり、参加国の数も様々だ。最も古い数学は1959年に始まり、昨年は90カ国が参加した。一方、一番遅く90年に始まった生物学は昨年の参加が47カ国だった。

 日本は数学には90年から参加しているが、ほかの科目は、やっとこの数年のことだ。物理学は昨年が初参加だった。

 出される問題は知識だけでなく、各分野の深い理解を求めるものが多い。科目によっては実験もある。たとえば生物学の場合、理論に5時間、実験をしながら解く問題に5時間が当てられる。

 成績の上位1割に金、2割に銀、3割に銅のメダルが贈られる。日本は昨年、23人が参加し、5人が金メダル、7人が銀メダルと善戦した。

 だが、中国はもっとすごい。昨年、参加した23人全員が金メダルを手にした。10万人以上の中から選抜された選手が長期間の特訓を受けたそうだ。成績の上位には、韓国、ロシア、台湾なども並ぶ。

 むろん、単にメダルを取ればいいというものではない。日本で気になるのは、世界の舞台に挑もうという高校生が少なく、層が薄いことだ。その背景には子どもたちの理科離れがあり、科学好きのすそ野が狭いことがあるだろう。

 もっと多くの高校生が科学五輪に挑むことで、科学の魅力に触れるきっかけにできないか。こうした挑戦を支えようという社会の応援もほしい。

  日本でも参加を後押ししようと、今年3月、ノーベル賞受賞者の江崎玲於奈氏を委員長に、文部科学省の肝いりで日本科学オリンピック推進委員会が発足した。 資金援助をするほか、各地の高校などに呼びかけて、多い科目でも1千人を超えるくらいしかいない予選参加者を3倍以上にふやすことなどをめざす。

 すそ野を広げるとともに、科学に秀でた高校生の才能を伸ばす工夫も大切だ。

 大阪大学は物理学五輪の日本代表選手は無試験で入学できる制度をつくった。こうした制度はもっと増やしていい。

 09年には茨城県つくば市で生物学、翌10年には東京で化学の大会が開かれることも決まった。03年の数学五輪が東京で開かれて以来のことになる。

 世界の優秀な若者に日本を知ってもらう願ってもない機会になる。迎え撃つ日本もいまから腕を磨いておきたい。

【朝日・天声人語】2007年07月28日(土曜日)付

 分割した画面を開きながら、それが何かを当てるクイズ番組があった。記憶は定かでないが、タワシかと思えばハリネズミ、はげ山のはずが実はラクダといった意外性の妙。ボタンを押す出演者が間違うたびに、お互い様の「木を見て森を見ず」を笑ったものだ。

 あと1日の参院選で、期日前投票が空前の出足という。クイズ番組の早押しとは違い、初めから森は見えているという票である。今回は、木を見る前に怒りを投じた人もいよう。

 選挙では、お粗末な年金行政、閣僚の事務所費や失言が盛んに論じられた。それを「小事(しょうじ)」とし、移ろう世論を嘆く言説がにぎやかだ。与党が大敗すれば景気は失速、外交が揺らぐという警告さえある。

 それらの当否はさておき、どんな投票行動も生活に影響する。それを承知で国民が怒る時がある。怒るなら小事ではなく、国家の針路や屋台骨を論じよとも言う。正論だが、肝心の政党や政治家が大事(だいじ)を扱うに値するかどうか。これこそ民主主義の超大事だろう。

 公示の日、安倍首相は秋葉原の電気街で「負けるわけにはいかないんです」と絶叫した。日の丸の小旗が一斉に打ち振られる秒の間(ま)に、首相は腕の時計に視線を走らせた。意外な余裕と見たが、同じ街でいま、店頭の大型テレビが与党苦戦の予想を伝えている。

 本日が期日前投票のピークらしい。その票が箱に収まったところで選挙戦は終わり、審判を待つ森が現れる。あすの「期日投票」には満を持したなりの選択があろう。思い切りボタンを押していただきたい。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 治安対策 「警察の問題」と考える浅薄さ

 治安問題は争点とならぬまま終わりそうだ。前々回の総選挙で各党が競い合うように治安対策の強化を訴えた時は、02年に刑法犯の認知件数が戦後最 多の約285万件を記録した直後で、検挙率も20%を割り込んでいた。昨年の同件数は約205万件に減少し、検挙率も約31%まで持ち直した。統計上は治 安に好転の兆しが見えるから、関心が薄れるのは無理からぬところかもしれない。

 しかし、いわゆる「体感治安」はますます悪化している。 銃器犯罪が続発し、幼児虐待は増加を続けている。少なからぬ小中高生がいじめにおののきながら学校生活を続けている現実も、看過できない。町の半鐘や公園 の車止めなどを狙う金属盗が全国で相次ぎ、パソコンを使った偽札作りも横行している。高齢者の家庭に侵入する強盗も目立ち出した。特急列車の中で女性に乱 暴する言語道断の事件まで発生し、それを周囲の乗客が見て見ぬふりをしたという嘆かわしい事態も明るみに出た。

 社会のモラルや規範意識、さらに人情までも、地に落ちたと実感させられる。ひったくりなどの窃盗犯が減少し、刑法犯の総件数を押し下げたが、景気や失業率が回復したことの影響が大きい。むしろ簡単に犯罪に手を染める人が増えているようにさえ映る。

  一方で、刑法犯の再犯率は上昇を続け、40%に迫る勢いだ。定職に就けず、犯罪を繰り返す層が広がっているわけで、刑務所が貧困な高齢者の収容施設と化し ていることも深刻な問題だ。所得格差や大量のフリーターの存在などは、将来にわたる治安面での不安材料と言わざるを得ない。

 治安の回復 を図るには、各種の教育を通じたモラルの回復、犯罪を誘発する24時間型社会の弊害の見直し、雇用の促進、低所得者対策などの総合的な施策が必要不可欠 だ。警察力の強化、充実だけでは解決は望めない。問われているのは、現代社会のあり方や価値観でもあり、政治が総力を挙げて取り組まねばならないテーマ だ。

 それにもかかわらず、各党のマニフェストでの取り上げ方はおざなりだ。たとえば自民党は「犯罪のない世界一安全な国づくり」を唱え ているが、日本の安全神話は崩壊しつつあるというのに随分楽観的だ。民主党は「治安、防犯の確保と総合的な銃器対策の推進」を掲げ、警察官の増員による警 察機能の拡充を図るとしている。公明党は防犯ボランティア団体の支援や暴力団の取り締まりの推進を挙げている。

 いずれも警察としての発 想の域を出ていないことが、情けなくもあり、もどかしくもある。治安問題を警察問題ととらえている限り、抜本的な対策は生まれない。自民、民主両党は03 年の総選挙で明確な根拠も示さずに「5年間で治安を回復させる」と約束していた。「統計上は約束を守った」と主張しても、有権者が納得するとは思えない。

毎日新聞 2007年7月28日 東京朝刊

社説:農相の政治資金 「訂正した」では済まされない

 不明朗な事務所費が指摘されている赤城徳彦農相に、「政治とカネ」に関する新たな問題がまた浮上した。今度は二つの政治団体の政治資金収支報告書に同一とみられる領収書のコピーを添付し、政治活動費として二重に計上していたというのだ。

  農相の事務所は「事務処理のミス。意図的ではない」と釈明し、報告書を訂正したという。だが、次々と問題が明らかになる中で「この件以外に二重計上はな い」という話をどれだけの人が信じるだろう。赤城農相自身も「単純なミスだ」と語ったが、せめて「きちんとすべての政治資金を精査し直す」程度は言わない と不信は募る一方である。

 今回の問題は、「赤城徳彦後援会」が03年分の収支報告書に郵送代計約20万円を計上する一方、農相が代表を務める自民党茨城県第1選挙区支部の報告書にも同額を計上し、同じとみられる郵便料金の領収書コピーが添付されていたというものだ。

  先の国会で焦点となった事務所費など経常経費とは違い、政治資金規正法では5万円以上の政治活動費の支出は領収書の写しを添付するようかねて義務づけてい る。しかし、今回、明らかになったように同一コピーであることが判明しなければ二重、三重の計上が可能となってしまうのである。

 農相に関しては、「赤城徳彦後援会」が父親の自宅を団体所在地として届け、10年間に約9000万円の経常経費を計上していたほか、別の関連政治団体が東京都内のオフィスビルから退去した後も事務所経費を計上していた問題も明らかになっている。

 政治資金規正法では、収支報告書の虚偽記載が認められた場合、5年以下の禁固、100万円以下の罰金が定められていることを知らないわけではないだろう。ずさんな資金管理にはあきれるほかない。野党が安倍晋三首相に任命責任を追及するのも当然だ。

 赤城農相だけではない。昨年来、自民、民主両党で政治とカネの問題が次々と発覚する中、国民は今、政治家全体に不信の目を向けているのではなかろうか。

 再三指摘している通り、今の政治資金収支報告書は「政治家はウソを記載しない」という性善説を前提に成り立っている。だが、もはやそれは崩れたというべきだろう。虚偽記載も十分あり得るという前提で、政治資金規正法を抜本的に見直すしかない。

 今回の農相の問題は、政治家がいくつもの関連政治団体、つまり複数の財布を持っているがゆえに起きているといっていい。自民党は政治資金を資金管理団体に一本化する内規を検討しているようだが、当然、内規ではなく法律で縛るべき話である。

 政治家本人が信頼されていない以上、現在、政党本部の政党交付金に関する支出にのみ義務付けられている公認会計士や監査法人による外部監査を、政治家個々の団体にも広げていくことも必要だ。参院選の結果にかかわらず、早急に検討する課題である。

毎日新聞 2007年7月28日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:こめやま久右衛門様御長人ニたのミ上ケ申候…

 「こめやま久右衛門様御長人(としより) ニたのミ上ケ申候」。寛文11(1671)年の甲府での長人(後の名主)の入札(いれふだ)、つまり選挙で投じられた票の文面だ。米山久右衛門という人へ の投票だが、漢字、かたかな、ひらがなのまぜ書きに、札に託したひたむきな思いがにじむ▲紙の大きさや書き方はまちまちで「三右衛門殿」と名だけの票、 「久右衛門殿か三右衛門殿」と2人への投票、また6人の輪番を提案した票もある。近世史家の川鍋定男さんは、この入札には個々の意思がみごとに表れている と指摘した(「争点日本の歴史5」新人物往来社)▲江戸時代には入札で村役人を決める地域も多かったが、甲府の例は現在残る入札で最も古いという。同じこ ろ、上州のある村では名主入札を前に神前で一同による次のような誓約が行われた。「親子兄弟を知らず、邪心を捨て、贔屓荷担(ひいきかたん)仕(つかま つ)らず、正直速(すみやか)に名主入札仕るべく……」▲すなわち私情や相談によらぬ正直--公正な投票をすると神に誓っているのである。川鍋さんの論文 によれば、入札は「銘々一己の存じ寄り」、つまり個々の存念の通りに投票するのが建前だったという。神に誓うといった形を取りながらも、かなり近代的な考 え方のようにも思える▲年金、格差社会、政治とカネ、教育、憲法などが争点となった参院選も、いよいよ明日投票となった。世論調査によれば、史上まれにみ る与党への大逆風が吹きすさぶ中での選挙である。ただそれがどうであれ、投票日に吹く風の向きと強さは有権者一人一人がこれから決めることだ▲問われるの が「銘々一己の存じ寄り」であることは、昔も今も変わりはない。ただ江戸時代の入札とちがって投票は規定通り書かないと無効になるのでご注意を。

毎日新聞 2007年7月28日 東京朝刊


【読売・社説】

参院選あす投票 有権者の冷静な視点が重要だ(7月28日付・読売社説)

 参院選はあす29日、投開票される。きょうで最後を迎える17日間の舌戦は、残念ながら、物足りなさが残った。

 今回の参院選は、衆院選のような「政権選択選挙」ではないが、激動期にある日本の将来を左右する重要な選挙だ。ところが、肝心の政策論争は一向に深まらず、閣僚の失言や疑惑ばかりに注目が集まった。

 原爆投下をめぐる久間章生・前防衛相の「しようがない」発言や、赤城農相の不明朗な事務所費問題などだ。

 無論、これらは見過ごせない問題だ。しかし、選挙で政党が本来競うべきは、政策の実効性や国の将来像である。

 参院選の最大の論点は、国民の生活に深くかかわる年金だった。

 当面の年金記録漏れ対策に端を発した後、長期的に安心できる年金制度をどう構築するかという、より本質的な論議に焦点が移ったかに見えた。

 与党は、基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げて現行制度を維持する、と訴える。民主党は、基礎年金の全額を税率5%の現行消費税で賄う、としている。

 与党が民主党案の財源と給付の関係の不明確さを追及すれば、野党は「現行制度は崩壊している」と切り返す。批判合戦に終始した結果、より実質的な論戦は中途半端になってしまった。

 今回の選挙で論じるべき政策課題は、年金だけではなかったはずだ。

 国と地方の長期債務残高が計800兆円に迫る今、財政再建は待ったなしだ。社会保障費の増加に対応するための消費税率引き上げの問題を含め、税財政改革の具体策の検討を急ぐ必要がある。

 日本にとって最も深刻な脅威である北朝鮮の核は依然、廃棄に向けた道筋が見えない。国民投票法の成立を踏まえ、新たな「国のかたち」を定める憲法改正の各論の議論も着実に深めたい。

 だが、これら重要課題の論戦は、国民の関心の高い年金問題などの陰に隠れて、最後まで盛り上がらなかった。

 厳しい逆風の下、与党が参院で過半数を確保できるかどうか、が焦点となっている。野党は、与党が過半数を割れば、「政権交代を実現するための第一歩となる」と主張する。これに対し、与党は、「政治が混乱し、『失われた10年』が再来する」と訴えている。

 選挙後にどんな政治状況を望むのか。投票にあたって考慮すべき一つのポイントだろう。

 選挙に付き物の、人気取りの政策や訴えに惑わされてはなるまい。有権者には冷静かつ複眼的な視点が求められる。
(2007年7月28日1時47分  読売新聞)

ビクター再建 迷走にケリをつけた市場の圧力(7月28日付・読売社説)

 松下電器産業の子会社、日本ビクターが、中堅AV(音響・映像)メーカーのケンウッドと経営統合することで合意した。迷走した再建策を決着させたのは、市場の圧力だ。

 ビクターは、8月にケンウッドと資本提携し、1年後に共同持ち株会社の下で統合する。ビクター株の5割強を持つ松下は、株式を売却する見通しだ。

 ビクターはテレビの開発で業界をリードし、家庭用ビデオ「VHS」をヒットさせた。しかし、デジタル化の流れに乗り遅れた。最近はヒット商品がなく、業績は低迷していた。

 過去の実績や技術力、ブランド力があっても、戦略を誤ると、経営の土台は揺らぐ。ビクターの低迷は、音質、画質の特徴を出しにくいデジタル技術の厳しさを象徴する。

 松下は1954年、創業者の松下幸之助氏の主導でビクターを傘下に収めた。再建を果たせなかった以上、そうしたしがらみを断ち切り、ビクターを手放すことを決断せざるを得なかった。

 曲折を続けたビクター再建に対し、市場の評価は厳しかった。

  松下がビクター株の売却方針を明らかにしたのは昨年末だった。ケンウッドなどが売却先に浮上したが、ビクターが反発し、実現しなかった。年明けには入札を 実施して、米投資ファンドに優先交渉権を与えたが、その交渉も決裂した。今回、ケンウッドとの再交渉で、ようやく合意にこぎつけた。

 昨年末に600円程度だったビクターの株価は、最近は300円台に急落している。こうした市場の圧力に加え、ブランド力の毀損(きそん)、社内の士気低下など、これ以上の迷走はもう許されない状況が、経営統合を促した形だ。

 ビクターとケンウッド合わせても、売上高は大手電機の10分の1に過ぎず、経営体力に差がある。両社は当面、成長分野のカーオーディオなどのカーエレクトロニクス事業に力を入れるという。

 経営統合が成功するかどうかは、技術の相乗効果を発揮したヒット商品の開発にかかっている。

 ビクターが投資ファンドに買収された場合には、技術流出も懸念された。ビクターの技術が切り売りされ、韓国や中国などの新興メーカーに渡ると、日本追い上げが加速する恐れもあった。

 家電など電機業界は企業数が多く、業界再編が遅れた。業績好調組と不振組の明暗も分かれている。

 名門ビクターが松下傘下から離脱する動きは、業界の再編・淘汰(とうた)を加速させる呼び水になるだろう。
(2007年7月28日1時47分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月28日付 編集手帳

 〈昔むかし〉竹取物語でかぐや姫が月に帰る場面 に、「翁(おきな)、今年五十ばかり…」とある。姫は地上で20年を過ごしたという。光る竹に姫を見つけたとき、「たけとりの翁」は30歳ぐらいだったの かしら◆〈平安時代〉源氏物語に、「今年ぞ、(光源氏が)四十になり給(たま)ひければ、御賀の事…」とある。「賀の祝い」とは長寿の祝いを指す。40歳 から10年ごとに祝い、四十の賀を「初老」といった◆〈江戸時代〉岡本綺堂(きどう)が描く捕物帳の主人公、「三河町の半七」は46歳で十手を返上し、隠 居している。作者は江戸の世を知る人のなかで育った。50手前のご隠居がいたのだろう。親分がちょっとうらやましい◆〈昭和〉石川達三が昭和24年に発表 した小説「風にそよぐ葦(あし)」に、60歳間近の登場人物が階段で難儀する場面があった。「老人にとってビルディングは難所だった」と。いま書けば叱 (しか)られよう◆〈きのう〉朝刊に日本人の平均寿命が載っていた。2006年は男性が79・00歳、女性が85・81歳、男女ともに過去最高を更新し た。女性は22年連続して長寿の世界一、男性はアイスランドに次いで2位という◆〈あす〉参院選の投票日である。年金など社会保障の青写真をどう描くかも 争点になった。長い歳月をかけて延ばしてきた寿命である。延びて良かったと、心から思える世に。
(2007年7月28日1時47分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】中国汚染食品 抜本的な対策が不可欠だ

 中国政府が、食品の安全に問題がある自国企業に輸出禁止を言い渡し、その会社名と輸出相手国、扱っている食品を当局のホームページで公表し始めた。当然の措置だが、最初の一歩に過ぎない。

 発がん性が指摘される抗菌剤が検出された日本向けのウナギの蒲(かば)焼きもその中に入っている。30日の「土用の丑」の日を前に、中国産ウナギが敬遠され、業界に打撃が広がっている。

 ホームページによると、日本向けでは約20社が、煮ホタテのくし焼き、カニの冷凍食などで輸出禁止となった。二酸化硫黄の残留物、大腸菌などが検出されたためだ。

 厚労省によれば、いずれも日本の検疫で違反が見つかり、廃棄処分などの措置がとられたものという。

  有害物質入りの中国産食品、医薬品による被害は世界に及んでいる。米国ではペットフードを食べた犬や猫が死に魚介類からは有害物質が検出された。中国産原 材料は使っていないという意味の「チャイナフリー」と銘打った商品も出始めた。パナマではせき止め薬を服用した患者が亡くなっている。北朝鮮でさえ「中国 の薬は偽物が多い」と不満が出ているそうだ。

 日本では歯磨き粉から毒物が検出され、煮物に使う土鍋には鉛が含まれていた。5年前には冷凍ホウレンソウの残留農薬が大きな問題になった。人命にかかわる被害である。日本の食肉偽装事件とは別次元の話だ。

 日本政府は20日、関係省庁と民間団体による緊急会議を首相官邸で開き、食品の安全に関する協議の開催を中国側に申し入れる方針を打ち出した。米国や欧州連合(EU)なども同様の動きに出ている。

 中国政府は関係者、企業の処罰や安全宣伝などで防戦に努めているが、それで済む問題ではない。なぜこうした問題が起きるのか、中国共産党政権下での人々の価値観や生命観、企業倫理の問題にまで踏みこんだ分析と抜本的な対策に乗り出すべきである。

 日本は防衛策として、昨年5月から輸入野菜の残留農薬を厳しく規制する「ポジティブリスト」制度を導入している。今後は、これに加え、同じ国の同じ種類の食品を一括して輸入禁止にできる改正食品衛生法の初適用の検討も必要となろう。

(2007/07/28 05:02)

【主張】関空第2滑走路 特性生かした活用を図れ

 大阪湾を埋め立てた関西国際空港のさらに沖合に建設していた第2滑走路が完成、来月2日にオープンする。

  新滑走路は長さ4000メートルで、3500メートルの現滑走路と合わせ、大型機の離着陸が可能な2本の滑走路を持つ日本初の「世界標準」型国際空港とな る。片方がメンテナンスで閉鎖されても離着陸できる「完全24時間」型の空港ともなる。関西ばかりでなく日本経済の活性化に寄与するものと期待されてい る。

 ただその前途は、必ずしも明るいばかりではない。

 まず国内旅客では、同じ関西にある大阪国際(伊丹)空港、神戸 空港との競合である。伊丹については、国土交通省も大型機を排除するなどして関空を優先する政策をとっている。それでもアクセスの良さなどから乗客の「人 気」度は高い。昨年開港した神戸も加え、これからも厳しい「競争」を強いられることになる。

 国際旅客では、中国をはじめアジア路線は好調で便数も増えつつある。反対に北米路線は、東京に本社機能を移す関西企業が増えたことなどからビジネス客が減り、便数も少なくなりつつある。これでは「24時間空港」も宝の持ちぐされになりかねない。

 活路を見いだすには、関空の特性を生かした使用を図るべきだろう。

 第1はアジア路線のさらなる拡大である。関西は地理的にも歴史的にもアジア諸国とのつながりが強い。現に、経済成長が著しい中国をはじめアジアとの関係を深めようとしている企業は関東や中部に比べても多いはずだ。このさい、各国に関空の利便性をPRしていくべきである。

 もうひとつは、すでに関西国際空港会社が打ち出している国際貨物の重視である。

  「ライバル」である成田空港や中部空港の滑走路が長短2本ないし1本で、貨物の受け入れ態勢が十分でなく、関空への需要が増えるとの見込みがあるためだ。 国際空港が生き抜くうえでの指針となると思われる。今後、新滑走路のある2期島に建設される貨物ターミナルの整備を急がなければならないだろう。

 国土交通省としてもこの機会に、国内の各空港による「機能分担」に指導力を発揮すべきだ。

(2007/07/28 05:01)

【産経抄】

 たしか参院選の公示前だったと思う。大阪のラジオ局の報道番組で「どの党に投票するか、もう決めてますか」と、街頭でマイクを向けられた少し高齢の女性の答えがおもしろかった。「うん決めてるよ。いつも後で後悔するんやけどな」。

 ▼推察するに、これまでの選挙では「風」の吹くままに投票してきた。こんどもそうするだろう。しかしその都度、後で「間違えたか」と悔やんできたということのようだ。自分自身を含めた日本人の投票行動を、みごとにつかんでいるようで、感心してしまった。

 ▼たとえば平成元年7月の参院選は消費税導入への反発に加えリクルート事件、宇野宗佑首相の女性問題と、自民党に三重苦の逆風が吹いた。結果はもちろん惨敗で、参院の与野党が逆転する。議席を倍増させた社会党の土井たか子委員長は「山が動いた」と胸をはったものだ。

 ▼ところがそのために政治が混迷を始めると、たちまち有権者は「後悔」したらしい。わずか7カ月後の衆院選では自民党が300近い議席を得て大勝したのだ。逆のケースもある。今回の与党苦戦は、自民党が圧勝した一昨年の衆院選の反動という見方もあるからだ。

 ▼むろん有権者の気まぐればかりに非があるのではない。ろくすっぽ政策論争もせずに「風」まかせ、それも「揚げ足取り」に近いネガティブキャンペーンに終始している政党や政治家が、悔いの残る民意を生み出してきたといえる。まさに「何たる選挙戦」である。

 ▼伝えられる選挙情勢だと、自民党は平成元年につぐ惨敗のようだ。そうなるとまた、政治家の皆さんの大好きな「政局」である。多くの政策課題や外交がそっちのけになるのは請け合いだ。今度も「後悔先に立たず」となるのだろうか。

(2007/07/28 05:01)


【日経・社説】

社説1 温暖化防止に経済的手法の早期導入を(7/28)

 京都議定書で定められた温暖化ガス排出削減の目標を、この程度の対策で達成できると思っているのだろうか。環境、経済産業両省は排出削減の目標達 成計画の見直しに向け合同審議会に中間報告案を示したが、抜本的な政策転換や新たな手段の導入は一切なかった。日本政府の真剣さが疑われるような素案であ る。

 素案は排出削減が遅れているオフィスなど業務部門や家庭部門の対策強化を柱にし、公的施設の排出削減のほか、住宅や建築物の省エネ 規制の拡大などを織り込んでいる。だが、排出量が最も多い産業関連部門は日本経団連の「自主行動計画」の参加業種拡大の要請にとどめている。排出削減に経 済的価値を持たせ、市場原理によって削減を推し進める代表的な手法の排出権取引は2013年以降に導入を先送りし、環境税導入も議論を避けている。

  議論のたたき台とはいえ、こんな腰の引けた対策では目標達成はおぼつかない。安倍晋三首相はドイツで開かれた主要国首脳会議で50年に世界の排出量半減を 提案し、首脳宣言に盛り込んだ。京都議定書の目標をまず達成してこそ、半減への道筋もつけられる。首相が温暖化問題で主導権を発揮しようと動いても、官僚 が小手先の対応に終始しているようでは、日本の提案が説得力を持ち得ない。

 日本の温暖化ガスの排出量は05年に1990年比で約8%増 加している。議定書で定められた6%削減という目標達成には相当の覚悟が要る。しかも新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原子力発電所が被害を受け、7基の原発が 1年以上、運転再開できない見通しになった。原発の稼働率を高めればある程度の削減が見込めるという計算も通用しなくなった。状況は極めて厳しい。

  排出削減に向けたこれまでの対策をすべて抜本的に見直し、もはや聖域なしという考え方で練り直す必要がある。対策が必要なのはオフィスや家庭だけではな い。産業部門も経団連の自主行動計画にまかせたままでなく、排出権取引を早急に導入するなど、政策を転換すべきだ。産業部門の排出削減幅も、自主行動計画 が目標としている0.5%からさらに踏み込む必要があるだろう。

 地球温暖化防止は、排出半減を達成するまで息の長い取り組みが必要になる。低炭素社会への移行に向け可能な限りの対策をできるだけ早く実施し、定着させる方が望ましい。両省の合同審議会が8月にまとめる中間報告には、日本の決意の見える提言を盛り込むよう求めたい。

社説2 連鎖株安が発する警告は何か(7/28)

 米国を起点に株安の連鎖が再び起きた。米国 で信用リスクへの懸念が台頭したことが背景にある。ニューヨーク市場のダウ工業株30種平均は先週、1万 4000ドル台の最高値をつけた後、調整局面に入り、26日には今年2番目の下げを演じた。27日の東京市場の株価も大幅安だった。2月末には中国発で世 界の株価の連鎖安が起きたが、今回は米国が震源地だけに、投資資金の流れの変化は注意深く見守る必要がある。

 米国で「サブプライム」と 呼ばれる信用度の低い個人向け住宅ローンの焦げ付きが増え、同ローンを組み込んだ金融商品が大幅に下落した結果、信用リスクを警戒する空気が市場に広がっ た。投資家はリスクを伴う資金の供給に慎重になり、米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントがクライスラーを買収する資金の調達を延期せざ るを得なくなるなどの事態も起きている。

 ただし、バブル崩壊後の日本のような信用収縮をもたらすとの見方は少ない。最近の金融市場の動 きは、「コストとリスクを意識せず、緩みすぎていた金融が正常化する過程」(米有力ストラテジストのロバート・ダガー氏)といえる。低金利の円を借りて相 対的に金利の高い外国の通貨や資産などに投資する「円キャリー取引」の解消とみられる動きも、株安と並行して進んでいる。

 国際通貨基金(IMF)は世界経済予測を見直し、今年の米国の経済成長率を小幅に下方修正する一方、世界全体では5%台に上方修正した。実体経済は総じて好調だ。忘れていたリスクが織り込まれれば、市場は落ち着きを取り戻すであろう。

 もちろん、円キャリー取引の巻き戻しに伴う円高がどこまで進むかなど、注意すべき点はある。8月には日銀の追加利上げも予想されるが、米景気の先行きや海外市場の動向に目を凝らす必要がある。

  米国株が調整局面に入る前から、日本の株式相場は相対的にもたついていた。参院選後の政局が混迷し、日本の経済効率化や政府のスリム化に向けた構造改革が 停滞するとの懸念があるとすれば、株安が発するシグナルは軽視できない。株式市場は参院選後も改革路線を後退させない決意を求めているように見える。

【日経・春秋】春秋(7/28)

 着陸する飛行機の窓から、たまたま打ち上げ花火を眺めたことがある。投網のように光の輪が一瞬で開く。真上から見下ろしても地上と同じ形なのが面白い。花火の真の姿は2次元の円ではなく、3次元の球だ。

▼ 今宵(こよい)、江戸中期の「川開き」に始まる東京隅田川の大会で、2万2000本もの花が咲く。圧巻は最後の5分間だそうだ。2つの会場で3000発ず つ上げるというから、1秒間に10発。超高速の爆音と閃光(せんこう)はさぞ盛大だろう。間髪いれずに連射するのが現代流なのか。風情まで吹き飛んでしま わないか、ふと心配になる。

▼球状に広がる花火は意外に歴史が浅い。第1号は明治7年に、花火師の十代目鍵屋弥兵衛が完成した。江戸の花 火の材料は黒色火薬と鉄粉くらいのものだった。さほど明るくはない橙(だいだい)色の線が一筋。シュッという音とともに20メートルほど昇る。ゆったりと した時間と川の流れに、人々の呼吸が重なる様が目に浮かぶ。

▼かつて玉屋と鍵屋が競い合った隅田川の花火大会は、都心の密集地という制約 がある。直径30センチの一尺玉など、ズドンと重く腹に響く大輪の作品は実は見られない。その分、玉数と速度の勝負となる。参院選で数々の政策案を打ち上 げる自民党と民主党に例えたら、花火師の方々に失礼だろうか。〈遠花火開いて消えし元の闇〉寺田寅彦


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2007年7月27日 (金)

7月27日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月27日朝刊)

[21世紀ビジョン]策定に向け広く公論を

 県は沖縄振興計画の期限切れに備え、沖縄の将来像や目標などを盛り込んだ「沖縄二十一世紀ビジョン」(仮称)づくりに取り組んでいる。作業はまだ緒についたばかり。

  沖縄振興特別措置法に基づいて政府が策定した沖縄振興計画は、計画期限の二〇一一年度まで、残すところあと五年。計画終了後、どのような制度の下で沖縄振 興を進めるか、従来の仕組みを大枠で踏襲するのか、それともまったく新しい制度を導入するのか、今のところ、まったく白紙の状態だ。

 今から取り組まなければならない大きな課題であり、県だけに任せていいものではない。衆知を集め公論を起こし、ビジョンをまとめていく過程自体にこれまでにない工夫が求められる。

 沖縄の振興策は、多府県と異なる独自の手法が取られている。国が法律をつくり、その法律に基づいて国が振興計画を策定するというものだ。

 復帰の際に策定された沖縄振興開発計画以来、十年単位で三次にわたる計画がつくられ、〇二年度から現行計画がスタートした。四次にわたる計画の基本性格は変わっていない。

 計画の原案は県がつくることになっているが、米軍基地の扱いなど県の意向が計画に反映されなかったことも、過去には一度ならずあった。

 高率補助を盛り込んだこの仕組みは、道路、空港、港湾、上下水道、農林水産などの基盤整備を進める上で大きな威力を発揮した。

 だが、この仕組みは歴史的な役割を終えたと思う。

 生活基盤や生産基盤は確かに整備されたが、「民間主導の自立型経済」の構築には結び付かず、むしろ財政依存、国依存の体質を強めている。

 かつて沖縄振興は「県民の苦労と犠牲に報いる国の責務」と位置付けられていたが、今や沖縄振興策は政権与党内部から「基地の見返り」だと公然と言われるようになった。

 自立自助の精神はむしろ後退しつつある、との認識が県内各界に広がっている。マイナスの部分が目立つのだ。

 振計後のビジョンづくりは道州制の導入や大規模な米軍基地の跡地利用とも深くかかわってくる。審議会やシンクタンクを活用する程度の従来のやり方ではとても手に負えないだろう。

 県民の合意形成を図っていくために、従来にない手法を検討してもいいのではないか。ビジョンづくりにできるだけ多くの県民が関心を持ち、参画していけるような取り組みが大切だ。

[ミュージックタウン]活性化の材料は揃った

 音楽をキーワードにした新たな街づくりが始まろうとしている。沖縄市の胡屋十字路沿いにきょうオープンするコザ・ミュージックタウン「音市場」は、その中核拠点施設だ。

 島田懇談会事業(沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業)で取り組まれるプロジェクトだが、戦後はぐくまれたコザの音楽文化を支援する施設としてだけでなく、地域活性化に向けた核になるよう期待したい。

 胡屋十字路周辺は沖縄市の中心市街地だ。十字路から嘉手納基地第二ゲートに至るゲート通りの両側には、米兵や観光客が訪れるライブハウス、クラブ、バーなどが軒を連ねている。

 夕方になるとビートの利いたハードロック、レゲエ、ラップや今風のヒップホップメロディーが路上に漏れてくる。中央パークアベニューしかり。

 それだけではない。ミュージックタウンの横を中の町飲食街の方に下れば、三線のリズムに乗った民謡、島唄も聞こえてくる。客のリクエストにプロの民謡歌手が歌い、プロの伴奏で客が島唄を楽しむ光景も見られる。

 琉球音階と和洋のリズムが入り交じる。それが違和感なく融合するのがコザの魅力であり風土といえよう。

 ミュージックタウンは、これらの拠点施設として街に溢れる音楽資源を包括的にまとめ、地域活性化の起爆剤にするのが狙いだ。

 だが、抱えている課題も多い。まず、一番街を含めて周辺商業地に空き店舗が多く、「タウン」に期待される誘客能力に連動できるのかどうか。

 求められるのは経済波及効果だが、地域が共に動かなければ体系的、永続的な街づくりはできまい。「タウン」はあくまでも活性化の拠点なのであり、主役は地元住民と地域の文化だということを忘れてはならない。

 コザはミュージシャンを魅了する。ライブハウスを案内するガイド養成も順調に進み、市民参加型の関連企業もできた。「タウン」で活性化の材料は揃ったのであり、次は新しい街づくりに市民の英知を傾けることだ。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月27日 朝刊 1面)

 夏休みに入って児童生徒のスポーツ活動はますます活発になり、朝早くから練習に励む子供たちの姿を目にする。この時期、気をつけてほしいのが熱中症だ。

 熱中症は熱失神、熱疲労、熱けいれん、熱射病に分けられる。めまいや失神などを起こす熱失神や脱水で頭痛、吐き気などが見られる熱疲労は、涼しい場所で衣服を緩めて寝かせ、水分を補給することで通常は回復するという。

  熱けいれんは大量の発汗にも水だけしか補給しなかったことで血液の塩分濃度が低下し、足や腕などの筋肉に痛みを伴ったけいれんが起きる。先日の高校野球の 試合中、選手の一人が足のけいれんで退場し、病院で手当てを受けた。後で聞くと「いつもの試合の時より水分補給が少なかった」と話していた。

 熱射病は体温の上昇で中枢器官に異常をきたし、意識障害を起こす。死亡率も高い。「炎天下での長時間の練習」というイメージが強い熱中症だが、屋内競技でも起こる。全国では剣道や柔道、バスケットボール、バレーボールで死亡例が報告されている。

 予防策の第一が水分と塩分の補給。ひと昔前のような「練習中は水を飲むな」という「根性論指導者」はいないと思うが、のどが渇いてからではなく、こまめな補給が大切。

 熱中症は体調不良時にも起こりやすい。予防策で最も重要なのは、子供たちの体調把握・管理に務める指導者や父母の目配りと気配りではないだろうか。(船越三樹)


【琉球新報・社説】

メタボリック 県民一人一人が危機感を

 県民のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の広がりが危機的な状況になっていることが、県が昨年11月に実施した県民健康・栄養調査で分かった。
 40歳以上のメタボリック症候群該当者とその予備群の割合は、男性で5人に3人、女性では10人に3人の計算である。全国平均は、男性が2人に1人、女性では5人に1人である。県内は男女とも全国平均を上回っている。
 高カロリー、高脂肪の食事に加え、運動不足が肥満を招き、メタボリック症候群となる。ウオーキングの習慣化、食生活の改善などに今、県全体を挙げて積極的に取り組まなければ、取り返しのつかない事態になる危険性がある。
 メタボリック症候群は内臓への脂肪蓄積が一因となって高脂血、高血圧、高血糖などを重複して発症した状態を指す。動脈硬化を起こすことによって、狭心症や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などの発症率が高まる。結果的に、平均寿命にも大きな影響を及ぼすことになる。
 県は1995年に「世界長寿地域宣言」を出した。しかし、2000年の都道府県別生命表では、県内男性の平均寿命が95年の4位から26位に転落。健康おきなわ2010推進県民会議が03年に「長寿の危機健康アピール」を出す事態となった。
 この間、県をはじめ医師会、各自治体などは県民の健康づくりに取り組んできた。しかしながら、肝心の県民に危機感が薄いのではないか。
 肥満になると少しの距離でも歩くことがおっくうになり、階段も避けがちになる。4、50代は働き盛りだが、体力の低下もあって蓄積された疲労がなかなか取れない。休日に運動しようにも、その気になれない人も多いだろう。
 島袋充生・琉球大医学部講師らが実施した疫学調査で、メタボリック症候群の人はそうでない人に比べて、心筋梗塞など心臓血管系の病気になる危険性が男性で約2・5倍、女性で約1・8倍になるとの結果が出ている。
 一人一人が健康は自らの問題との自覚を持たない限り、メタボリック症候群によって病に倒れる危険性が付きまとう。
 厚生労働省の試算では、県内の医療費は対策などを講じなければ、12年度には05年度より約1千億円増の4306億円に上ると推計している。
 国民健康保険は自治体の財政を圧迫し、保険料の引き上げとなって県民にはね返ってくる。
 誰しも健康でありたいと願う。それを獲得するためには行動へと移すことが必要だ。運動不足がさらに肥満を進行させる。その悪循環を断つことなしに、健康は望めない。

(7/27 9:38)

中国でコメ販売 農産物輸出拡大の弾みに

 日本産のコメの販売が中国の北京と上海で始まった。小売価格は中国産のブランド米と比べて10倍程度、一般のコメとの比較では20倍も高い。当初は富裕層に売り込み、年間消費量約1億3千万トンといわれる中国市場に浸透を図っていく考えだ。
 日本国内での農畜産物需要は頭打ち状態にある。海外に市場を広げることは、日本農業の活性化にもつながる。何より生産者の意欲を大きく高めることになる。
 中国の巨大市場でコメをはじめとする日本の農産品の消費者を獲得しなければ、日本農業の大きな発展はないだろう。日本の主要農産品であるコメの中国販売が農産物輸出拡大の弾みになることを期待したい。
 コメの対中輸出は4年ぶりに再開され、新潟県産コシヒカリと宮城県産ひとめぼれの計24トンが第一便として輸出された。
 小売価格はコシヒカリが2キロ当たり198元(約3200円)、ひとめぼれが188元(約3千円)と割高である。
 その価格差を縮めることが課題だが、日本と中国の生産コスト差は埋めようがない。価格差解消にはおのずと限界がある。値段に見合った価値を消費者が見いだせるよう、高い品質を提供、アピールするなどの販売戦略にも力を注ぐべきだろう。
 政府は2013年に農畜水産物の輸出額を、04年の約3740億円から1兆円に増やすことを目標に掲げている。それには年率15%程度伸ばす必要がある。
 農産物の輸出は06年までの5年間でナガイモが7割増、リンゴは9・3倍になった。
 01年の牛海綿状脳症(BSE)発生で停止された香港への牛肉輸出も今年、再開された。このため今年の農畜産物輸出額は前年同月比約20%増で推移している。この伸びを持続させる必要がある。
 輸入国は見返りとして、日本にも輸入を求めることが十分考えられる。安い農産品が流入すれば、国内農家には大きな打撃となる。
 政府は今後、農産品の輸出と輸入の均衡をどう図っていくかにも、知恵を絞る必要がある。

(7/27 9:37)

【琉球新報・金口木舌】

 大学時代の友人からはがきが届いた。暑中見舞いかと思ったら、参院選比例代表候補者への投票依頼。思わず候補者のプロフィルに見入った
▼参院選も「3日攻防」に入った。運動員や支持者はあらゆるつてを頼って、支持を広げようと躍起になっているのだろう。頭のどこかに、旧友の推す候補者が残ったことだけは確かだ
▼ところで「3日攻防」という言葉は沖縄特有だ。選挙戦最後の3日間の取り組みで勝敗が決するという意味合い。10年ほど前まで「3日戦争」と言ったが、沖縄戦の体験なども踏まえ不穏当として「攻防」に改まった
▼ただ、沖縄特有の表現の背景には選挙戦の激しさもあろうが、基地問題や高失業率などの問題を抱える中で、選挙を通して政治や社会を良くしたいという県民意識の強さもあったと思う。それが投票率にも表れた
▼参院選だけで見ると、復帰前の1970年の国政参加選挙は83・64%で、その後も約75―82%を維持した。しかし、89年に69・16%、92年に58・51%に低落して50%
台が続き、4月の参院補選では47・81%と、ついに5割を切った
▼有権者の半数が棄権して、政治や社会が良くなるとは思えない。運動員だけでなく、有権者ももっと熱くなりたい。

(7/27 9:35)


【東京新聞・社説】

対中コメ輸出 はしゃぎ過ぎは禁物だ

2007年7月27日

 中国へのコメ輸出が四年ぶりに再開され、二十六日から北京や上海で店頭に並んだ。日本政府は「攻めの農政」の切り札にと意気込むが、急激な拡大は望めず輸入許可には中国の冷徹な戦略がある。

 北京の販売開始式には参院選投票日を目前に、赤城徳彦農相も参加。事務所費問題で目立った渋面から一転、晴れやかな笑顔を見せた。

 コメ輸出では麻生太郎外相が数字をあげ中国の方が日本よりコメが高く売れるのは「アルツハイマーの人でもわかる」と発言し、陳謝した。

 わずか二十四トン、トレーラー一台分の輸出に閣僚が、ここまで興奮するのは、中国へのコメが安倍晋三政権が掲げる「攻めの農政」の第一歩と見なされているため。中国は「二億トン市場」になると威勢がいい。

 しかし、十三億の人口を抱える中国は食料の自給を原則としており、主食のコメの輸入を野放図に拡大することはありえない。

 ただでさえ、中国には二〇〇一年の世界貿易機関(WTO)加盟で安い農産物が流入し、人口の七割を占める農民の農業所得低下が深刻だ。

 輸入米の値段は中国産に比べ約二十倍で日本の販売価格より高く、極端な富裕層しか買えない。著しい貧富の差に歴史的な「反日」感情が重なりコメ輸入に反感は強い。

 共産党が厳しく統制するメディアでは感情的批判は影をひそめているが、統制の緩いインターネットへの書き込みには反発が渦巻いている。

 「二十四トンのコメを買えば中国では千戸の村が一年食えるはず」「貧しい中国の農民は守られず、日本は中国のコメを拒絶し農民を守る」

 このため、政府はシンクタンクの研究者らを動員し「わずかな輸入では中国のコメ市場に影響はない」と説得の書き込みをさせている。

 四年前に中国の日本米輸入が途絶えたのは、日本が中国産野菜の残留農薬規制を強化したことへの報復措置だ。中国側はコメに対する検疫を強化し、輸入を禁じた。

 中国産農産物の安全が問題になり規制が強化されようとしている今、あえて中国はコメ輸入を再開した。

 それは日本に中国産の野菜やコメの輸入拡大を求め、食品安全をめぐる交渉を有利に展開する狙いがある。「攻め」の一方で安い中国産を迎え撃つ体制は整っているのか。

 いかに、選挙前とはいえ、わずかばかりのコメ輸出の再開で閣僚が有頂天になる態度を見せるのは賢明ではない。中国側に足元を見透かされ、今後、農産物貿易や安全性をめぐる交渉の立場を弱くするだけだ。

タリバン これ以上犠牲を出すな

2007年7月27日

 アフガニスタンの旧政権タリバン勢力が韓国人二十三人を拉致しそのうち一人を殺害した。タリバンの残虐な行為は許されない。すべての人質を解放し、これ以上の犠牲者を出してはならない。

 タリバンに拉致された韓国人は、韓国のキリスト教会が派遣した「医療奉仕団」の一行で、医学生や看護師らが含まれている。アフガン南部カンダハルの病院などで医療奉仕活動を行った後、首都カブールに戻るところでタリバン勢力の人質になったという。

 韓国、アフガン両政府は人質救出のため、タリバン側と接触し、人質解放交渉を進めてきた。韓国人人質の安否が心配されている中で、交渉期限が再三、延長され、韓国の家族らが「無事解放」に望みを託していた矢先の衝撃的な「殺害」ニュースだった。

 タリバン勢力は、アフガン政府に対し収監中のタリバン兵士らの釈放を要求し、政府側が応じないため人質を殺害したと主張している。

 二〇〇一年の米英軍によるアフガン攻撃によりタリバン政権は崩壊したが、昨年ごろから勢力を盛り返して米軍や北大西洋条約機構(NATO)派遣の国際治安支援部隊と激しい戦闘を行っている。

 タリバン勢力は米英軍の撤退などを要求し、要求実現の一環として、人道支援の国連、非政府組織(NGO)メンバーらに対する拉致、誘拐などを繰り返してきた。

 今回の韓国人拉致も同様の行動である。アフガン国民の安定のために支援を志している人たちを脅迫し、しかも殺害するなど、卑劣な行為だとしか言いようがない。

 さらなる犠牲者を出すことなく人質が解放されることを願ってやまない。アフガン、韓国両政府は救出に必要で可能な限りの手段を尽くしてもらいたい。

 アフガン渡航前の十分な現地情報の収集と、緊急事態の発生時の対応策や訓練など、人道支援でも銘記すべき点であろう。

 アフガンでは、タリバン政権崩壊以後、国際社会の援助を受けて大統領や議会を選出し、曲がりなりにも国家の仕組みを整え、祖国復興・再建事業が進められてきた。

 しかし、タリバン勢力は農村に浸透し、国際テロ組織アルカイダと連携しながら、隣国パキスタンの国境地帯を有力な根拠地としているといわれる。

 カルザイ政権は国際社会の支援をもとにパキスタンとも協力し、タリバン勢力の拡大を防ぎ、農村などの民生安定に導くことが欠かせない。

【東京新聞・筆洗】2007年7月27日

 「三越には青空もございます」というCMに感心した のは一九八〇年代だったか。小売業の売上高日本一、何でもそろう三越百貨店が、別荘地分譲も手がけたころのコピーと記憶する▼そのころ渋谷の西武は、売 れっ子の糸井重里さんを起用して「おいしい生活」「不思議、大好き」のヒットコピーを連発、「モノ」だけでなく「文化」も売る情報発信基地として消費文化 をリードした▼バブルがはじけて消費不況に入った九〇年代末、九兆円を超えた百貨店売上高は二〇〇六年まで十年連続で前年割れとなる。時代の寵児(ちょう じ)だった西武は、業績不振から〇三年にそごうと経営統合、ミレニアムリテイリングと名を変え、さらに〇六年六月にセブン&アイ・ホールディングスの完全 子会社となる▼この「セブン…」は、イトーヨーカ堂の子会社セブン-イレブンが、大きくなって親を吸収したものだ。米国由来のコンビニエンスストアは六九 年に日本に上陸。セブン-イレブンの前身ヨークセブン一号店が誕生したのは七四年だ▼それがわずか三十年ほどでスーパー、デパートをのみ込み、売上高五兆 三千億円を超える巨大流通グループとなった。百貨店四位に低迷する老舗・三越が、販売力の強い伊勢丹との統合を模索するのも流通戦国時代の必然なのだろう ▼伊勢丹と三越がある「新宿三丁目駅」を通って明治通りの地下で渋谷、新宿、池袋を結ぶ東京メトロの新線・副都心線が来年六月にオープンする。三副都心を 舞台にした新たなデパート戦争が、消費の活性化につながればなによりだ。


【河北新報・社説】

韓国人人質殺害/許せないタリバンの所業

 アフガニスタンで韓国人ボランティアの男女23人が旧政権タリバンに拉致され、解放交渉が続けられていたが、人質の1人が殺害されて遺体で見つかった。

 タリバン側は拘束中のメンバーの釈放などを要求しており、応じなければ人質をさらに殺害すると警告している。

 タリバンにどのような主義主張があるにせよ、民間の外国人を拉致して要求を突き付け、見せしめの形で人質を殺害することには、いかなる正当性もない。卑劣極まりない犯罪行為だ。残る人質全員の早期解放を強く求めたい。

 交渉を続けているアフガン政府や韓国政府は非常に厳しい立場に立たされている。要求を拒否すれば、残る人質の命があぶない。だが一部でも取引に応じれば、今後さらに拉致事件を招く結果につながる。

 タリバンに影響力を持つ隣国パキスタンや、イスラム教聖職者、米国などとの連携や協力が欠かせない。内外のあらゆるルート、手段を通じて人質解放が実現するよう望みたい。

 今回の事件は、米英軍による軍事攻撃で政権から追われたタリバンの勢力回復ぶりと、アフガンの治安悪化を顕著に示すものと言える。米軍や国際治安支援部隊、アフガン国軍などが掃討作戦を続けているが、成果は上がっていない。

 それにしても、今回のような大人数が拉致されるケースは極めてまれだ。
 拉致された一行は韓国のキリスト教会の牧師や信徒らで、南部カンダハルの病院などでボランティア活動をするため、13日にアフガン入りしたという。そして19日に大型バスでカンダハルから首都カブールに向かう途中に襲われ、拉致されたとみられる。

 アフガンでは最近、陸路での都市間移動が特に危険とされていた。それだけに、大型バスで大勢が移動するという今回の行動には批判の声もある。

 安全対策や危機意識に欠けるところはあったかもしれない。だが今は批判よりも、無事解放に向けて全力を挙げることと、他山の石として今後に生かしていくことが大事だろう。

 日本にとっても人ごとでは決してない。
 アフガン復興支援で、政府や非政府組織(NGO)関係者が現地で活動している。

 在アフガン日本大使館によると、6月現在、NGO関係者を含めて在留邦人は143人に上る。

 これまでも現地で日本人が殺害されたり、爆弾テロに巻き込まれて負傷したりするケースがあったが、テロや拉致の直接の標的となる可能性がある。

 外務省は韓国人拉致事件を受けてアフガン全土に「避難勧告」を出した。国外退避など安全確保に万全を期すべきだ。

 イラクでは泥沼の内戦状態が続き、解決のめどは立たない。アフガンもまた、イラクのような状態に陥るようなことがあってはなるまい。そのために国際社会が何をすべきか、検討を急ぎたい。
2007年07月27日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 電車を緊急停止させた私鉄があれば、自宅で机の下に潜り込んだ住民も。一部の事業所で先行導入している気象庁の「緊急地震速報」。新潟県中越沖地 震で速報が生かされた一例だ▼大地震の初期微動をとらえ、やって来る揺れの震度や到達時間を予告する。震源近くは間に合わないものの、到達まで数秒から十 数秒の余裕があれば身を守れる。想定震源域が沖合になる宮城県沖地震での減災効果は大きいはず

 ▼ テレビなどでの一般提供が10月1日始まる。そのときの行動指針を「心得」の形で気象庁がまとめている。家庭では「頭を保護し机の下に。外に飛び出さな い」▼大型店・集客施設では「係員の指示に従う」とある。係員の誘導は大丈夫か。客が出口に殺到したら。怖いのはパニック。一般提供が当初より半年延びた のも集客施設での混乱が懸念されたからだ

 ▼岩手県南沿岸に防災に関する言い伝えがある。「津波てんでんこ」。家族が共倒れした過去の教 訓から親にも子にもかまわず、てんでんばらばらに逃げろ、自分の身は自分で守れということ▼「速報時代」が来ても基本は同じ。一人一人がそのときの状況を 想定し心構えをしておくことだ。気象庁はてんでんこにならず自治体や施設と手を携え早急に「心得」の浸透を。一般提供まであと2カ月だ。

2007年07月27日金曜日


【京都新聞・社説】

アフガンの拉致  NGOの安全守らねば

 アフガニスタンで韓国人グループ二十三人が旧政権タリバンに拉致された事件が、内外に衝撃を与えている。
 発生以来、一週間が過ぎ、犠牲者も出た。一刻も早い人質の解放を願うばかりだ。
 同時に、国際社会のアフガン支援のあり方を見直す必要がある。
 拉致された韓国人たちは、人道支援ボランティアを目的に入国した宗教団体関係者で、タリバンは解放の条件として拘束中の仲間二十三人の釈放を要求するなど、カルザイ政権を悩ませてきた。
 交渉の過程では、金銭の要求もあり、タリバン側は外国人拉致を身代金とカルザイ政権の信用力低下の両面狙いで行っているとも見られる。
 タリバンによる拉致は今年に入ってからだけでも、三月のイタリア紙記者ら三人、四月のフランス人男女ら五人、と続いている。以前は比較的安全といわれた首都カブールも、治安が悪化しており、六月に起きた自爆テロでは日本人二人も重軽傷を負った。
  日本国際ボランティアセンター(JVC)の一員としてこの五月と六月、カブールから車で約三時間の位置にあるジャララバードで保健医療や衛生指導にあたっ た西愛子さん(京都府立医大看護学科卒)によれば、滞在中は日用品や医薬品を買うのも現地スタッフに依頼するなど警戒が必要だったという。
 民間人の人道支援活動について、イラク戦争をめぐっては国会でも多くの議論が交わされた。それに比べ、アフガンでは議論が低調だ。安全面も含め検証をし直す必要がある。
 憂慮されるのは、米軍や国際治安支援部隊(ISAF)など外国軍の活動が、非政府組織(NGO)をかえって危険にさらしている疑いが強いことだ。
 アフガンでは米国が二〇〇三年に地域復興支援部隊を発足させ、巡回医療活動を始めた。JVCなどによれば、その結果、軍とNGOの区別がつけにくくなり住民の外国軍への反発がNGOにも向けられる危険性が高まったという。
 本来、武器を持たないNGOの安全は住民の信頼しかない。軍の介在が、その安全の基盤を崩しているなら、人道支援が成り立たなくなる。
 今回の韓国人グループ拉致でタリバンは当初、同国駐留の韓国軍撤退も要求した。年内撤退が決まっていると知り、要求を取り下げたが、外国軍への反発は、イラクと共通するものがある。
 日本政府には今春、文民警官派遣の意向打診が欧州連合からあった。だが今日のアフガンは、治安維持も復興支援も軌道に乗らないまま、民衆の不満が高まりタリバンの同調者を増やしている。
 韓国人グループの拉致事件はひとごとではない。日本政府もできることがあれば何でも協力したい。各党も、武装組織の派遣がもたらすNGOへの危険性について、関係者を呼んで検証するべきだ。

[京都新聞 2007年07月27日掲載]

最低賃金見直し  格差是正の具体策競え

 先の国会では格差解消が最大の争点だったはずだ。中でも格差是正の「切り札」として打ち出されたのが最低賃金(最賃)の引き上げである。
 ところが、参院選で格差論議が低調なのはどうしたことか。最賃引き上げの法案が国会で継続審議になったとはいえ、与野党とも最賃の引き上げを選挙公約にあげている。そうであるなら具体的な中身を国民に示し、もっと積極的に格差問題について語るべきだ。
 最賃は毎年、中央最低賃金審議会の答申を参考に、各都道府県の審議会で決定している。二〇〇六年度の最賃の全国平均時給は六百七十三円(京都府六百八十六円、滋賀県六百六十二円)だった。
 確かに一日八時間、月二十二日働いても月収は十二万円にも満たない。これでは、働く意欲がなくなってもおかしくはないだろう。しかも、最賃で働いて得た月収が、生活保護費より下回る地域があることも分かってきた。
 そこから浮き彫りになったのが、まじめに働いても生活保護水準以下の収入しか得られない、いわゆる「ワーキングプア」(働く貧困層)だ。四百万人とも六百万人ともいわれる。この貧困層の解決策の大きな柱が、最賃の引き上げというわけである。
 「宙に浮いた年金」問題などで、最低賃金法改正案は宙に浮いた格好となったが、参院選は仕切り直しといえよう。
 自民党は「適切な引き上げを早急に実現する」としているが、最賃額や上げ幅は示していない。経済成長で国民生活を底上げする考えだろうが、与党としては具体性に欠ける。
 民主党は「三年程度で段階的に引き上げ全国平均で千円にする」と主張している。共産、社民両党も「千円」を目標に掲げる。だがこんな大幅引き上げが可能なのか。こちらも実効性に疑問がつく。
 景気回復の実感が薄い中小零細企業、特に地方経営者にとっては最賃の引き上げは経営を圧迫しかねない。「引き上げは失業者を増やすだけ」という反発もうなずけなくはない。
 日本経済の下支えをする中小零細企業が最賃を引き上げても、経営を維持できるような税制とセットになった仕組みなど知恵を絞る必要もあろう。
 賃上げと雇用確保のバランスをどうとるか。悩ましい問題だ。地域別の最賃を維持するのか、欧米に多い全国一律の最賃制度にするかも問題となろう。
 最賃引き上げの背景に、雇用形態の多様化による格差問題があることも忘れてはなるまい。今や三人に一人はパートなどの非正社員だ。正社員との所得格差の拡大がワーキングプアを生み出した要因でもある。
 非正社員の生活が不安定では、年金などの現行の社会保障制度も立ちゆかなくなる。格差問題の先送りは許されない。政策論争こそ有権者は期待している。

[京都新聞 2007年07月27日掲載]

【京都新聞・凡語】

信条表す四字熟語 新大関・琴光喜

 横綱、大関昇進時の口上に四字熟語を盛り込むようになった のは、若貴のころからか。特に貴乃花が横綱に昇進した時の「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」はどういう意味か、と話題を呼んだ▼「堅忍不抜(けんにんふ ばつ)」の若乃花は、口上を間違えたとも言われるから、あまり難しいのも考えものだ。自分の信条を表すのにぴったりの言葉はどれか。先日、大関になった琴 光喜も随分、頭を悩ませたという▼で、十個ほどの候補から選んだのは「力戦奮闘」。三十一歳三カ月での大関昇進は、年六場所になってからは最年長にあた る。半分あきらめていただけに、力を尽くし、奮い立って戦う決意を込めた▼高校、大学で横綱になるなど、エリート街道を歩み、相撲界に入ったが、ここ一番 のプレッシャーに弱いのと、けがに泣かされた。新入幕から四十四場所かかっての大関は史上二番目のスロー記録だ▼確かに、二十歳そこそこで大関になった貴 乃花や大鵬に比べると遅いが、挫折体験のせいか、どことなく言葉にやさしさがある。「こんな幸せが待っているとは…。感動を与え、喜んでもらえる大関に」 の言葉が泣かせる▼スローなら誰にも負けない力士もいる。琉球大卒の四十六歳、序二段で現役最年長記録を更新中の一ノ矢だ。大関は遠いかもしれないが、ふ さわしい四字熟語は「七転八起」。いや、超越した「春風駘蕩(たいとう)」か。こんな生き方もいい。

[京都新聞 2007年07月27日掲載]


【朝日・社説】2007年07月27日(金曜日)付

地域格差―「1人区」が怒っている

 このまま地域格差を放置すれば、いずれは国全体が立ちゆかなくなりはしないか。人口が減り始めるなか、そんな心配が現実味を帯びてきている。

 景気が回復しているとはいえ、地方では働き口がなかなか増えない。そこかしこで商店街はさびれたままだ。

 東京23区では子どもの医療費の無料化が広がっているのに、地方では介護保険料の値上げなど住民の負担増が相次ぐ。市町村合併で、かえって財政の悪化や過疎化を招いた例も多い。

 個人住民税や地方法人2税などの税収が全国一の東京都は、23区も含めると06年度に約1兆4000億円の財源の余裕があった。これは島根や高知など財政力の下位8県の財源不足額と同じだ。

 なぜ、こんな事態になっているのか。

 都市は企業が集まり、仕事も多い。税収も厚くなりがちだ。だが、それだけではない。税制が税収の偏在を招いている。それに、600兆円を超す借金を理由に、政府が自治体への地方交付税や補助金を削ってきたことも大きい。

 都市と農山村の将来像をどう描くのか。地方が自立できるには、どんな税制や財政調整の仕組みにすべきなのか。権限も税源も自治体に移す分権改革をどのように進めていくのか。

 こうした提案を各党が競い合うには、今回の参院選は絶好の機会だ。

 自民党は安倍首相が「国がメニューを考えるのではなく、地域のアイデアを生かす」と繰り返している。自治体の施策に応じて年間3000億円の地方交付税を配る「頑張る地方応援プログラム」や「ふるさと納税」はその一環だ。

 だが、税収格差の対策は「地方の税財源を一体的に検討していく」と公約に書いただけだ。自治体によって地方法人2税の税収に差があることに触れているが、解決策は示していない。道州制の導入なども掲げるが、それが地域の元気回復にどうつながるかは見えない。

 対する民主党は大胆な政策が目立つ。農家への戸別所得補償制度や、林業での100万人の雇用創出などを並べる。

 さらに注目すべきは、19兆円の政府の補助金を全廃し一括交付金にする案だ。補助金を「中央官僚による地方支配の根源」とみなす視点は、自治体に権限を移す分権改革への積極姿勢といえる。

 その方向性は評価できるが、具体性が乏しい。一括交付金にすれば6兆円余の無駄が省ける根拠が見えない。

 消費税をすべて年金に充てることも問題だ。消費税の4割は自治体の財源になっている現実をどう考えるのか。

 公明党と社民党は国税と地方税の割合を1対1にすると公約している。共産党は地方交付税の削減反対を訴える。

 選挙の勝敗を左右するとして注目を集める全国29カ所の「1人区」は、地域格差をつけられている側が多い。

 そこで示される民意は、地域格差対策への審判の意味合いも持つ。

受信料値下げ―NHKのスリム化が先だ

 値段を下げるよと言われれば、客はうれしくないわけがない。だが待てよ、この店は店員の不祥事続きで、代金を払わない客が増え、収入が減って困っていたはずだ。なんだか、うさん臭いぞ。

 NHKが初めての受信料値下げに動き出したと聞いて、そんな印象を持たざるをえなかった。うさん臭さの裏にはまず、政治のにおいがある。

 今回の値下げは、菅総務相が「受信料の支払いを義務化して徴収率を上げてあげるから、2割くらい値下げしなさい」とNHKに求めたのがきっかけだ。

 総務省の試算では、支払いを義務化して5年後には、徴収率が今の約70%から80~85%に増え、年間750億から1200億円の増収が見込まれる。その分を値下げに回せ、という理屈だ。

 NHKの橋本元一会長は2割もの引き下げに反発しつつ、少しは下げないと総務相が納得しないと考えたのだろう。最高議決機関の経営委員会に値下げ案をいくつか示した。委員会の結論を来年度からの5カ年経営計画に盛り込む方針だ。

 こんないきさつだから、値下げはせいぜい数%か1割程度、月額50円か100円くらいになるとみられている。

 今回の案には、NHK内にも疑問の声がある。「100円、200円の値下げが視聴者の切実な願いだとは思えない」「どかーんと下げられるなら意味があるが」。ほかならぬ古森重隆・経営委員長が、そんな言い方をしているほどだ。

 だが、もっと深刻な問題がある。政界との距離が常に問われるNHKが、政治の圧力で値下げに踏み切るとしたら、視聴者の不信をいっそう高めてしまうのではないか。それが心配だ。

 もう一つ、今回の値下げ話がうさん臭いのは、スリム化など抜本的な改革を脇に置いたまま進んでいるからだ。

 NHKはいまやラジオや衛星放送を含めて八つのチャンネルを持っている。関連団体は、すべてを合わせれば民放キー局並みの収入がある。

 膨れ上がった番組の中には、受信料を取ってまで流さなければならないのか疑問に思うものもある。民放と似たような番組も少なくない。民放の力量が乏しかった時代ならともかく、公共放送とは何かを改めて考えることが必要だ。

 今度の経営計画の5年間には、テレビはアナログ放送を終え、デジタル放送に移る予定だ。デジタル時代のNHKと民放の役割分担も詰めねばならない。

 NHKの番組を本当に公共放送にふさわしいものにしぼっていく。そのうえで、例えばチャンネルを三つくらい減らす。そうすれば、受信料を「どかーんと下げる」こともできるだろう。

 今度の経営計画は、そうした改革の道筋を示し、生まれ変わる良い機会だ。政治家や役所に口出しされる前に、自ら大胆な改革に乗り出し、視聴者に問いかける。そうしないと、いつまでも「みなさまのNHK」にはなれない。

【朝日・天声人語】2007年07月27日(金曜日)付

 ベルギーに6年いた。仕事場に近い地下鉄の階段はいつも、名物ワッフルの香りがした。バターと蜂蜜とココアが混じる「においの記憶」は、冷たい雨の風景に重なる。着任時の高揚と不安が溶け込んだ雨だ。

 未体験のにおいの印象は、それをかいだ場面と共に記憶されるという。資生堂の調香部門を率いた中村祥二さんの説だ(『香りの世界をさぐる』朝日選書)。初めてのにおいは一生もので、それぞれが思い出に連なるのだろう。

  米シカゴの研究チームが気になる仮説を発表した。身近なにおいをかぎ分けにくくなったらアルツハイマー病の兆しかも、というのだ。レモンやガソリンなど 12種のにおいを、平均80歳の約600人に当てさせたところ、的中率が悪い人ほど、後々、認知力が落ちる傾向にあった。

 老化による嗅覚(きゅうかく)の衰えは、本人も周囲も気づきにくいから厄介だ。鼻からの刺激が減ると、老化がまた進む。中村さんは「素人考え」として、においの刺激を繰り返し与えることで老化に対抗できないか、と提案している。

 人の五感のうち、嗅覚はどうも軽く見られがちだ。多くの情報は目と耳から入る。特に、パソコンや携帯電話を操る現代人は視覚に頼りすぎて、動物に劣る嗅覚がますます鈍ってきたとも聞く。

 風邪をひくと食事がまずいのは、舌ではなく鼻の粘膜がやられるためだという。かぐ力が弱まれば、料理の風味ばかりか人生のアルバムまでが色あせかねない。鼻の値打ちは高さにあらず。色んなにおいを通過させ、内側の元気を保ちたい。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 温暖化対策 どこまで本気か見えてこない

 事の重要性からみると、当然、参院選の争点になってしかるべきだ。にもかかわらず、盛り上がりに欠けているのが地球温暖化対策である。

 今年6月の主要国首脳会議では「2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を半減させることを検討する」との合意文書がまとまった。来年の北海道洞爺湖サミットでも温暖化は主要テーマだ。

 温室効果ガスの排出を抑えた「低炭素社会」の実現は急務である。そこで鍵を握るのは、どのような政策を打ち出せるかだ。

 短期的には、京都議定書の目標達成への取り組みが必要となる。日本は08~12年に温室効果ガスを90年比で6%削減する義務があるが、めどがたたない。

  自民党の選挙公約が目標達成の手段として掲げるのは「国民運動」の推進だ。環境に配慮した行動に応じてポイントがたまるエコポイントの実施や、クールビズ の定着、サマータイムの検討などを挙げ、「1人1日1キログラム」の二酸化炭素削減を目指すという。排出権取引や炭素税など産業界に影響を与える政策には 触れていない。

 国民運動自体は進めるに越したことはないが、これで目標達成ができるとは思えない。人々のライフスタイルやビジネススタイルの根底にある社会構造そのものにメスを入れる覚悟がなければ、真の低炭素社会はおぼつかない。

  一方、民主党のマニフェストは、日本の温室効果ガスを2020年までに90年比で20%削減、50年までに50%削減という中・長期目標を掲げる。削減の 手段として国内の排出権取引市場の創設や、地球温暖化対策税の導入も挙げる。風力、太陽光、バイオマスなど再生エネルギーの割合も20年までに10%に引 き上げるという。

 自民党に比べると、具体的な数値目標ではある。しかし、排出権取引や温暖化対策税に対する産業界の反発を克服しつつ、削減をどう具体化していくかの道筋は見えてこない。

 結局、本気で社会を変える気概や戦略が各政党から伝わってこない。だからこそ、争点にならないのだと思われるが、これは政党側だけの問題ではない。国民の側にもその覚悟がないことを示しているのではないか。

  原発の位置づけも気になる。二酸化炭素をほとんど排出しないことから、原発には世界的な追い風が吹いている。自民党の公約にも、科学技術と原子力による環 境・エネルギー問題の克服や核燃料サイクルの早期確立が盛り込まれている。民主党は、再生可能エネルギーや天然ガス、石油などとともに原子力もエネルギー 安定供給の手段の一つとして挙げているが、原発政策は明確でない。

 新潟県中越沖地震では、地震に対する原発の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった。日本の原発は常に地震のリスクと隣りあわせである。安易に原発に頼らない低炭素社会の姿を描くべきだ。

毎日新聞 2007年7月27日 東京朝刊

社説:タリバン 罪なき人々を傷つけるな

 無防備な外国人を誘拐して政府に要求を突きつける。要求が満たされなければ容赦なく人質を殺す--。それがイスラムの正義だと言われても、誰が納得するだろう。

 アフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンに拉致された韓国人牧師が殺害された。なお22人の人質がいる。韓国政府は特使をアフガンに派遣して解放を図る構えだが、情勢は予断を許さない。

 殺された牧師の遺体には10発もの銃弾が撃ち込まれていたという。牧師が病気になり歩けなくなったため殺されたという報道もある。まさに冷血の所業ではないか。

 だが、捕らわれた人々は韓国のキリスト教会が派遣した信徒たちで、南部カンダハルの病院などでの奉仕活動が目的だった。首都カブールとの間をバスで走っている時に誘拐されたが、アフガンの恵まれない人々のために働く彼らを敵とみなす理由はないはずだ。

 さらに拘束を長引かせたり危害を加えたりすれば、イスラム教徒全体の信用をおとしめるだけだろう。タリバンは直ちに、無条件で人質全員を解放すべきである。

 解放の条件としてタリバン側は、アフガン当局に拘束された仲間の釈放を求めている。身代金を要求したとの情報もあるし、当初はアフガン駐留韓国部隊の即時撤退を求めていた。どの辺が本音なのか測りかねるのが実情だ。

  アフガンでは最近、外国人が関係する事件が続いた。韓国人グループが拉致される前日、ドイツ人2人が連れ去られ1人は死亡した。3月にはイタリア人記者が 拉致され、タリバンのメンバー5人の釈放を条件に解放された。タリバンはこれに味をしめて拉致戦術に転じたとの見方もある。

 6月には比 較的安全だったはずのカブールで、バスを狙った自爆テロがあり、日本人も巻き込まれて負傷した。外務省によると、6月現在、アフガンにはNGO(非政府組 織)や政府関係者ら140人余りの邦人がいるが、個人的な旅行者などの数字はつかみ切れないという。アフガンへの渡航や滞在には細心の注意が必要だ。

  韓国人グループはあまりに不注意だったという声もあるが、彼らの受難は何よりアフガンの治安悪化を象徴している。米軍のアフガン攻撃で支配権を失ったタリ バンは、その後着々と巻き返し、いまや親米のカルザイ政権を脅かす存在になった。国際テロ組織アルカイダの勢力拡大も伝えられる。日本を含む各国の復興支 援にもかかわらず、アフガン情勢が好転しないのは憂うべきことだ。

 外国人誘拐といえば、レバノンでも80~90年代に米英人などの誘拐が相次いだ。シーア派イスラム教徒とみられる誘拐犯は、米政府などに要求を突きつけ、聞き入れられないと人質を「処刑」した。

 だが、レバノンにおける米英と違って、韓国はアフガンでほとんど影響力を持たない。警戒心の薄い外国人を人質に取って、身勝手な要求を通そうとする。そんな卑劣な行為は、結局、自らを孤立させるだけである。

毎日新聞 2007年7月27日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「決戦の夏」は参院選の日本だけではない…

 「決戦の夏」は参院選の日本だけではない。 流血の日々が続くイラクでは、この夏の戦況に米軍増派の成否がかかる。ブッシュ米大統領は9月に現地司令官の報告を聞き、新しいイラク政策を決めるから、 イラク戦争を左右する決戦の夏である▲開戦から4年4カ月。米国にとって第二次大戦より長くなった。どのように終わるのか出口は見えない。米兵の死者は 3600人を超えた。それでもベトナム戦争のような、激しい反戦運動は米国で起こらない▲なぜおとなしいのか。知り合いのアメリカ人に聞いた。ある弁護士 の答えは「徴兵制じゃないからだ」。ベトナム戦争のころは徴兵制でいつ招集されるか、気が気でなかった。だから若者は自分の問題として街頭で反戦の声をあ げた▲志願制のいまは黒人やヒスパニック、貧しい若者がイラクに行く。「中流階級の多くにとっては、まだ人ごとなんだ」という。連邦政府の公務員は「9・ 11のせいだ」と説明した。「テロとの戦いがイラク開戦の正当化に使われ、反戦を叫びにくい」▲「人々が戦争に疲れているのは理解できる。不安があっても 私は驚かない」と述べたのは、だれあろうブッシュ大統領だ。そんな言い方をされても怒らないほどアメリカ人は内向きになってしまったらしい。反戦というよ り、気分は厭戦(えんせん)か▲「おとなしいアメリカ人」は1950年代のベトナムが舞台のグレアム・グリーンの小説だ。語り手の英国人記者は主人公の米 大使館員をこう評す。「あれほどごたごたを起こしておきながら、それをあれほど善意の動機からやった男を見たことがない」(田中西二郎訳)。みずからの善 意を疑うことを知らないせいか、巨人は身動きがとれないままだ。重苦しい夏になった。

毎日新聞 2007年7月27日 東京朝刊


【読売・社説】

教職大学院 質の高い教員の輩出を期待する(7月27日付・読売社説)

 「職人」「プロ」と呼べる教員の養成を、教職大学院には期待したい。

 指導力低下が言われ、理不尽な「クレーム親」への対応なども教員に求められている昨今、そうした教員の輩出は、教育現場の「再生」にもつながるだろう。

 来年度からスタートする教職大学院に、国立15、私立6の計21大学が名乗りを上げた。4年前、同じ専門職大学院の法科大学院に72大学の設置申請があったのに比べ、少なめではある。初年度は模様眺め、という大学が多いようだ。

 教職大学院は、中央教育審議会が昨年7月の答申で、教員の資質・能力向上策の一つとして、教員免許更新制などとともに提言した。更新制は2009年度から実施されることが決まった。

 目的は、学部卒業生の中から、より実践的な指導力を身につけた新人教員を養成することと、現職教員の中からスクールリーダー(中核的中堅教員)を育てることにある。研究者養成や特定教科の専門性を高めることを目的とした従来の大学院とは違う。

 設置条件は厳しい。学生が数十人規模の大学院でも、最低11人の専任教員が必要で、うち4割は校長や指導主事などの実務を経験した教員でなければならない。その負担や採算面を考え、教職大学院の開設を見送った大学もある。

 学生にも現状の2倍、400時間以上の教育実習が義務づけられる。模擬授業や授業観察・分析、生徒指導や教育相談のやり方など、徹底して実践重視の教育が行われる。

 課題は、どれだけ多くの優秀な学生を大学院に集められるか、だろう。

 団塊世代の退職に伴う大量採用時代を迎え、新人教員採用のハードルは都市部を中心に低くなっている。学部の教職課程修了者にも、採用の門戸は広い。

 2年間、学費を払って教職大学院で学ぶ以上、修了生に採用や給与面で何らかの優遇を求める意見は中教審でも多く出ていた。すでに複数の教育委員会で、特別採用枠などの検討を始めているというが、募集開始の段階できちんと示す必要があるのではないか。

 現職教員については、まだ修了後の処遇上の利点などは不明だ。

 教職大学院の運営を支えていくのは、教員を採用する教育委員会である。

 教育実習の受け入れ先確保には教委の協力が必要だ。教委から専任教員を招いたり、教育内容について指導を受けたりしている大学も多くある。

 質の高い教員を育てるには、教職大学院と教委との緊密な連携が大事だ。
(2007年7月27日1時23分  読売新聞)

三越と伊勢丹 百貨店の再編はまだ終わらない(7月27日付・読売社説)

 再編が続く百貨店業界で、また一つ大型の経営統合の動きが表面化した。

 老舗で売上高が業界4位の三越と、5位の伊勢丹が、統合に向け協議に入った。

 統合が実現すれば、売上高1兆5000億円を超す、最大の百貨店グループが誕生する。大手百貨店は、三越・伊勢丹連合を筆頭とした4グループに集約されることになる。

 流通業界全体を見渡せば、スーパーやコンビニエンスストアに、各種専門店、通信販売業者まで入り乱れての競争が激化する一方だ。大型化したからといって百貨店が安住できる環境にはない。

 生き残りのためには、さらなる合従連衡が避けられそうにない。業態を超えた次の再編劇に、流通業界関係者の視線が集まっている。

 創業330年を超す三越は、老舗中の老舗として長い間、業界のリーダー的存在だった。だが、1982年に当時の岡田茂社長が引き起こした経営スキャンダルでイメージに傷が付き、その後のバブル崩壊で打撃を受け、じり貧から脱しきれない状態が続いている。

 一方の伊勢丹は、ファッション関係の品ぞろえに定評があり、売り上げ、利益とも好調だ。このため、今回の統合協議は、低迷する三越が伊勢丹に支援を求める形で始まったとされる。

 両社の店舗網には重複が少なく、商圏を補完し合える関係にある。仕入れや物流を共通化することでコストも削減できよう。なにより、伊勢丹の経営ノウハウを導入することで、三越の改革が進むことを期待する向きがある。

 百貨店業界全体の売り上げは、バブル絶頂期の1990年に10兆円近くあったが、その後減少に転じ、今では7兆円台に落ち込んでしまった。

 各社は、経営規模の拡大に活路を見いだそうと必死だ。4年前に西武百貨店とそごうが統合して、ミレニアムリテイリングが生まれた。今年9月には大丸と松坂屋が統合してJ・フロントリテイリングも誕生する。さらに、10月には阪急、阪神百貨店も統合する。

 だが、ミレニアムリテイリングは、百貨店事業だけでは将来展望が開けないとして、セブン―イレブンやイトーヨーカ堂を持つ巨大流通グループのセブン&アイグループに入ることを選んだ。

 セブン&アイに対抗するイオングループも、百貨店を傘下に持ちたいと考えているのではないか。全国には電鉄系を中心に、まだ再編に巻き込まれていない百貨店も少なくない。当面はこうした百貨店の動きが焦点となろう。
(2007年7月27日1時24分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月27日付 編集手帳

 演劇評論家で直木賞作家の安藤鶴夫氏は大学の予科 で留年している。授業の欠席者に代わって返事をする「代返」を8人分こなしていたのが露見したためという◆5歳か6歳のころ、背負われて寄席から帰る道す がら、「婆(ば)ァや、さっきの都々逸は間がのびたね」と語った逸話が残る人である。代返も各人各様に声色を演じ分けての凝った芸であったことだろう◆い ない人をいるように思わせる。これも代返の変種かも知れない。仕組んだのが生徒ではなく学校側である点が異なる。有名大学に合格した生徒が数多くいるよう に見せかけた「水増し」実績が私立高校で次々と明らかになっている◆大阪の高校ではひとりの生徒が4大学の計73学部・学科を受験して合格したが、受験料 は全額を学校が負担していた。報酬と紛らわしい激励金も生徒に贈っている。合格者73人、じつは1人――8人力の安藤氏もびっくりだろう◆モラルがどう、 心がけがどう、という以前に、合格実績の低さを宣伝してしまったようで格好が悪い。学校同士の競争は激しくとも、知られて恥ずかしいことはしないに限る◆ 安藤氏は隠れたタイ焼きの権威でもあり、全国の津々浦々で賞味したものを“魚拓”に取っていたという。中身の餡(あん)が少ない、見かけ倒しのタイ焼きは 客から敬遠される。学校、また然(しか)り。
(2007年7月27日1時35分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】合格水増し お手軽入試を見直すとき

 大阪の私立高校を中心に学校側が大学入試の受験料を負担して成績優秀な生徒に何十も出願させ、有名私大への合格実績を水増ししていたことが相次いで発覚した。

 合格ランキングで誇大広告ともいえる実績を掲げる高校側の姿勢は問題で、教育内容こそ競うべきだ。さらに、1人が大量合格してしまうような大学入試は変ではないか。安易に受験生を集める手軽な入試方法の見直しを大学に求めたい。

 最初に発覚した大阪学芸高校のケースは、1人の生徒が志望校の国公立大のほかに、関西、関西学院、同志社、立命館の「関関同立」の計73学部学科に出願して合格した。学校側が関関同立の合格実績とした延べ144人の半数がこの生徒のものだった。

 受験料など140万円以上を学校が負担し、願書も教師が代筆していたという。生徒は理系志望だが、出願学部には文系もあった。学校側の姿勢は合格実績PRのためと批判されてもしかたないだろう。

 1人の生徒がどうやって70以上も受験できたのかと驚くが、私大でも大学入試センター試験を利用し、センター試験の成績だけで合否を決める大学が増え、こうした大量受験ができた。

 早稲田、慶応でも学部によってセンター試験だけで合否を決める入試方法をとっている。センター試験は問題作成に時間をかけ良問を工夫してはいるがマークシート方式の限界もある。大学が面接などを含め自前の試験をせずに合否を決める姿勢は疑問だ。

 入試をめぐっては文部科学省の調査で私大の1割以上が入試問題作成を予備校などに外注していることも明らかになった。大学全入時代に受験生集めばかりに目が向き、学生のための入試の労を惜しむような大学に高等教育を担う資格はあるだろうか。

 入試では科目を減らす軽量化入試が学力低下の背景と指摘されてきた。批判を受けて入試科目増や小論文、面接などを組み合わせるなど改革に取り組む大学もある。しかし多数の受験生を選抜する入試で手間暇かかる方法は少数派といえる。

 政府の教育再生会議は大学改革を検討課題にあげているが、大学が主導して入試改革に取り組み教育の質低下を止めなければならない。

(2007/07/27 05:40)

【主張】温室効果ガス削減 一段の国民運動へ知恵を

 地球温暖化防止のために国が定めた「京都議定書目標達成計画」について、その準備状況の確認などをしている環境省と経済産業省の合同審議会による評価・見直しの中間報告素案がまとまった。

 国内の業種別団体や各省庁がこれまでに進めてきた二酸化炭素を主体とする温室効果ガスの排出削減対策について、審議会は昨秋からヒアリングによる点検を続けてきた。中間報告での分析は「対策の進捗(しんちょく)は極めて厳しい状況にある」という評価内容だ。

 国際条約である京都議定書に基づいて日本に課せられている温室効果ガス削減量は、1990年比で6%減である。来年から2012年までの5年間(第1約束期間)の平均で、これだけ削減しなければならない。

 第1約束期間への突入に向けて、国も産業界もさまざまな努力を進めてきたが、2005年度の統計では、90年の排出量を7・8%も上回る量になっている。議定書の目標達成には、合わせて約14%もの削減が必要だ。

 温室効果ガスの排出部門別では、工場などの産業部門が削減に成功しているが、オフィスビルなどの業務部門と家庭部門で排出量が増え続け、中間報告での厳しい評価につながった。

 今回の中間報告では住宅・建築物の省エネ性能の向上を促している。削減への自主行動計画の策定が遅れている業種に対しては国による働きかけも行うことにしている。新聞業界も未策定業界の一つだった。数値目標を立てて削減に取り組まなければならない。

 クールビズは定着しているが、さらなる国民運動が必要だ。省エネが格好良く、すばらしいことであるという価値観と美意識も持ちたい。10キロ圏内の自転車利用や小型バイクの活用も効果をもたらす。環境調和型のライフスタイルの浸透が重要だ。

 来年7月には、北海道の洞爺湖サミットで、2013年以降の温暖化防止策が主要国首脳によって協議される。ホスト国の対策が遅れていては、リーダーシップに影がさす。省エネにとどまらず、一段と進んだ低炭素社会の実現を目指したい。

 新潟県中越沖地震の影響で、二酸化炭素を排出しない国内55基の原発中7基が止まっている。年内の最終報告までに温暖化防止の知恵を絞ろう。

(2007/07/27 05:32)

【産経抄】

 20日付小欄で、「願わくば」と書いたところ、たくさんの読者からお叱(しか)りの手紙やメールをいただいた。きっと日本の古典文学に通じている 方々なのだろう。「願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」。西行法師の有名な歌がすらすらと口をついて出てくるのに違いない。

 ▼文法的に間違いだ、との指摘もあった。その通りだ。もともと「願わく」とは、「思わく」「惜しむらく」と同じように動詞や形容詞の語尾に「く(らく)」がついて名詞化したものだ。これを「く語法」という。「願うこと」の意味だから、当然助詞の「は」がつく。

 ▼ ところが、江戸時代あたりから、「願わくば」が出現して現在に至る。『岩波国語辞典』は誤りと断言するが、手元にあるほとんどの辞書では使用を認めてい る。言葉の変化に対して、辞書の編者の姿勢の違いが表れていて興味深い。あくまで元の形を重く見るのか、広く使われている事実を受け入れるのか。

 ▼12日に88歳で亡くなった言語学者の柴田武さんに見解をうかがってみたかった。トルコ語から方言学までその研究分野は広く、身近な言葉の語源をわかりやすく解き明かすベストセラーの著者としても知られていた。

 ▼「ら抜きことば」に寛容だった柴田さんは、「花に水をあげる」という言い方には反対して、目下や動植物には断固「やる」だ、と主張していた。「ことばの美しさ」は、「表現する内容」と「話し手の品格」に結びつくというのも持論だった。

 ▼柴田さんが、ともに編者を務めた『類語大辞典』(講談社)では、「願わくは」の項に、「ねがわくばともいう」の説明があり、『新明解国語辞典』(三省堂)には記述がない。やはり、日本語は難しい。

(2007/07/27 06:25)


【日経・社説】

社説1 原発の安全規制に独立機関を(7/27)

 地下は水浸しで、天井のクレーンは軸が折れていた。地震発生から10日が過ぎても、点検が進むにつれて、柏崎刈羽原発では新たな損傷やトラブルが次々に見つかっている。

  周辺の旅館やリゾート施設の予約キャンセルや、イタリアのサッカーチームの来日中止など、いわゆる風評被害もじわりと広がっている。原発の安全に第一義的 な責任を持つのは、事業者である電力会社だが、国の安全規制当局が、安全確認やトラブル評価の情報をわかりやすく発信すべき時期ではないだろうか。炉心か ら放射能漏れはなく、原発の耐震性は実証された、などと繰り返しても、住民の安心は得られまい。

 使用済み燃料プールから水があふれるなど、リスク管理の常識を覆す事象も多い。圧力容器のふたを開けて、肝心の炉心の健全性を確認する作業も急がねばならない。

  今回の地震で学んだのは、監督官庁も電力会社も、原発に関する様々なリスクを過小評価しがちだという事実である。海底断層の評価、想定地震動の強さ、いず れも地震国日本の現実に比べてリスクを過小に評価してきたことは明らかだ。役所と事業者に一部学界まで巻き込んで、原子力分野は産官学ともに世間の常識と は少々ずれた仲間内の理屈、「ムラの論理」が随所に顔を出す。

 変圧器が炎上しても、使用済み燃料プールから水があふれても、クレーンが損傷しても、炉心が壊れて大量の放射性物質が周辺に飛散する最悪の事態にさえ至らなければ、原発は安全と言い切ってしまうのが、典型的なムラの論理といえる。

  私たちは日本の原発が健全にその役割を果たすために、安全規制を担う原子力安全・保安院が、原発推進役の経産省の傘下にあるという、矛盾した関係を解消す るよう、提言してきた。推進と規制を同じ役所が受け持つのは無理がある。今回の地震でも、原子力安全・保安院は現地に10人近いスタッフを常駐させていた のに、その存在感は住民や国民に伝わっていない。安全規制機関にとって組織的独立は決定的に重要だ。

 リスク評価機関としての原子力安全委員会は、内閣府に設置されているが、人員が不足している。新潟県知事や柏崎市長が国際原子力機関(IAEA)の調査参加を希望したのは、安全委や保安院に対する国民の信頼度が低いことを示している。

 米国の原子力規制委員会は3000人を超す専門家を抱える独立機関で、フランスも昨年、安全規制機関を法的に独立させた。安全機関の独立は、原子力大国の要件ではないか。

社説2 見境ないタリバンの蛮行(7/27)

 アフガニスタンの旧支配勢力タリバンが韓国人人質を殺害するという蛮行に踏み切った。タリバンが拉致したのは医療分野などの援助活動のためアフガニスタン入りした人たちである。タリバンが見境なくテロを展開し始めたことを改めて物語っている。

 拉致されたのは23人の韓国人グループ。福音主義のキリスト教教会の若い信者たちで奉仕の使命感に燃えていたようである。だが、タリバンにとっては援助に従事する人であろうがなかろうが外国人は皆敵なのであろう。

 タリバン幹部は最近、英国のテレビに対し、外国人であれば誰であろうと拉致し、米軍などに拘束されている仲間との交換に使うと明言していた。

 アフガニスタンはまだ復興途上で国際機関や外国からの援助が不可欠だ。多くの国から非政府組織(NGO)も駆けつけている。だが、その活動がいかに貴重であってもアフガニスタンが危険な紛争地域であることには配慮しなければならない。

 その点で今回拉致されたグループに落ち度はなかったのかどうか。アフガニスタンでは今春から60人もの外国人が拉致されているとの情報もある。拉致事件が頻々に起きていることを知らなかったのだろうか。

 それにグループが拉致されたカンダハルとカブールを結ぶ幹線道路が外国人に危険であることは広く知られていた。にもかかわらず彼らは一見して外国人が乗っているとわかるような目立つバスで移動していた。

 現地情報を入手、分析し、安全手段をとって行動することが何よりも重要であり、韓国国内でもグループの行動には批判が出ている。

 日本外務省は従来、カブール、ジャララバードなど5都市を除く地域について渡航の延期に加え退避勧告を出していたが、25日に今回の事件を受けて5都市についても退避勧告を出した。

 アフガニスタンには邦人約120人が援助に従事している。組織的に十分な安全対策を取って活動することが改めて求められる。

 危険な紛争地域では軍の防護下で援助を進めるという考えもある。検討に値しよう。

【日経・春秋】(7/27)

 夏休みシーズンというのに、東日本ではなかなか梅雨が明けない。8月にずれ込む可能性もあるらしい。昨年も関東甲信の梅雨明けは7月30日と遅く、1998年と2003年は8月2日だった。どこかおかしな近年の夏模様である。

▼ 異変がはるかに深刻なのは欧州だ。40度を超す猛暑に見舞われたハンガリーやルーマニアでは死者が相次ぎ、イタリアでは山火事の被害が広がっている。英国 南部は記録的な洪水に襲われ、大学町オックスフォードも水浸しになった。それもこれも地球温暖化とかかわりがあるのでは、と疑わずにはいられない。

▼ 危機は目の前にある。温暖化ガス削減は待ったなしのはずだ。しかし経済産業省と環境省による京都議定書の「目標達成計画」見直し案には切迫感がない。オ フィスや家庭での対策を強化し、国民運動を繰り広げるとうたうけれど、焦点の国内排出権取引や環境税導入は結論を先送りした。どうも悠長ではないか。

▼ ミズバショウやニッコウキスゲが咲き誇る尾瀬が国立公園として独立する。高山植物の宝庫を守る新たな契機になればよいが、こうした植物こそ生態系が脆弱 (ぜいじゃく)で温暖化の影響をまともに受けやすいという。尾瀬のミズバショウは開花時期がどんどん早まっているとの研究もある。あの湿原もまた警告を発 している。


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2007年7月26日 (木)

7月26日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月26日朝刊)

[魚市場の統合]経営改善は待ったなし

 那覇市の泊漁港構内に、隣接して二つの卸売市場がある。一つは県漁業協同組合連合会、もう一つは那覇地区漁業協同組合が開設したもので、それぞれ別個に運営している。この二つの卸売市場を統合し、経営の基盤強化を図っていくことになった。

 地区漁協と連合会の事業効率化は大きな課題である。コスト削減によって経営の健全化を図り、その果実を「水産物の安定供給」「漁業者へのサービス向上」につなげてほしい。

 漁業を取り巻く環境は厳しい。県内の漁業就業者は、一九九〇年の五千五百三十人に対し、二〇〇五年は四千三百人に減少した。六十五歳以上の男性就業者は千三百四十人で、全体の三割余り。高齢化が進み、後継者不足が目立つ。

 開発で漁場が失われたり、赤土流出によって漁場が汚染されるなどの環境悪化も進んだ。「捕る漁業」から「つくり育てる漁業」「資源管理型漁業」への転換は、持続可能な漁業のために避けて通れない。

 漁獲量が減少し、魚価は低迷続き。それに追い打ちをかけるように燃料費が高騰している。水産業の健全な発展のために取り組まなければならない課題は多い。

 地区漁協や連合会の事業の在り方、組織の在り方を見直し、効率性、健全性を確保することもその一つだ。

 生鮮魚介類の卸売市場は県漁連、那覇地区漁協が開設する規模の大きな「地方卸売市場」と、各地域の漁協が運営する小規模な「その他卸売市場」に分かれている。

 県水産公社が運営していた「地方卸売市場」は、取扱高の減少で現在閉鎖状態にある。県漁連、那覇地区漁協の「地方卸売市場」もやはり取扱高の減少傾向が続いており、市場統合による経営改善が求められていた。

 県漁連、那覇地区漁協によると、九月に両者が共同出資(出資比率は県漁連70%、那覇地区漁協30%)して有限責任事業組合を設立し、十月にも同組合が運営する新市場をスタートさせるという。

 人件費や維持管理費の削減など業務効率化によるコスト削減や価格の安定が期待されている。

 昨年六月の役員改選で会長に選任された県漁連の下地敏彦会長は、県農林水産部次長を務めるなど行政経験が長い。

 今回の市場統合が、漁協の合併を含む組織再編を加速させることになるのかどうか。一筋縄ではいかない問題に下地会長がどう対処するか、手腕が試されてもいる。

[肥満対策]注目したい県警の試み

 「県警ダイエット作戦」。二十四日付の本紙朝刊一面をみてびっくりした読者も多かったのではないだろうか。

 県警が全職員の約三割に相当する肥満の警察官ら約八百五十人に一日の摂取カロリーや運動量などの記入を義務付け、所属長に報告させる試みを始めた。

 事件の容疑者を追い、事故の処理に当たる。警察官といえばそんなイメージが強いだけに、約三割が肥満という数字にもちょっとびっくりする。

  事件・事故はいつ発生するか分からない。警察官の生活は早朝や深夜の交代勤務で不規則になりがちだ。沖縄は男女とも肥満率が全国一を記録し続けた「肥満 県」であり、県警だけの問題ではないはずだ。指導する県栄養士会は県警をテストケースに、ほかの職場や団体にも広げたい考えだ。

 背景には二〇〇八年四月から始まる生活習慣病予防のための国の特定健康診査制度があるようだ。国民健康保険、被用者保険など保険者ごとに受診目標値を設定し、達成できなければ補助金が大幅にカットされる。

 健康、健康と強迫観念にとらわれたような言い方には異論もあろうが、長寿の島・沖縄が危機に瀕している。食をはじめ豊かに見える私たちの生活が実際はいかに健康から懸け離れたものになっているか。皮肉としかいいようがない。

 市を挙げて肥満率低下を目標に掲げる「健康なは21」推進市民大会で、市医師会生活習慣病検診センターの崎原永辰副所長が披露した「働く人の健康点検十カ条」が面白い。

 俳句形式でこんな風だ。(1)早起きで余裕をもって朝ごはん(2)ウオーキング目標一日一万歩―。食生活と運動の重要性を強調したものだろう。ただ、それには生活習慣を改善しなければならず、実行はなかなか簡単ではない。

 肥満は生活習慣病のもとである。県警で終業後にウオーキングしたり、早朝に体操したりする部署が出てきたという。九月には効果を検証する。県警の取り組みに注目したい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月26日 朝刊 1面)

 選挙で金もうけができる―。当世の政治家とカネの関係を揶揄しているわけではない。公選法に触れず、警察の厄介にならない商売が広がっている。

 「選挙セール」。投票した人が選管から「投票済証」を受け、賛同する商店街が割引サービスを提供する。四年前の衆院選。愛知県内で初めて実施され、市民運動的に全国に浸透してきた。

  低下傾向が続く投票率の回復を狙ったもので、特定の政党や候補者とは一切かかわらないことが前提だ。投票者が増えればおのずと商店街も利用される。「金も うけ」の表現は不適切だったが、あるNPO法人が新宿区の商店街を調査したアンケート結果に「経済効果」も裏打ちされる。

 セール告知で「投票意欲を高めた」が四割、商店街を利用していない人の七割が「購買意欲が高まった」と回答している。東京に隣接する埼玉県戸田市は商店街の空き店舗が目立つ。二年前の総選挙で同セールを取り入れ、七百人近い人が利用した。

 投票率は県全体より三ポイント高かった。二十九日の参院選には前回を上回る店が賛同する。市商工会の園田耕三さんは「選挙への参加は『地元』を意識し、見つめ直す機会になる。それが故郷の街づくりにつながる」と言う。

 恒常的な「棄権組」が、損得勘定で投票するケースもあろうが、自身の投じた一票の行方は誰でも無関心ではいられないはず。歩みは小さいが、可能性も含んでいる。(石川達也)


【琉球新報・社説】

枯れ葉剤調査 政府の拒否姿勢は住民軽視

 うやむやにして幕を引きたい。米軍北部訓練場での枯れ葉剤散布問題に対する政府の対応を見ていると、そのようにしか見えない。那覇防衛施設局は、 平和運動センターなど3団体の実態調査要請に対して24日、これを拒否した。枯れ葉剤に含まれるダイオキシンは発がん性のある猛毒だからこそ、県民は不安 を持ち、調査を求めているのだ。政府の拒否姿勢は、住民軽視と言われても仕方ない。
 政府に調査を求める理由はいくつかある。
 まず、前 立腺がんの後遺症を認定された元米兵が枯れ葉剤散布を証言した米退役軍人省の公式文書と、米政府回答の矛盾である。米側は事実関係を照会した防衛施設庁と 外務省に対して「(枯れ葉剤が)使用、貯蔵されていたということを示す資料、証言や記録はない」と回答した。米退役軍人省の公式文書と明らかに矛盾する。
 なぜ政府は米側にその点を追及しないのか。元米兵の関係者に対して、確認を求めることを検討してもよいのではないか。このような矛盾を見せつけられては、県民は不安だけでなく、日米両政府に対して不信感を抱く。
  もう一点は、国指定天然記念物のリュウキュウヤマガメや県指定天然記念物のナミエガエルなど一部のは虫類や両生類に、ただれなど異変が観察されていること である。枯れ葉剤散布との関係は断定できないが、ベトナムでの枯れ葉剤の住民への深刻な影響を考えれば、疑いを持たざるを得ない。
 政府が調査を 拒否する理由の1つとして挙げているのは県が実施した水質検査のデータである。2004年、05年度に北部訓練場周辺の新川川を調べた結果、環境基準値を 超えるダイオキシン類は検出されなかった。しかしこれで不安が一掃されたわけではない。防衛施設庁環境対策室によると、基地内土壌や水質については調査さ れていないからである。
 動物の異変について、環境学の専門家は、影響がある場所とそうでない場所とを比較するため汚染の実態を調べることが重要だと強調している。指摘の通りである。
 環境省は来年度から約10万人の子供を対象に、ダイオキシンなど環境中の有害物質が発育に及ぼす影響について疫学調査に乗り出す。
 これほど有害物質対策を重要視しているのに、なぜ枯れ葉剤散布問題の実態調査を拒否するのか。深刻な影響が疑われる事例が目の前にある。まず、そこに手を付けることが先決であろう。
 北部訓練場の土壌にダイオキシンが残留しているのではないか。米軍は今も、枯れ葉剤を保管しているのではないか、動物の異変は関係ないのか。政府は徹底的に調査し、明らかにするべきだ。

(7/26 9:54)

京都議定書 計画先送りは事態悪化招く

 地球温暖化に伴う深刻な影響はこれまで何度も指摘され ている。「15億人もの人に水不足や水害の恐れがある」(国連環境計画=UNEP)、「北極海の海氷が今世紀後半までに消滅する」(気候変動に関する政府 間パネル=IPCC)などである。しかも、温暖化のスピードは想像を超えるものだ。
 これらの予測を考えれば、悠長に構えてはいられないはずだ。しかし日本政府の対応は心もとない。
  先進国に温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書は2008年から約束期間が始まる。本来なら、日本が率先して目標達成の実現性を高めなければなら ないはずなのに、環境、経済産業両省の審議会の合同会合は25日、「対策の進ちょくは極めて厳しい状況にある」とする中間報告素案を公表した。審議会は、 議定書目標達成計画の見直し作業を行っているが、素案では、温暖化対策上で重要な化石エネルギー依存から脱却するための施策について踏み込んだ記述を避け た。
 議定書で日本は、08年から12年までの平均で、1990年レベルから温室効果ガス排出を6%削減することになっている。だが、05年度の排出量は逆に悪化し7・8%も増えた。
  現状を踏まえれば、新エネルギーへの転換は急務であるが、素案ではその方策が示されていない。そこからうかがえるのは目標達成への意欲の弱さである。環境 エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は素案について「業界の反発が強い電力などエネルギー部門の対策や排出量取引に踏み込むことを避け、当たり障りはない が効果もあまり期待できないものを羅列しているにすぎない」と指摘している。
 国民へのアピールもさらに強化するべきだろう。07年版環境・循環型社会白書は、省エネルギー技術の開発、普及を強調している。例えば省エネ型の家電製品に切り替えることで一世帯当たりの二酸化炭素排出量を最大4割以上削減できるという試算を示した。
 先送りすれば事態は悪化するばかりだ。政府、国民挙げて目標達成へ突き進むしかない。

(7/26 9:53)

【琉球新報・金口木舌】

 彼を見てジャズの歴史に名を残すチャーリー・パーカーとマイルス・デイヴィスの出会いを思い浮かべた。彼とは日野皓正クインテットで活躍する阿嘉島出身のドラマー、和丸(本名・川井和丸)さん
▼「和丸、上がってこい」。2005年8月、那覇市民会館大ホール。熱い演奏を繰り広げていた日野さんが突然、和丸さんを舞台に呼び、初共演した。和丸さんは14歳
▼パーカーとマイルスの初共演は1944年の夏。その時、マイルスは18歳。翌年秋にはパーカーのクインテットに参加する
▼今年春。日野さんは中学卒業を控え、東京での活動を望む和丸さんをクインテットに招いた。そして16歳の誕生日の4月5日、横浜で初ステージを踏んだ
▼和丸さんは今、演奏ツアーで全国を駆け巡る。東京では一人暮らし。仕事のない日は部屋にこもって音楽を聴いているという。6月には久しぶりに帰郷。「やっぱり島はいいな」と感じた。8月5日に那覇、7日には石垣でライブを予定している
▼パーカーは天才的なアドリブで名演奏を遺(のこ)し、マイルスは「帝王」として90年代までジャズを牽(けん)引(いん)した。パーカーの愛称は「バード」(鳥)。和丸さんはジャズの荒波へと飛び立った。

(7/26 9:44)


【東京新聞・社説】

三越と伊勢丹 『退潮』を止められるか

2007年7月26日

 百貨店業界四位の三越と五位の伊勢丹との提携交渉は、同業界の深刻さを物語る。消費不振の長期化と今後の経営の難しさは誰の目にも明らかだ。消費者の支持をどう取り戻すかが再生の鍵だ。

 東京・日本橋の三越本店。提携ニュースが流れても店内の落ち着いた雰囲気は変わらない。仕立ての良い紳士服姿や涼しげな和服の女性客が目立つ。今回の報道について同社は「記事は憶測に基づくもの」と否定する。

 一方、新宿の伊勢丹本店。建物は古く三越本店と同様、改修工事が行われている。客層は若い女性が目立つ。夏休みに入ったこともあり地階の食品売り場は子ども連れでにぎわっていた。同社でも「そうした事実はない」と全面否定である。

 まだ流動的な面があるとはいえ、両社の提携は自然な流れだ。

  百貨店業界の低迷は一過性のものではない。売上高はこの十年間、ずっと減り続けてきた。消費不振に加え少子化の進行、家電や衣服など専門店の台頭などが背 景にある。二〇〇三年にそごうと西武百貨店が、今年九月に大丸と松坂屋ホールディングス、同十月に阪急百貨店と阪神百貨店がそれぞれ経営統合するのも、厳 しい情勢に対処するためだ。

 今回の提携を「強者連合」と評する声がある。長い歴史を誇る三越は名古屋など全国に店舗をもつ老舗で、富裕 層や中高年層に強い。伊勢丹は首都圏を中心に展開し、とくに若者たちの支持を得て業績は好調だ。補完関係が成り立つため提携メリットは大きい。経営統合と なれば売上高一兆五千八百億円もの国内最大の百貨店グループが誕生する。

 だが実情は「生き残り」のための唯一の道と言える。三越の〇七年二月期の連結決算は減収減益であり、現在経営立て直しに懸命だ。伊勢丹にしても今年三月期の連結決算は増収増益だったが、〇八年三月期は減益予想となっている。ずっと勝ち組でいられる保証はない。

 今後は提携や統合に向けた細部の詰めが重要だ。持ち株会社方式が有力視されているが人事などをしっかりと詰めてほしい。過去には社長人事でたすき掛けを続けたり、合併後に不祥事が発覚して社内が混乱したなど不評を買ったケースもある。

 小売業界は競争が激しい。JR東日本は駅構内で「エキュート」事業を展開し、東京メトロも「エチカ」を始めるなど他業界からの参入が目立つ。そうしたところに負けない斬新なサービスを開発し、消費者が「買う楽しさ」をしっかりと体験できる百貨店を目指してもらいたい。

教育問題 実情踏まえた論議を

2007年7月26日

 参院選で各党とも教育問題を重要課題に掲げているが、論争は高まっていない。各党、各候補者の取り組み方は投票の際の重要な基準だ。教育に対するそれぞれの主張にじっくり耳を傾けたい。

 安倍晋三首相は政権の主要課題に憲法改正と並んで教育改革を挙げ、教育基本法や教育関連三法の改正を成し遂げた。自民党は参院選での公約に「教員免許更新制や不適格教員を教壇に立たせないシステムの円滑実施」などを掲げている。

 民主党もマニフェストで「教育への財政支出五割増を目指す」とし「公立学校は保護者、地域住民、学校関係者などが参画する『学校理事会』が運営」とうたう。

 教育関連三法改正では教員免許の更新制が導入され、教育委員会への国の関与を可能にすることが盛り込まれた。ことしは全国学力テストも復活した。教育を取り巻く環境は大きく変化している。

  自民党は「幼児教育の無償化を目指す」とし、民主党は「公立高校の授業料などを無料」といい、社民党も「高等教育の無償化を目指す」とする。子育てまで広 げると、児童手当を公明党は「対象を中学三年まで引き上げる」、共産党は「小学六年まで月一万円に倍増し、十八歳まで支給を目指す」と訴えている。

 無償化や手当拡充は聞こえがいいが、財政的裏付けが必要となる。費用がどれだけで、どうやって工面するのか、各党の公約やマニフェストからは読み取りにくい。

 有権者が聞きたいのは現場の実情を踏まえた議論だ。いじめはなくならず、学校に理不尽な要求や抗議をする親「モンスターペアレント」が増えている。学校や先生任せにしておいていい問題ではない。

  学力問題の関心も高い。自民党は「『確かな学力』を約束」といい、教育再生会議は「授業時間の10%増と土曜授業の復活」を提言した。ゆとり教育の転換を 明確に打ち出している。時間増で学力向上となるのか、もっと議論が必要だ。公明党は「小学校で英語教育を必修化。中学卒業段階で日常英会話ができるように する」という。期待させる公約だが、可能か。

 安倍政権の進める教育政策の特徴は競争原理の導入と言える。東京都足立区独自の学力テストでは学校側の不正行為が発覚した。教育への競争原理導入の是非は候補者が大いに語らなければならないテーマだ。

 有権者は各党、各候補者の主張をじっくり聞き分け、投票に行きたい。そして、選挙後の取り組み方も見守っていかなくてはならない。

【東京新聞・筆洗】2007年7月26日

 すぐれた書評家でもある歴史学者加藤陽子さんは近著 『戦争を読む』(勁草(けいそう)書房)で「まずは小説家が気づき、つぎに学者が名を与えた」という名言を発してうならせる▼加藤さんは、作家村上龍さん が『希望の国のエクソダス』(文春文庫)で「この国には何でもあるが、希望だけがない」と語り、社会学者山田昌弘さんが『希望格差社会』(ちくま文庫) で、“負け組”による反社会的犯罪やひきこもりの多発を予見した例をひく▼歴史家の役割は「なぜ我々の父祖が、歴史と国家と自己を一体のものとする感覚を 身にまとい戦争を支持していったのか、そのプロセスをグロテスクなまでに正確に描きだすことだ」という。とすれば、従軍慰安婦問題で「広義」「狭義」の別 を持ち出し、米議会の反発を買った日本政府の及び腰はいただけない▼一九五四年に「驟雨(しゅうう)」で芥川賞を受けた吉行淳之介さんが亡くなって、二十 六日で十三年になる。晩年をともに暮らした宮城まり子さんが、入手困難な吉行作品十二編をまとめて『宮城まり子が選ぶ吉行淳之介短編集』(ポプラ社)を出 した▼収録された「驟雨」は、娼婦(しょうふ)と青年の性愛を描いて戦後すぐの若者の存在不安を描く。吉行さんが描いた女性の性労働のありようは、明治の “からゆきさん”に始まる性の商品化、国際化の流れにつらなる▼民俗学者谷川健一さんは近著『明治三文オペラ』(現代書館)で、性愛の自由なき戦場の非日 常の中で、兵隊と慰安婦が示した連帯と憎悪に、古来の“巫娼(ふしょう)”の姿を重ね、庶民の哀れを見る。


【河北新報・社説】


07参院選を問う 地方再生/スケール大きな公約を示せ

 国の官僚が支えてきた明治以来の中央集権体制は制度疲労を起こしていると、各方面で言われて久しい。しかし、脱中央集権にふさわしい地方の姿というものが一向に見えてこない。

 参院選では各党が「活性化」や「分権」をキーワードに、地方に熱い視線を投げかける。

 「ふるさと支援税制の検討」(自民)「個別補助金廃止と財源保証」(民主)「地域間財政格差の是正」(公明)「地域社会の崩壊に歯止め」(共産)「地域再投資法の制定」(社民)「地方に2兆円の新税源確保」(国民新)―といった具合だ。

 しかし、公約の列挙や個別的な政策展開では明日を切り開けないほど地方は病んでいる、というのが私たちの現状認識だ。

 東京・六本木のにぎわいと地方小都市のシャッター通りの明暗は、格差の重みに沈む地方の現実を端的に表している。

 地方の現状をどうしたらいいのか。それを考える上で、昨年末の地方分権改革推進法成立が分権改革のターニングポイントになり得ることに注目したい。

 法成立前の国と地方財政の三位一体改革では、一定の補助金削減と地方への税源移譲はあったが、地方交付税が大幅に削られて地方に強い不満を残した。

 法成立後はこうした反省を踏まえて国から地方に抜本的な権限と税財源を移譲することを柱に据え、本格的な分権時代に道を開くことが求められる。

 こうした流れの変わり目でまさに参院選が戦われている。

 各党はこの本格的な分権時代への道しるべとして、「地方の将来をこう描く」「地方と国の関係をこう変える」といったスケールの大きい分権構想と体系的で立体的なマニフェストを有権者に示すことが大事である。

 国と地方の仕事量はおおざっぱに言って4対6なのに、税源の配分比率は6対4とされる。この税源配分比率を少なくとも5対5に変えるための税制改革が必要だ。地方への十分な税財源移譲を前提とした補助金政策の見直しも避けて通れない。

 道州制導入の是非は別として、基礎自治体や広域自治体の枠組みの再考を迫られてくるかもしれない。地方分権に対応した中央省庁の権限や仕事の見直しは、国と地方の統治システムの大幅な組み替えを意味する。

 示すべき分権構想・政策はこれらの課題を織り込んだ総合性がなければ地方の共感を呼ばないし、霞が関へのインパクトを欠いたものになるだろう。

 05年の郵政解散・総選挙で小泉自民党は郵政民営化の背景に「スリムな国家」という目指すべき国家像を据え、少子化対策などのマニフェストを並列的に示すにとどまった民主党をのみこんで大勝したと言われる。

 目下の参院選で各党は、具体的な地域活性化対策に知恵を使いながらも、骨の太い「目指すべき地方像」を示すべきだ。

 29日の投票日まで選挙期間は残り少ないが、各党は目指すべき地方像に基づく「地方再生・分権ビジョン」を掲げ、その優劣を競えばいい。そして、その論戦にぜひ、多くの有権者を巻き込んでもらいたい。
2007年07月26日木曜日

【河北新報・河北春秋】

 外来植物はなぜ日本固有種を駆逐するのか。繁殖力や成長速度が勝るだけではなかった。「アレロパシー(他感作用)」という強力な“武器”を駆使し ているらしい▼化学物質を放出し、周囲の植物の生育を抑制する作用。昆虫や微生物を寄せ付けない効果もある。農業環境技術研究所などが小笠原諸島の父島で 行った調査で、外来種がはびこる大きな原因はこの作用の強さだと分かった

 ▼ 島の中心的外来種であるギンネムは他の植物の成長を92%も阻害した。島だけの現象ではない。「全国各地の外来種の分布拡大にアレロパシーが関与している 可能性は高い」と同研究所上席研究員の藤井義晴さん▼ミズヒマワリやボタンウキクサ、オオブタクサなど特定外来生物に指定された12種はいずれもこの作用 が強力。河川敷でよく見かけるセイタカアワダチソウも同じだ

 ▼この作用が強い外来種の特定が進めば、移入防止や早期防除などの対策が効 率よく進む。藤井さんによると、同様の力を持つ在来種を探し、外来種を封じ込める方法もある。ソバやシソなどが有望だという▼アレロパシーには利点もあ る。夢が膨らむのは農業への活用。安全性が高い「天然の農薬」として、除草や防虫などに生かせる。植物の不思議な力は、環境や健康を守る強力な武器にもな る。

2007年07月26日木曜日


【京都新聞・社説】

自動車生産再開  死角を突かれた世界一

 世界一の生産台数を誇るわが国の自動車産業界が地震で死角を突かれた。
 新潟県中越沖地震で被災した部品メーカーの生産ストップで国内自動車メーカー十二社すべてが生産休止に追い込まれたが、二十五日から本格的な生産を再開した。約十二万台の減産で過去最大の影響が及んだ。他産業にも大きな教訓を残したといえよう。
 十六日の地震でリケン柏崎事業所が被害を受け、自動車エンジン用ピストンリングの生産ができなくなった。
  国内シェア約50%で全メーカーに供給していただけに各社は部品不足で次々に操業停止に陥った。各社ごとに共同開発した仕様部品で代替生産ができない。自 動車各社はリケンの復旧に”呉越同舟“で応援要員を派遣、ようやく生産再開にこぎつけたが、この地震の影響は阪神大震災のケースを上回る。
 トヨタ自動車が考案して世界に広がった生産システム「カンバン方式」の弱点を露呈した形だ。自動車部品は二万点から三万点に達するが、メーカー在庫を極力減らしてコストダウンするメリットが今回は裏目に出てしまった。
 小さな部品があっという間に巨大な自動車産業をマヒさせたが、こうした圧倒的に高いシェアをもつ部品メーカーは電機業界はじめ他産業でも多い。
 コスト削減と開発競争の激化で調達先の集中傾向は加速する一方で「リケンショック」は人ごとではない。海外拠点を含めリスク分散の見直しがいる。
 今回は生産方式の死角がクローズアップされて自動車業界の意外なもろさをさらしたが、このほかにも業界全体として懸念すべき課題が多い。
 二〇〇六年の国内生産台数は千百四十八万台で十三年ぶりに米国から世界一の座を取り戻した。これは輸出の好調によるもので、軽自動車を除く国内販売台数は三年連続で減少、二十九年ぶりの低水準に落ち込む不振が続いている。
 今年も上半期(一-六月)は前年同期比10%以上の落ち込みで、軽自動車も四年ぶりに前年同期を下回った。上半期に初めて世界一を達成したトヨタ自動車も国内は苦戦しているのが実態だ。
 国内不振の原因は景気動向やガソリン高騰などの影響もあるが、最近では車社会の成熟化や若年人口の減少など構造的な要因が指摘されている。
 車を単なる足として長期間乗り続けるようになり、なかなか新車に飛びつかない。薄型テレビや携帯電話などIT(情報技術)関連の支出はじめ消費構造の変化も影響していそうだ。「車離れ」の実態を正確に把握する必要があろう。
 生産拡大とコスト削減のあまり品質管理がおろそかになってきたとの指摘は見過ごせない。韓国や中国の追い上げもある。日本経済を支える基幹産業だけに世界一に慢心することなく足元を見つめ直して競争力を維持してほしい。

[京都新聞 2007年07月26日掲載]

警察白書  暴力団の資金絶つには

 警察庁が二〇〇七年版警察白書を公表した。
 「暴力団の資金獲得活動との対決」と題した特集で、経済回復が進む中、暴力団が企業活動を装って証券取引の分野にまで進出している状況を分析した。
 また一部暴力団が経済的基盤を強固にする一方、上部団体への上納金に困り、過激行動に走る動きに警鐘を鳴らした。
 暴力団の“持てる者”“持たざる者”への二極分化は、暴力団対策法の効果でもある半面、市民社会の安心・安全を大きく揺るがすものだ。
 暴力団の資金獲得活動は海外へも広がりを見せるが、まずは警察、関係機関、一般企業などが連携強化し、足元の資金源を枯渇させることが第一だ。
 白書の暴力団特集は五回目で、資金獲得活動について「日本経済の健全性を損ない、いずれは国全体の利益が侵奪されかねない」と懸念した。
 少々、オーバーな表現のように受け取れるが、白書の内容は極めて深刻な事態であることを示している。
 暴力団はバブル期に元構成員に建設業や不動産業を行わせる傾向を強めたが、近年でも一定の関係を持っている建設業者があることを指摘した。
 土木・建設業者へのアンケート結果では、三割以上が過去一年以内に暴力団とみられる部外者から不当要求を受けたと答えた。
 中身は機関誌購読が四割で最多、次いで下請けへの参入、資材・プレハブの納入、自販機設置・弁当販売強要と続く。あの手この手で執拗(しつよう)に資金を得ようとする様子が目に浮かぶ。
 また三割以上が「暴力団と関係ある建設業者がいると聞いた」とした。バブル期の影響はいまだに解消されていない。
 白書は近年、暴力団から資金提供を受けて活動する「仕手筋」や「事件屋」などが存在することも示した。
 業績が悪化した企業に乗り込み、仮装増資や株インサイダー取引で“稼ぎ”、一部を暴力団に還元しているのだ。
 こんなグループにはびこられると、国内はもとより海外からの信用まで失ってしまう。手をこまねいていられない。
 今後の課題として「刑事責任の追及以外に組織中枢に経済的打撃を与え、組織維持を無意味とする制度について検討が必要」と分析した。
 警察の肝いりで土木・建設業者も、証券業界も、「行政対象暴力」に悩む自治体も立ち上がってはいる。
 だが長崎市長射殺事件や、愛知県の立てこもり事件をみても、銃摘発に効果をあげているとは思えない。寡占化した暴力団組織は抗争をさけ、こうかつに資金を獲得しようと狙い続けている。
 暴力団追放は市民の願いだ。ともに立ち上がるには、警察が、一人一人の市民をしっかり守る気概を見せてこそだ。それでこそ白書の指摘は生きてくる。

[京都新聞 2007年07月26日掲載]

【京都新聞・凡語】

参議院選挙投票日近づく

 参議院選挙の投票日が近づいて「選挙のジンクス」とやらがかまびすし い。今年は、十二年に一度、統一地方選と夏の参院選が重なり合う「亥年(いどし)選挙」にあたる。この年の参院選は投票率が下がるそうだ▼京都選挙区を見 ると過去最低の一九九五年(40・71%)が亥年だった。地方議員が自らの選挙で疲れ、その手足となる後援会員の動きも鈍るというわけか▼投票日が晴れれ ば投票率は低くなるというのも選挙通の常識らしい。確かに過去二十回の参院選では「雨のち曇り」「曇り」の投票日が平均して高めだった。今回も「夏休みで 行楽日和」なら投票率は下がると見る向きもある。有権者は侮られてはなるまい▼株価はどうか。自民党が惨敗した九八年は一カ月後に下落。ただし、同党が大 勝した二〇〇一年も下落した。選挙結果がそのまま反映するほど市場は単純ではないということか▼選挙前の国会会期延長は、八九年と九八年に与党に不利な結 果が出た。今度は「吉」と出るか、「凶」と出るか。消費税に触れるのも鬼門とされる。が、こちらは重要政策テーマだ。与党も野党も、税制論議を避けても らっては困る▼かつて、候補者が選挙カーの道順でも縁起を担ぐと聞いたことがある。選挙にまつわるジンクスや縁起は数々あろうが、審判を下すのは有権者。 これまでの傾向と異なる選挙となるのか、どうか。

[京都新聞 2007年07月26日掲載]


【朝日・社説】2007年07月26日(木曜日)付

年金の制度―今のままか、抜本改革か

 「今の仕組みで本当に百年安心といえるのか」と民主党が攻めれば、与党は「民主党案は絵に描いた餅で、無責任だ」と切り返す。

 参院選で最大の争点である年金問題では、宙に浮いたり消えたりした年金記録の問題と並び、年金制度のあり方をめぐっても激しい論戦が続いている。

 年金の記録漏れは、政府の責任で解決するのは当然のことだ。だが、それだけで年金への信頼が得られるわけではない。本当に安心して暮らせる年金にするためにはどうしたらいいのか。そのための制度設計も問われているのだ。

 与党が勝てば、いまの制度を後押しすることになり、逆に民主党が勝てば、見直しを迫ることになるだろう。勝敗の分かれ目が、制度論議に大きな影響を与えることは間違いない。

 一口でいえば、与党はいまの制度の枠組みを維持したまま、保険料を固定し、年金水準を削減しようとしている。自ら「百年安心プラン」と名づける。

 民主党は年金を一元化し、所得比例年金と最低保障年金の2階建てにする。いわば「最低保障プラン」だ。

 だが、それぞれ一長一短がある。

 与党の基本的な考え方は、3年前の政府の改革で乗り切れるということだ。

 厚生年金の保険料は18%余りまで引き上げて固定する。少子高齢化が進むにつれ、給付を削る。これで現役世代の平均収入の50%余りの年金水準を維持する。

 しかし、少子化は早くも政府の予想を超え、制度の前提が崩れつつある。

 給料から天引きされる厚生年金と違い、国民年金(基礎年金)の保険料は徴収率が低迷している。社会保険庁を解体して非公務員型の公法人にしても、徴収率が劇的に向上するとは思えない。

 3年前の改革で、09年度に基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1へ引き上げることになった。消費税の引き上げが想定されたが、安倍首相は明言を避けている。実現できるか心配だ。

 民主党案はスウェーデンを手本にしたもので、4年前の総選挙から掲げている。厚生と共済だけでなく国民年金も統合する。1階部分の最低保障年金は税で賄うため、保険料の未納はなくなる。

 問題はその財源だ。消費税を全額充てる。消費税のうち地方へ回していた分は補助金を削って賄う。だが、補助金の多くは医療や介護などが占めており、他の福祉がしわ寄せを受けかねない。

 3年前の参院選では、財源として、新たに年金目的消費税を掲げた。これに比べ、説得力に乏しい。

 2階部分の所得比例年金では、自営業者らの所得もつかむ必要がある。それには納税者番号制が欠かせないが、今回のマニフェストでは消えてしまった。

 年金制度は政権が交代するたびに変えるわけにいかない。しかし、将来をにらんで、どちらの制度設計がいいのか。有権者が見定めるには、絶好の機会だ。

原発の損傷―調査に時間を惜しむな

 傷は、そこまで及んでいたのか。

 新潟県中越沖地震の直撃を受けた東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、6号機の原子炉建屋の天井クレーンに破損が見つかった。

 6号機は定期点検中だったが、運転中なら核反応が進む炉の真上でトラブルが起こったことになる。そう考えると、改めてぞっとした。

 東京電力によると、壊れたのはクレーンを移動させる部分に限られ、この破損によって300トンを超えるクレーンそのものが下に落ちることはないという。

 だが、たとえそうであっても、軽く見てはいけない。

 この破損は、建屋の天井付近の揺れの激しさを物語っている。一見しただけではわからない傷やひずみが、クレーンの本体や周りに発生しているかもしれない。6号機だけでなく、別の原子炉のクレーンで似たようなことが起こっている恐れもある。

 原発にある構造物は耐震設計上、重要度ごとにA~Cクラスに区分されている。天井クレーンはBだった。

 しかし、原発のような巨大システムでは、周辺機器の損傷が回りまわって心臓部のトラブルにつながりかねない。

 重要度がそれほど高くないとされる個所の異状も、つぶさに調べ上げる必要がある。そのうえで、最悪の場合には、どんな連鎖的な被害が起こりえたかまで考えなければならない。

 今回、地震の発生直後にわかったのは、変圧器の火事だった。その後、放射能を含む水が外部に漏れるなど、60件を超える被害が次々に明らかになった。さみだれ式に見つかるには理由がある。

 原発は火力発電所や工場とは異なり、危険な放射性物質を扱っているので点検に手間がかかる。クレーンの破損も、周りの放射能汚染を除去した後に専門家らが近寄って気づいたという。

 今後、東電は原子炉の釜ともいえる圧力容器のふたを開けて、中の様子を調べる方針だ。圧力容器内の点検は、被曝(ひばく)の危険がきわめて高いので、カメラを遠隔操作するなどして進めることになる。

 だが、圧力容器の点検作業のためにも、まずはクレーンをきちんと調べ、破損個所を修理しなければならない。

 この原発の7基すべての点検と安全確認を終えるまでには、少なくとも数カ月はかかりそうだ。

 運転再開には、地元の了解も欠かせない。会田洋・柏崎市長は消防法に基づき、所内の燃料タンクなど危険物施設の緊急使用停止命令を出している。

 今回の地震被害は、たとえ原子炉本体の異常による大事故が起こらなくても、原発には長期に止まる危うさがあることを浮き彫りにした。

 だが、時間をかけて小さな傷を拾い上げることは、破局的な災害を防ぐことにつながる。そのための稼働停止は、安全の費用と考えるべきだ。

【朝日・天声人語】2007年07月26日(木曜日)付

 明治30年代、東京の呉服業界は模様合戦にわいた。老舗(しにせ)の三井呉服店(後の三越)は京都に染め工場を構え、復古調の元禄模様に力を入れる。これに対し、より古く平安時代に想を得た御守殿(ごしゅでん)模様で押したのが、創業間もない伊勢屋丹治呉服店だった。

 伊勢屋は、この模様を柳橋芸者の総踊りで着せたほか、両国の花火大会でも宣伝した。「御守殿模様の成功により、天下の三井呉服店と張り合って高級呉服店を目指す伊勢丹の姿勢に、衆目が注がれるようになった」(伊勢丹百年史)。

 三つの世紀にわたり競ってきた三越と伊勢丹が、経営統合を視野に提携交渉に入った。実現すれば国内最大の百貨店グループになる。三越のブランドと優良顧客、伊勢丹のセンスと収益力を「袷(あわせ)の衣(きぬ)」に仕立てる策らしい。

 三越は明治38年、主要紙に「デパートメントストア宣言」を出し、日本初の百貨店になった。元禄模様の芸者ポスターに列記した取扱商品の中、「欧米流行洋服類」は世紀を経て、今や伊勢丹の得意分野である。世事は有為転変だ。

 総売上高を減らし続けるこの業界は、呉服系も電鉄系も再編の渦中にある。そごうと西武に続いて、今秋には大丸と松坂屋、阪急と阪神が統合する。昨日の敵は今日の友。勢力地図がどんどん塗り替わる、いわば「百貨領乱」の相である。

 本来の百花繚乱(ひゃっかりょうらん)は多くの才能や美が集い、競い合う様をいう。流行を争い、時代を導いた往年の百貨店がそうだった。のれん2枚を重ねて、巻き返しの模様が浮かび出るか。衆目が注がれよう。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 公務員改革 「公」とは何かの議論がない

 安倍晋三首相が参院選の当初予定日程をずらしてまで先の通常国会で会期を延長したのは、国家公務員の天下り規制を中心とする公務員制度改革関連法 を成立させるためだった。しかし、首相がそこまでこだわり、公務員改革も「戦後レジームからの脱却」の柱と力説しているにもかかわらず、世論調査を見ても 有権者の関心は高いとはいえない。

 理由は年金問題ばかりに注目が集まっているからだけではないと思われる。

 成立した 関連法は各省庁がそれぞれ行ってきた国家公務員の天下りあっせんを禁止し、内閣府に設置する「官民人材交流センター」に一元化することなどが内容だ。だ が、具体的な制度設計は今後に委ねられ、省庁の関与をどこまで排除できるのか、骨抜きになる懸念は残ったままだ。

 参院選公示後には、セ ンターの制度設計を検討する有識者会議が省庁の事務次官OBからヒアリング調査しようとしたところ、省庁側がOBにきちんと出席要請をしていないことが判 明、25日に仕切り直しとなった。元々、今回の改革に抵抗していた省庁側がサボタージュしたと見られても仕方があるまい。

 選挙で自民党苦戦が伝えられ、省庁側には安倍内閣の行方を様子見している空気もあるのだろう。かえって安倍内閣の求心力低下を示す結果ともなっている。これではいくら首相が力説しても有権者にはアピールしない。

 もっと重要なのは、今回の関連法は一連の官製談合事件への対応策との側面が強く、硬直的な年功序列制度の見直しなど公務員制度全体をどう改革していくのか、肝心な全体像の検討を先送りしていることだ。

  安倍首相は来年の通常国会に「国家公務員制度改革基本法案」(仮称)を提出する方針で、「官僚機構を見直し、国民の信頼を取り戻す必要がある」と話す。こ れに異論をはさむ人はあまりいないだろう。だが、大事なのはどう見直すのかである。「全体像はこれから有識者会議で」では、やはり有権者は何も判断できな い。

 小泉政権時代は「官から民へ」がキャッチフレーズだった。確かに、社会保険庁など官のモラル欠如はあきれるばかりだ。ただ、最近の 介護事業の不正行為も思い起こしたい。耐震データ偽造事件の際には建築確認業務を民間に開放した是非も論議になった。私たちは、ただ単に公務員の数を減ら し、官の仕事を民に移せば済むわけではないことを学んだのではなかったろうか。

 深刻なのは官であれ、民であれ、著しく公共心が低下している点にある。この「公の再構築」こそ、小泉政権後の日本の指針を考える今回の参院選の大きなテーマの一つだったのではなかろうか。

 自民党だけでない。民主党など野党も、そんな課題にほとんど触れることがないのが実に残念だ。

毎日新聞 2007年7月26日 東京朝刊

社説:原発震災 リスク判定に情報徹底公開を

 新潟県中越沖地震による破損やトラブルはどこまで及んでいるのか。東京電力柏崎刈羽原発の点検結果が明らかになるにつれ、心配が増す。

 24日には6号機の原子炉の真上にある天井クレーンの損傷がわかった。原子炉を納めた圧力容器のふたの開閉や、核燃料の搬入に使われる重要装置だ。

 クレーン本体が落下したわけではないが、原子炉建屋内は原発施設の中でもっとも揺れに強く設計されているはずの場所である。そこで損傷が起きたことは見逃せない。万が一、クレーンが落下していたら、大事故につながった恐れもある。

 どういう揺れによってクレーンの破損が起きたのか、耐震設計に問題がなかったかなど、詳しい調査が欠かせない。

 こうした重要機器の破損が、地震発生から1週間以上たたないと明らかにならないことにも、住民は不安を抱くはずだ。これまで、電力会社のトラブル隠しが問題になってきただけに、揺れの詳細なデータなど、わかっている情報は迅速に公開すべきだ。

  それにしても、東電の地震に対する備えの甘さには驚く。変圧器で起きた火災を自力で消火する体制が整っていなかっただけではない。柏崎刈羽原発に備えられ た地震計97台のうち63台のデータを消失した。データ容量が小さく、本震のデータの上に余震のデータが上書きされてしまったというからおそまつだ。

 これでは、地震の影響の解析にさしつかえる。同様のデータ消失は3月に起きた能登半島地震の際にも、北陸電力志賀原発で起きている。なぜ、その教訓に学んで直ちに対応しなかったのか。油断があるとしか思えない。

 さらに、根本的な問題として、地震を起こす活断層の過小評価がある。東電は原発建設前の調査で今回の地震を起こしたとみられる断層の一部を見つけていながら、耐震評価の対象からはずしていた。国は東電のこの判断を認め、原発の建設を許可していた。

 東電と国の両方に、地震に対する評価の甘さがあった。これでは他の原発の信頼性も揺らぐ。国は昨年、原発の耐震指針を改正しているが、過小評価が見逃されるようなシステムも見直さなければならない。

 消火体制の不備にしても、地震計の不備にしても、柏崎刈羽原発だけの問題ではない。活断層の過小評価も同様であり、全国の原発の点検を急いでほしい。

 国民の間には、地震のリスクの高い場所に原発を建設すること自体への疑問もある。中部電力浜岡原発のように、想定される東海地震の震源域の真上に造られた原発もあり、不安に思うのは当然だ。

 原発に「絶対安全」はなく、新しい耐震指針も想定外の地震による重大事故の可能性を認めている。そうしたリスクがどの程度なら許容できるかを最終的に決めるのは国民だ。そのためにも、電力会社や国は原発の耐震性について徹底した情報公開を行うべきだ。

毎日新聞 2007年7月26日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:日本人の服装の洋風化はすんなり…

 日本人の服装の洋風化はすんなり一直線に進んだわけ でもない。明治30年代の東京には1400以上の呉服店があり、20年前に比べ7倍近く増えている。一方で舶来織物商の方は、同じ間に190軒から120 軒に減った。和装への復古ムードがあったようだ▲呉服の老舗、三越呉服店は当時、あでやかな「元禄模様」を大々的に売り出す。一方、新興の伊勢屋丹治呉服 店は、柳や桜をあしらった王朝風の「御守殿模様」を宣伝した。復古ムードのなか「元禄」「御守殿」のデザイン戦略はみごとに成功した▲「三越は営利だけの 観念で経営すべきでない。国家社会に貢献すべきだ」は三越呉服店の専務で、三越デパートの創始者となった日比翁助の言葉だ。福沢諭吉の教えを受けた日比 は、アイデアに富んだ経営とともに、利より義を重んずる「士魂商才」の人として経済史に名を残した▲かたや「およそ本店員たるものは、居常必ず正義の観念 に住すべし」と家憲の冒頭にうたったのは伊勢屋丹治呉服店の創業者、小菅丹治だ。こちらも客の心をつかむ新商法で非凡な商才をみせながら、道義や公益を重 んじた経済人として知られている▲そんな百貨店草創期のユニークな2人の先人の流れをくむ三越と伊勢丹が、経営統合もにらんだ提携交渉に入るという。市場 の縮小を背景に、百貨店業界の生き残りをかけた再編が進むなかでの新たな組み合わせだ。もしも統合が実現すれば、売上高で業界トップの百貨店が誕生する▲ 流通業の環境変化は激しく、どの百貨店も明日への道をすんなりと描けない。しかし、100年前に学ぶべきこともある。時代を読んで商機をつかむ才覚と、ブ ランドや信用を裏打ちする経営哲学がともに生き残りに不可欠なことだ。

毎日新聞 2007年7月26日 東京朝刊


【読売・社説】

原発と地震 原子炉の安全は確保されている(7月26日付・読売社説)

 大々的に「放射能漏れ」と煽(あお)り立てるほど、ひどい漏れが起きているのだろうか。

 東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が新潟県中越沖地震で被災した。その状況が連日、メディアを通じて伝えられる。

 ニュースを知ったイタリアの人気サッカーチームが、予定していた来日を直前になって中止した、という。

 夏のかき入れ時を期待していた新潟県内の旅館やホテルも、キャンセルが相次いでいる。県の試算によると、風評被害による損害額は1000~2000億円にのぼる見通しだ。

 もう少し冷静になってはどうか。

 「漏れた」とされる放射性物質はごく微量だ。政府と発電所が定めた排出基準の10億分の1から1000万分の1程度でしかない。経路や物質の種類から見て、原子炉本体からの漏れの可能性は極めて低い。無論、環境への影響はない。

 大気への放出は排気スイッチの切り忘れが原因で、今は止まっている。地震による機械的な損傷と言うより、人為的ミスだった。

 原子力安全委員会は19日に、鈴木篤之委員長の所感を公表している。

 最大のポイントは、緊急時に原子炉で最も重要とされる「止める」「閉じこめる」「冷やす」、という三つの機能が正常に働いて、今も安全性は確保されている、ということだ。

 原子力施設の耐震設計と建設、さらにその考え方を定めている政府の指針は基本的に有効だった、と言える。

 ただ、特別な耐震強化をしていない排気ダクトや消火栓などの付帯設備は、大きく損傷している。原子炉の建屋内にある、耐震性をある程度強化したクレーンも破損した。こうしたトラブルは60件以上にのぼる。

 しかし、いずれも原子炉の安全性とは峻別(しゅんべつ)して考えるべき問題だろう。

 重要なことは、今回の揺れがどんなものだったかを分析したうえで、炉にどう影響したか、詳しく調べることだ。付帯設備の耐震性をどこまで確保すべきかも課題となる。

 原子炉が襲われた史上最大の揺れかもしれない、と言われる。ならば貴重な知見が得られるはずだ。それを導き出し、すべての原子炉の安全性の向上に確実に反映させてゆかねばならない。

 国際原子力機関(IAEA)も調査に来る。日本は耐震設計などの技術で世界最高水準にある。それを生かした安全性確保の努力について、しっかりと見てもらい、海外での風評被害を、ぜひ解消してもらおう。
(2007年7月26日2時1分  読売新聞)

年金業務監視委 職員の意識改革に踏み込め(7月26日付・読売社説)

 年金記録問題を解決する態勢は整った。問題は、これをどう年金制度自体の信頼回復につなげるかだろう。

 記録統合の進捗(しんちょく)状況を監視する総務省の第三者機関「年金業務・社会保険庁監視等委員会」が始動した。

 監視委は、社保庁の組織と職員の意識改革にまで踏み込むことになるだろう。それによって、社保庁の体質転換を図りつつ、新たな組織へ脱皮させることに、真の任務がある。

 拠点となる事務局は、厚生労働省・社保庁の庁舎内に置かれた。総務省が他省庁の庁舎に乗り込んで業務を監視するというのは前例がない。

 政府が今月初めに示した年金記録問題解決の「行程表」では、社保庁を解体して日本年金機構が発足する2010年1月までに記録の不備をほぼ解消する、としている。監視委は、行程表通りに国民の年金受給権が保障されるよう、社保庁の作業を厳しく監督してもらいたい。

 監視委の委員長には、葛西敬之・JR東海会長が就いた。

 年金記録問題を深刻化させた背景には社保庁の「親方・日の丸体質」がある。旧国鉄と同根だ。葛西氏は国鉄の分割・民営化で主導的な役割を果たした。その経験を生かしてほしい。

 社保庁の仕事ぶりをただ監視するだけの委員会で終わってはならない。監視委は総務相を通じ、厚労相や社保庁長官に業務改善を勧告することも可能だ。

 記録統合を行程表通りに遂行するためには、外部に任せ得る仕事は積極的に委託しなければならない。新機構が目指す業務の大胆な外部委託路線のレールを前倒しで敷く必要がある。責任感を持って年金業務に取り組む人物を見極め、抜擢(ばってき)することも重要だ。

 年金問題の第三者機関は、「年金記録問題検証委員会」「年金記録確認第三者委員会」と合わせ、三つになった。

 行政の失敗を検証し、事態を収拾し、改善策を講じる、という作業に一体的に取り組む初の試みである。その意味でも成果が問われよう。

 年金記録の不備を改善する策は打たれた。だが、これで年金に対する信頼を根本から取り戻せるわけではない。持続可能な年金制度は、どうあるべきか。財源の議論を抜きにして、説得力のある展望を示すことはできまい。

 ところが、与野党とも消費税率引き上げの議論に踏み込もうとしない。こうした政治の現状が、年金に対する不安に拍車をかけている。超党派で真剣に、年金制度の再構築に取り組む時であろう。
(2007年7月26日2時8分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月26日付 編集手帳

 江戸市中でよく目につくものを三つ並べて昔、「伊 勢屋、稲荷に犬の糞(くそ)」といった。伊勢屋は伊勢出身の商人がつけた屋号である◆伊勢商人が商売上手で羽振りのよかったことが分かる。その筆頭に伊勢 松坂(三重県松阪市)の人、三井高利(たかとし)がいる。1673年(延宝元年)、江戸で伊勢屋ならぬ越後屋呉服店をひらいた。三越の前身になる◆屋号の 名門ともいえる伊勢屋の名は明治の世に移ってからも商人に好まれたようで、小菅丹治(たんじ)は1886年(明治19年)、東京・神田に伊勢屋丹治呉服店 を創業している。いまの伊勢丹である◆遠く伊勢につながる三越と伊勢丹が、経営統合の交渉に入ったという。実現すれば、売上高で現在首位の高島屋を上回 り、今年9月に経営統合する大丸・松坂屋をも抜いて国内最大の百貨店グループが生まれる◆伊勢参りの旅人が持ち寄った諸国ばなし(情報)に触れることで、 伊勢商人の商売感覚は磨かれたという。時は移り、情報は洪水となって縦横に走る世を迎えた。伊勢商人の末裔(まつえい)も、老舗だからと安閑としてはいら れない◆街でいま目につくものを三つ挙げるならば何だろう。犬の糞もお稲荷さんの祠(ほこら)もあまり見かけない。コンビニ、家電量販店、携帯電話ショッ プ…あたりか。消費の風景が様変わりしたなかで、百貨店の手探りがつづく。
(2007年7月26日1時43分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】原発損傷 対応は本質を見失わずに

 新潟県中越沖地震の強い揺れに遭遇した東京電力柏崎刈羽原子力発電所の6号機原子炉建屋で、天井近くにある車輪形の走行クレーンの自在継ぎ手の破断が確認された。直径5センチの炭素鋼製の頑丈な部品が真っ二つに折れていたのだ。

 原子炉がある原子炉建屋は岩盤上に建設されているので最も堅固なAクラスの耐震力を備えている。地震後からの被害調査で、原子炉建屋内の重要機器の損傷が初めて発見されたわけである。近くに震源を持つ地震動の激しさが改めて確認された。

 同発電所には7基の原子炉がある。地震時に運転していた4基は、安全に自動停止している。東京電力は今後、原子炉圧力容器のふたを開けて、内部の燃料の状態などを調べるが、これまでのところ、全炉で内部の損傷を示唆するような異常値は出ていない。

 破損した6号機のクレーンは、重い圧力容器のふたを外して持ち上げる作業に必要なので、6号機の炉心検査は遅れる。残り6基の原子炉については、クレーンを確かめたうえで、炉心の確認に進んでもらいたい。

 炉心の無傷が確かめられると、柏崎刈羽原発は、設計上の想定を超えた地震動に耐え抜いて、安全上重要な基本機能を維持したことが証明される。

 今回の地震で、同原発は60件を上回る被害を受けた。しかし、大部分は原発の安全性を左右しにくい耐震重要度Cクラスの施設での出来事だ。

  原発にとって、何が重要で危険な損傷なのか。一般人も、その本質を冷静に見極めることが必要だ。今回、判明したクレーンも、つり下げたものを落下させない ことが安全上、求められている。クレーンは壊れたが、レールから脱輪もしていない。いたずらに人々の不安感をあおりたてる反応は、やめにしたい。

 調査が進むにつれて、思いがけない損傷が発見されるかもしれない。東京電力は情報の透明性と発表の即時性を維持していかなければならない。

 調査には十分な時間をかけたい。しかし、補修完了後には速やかな発電再開が必要だ。日本の温暖化防止対策には原子力発電の貢献が期待されている。安全上、意味を持たない長期停止は、世界に対しても誤解を与えることになりかねない。

(2007/07/26 05:04)

【主張】NHK受信料 値下げの前になすべき事

 NHKが受信料制度の創設以来初めて独自の値下げ案を打ち出した。具体的内容は明らかにされていないが、月額で最大100円の引き下げが検討されているもようだ。

 制作費の着服や乱脈経理など相次ぐ職員の不祥事で、NHKに対する世論の風当たりは依然厳しいものがある。値下げも結構だが、NHK自身が誓った肝心の内部改革は果たして着実に進んでいるのか。視聴者から問われているのはまさにその点だ。

 NHKの最高意思決定機関である経営委員会の古森重隆委員長は、値下げ案への感想を問われ、「まず公共放送としてNHKが今後何をなすべきかをはっきりさせ、その上で料金も考えていく姿勢が重要」と述べた。当然の見方であろう。

 NHKは昨年1月、経営のスリム化と企業統治の強化を主な柱とした経営計画を発表した。しかし、職員の不祥事はそれ以降も後を絶たないのが実情である。

 確かに受信料の不払いは減少の方向にある。平成17年度に6024億円まで落ち込んだ受信料収入は、昨年度に6138億円まで回復した。昨年から始めた不払い者への民事訴訟手続きも効果を発揮しているようだ。

 しかし、それでも不払い率は依然として対象世帯の3割に近い。NHKは、5年後には支払い率が70%台後半まで回復するとみているものの、これで改革は視聴者の理解を得ていると胸を張れるのだろうか。

 NHKが値下げ方針を固めた背景には、菅義偉総務相の強い意向がある。総務相はこれまで、受信料の支払い義務化を放送法改正に盛り込む見返りとして、「2割程度の値下げ」をNHKに求めてきたからだ。だが、その総務相自身が今回の値下げ幅に不満を隠していない。

 NHKは今後、経営委員会の承認を得た上で一般の意見を募り、9月にまとめる新たな中期経営計画に値下げ案を盛り込みたいとしているが、先行きはなお不透明だ。

 「100円や200円の値下げが視聴者の切実な要求になっているとは思えない」。古森委員長が指摘するように、NHKに望むのはまず「良い番組や信頼性のある経営」だ。NHKは何か大きな勘違いをしていないか。

(2007/07/26 05:02)

【産経抄】

 浅草の「三社祭」で、またも御輿(みこし)の上に乗って騒ぐ不逞(ふてい)の輩(やから)がいた。怒った浅草神社は、来年から最終日に本社御輿を 出す渡御をやめにしたという。御輿は「神輿」とも書く。神体が乗る輿なのに、その上に乗るなどご神体を踏みつける行為に等しい。

 ▼祭礼が本来の意味を放棄すれば「祭りの自殺」である。選挙も祭りと同じで、候補者という御輿とその担ぎ手がいる。いまの参院選が衆院の争いに乗っ取られて、本来の「高い立場で国政を論ずる」ことを放棄してしまえば、それもまた「参院の自殺」だ。

 ▼参院は「衆院のカーボンコピー」といわれて久しい。参院の審議は、衆院の“後追い”ばかりだからどうしてもコピー化する。でも、参院の議員候補は気をつけた方がいい。参院選を衆院側の醜聞を借りて戦えば、コピーどころか衆院に活躍の場を収奪される。

 ▼ 争点は政治とカネなのだという。「なんとか還元水」で自殺した前農水相も、事務所費問題の新農水相もみんな衆院の方々だ。年金の記録漏れとても、こちらは 官僚のズサンな管理問題であり、職員組合の過剰な権利意識の問題だ。それなのに、参院候補から財源も含めた年金改革の全体像が聞けない。

 ▼ 参院は解散がなくて任期は6年もある。欧米なら2~4年で改選される下院に対して、天下国家を論じる上院にあたる。本来の役割を忘れれば、参院軽視から参 院無用論まで、幅広くその存在意義が問われることになる。過去に、民間団体が「参院廃止」を打ち出したことをお忘れか。

 ▼そうはいっても、衆参を問わず政治家は有権者のコピーにちがいない。幸か不幸か、彼らは私たちの中から選ばれた。だが、三社祭の渡御はやめられても投票をやめるわけにいかない。

(2007/07/26 05:01)


【日経・社説】

社説1 夏休みもいいが若者よ投票に行こう(7/26)

 参院選の投票日の29日が迫ってきた。年金記録漏れ問題などの逆風を受けて、各種世論調査で与党の苦戦が伝えられている。野党の民主党が参院で第 一党をうかがう勢いだ。ただ先週末の段階では選挙区で3割、比例代表で2割の有権者が投票先を決めておらず、流動的な要素が残っている。他の年代に比べる と著しく投票率が低い若い世代に、強く投票を呼びかけたい。

 参院選の投票率は衆院選よりも低くなりがちだ。1992年以降、6割を切る 状態が続いており。前回の2004年は56%台だった。とりわけ若い世代の「選挙離れ」は深刻だ。総務省が実施しているサンプル調査によると、20―24 歳の投票率は31.5%、25―29歳は36.8%、30―34歳でも 44.0%にすぎない。

 郵政解散による05年の衆院選では、この若い世代の投票率がはね上がり、全体でも前回より7.7ポイント上昇して67.5%となった。このいい流れを継続させたいところだ。

  期日前投票が大幅に増えているのは明るい兆しである。22日までに投票を済ませた有権者は全国で約400万人に達し、前回参院選の同時期に比べ54%も増 加した。これまでは労働組合や宗教団体などが期日前投票に積極的だった。今回は無党派層の利用者も増えているとみられる。選挙への高い関心を示すものとし て注目される現象だ。

 夏休みに入り、29日に予定がある人も多いことだろう。期日前投票の手続きは簡単で、便利な場所に投票所を設けている選挙管理委員会も多い。日曜日に投票に行けない人々にはぜひ利用してもらいたい。

  今回の参院選の最大の争点は年金問題だ。マニフェスト(政権公約)などで各党は記録漏れ問題の対応だけではなく、年金制度の将来像についてもそれぞれの政 策を訴えている。論議が深まっているとはいえないが、選挙結果は今後の制度改正論議に影響を与える。じっくりと公約を読み比べて、投票先を考えたい。

 この選挙で選ばれた議員は6年間の任期中に、憲法改正の発議にかかわる可能性もある。それにふさわしい見識を持った候補者かどうか。そんな問題意識で、各候補者の政見放送や演説を聞くのもいい。

 年金問題や憲法に限らず、選挙戦で問われている農業、地域再生、教育などのあらゆる政策は、あすの私たちの生活に直結する。選挙に行かずに、白紙委任してしまうのではあまりにもったいない。主権者の自覚を持って必ず投票に行こう。

社説2 改革が決めた百貨店逆転劇(7/26)

 百貨店で売上高4位の三越と5位の伊勢丹が経 営統合に向けた交渉に入った。業績不振が続く三越に対し、高収益が続く伊勢丹が経営上のノウハウを提供し、支える色合いが強い。長い歴史を持つ老舗の三越 が後発の伊勢丹に頼る逆転劇。古い体質が目立つ百貨店業界にあって、どれだけ中身のある革新に取り組めたかどうかが両社の明暗を分けた。

 伊勢丹の収益源は店舗別売上高で全国首位に立つ東京・新宿の本店にある。各階の面積が広く、正方形に近い理想的な売り場に加え、JR中央線沿線に住む、比較的高収入で、流行に敏感な消費者に対応した品ぞろえにも定評がある。

 これは偶然ではない。昭和初期、創業地の秋葉原から、当時としては繁華街とはほど遠かった新宿へ、将来性を見込み移転した。新店舗は将来の吸収合併をにらみ隣の百貨店「ほていや」と各階の高さを合わせて建設。合併後は壁を取り払い、今にみる「広い正方形」を実現した。

 三越と違い昔からの金持ちや法人を顧客に持たなかったので、新興中流層の主婦や若者に焦点を合わせた。これが一般消費者の好みに敏感な品ぞろえを生んだ。売り切れを防ぐための情報システムもスーパーやコンビニにならって充実させた。

 1990 年代前半、不動産会社の秀和による株の買い集めに対処する過程で、創業家社長が退陣し、初めて現場出身の社長が就任した。自由な社風も強まった。10代女 性向けコーナーや新進デザイナーの売り場を設け、近年は別館を「男の館」にするなど本店の魅力に磨きをかけた。

 一方、三越は本店依存からの脱皮を目指し、90年代前半まで地方都市の2番店を買収し、新規出店による多店舗化を進めた。ゴルフ場経営などの多角化にも走ったが、経営の相乗効果を発揮できず負の遺産を抱えた。「三越ブランド」への過信があったと言わざるをえない。

 現経営陣は改革に取り組んでいるが、実を結んでいないのは、社員の名門意識やぬるま湯体質が一因との指摘も聞かれる。ブランドに慢心せず、時代のニーズに目を向け改革に取り組まなければ、消費者の心はつかめない。今回の提携交渉の背景から、そんな教訓がくみとれる。

【日経・春秋】(7/26)

 ハイファイはhigh fidelityの略で高忠実度と訳す。イヌのニッパーが蓄音機に耳を傾ける、日本ビクターのマークは「録音なのに、亡きマスター(飼い主)が話していると忠犬が思いこむほどの高忠実度を実現した『最高の技術と品質』」を象徴するそうだ。

▼ そのニッパーが、気のせいか寂しげに見える。3期連続で最終赤字になり「経営改革が急務」と認める日本ビクターが、だいぶ規模が小さくやはり再建途上にあ るケンウッドと経営統合して生き残りを目指す道を選んだ。半世紀前からの親会社松下電器産業に“見放された”格好である。

▼昨日の本紙朝 刊最終版の1面は業界再編の報道が集まった。ビクターとケンウッドの話、東芝など3社によるシステムLSIの開発統合、伊勢丹と三越の資本提携に向けた動 き――3本並んだニュースは、相手にする市場が国内であれ世界であれ、単独で競争に立ち向かえる企業が少ない日本の現実を示している。

▼ ニッパーが聴く「マスターの声」のマスターには飼い主のほか支配者や師匠の意味もある。電機でも小売りでも、闘いに勝ち抜くには、市場のマスターの消費者 が何を求めるかをつかみ、製品やサービスに実現させる能力が要る。マスターの声を聴きそれへの忠実度を高めること。ビクターのマークは示唆に富む。


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2007年7月25日 (水)

7月25日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月25日朝刊)

[基地と参院選]「普天間」を軽視するな

 参院選は全国的に年金問題が最大争点として浮上し、与野党逆転が大きな焦点となる中で、基地問題は後景に退いたかのようだ。

 しかし、米軍再編は沖縄社会に深刻な影響をもたらすだけに安倍政権の政策をどう評価するかが正面から問われなければならない。

 県政の最重要課題である普天間飛行場の移設問題は、名護市が求めるV字形滑走路案の沖合移動と、仲井真弘多知事の公約である「三年以内の閉鎖状態」の実現をめぐって、政府と県、名護市の間でこう着状態が続く。

 「原爆投下発言」で久間章生前防衛相が辞任し、後任の小池百合子防衛相は沖合移動は困難との見方を示す。防衛省の守屋武昌事務次官は「政府案を変えることはまったくない」と否定的な見解を繰り返すばかりである。

 普天間移設について、西銘順志郎候補は「仲井真知事と歩調を合わせ、あらゆる方策を検討し問題解決に取り組む」と訴え、普天間飛行場の早期の危険性除去のため、県内移設も選択肢の一つだと主張している。

「いいのですか?ジュゴンの未来は、あなた達の未来かも、」バナー 一方、糸数慶子候補は「ジュゴンやサンゴの命を奪い、住民の暮らしを破壊する恒久的な基地建設は認められない。米本土に移転させるしかない」と県内移設に反対し、同飛行場の即時閉鎖・返還を求める立場である。

 訴えは基本的な考え方の応酬にとどまり、それ以上に論議が深まらない。

 西銘候補は沖合移動を主張し続けるのか、危険性の除去をどう具体化するか。糸数候補は米本土移転を主張するが、どのようなプロセスで実現するのか。政府の壁は厚く、議論自体に閉塞感や疲労感も感じられる。

 今年五月、米軍再編への協力の度合いに応じ自治体に交付金を支給する米軍再編推進法ができた。協力する自治体には支給し、拒めば冷遇して受け入れを迫る「アメとムチ」の政策だ

 普天間移設について政府はこれまで「地元の頭越しには進めない」(橋本龍太郎元首相)と説明してきたが、ここへ来て強権的姿勢も目立つ。海上自衛隊の掃海母艦の派遣は政府の姿勢の変化を象徴している。

 米軍は地対空誘導弾パトリオットを嘉手納に配備。最新鋭ステルス戦闘機F22Aラプターも一時配備された。垂直離着陸機MVオスプレイの配備計画なども徐々に明らかになってきた。

 普天間移設と連動するように着々と米軍再編の既成事実化が進行し、政府は頑なな態度で政府案の受け入れを迫っている。普天間移設は沖縄の今後を決定付ける重要な問題であり、軽視できない争点だ。もっと多角的に同問題について論議を深める必要がある。

[全国高校文化祭]未来担う創造力に目を

 高校生が音楽や演劇、書道など文化活動の成果を発表し、競い合う「全国高等学校総合文化祭」(全国高文祭)が今年も二十九日から、「悠久の地より吹く新しい風」をテーマに島根県で開かれる。

 県内からも十四部門に三十四校二百四十四人が参加。昨年、南風原高が文化庁長官賞(優秀賞)に輝いた郷土芸能部門や、那覇国際高が優秀賞を受賞したビデオメッセージ、朗読、アナウンスの放送三部門、また書道部門などの活躍が今年も期待されている。

 ところでこの季節、高校生の大会といえば、全国総合体育大会(インターハイ)や全国野球選手権(夏の甲子園)といった華やかなスポーツのイベントに目がいきがちだ。

 しかし、全国高文祭も一九七七年に千葉で開催されて以来、今年で三十一回目を迎える。今では全国約二千八百校から二万人近い高校生が参加し、「文化部のインターハイ」と呼ばれる一大イベントに成長した。

  県高校文化連盟によると、県内の公立、私立を含めた高校生は約五万人。そのうち文化活動を行っているのは約八千人といわれる。ところが、全国的な生徒数の 減少傾向に加え、活動費・遠征費など補助削減による財政難、指導者不足など課題が山積し、年々活動が困難になっている、という。

 それでも文化活動での沖縄の高校生の活躍は、全国高文祭にとどまらない。昨年は全国高校写真選手権で真和志高が優勝し、全国高校漫画選手権大会でも那覇工業高が優勝、開邦高が2位と上位を独占している。

 これら著しい実績を残している背景にあるものは何か。長い歴史と豊かな芸術性を持った沖縄独特の伝統文化が土壌にあるのではないだろうか。そこから培われる芸術性や創造力が高校生らによって、しっかりと受け継がれているように思える。

 若い彼らの個性豊かな表現活動が、沖縄文化の裾野を広げていくに違いない。未来を担う創造力に対し、行政を含め、もっと目を向けていきたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月25日 朝刊 1面)

 早稲田大学に會津八記念博物一館という施設がある。同大で英文学や美術史に情熱を傾けた歌人で書家の會津八一(一八八一―一九五六)にちなんだ博物館。

 最近そこが沖縄の焼き物に異常なほどの関心を示している。昨年七月に沖縄の奇才・国吉清尚を取り上げたのに続いて今年は先月から今月にかけ「八重山古陶―その風趣と気概―」を開催した。画期的な企画に敬意を表し拍手を送りたい。

 沖縄は焼き物が盛んな地域だが、八重山に関してはこれまでほとんどスポットがあてられなかった。考古学の資料としては話題になっても工芸品としての位置付けは、本島に比べ一段格下とみなされてきた。

 ところが二〇〇二年に浦添市美術館で開かれた「沖縄の古陶」に出品された八重山の焼き物を専門家があらためて検討すると、これまでの定評を覆すほどの優れた美術品であることが判明したというのである。意表を突かれた思いがする。

 手元に届いた図録などを見ると従来、八重山では発達しなかったと見られていた釉薬を使った実に趣きのある上焼があるのだ。それ以上に驚かされるのは線のシャープさ。ろくろの技術の高さがうかがえる。

 八重山では織物と違って陶芸の技は現代に継承されたとはいえない。従って本島のように焼き物を楽しむ土壌が熟しなかった。そこに盲点があった。同展は今月三十一日から壺屋焼物博物館、来月は石垣市の大浜信泉記念館で。(真久田巧)


【琉球新報・社説】

米軍車両侵入 政府は「逸脱」行為を正せ

 米海兵隊の装甲車が18日にうるま市の県立沖縄高等養護学校敷地内に無断で侵入した問題は、日米地位協定さえも逸脱した暴挙である疑いが濃厚になってきた。
  外務省の重家俊範沖縄担当大使は23日、抗議に訪れた政党代表が「学校への侵入は地位協定を逸脱している」などと指摘したのに対し、「その通りだと思う」 と述べた上で「公道を外れた施設に無断で入っており、緊急事態があったわけでもなく、弁護のしようがない」と米軍の行動を批判した。
 防衛施設庁の渡部厚施設部長も20日の記者会見で「施設区域間での移動は(地位協定で)認められているが、学校敷地の中なのでそれがそのケースに当てはまるのか、という感じは持っている」と指摘していた。
 日米地位協定第5条は、米軍車両が日本国内で施設・区域間を自由に移動する権利を保障している。だが、外務省の「日米地位協定の考え方」によると、第5条に関する合意議事録は、移動に当たっては日本国の法令が適用される旨を定めている。
 自由な移動が認められているからといって、管理者の許可を得ることもなく民間の敷地内に立ち入ることが許されていいはずがない。
 ところが、外務省日米地位協定室は当初「通常、日本人が自由に出入りできるのに米軍に限って排除することはあり得ない。直ちに問題があるかどうかは何とも言えない」と述べ、米軍を擁護するような姿勢を示していた。
 Uターンできる場所がいくらでもあったにもかかわらず、わざわざ養護学校の敷地内に装甲車を乗り入れ、生徒の安全を脅かした行為に対し、「問題があるかは何とも言えない」と言ってのけること自体、驚きである。良識を疑う。
 学校の中に、突然、戦車と見間違えるような装甲車が入ってきたら、大人でもびっくりして恐怖感を覚えるはずだ。生徒であれば、なおさらだ。
 「弁護のしようがない」との重家大使の発言は、外務本省の対応を修正したものといえるだろう。
 県内の自治体や議会、民間団体の意見を聞いて政府に伝えることは沖縄大使の重要な職務の一つだ。
 重家大使には、もう一歩踏み込んで具体的に行動を起こすことが求められる。批判するだけでなく、地位協定上も留意すべき問題があることを米国に対し厳しく指摘してほしい。
 今回の米軍の行為は、仲井真弘多知事がコメントした通り「非常識の極み」である。沖縄で「非常識」がまかり通る状態がいつまでも続いているのは日本政府の怠慢と言わざるを得ない。今度こそ毅然(きぜん)とした態度で米国に抗議し、改善を促すべきだ。

(7/25 10:05)

魚卸売市場統合 漁業振興への貢献に期待

 那覇市の泊漁港内で県漁連、那覇地区漁協が運営する2つの地方卸売市場が、今年10月にも統合することになった。統合によって流通の一元化が進み、県内漁業の振興・発展に結び付くことを期待したい。
 現在、泊漁港内には2つの卸売市場が併存している。人件費、施設維持管理費などの経費がかさみ市場経営を圧迫するなど、かねて弊害が指摘されていた。
  県漁連は統合によって改善される点として(1)計画的出荷が容易になり安定供給ができる(2)販売単価、水揚げ代金の安定・向上につながる(3)生産者の 安定収入が確保される(4)現在、両市場に重複して登録されている仲買人が一本化できるため購買力向上が期待できる(5)市場管理費が軽減できる―などを 挙げている。
 両漁協とも、現状のままでは市場機能が衰退する、との危機感があったようだ。
 県漁連と那覇地区漁協が出資する有限責任事業組合(LLP)が新たな市場を運営する。LLPへの出資比率は県漁連70%、那覇地区漁協30%とし、出資の割合で利益などを配分するという。
 両漁協は昨年11月から、統合に向けた確認事項などについて調整を進めてきた。
 多くの利害が絡む中で、合意にこぎ着けたことを評価したい。
 県内の漁業就業者数は2005年で4300人。このうち男性の3割余は65歳以上で占めている。若年層の新規の参入が少ないため、近年、20代、30代の減少が著しい。
 県内主要卸売市場取扱高の8割を占める巨大市場の誕生で鮮度のいい魚の安定供給が進めば、漁業経営の安定化にもつながる。それによって、若い漁業の担い手が参入しやすくなれば、なおいい。
 市場の統合を機に、より新鮮な魚介類を適正な価格で消費者に届けられるよう、なお一層努めてほしい。
 今後、両漁協から派遣された職員で構成する市場統合準備室を県漁連内に設置し最終調整を進めるという。作業が円滑に運び、早期に統合が実現することを希望する。

(7/25 10:01)

【琉球新報・金口木舌】

 ニュートンはリンゴが地面に落下するのを見て「落ちた」のではなく「地球に引き寄せられた」と考えた。逆転の発想が万有引力発見を導いたといわれる
▼この逸話は、逆転の発想、もしくは発想の転換がこれまでの常識を覆して、新しい考えや方法を生み出す場合があるという教えとして、たびたび引用される
▼沖縄ではかつて、学校で島言葉(しまくとぅば)を話すと、首から「方言札」をつるされた。標準語励行を進める当時の教育現場での罰であった。方言札を経験した世代の人たちが現在でも「あれは恥ずかしかった」と振り返るのをよく聞く
▼近年は島言葉の継承、普及を図ろうと、各地で講座や大会などの開催が盛んになってきた。2006年3月には県議会で「しまくとぅばの日」も制定されている
▼知人のアイデアを紹介したい。「講座修了書や大会最優秀賞などを授与するのもいい。だがちょっと発想を変えて、かつての罰、見せしめの方言札をあえて贈るというのはどうだろう」
▼島言葉を自在に操れる、話すことを示す「名誉ある札」として、方言札をよみがえらせる考えはユーモアであり皮肉でもある。方言札の知名度は抜群である。島言葉の継承、普及の一助になるかもしれない。

(7/25 9:41)


【東京新聞・社説】

原発トラブル 『想定外』が多すぎる

2007年7月25日

 原発の専門家にも「想定外」の出来事があまりに多かった。新潟県中越沖地震で、放射能を含む水漏れを起こした原発建屋の構造的な欠陥が指摘された。消防体制の不備も合わせ、看過できない。

 柏崎刈羽原発6号機で、放射性物質を含む水があふれたトラブルは、建屋の床の不完全防水が原因だったと、東京電力は発表した。

 「想定していなかった」とも説明した。クレーンの一部の破損も見つかった。経済産業省原子力安全・保安院が、建屋の構造に欠陥があったと推定したことは重要だ。

 同原発1号機でも、「想定外」の事態が起こった。地盤沈下で壁にすき間ができて、多量の水が外部から建屋内に入り込んだことだ。

 防護の上に防護を重ねたはずの原発に「想定外」が相次いだことは、付近の住民に大きな不安を与えるものだ。運転再開を考える時期はまだまだ、遠い。

 心臓部である原子炉三基は点検中だった。残り四基が自動停止し、最悪の事態を免れたことに、東電側は「健全だ」と繰り返した。だが、心臓部が持ちこたえたことは、原発建設の大前提であり、当然というべきである。

 むしろ、原発周辺の地盤が一メートル以上も陥没し、結果として、稼働中の3号機わきの変圧器火災を引き起こしたことは、設計などの見通しの甘さを示すものといえよう。

 もっと驚かされるのは、初期消火の失敗である。化学消防車は未配備のうえ、原発の自衛消防隊も機能しなかった。一一九番につながったのが十二分後で、鎮火までに約二時間も要した事態は、深く教訓として刻むべきだ。

 ずさんで、お粗末きわまる消防・防災体制が全国の原発にも及んでいる事実を踏まえ、もはやその対策は待ったなしといえる。

 国や自治体への放射能検出の報告が、六時間以上を要したことも看過できない。東電側は「分析を繰り返した」と釈明するが、重要事実は一刻も早く報告するべきだ。

 瞬間的な大きな揺れや、原発直下まで活断層が延びていたという気象庁の解析結果は、最大級の「想定外」だった。地震大国での原発建設で、より厳しい基準が求められることは、繰り返し強調されていい。

 もちろん気をつけねばならないことは、いわゆる風評被害である。検出された放射能はごく微量で、人体や農水産物には影響がないことは、新潟県の調査で明らかになっている。不要な過剰反応は慎みたい。

食料政策 農村だけの問題でない

2007年7月25日

 農業再生で自給率を高める。それが農政の目標のはずだが、参院選では自民、民主両党の農村票争奪戦ばかりが目につく。食料問題は国の安全保障政策であり、熱く議論を深めるべきだ。

 日本の食料自給率は40%、先進国の中で最低水準だ。完全自給を維持しているのは主食用のコメだけで、他の作物は小麦14%、大豆5%など、厳しい状況を強いられている。

 国連は向こう十年、多くの農産物がバイオ燃料用の穀物需要で過去に例のない高値が続くと警告した。中国などの消費増大も逼迫(ひっぱく)要因だ。世界有数の食料輸入国である日本は海外の動向に一喜一憂することがないよう、少しでも自給率を向上させなくてはなるまい。

 自民党は日本農業の生産性を上げるため、計画経済的な農政を市場重視へと切り替え、国が統制してきたコメ価格を市場に委ねた。この政策変更が農家に合理化を促し、十年前に六十キログラム二万一千円だったコメ価格を一万四千円前後に引き下げた。

  四月からは一定規模以上の経営に財政資金を重点配分する品目横断的経営安定対策を始めた。今秋には三十九万ヘクタールに上る耕作放棄地活用などの農地政策 をまとめ、さらなる大規模化、効率化を図る計画だ。しかし、コメ価格の低下は改革がもたらした成果との評価がある半面、零細農家が置いていかれる難点があ る。

 民主党はそこを突いたのか、六十キログラム当たり五千円に下がっても、一万五千円を保証すると言い切った。

 総額 年一兆円。農産品の市場価格と生産費との差額を全農家に支払う「戸別所得補償制度」だ。農業政策は地域政策でもある。小規模農家も含め、所得補償でより多 くの農家を守って地域を維持すれば、自給率も回復する。一兆円は補助金廃止などで確保できると民主党は主張するが、簡単に財源をひねり出せるのか。農家の 合理化は大丈夫か。

 競争力重視に対して所得補償。政策の相違点ははっきりしているが、ともに一長一短を抱える。攻防の舞台は参院選の勝 敗のカギを握る一人区の農村部に偏り、政策が都市住民の目にさらされる機会は少ない。選挙期間中にとらわれず、長期的視野で、日本農業のあるべき姿の国民 的合意を形成する必要がある。

 現在、市場開放問題は世界貿易機関などで議論が進められ、日本は農産品の幅広い輸入拡大を迫られている。交渉いかんでは輸入急増を招いて自給率を低下させ、都市住民の食料確保の選択肢をも狭めかねない。

 食料問題を、農村部だけの“局地戦”にしてはならない。

【東京新聞・筆洗】2007年7月25日

 玄人はだしのフルート奏者としても知られていた。先 日永眠した日本の臨床心理学の第一人者、河合隼雄さんのことだ。モーツァルトが好きで、若いときはその作品も演奏していた▼年を重ねるに連れ、童謡をよく 演奏するようになった。なぜか体全体で吹いている感じがしたという。得意の一曲に野口雨情の作詞、本居長世の作曲による「七つの子」がある。♪烏(から す)/なぜ啼(な)くの…。多くの人が歌詞をそらんじることができよう▼ダジャレが好きだった河合さんのことだから♪可愛(かわい)/可愛と/啼くんだ よ…のくだりが自分の名前を呼ばれているようで面白かったこともあるかもしれない。でも親烏の子に対する愛情にこそ、心をひかれたのだと推察する▼文化庁 長官のとき、親子で歌いつげる「日本の歌百選」を決めようと提案した。歌を通じて家族の絆(きずな)を深めてもらいたいという思いがあった。文化庁が公募 して今年の一月に発表されたが、「七つの子」も多くの人の支持を集めて百選入りした。河合さんはほっとしたに違いない▼世の中で利己的な「個人主義」が幅 を利かせ、家族や人と人の絆が弱まりはしないか憂いていた。「自立した人とはどんな人ですか」と質問したことがある。河合さんは「自分で考え、自分で判断 し、自分の行動に責任を持てる人」であるとともに、「他の人とのつながりをおろそかにしない人」と付け加えた▼人は本来、一人で生きていけるほど強くはな いのだろう。河合さんは誰にでも自分なりの「可愛い七つの子」がいることを願っていた気がする。


【河北新報・社説】


07参院選を問う<教育改革>/もっと論戦を深めてほしい

 安倍晋三首相は政権の最重要課題に教育再生を掲げ、改正教育基本法を成立させたのに続き、学校教育法など教育三法を改正、教育理念や教育行政を大きく転換した。

 今後さらに、教育振興基本計画の策定、学習指導要領の改定、教育再生会議の第三次報告を基にした改革などが予定されている。

 参院選では、政府・与党が強力に進める教育改革をどう評価するかが問われる。野党各党もそれぞれ教育改革を重点政策に掲げている。

 共同通信社の世論調査によれば、参院選で有権者が重視するテーマとして、年金に次いで教育が2番目に挙げられている。それだけ身近な問題であり、教育の現状に対する問題意識が強いことを示す。

 それにもかかわらず、教育問題は選挙戦で盛り上がりに欠けているのが現状だろう。

 どのような教育改革を目指すのか、各党はもっと訴え、論戦を深めてほしい。抽象的な表現にとどまらず、方針や将来像をできる限り具体的に示す努力も求めたい。

 教育をめぐる問題は極めて多岐にわたる。基礎学力、いじめや不登校、教員の質、学校や教育委員会の責任体制―。子どもたちのモラルの低下や地域・所得による教育格差なども指摘される。

 さまざまな問題に対し、政府・与党が目指しているのは国の強い指導で教育を立て直すことだ。安倍首相の肝いりで内閣に設置された教育再生会議はその象徴だろう。

 政府が6月に決定した「骨太の方針」では「基礎学力と規範意識を持った優れた人材を育成することは、必要不可欠な国家戦略である」とする。教育再生の目標は「学力」と「規範意識」の向上にあることを明確に示すものだ。

 教員免許更新制の導入や学校運営の強化などを盛り込んだ教育三法の改正は、目標に向けた第一歩と言える。

 学習指導要領の改定では、学力向上に向けた授業時間数の増加、徳育の「教科化」などが図られる見通しだ。

 だが、こうした方針に対して「国の管理・統制の強化につながり、教育現場を委縮させることになりかねない」「地方分権の流れに逆行する」という批判も強い。ゆとり教育の功罪について、徹底した検証を求める意見もある。

 政府・与党は地方の意見や現場の声にも、もっと耳を傾ける必要があるだろう。また教育関連予算や教職員定数の拡充に関して、明確な方針を示すべきではないか。

 一方、民主党はマニフェスト(政権公約)で、義務教育における国の責任を明確にした上で学校運営は地方自治体が責任を持って行う制度に改めることや、教育への財政支出の5割増などを打ち出している。

 どのように国と地方の責任を分けるのか、教育予算の財源をどう確保するのかなど、やはりもっと具体的で丁寧な説明が必要だろう。
2007年07月25日水曜日

【河北新報・河北春秋】

 原子力発電環境整備機構が発行するパンフレットがある。高レベル放射性廃棄物処分場に関するものだ。「参考」として経済波及効果と交付金額が添付 してある▼こんな内容だ。処分場建設によって、その県には60年間に直接経済効果が7400億円ある。生産誘発効果は1兆6500億円。雇用は13万人。 立地市町村には固定資産税収が毎年27億円

 ▼ それだけではない。建設の事前調査に名乗りを上げるだけでも金が出る。2年間の文献による地層調査の期間中、計4億2000万円。続く4年間のボーリング 調査では計70億円の交付金▼数字ばかり並べて恐縮だが、財源不足に苦しむ自治体にとっては目のくらむような金額だろう。5年前に公募を開始して以来、全 国で12の自治体が応募を検討した。どれもが交付金による財政再建が目的だった

 ▼札びらで頬(ほお)をたたくようなこうした国のやり方 には、多くの住民が違和感を抱かざるを得まい。原子力発電の恩恵に誰もが浴している以上、処分場が必要な施設であることは疑うべくはないにしても▼秋田県 上小阿仁村が村内誘致を検討するという。長らく人口減と高齢化に悩んできた村が、やむにやまれず立地に手を挙げた印象だ。無論、すんなり誘致には至るまい が、何ともやるせない選択ではないか。

2007年07月25日水曜日


【京都新聞・社説】

公務員制度  国民の信頼得る改革を

 参院選のさなか、国家公務員制度をめぐる政府の二つの有識者懇談会が始動した。
 一つは官僚の再就職あっせんを一元化する「官民人材交流センター」の制度設計を行う懇談会。いま一つは公務員制度全体の改革を検討する懇談会だ。いずれも今秋に報告書を出す。
 安倍晋三首相は、参院選の投票日を一週間ずらしてまで国会を延長し、成立させた改正国家公務員法の「実績」を目に見える形でアピールしたいのであろう。
 それにしても急ぎ足だ。しかも二つの懇談会の同時進行は分かりにくい。「天下りの根絶」を掲げる公務員制度改革だが、どの方向へ踏み出すのか、その道筋もはっきりしないからだ。
 取り組む順序があべこべではあるまいか。来年度スタートさせる官民人材交流センターは、省庁による天下りあっせんを三年以内に根絶する代わりに、内閣府で天下りをあっせんする。つまり形を変えて天下りを続ける機関になる。
 その一方で、公務員制度懇談会は天下りの根っこにあるキャリア官僚制度のあり方にもメスを入れようとしている。
 事務次官や局長コースからはずれたキャリア組への早期勧奨退職の慣行を廃止し、定年まで在職できる「専門スタッフ職」の導入や、定年制の延長、幹部の公募制などの議論を進める。
 キャリア官僚制度の抜本改革案を盛り込んだ「国家公務員制度改革基本法案」を来年の通常国会に提出するのであれば、税金と人をつぎ込んで創設する公務員だけの再就職あっせん機関など不要になろう。先行すべきは制度改革だ。
 順序の問題だけではない。その官民人材交流センターづくりも難しい。各省庁の人事情報やノウハウを持たなければ、あっせん機能は果たせそうにない。
 さりとて、出身省庁の協力に大きく依存するとなれば、予算と権限を背にした押しつけ的天下りを温存する「トンネル機関」になりかねない。前途多難だ。
 規制緩和や地方分権改革などで、公務員の働く組織や機能は変化を求められている。民間の労働慣行が大きく様変わりする中で、「公務の世界」の制度や意識も行動も変わらねばならない。
 談合など不祥事の温床でもある不透明な公務員システムを国民の信頼を得る仕組みにどう改めるかだ。
 制度改革は採用から退職までの全体の流れのなかで検討するのが筋である。能力・実績主義の導入やキャリア官僚をつくる試験区分の廃止など課題はいっぱいある。小手先の急ごしらえではなく、各種法人や特別会計など行財政改革も視野に、落ち着いた幅広い議論を求めたい。
 国家の運営や行政サービスまでを担う公務員制度改革は、国のかたちに直結する重要なテーマだ。参院選では年金問題や「政治とカネ」などに押されて影が薄い。各党のマニフェストや公約にも目をこらし、選択の一助にしたい。

[京都新聞 2007年07月25日掲載]

合格者水増し  教育をゆがめる行為だ

 大阪府や兵庫県内の一部私立高校で、成績優秀な生徒に学校側が受験料を負担して有名大学を多数受験させ、合格実績を水増し発表している実態が明らかになった。
 受験者の実数は伏せ、合格延べ人数だけを公表することで、多数の合格実績があるように装う手法だ。
 生徒一人に四私大の計七十三学部・学科を受験させ(すべて合格)、七十三人分の合格実績として公表していた大阪市内の高校もある。願書のほとんどは教師が代筆、受験料百四十三万円は学校が負担し生徒には謝金まで出していた。
 公表された実績を信じて子どもを私立高に入学させた保護者たちから、一斉に「学校に裏切られた」の声が起きたのは当然だろう。
 少子化の進行で私立高が生き残り競争に直面しているのはわかる。とはいえ、不公正な手段で生徒集めに走るのは、保護者や社会への背信であるばかりでなく「教育をゆがめる行為」と言わざるをえない。
 学校の要請で受験させられる生徒の心理的、肉体的負担も決して小さいとはいえまい。過去に、その役目を果たした卒業生らにまで今後、負い目を感じさせるとすれば、責任はより重大だ。
 水増しにかかわった私立高関係者は、真摯(しんし)に反省してほしい。実績づくりのためだけの「やらせ受験」は直ちに廃止すべきだ。
 大阪府は、府内の私立高全校を対象に実態調査に乗り出す方針を決めた。合格水増しは、かなり以前から生徒や保護者の一部では、うわさになっていたといわれる。
 私学の自主性は尊重しながらも不当、不正な行為には行政として素早く適切な指導を行うようのぞみたい。
 私立高の合格水増しのほとんどは、大学入試センター試験の成績だけで合否が決まるセンター試験利用入試が使われていた。
 一学科二万円弱の受験料で出願さえすれば結果が出るので、高校側には好都合だった。大学側も全く無関係とはいえまい。一人で数十件も出願するような不自然なケースには、今後チェックを入れることも検討されてよかろう。
 合格水増しの再発を防ぐ一つとして、合格実績の公表様式を厳格に統一する方法が考えられる。
 進学者の多い公立高などで取り入れているように、現役、浪人に分けたうえで合格内容をセンター試験利用や推薦、一般入試など全種別に分け明記してはどうか。合格者数は、実際に進学した数も併記するとわかりやすい。
 姑息(こそく)な実態が広く知られた以上、合格水増しのあった高校は率先して名乗り出るべきだ。あしき慣行を自ら改める姿勢を見せないなら、生き残りが難しくなるだけだろう。

[京都新聞 2007年07月25日掲載]

【京都新聞・凡語】

耐震補強工事

 わが家を耐震補強しなくてはと思い続けて十年余り。このほどようやく改修工事を 行った。万全ではないが、少しほっとしている▼なかなか踏み切れなかった理由は、改修工事の費用と信頼性の問題だ。住宅リフォーム詐欺事件もあったから、 確かな業者でなければ困るし「費用対効果」の問題もある▼ありがたいことに居住地の守山市が無料耐震診断を行っている。申し込んで簡易診断してもらった。 壁の量や基礎の形状、家の劣化度などを計算した結果、わが家は評点0・62という。震度6クラス程度の大地震がおきると「倒壊する可能性が高い」とのこと ▼市は「一応倒壊しない」1・0を上回る耐震補強の例も示してくれた。室内の壁をめくり、中のベニヤ板を分厚い耐力壁(コンパネ)に替えるプランだ。近所 の建築士事務所に依頼し、計七カ所の壁を補強した。屋根を軽い素材に替えるなど、他の補強方法もあるそうだ▼内壁の補修は一カ所十万円程度だが、めくらな いと確かな工事費は出ないという。結果は見積もりの範囲内で済んだ。住宅用火災警報器も三つ付けた。ついでに数カ所リフォームもして費用は百五十万円弱▼ 市のリフォーム助成も申し込んだ。一部、工事を省いたため評点1には達しない。まだ「倒壊の可能性がある」レベルだが、前よりは強くなった。安心感もその 分だけ、増している。

[京都新聞 2007年07月25日掲載]


【朝日・社説】2007年07月25日(水曜日)付

「憲法問題」―白紙委任しないために

 今年初め、憲法改正を参院選の争点に掲げたのは安倍首相だった。ところが、選挙戦に入ってからの首相の街頭演説を聞くと「国民投票法が成立した。新しい憲法を書こうじゃありませんか」などと、極めておざなりだ。

 自民党のマニフェストは、3年後に改憲案を国会で発議することを目指すとし、そのための国民運動を展開するとあるだけだ。憲法9条を改正し、自衛軍を持つのが自民党の改憲草案の根幹だが、そんな中身は一切触れられていない。

 首相の意気込みはいったいどこへ消えたのだろうか。憲法改正は、首相が掲げてきた「戦後レジームからの脱却」の中核の主張だったはずだ。

 代わりに、社会保険庁の改組や国家公務員の天下り規制が「戦後レジームからの脱却」と位置づけられているのは驚くばかりだ。年金問題などで応戦に追われる事情はあるにせよ、当惑する有権者は多いだろう。

 民主党はこの選挙で憲法にはあまり触れない戦術だが、共産、社民などは護憲を前面に立てて、支持を訴えている。奇妙なことに、仕掛けた側の自民党が論争を避け、後ずさりしている印象なのだ。

 だが、論争が低調だからと言って、今度の選挙の結果が憲法問題の行方に大きく影響することは変わりない。

 参院議員の任期は6年だ。自民党の言う通り3年後の改憲発議があるとすれば、今度選ばれる議員はその賛否にかかわることになる。自民党の候補者は、改憲の中身や態度を語る責任がある。白紙委任するわけにはいかない。

 もう一つ、憲法9条の根幹にかかわる集団的自衛権の解釈の問題が、首相の私的な有識者懇談会で議論されているのを忘れてはならない。

 同盟国への攻撃を自国への攻撃と見なして阻止する集団的自衛権は、憲法9条で認める必要最小限の自衛の範囲を超える。だから行使できない。それがこれまでの政府の憲法解釈だ。

 そこを米軍と自衛隊がより緊密に協力できるように、解釈を改めたいというのが、首相の意を受けた懇談会の方向だ。政府がその線で踏み出せば、憲法9条の歯止めが失われることに等しい。

 それほど重要な争点なのに、自民党マニフェストは「集団的自衛権の問題を含め、憲法との関係を整理し、安全保障の法的基盤の再構築を行う」とするだけで、結論をぼやかしている。

 首相も「懇談会で議論を深めている最中だから」と最終的な方向づけは避けているが、それでも解釈変更の必要性は唱えている。

 自民党が勝てば、首相は懇談会の報告に沿って、集団的自衛権の行使容認に踏み込むに違いない。改憲への動きにも拍車がかかるだろう。逆に自民敗北ならば、ブレーキをかけざるを得まい。

 現在の論戦では目立たないが、こうした論点を見落としてはならない。

「中国製食品」―安全管理こそ生きる道

 「段ボール入り肉まん」はテレビ局のやらせ報道だったという。それを聞いて二重に驚いたが、半ば信じさせるほど、中国産の信頼性が揺らいでいる。

 中国産品への不安が世界に広がっている。様々なものから規制値を超える農薬や化学物質が見つかったからだ。

 このため、日本政府は民間と合同で、輸入品の安全に関する緊急会議を開いた。政府側は情報を集める体制を強化することや、輸出国の協力も得て安全管理体制を調査するといった方針を示した。強力に推し進めてほしい。

 安全性の問題が同時多発しているのは、中国製品がいま世界中にあふれているからでもある。

  米国では、中国製原料を使うペットフードを食べた犬や猫が多数死んだことが波紋を呼んだ。さらに、水産物や練り歯磨き、玩具など多様な品目が問題化した。 中国製の原材料を含まないことを売り物にした商品が登場するほど、高い関心を集めている。欧州連合(EU)も中国政府に厳しい安全管理を要求した。

 日本では、02年に中国産の冷凍ホウレンソウから残留農薬が検出されたことなどから、もともと中国産野菜への消費者の警戒感が強い。昨年からは、すべての食品を対象に残留農薬を漏れなく規制する「ポジティブリスト制度」を導入している。

 とはいえ、毒性物質が入った練り歯磨きが、日本でも出回っていた。

 生産地で輸出国の中国には、抜本的な対策を求めたい。

  食品の安全問題は、もともと中国国内において重大事だった。03年、遼寧省で豆乳を飲んだ2000人以上の小学生が中毒を起こし、死者も出た。昨年も、卵 黄が赤くなるように、発がん物質である工業染料を飼料にまぜて食べさせたアヒルの卵が北京で大量に出回るなど、食品安全に関する事件が相次いでいる。

 中国政府も事態の改善に努めてはきたが、環境汚染や偽物商品と同じように、地方に対するコントロールがきかないことや安全意識の不徹底など、様々な要因が絡みあっているのだろう。

 国際社会から批判を受けるに至って、中国政府は違反企業のリストを公表するなど対策の強化に動きだした。

 問題は、どこまで徹底できるかだ。中途半端に終わると、いっそう信頼性を失うことになる。輸出がとまり、問題企業だけでなく、同業同種の人々の職を奪うことにもつながりかねない。

 中国製を扱う日本の商社やスーパー、外食産業は、安全性のチェックに責任をもたなければいけない。輸入側から厳しくチェックされることは、中国が安全管理の体制を整備していくにあたって手助けともなるだろう。

 日本も威張れたものではない。期限切れの材料を使った食品や、偽の表示の食品が出回って、食品への信頼が揺らいでいる。他山の石としたい。

【朝日・天声人語】2007年07月25日(水曜日)付

 ご家庭のアルバムで、お父さんの影は薄いかもしれない。撮った人は写らないのが写真だ。でも、シャッターに乗せた思いが画面に残ることはある。写真集『カンボジアの子どもたち』(連合出版)にそう教えられた。

 戦乱と暴政を見つめてきた自然や遺跡を背に、黄金の笑みがはじける。体より大きいバナナの葉束を運ぶ娘、水牛の背の少年。99年から20回以上訪れた写真家、遠藤俊介さんへの信頼が、かぐわしい靄(もや)のように作品を覆う。

 かつて戦場を記録した沢田教一や一ノ瀬泰造は、この地に散った。平和を撮る者に約束されていた豊潤な時は、しかし白血病に断ち切られる。今月半ば、写真集が枕元に届いた3日後、29歳の遠藤さんは一ノ瀬らのもとに旅立った。

 婚約者の高瀬友香さんにお会いした。昨夏、カンボジアの勉強会で意気投合し、直後に病気が分かったそうだ。かの国で式を挙げる夢を支えにして、初の写真集に使うコマは病室で一緒に選んだ。

 「整理が苦手な人で、まだ膨大な画像データがあります。私たちの子と思い、個展などの形に育てたい」。後書きに「貧しいけれど笑顔のカンボジアを撮り続けようと決めた」とある。平穏の尊さを伝える仕事が友香さんに残された。

 本人の写真は奥付に1枚。子供に囲まれ、飛行機のポーズでおどけている。そしてもう1枚。表紙でほほ笑む少女の、とび色の瞳に小さく写り込んだ人影は、キヤノンEOSを構える。異国の、いくつもの柔らかな記憶の奥底に、遠藤さんは永遠の像を結んでいるはずだ。


【毎日・社説】


社説:FX脱税 素人の通貨投機が示す危うさ

 外国為替証拠金取引(FX)で得た利益を申告せず、告発されるケースが相次 いでいる。東京都江戸川区の保険代理業の男性(84)はFXで2億円余の利益をあげ、約7000万円を脱税していた。今年4月に明らかになった世田谷区の 主婦(59)の場合は約4億円の利益を隠し、約1億3000万円を脱税していた。

 納税を怠っていたことから、FXの一端が明らかになったわけだが、このニュースに接した多くの人にとっての関心事は、脱税の摘発より、どのようにしてこんな巨額の利益を得ることができたのだろうかということだろう。

 高齢者や主婦といったプロとは思えない人たちが、プロの為替ディーラー顔負けの利益を稼いでいた。脱税での摘発は、逆にFXという金融取引に対する関心を高めることになっている。

 FXとは、米ドルやユーロなどの外貨を売買し、為替相場の変動を利用して利益を狙う取引だ。証拠金として預けるのは5万円程度からと手軽で、外貨預金などと比べて手数料も安く、インターネットを通じて24時間売買できる。

 最大の特徴は、取引できる外貨の額を証拠金の数百倍にも膨らませることができることで、利益が出たときは大きくもうけられる。しかし、損した時は、その額も巨額に膨らむ。

 為替取引の自由化という規制緩和の中でFXは登場した。直接規制する法律がなく、最低取引単位や証拠金の額も業者によってさまざまで、独立系の取引業者も多く、顧客との相対取引という形態もあって、トラブルが続出した。

 昨年から業者に対し登録が義務づけられ、電話や訪問による勧誘が禁止されるなどの措置がとられたが、外貨建て運用の投資信託が売れているのと同様に、FXの人気が衰える気配はない。

 日銀が2度の利上げを行ったとはいえ、日本の金利水準は超低水準であることに変わりない。今後についてもほとんど期待が持てないため、嫌気がさした個人の資金が、FXを通じて外貨に向かっている。

 ただ、為替相場の動きが予想と大きく外れた場合には、巨額の損失が生じる恐れがある。投資は自己責任が原則だが、FXはリスクが非常に高い取引であることを改めて指摘しておきたい。

 もうひとつは、FXが為替相場に大きな影響を与えるようになっていることだ。不測の事態を避けるためにも、取引の実態を検証し、市場に与える影響について十分に把握しておくことが必要だ。

  輸出企業は円安により高収益を得ている。景気にとっても追い風だ。しかし、低金利を嫌って個人の資金がどんどん外貨に向かい、円安が進行していることは、 日本にとっていいことずくめではない。円安は、日本を安売りしていることにもなる。何より、行き過ぎには必ず反動が伴う。

 大きなリスクを背負って高齢者や主婦が通貨投機に熱中する。そんな異様な光景が、いつまでも続いていいわけはない。

毎日新聞 2007年7月25日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:セミの声を聞いてもファーブルともなれば…

 セミの声を聞いてもファーブルともなれば日 本人の思いもつかぬことを考える。セミがさかんに鳴いているところで大砲を撃てば、どうなるのか? いや、考えたばかりでなくわざわざ役場の大砲を砲手と ともに借りてきて、実際に撃ったのだからすごい▲2度の発砲の結果、セミは何事もなかったかのように鳴き続けたと昆虫記は書いている。ファーブルは、セミ は耳が遠いから大声で鳴くのだと結論づけた。だが実はセミにも音は聞こえるが、聞き分けられる音の範囲が人と違うことが後に分かった▲さて日本人がミンミ ンゼミやアブラゼミなど夏ゼミの声を聞き始めれば梅雨明けだ。きのうは近畿地方の梅雨明けが伝えられ、関東地方でも真夏の陽気となった。皇居周辺でも大砲 ならぬ自動車の騒音をかいくぐってミンミンゼミの声が響き渡った▲もっとも東日本はすぐまたぐずついた天気に戻り、梅雨明けはしばらく先になるという。何 年もの地下生活を生き抜いてようやく地上に出たセミたちには気の毒な天気だが、本格的な夏の暑さが待ち遠しいのは夏休みに入った子供たちも同様だろう▲だ が先日発表された1カ月予報によると、ほぼ全国的に気温が「平年並みか低い」という今年の夏だ。先月の3カ月予報ではラニーニャ現象のせいで猛暑が予想さ れていたのだが、実際は太平洋高気圧の勢いが弱く、一転して冷夏の方が心配になった。ままならないのは空模様である▲セミの中でもニイニイゼミやヒグラシ は梅雨のうちから鳴き始めるが、あまりピンとこない。耳に入りながら周りの状況次第で気にならぬ音は人にもあるようだ。短い生を激しく鳴いて果てるセミの 音は炎暑の盛夏にこそ心にしみるが、今年は少しその勢いが気がかりだ。

毎日新聞 2007年7月25日 東京朝刊


【読売・社説】

公務員制度 抜本改革の論戦がかみ合わない(7月25日付・読売社説)

 国家公務員のあり方をどう考えるか。参院選で各政党、候補者が取り上げるべき重要な論点の一つである。

 だが、今もって掘り下げた論戦が聞こえてこない。

 安倍首相の下に設置された民間有識者による「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」が初会合を開いた。日本の公務員制度は戦後、先進国に追い付く過程では成果を上げたが、今日、内外の大きな変化に対し、機能不全に陥っている、という点が共通認識だったという。

 国際社会と日本の経済・社会の変化を見れば、通商、エネルギー、環境、安全保障、少子高齢化、社会保障制度など、多様な課題に対処する戦略を描き、必要な政策の推進に当たらねばならない。

 政治主導が基本としても、政策の立案や執行、国際交渉などに当たる国家公務員の役割と責任は、極めて大きい。国家公務員制度の立て直しは急務である。

 そうした観点からすれば、参院選で論じ合うべき主要な論点の一つは、公務員制度改革の全体像であるはずだ。

 ところが、参院選の論議は、与野党を問わず、天下り問題に集中している。

 安倍首相は、先の国会で成立した公務員制度改革関連法を“実績”としてアピールしている。能力・実績主義の導入とともに、「官民人材交流センター(新・人材バンク)」設置で、各省庁の「押しつけ的な天下りを根絶する」と言う。

 社会保険庁の体質の批判と重ね合わせて、年金記録漏れ問題に対する有権者の批判を和らげる狙いもあるのだろう。

 安倍首相は、天下りの根絶は、戦後の公務員制度の弊にメスを入れるもので、「戦後レジームからの脱却の一環」と主張している。

 だが、機能するのかどうかも不透明な新・人材バンク導入を先行させた結果、改革の全体像が見えない。このため、「戦後レジームからの脱却の一環」という言葉も説得力を失ってはいないか。

 民主党など野党の公約からは、自民党以上に、公務員制度改革の展望が見えない。天下り問題も、「天下りを温存するもの」などとする新・人材バンク構想に対する批判が主眼となっている。

 支持団体の労組などへの配慮もあるのだろうが、公務員制度改革をめぐる建設的な論戦があってよかった。

 採用試験のあり方、幹部公務員の育成方法、早期勧奨退職制度、定年延長など、多岐にわたる論点がある。

 政府は、次期通常国会に国家公務員制度改革基本法案(仮称)を提出するという。抜本的な公務員制度改革論議を避けて通ることはできない。
(2007年7月25日1時43分  読売新聞)

車の生産停止 「カンバン方式」の思わぬ弱点(7月25日付・読売社説)

 わずか1社の部品の供給停止で、国内自動車メーカー12社の生産ラインが一斉に止まった。自動車業界は思わぬ弱点をさらけ出した格好だ。

 16日の新潟県中越沖地震で、自動車部品大手、リケンの柏崎事業所が被災し、自動車エンジン用のピストンリングなどが生産できなくなった。

 ピストンリングは燃費効率を左右する重要部品だ。リケンが国内シェアの5割を占める。トヨタ自動車など12社が、リケンから調達している。

 このため、自動車各社も、部品の在庫が底をついた段階で、生産停止に追い込まれた。

 各社がリケンを総掛かりで支援した結果、リケンは23日に生産を再開した。これを受け、自動車各社も同日から、次々と生産を再開し始めた。

 阪神大震災時などでの被災企業への支援のノウハウが、リケン支援でも生かされたようだ。生産停止の長期化を避けられたのは何よりだ。

 しかし、今回の減産台数は、トヨタの5万5000台など、全社で約12万台に達した。計4万台の減産となった阪神大震災時を3倍も上回る。減産の遅れを取り戻すにも時間がかかる見通しだ。

 なぜ、これほど、生産停止が連鎖し、影響が広がったのか。業績好調な自動車業界に課題を突きつけたといえる。

 自動車各社は、部品の過剰在庫を持たない「カンバン方式」の生産体制を取っている。トヨタが最初に始めたもので、徹底的にムダを省いて効率化を図る。そうした「ジャスト・イン・タイム生産」は、競争力の源泉である。

 だが、在庫を十分に持たないため、今回のように、重要な部品の供給が止まると、生産を維持できなくなる。

 トヨタがリケンと高精度なピストンリングを共同開発するなど、各社とリケンは技術的に深く結ばれている。日本企業の強みだが、ピストンリングの調達先をリケンに依存することにもなった。

 コスト削減による競争力維持と、部品の安定供給をどうバランスさせるか。調達先を分散したり、生産拠点を特定地域に集中させないなど、可能な限り、リスクに備える危機管理が求められる。

 今回のトラブルは産業界全体への警鐘でもある。電機業界も、重要部品を特定企業に依存するケースが少なくない。国内に限らず、海外進出先の工場が被災するかもしれない。

 リケンショックを教訓とし、あらゆる企業が、緊急時に備えた生産体制を総点検する必要がある。それは競争力の一層の強化につながるはずだ。
(2007年7月25日1時43分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月25日付 編集手帳

 紀貫之の筆になる古今和歌集の序文(仮名序)に、 よく知られたくだりがある。「ちからをもいれずして、あめつちをうごかし、めに見えぬおに神をもあはれとおもはせ…」るのが歌であると◆世に名歌の誉れ高 い歌は数あれども、天地を動かし、鬼神の涙を誘う歌となれば、そうたくさんはなかろう。仮名序の一節を目にするたびに思い出す窪田空穂(うつぼ)の一首が ある◆「親といへば我ひとりなり茂二郎 生きをるわれを悲しませ居よ」。シベリアに抑留され、飢えと病気で死亡した二男に呼びかけた歌である。悲しむ以外 に、親としてお前に愛情を注ぐすべはない。いつまでも悲しませてくれ、と◆空穂は1877年(明治10年)、長野県に生まれた。国文学の教授として早稲田 大学の教壇に立ち、1967年(昭和42年)に89歳で亡くなる。今年は生誕130年、没後40年の節目にあたり、生地では記念の催しも開かれている◆関 東大震災の後、空穂は瓦礫(がれき)の荒れ野となった東京の街をさまよい歩いた。「梁(はり)の下になれる娘の火中(ほなか)より助け呼ぶこゑを後(の ち)も聞く親」。これも鬼神が涙する歌に違いない◆地震や火事に限るまい。病気であれ、交通事故であれ、子に先立たれた親の耳から、助けを求める声が消え ることはないだろう。悲しむ人の傍らに、いつもそっと立っている歌人である。
(2007年7月25日1時42分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】テーオーシー防衛 安易な自社買収にも問題

 日本初の敵対的買収なるか、と注目された株式公開買い付け(TOB)は不成立に終わった。仕掛けたのは不動産ファンド運営のダヴィンチ・アドバイザーズ、防衛に成功したのは、ホテルニューオータニ系不動産会社のテーオーシーである。

 近年国内で増えている敵対的買収ではあるが、それらと今回のケースを単純に同一視することはできない。特に攻防の引き金になったのが、テーオーシー経営陣による自社買収(MBO)だった点に着目すべきだ。

 テーオーシーは今年4月、同社の非上場化を決め、MBOに乗り出した。ダヴィンチ側が同社株の1割強を保有していることが分かり、買収リスクが高まったとみたからだ。

 この判断に問題はない。ただ、株主に示した買い付け価格1株800円に対し、ダヴィンチが不当に安いと異を唱え、1株1100円でのTOBを提案した。この結果、5月時点でMBOは失敗に終わったものの、ダヴィンチの獲得株式も4割弱にとどまった。

 ダヴィンチの攻勢をしのいだテーオーシーだが、MBOへの応募がわずか7%だったという事実は重い。

 国内企業のM&A(企業の合併・買収)への関心が急速に高まる中、MBOは脚光を浴びている。非上場化すれば、買収リスクから解放される。短期的利益を最優先させがちな「モノを言う株主」に振り回されることもなく、長期的な視点に立った経営戦略の構築も可能になる。

 しかし、非上場化は既存株主の大きな不利益になるだけに、決断した企業には、より重い株主への説明責任が課せられる。買い付け価格の設定はその核になる問題だろう。「MBO応募7%」という数字は、同社の説明不足に対する株主の強烈な不満の表明にほかならない。

 MBOをめぐっては、個人株主が設定価格が安すぎるとして東京地裁に適正価格の決定を申し立てている例もある。経済産業省などもMBOによって既存株主が著しく不利益を被らないよう、価格設定のガイドライン策定を進めている。

 上場企業が自身の判断で非上場化する場合、株主の不利益に鈍感であることは許されないのである。

(2007/07/25 05:02)

【主張】天下り聴聞拒否 官僚はそこまで偉いのか

 国家公務員の天下り根絶策を検討する政府の有識者懇談会が行った公開ヒアリングに、出席を求められた中央官庁の事務次官OB7人全員が欠席していた。官僚の傲慢(ごうまん)ぶりも、ここに極まったというほかない。

 しかも、事務を取り仕切る行政改革推進本部事務局と次官OBの各出身省が、いわば合意の上で、本人に連絡すらしていなかったという。開いた口がふさがらないとはこのことである。

 「意図的か、意図せざるかは別として、結果としてサボタージュを行ったといわれてもやむを得ない」

 安倍内閣で公務員改革の前線指揮を執る渡辺喜美行革担当相は、そう怒りをあらわにしたが、欠席戦術に自身の専属スタッフまでが関与していた事態は深刻だ。こうした官僚の組織ぐるみの抵抗には、厳正な処分も含め、毅然(きぜん)たる態度で臨む必要があろう。

  政府は先の通常国会で天下り防止を柱とする公務員制度改革関連法を成立させた。国家公務員の再就職については、内閣府に設置する「官民人材交流センター」 (新人材バンク)に一元化することが最大の目玉だ。有識者懇談会は、その詳細な制度設計をまとめる重要な役割を担っている。

 今回のOBに対する公開ヒアリングも、各省庁の天下り斡旋(あっせん)の実態把握を目的に設定された。官製談合や年金記録紛失など最近の不祥事に関連して、まず財務、厚生労働、国土交通、農林水産の4省が対象となり、今後順次、全省庁に広げる予定という。

 新人材バンクには当初から官僚側の強い反発があり、今回の組織的抵抗もいわば予想されたことではあった。

 ある財務省幹部は「先輩に対し、公開ヒアリングという官邸のパフォーマンスに出てこい、といえるわけがない」と言い放ったという。公務員としての立場を忘れた許し難い暴言といわざるを得ない。

 有識者懇談会は各省庁を通さず、座長名で直接、次官OBらに出席を求め、きょうにもヒアリングを再開する考えという。当然のことであり、官僚の専横を放置してはなるまい。

 同時に、懇談会の議論を実りあるものとするには、官邸の強力な後押しが不可欠だ。安倍晋三首相の強いリーダーシップが求められている。

(2007/07/25 05:01)

【産経抄】

 大臣が絆創膏(ばんそうこう)をはがしただけでニュースになるのだから、この国は本当に平和だ。毛包炎(もうほうえん)という軽い皮膚病にかかった赤城徳彦農水相には気の毒だが、つまらないことを隠そうとするから騒ぎが余計に大きくなった。

 ▼事務所費問題だってそう。「適切に処理している」だのと煮え切らぬ説明を繰り返しているから不信感が募ってくる。事務所費名目で多額の不動産を買った民主党の小沢一郎代表を見習って手持ちの領収書を全部見せればいいだけの話だ。

 ▼ 麻生太郎外相らの“失言”ラッシュも安倍晋三首相の足を引っ張っている。内閣のドタバタぶりに、霞が関の官僚たちは「安倍政権は長く持つまい」とサボター ジュを始めたようにみえる。政府の有識者懇談会が、国家公務員の天下り問題に関して各省事務次官OBからヒアリングをしようとしたところ、誰も出席しな かった。

 ▼原因は事務局の「連絡ミス」だったようだが、優秀なお役人のみなさんがそのような凡ミスをするとはにわかに信じがたい。財務省など有力官庁は、改革の目玉である「出身省庁による再就職斡旋(あっせん)の禁止」が、どうもお気にめさないようだ。

 ▼ 近代官僚制の礎を築き、志半ばで凶刃に倒れた大久保利通はこう部下を叱咤(しった)したという。「各部の担任者は決して私一個に使われるとか、薩長に使わ れるとか思わずに、国家の役人である、国家の仕事をするというつもりで自ら任じてやってくれ」(『大久保利通』講談社学術文庫)。

 ▼自分や仲間の天下り先を気にするような官僚が「国家の役人である」と胸を張っていえるだろうか。ボスの方にも「責任はおれが引き受けてやる」との大久保の気概が欠けてはいないか。万事ちまちました政治では、国柄も小さくなる。

(2007/07/25 05:00)


【日経・社説】

社説1 コメ輸出再開てこに「攻める農業」を(7/25)

 中国へのコメの輸出が4年ぶりに始まった。政府が掲げる「攻める農業」の重要な一歩となる。

 コメは2003年から中国側の検疫上の理由で輸出が止まっていた。安倍晋三政権になり、今年1月に松岡利勝農相(当時)が訪中して輸出再開で基本合意し、4月の温家宝首相の来日時に正式決定した。害虫駆除を徹底することが条件だ。

 第1便は新潟産コシヒカリと宮城産ひとめぼれの計24トンだ。中国での販売価格は1キログラム1500円程度と現地で一般的なコメの20倍以上も高い。経済成長で中国では富裕層が急増しているとはいえ、価格からみて需要は当面限られるだろう。

 しかし、中国のコメ消費量は年間約2億トンといわれ、日本の国内需要(約840万トン)と比べてけた違いに多い。人口減少で今後も国内市場の拡大は望みづらいだけに、生産調整が続く日本の農家からみれば中国は極めて魅力的な市場だ。

 日本食ブームを背景に06年の農林水産物(加工品を含む)の輸出額は約3700億円と前年に比べて13%伸びた。政府は13年に輸出額を1兆円に増やす目標を掲げている。ハードルは高いが、高品質で安全な日本の農産物を官民が一体となって海外に売り込む意義は大きい。

  すでに輸出が急増している産品も少なくない。緑茶の輸出額は米国での日本食ブームで1年間で4割、ナガイモも台湾で薬膳料理の食材として注目され、同じく 4割増えた。水産物ではサバが3.4倍だ。中国などの新興経済国の急成長で国際的な食料需給は今後逼迫(ひっぱく)することが予想される。日本の農産物が 復権する可能性は十分にある。

 コメの輸出は農業関係者の意識改革を促す意味もあろう。海外市場で競争にさらされることで、生産性の向上や市場に合った商品開発を進める動機付けになる。コストを下げるためには大規模農家に耕地を集約し、経営効率を高めるしかない。

 政府の保護政策に安住してきたため、農業関係者は消費者ニーズに合う品目を低価格で供給するという原点を見失ってきた面はないか。日本の食料自給率はカロリーベースで40%と先進国で最も低い。食品産業の業務用需要に農家や団体が的確に対応できていないことが一因だ。

 4月にコメ輸出再開を決定した際に、中国は見返りに生鮮野菜などの輸入解禁を日本に求めてきた。安全性を確認できれば、農産物の輸入自由化は不可欠であろう。

 日本の市場開放は「攻める農業」を推し進めるうえでも必要だ。

社説2 外貨準備運用は入念さ必要(7/25)

 外貨準備の運用改善について、政府内で議論が起きている。運用先を多様化し、利回りを高めていくべきだという意見である。円換算で約110兆円にのぼる資産の運用についてまじめに論じるのは望ましいが、実現には詰めるべき点が多い。

 外貨準備は円売り・ドル買い介入などで政府が取得した外貨建て資産で、6月末の残高は9135億ドル強と中国に次ぎ世界2位の規模である。主に米国債で運用している。

 今月初めシンガポールを訪れた山本有二金融担当相は、同国の政府系投資会社であるGICやテマセク・ホールディングスを視察し、運用の弾力化を検討してはどうかと問題提起している。塩崎恭久官房長官や経済財政諮問会議の伊藤隆敏東大教授もこうした議論に前向きである。

 外貨準備も国の資産であるから、運用のあり方を議論するのは当然である。忘れてならないのは、外貨準備はただで手に入った資産ではない点だ。政府短期証券(FB)を発行し資金を調達しているのである。

  現状では米国の金利が日本を上回るので運用益が上がる。しかし、こうした環境がいつまでも続く保証はない。その意味で、外貨準備として保有する資産をある 程度広げておくメリットはある。ただ生兵法はケガの元。運用に失敗し資産に穴をあけては元も子もない。民間から運用のプロを登用するにせよ、しっかりした 体制を作る必要がある。

 もうひとつの留意点は、外貨準備が積み上がった経緯である。デフレが深刻だった2003年から04年にかけて、 日本は円高防止を狙って35兆円強にのぼる大量の円売り・ドル買い介入を実施した。米国はそれまで介入に批判的だったが、ブッシュ政権はデフレ克服の非常 手段としてこの巨額介入を容認した。

 いま米財務省が気をもむのは、途上国を中心とした外貨準備のドル離れ加速である。そうしたなかで、 日本が積み上げたドル資産をいきなり他の通貨に移すと言ったら、米国は金融市場への影響を考え当惑するだろう。10年前、当時の橋本龍太郎首相が「米国債 の売却」に言及し、波紋を広げたこともある。米国から不用意な誤解を招かないためには事前の入念な説明は欠かせない。

【日経・春秋】(7/25)

 日本が3連覇をかけたアジアカップサッカーが佳境に入った。蒸し暑いハノイで勝ち進む日本代表の消耗も激しいものがある。初戦のカタール戦で引き分けるとオシム監督(66)は通訳が半分も訳せないほどの叱責(しっせき)の嵐を見舞ったという。

▼ 「おれは死ぬ気でここで戦っているのにお前らはそこまで来ていない」。消沈のロッカールームで中村俊輔選手が一部を伝えている。背は丸く老人風も190 センチの大男のその迫力はいかほどか。豪州戦ではPK戦になると閉じこもった。「妙な発作を起こしたくなかった。私は故郷のサラエボで死ぬと決めている」

▼ 映画・望郷の名優ジャン・ギャバンの味わいがある。紛争国ユーゴスラビアで生き抜いたその人生哲学は陰影に富む。近著「日本人よ!」(新潮社)で「今の日 本人が勤勉であるかどうかは疑問だ。それは勤勉だった先代が作ってきた生活水準を今の人々が享受しているだけではないか」とオシム語録は冴(さ)える。

▼1 年前「私は日本のサッカーを日本化するつもりだ」と宣言している。国際化という模倣はどこまでいっても模倣にすぎないと言い、自分たちの特質が何かを早く 見極める必要性を説く。「私の国では、どうやって解決すればいいかというアイデアやイマジネーションを常に持っていなければ生きていけないのだ」


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2007年7月24日 (火)

7月24日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月24日朝刊)

[参院選の争点]不安解消の政策論争を

 過半数獲得を目指して与野党が激しくぶつかり合う参院選は、二十九日の投票まで一週間を切った。有権者の関心はかなり高い。

 共同通信社の全国電話世論調査によると、今回の選挙に「関心がある」と答えた人は81・9%で、参院選としては過去最高を記録。沖縄タイムス社と朝日新聞社が県内の有権者を対象にした調査でも89%の人が「関心がある」と答えている。

 この数字の背後から聞こえてくるのは、政治の現状に対する有権者の強い怒りと、、将来の生活不安を訴える悲鳴にも似た声である。

 投票する判断材料として年金問題を「重視する」と答えた人が県内では90%に達した。かつてないほど高まっている怒りや不安にどう答えるかが選挙終盤の大きな論点になりつつある。

 安倍晋三首相は就任以来、ことあるごとに「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴え、国民投票法の制定、教育基本法の改正、集団的自衛権に関する政府解釈の見直し作業などに力を注いできた。年頭の記者会見では、憲法改正を参院選の争点にしたい、と明確に語っている。

 だが、首相の思惑は年金問題の急浮上、「政治とカネ」をめぐる疑惑、閣僚の相次ぐ不適切発言などで吹っ飛んでしまった。

 安倍政権は改憲の争点化に失敗し、民主党が争点化した「国民の生活が第一」という土俵で戦わざるを得なくなったのである。

 景気回復というけれども、地方の中小企業や零細企業にはその実感がない。企業は儲けたというけれども、低賃金を強いられる非正規雇用の人たちにその恩恵は届かない。

 地方分権というけれども、地方交付税が減らされただけで、それに見合った税源移譲も権限委譲も進まず、自治体はどこも火の車。医療の現場では患者が高負担に悩んでいる。

 新自由主義的な経済政策の中でさまざまなひずみがこの社会に生じている。暮らしの現場が疲弊し、制度への信頼が失われ、将来への不安が高まっている。

 東京のような「勝ち組地域」からは見えにくいが、沖縄のような場所からはこのような社会のゆがみが実感として感じられる。

 これらの暮らしの問題にどのような政策で対処していくのか。それが「生活の争点化」ということではないか。

 政策の光と影をぶつけ合うような論争ではなく、まん延する影の部分をどうするかの政策論争が深まることを期待したい。

[米ツアー準優勝]栄冠はもうすぐそこだ

 宮里藍選手が米女子ゴルフツアーのHSBC女子世界マッチプレー選手権で準優勝を遂げた。

 米ツアーに本格参戦して二年。今度こそ頂点を極めてほしかったが、相手が昨季のツアー最優秀新人に輝いた新鋭とあっては簡単にはいかない。序盤のつまずきを立て直す間もなくリードを奪われ、終盤の追撃及ばず、一ホールを残して逃げ切られてしまった。

 昨年は一回戦負け。今回は並み居る強豪が敗退する波乱の中、好調なパットと、逆境に真価を発揮する強い精神力で勝ち進んだ。

 一ホールごとに勝負がつくマッチプレーは宮里選手に適しているといっても過言ではあるまい。相手との駆け引き、ミスをしても気持ちを切り替えて次につなげる心技体の均衡の取れたプレースタイルは見事だった。栄冠を得るのももうすぐだ。

  決勝で見せた、先行されてもあきらめないひたむきな姿勢は、沖縄だけでなく全国のジュニアにも好印象を与えただろう。インタビューを受けるときに流した涙 は次戦への決意の表れ。負けて悔し涙を流した経験のある子どもたちには、競技の枠を超え、好意を持って受け入れられたはずだ。

 ゴルフを知らない中・高年女性のファンが多いのもうなずける。試合のときに見せる厳しさと、勝負から解放されたときに見せる表情の落差が、彼女たちの感性を刺激するのだろう。

 ジュニア大会の先駆け、沖縄ジュニア選手権が予選会をしなければならないほど活況を呈している県内ジュニアのゴルフ熱。第二、第三の宮里選手を目指している子どももいる。

 強さが際立つ宮里選手だが、土台には幼いころから植え付けられたマナーの良さや礼儀正しさがあることを忘れてはなるまい。

 逆境に追い込まれたとき、重圧に押しつぶされそうになったとき真価を発揮するのはこれら人間としての素養の深さだ。宮里選手を模範とすべきは、これら精神的土台の強さだということを肝に銘じたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月24日 朝刊 1面)

 当選した議員たちが決める政策の影響を、より多く受ける世代なのに、投票率が上がらない。「若者」と「政治」の間にあるのは、深い溝。

 大学生が議員のもとで「政治」を体験する「議員インターンシップ」というおもしろいプログラムがある。学生たちは事務所での電話応対から街頭でのビラ配りなどに走り回っている。

 取り組むのは東京に本部を置くNPO法人「ドットジェイピー」。春夏二回の募集で、前回の参加者は五百九十六人。受け入れは各党にまたがり、一九九八年以降、五千三百九十人がインターン生となった。

 実際に体験することは強いインパクトを持つ。衆院議員のインターンとなった学生が「政治に対して少し近づいた」と活動報告しているのが印象に残る。「自ら動かなければ何も始まらない」ことを学んだとも。

 同法人の調査によると、インターン前と後で、政治に対するイメージは「良い」が20%から85%へ、「必ず選挙に行く」は41%から83%へと大きく変わっている。卒業生の中からこれまで二十七人の地方議員が誕生。今回の参院選にも一人が立候補している。

  キャラクターやCMを駆使して投票を呼び掛けても若者の反応はいまひとつ。溝をつくっているのは無関心やあきらめというより当事者意識だ。政治と「私」を つなぐ回路をどう見いだすか。投票率アップに秘策はないが、「政治って案外身近なもの」という実体験は、じわじわ効きそう。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

県事務権限移譲 住民本位の自治の確立を

 事務処理の特例条例に基づき、都道府県が市町村に権限を移譲している事務の数は、沖縄が全国で最も少ないことが地方行財政調査会(東京)の調べで分かった。
 地方分権が叫ばれて久しい。「地域のことは地域の責任で自ら担う」との理念だ。分権型社会の実現は、国民や県民から幅広く支持され期待も大きい。
 2004年の県民選好度調査では「県や市町村へもっと権限を移した方がいい」との回答が約9割に上っている。権限移譲に異論を差し挟む余地はない。
 今回の調査によれば、県から市町村へ委譲された事務数(今年4月1日現在)は、その事務を定めた法律の数で比較した場合、全国平均の47・5本に対し沖縄は8本にとどまっている。最も移譲が進んでいる静岡県の1割にも満たない。
 県民の期待に逆行して県内ではなぜ移譲が遅れているのか。県総務部の見立てでは、県内自治体は規模の小さな町村が多く「権限移譲には消極的なところが多い」との分析である。
 事務移譲に伴って当然、市町村は事務量が増える。しかし、自治体では負担増や専門性に見合うスタッフの配置など、新たな事務に対応できる態勢にない。財政的にも対応が難しい。受け入れたくても、現状ではとてもそこまで手が回らない。
 市町村を尻込みさせている大きな理由は、ありていに言えば、そういうことなのだろう。市町村合併が進んでいない県内事情も背景にある。
 だが、行政サービスを受ける住民の側に視点を移せば、今のままでいいはずはない。移譲事務には各種申請や届け出の受理など、住民の利便性に直結するものが少なくないからだ。
 例えばパスポートの申請は、旅券法に関する事務移譲に伴い市町村レベルで発給できるところが全国的に増えているが、県内ではまだ不可能だ。
  県は3月に権限移譲推進指針を策定した。関連した事務権限をひとまとめにして市町村に移譲する包括移譲である。具体的には「地域づくり」「安全・安心」な ど5つの分野で22のパッケージから選択できる方式を提示。市町村との協議や条例改正を経て来年度から移譲を増やす方針だが、もっと取り組みを加速すべき だ。
 指針には、事務処理に必要な経費を交付する財政支援や職員の研修制度など人的支援策が盛り込まれている。きめ細かな支援策で市町村を「その気にさせる」のは県の仕事だ。
 市町村も分権の趣旨を実現するため、受け皿を早急に整備して住民本位の自治を確立してほしい。

(7/24 10:20)

警察白書 暴力団の資金源を断とう

 警察庁が公表した2007年版警察白書の特徴は「暴力団の資金獲得活動との対決」の特集を組んだことだ。全国に衝撃を与えた長崎市長射殺事件や愛知県での銃乱射事件など暴力団員、元構成員などによる凶悪事件が後を絶たない。
 銃器事件だけではない。暴力的な威圧を背景にした企業や自治体への不当要求も相次ぐ。企業活動を仮装・悪用したり、証券取引の分野にも進出するなど資金獲得は多様化かつ巧妙化している。
 白書は、こうした社会情勢を色濃く反映した記述が目立つ。
 暴力団の資金獲得活動は日本経済の健全性を損ない、いずれは国全体の利益を危うくするとの危機意識を示した。「社会全体で対策を進める必要がある」と強調したのは当然だ。
 暴力団の取り締まりをめぐっては、1992年に暴力団対策法が施行され、暴力的要求行為に対して警察は中止命令が出せるようになった。以前のように飲食店などに対し「縄張り料」や「みかじめ料」といった露骨な不当要求は大幅に減少している。
 今年3月には犯罪収益移転防止法が成立し、疑わしい取引については金融業者や不動産業者らに届け出を義務付けた。
 しかし、それでも暴力団の勢力は衰えていない。その数は8万人台とされる。裏を返せば、組織を賄えるだけの資金力を維持していることになる。
  気になるのは、暴力団と建設業との関係だ。バブル経済期のころ暴力団は元構成員らを使い、建設業や不動産業と盛んにかかわったが、白書は今でも暴力団と一 定の関係を意図的に持つ建設業者がいると指摘した。建設業3千社を対象に実施したアンケートでも、3割強が「暴力団と関係を有する業者がいると聞いたこと がある」と回答している。
 言うまでもなく、暴力団の根絶には警察の捜査力、摘発力の向上が不可欠だ。もう一つのポイントは、企業や自治体、地域が連携して暴力団の資金源を断つ有効な仕組みを作り上げられるかにかかっている。

(7/24 10:18)

【琉球新報・金口木舌】

 古代中国の気候は現在よりもはるかに温暖で、野生の象がいたという
▼中国文字文化史が専門の阿辻(あつじ)哲次(てつじ)さんの「漢字の字源」(講談社現代新書)によれば、韓非子(かんぴし)の時代には人々は生きた象を見ることができず、心の中で思い描く「象を想(おも)う」が、「想像」という言葉の由来という
▼中国最古の詩集「詩経」にはさまざまな動植物が登場するが、それらが実際にどういうものかを解説する専門書が早い時代から作られた。乱獲や乱開発が著しい近現代では、それこそ説明が必要な動植物は増加の一途だ
▼ヤンバルクイナ発見に貢献した元高校教諭、友利哲夫さん(74)が初の写真集「島の自然を見つめて」を発刊した。交尾するヤンバルクイナや餌に食らいつくイリオモテヤマネコ。40年余にわたって撮影した希少な動植物や、やんばるの原風景など268点を収録する
▼元来、学校教材用に撮り始めたが、写真集からは徹底した現場主義と古里の自然や文化への深い愛情が伝わる。22日に名護市内で開かれた出版祝賀会で県写真協会の金城幸彦会長は「沖縄のすべてが凝縮されている」と評した
▼このままでは沖縄の希少な動植物も想像に頼ることになるぞ。写真集からはそんな警告も聞こえてくる。

(7/24 9:38)


【東京新聞・社説】

政治とカネ 襟を正す気はないのか

2007年7月24日

 次から次へとよく出てくるものだ。赤城徳彦農相に新たな事務所費問題が浮上した。別の閣僚も不透明な支出を指摘された。にもかかわらず、説明も制度改革も中途半端だ。襟を正す気はないのか。

 赤城氏の関連政治団体「つくば政策研究会」が、すでに退去している事務所の経費を七年間にわたり、計約千二百万円計上していた。赤城氏は「問い合わせを受けて初めて団体の存在を知った。事務所を移転した後、会計責任者が届けを怠ってきた」と釈明した。

 赤城氏をめぐっては、後援会が茨城県内の実家を「主たる事務所」としながら、十年間に約九千万円の経常経費を計上していたことが分かっている。後援会の事務所費が疑われたら、自らが関連する政治団体すべてを調べるのが常識だろう。公人たる閣僚ならなおさらのことだ。

 民主党の菅直人代表代行は「領収書を添えて説明できないなら辞任すべきだ」と述べている。

 事務所費問題で、私たちは領収書をつけて内訳を明らかにすべきだと主張してきた。それ以外に国民の政治不信を解く方法はないと考えるからだ。

 先週には共産党が、塩崎恭久官房長官の地元後援会と自民党の選挙区支部の二〇〇五年の事務所費に、約千三百万円の使途不明金があると指摘した。志位和夫委員長は「疑惑といわれても仕方のない事態だ」と追及している。

 塩崎氏は「選挙目当てだ。厳重に抗議したい」と反論しながらも「政治資金規正法にのっとって適正に処理されている」と、領収書など明細の公表は拒んだ。これまで閣僚の事務所費問題が起こるたびに繰り返されてきた台詞(せりふ)と同じだ。

 参院選で劣勢を伝えられる自民党は、所属国会議員の政治資金の流れを資金管理団体に一本化する党内規定を設ける方針を打ち出した。

 先の国会で成立した改正政治資金規正法は、資金管理団体に限り、一件五万円以上の経常経費に領収書添付を義務付けたが、赤城氏の場合のような政治団体は対象外だ。野党から「ザル法だ」と批判され、安倍晋三首相が内規見直しを指示した。

 だが、なぜ内規なのか。違反者には刑事罰を科すことができるよう法の不備を改めるのが筋だろう。

 資金管理団体に事務所費だけを一本化する案も出ている。内規の具体化は参院選後だ。選挙が終われば、骨抜きにされる懸念も残る。

 この参院選では政党と政治家の姿勢に有権者の厳しい目が注がれている。そのことを忘れてはならない。

情報通信社会 外に弱いのが気がかり

2007年7月24日

 今年の情報通信白書は、国内で強く海外で弱い日本技術の内弁慶ぶりを指摘した。世界標準の流れを見誤ったり、設備投資に後れを取ったりしたことが響いた。国際競争力の回復が最優先の課題だ。

 通信ネットにつながった情報機器がすぐ身の回りにあるのが近未来のユビキタス社会とされている。

 今年の白書は「ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開」がテーマだ。

 情報通信産業は、自動車を抜いて全産業の一割を占めるまでに成長した。しかし、国内とは対照的に国際競争力の低下が目立つと白書は指摘している。

 日本のDVDプレーヤーは十年前、世界シェアの30%以上を占めていたのに、最近は半分以下。15%以上だったノートパソコンも約10%に減った。

 お家芸だった半導体も十年前は世界市場の約28%を占め米国に続く二位だったのに昨年は半減した。液晶パネルも八年前の52%から昨年は10%にまで急落している。

 携帯電話機は、国内こそ国産が圧倒しているが、世界シェアで見ると6%にすぎない。

 日本の情報機器全体で見ても国外での販売比率は約40%にとどまっている。内弁慶と指摘されてもしかたがない。

 携帯電話は日本が独自規格にこだわって、世界標準の流れに乗り遅れてしまった。

 半導体では、日本がバブル後の不況で国際的な設備投資競争に後れをとったのが災いした。

 情報産業全体でも設備投資の遅れが目立つ。米国は一九九〇年以降、六倍にもなるのに、日本は約二倍の伸びにとどまっている。

 大学の関連学部卒業生の少なさも気になる点だ。日本の約三万人に対して米国は八万人、インド十二万人、中国は十八万人と格段に多い。

 日本が国際競争力を回復するためには、設備や研究開発投資を増やすことがまず大切だ。

 幸いなことに、ここ数年の景気回復で企業には投資の余力が生まれている。

 海外の投資グループによる企業の合併・買収(M&A)に対抗するためにも、設備や研究開発で基礎体力を付けることが役立つに違いない。

 学生数の差は将来の競争力の差につながる。志望学生を増やすには魅力ある職場づくりが大切だ。

 企業には設備投資と並行して賃金など待遇引き上げを望みたい。目を広く世界に向け、可能なものから早急に対策を進めることが必要ではないか。

【東京新聞・筆洗】2007年7月24日

 藤木君のことが気になっている。今月から朝刊で連載 が始まった漫画『ちびまる子ちゃん』の登場人物の一人だ。「暗い二人組」のうちの一人という脇役なのだが、三回も主役級で登場している▼藤木君はテストで カンニングをし、パン屋ではつりが多くても黙っていて、掃除当番は友だちをだまして押しつけてしまう。まる子は「みんなが言うほど卑怯(ひきょう)じゃな いと思うんだ」とかばうが、藤木君自身、卑怯だと自覚して悩んでいる。オチでは「オレってレベル低いなあ…」とつぶやく▼漫画は昭和四十年代の日常をテー マにしており、小学三年生のまる子は作者のさくらももこさんがモデル。さくらさんには藤木君と同じような悩みを抱えていた時期がある。幼年期のエピソード を綴(つづ)った『おんぶにだっこ』(小学館)で告白している▼小学一年生のとき、同級生のランドセルに誤って傷をつけてしまった。自分がやったと正直に 言えず、やがて同級生の仕業となってしまう。「たくさんの苦悩が何カ月間も心に渦巻き続けた」という▼さくらさんには社会問題を連載で取り上げる考えはな いというが、藤木君が登場すると今の社会を意識せずにはいられない。同じ新聞に、だましたり、ごまかしたり、隠したり、見て見ぬふりをしたりと、大人の社 会で起きている卑怯な出来事がたくさん載っている▼でも自分は卑怯だと自覚して悩んでいるかといえば、そうでもないような人が多く見受けられる。自らを戒 めながら、藤木君に「大丈夫。レベル低くないよ」と声をかけたくなる。


【河北新報・社説】

07参院選を問う<政治とカネ>/透明性、公開性は大前提だ

 またカネの問題かと、うんざりする。政治は信頼を回復できるかどうか崖(がけ)っぷちに立っていると言えるのではないか。
 先の国会では、政治資金管理団体に限り、人件費を除く5万円以上の経常経費に領収書の添付を義務づける改正政治資金規正法が成立した。

 だが、その法にわずか1カ月もたたないうちに、見事なまでに抜け穴が露見し、かねての批判が実証されてしまった。
 茨城県内の実家を後援会事務所として県選管に届け出て、多額な経常経費を計上していた赤城徳彦農相の問題だ。

 要約すると、赤城氏は実家を「主たる事務所」として届け、1990―2005年の16年間で計1億2000万円の経常経費を計上した。
 その事務所について、赤城氏の父親らは、実体がないと述べ、騒ぎが大きくなってから撤回したが、疑いが晴れたと思っている人は少ないだろう。

 赤城氏本人は、事務所は実家のほかにも水戸などにあり、経費は3事務所分を合算しているとし、「付け替えや架空経費は一切ない」と弁明する。
 だが、事務所ごとの明細や領収書を示す考えはなく、「政治資金規正法にのっとって、処理し、収支報告書に記載している」と繰り返すばかりだ。

 領収書を公開すれば済むことだと思うのだが、赤城氏の姿勢は、「ナントカ還元水」を再三追及されながら、規正法を盾に、頑として応じなかった故松岡利勝前農相とそっくりだ。
 任命権者として安倍晋三首相が、国民に対する説明責任を果たすよう指示せず、赤城氏をかばい続けているのも不思議な現象だ。

 それより問題なのは、今度の改正規正法が、経常経費を5万円以下に小分けして領収書を不要にしたり、資金管理団体以外の政治団体に支出を付け替えたりできる「ザル法」との批判が渦巻いていたことだ。
 改正規正法がそのままだと、今回の赤城氏のようなケースは、資金管理団体以外の政治団体に当たるため、全く対象外になるわけだ。

 自民党内には、内規で政治資金を資金管理団体に一元化しようとする動きもあるが、これだけ、政治資金の不透明性が問題になっている以上、対象の政治団体を広げたり、経常経費として提出すべき領収書の額を下げるなど、さらに厳正な法改正が必要だ。

 それにしても、政治資金をめぐる不明朗な問題はいつまで続くのだろうか。民主党でも、角田義一参院副議長が献金の不正疑惑で辞任、小沢一郎代表は事務所の10億円を超える不動産所有について説明したが、庶民感覚からすれば、違和感をぬぐえない。

 政治資金の透明性、公開性の担保は、国民との信頼を築く大前提だ。政治の世界だけに、仲間内の独善的なルールが通用する非常識を早急に終わらせねばならない。
 参院選のさなか、与野党とも「政治とカネ」に対する姿勢を明確にする必要がある。
2007年07月24日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 さまざまな商品の消費額には住民の特色が浮かぶ。例えばこんなふうに。青森市の場合。ここは女性の化粧水、ファンデーション、口紅などの購入額が 全国最低。色白で美肌、素っぴん美人が多いはずだ、たぶん▼山形市。この街で全国一の購入額を誇るのが、サトイモ、こんにゃく、しょうゆ。これは理由は分 かりますね。芋煮会だ。なぜか外食のラーメンも一番。対して食パンとマーガリンは最下位

 ▼ 盛岡市にはちょっと変わった全国一がある。医療費だ。「開業医が多く医者にかかりやすい」というのが勤務経験のある同僚の分析。食品では中華麺(めん)の 購入額が1位。これは冷麺かな▼福島市の全国一は納豆と自慢のモモ。特産のモモは分かるが、納豆はなぜ? 産地の水戸が近いためか。福島出身者に聞くと 「大家族の家では洗面器で納豆をかき混ぜて食べるといううわさもあった」

 ▼秋田は清酒が1位。ここの出身者は飲んべえが多い。惜しみな く金を使う性向があるみたいだ。仙台はかまぼこが1位だが、ちくわは下から2番目。どういうわけかグレープフルーツの消費が1位▼以上のランキングは近刊 の『消費の県民性を探る』(同友館)から借用した。理由や背景までは分析していないのが、ちょっと残念だ。正しい答えをお持ちの方はぜひご教示を。

2007年07月24日火曜日


【京都新聞・社説】

政治とカネ  農相は、誠実に説明を

 赤城徳彦農相にかかわる新たな事務所費問題が、浮上した。だが、またしても国民に向けて丁寧な説明はない。現職閣僚として誠実に説明責任を果たすべきだ。
 問題が指摘されたのは、赤城農相の関連政治団体。都内にあった事務所が退去後も移転届を出さず、二〇〇三年まで七年間も政治資金収支報告書に事務所が実在するように記載し、計一千万円を超える経常経費を計上していた。
 昨年十二月、佐田玄一郎前行政改革担当相の政治団体が、事務所がないにもかかわらず十年余りで約七千八百万円の事務所費などを計上していたことが明らかになり、佐田氏は不適切処理を認めて辞任した。そのケースと似通っているともいえる。
 赤城事務所は「会計責任者が移転届を怠っていたため」としているが、資金の使途など不明点は多い。
 赤城農相に関してはすでに、地元の茨城県で両親が住む実家を主たる事務所として届け、長年にわたって経常経費を計上していた問題などが指摘されている。これについても、説明が尽くされたとはいいがたい。
 疑惑がないというのなら、領収書も示して説明すればすむ話であろう。「法に従って対応している」という釈明だけでは、閣僚として不誠実にすぎよう。
 佐田前行革相の問題をきっかけに、閣僚らの不明朗な事務所費問題が、相次いで明らかになった。与党だけでない。小沢一郎民主党代表は、資金管理団体の不動産所有を指摘されて事務所費を公開した。
 これらの動きを踏まえて、先の国会では政治資金規正法が改正された。だが、五万円以上の経常経費の領収書添付義務づけを資金管理団体に限り、政治団体は対象外になっている。五万円未満に小分けすれば、すり抜けることもできることは、先の国会論戦でも指摘された。
 一方、安倍晋三首相は参院選公示後に政治資金の流れを資金管理団体に集中することを、自民党の党内規定で義務づけるよう指示したことを明らかにした。
 「ザル法」と批判される改正法の欠陥を是正する動きとして一定評価できようが、なぜ先の国会で提案しなかったのか。規正法の再改正でなく、党の内規とする点についても、この問題に対する消極姿勢が感じられる。
 政治とカネの問題は、今回の参院選でも、年金問題と並ぶ主要争点の一つであるはずだ。だが、大きな関心を呼ぶ年金問題の陰に隠れるように、与野党の論戦が盛り上がりを欠いているのはどうしたことか。
 政治とカネの不明朗な結びつきを断ち切らぬ限り、政治不信は一掃できない。実効性のある政治資金規正法にするために、各党がもっと踏み込んだ真摯(しんし)な論議をたたかわせるべきだ。

[京都新聞 2007年07月24日掲載]

被災者生活再建  支援法を大胆に見直せ

 新潟県中越沖地震の発生から一週間余りたった。県内では約九千五百棟の家屋が損壊し、避難生活を強いられている被災者は三千人を超す。
 被災者にとって、これから最大の課題となるのが「わが家」の再建である。
 そのよりどころとなるのが国の「被災者生活再建支援法」だ。ところが、被災者や自治体から「使い勝手」が悪いと不満の声が根強い。
 内閣府の有識者検討会は今春から支援法の見直しを始めたが、血の通った支援制度にするためにも小手先ではなく抜本的な見直しを求めたい。
 支援法は阪神大震災を機に、当初は全壊住宅の世帯を対象に最高百万円の生活必需品購入費を支給する制度としてスタートした。三年前の法改正で、さらに住宅が全壊ないし大規模半壊の世帯に最高二百万円の住宅再建支援金が支払われるようになった。
 支援拡充は歓迎できる。だが世帯主の年齢や所得に制限があるうえ手続きが複雑なことから、全国知事会などから制度の見直しを求められている。
 最大の難点は、住宅再建支援金が家屋の解体や整地などに限定され、住宅本体の新築や補修に使えないことである。国が「住宅という個人財産の形成に公費は使えない」との姿勢を崩していないからだ。
 確かに家は個人財産ではある。だが住宅再建なくして被災地の復興はありえない。人としての生活の基盤が確保されずに、どうして地域コミュニティーの再生や安心な街づくりができようか。
 地震などの災害に見舞われるリスクはすべての国民にある。新潟のように、わずか三年もたたないうちに激震に襲われるケースも避けられない。
 「わが家」の建て直しの公共性を考慮するなら、住宅本体の再建や補修に公費助成を認めるのがむしろ自然だろう。
 最高三百万円の支援限度額の引き上げも検討したい。住宅再建の平均費用は千四百万円近くかかったというデータもあるぐらいだ。現行の支援額では決して十分といえないのが実情だ。
 国の財政支援に限度があるのは事実だろう。一方、被災者の中には経済的にも苦しい高齢者世帯が少なくない。有識者検討会は、行政の無駄を省き被災者の要望にきめ細かく応えられるよう支援策の見直しに知恵を絞ってもらいたい。
 もちろん住宅の耐震化を図るうえで、公的支援に一方的に頼るのではなく、地震保険への加入など事前の備えの大切さを忘れてはならないだろう。
 有識者検討会の報告を受け、政府は来年の通常国会に支援法の改正案を提出したいとしている。
 住宅再建を、「地域」と「生活」の復興の要と位置付けるなら、被災地の声に耳を傾け、被災者を勇気づける法案にするのが当然だ。

[京都新聞 2007年07月24日掲載]

【京都新聞・凡語】

自殺対策

 地下鉄に乗っていると、疲れ切った顔をしている人が目に付く。中高年だけでなく、若 い人たちにも案外多いのが気になる。仕事がきついのだろうか。職場や家庭でつらいことがあるのだろうか▼最近、団塊世代の知人が自殺した。人間関係や金銭 的にトラブルがあったり、精神的に追いつめられていた様子もなかった。何が原因なのか家族はまったく思い当たらないという。ただ最後に会った時、かなり疲 れている感じはした▼日本の自殺者は毎年三万人を超える。景気や雇用が回復してもその数は減らない。突発的だとしても、自殺する人には必ず理由があるとい われる。心の深奥は分からなくても兆しは何らかの形で出ていると指摘する専門家もいる▼知人の妻は「少し口数が少なくなったとは思ったのですが-。それが シグナルだったのかも。きっとひとりで苦しんでいたんですね」と自らを責めた▼自殺しようとしている人が発している危険信号をキャッチするのはむずかし い。本人が進んで相談することはまずない。政府は自殺者を減らすための初の総合的な対策指針を決めた。行政もやっと重い腰を上げた感じだ▼だが、頼みの綱 はやはり周囲の人たちだろう。ひとり暮らしなら近所の人だ。わたしたちも周りに落ち込んでいるような人がいれば、声をかけて一杯やりながらでも相談にのる ように心がけたい。

[京都新聞 2007年07月24日掲載]


【朝日・社説】2007年07月24日(火曜日)付

教育と参院選―安倍流改革を見極めよう

 参院選で教育問題の影が薄い。あれほど鳴り物入りで教育改革を進めた安倍首相も、遊説では年金問題に時間を奪われがちだ。

 だが、自民党は公約で安倍流の教育改革をさらに発展させることをめざしている。安倍政権の下で法律が矢継ぎ早に成立したとはいえ、法律をどのように実際に運用するかはこれからだ。

 安倍流改革をこのまま進めさせるのか、ここでブレーキをかけるのか。有権者はじっくり考えるべき時だ。

 安倍政権では、まず約60年ぶりに教育基本法が改正された。教育の憲法というべき基本法は戦後、「忠君愛国」の精神や画一的な教育を否定することから生まれた。それが改正法では、教育の目標として「愛国心」が盛り込まれた。政治的な介入を阻む規定も薄められた。

 基本法の改正を受けて、教育関連3法が改正された。各地の教育委員会に対し、文部科学相が指示や是正要求をすることができるようになった。教員免許は10年ごとの更新制に変わった。

 底流にあるのは、国が教育の管理を強めようということだ。首相にとっては、「戦後レジームからの脱却」ということになるのだろう。

 しかし、それは戦前の反省に立って戦後積み上げてきた教育の仕組みを大きく変えることでもある。そのことを有権者がどう判断するのか。

 もうひとつ、安倍首相と自民党の政策を貫く特徴は競争原理だ。自民党の公約は抽象的な項目が多いが、それでも「全国学力・学習状況調査の適切な活用」や「学校評価を一層推進」という文言が並ぶ。学力テストで学校同士を競わせ、学力を高めようということだろう。

 教育でも競争は否定できない。地域や学校ごとの学力の格差や傾向を調べるために、なんらかのテストは必要だ。

 しかし、全国で全員にテストを受けさせ競わせれば、学力が上がるというのは単純すぎないか。むしろ、副作用が心配だ。それが現実になったのが東京都足立区の学力テストだろう。ある小学校で教師が間違った答えを書いている児童に合図をしたりして、成績を上げていた。

 野党のマニフェストを見ると、国の管理を強める安倍流改革を批判する色合いが濃い。たとえば、民主党は保護者や住民らが学校運営に参加できる「学校理事会」の設置を提案している。

 与党との違いが鮮明なのは、大幅な予算増を打ち出していることだ。民主党は財政支出の5割増、社民党も公費支出を国内総生産(GDP)比6%水準へ引き上げることを掲げる。その数字に力の入れ方は感じられる。だが、どうやって予算をひねり出すかははっきりしない。

 教育の現状に問題があるのはだれもがわかっている。そんな中で、安倍流の教育改革を認めるのか、拒んで別の道を探るのか。それが教育のあり方を決める分かれ目だ。

アフガンの人質―韓国人たちの解放を願う

 自爆テロや外国人を狙った襲撃が相次ぐアフガニスタンで、今度は23人もの韓国人が旧支配勢力のタリバーンに拉致され、人質になる事件が起きた。

 全員がキリスト教の若い信徒である。医学生や看護師もおり、タリバーンの支持者が多い南部カンダハルの病院や幼稚園で奉仕活動をした後、首都カブールに戻る途中だったという。無事の解決を心から祈りたい。

 この事件の前日には、ダム建設に従事していた2人のドイツ人技術者が拉致され、1人は後に遺体で発見された。先月中旬には、日本のNPO関係者3人が自爆テロに巻き込まれ、大けがをする事件があったばかりだ。

 アフガンの復興を手助けするために訪れた人々が、次々に災難に遭っている。民間人を標的にしたケースが増えており、許しがたい。

 タリバーンはカルザイ政権側に、拘束されている仲間の釈放と、米国に同調してアフガンに派兵した韓国に部隊の即時撤退を要求している。

 駐留している韓国軍は医療部隊と工兵部隊で200人余り。もともと年内に撤退する予定であり、即時撤退の要求には応じていない。人質をとっての脅しに屈するわけにはいくまい。

 韓国政府は現地に交渉団を送り、人質解放のために動き始めた。地元の部族を通して説得を重ねてもいる。全員が無事に解放されるよう、カルザイ政権は力を尽くしてほしい。

 派遣した教会は「参加者の家族を苦しめた」と謝罪し、アフガンでの活動を中断することを決めた。

 若者たちの中には、遺書をしたためて参加した者もいるという。治安が悪化し、危険なことを承知でアフガンに入り、手を差し伸べようとした志や善意を非難することはできない。

 問題は、アフガンの治安が彼らの予想を超えて悪くなっていたことだ。一行は真新しい大型バスに乗っていた。外国人を狙った拉致やテロ事件が増えていることを考えれば、目立たないようにするなどもっと工夫が必要だった。

 タリバーンに襲われているのは、外国人だけではない。彼らは女子教育を目の敵にし、昨年だけで200校近くの公立学校を焼き打ちにした。女子生徒が殺害される事件も続発している。

 それでも、親たちの多くはタリバーンの脅しに屈することなく学校を再建し、わが子を学校に送っている。再建された学校は焼き打ちの数をはるかに上回り、538校に達する。

 内戦は20年以上に及んだ。親たちは、ほとんど教育を受けずに育った。「せめて我が子には読み書きができるようになってほしい」。そうした思いが復興の原動力になっているのだ。

 治安状況は厳しいが、復興への支援をやめるわけにはいかない。二重、三重の安全対策を講じるしかあるまい。

【朝日・天声人語】2007年07月24日(火曜日)付

 その昔、芸者衆のお代は線香が燃え尽きる時間で計算した。上方落語「たちぎれ線香」では、若だんなと芸者が恋に落ち、案じた番頭が仲を裂く。死んだ芸者に若だんなが泣いて供えた三味線は、なじみの地唄を奏で、やがて線香が消えたところでやむ。ほろりとさせるサゲだ。

 松岡利勝氏の事務所費のことで、すとんと胸に落ちる説明を初めて耳にした。赤坂で芸者を呼ぶのに、領収書が出ない花代を事務所費で落としたという。「本人から聞いた」と、山本拓農水副大臣が演説会で紹介した。

 「会場を和ませる冗談」と撤回したが、テレビでは「うそをついた覚えはない」と語った。それはそうだろう。根も葉もない話なら「若い頃に遊んだ仲間」(山本氏)に失礼ではないか。しかも故人である。

 大人がどう遊ぼうと勝手だが、松岡氏が説明を拒んだ水代と違い、花代は極めつきの私費といえる。事務所のどんぶり勘定に混ぜ込んだとすれば、やぼと言うしかない。粋人のために日々芸を磨く女性たちに笑われる。

 神楽坂の芸者を300万円で囲ったと報じられ、69日で辞めた首相がいた。退陣表明は18年前のきょう。前日に投票された参院選で、自民党は改選議席の半分近くを失っていた。

 嫌な客のお座敷に向かう道、芸者は三味線を運ぶ箱屋にいくらか包み、立てる線香の下端をちょいと折ってもらったという。共に過ごす時を少しでも減らしたいという知恵だ。投票日を控えて、閣僚の失言と醜聞が続く。これでは、政権の線香は両端から短くなるばかりだ。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 憲法改正問題 自民も民主も逃げている

 憲法論議が一向に盛り上がらない。

 安倍晋三首相にとって憲法改正は主張する「戦後レジームからの脱却」の中心をなすものだ。それゆえ年頭会見で憲法改正を争点にする意向を示し、国民投票法も成立させたのだろう。

 ところが年金記録漏れ問題で状況が一変し、選挙では年金問題を正面に据えざるを得なくなった。有権者の関心に応えるために政策アピールの優先順位を変更することもあるだろう。

 しかし憲法の扱いについて、記録漏れ問題が噴出する前後での落差が大き過ぎる。

 首相は公約で「2010年の国会で憲法改正案の発議をめざす」と明記していると反論するかもしれない。しかし、9条改正では具体的に自衛軍を定めた党の新憲法草案を問うのかも明確にされていない。

 首相は日本記者クラブ主催の党首討論会で「我々の案がすべて通るとは思っていない。まずは国民としっかり議論していくことが大事だ」と述べるにとどまった。これでは「今回、憲法は問わない」と宣言してくれた方が有権者は戸惑わないですむ。

 公明党は加憲だが、9条の1項、2項は堅持する立場だ。選挙協力を組む公明党との考えの違いを露呈したくないという、自民党の事情も透けて見える。

 民主党は一層、消極的だ。マニフェストでは「広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討する」とあるだけだ。

 小沢一郎代表は党首討論会で「この参院選で憲法問題を掲げる必要性を私は認識しない」と明言した。公約を拡散させないという選挙戦略の側面や、9条改正に反対するグループを抱える党内事情への配慮もあるのではないか。

 一方、共産、社民両党は憲法改正反対を前面に出している。

 憲法改正の発議は3年後から可能になる。今回当選する候補者は任期中、発議にかかわる可能性が出てくる。その意味でも憲法について定見を持つ候補者でなければ国会議員としてふさわしくない。

 毎日新聞では候補者と主要政党に対して憲法問題でもアンケートを実施した(候補者は14日朝刊掲載、毎日新聞ニュースサイトで閲覧可能。政党は19日朝刊掲載)。

 一部を紹介すると9条改正に自民党候補は7割が賛成し、逆に民主党候補は7割が反対だ。公明、共産、社民、新党日本の候補は回答した全員が反対で、国民新党は5割が反対だった。

 集団的自衛権の行使は、「容認しない」との回答が自民党候補が5割、民主党と国民新党の候補はそれぞれ7割だった。公明、共産、社民、新党日本の候補は全員が「容認しない」だ。

 選挙期間はわずかになったが、自民、民主両党は逃げずに憲法を語るべきだ。そして有権者は判断材料を探しながら、各党、各候補者の見識を見定めていきたい。

毎日新聞 2007年7月24日 東京朝刊

社説:過払い利息訴訟 貸手責任が一層重くなった

 最高裁判所が貸金業規制法に基づく、みなし 弁済規定の適用を一段と厳格にすべきだとの判断を下した。利息制限法の上限金利を上回る借り入れ分について、過払い分の返還と、それにかかる遅延利息を請 求していた2件の判決においてである。業者の延滞利息支払いを高裁が訴訟提起時点としたのに対して、最高裁は過払いの発生時点からにすべきだとして、高裁 に差し戻した。

 出資法の上限金利は現在、年29・2%だ。利息制限法の上限金利は同15~20%で、借り手はこれを上回るグレーゾーン (灰色)金利と言われる分について、利払いの義務はない。従来、貸金業規制法のみなし弁済規定を根拠に、柔軟な運用がなされてきた。ここ数年は司法の場で 厳格な運用を求める判断が相次いでいる。具体的には、貸金業法18条による証書交付などが条件とされている。

 今回の判断は業者が過払いの発生を知らなかったことを明確に証明できない限り、その時点からの延滞利息を支払うべきだとしている。被害者救済の姿勢はより鮮明になった。

  貸金業規制法は灰色金利撤廃や、被害者救済、貸金業界の健全化などを目的に昨年末の臨時国会で改正が行われた。灰色金利は09年中には撤廃され、利息制限 法金利に一本化される。同時に、過剰貸し付けを防止するため、貸し出しを年収の3分の1までに抑える総量規制も導入された。違反に対する罰則の強化も図ら れた。

 その結果、貸金業者の廃業や撤退が相次いでいる。大手でも店舗の改廃が進められている。貸出金利の引き下げも、一部では進んでお り、灰色金利の撤廃を改正法に先駆けて実施する会社も出てきている。法改正が目指していた消費者金融の正常化が前倒しで進んでいるといっていい。

 こうした事態に対して、貸金業者の中や規制緩和を求める研究者などから、法改正により貸し渋りが起き、借りられない人に経済的困難が生じているとの指摘がなされている。しかし、これは想定されたことである。

 返済のめどの付かない人に、金利が低くなるとはいえ、年15~20%で貸すことは、多重債務者を作り出すことにほかならない。事前のカウンセリングや生活安定のための公的融資制度の充実が求められているのは、そのためだ。

  法改正の発端が多重債務者や過剰貸し付けの増加にあったことからも、灰色金利は早期に解消されなければならない。同時に、多重債務の利払いで苦しんでいる 人は早期に救済しなければならない。多くの事例に示されているように、借り入れ時点では灰色金利やみなし弁済規定の認識がない人が大半だ。追加借り入れも 業者のすすめによることが少なくない。

 消費者金融や事業者金融も金融業として重要である。それだけに、貸手責任を一層明確にした経営を行うことが求められる。多重債務者などを生み出す経営は許されない。被害者の救済にも責任を持たなければならない。

毎日新聞 2007年7月24日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:日本語の「窮屈」は、昔のポルトガル語で…

 日本語の「窮屈」は、昔のポルトガル語で 「Qiucut」と書き表した。約400年前にイエズス会の宣教師が作った「日葡(にっぽ)辞書」は「気の詰まること、または退屈」と、もっぱら精神的な 意味を説明している。当時は退屈、倦怠(けんたい)を覚えるとの意味でも用いられたようだ▲一方「窮屈」を文字通り読めば、「屈」がきわまることだ。白川 静さんの「字統」(平凡社)によると、屈は尾を曲げてかがむ動物の形で、そこから「かがむ」「まげる」「したがう」という意味が生じた。すべては体が縮こ まることからの連想だ▲新潟県中越沖地震でいまだに数千人の被災者が心身ともに窮屈な避難所生活を強いられている。同じ姿勢で長時間過ごすことでできた血 栓が、血管を詰まらせるエコノミークラス症候群は3年前の中越地震で死者まで出た。それが今回も避難所の被災者16人に見つかったという▲前の中越地震で はマイカーでの車中泊が原因と報じられたエコノミークラス症候群だ。だが、新潟大学の榛沢和彦医師によると実は避難所の被災者にも血栓は見られ、それが慢 性化した例もあった。窮屈な姿勢に加え、水分補給の不足が血栓のできやすくなる血液の濃縮を招いているようだ▲背景には、余震によるストレスや、トイレ使 用が気詰まりなために水摂取を控えるといった被災者の心理があるという。プライバシーを欠いた集団生活による心の窮屈と、それがもたらす体の窮屈の悪循環 が被災者の健康を脅かしているわけである▲全壊家屋が1000戸近い被災地だ。避難生活も長引くおそれが強く、まず心の窮屈と体の窮屈の悪循環を断ち切る 工夫を優先することだ。お年寄りや子供らには心も体も思い切り伸ばせる環境を、何とか一刻も早く用意したい。

毎日新聞 2007年7月24日 東京朝刊


【読売・社説】

外交・安保 平和と安全の議論が低調すぎる(7月24日付・読売社説)

 北朝鮮の核と弾道ミサイルの脅威、中国の急速な軍備増強、そして世界各地で続く国際テロと大量破壊兵器の拡散――。

 日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。いかに自国の平和と安全を確保するか。この重要課題に正面から取り組むことは、政治の大きな責任である。

 ところが、今回の参院選での外交・安保論議は低調すぎる。各政党と候補者はもっと議論を活発化させるべきだ。

 自民党の155項目の公約は、10項目が外交、6項目が安保だが、政府の政策を羅列した印象が否めない。北朝鮮の拉致問題について、「国家の威信をかけて拉致被害者全員の帰国を実現する」という決意を示した表現が目立つ程度だ。

 先の6か国協議は、北朝鮮の核の申告や無能力化の履行時期を明示できなかった。核廃棄の道筋は依然、不透明だ。

 北朝鮮の核とミサイルに対する抑止力を高めるためには、強固な日米同盟が欠かせない。拉致問題の進展にも、同じことが言える。自民党が日米安保体制の強化や防衛協力の緊密化を掲げたのは、そうした認識に基づいているのだろう。

 民主党の公約は、「主体的な外交を確立する」とし、「相互信頼に基づいた、強固で対等な日米関係」の構築を訴える一方で、「自衛隊のイラク派遣を直ちに終了」と明記している。

 航空自衛隊のイラク空輸活動は、今の日米同盟を支える重要な柱だ。代替策も示さずに終了した場合、「強固で対等な日米関係」が維持できるだろうか。

 民主党の小沢代表は「同盟とは対等の関係だ。主張はきちんと言う必要がある」と語る。だが、外交の世界では、「言うべきことを言う」ためには、「やるべきことをやる」ことが前提となる。それなしでは、日米同盟強化に反対する共産、社民両党と同じと見られないか。

 集団的自衛権について、民主党は、昨年12月に決定した「政権政策の基本方針」で一部の行使を容認していたが、公約では言及を避けた。党内の反対論に配慮した結果だろう。自民党も、今秋の政府の有識者会議の結論を待って対応するとし、明確な方向性を示していない。

 国際平和協力活動について自民党は、自衛隊の海外派遣に関する恒久法の「制定を目指す」と明記した。2005年衆院選の政権公約の「検討する」との表現から一歩踏み込んだ。公明党は「1万人の専門家育成」を目標に掲げている。

 集団的自衛権と恒久法の問題は、参院選後の大きな焦点となる。責任ある政党と候補者は、選挙中に具体的な立場を明示し、論議を主導してもらいたい。
(2007年7月24日1時26分  読売新聞)

トルコ総選挙 壁にぶつかった「世俗派」の主張(7月24日付・読売社説)

 総選挙を通じ、トルコの有権者が発したメッセージは、きわめて明確だった。

 イスラム化阻止を掲げた世俗派の主張が、多くの国民の心をつかめなかった、ということだろう。トルコは、イスラム色を排し、政教分離を貫く「世俗主義」を国是としてきた。それが揺らぐことになるのかどうか、今後の進展を見守る必要がある。

 与党の穏健イスラム政党「公正発展党(AKP)」が、半数近い票を獲得し圧勝した。一方、世俗派政党の「共和人民党(CHP)」は、大きく後退した。

 今回の総選挙は、大統領選をめぐって生じた混乱と緊張に端を発する。

 AKPが4月、候補に立てたギュル外相は、大統領を選出する国会での投票で多数を得たが、政党のみならず、軍部を含む世俗派が反発した。世俗主義の守護者を自任する軍部は、政治への介入を辞さないことさえ示唆した。

 国家元首で国軍最高司令官でもある大統領職は、現代トルコの建国以来、政教分離国家を見守る「聖なるポスト」とみなされてきたからだ。

 結局、憲法裁判所の判断により、国会の構成が変わらないままでは、大統領の選出は不可能になった。エルドアン首相が、総選挙の前倒し実施に踏み切り、民意を問う戦術に出たのには、そうした背景がある。

 新国会招集後、AKPは再び、大統領選の実施を求めるものと見られる。その際、軍部など世俗派がどう出るか。

 2002年、AKPが政権を握って以来、年平均7%という経済成長に支えられた政治的安定が、今回のAKPの勝因の一つだった、と指摘される。しかし、仮に軍部が、力の行使を通じた内政介入に出た場合、トルコ情勢が一挙に不安定化するのは避けられまい。

 世俗主義維持の名の下に民意を踏みにじれば、トルコの民主主義は後退し、最大の政治目標である欧州連合(EU)加盟が遠のくのは間違いない。好調な経済のエンジン役でもある外資の流入も、細ることになるのではないか。

 軍部が、そのような愚を犯すとは思えないが、自制を要する局面だ。続投を決めたエルドアン首相は、「共和国の諸価値は守る」と、世俗主義の原則を守ることを示唆した。確実に実行できるのかどうか、イスラム色を薄めるなど、安定のための譲歩もあり得るだろう。

 周辺の中東にはイラクやパレスチナ、レバノンなど、数々の不安定要因が存在する。この地域の安定のためにも、責任ある地域大国としてのトルコ自身の安定が不可欠だ。
(2007年7月24日1時27分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月24日付 編集手帳

 「恋人よ/この世に物理学とかいふものがあること は/海のやうにも空のやうにも悲しいことだ」。作家の北杜夫さんは物理の試験でお手上げの時、答案を自作の詩で埋めたという◆「どくとるマンボウ青春記」 (新潮文庫)によれば、旧制松本高校には才人が多かったようで、化学の試験では「問題を見てピクリンサン、腋(わき)の下にはアセチレン…」、出題の薬品 名を織り込んだ戯(ざ)れ歌を記す技巧派もいたらしい◆北さんの詩才もなく、答案用紙の空欄が目に痛かったわが身を省みつつ、海外から届いたうれしい知ら せに拍手する。イランで開かれた「国際科学オリンピック」物理部門で、日本から参加した高校生2人が金メダルに輝いた。物理での「金」は初めてである◆大 学に入学する前の若者が科学的な思考力を競うこの催しをもり立て、支援すべく今年3月には、「日本科学オリンピック推進委員会」(江崎玲於奈会長)が発足 している◆この世に理数系の学問があることを「海のやうにも空のやうにも愉(たの)しいことだ」と感じる中学生、高校生が増えていかなければ、科学立国の 足もとはおぼつかない。物理の「金」も、いい弾みになろう◆はるか遠い昔の試験を夢に見ては、腋の下の冷たいアセチレンで目を覚ます自分のことは高い棚に 上げ、若きメダリスト諸君に希望を託す。
(2007年7月24日1時38分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】07参院選 終盤戦 政策論議欠落を懸念する

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査によると、選挙情勢は民主党が大幅に議席を伸ばす一方、自民党は選挙区、比例代表とも厳しい戦いを余儀なくされ、与党の過半数割れが濃厚だという。

  国民の怒りが、年金記録問題を中心として、政府・与党に集中的に向けられている。選挙戦でもこうしたムードが数字として表れた形だが、国政を委ねる選挙が これではよくない。日本をどうするかという本質的政策論議があまりに欠落してはいないか。もう一度、目を向けるべきだ。

 投票先を決めていない有権者がまだ4割おり、与党が巻き返す余地は残っているが、安倍晋三首相にとっては、選挙結果しだいで政権維持が困難になる事態も取りざたされている。

 だが、この選挙の基本的意味は、昨年秋に発足した安倍内閣10カ月の実績評価にあることを、あらためて確認しておきたい。

 新しい国づくりを志向する政治姿勢を打ち出し、憲法改正を政治日程に乗せ、教育再生を推進する。天下り規制など公務員制度改革にも着手した。

 発足当初、高い内閣支持率を得ていたことなどを考えれば、こうした「安倍路線」自体に国民の強い異論があるとは思えない。

 そうした評価を飛び越えて、年金の逆風が与党を襲う。赤城徳彦農林水産相の事務所経費問題など、本質論から外れた話題が国民の不信感に拍車をかけている。それが選挙戦の構図だ。

 的確な対応策により解決が可能な年金記録問題は、本来、争点にすべきでなかった。実際、政府は年金記録の送付などで、野党側の意見も取り入れた対応策を実施に移そうとしている。

 一方、憲法や外交・安全保障など、国のありようにかかわる重要テーマの論争は乏しいままだ。社会保障や税制の分野では、消費税率の引き上げや年金財源の問題などを、自民、民主両党が正面から論じ合うべきだと有権者は考えている。

 与党は真に語るべき争点に向き合い、野党がしかけるムード選挙の構図から脱することだ。小沢一郎代表が率いる民主党も、それを追い風にするだけなら、政策に責任ある政党として信頼を得ることは難しい。

(2007/07/24 05:04)

【主張】IAEA原発調査 有益だが過大評価は禁物

 新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原子力発電所の損傷や火災について、経済産業省原子力安全・保安院は、国際原子力機関(IAEA)による調査の受け入れを決めた。新潟県知事から国に出された要請が受諾を促した。

  今回の地震は、原発に及ぼした影響の大きさで、前例のないものだ。強い揺れに対する原子炉の挙動、施設の耐震力の見積もりと実際の損壊程度との対照、液状 化現象による敷地のひずみ、火災発生への対応など、実際の揺れに遭遇して得られた工学データや教訓は多種多様だ。原子力発電の安全性をさらに高めていくう えで非常に貴重な事例である。

 現在、世界全体では約440基の発電用原子炉が稼働している。エネルギー需要の伸びに対応して新興諸国を 中心に原子力の利用計画が進んでいる。IAEAを通じて、柏崎刈羽原発の被災経験が、安全確保のための情報として関係国間で共有されるのは望ましいことで ある。東電と国には、IAEAの調査に協力し、透明性の高い情報を公開していくことを望みたい。

 柏崎刈羽原発の原子炉4基は、震度6強の揺れを感知して自動停止した。定期検査で止まっていた残り3基も問題なかった。地震動の加速度は想定を超えたが、強度に余裕を持たせていたので、原子炉建屋は持ちこたえて無事だった。

 この事実は、東電も国も自信を持って世界に伝えてよい。IAEAの調査に対しても強調すべき要点である。同発電所の6、7号機は、地震の揺れに強い改良型原子炉(ABWR)であることも忘れてはならない。

 活断層による地震を克服したにもかかわらず、原発の安全と安心をめぐる議論は、おかしな方向に流されかけている。危険性と不安感ばかりをあおり立てることに意味はない。

  IAEAは原子力の平和利用を促進すると同時に核兵器の密造を監視する機関である。耐震の専門機関ではないことを認識しておくべきだろう。今後、IAEA による調査が、原発の運転再開の必要条件として慣例化するという事態も避けなければならない。原子力発電の安全確保は、安易な他力頼みではなく、自力で積 み上げていくべき事柄である。

(2007/07/24 05:03)

【産経抄】

 トルコといえば、親日国のイメージが強い。宿敵、ロシアを日本が戦争で破ったときは、国を挙げてのお祭り騒ぎだったらしい。明治23(1890)年に紀伊半島沖で遭難したトルコ軍艦を地元の漁民が救助した話は、歴史教科書にも載っている。

 ▼イラン・イラク戦争最中の1985年、イランに取り残された邦人を救出してくれたのはトルコ航空機だった。サッカーファンならイルハン選手を思いだすかもしれない。日本での活躍が楽しみだったのに、たった3試合で無断帰国したのは拍子抜けだったが。

 ▼そのトルコで総選挙が行われ、2002年から政権の座にあって、経済を好転させ、欧州連合(EU)加盟交渉に導いた与党・公正発展党(AKP)が圧勝した。イスラム色の強い政党と聞いて、最初はとまどった。親しみのある国であっても、政情を理解するのは難しい。

 ▼ 国民の大半がイスラム教徒の国でありながら、イスラムの象徴である女性のスカーフ着用は学校など公的施設では禁止されてきた。オスマン帝国の崩壊後、近代 化を推進した建国の指導者、ケマル・アタチュルクが、政治や社会から宗教的要素を一切排除することを国是としたためだ。

 ▼ 世俗主義と呼ばれる政教分離の考え方自体に問題があろうはずがない。ただ、トルコの場合、世俗派が特権階級を形成し、それを支持する軍部がしばしば政治に 干渉し、民主主義を脅かしてきたとの指摘もある。ともあれ、世俗派の野党は敗れた。トルコ国民の意志は、日本にもはっきり伝わった。

 ▼日曜日に迫った参院選の行方もまた、国際社会から注目されている。特に中国、北朝鮮にどんなメッセージを送ることになるのか。有権者はこの点も考慮して一票を投ずべきだろう。

(2007/07/24 05:02)


【日経・社説】

社説1 原発安全の駆け込み寺でないIAEA(7/24)

 政府が新潟県中越沖地震で被害の出た東京電力柏崎刈羽原子力発電所について国際原子力機関(IAEA)の調査受け入れを決めた。地震で微量ながら放射能が外部環境に出たため、地元は住民の不安や風評被害の沈静化に向け、同機関の調査に期待しているようだ。

 だが、調査は地震の影響情報を世界で共有するのが目的だ。安全確認の“お墨付き”への期待は筋違いだろう。国際機関への妙な期待は裏返せば政府の信用のなさを物語っている。関係者は猛省がいる。

  今回の地震では想定していなかった事象がいくつも起きた。筆頭は同原発にとって地震が直下型に近かったこと。揺れの強さを表す加速度が最大680ガルと想 定震動の2倍以上の値だった。さらに使用済み燃料プールの水が漏れて微量の放射性物質を含む水が海に放出され、排気筒から微量ながら放射性物質が放出され た。建屋外部の変圧器で火災が発生、消火活動も遅れた。

 同原発は昨年の改定前の耐震設計指針に基づいてつくられているが、すぐ近くの活 断層を考慮しなかったミスは言い訳できない。原発は多重防護という考え方で安全性を確保しているが、同原発のほとんどの事象は想定外と言って片づけられる ものではない。地元や関連機関への報告の遅れなど、東電の対応にも問題があり、これでは原発の地震防災への疑問は広がるばかりだろう。

 政府は安倍晋三首相が地震後に現地を視察し、経産省に全国の原発の安全性確認を指示するなど、不安の解消に動いている。一方で、安全確保に責任を持つ原子力安全委員会、原子力安全・保安院の存在感は薄く、不安への対応も十分ではない。

  今回の地震では運転中の原発は自動停止し、炉心は健全なようだ。ただ、炉心に損傷がないのかはまだ調べられていない。専門家チームをすぐに組織し、こうし た点を含め被害・影響を徹底分析するなど、素早い対応が必要なはずだが、動きは鈍い。旧耐震指針でつくられた既存原発の点検・補強は今回の地震で一刻の猶 予も許されなくなった。その期限を早めるなどの対応も遅い。

 原子力は安全性に不安を持たれたら機敏に動き、備えを盤石にする姿勢が何よ りも重要だ。政府の関係機関にそれが欠けるからIAEAの調査に過大な期待がかかる。今回の地震被害や問題点を原発国が共有するのは重要であり、極力協力 すべきだ。しかし、問題点の分析を国際機関に委ねるようなら、「原子力立国」どころではない。

社説2 リケンショックの教訓(7/24)

 新潟県中越沖地震は、国内の自動車生産にも混乱を もたらした。部品大手のリケンの柏崎事業所が被災し、ピストンリングというエンジンの基幹部品の生産がストップしたためだ。自動車各社は柏崎に応援部隊を 送り込み、懸命の復旧作業を進めている。地震にどう備え、被害を最小限に抑えるか、企業にとっても危機管理の手腕が問われている。

 自動 車最大手のトヨタ自動車は、ピストンリングのかなりの部分をリケンからの供給に頼っており、手持ちの在庫が底をついた19日午後から国内全工場での稼働停 止に踏み切った。その後復旧作業が実を結び、リケンが23日に製品出荷を再開したことから、トヨタも24日から一部を除き生産を再開する。

 「生産中止の長期化」という最悪のシナリオは避けられそうな情勢だが、それでもトヨタだけで5万5000台の生産に影響が出る見込みだ。他の自動車会社を含めると、地震による減産は10万台を超える見通しで、阪神大震災を上回る。

  ここまで影響が広がったのは、リケンの技術力の高さが背景にある。同社は独自の精密加工技術を持ち、自動車各社と共同開発に取り組んできた。自動車会社は 万一の場合にそなえ、複数の会社から部品を調達する分散発注を原則としているが、ピストンリングについては開発パートナーでもあるリケンに配慮し、同社 1社に単独発注するケースも多かった。調達の安定性と研究開発の強化をどう両立させるか、自動車各社は重い課題を抱えた格好だ。

 リケンショックは他の産業にとっても、「対岸の火事」ではない。2004年の新潟県中越地震では三洋電機の半導体工場が被災した。自社工場が被害を免れても、取引先が被災すれば、自社の操業に直接的な影響が出ることも、今回の中越沖地震が示した通りだ。

  さらにリスクは国内だけに限らない。最近は中国など海外から部品を調達するケースも増えている。海外の取引先が、地震や洪水などの天災、テロのような地政 学リスクに見舞われるケースを想定し、その対応策を準備しておくことが、「災害に強い経営」を実現するうえで欠かせない課題である。

【日経・春秋】(7/24)

 日本が世界に誇る頭脳集団、理化学研究所は、大正時代の末に、慢性的な資金不足と有力研究者の対立で、組織的な危機にあった。それを立て直したのが、3代目の大河内正敏所長である。研究成果の一部を工業化し、そのもうけを研究資金として還流した。

▼ 理研コンツェルン(正式には理研産業団)として名高い、ハイテク企業集団を率いて25年、目指したのは科学者の楽園づくりだった。ビタミンのA、D、合成 酒など、発明を次々商品化し、研究の自由と独立を保障する資金を稼ぎ出す。が、事業の収益をむさぼることなく、ほとんどを研究支援に回した。

▼ 基礎研究を軽んじる政府や産業界に、理研の研究がもたらすたわわな果実を見せつけるねらいもあった。旧大名家に生まれた大河内所長は「農村工業」を唱え、 先端工業の農村部への立地をすすめる。昭和7年、1932年に、画期的な製法の発明をもとに、新潟県柏崎町にピストンリングの工場をつくった。

▼ 以来4分の3世紀にわたって、柏崎はピストンリングの先端的生産拠点であり続けた。地震で柏崎の工場が止まれば、国内で多くの自動車製造ラインが止まって しまうほどだ。発明と決断、継続と努力で地域に生き残った産業競争力。その伝統の蓄積にも、地震は無遠慮に打撃を与える。


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2007年7月23日 (月)

7月23日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月23日朝刊)

[村上ファンド]健全な証券市場の育成を

 ニッポン放送株のインサイダー取引事件で、東京地裁は村上ファンドの前代表、村上世彰被告に対し懲役二年、罰金三百万円、追徴金約十一億四千九百万円の判決を言い渡した。

 同時に起訴された投資顧問会社、MACアセットマネジメントにも罰金三億円が言い渡された。

 判決は、村上被告が巨額の資金で自らインサイダー状況を作り出し、一般投資家が模倣できない特別な地位を利用したと指摘し、「ファンドマネジャーというプロによる犯罪で犯情自体も悪質」と厳しく批判している。

 インサイダー取引は、企業内部の重要な情報を知り得る立場の役員や取引先の関係者が公表前の「重要事実」を入手し、株などを売買する行為。市場の公正を害し投資家の信頼を損なうため、証券取引法で禁止されている。

 インサイダー事件としては厳しい実刑判決となり、執行猶予は付かなかった。公正な証券市場の形成へ向け、違反行為に対しては厳しい判断で臨む司法の姿勢を明確に示したものだ。

 判決によると、村上被告は二〇〇四年十一月八日の会議で堀江貴文ライブドア前社長らから同放送株の大量取得を決定したとの内部情報を入手し、同放送株約百九十三万株を購入。値上がりした株の売却でファンド全体で約三十億円の不正利益を得た。

 村上被告は公判で捜査段階の自白を全面否認し、無罪を主張。判決は「ニッポン放送株を買い集めることを偶然『聞いちゃった』のではなく、『言わせた』と言える」と指摘、被告自ら勧誘し、その気にさせたと判断した。

  弁護側は「ライブドアには大量取得の資金調達力や実現可能性はなく、インサイダー情報に該当するような株取得の決定は聞いていない」と訴えたが判決は「大 量の買い集めが確実でなくとも、実現可能性があれば足りる」と判断を示し、ライブドアの計画に高い実現可能性があったと認定した。

 イン サイダー取引は一九八八年の証券取引法改正で初めて禁止された。それまでは見逃される傾向もあったようだが、その後、罰則も徐々に引き上げられ、事件発生 時の罰則は三年以下の懲役、三百万円以下の罰金、昨年施行の改正法では五年以下の懲役、五百万円以下の罰金に引き上げられた。

 村上被告は「物言う株主」として企業の体質改善などの改革を促してきた側面もある。だが証券市場を公正に機能させるためには、何よりも投資家の保護が大きな前提になるはずだ。

 一般の個人投資家は激増しており、罰則強化など法改正を進め、公正で健全な証券市場を育成していくべきだ。

[警察白書]資金源を封じ込めたい

 警察庁は二〇〇七年版警察白書を公表した。今回は「暴力団の資金獲得活動との対決」と題した特集を組んだ。

 白書では近年企業活動を仮装・悪用して新たに証券取引の分野にも進出するなど、多様化する資金獲得活動を分析し、今後の課題を指摘している。

 暴力団の資金獲得の手法は不透明さを増している。関係機関が連携を密にし、対応を強化していく必要がある。

 四月に長崎市長射殺事件が起きた。行政機関や職員を対象に不当要求行為を行う「行政対象暴力」や企業を対象にした「企業対象暴力」も目立つ。

 今回の白書では土木・建築業者に暴力団との関係を尋ねたアンケート結果も掲載した。業者の33・7%が過去一年間に同和団体や右翼団体を名乗る、暴力団とみられる部外者から不当な要求を受けたと回答している。

 暴力団と関係を意図的に持つ建設業者もいるようだ。建設業者を対象にしたアンケートでは、33・8%が「暴力団と何らかの関係を有する建設業者がいると聞いた」と答えた。

 警察庁が今春まとめた「〇六年の暴力団情勢」によると、同年末現在の暴力団構成員数は約四万千五百人、準構成員数は約四万三千二百人。

 準構成員が構成員を上回るようになり、暴力団をめぐる深刻な不透明化が新たな段階に入ったと分析し、暴力団関係企業が暴力団に資金提供する構図の解明と対策が急務としていた。

 最近はバブル経済期にみられたように不動産取引、証券取引による犯罪に手を染め、社会経済情勢の変化に対応して、多額に資金を獲得できるポイントを巧みに探り当てているようだ。

 まずは巧妙化する資金獲得手法の実態解明が不可欠だ。暴力団対策法などの法制度を有効活用し、資金源の根絶に取り組むべきだ。関係団体の連携強化で違法な資金獲得を封じ込めたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月23日 朝刊 1面)

 一日の暑さも和らぐ夕暮れ、小学校三年の末娘を連れ沖縄こどもの国へ出掛けた。目当ては土曜日だけの夜の動物園。

 涼しいと動物たちも動きやすくなるらしい。いきなり、カバが巨体を揺らし歩いているのに出くわした。以前、昼間見たときは池の中で動かずじまいだったが、丸い体でのしのし歩くさまは愛嬌たっぷり。

 夜七時と八時は食事の光景も見ることができ、サルのオリでは餌を手渡すことも。娘がリンゴを見せると、コモンリスザルが近づいてきた。餌を握った娘の指を小さなリスザルの指が開かせようとする。子どもならずともドキドキの瞬間。

 圧巻はトラやライオンなどの猛獣類。つり下げられた餌めがけジャンプするトラ。立ち上がって手を伸ばすと二メートルを超す。ネコ科なのに、水の中に落ちた餌にも平気で顔を突っ込む。百獣の王は余裕だ。二百キロ余りの雄ライオンは豊かなたてがみも誇らしい。

 それを見て工藤直子さんの詩を思い出した。「らいおんのつくりかた/まず『いふうどうどう』を よく こねあわせます/それを『がおーっ』で つつみ こんがり やきあげ/さいごに『かなしいな』を ちょっぴり ふりかけると/りっぱな らいおんが できあがります」。

 すっかり暗くなった空には鳥類やサルの叫び声が響いた。夜の動物たちが見せる一瞬の野生と意外な生態に生き物本来の姿を思い描き「失ってはいけないもの」を胸に帰宅した。(平良哲)


【琉球新報・社説】

参院選調査 高い関心も投票してこそ

 29日に投開票される全国一斉の参院選に、県内有権者の8割強が関心を示していることが、琉球新報社が共同通信社と合同で先週後半に実施した電話世論調査で分かった。
 2004年の前回の参院選は約7割だったから、今回の選挙への関心の高さがうかがえるが、国政への高い関心も、実際に投票所に足を運んでこそである。有権者には各候補の公約、実行力をよく吟味し、投票行動で国政を監視していく姿勢を示してほしい。
  今回の参院選沖縄選挙区(改選1議席)には、自民公認、公明推薦の現職・西銘順志郎氏と、無所属で社民、社大、共産、民主、国民新党が推薦する元職・糸数 慶子氏が立候補し、一騎打ちの選挙戦を展開している。比例代表(同48議席)には、11政党・政治団体の159人(うち県内から4人)が届け出て、こちら も激しい戦いを繰り広げている。
 世論調査によると、選挙への関心度は「大いにある」と「少しはある」を合わせて83・5%に上った。世代別だと、40代から70歳以上の中高年層は80%台後半から90%台前半とさらに高く、政治意識の高さが垣間見える。
  一方で、若い世代の関心度は相変わらず低い。30代は83・1%で平均値に近いが、20代になると58・9%で一気に下がる。実際の投票率は関心度を下回 ることが多く、懸念材料だ。若い世代の選挙への関心をどう高め、全体の投票率アップにつなげるか。より効果的な投票呼び掛けキャンペーンの展開など、啓発 活動の一層の推進が求められよう。
 確かに、国民の政治離れが言われて久しい。政治家の不祥事、官僚の不始末は後を絶たず、政党や政府に対する不信感、あきらめにも似た思いが広がっている。それは都市、地方にかかわらず、投票率の低下傾向に歯止めがかかっていないことからも明らかだ。
  そんな中、最近の国政選挙、知事選などでは無党派層と呼ばれる人々の動向が注目を浴びている。彼らを「無党派という名の政党」と見る向きもあるが、具体的 な公約があるわけでも、目立った選挙運動をするわけでもないことから実態はつかみにくく、浮動層との違いが明確でない。
 言えるのは、実際に投票 で意思表示をしなければ無関心層と何ら変わりがないということだ。国政への注文は、民主主義の根幹である選挙を通じて訴えるのが最も効果的である。投票に 行かないというのは、豊かな暮らしを求める権利を有権者が自ら放棄することにほかならない。この間の政策論争で、基本的な判断材料はそろってきた。有権者 は各候補の政策をじっくりと見比べ、貴重な一票で国政への意思表示をしたい。

(7/23 9:56)

コザ音楽タウン 才能発掘と夢実現の拠点に

 音楽による街づくりに取り組む沖縄市が27日、中 心施設となる「コザミュージックタウン音市場」を胡屋十字路にグランドオープンさせる。芸能ジャンルでは、ニューヨークの劇場街ブロードウェーなどが知ら れるが、沖縄にも独自の歴史にはぐくまれた音楽文化があり、多くの才能を開花、発信してきた。同タウンがブロードウェーに負けない才能発掘と夢実現の拠点 になり、街全体が大いに活性化することを期待したい。
 本土復帰前のコザの街はミュージシャンと観客であふれ、活況を呈した。ロックバンドの紫やコンディショングリーンなどがカリスマ的人気を誇り、若きロッカーたちをけん引。全国のファンから注目され、一時代を築いた。
 そのエネルギーを再び―というのが市側の最も期待するところだろう。沖縄市は1987年の海邦国体でメーン会場となり、沸き返ったが、その後はバブル崩壊などもあって経済活動が停滞し、中心市街地はシャッターを下ろしたままの店舗も目立つ。
  そんな中で計画されたのが、公設・民営のコザミュージックタウンだ。全席立ち見で1100人、いす席だと500人収容可能なホールをメーンに、バンドの練 習や簡易録音に使える音楽スタジオ、音楽広場を併設した。ロック、ポップス分野で「世界の超一流アーティストにも満足してもらえる」(金城直樹副館長)と いう音響機材を備えたのも“売り”で、高いレベルの演奏が聴かれそうだ。
 施設の充実などハード面は整った。あとはこれをどう生かし、街の活性化につなげるかだ。プロ、アマチュアを問わず、世界中から多くのミュージシャンが公演に来る仕組みを確立し、満員の観客で埋め尽くしたい。
  県内の若き才能の発掘という点では、オレンジレンジやHY、安室奈美恵らが音楽誌のヒットチャートをにぎわす現状をみれば心配ない。「ダイヤモンドの原 石」はいくらでもおり、それをどう磨くかにかかっている。他県がまねのできない新しい空間を、知恵と工夫でつくり上げてもらいたい。

(7/23 9:55)

【琉球新報・金口木舌】

 フィリピンのルソン島北部山岳地帯に住む日系人家族のきずなを描いた映画「アボン 小さい家」は、山岳少数民族の暮らしぶりが興味深い
▼今泉光司監督から、この部族には「ありがとう」の言葉がないと聞かされ驚いた。その代わり「ナマオエッサ」と言うそうだ。訳すると「恩を借りました」
▼自然や神からもらった恵みに感謝して、いずれその恩を返すという意味合いがある。人々は農薬、肥料を使わず自然に任せて成長した穀物や野菜を、感謝の言葉をささげて食べる
▼私たちの食生活はどうだろう。近所のスーパーマーケットをのぞくと、外国産の安い肉類や魚介類、野菜、果物がずらりと並んでいる。誰が、どのようにして作ったのか、さっぱり分からない
▼農産物など特定品目で関税引き下げを約束する2国間協定化が進んでいる。食卓は、ますます輸入品であふれるだろう。農家は窮地に陥るし、問題の中国産のように安全性に疑問が残る
▼大量に生産し消費する生き方について「人間は地球資源をすべて消費していいという考えになっている」と今泉監督。山岳民族の「ナマオエッサ」という生き方には、私たちの暮らしを見直すヒントが隠されているかもしれない。

(7/23 9:50)


【東京新聞・社説】

年金攻防 制度の歪み正す論戦を

2007年7月23日

 年金記録不備対策の一環として受給権回復の動きが活発になったが、これは応急措置だ。年金不信を解消できる抜本的な改革案を聞きたい。与野党は現行制度の歪(ゆが)みをどう正すかを示すべきだ。

 記録不備問題では、先に成立した時効撤廃特例法に基づき、不足分の年金を受給できる高齢者が次々と出ている。政府は参院選前にまとめた一連の対策を漏れなく着実に実行すべきである。

 政府の対策が後手に回ったことが国民を怒らせた。年金不信が頂点に達した今、制度自体の改革論議を深める必要がある。

 ところが与党は明確な将来像を示さず、民主党の改革案への批判を繰り返すにとどまっている。

 現行制度は終身雇用などを前提に設計されているが、国民年金では近年、企業をリストラされた加入者らが増え、保険料未納が増えている。

 他方、国民年金は保険料納付期間が二十五年未満だと受給できない。

 このため既に九年前、総務庁(当時)は行政監察報告書の中で、二十五年に満たなくても納付期間が少ない分だけ給付額を減らす「減額年金」制度の導入の検討を求めている。

 国民皆年金を目指す以上、硬直した現行制度を改めるべきだ。未納分の保険料追納も現行の二年より長期間遡(さかのぼ)ってできるようにすべきだ。

 先の国会で社会保険庁が二〇一〇年、日本年金機構に解体・再編されることになった。国民年金の保険料納付率引き上げや保険料の目的外流用の防止などが狙いとされる。

 だが、年金制度への信頼が失われた中で納付率を本当に上げられるのか疑問だ。また、社保庁にぶら下がっている天下り法人は温存されたままで、保険料流用の懸念が残る。

 民主党は、社保庁と国税庁を統合し、保険料と税を一緒に徴収する方式を提案している。業務を効率化することで徴収コストを下げ、天下り法人も一掃できるというのだ。

 日本年金機構に将来とも安心して年金業務を任せられるのかどうか。与党はこの疑問にこたえるべきだ。

 保険料を徴収する社会保険方式に限界があるなら、国民年金(基礎年金)保険料を税で賄う方式が考えられる。民主党などが主張している。

 これが実現すれば無年金は解消されるが、民主党案のように所得制限を設ける場合、どのように所得を正確に捕捉するのか。国民年金の保険料が定額なのは加入する自営業者の所得捕捉が困難だからだが、民主党案はその方法には触れていない。

 年金制度を将来にわたり安定させることは与野党共通の課題である。

中国経済過熱 元切り上げ避けられぬ

2007年7月23日

 中国の今年上半期の実質成長率が11・5%に達し経済過熱の懸念が一層、強まった。膨大な貿易黒字、資金の過剰から安全が問われる輸出品まで、中国経済の問題の根は人民元の過小評価にある。

 中国は二年前の七月二十一日に、それまで米ドルに対して、ほぼ固定してきた相場を約2%切り上げ、その後は変動幅を拡大することで穏やかな元の上昇を図ってきた。

 しかし、この二年間の元上昇率は8%を超える程度にとどまる。洪水のような輸出増加のペースは衰える兆しすらない。

 十九日に中国国家統計局が発表した数字では今年上半期(一-六月)の輸出の伸びは23・3%。貿易黒字は前年同期に比べ、実に83・1%も増え千百二十五億ドルに達した。

 膨大な対中貿易赤字を抱える米国などと摩擦が激化するのは必至だ。

 中国の通貨当局は輸出に不利な元高の進行を防ぐため、元を売りドルを買う為替市場介入を続けている。

 このため昨年二月に日本を抜き世界一となった中国の外貨準備高は増える一方。六月末には前年同期比41・6%増の一兆三千三百二十六億ドルに達した。上半期だけで昨年一年間の増加額を上回るハイペースだ。

 中国では市中に出回った現金を債券発行などで回収する金融システムが十分働かない。大量の人民元は不動産や株式市場に流れ込み、相場の高騰につながる。

 株取引に必要な印紙税の値上げなどで株式市場が落ち着いてくると不動産の値上がりが始まった。今年上半期の都市部の固定資産投資は前年同期に比べ26・7%も増えた。

 しかし、投資に消費の伸びは及ばない。バブルの恩恵にあずかれない庶民の懐を卵や肉類の高騰など消費者物価上昇(前年同期比3・2%増)が直撃した。経済の過熱からインフレへの心配が強まった。

 以前から内需が主導する経済成長への転換が叫ばれながら一向に実現しない。これは低賃金が武器の輸出産業と、投資が頼みの経済構造に政府も産業界も安住しているためだ。

 最近、中国産品の安全性に海外から批判が強まっているのも「安かろう、悪かろう」という輸出企業が少なくないことを示している。中国国内の研究者からも技術集約型産業への転換が叫ばれている。

 今秋の共産党大会を前に政府は、輸出に打撃を与え失業増加につながりかねない元切り上げに慎重な姿勢を強めている。しかし、ドイツに匹敵する経済規模に発展した中国が他国と共存共栄し成長のゆがみを正すためには、避けて通れない道だ。

【東京新聞・筆洗】2007年7月23日

 「すでに相撲も五日めになりて、大関をとらすと触れ ければ見物一入(ひとしほ)いやまし、錐(きり)を立つべき地もなかりしが」…。享保年間に出版された『太平百物語』の一節だ▼安芸の国(広島)での相撲 大会で大関の登場に立錐(りっすい)の余地もないほど人が集まった盛況を描く。かつて大関は力士の階級の最高位にあった。横綱は最強の大関に贈られた称号 で、これが最高位になったのは明治時代という。それから次席となったとはいえ多くの力士には見上げるような地位だ▼三十一歳の関脇、琴光喜にも遠く映った ことだろう。それが名古屋場所を十三勝二敗で終え、大関昇進を確実にした。愛知県岡崎市出身で、地元というべき場所での健闘は二重の喜びに違いない。十日 目、文字通り白鵬が吹っ飛んだような上手出し投げは圧巻だった▼六年前の秋場所で初優勝し、一度は花が咲きかけた。が、昇進の壁は高くなり、下あごの骨折 などにも泣き、「おれはもう、終わった人間なんだ」と吐き捨てたこともあったとか。でも大関昇進を「あきらめない」と言っていたそうで、ついに史上最年長 での昇進である▼重ね合わせたいのがプロ野球楽天の三十八歳の山崎武司選手だ。中日時代は本塁打王を獲得したが、オリックスでは戦力外通告を受け、でも現 在パ・リーグの二冠である。「もう終わった人間」。一度はそう思っても思われても再び輝きだす姿に、人の持つ強さや貴さを見る思いがする▼「見物一入いや まし、錐を立つべき地」もないような大関にと、祝意を申し上げたい。そして次こそ朝青龍を。


【河北新報・社説】

みやぎ発展税/地域経済を冷やさないか

 村井嘉浩宮城県知事が導入を決めた「みやぎ発展税」に異議があり、率直に疑問をぶつけてみたい。

 「発展税」は、県内に事業所を持つ資本金1億円以上、所得金額4000万円以上の企業を対象として、法人事業税に、税率5%を上乗せ課税するものだ。期間は2008―12年度の5年間に限り、税収は単年度で30億円、計150億円が見込まれるという。

 第1の疑問は、県内の経済状況が、超過課税に耐え得るほどの体力があるかどうかだ。

 法人事業税への超過課税が実施されている東京、大阪、愛知など7都府県は、いずれも産業が集積し、景気拡大が顕著な地域だ。残念ながら、都市部と地方の経済格差は拡大する一方で、地方の一員の宮城もその例外ではない。

 06年度納税実績ベースで、超過課税対象は県内約5万社のうち8078社で、県外に本社がある企業が6978社、県内企業が1100社だという。

 特に、中小企業が多い県内は、弱々しい景気感の中、経営の効率化を進めており、こうした中での増税は、企業の活力をそぎ、地域経済の冷え込みにもつながりかねない。

 もう一つは、産業集積を図る手法について議論を詰めたかどうかだ。県は、超過課税分の150億円のうち、125億円を産業振興に充て、現在の企業立地奨励金を大幅に拡充するほか、工場周辺の基盤整備などを行うとしている。

 併せて、製造業を対象に「企業立地促進税制」を導入、不動産取得税や法人事業税、固定資産税を減免する。

 産業誘致の地域間競争が高まり、各県独自の優遇策が企業立地を大きく左右することを否定するつもりはないが、補助金による誘致は限界もある。

 地域の需要に基づく産業が何かを見極め、研究開発段階から支援し、育成することが必要だ。派手さはなくても、きらりと光る企業が地域に張り付けば、これほど心強いことはないだろう。

 長期的視点に立った産業政策こそ、10年後に県内総生産(GDP)を、今より1.5兆円増やして10兆円にするという村井知事の「富県戦略」が実現するのではないか。

 「発展税」は、今回は見送られることになった個人県民税と法人県民税に上乗せ課税する「みやぎ環境税」とともに、庁内の税制研究会で浮上した。1年間論議した結果だというが、唐突感は否めない。

 県の09年度の累計財源不足額は181億円となる見込みで、財政がピンチな事情は分かるにしても、税は生活に直結する問題だ。ここは徹底した歳出削減を断行し、新税は次期知事選の際、訴えたらどうか。
2007年07月23日月曜日

日本三景松島/「世界遺産」より環境改善を

 日本三景・松島について宮城県は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産への登録を目指す方針を決めた。

 世界遺産は全世界に851件あり、このうち日本は京都や白神山地(青森県、秋田県)など14件。東北では岩手県の「平泉文化遺産」も来年の登録が有力視される。いずれも見る人を圧倒する迫力と魅力にあふれている。

 かつて絶景の代名詞にもなった松島は、昭和30年代以降、湾内の水質汚染など環境悪化に直面し、景観の魅力は半減している。いまの松島に求められるのは、積極的な環境改善策で観光地としての好感度を回復させる取り組みだろう。世界遺産への挑戦は、その後でも遅くはない。

 県が登録を目指す世界遺産の名称は「松島―貝塚群に見える縄文の原風景(仮称)」。大小約260の島々が浮かぶ松島湾のほか、国宝の瑞巌寺本堂(松島町)や縄文時代の里浜貝塚(東松島市)などが対象だ。

 県は(1)縄文時代の風景が比較的保たれている(2)建造物は自然環境と調和し、優れた景観をつくり出している―と、一帯の文化的、美観的価値を解説する。

  目指すのが文化遺産といっても、中心となるのは、最大の観光資源である松島海岸と松島湾の自然景観だろう。その松島を抱える松島町の観光客数は1987年 の546万人をピークに減少し、2006年は371万人にとどまった。宮城県全域の観光客数はここ10年で逆に2割程度増えており、松島の低調ぶりが際立 つ。

 松島を訪ねると、湾内の水は濁り、遊覧船の船着き場付近にはごみが浮かぶ。「松島の景観に満足する観光客は昔に比べ少なくなった」。地元の観光業関係者が口にするのは厳しい現実だ。

  宮城県は松島の失地回復を図ろうと、1991年から「松島湾リフレッシュ事業」を展開。湾内のしゅんせつや下水道対策、海藻を利用した水質浄化対策などに 取り組んでいるが、県は05年に「湾内の低質環境や景観などに明確な効果が表れているとはいえない」との事業評価を出した。

 県が同年、 住民や観光客を対象に実施したアンケートでは、松島湾の水質、透明度について「汚い」「やや汚い」と答えた人の割合が7―8割に達した。このままの状態が 続けば、仮に世界遺産登録が実現し、世界中から観光客が押し寄せるようになっても、真の意味での名勝松島の復権は果たせないだろう。

 来年、宮城では大型観光宣伝「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」が展開される。「日本三景」の称号にあらためて誇りを持ち、足元の課題を見つめ直すきっかけにしたい。
2007年07月23日月曜日

【河北新報・河北春秋】

 プロ野球はあすから後半戦だ。ひいきチームが3位以内に入れるかどうかが興味の一つ。今年はセもパにあやかり両リーグで日本シリーズ出場権を懸け たプレーオフ「クライマックスシリーズ」がある▼「1位チームが日本シリーズに出られないなら、何のためのペナントレースだ」と導入に腹を立てたセの監督 がいた。が、せっかくしつらえられた舞台。おかげで3位入りに望みを託し続けられるファンがいる

 ▼ 後半戦にそんなことはないだろうけど、早々に「三強」が固まってしまったらどうだろう。興味は半減、どころか一気にさめそう▼こちら参院選の戦いは終盤を 迎えた。与野党どちらが非改選議席数を含め過半数を制するかが焦点の政治決戦は主舞台の「1人区」で最後の攻防が続く。一方で、どうも盛り上がりに欠ける 選挙区がある。応援に入る各党の大物もちらほらという「2人区」だ。東北では宮城と福島

 ▼このところ自民、民主が議席を仲良く分け合う 傾向にある。すみ分けのための選挙区でもなかろう。まして政権を争う「二強」ならば改選2議席独占を狙う戦術と気概が欲しいものだ▼かつて「一党独裁」の 観もあったプロ野球界が「ファンあっての球界」と原点に返り制度を改めた。各球団は戦力補強に力を注ぐ。政界も見習ってはどうか。

2007年07月23日月曜日


【京都新聞・社説】

参院選終盤へ  政策論争、もっと熱く

 自民党に逆風、民主党に参議院第一党を狙う勢い-。共同通信社が十九-二十一日に実施した参院選の世論調査によると、そんな全国情勢の傾向が浮かび上がった。
 年金記録不備や、赤城徳彦農相の事務所経費など「政治とカネ」の問題などが自民党への逆風になっているのだろう。
 今選挙の最大の焦点は、与党の自民、公明両党が非改選議席を含め過半数を維持できるかにある。同調査からはかなり厳しい情勢がみてとれよう。
 とはいえ、どの政党に投票するのか、だれに投票するのか、決めていないとする有権者は約四割(京都33%、滋賀39%)にのぼり、まだまだ流動的だ。
 与党が大幅に議席を減らした場合は、政権交代や政界再編といった「政局」に発展する可能性もある。
 各党は選挙最終盤に向けて、年金問題をはじめ山積する重要課題について、もっと具体的な言葉でビジョンを有権者に明確に語るべきだ。
 有権者に最も関心が高いのは、やはり年金だ。
 京都新聞社が十九日から三日間、京滋の有権者を対象に実施した世論調査では、京都では35・7%、滋賀でも40・0%の有権者が、重視する政策に「年金などの社会保障」をあげた。
 各党とも、年金記録不備問題への対応についての主張は目立つが、年金制度をどう再構築するのか、消費税の扱いも含め財源をどう確保するのか、といった根本問題についての論争は必ずしも歯車がかみ合っていない印象をぬぐえない。
 他党の非難合戦に終わることなく、各党は有権者にわかりやすく、具体策を明らかにしてもらいたい。
 京都新聞社の今回の調査では、「重視する政策」で、年金に次いで関心が高かったのは、京都では景気対策で14・5%を占めた。滋賀では格差社会の是正で14・6%だった。
 停滞する地域の経済状況や、格差の進行が依然として深刻であることがうかがえるといえよう。
 景気回復の恩恵を享受できず、置き去りにされる人たちをいかに救済していくのか、各党はさらに踏み込んだ対策を示すべきだ。
 年金問題だけでなく他にも争点となる重要案件がめじろ押しだ。
 安倍晋三政権は、先の国会で国民投票法を成立させ、今回の自民党の選挙公約でも三年後の国会で「憲法改正案の発議をめざす」としており、忘れてはならないテーマだ。
 教育再生や税制のあり方、地方分権、農業政策などついても、もっと詳細な議論を聞きたい。外交政策に至っては、きわめて論争が低調だ。
 二十九日の投票日まで、あと六日。有権者の心に届く、熱い政策論争を展開してもらいたい。

[京都新聞 2007年07月23日掲載]

コムスン問題  介護保険制度も見直せ

 訪問介護最大手コムスンの事業譲渡について、複数の事業者に分割譲渡する方向が強まっている。政府、与党の意向を受けた方針転換だ。
 不正への厳しい対処と、サービス利用者保護の両面から問題解決を図る必要がある。
 同時に、コムスン問題は国の介護保険制度の課題を浮き彫りにした。制度の根幹にかかわる見直しも急ぎたい。
 コムスンの親会社であるグッドウィル・グループは、介護保険事業からの全面撤退を決めた六月以降、事業の一括譲渡の方向で検討していた。
 しかし、“第二のコムスン”発生を恐れる厚生労働省や、民間大手企業の不祥事続発に不信感を抱く与党の意向も受け分割譲渡に方針転換したとみられる。
 介護保険制度改正で、二〇〇六年四月から市町村の役割が強まったことも関係していよう。行政の目の届く範囲で、事業が行われるのは望ましい。
 一方、分割譲渡で心配されるのは、経営面で採算がとりにくい部門の引き受け手がなくなるのでは、という点だ。特に夜間の訪問介護は状況が厳しい。
 共同通信が都道府県を対象にアンケート調査した結果では、少なくとも全国五十四の市町村で、コムスン利用者が深夜帯の訪問介護や訪問入浴介護などのサービスを受けられなくなる恐れがあることが明らかになっている。
 こうした“介護難民”の防止はコムスンの義務だし、本年度中はサービスを継続し、他の業者への移行を円滑に進めるよう行政の指導を受けている。
 そうではあるが、コムスンに見切りをつけてやめる従業員も多かろう。現実的な対応策も考えておく必要がある。
 事業譲渡では、訪問介護サービスより有料老人ホームなど施設サービス事業の譲渡希望が多い。これは介護保険制度そのものの問題点を反映している。
 介護保険制度は在宅ケアを大きな柱として発足したが、当初から施設ケアの人気が高く、在宅ケアでは事業者の不正やケアの中身をめぐる課題が噴出した。そのため国は介護区分や報酬、利用者負担などの手直しを続けてきた。
 だが現行制度は予算面を重視して各サービスの介護報酬を低く定めすぎたため各方面にしわ寄せが及んでいる。
 特に在宅ケアの場合は、ヘルパーたちの不規則労働と低賃金の上にかろうじて成り立っている状況だ。ケアマネの独立も難しい。これらを改善しない限り制度の健全な発展は望めない。
 厚労省はこのほど、介護保険事業者の規制見直しなどを検討する有識者会議の初会合を開いた。秋に報告をまとめ、来年の通常国会に介護保険法の改正案を提出する方針という。
 一部の改変では不十分だ。現行制度の問題点を洗い出し、見直し案を示してもらいたい。参院選を戦っている各党も、もっとこの問題を論じてもらいたい。

[京都新聞 2007年07月23日掲載]

【京都新聞・凡語】

携帯電話の落とし穴

 京への修学旅行生だろうか、市バスの中で女子中学生二人が話していた。携 帯電話のメールを終えた生徒に、もう一人が尋ねた。「相手は(中学生だと)知っているの」▼その答えに驚いた。「ぜーんぜん。同じ大学生と思っている。遊 んでやっているの」。おいおい、その相手だって本当に大学生の男の子かどうか分からないよ。声をかけようと思ったら、笑い声を残し、下車してしまった▼携 帯電話は確かに便利で、普及率はうなぎのぼりだ。内閣府が先ごろ発表した調査結果によると、小学生の使用率は31・3%、中学生は57・6%で半数を超 え、高校生は96%とほぼ全員が持っていた▼だが、使い方を間違えると、落とし穴も待っている。昨年の出会い系サイトに関係した犯罪で、被害にあった約千 四百人の大半は十八歳未満の女性だ。中学生が25%を占め、わずかだが小学生もいた ▼事件に巻き込まれなくても、有害サイトに接続したり相手の顔が見えないため、きつい言葉になって知らぬ間に傷付けてしまう。いつも、だれかとつながって いないと不安になるケースもあるという▼多感な時期だ。生身の人間がぶつかりあう中で、はぐくまれる友情や、覚える人と人との間合い。そんな機会が奪われ ていないか心配になる。きょうは文月(ふみづき)ふみの日-。親しい人に手紙でも書き、ゆっくり考えようよ。

[京都新聞 2007年07月23日掲載]


【朝日・社説】2007年07月23日(月曜日)付

公務員制度―改革の全体像を争え

 安倍首相は選挙の遊説で、社会保険庁批判と重ねあわせて、公務員制度改革を叫んでいる。

 決めぜりふは「押しつけ的な天下りを根絶する」だ。そのために国会を延長し、野党の抵抗を押し切ってまで国家公務員法を改正したと胸を張る。

 だが、待ってほしい。実態はそうなっているだろうか。

 改正法の柱は、官民人材交流センター(新人材バンク)をつくることだ。そこで天下りを一元管理し、各省のあっせんを廃止するという。

 しかし、その制度設計はこれからだ。現時点ではまだ、新人材バンクがうまく機能するとは言い切れない。政官業のもたれ合いの構図に手をつけずに、予算や権限を背景にした押しつけ的な天下りをなくせるのか、疑問も残る。

 一方で、離職前の5年間に関係した民間企業への「退職後2年間は天下り禁止」という制限をなくす。これでは天下りを広げるだけになりかねない。

 さらに、独立行政法人などから企業への再就職も規制されない。再就職先を転々と歩く「わたり」は野放しのままだ。

 これで改革を前進させたと力説されても、戸惑ってしまう。

 公務員制度改革の先が長いことは、自民党も認めている。だから、公務員の人事制度全般に関する基本法案を来年の通常国会に出す、と公約に書いている。

 それならばなぜ、天下りに関する法改正だけを強引に急いだのか。

 公務員制度を変えるには、新しい制度の全体像を示し、そのなかで天下りの問題も解決するのが筋だった。順序を逆にしたことで、内容も中途半端になったと言わざるを得ない。

 いまや護送船団方式の業界指導や、画一的な国土開発は時代遅れになった。それらを主導してきた官僚組織も、時代にふさわしく進化しなければならない。

 優秀な人材の官僚離れが指摘されるなか、政治には、新しい時代のあるべき公務員像を描く役割が求められる。

 それなのに、長年の懸案である公務員の労働基本権について、自民党の公約は今回も「幅広く検討する」と言うだけだ。方向性すら示していない。

  民主党は天下りの原因として、早期退職勧奨をあげ、各省のあっせんとともに禁止するとマニフェストに書いた。企業への再就職禁止期間も「離職後2年間から 5年間に拡大」し、特殊法人などからの天下りも規制する。天下り禁止への姿勢は明確だが、肝心の新しい公務員像を提示できてはいない。

 たとえば、政権交代が現実味を帯びるなか、公務員と政治との距離はどうとるのか。キャリア組とノンキャリア組の選別採用を続けるのか。実績・能力主義を導入し、専門職など定年まで働ける制度を具体的にどう設けるのか。

 こうした現実の課題への答えが、この参院選で各党に求められている。

原発の火事―119番頼みではダメだ

 原子力発電所の防火力がこれほど貧弱だとは、近くで大地震が起きなければ露見しなかったのだろうか。

 1週間前の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発で火事が起こり、消火が遅れた。これを重くみた経済産業省は、電力会社や関連企業に原子力施設の火災に対する備えを報告させた。

 その報告などから浮かび上がった現実は、驚くべきものだ。原発を運転する10社では、化学消防車をもっている会社や消防署へのホットラインを備えている会社が、半数程度にとどまった。

 専従の消防隊を24時間常駐させているところはなかった。

 柏崎刈羽原発では出火直後、モクモク立ちのぼる黒煙がテレビ映像で流れた。このとき、消防車が集結している様子がないことに不安を感じた人も多い。このままだと、同じ光景がほかの原発でも再現されるかもしれないのである。

 今回は鎮火までに約2時間かかった。背景に、地震ならではの事情があったこともわかってきた。

  この原発にはホットラインがあるのに使えなかった。設備のある建物が被害を受けて、中へ入れなくなったからだ。119番がつながったのは、発見から12分 後。だが、地元の柏崎市消防本部は地震そのものへの対応で大わらわだったようだ。「まず自衛消防隊で」との反応が返ってきたという。

 原発の職員らが消そうとしたが、消火用の配管が地震で壊れ、役に立たなかった。結局、1時間以上たってから到着した地元消防が消し止めたのである。

 地震のような自然災害は、地域全体を襲う。あちこちで消火や救出の活動が必要になる。消防署の回線は混雑するし、橋や道路が壊れて消防車が来られなくなるかもしれない。

 だが、原発敷地内の火事はすぐ消し止めなくてはならない。そうでないと火が配線や配管を壊しトラブルが連鎖して、放射性物質が大量に放出される原子力災害へ発展する恐れもあるからだ。

 だから、自力の消火体制がぜひ求められる。119番頼みでない消火力をもつことが急務だろう。

 柏崎刈羽原発の地震被害は国際原子力機関(IAEA)の関心も呼び、エルバラダイ事務局長が調査団を出す用意を明らかにした。被害情報を国際的に共有するねらいだという。新潟県の泉田裕彦知事は政府に対して、調査を受け入れるよう求めた。

 原発のトラブル隠しがかつて横行していたことが明らかになったとき、一つの反省がうまれた。小さなミスなどのヒヤリ情報は進んでおおやけにして、その教訓を世界中の原子力関係者で分かち合うことが大切という考え方だ。

 今回、消火が遅れたいきさつは、地震による致命的な原発災害を防ぐことに役立つだろう。この視点に立って、IAEAの調査に政府は協力すべきだ。

【朝日・天声人語】2007年07月23日(月曜日)付

 梅雨明けは九州付近で足踏みしているが、きょうは二十四節気の大暑。暦のうえでは暑さも盛りの時期である。〈兎(うさぎ)も片耳垂るる大暑かな〉と芥川龍之介は詠んだ。動物も猛暑にうんざり。ユーモラスな情景が、まぶたに浮かぶ。

 そして明日は、芥川がみずから命を絶った「河童(かっぱ)忌」だ。今年で80年になる。残された手記によれば、「ぼんやりした不安」にさいなまれていた。今なら「うつ病」と診断されたのかもしれない。ともあれ人気作家の35歳での早世は人を驚かせた。

 芥川と同じ30代で、職場の重圧から心や体を病む人が、近年増えている。厚生労働省によれば、心の病で労災認定された人が、昨年度は過去最多の205人を数えた。4割を30代が占めるというから、その突出ぶりに驚く。

 体力気力がかみ合って、仕事も板につくのが30代だろう。だが「働き盛り」は「こき使われ盛り」でもある。男性の2割強が「過労死ライン」を超す長時間残業をしている。そんな調査結果もある。成果主義の荒波も容赦はない。

 ストレスゆえか、30代による暴行事件も急増中だ。逮捕・書類送検は10年で5倍に。いまや「主役」が10代と入れ替わった。街頭などで、カッとなって暴行するケースが多いらしい。キレやすい30代像が、数字の向こうに浮かんでいる。

 皮肉屋の芥川は人生を一箱のマッチに例え、「重大に扱うのはばかばかしい。重大に扱わなければ危険である」と言っている。ストレスという火種を上手に鎮める術(すべ)が、30代ならずとも大切な今の時代である。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 経済の姿 どう活力を保っていくのか

 安倍晋三首相は今回の参院選を「美しい国」の実現や戦後レジームからの脱却に向けた諸政策を問う好機ととらえている。このことは経済政策にも貫徹している。その一方で、成長力戦略を前面に打ち出し、国際競争力の回復を課題としている。

 美しい国という言葉に示される、古き良き時代への情緒的な憧憬(しょうけい)は、当然のことながら、経済政策の柱である成長主義と衝突する場面が出てくる。

 経済分野における戦後レジームからの脱却は、行政による経済への介入の最小化が狙いである。具体的政策としては、公務員改革や規制改革の推進、市場主義の徹底ということである。これまた、美しい国とぶつかる。古き良き地域社会は小さな政府では維持できないからである。

 このことに示されているように、安倍自民党が政権公約に盛り込んでいる経済の姿は矛盾に満ちている。

 小泉純一郎前政権は、過去の創造的破壊を目指した。構造改革という名の新自由主義的政策である。努力したものが報われる社会では、一定の格差は是認した。

  安倍政権はどうか。改革路線を引き継いでいることは公言している。成長戦略も供給サイドを強化すれば、おのずと需要も出てくるという小泉前政権以来の新古 典派流政策である。需要不足へのとりたてての施策は打たないということだ。地方分権もこれまでの施策に示されているように、抜本的な財源移譲は行われてい ない。

 その一方で、美しい郷土を作るという。地域経済再生も公約している。いずれも、地域社会での公共サービス維持なしには実現不可能である。民間や市場に任せていればうまくいくとも思えない。やっぱり、公共投資はばらまくのかということになる。

 つまるところ、安倍自民党が提示しているのは、美しい国という古い日本とグローバル化に対応した市場主義が混在している矛盾を内包した経済像である。

 そうみてくると、民主党が描く経済の姿を大きな政府と批判しても、説得力に乏しい。

  民主党は基礎年金全額を国費で賄うことや、教育への財政支出の5割増、中小企業対策の充実などを掲げている。いずれも財源が必要だ。社会サービスの充実に は人的手当ても欠かせない。財源対策として、行政のムダをなくすことや国家公務員の総人件費20%削減を提案している。

 くらしを各論の冒頭に置いていることは、自民・公明連立下での負担の増加や社会保障政策へのアンチテーゼであろう。財源手当てがどれだけ現実的か、額として十分なのかは検証が必要だ。

 これを大きな政府と呼ぶのか、社会サービスを過不足なく供給する政府とみるのかは、一方的に判断はできない。国民がどうみるかが第一だ。少子高齢化が進む中、経済の姿は大きな焦点だ。

毎日新聞 2007年7月23日 東京朝刊

社説:暴力団対策 警察の情報収集力が鍵だ

 暴力団の脅威が広がっていることを受け、警察庁は 今年の警察白書で「暴力団の資金獲得運動との対決」と題する特集を組み、摘発に本腰を入れる姿勢を打ち出した。長崎市長射殺、愛知県長久手町の立てこもり など最近の発砲事件にも、暴力団が介在した。白書の指摘通り、取り締まりの徹底は喫緊の課題である。

 白書は、暴力団が賭博や覚せい剤密 売、恐喝、ノミ行為などの伝統的な資金獲得手法だけでなく、用心棒代の取り立て、民事紛争への介入、企業・行政対象暴力などで資金を調達してきた経緯を概 観している。その上で最近は公共事業や証券市場にも食い込み、金融ブローカーらと共謀してインサイダー取引、株価操作にも手を染めて上場企業の活動をも侵 食している、と警告している。

 全国の建設業者3000社を対象にしたアンケートの結果も掲載しており、3割強が「暴力団と関係を持つ業 者がいると聞いた」と回答するなど、暴力団が建設業界に巣くっている状況が浮かび上がった。「最近1年間に部外の者から不当要求を受けたことがある」と答 えた業者も約3割に及び、関連企業などを使った暴力団の資金獲得活動も執ような様子だ。

 白書はまた、暴力団の間でも格差が広がり、二極 分化が進んでいると分析している。いわゆる「経済やくざ」として潤沢な資金を手にした暴力団員がいる一方で、伝統的な資金獲得活動から抜け出せず、資金に 窮する暴力団が目立っているためだ。来日外国人の犯罪グループと結託して現金強奪などの凶悪事件を起こしたり、暴走族の少年らから金銭を吸い上げるケース も確認されている。

 当然のように白書は、多種多様化する資金獲得活動にメスを入れ、暴力団の壊滅を図らねばならない、と訴えている。だ が、現実は壊滅にはほど遠く、暴力団の構成員、準構成員は約8万5000人を数え、10年前に比べ5000人近くも増えている。92年の暴力団対策法の施 行後、暴力団が活動を潜在化させたことが摘発を難しくさせている面も見逃せない。

 暴力団があらゆる経済活動から排除される仕組みを社会 全体で構築する必要がある、と白書は強調する。確かに、暴力団に迎合したり、利用しようとしたりせず、誰もが毅然(きぜん)たる態度で暴力団に立ち向かう ことが大切だ。だが、警察が精力的にけん引しない限り、対策の実効が上がるはずはない。

 従来の取り締まり手法も問い直すべきだろう。銃器対策にしても、国内にどれほどの銃器が出回っているか見当もつかない状態では、具体的な対策の練りようもない。毎年、氷山の一角にもならない500丁程度の押収量に甘んじてきたのも、おかしな話である。

 銃器や薬物の事件捜査はもちろん、金融犯罪でも、ものを言うのは摘発に必要な情報だ。この際、小手先の施策だけでなく、情報収集活動の活性化、専門捜査員の養成など基礎的な対策から充実させ、粘り強い捜査活動で暴力団を壊滅に追い込まねばならない。

毎日新聞 2007年7月23日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:ミャンマー出身の男性、ミョウさん(38)は…

 ミャンマー出身の男性、ミョウさん (38)は今春から、兵庫県の関西学院大で学んでいる。母国の大学に在学中、民主化運動にかかわり、91年に来日し、05年に難民認定を受けた。初め名前 は公表していなかったが、先月20日の「世界難民の日」を前に会見して、「日本にも難民が身近にいることを知ってほしい」と訴えた▲入学できたのは、関学 大が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と提携して、UNHCRが推薦する難民を毎年2人まで受け入れる制度を新設したからだ。難民学生は学費免除 で、奨学金も支給される。ミョウさんとベトナム出身の男性の2人が第1期生に選ばれた▲UNHCRによると、02年から減少していた世界の難民数は昨年、 イラク情勢の悪化で増加に転じ、約1000万人に達した。戦争や紛争、政治的弾圧などで故郷を追われた人々には過酷な暮らしが待つ。2人は極めて幸運な ケースだろう▲日本で難民条約が発効して、今年で25年になる。日本の難民認定は厳し過ぎると批判が強かったが、一昨年の入管法改正で透明性は高まった。 それでも難民の受け入れ数は欧米諸国に比べてまだ少ない。定住後の支援体制も不十分だ▲背景には、難民に対する関心の低さがある。だが、グローバル化が進 み、国際貢献の重要性が増す中、日本だけが知らん顔ではすまされない。難民の現状とどう向き合うか。大切なのはミョウさんが求めるように、一人一人が身近 な問題として考えることではないか▲ミョウさんは「学んだことを母国の貧困問題解決に役立てたい」と夢を描く。難民奨学制度は他の大学でも導入の動きがあ るという。難民が夢を持ち、その実現に向けて進める制度がもっと広がるよう、後押ししていきたい。

毎日新聞 2007年7月23日 東京朝刊


【読売・社説】

格差 是正へ実効ある政策を論じよ(7月23日付・読売社説)

 国民生活の弱い部分に目を凝らして、必要な施策を講じるのは、政治の最も重要な役割の一つだ。実効性と実現性を伴う確かな政策が求められる。

 戦後最長の景気拡大が続いているのに、多くの人にとって、実感は薄い。景気回復の恩恵が、大企業を中心にした都市部の企業にとどまり、家計や地方への波及が遅れているためだ。

 所得格差や、大企業と中小企業、都市と地方の格差への対応が、参院選の焦点の一つになっているのは当然だろう。

 「成長を実感に」を掲げた自民党は、経済成長により国民生活を底上げすることで、格差解消を目指す姿勢だ。「人口減少下でも実質2%台半ばの経済成長を目指す」とし、若者の雇用機会の確保や中小企業の活性化、地域再生の推進策などを公約に列挙した。

 公明党も、若年雇用対策の推進などを打ち出した。

 民主党は、「生活が第一」を掲げて、より直接的に格差を解消すると訴えている。現在は全国平均で時給673円の最低賃金を、3年をめどに1000円に引き上げ、中小企業予算は3倍に増やすなどとしている。農家の生産コストを補償する制度も作るという。

 最低賃金の大幅引き上げを主張するのは、共産党、社民党も同様だ。

 格差対策は国民の生活に直接、影響するだけに、選挙で支持を訴える重要なポイントになる。だが、公約である以上、経済政策全体の中での位置づけや、財政政策などとの整合性も問われよう。

 日本経済の最大の課題は、少子化の下でいかに活力を維持していくかだ。格差対策にも、経済をどう成長させ、その果実をどう配分していくかという、成長戦略の一環としての視点が必要になる。

 各党の主張は、その点で踏み込み不足の感が否めない。

 経済成長の目標達成に必要な生産性の向上や、新産業の育成をどう実現していくのか。明確な工程表を示せなければ、成長による格差解消という戦略の信頼性にも疑問符が付く。

 中小企業や農家といった弱い部分への支援は必要だ。だが、日本経済の将来像があいまいなまま公的支援を大盤振る舞いしたのでは、補助金頼みの産業構造を温存し、かえって成長を阻害することになりはしないか。

 地方の再生には、地方分権の推進で、自治体のやる気を引き出すことがカギとなる。だが、その裏付けとなる税源についての論議は少ない。

 これらの点をもっと掘り下げた政策論争をこそ、有権者は期待している。
(2007年7月23日1時43分  読売新聞)

テレビの録画 コピー規制は緩和した方が良い(7月23日付・読売社説)

 デジタル放送のテレビ番組はもう少し録画・複製がしやすくても、良くないか。

 現在は、録画装置の本体に記録した後は、1回しかDVDにコピーできない。本体の元データはコピー後に消える。

 好きな番組を1枚のDVDにまとめて旅先で見ようとしても、すでにDVDに移してあればできない。

 「コピーワンス」と呼ばれるこの制約について、総務省の委員会が緩和策をまとめた。DVDへのコピーを9回まで許容する。本体への録画を含め、コピーは計10回可能になる。DVDからの孫コピーは、今と同様、できない。

 視聴者には、朗報だ。

 制約には理由があった。デジタル的にコピーすると画質は劣化しない。海賊版が次々に作られては著作者やテレビ局はたまらない。

 だが、副作用も深刻だ。DVD付き録画装置の市場は盛り上がらない。次世代DVDの規格が二つに分裂したこともあるが、コピーワンスは重い足かせだ。緩和策に沿って、録画装置のメーカーなどは、視聴者の利便性が高まるよう早急に対応してほしい。

 政府は、地上アナログ放送を2011年に完全停止する方針だ。携帯電話の普及で不足している電波を、テレビのデジタル化で効率的に利用することを目指している。そのためには、デジタル受信機に買い替えを促すのも急務だ。

 緩和策を話し合った総務省の委員会では、アナログ波停止に反対、という意見まで出た。デジタル放送には高画質、高音質、文字情報の付加といった利点もある。今回の緩和策と合わせて、理解を広める取り組みを強化せねばならない。

 ただ、コピーの緩和が、著作者や番組制作者たちの権利を侵害する事態を招くのは好ましくない。きちんと対価が支払われる制度の整備が欠かせない。

 録音・録画装置やDVDなどの記憶媒体は現在、コピーを認める代わりに「私的録音録画補償金」が上乗せされ、販売されている。この補償金が、メーカー経由で著作権者たちに渡っている。

 著作権法を所管する文化庁は、デジタル放送についても、この制度を整備してコピー緩和を後押しすべきだ。

 欧米諸国は、コピーに強いデジタル技術の特徴を積極活用している。フランスは、コピーの自由を広げる一方、高額の私的録音録画補償金を課している。著作物の流通を加速させて、収益性を上げ、創作現場の意欲を高める狙いだ。

 世界の流れをにらんだ著作権制度が求められる。
(2007年7月23日1時44分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月23日付 編集手帳

 日本で「八」は、末広がりの字形から縁起の良い数 字とされてきた。では、漢字の本家、中国の吉数は? 答えはやはり「八」だが、理由がまるで違うところがおもしろい◆中国語で「財をなす」「金持ちにな る」を意味する「発財」の「発」と「八」は、広東語では同音。商才にたけた広東や香港の人々が「八」をとりわけ好んだことから、吉数の代表格になったよう だ◆北京五輪が1年後に迫ってきた。開幕は2008年8月8日午後8時(現地時間)と、8が四つも並ぶ。その効用でもあるまいが、ホテルの建設ラッシュな ど、北京は五輪特需に沸いている◆ただし、ルール違反、モラル欠如の「発財」主義はもってのほかだ。有毒物質を含む食品や日用品が中ら大量輸出され、世界 中で問題になっている。北京での「段ボール入り肉まん」報道もねつ造だった。視聴率稼ぎという点で、「発財」主義と同根と言えるだろう◆今年春に北京市は 毎月11日を「列に並ぶ日」に制定した。「11」は人が2列に並ぶ様だ。駅や停留所で割り込まない。痰(たん)は吐かない…。五輪開催国にふさわしいマ ナーを市民に浸透させるのだという◆1988年のソウル五輪は、韓国国内では88(パルパル)五輪とも呼ばれ、モラルやマナーが向上した年として記憶され ている。中国の08年8月8日は――。
(2007年7月23日1時44分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】中教審 道徳充実へ真剣な議論を

 次期学習指導要領について検討する中央教育審議会の最近の議論には首をかしげたくなる。徳育を新たな教科とする政府の教育再生会議の提言に、積極 姿勢がみられない。徳育を教科とし、教科書をつくることは道徳教育充実の具体策として有効だ。中教審はこの提言を真剣に議論すべきだろう。

 再生会議は第2次報告の柱として「徳育を教科化し、現在の『道徳の時間』よりも指導内容、教材を充実させる」と明記した。

 これに対し中教審教育課程部会の梶田叡一部会長は、講演で道徳を正規教科とせず教科書検定も行わないとの見通しを示した。中教審は指導要領改訂の方針について今秋にも中間まとめを出す予定だが、徳育教科化の具体的な議論が進んでいないのは残念だ。

 確かに道徳教育充実について中教審はすでに議論してきた。体験活動を通し子供たちの社会性、感性を養うことなど再生会議の提言に盛り込まれた多くは中教審の提言とも共通する。

 しかし、道徳の授業は形骸(けいがい)化が指摘されながらも改善されていない。学校や教師の指導力による差が大きく、道徳の授業がない学校さえある。再生会議が教科化に踏み込んだのも、こうした実態を変えるねらいがある。

  現在の道徳副教材などをみると、工夫されているが子供たちの心をとらえ、生き方の手本となるような教材として物足りない。再生会議は「多様な教科書と副教 材をその機能に応じて使う」とし、ふるさとや国内外の偉人伝、古典などの活用を例示している。大いに参考にしてもらいたい。

 道徳教科書の検定に対しては「価値観の押しつけ」など他の教科以上に反対があるが、検定の役割は誤った記述を直し、子供の成長過程を考えバランスのとれた教材作成を促すものだ。

 中教審の山崎正和会長が「個人の意見」として「道徳教育はいらない」などと発言したが、家庭や地域の教育力低下が懸念されるいま、学校の道徳教育充実は急務だろう。中教審では一部委員から山崎氏の発言を疑問視する意見もでている。

 中教審では今後、道徳教育について集中審議の機会を持つとしている。再生会議の提言をふまえ、教材や指導内容充実に向け議論を深めてほしい。

(2007/07/23 05:03)

【主張】中越沖地震 多くの課題を突きつけた

 新潟県柏崎市などで震度6強の揺れを観測し、多くの死傷者を出した中越沖地震から、1週間がたった。

 今も多数の被災者が、学校の体育館などで不自由な避難所生活を送っている。今回の地震からも、幾つかの課題や問題点が浮き彫りになった。今後の教訓として生かす必要がある。

 まず、評価したいのは政府、新潟県の地震への迅速な対応であろう。発生2分後には、首相官邸に官邸対策室が設置され、泉田裕彦・新潟県知事の自衛隊災害派遣要請も早かった。

 安倍晋三首相は、地震発生時は長崎市で遊説中だった。発生4分後に一報を受け、直ちに遊説を打ち切って帰京し、自衛隊のヘリで柏崎市に入り、被災者を激励した。

 野党などからは、「選挙対策もいいところだ。首相が行けば、受け入れ先は、地震で混乱しているところに、拍車をかけるだけだ」と冷ややかな見方もあるが、そうではあるまい。

 一国の指導者の迅速な対応は、不安いっぱいの被災者や国民に安心感を与える。ただ、地元は大げさな警備態勢を避けるなどの配慮が必要だ。

 すべては、6000人以上の犠牲者を出した12年前の阪神大震災の教訓からである。この時は、村山富市首相(当時)への一報が遅れ、兵庫県の自衛隊派遣要請も大幅に遅く、政府の危機管理能力の欠如を露呈した。

 また、全国からのボランティアや医師の派遣など支援体制はスムーズにいった。米国からはエアコン96台が新潟県に寄贈され、各避難所に配布された。米政府に謝意を表したい。

 数々の課題も残った。柏崎刈羽原発で火災が発生、ごく微量の放射性物質が漏出した。全国に原発を抱えるわが国にとって、原発の安全性、耐震強化が急がれる。

 さらに、亡くなった10人全員が70歳以上の高齢者で、避難所で体調不良を訴えるお年寄りも続出している。災害弱者をどのように救助するかも今後の問題点である。一刻も早いライフラインの復旧対策、古い木造建築の耐震強化など、改善すべき点は多い。

 地震はいつ、どこで起きるかわからない。その時に備え、被害を最小限に抑える日ごろの準備と心構えなど地震対策に万全を期したい。

(2007/07/23 05:02)

【産経抄】

 「盆踊りの本来の意味は何か」「なぜ進物に紐(ひも)をかけるのか」。今年上半期の新書部門で1位になったのは、こんな素朴な疑問にわかりやすく答えた『日本人のしきたり』(青春出版社)だった。

 ▼実は4年前に発売されていて、今年に入って突如ベストセラーになった珍しいケースだ。宮内庁書陵部で首席研究官を務めた編著者の飯倉晴武さんも首をかしげているらしい。

 ▼ 衆議院本会議中に携帯電話を操作する議員、「パチンコで負けたから」と子供が通う保育園にお金を借りに来る親、家庭ゴミであふれる公園のゴミ箱。小紙連載 の「溶けゆく日本人」には、目を覆いたくなる社会の劣化ぶりが描かれていた。揚げ句の果てに年金記録の記載漏れの発覚である。

 ▼日本人の振るまいが醜くなったのは、効率や便利さばかりを求めて、年中行事や伝統文化をないがしろにした結果ではないのか。そんな危機感が追い風になったと小欄は見る。きょう発売の『別冊正論 “世界標準”は日本人を幸福にしない』も、問題意識は同じだ。

 ▼小泉純一郎前首相の構造改革に代表される平成の「改革」の功罪をさまざまな角度から検証している。一時は旗手に祭り上げられた村上世彰氏らの境遇をたどるまでもなく、世論や裁判所の判断を含めて潮目が変わった。では、日本にふさわしい改革とは何か。

 ▼ その答えのひとつを、サッカーアジア杯準々決勝で、強豪オーストラリア相手に懸命に走り続ける日本代表チームのなかに見つけた。東京五輪時代から日本を知 るオシム監督は、当時に比べて豊かになりすぎた今の日本人が、勤勉さを失っているように感じているらしい。監督のいうサッカーの「日本化」とは、かつての 美質を取り戻すことにほかならない。

(2007/07/23 05:01)


【日経・社説】

社説1 教育の未来像を示し有権者にこたえよ(7/23)

 教育をめぐる課題が山積しているのに、選挙戦では議論が低調だ。特効薬のない問題だけに下手に争点化したくないとの思惑もあろうが、各党はいま一度論戦を盛り上げ、有権者の関心にこたえてもらいたい。

  マニフェスト(政権公約)をみる限り、与野党とも教育を軽視しているわけではない。安倍晋三首相は教育改革を最重要課題と位置付け、これを受けて自民党の マニフェストは「教育再生」を強調している。関連法改正が成った教員免許更新制などの「円滑な実施」や「確かな学力と規範意識の育成」をうたう。

 民主党は公立高校の授業料無料化や、教育への財政支出の5割増加などを打ち出した。「義務教育での国の責任を明確にする一方、学校の運営は地方自治体が責任を持つ制度に改める」として、教育行政に対する国と地方の役割分担にも触れた。

 残念なのは、こうした公約に具体性が乏しいうえ、両党の間で議論がかみ合っていないことだ。

 自民党が「円滑な実施」を約束する教員免許更新制は、実際の制度設計は文部科学省に委ねられており、本当に教師の資質向上に役立つのかどうか不透明だ。学力向上や規範意識の育成も掛け声先行の印象が否めず、具体策がはっきりしない。

 民主党が掲げる公立高の授業料無料化は聞こえのよい公約だが、財源をどう手当てするのかあいまいだ。地方自治体が学校運営に責任を持つとした点は注目に値するものの、教育委員会のあり方や国の責任との兼ね合いなどが説明されていない。

 互いに漠然とした政策のイメージを並べ、言いっ放しに終わるのであれば有権者は戸惑うばかりだ。選挙戦は残り少なくなったが、それぞれの描く改革の中身をもっと分かりやすく示すことができるはずだ。

 そこで求められるのは、学力低下やいじめなど個々の課題への対策だけではない。文科省による護送船団方式の教育制度をどう見直すかといった骨太の議論も期待したい。

 官僚の統制を緩めて現場の裁量の幅を広げ、学校運営や教育内容、方法を多様化する――。経済界を含め、そうした分権改革を唱える声は少なくない。その是非を論じ合うことも必要ではないか。

 およそ教育問題にすっきりした「解」はない。しかし有権者の審判を仰ぐ各党はそこから逃げることなく、堂々と未来像を示してほしい。

社説2 政治資金、公開方法の改善を(7/23)

 参院選の大きな争点の1つは「政治とカネ」 の問題だ。自殺した松岡利勝前農相の「何とか還元水」をはじめ、与野党を通じて、不明朗な政治資金の処理が相次いで表面化したのだから、関心が高まるのは 当然だろう。前通常国会で改正したばかりの政治資金規正法の再改正が議論になっているが、各党にまず取り組んでもらいたいのは、政治資金収支報告書の公開 方法の改善だ。

 赤城徳彦農相の政治資金の処理で新たな問題が発覚した。関連政治団体が03年までの7年間、東京都内の雑居ビルから退去 済みだったにもかかわらず、この場所を「主たる事務所」としたまま事務所費などを計上していた。農相は「事務所を移転した後、会計責任者が届けを怠ってい た」と釈明した。

 農相をめぐっては別の政治団体が茨城県筑西市の実家を主たる事務所にしながら巨額の経常経費を計上していたことが判明 している。塩崎恭久官房長官の事務所費についても共産党は「多額の使途不明金がある」と追及している。「政治とカネ」の問題を契機とした政治不信の高まり は、憂うべき事態だ。

 生活費を除くと、政治家の財布は3つに大別される。政治家に1つだけ認められている資金管理団体、その他の政治団 体、政党支部の3つである。それぞれの収支報告書の提出先は総務相と都道府県の選挙管理委員会の2つに分かれている。しかも各団体間で複雑な資金移動があ るから、1人の政治家の政治資金の全体像を解明するのは容易でない。

 政治家個人への企業・団体献金が禁止されてから、政党支部がその受け皿になった。政党支部の収支報告書の提出先は都道府県選管だが、そこからカネが移る資金管理団体は総務相の所管が多い。わざとわかりにくくしているとしか思えない。

  少なくとも国会議員については、関連する団体の収支報告書の提出先を総務相に統一し、インターネットで直ちに詳細を公開するぐらいの透明性が求められる。 各団体の収支を一覧できるようにすれば、監視の目が強まる効果が期待できるからだ。収支報告書の公開方法の改善についても、与野党間で活発な議論を展開し てもらいたい。

【日経・春秋】(7/23)

 選挙は記者の血をわかせる。参院選は1人区の動向が焦点というので西日本のある選挙区を取材した。与党現職にふたりの野党候補が挑む構図だが、ここで負けるようなら与党は1人区で総崩れになる、とプロが見る保守王国だからだ。

▼ この県では既に鬼籍に入った元首相が長い間、影響力を誇った。与党の候補は元首相と同じ町の出身だ。野党候補のひとりは衆院議員の長女。かつて元首相の派 閥にいた父親は、小京都と呼ばれる城下町の旧藩主の子孫だから、昔なら「お姫さまご出馬」の大事件だ。さすがにそんな声は地元でも聞こえなかった。

▼ お姫さまが売りではないのは「抵抗勢力」を掲げた主張でもわかる。一方、与党側も候補者だけでなく、元首相の側近で「参院のドン」とも呼ばれる地元実力者 も、小泉政権時代には抵抗勢力に近いとみられていた。過疎に悩む1人区の選挙運動の最前線――。地域振興策に限れば、違いは小さいようにも見える。

▼ 山中にある小京都を歩いた。選挙事務所をのぞいたが、運動員たちはポスター張りに出払っていた。平日のせいか、城下町の香り漂う通りに人影はなかった。 が、突然、自転車に乗った3人の若い女性観光客が目に入り韓国語が耳に響いた。格差を嘆く地域の生き残り策のひとつが国際化にある現実の断面を見た。


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2007年7月22日 (日)

7月22日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月22日朝刊)

[拉致問題]これでいいのか打開策

 この一年余りの間に、外務省の大使経験者や北朝鮮問題に詳しい防衛省の専門家、大学の国際政治研究者から、それぞれ別個に拉致問題について聞く機会があった。残念ながら誰一人として解決の道筋を示してくれず、解決の展望が見えないという否定的な声だけが共通していた。

 拉致問題をめぐる現在の状況は、ことほどさように厳しい。

 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の合間に開かれた日朝協議でも拉致問題の進展はなかったようだ。

 北朝鮮は、非核化に向けた「初期段階措置」として寧辺など国内の核施設の稼動停止・封印に応じた。これを受けて開かれた今回の首席代表会合は、核計画の完全な申告や無能力化など「次の段階の措置」をどうするかが主要な議題だった。

 会合は八月末までに五つの作業部会を開き、九月の本会合で「次の段階の措置」に関するロードマップ(行程表)をまとめることで合意した。履行期限の設定など目に見える形の具体的な進展はなく、当面の日程を確認するだけにとどまったわけだ。

  五つの作業部会の中には米朝国交正常化部会、朝鮮半島非核化部会などのほか日朝国交正常化部会が含まれている。この部会が、拉致問題を話し合う舞台となる が、「拉致問題の進展なくしてエネルギー支援なし」との方針を貫く日本側と、「核問題は解決済み」との基本姿勢を崩さない北朝鮮側との溝は深い。

 北京からの報道によると、「拉致問題」を持ち出した日本側に対し、北朝鮮側は「過去の清算」を持ち出し、平行線のままだったという。

 日朝協議がもたついている間に米朝の二国間協議が進み、日本側が置いてきぼりを食う可能性もある。実際、今回の首席代表会合でも米朝の接近ぶりが目立ったという。六カ国協議における日本の存在感は薄らぐ一方だ。

 キッシンジャー外交で米中が日本の頭越しに国交を正常化したあの悪夢を思い出すのは杞憂だろうか。

 作業部会が再び「拉致問題」と「過去の清算」の応酬の場になり、議論がそこにとどまっていれば、展望は開けない。

 安倍政権の強硬策が果たして効果的なのか。従来の路線を踏襲するだけの姿勢で果たして事態の打開ができるのか。そのこともあらためて問い直さなければならないと思う。

 譲れないものは何か、どこまでが譲れる範囲か。話し合いの進展に向けどのようなプロセスを思い描いているのか—政府の考えが伝わってこない。

[留学生受け入れ]チャンスを生かす施策を

 アジア・太平洋地域を対象にした留学生受け入れの拠点として、沖縄の役割が重要度を増してきた。

 移民県である沖縄は、世界各地からその子弟を受け入れ、交流を続けてきた。世界のウチナーンチュ大会の開催を通じて、ネットワークがさらに広がりつつある。

 また、国際協力機構(JICA)の沖縄国際センターがあり、毎年、海外から多くの技術研修員らを受け入れている。

 そういう実績がある上に、国際交流の推進を掲げる沖縄にとって、留学生受け入れの制度的支えとなりそうなのが、政府の「アジア・ゲートウェイ構想」である。拡大する世界の留学生市場で、受け入れシェア現行5%程度の確保などを盛り込んでいる。

 さらに、アジア十五カ国の若者が沖縄に滞在して交流するという内閣府が進める「アジア青年の家」事業がある。約百五十人を募集し、二〇〇八年夏に始める予定だ。

 約一カ月、共同生活で科学技術や情報技術(IT)を学習する事業は、沖縄科学技術大学院大学との連携も想定している。

 県は、アジア・太平洋地域における国際交流・協力拠点の形成を県政運営の一つに掲げているだけに、二つの政策、事業は格好の追い風になる。

 県は、日本がアジアと世界の懸け橋を目指すアジア・ゲートウェイ構想の拠点形成の取り組み方針を決めた。重点五分野の中の「高度人材ネットワークハブ形成」として、「留学生等の受け入れや青少年交流の推進」を盛り込んでいる。

 県には、脈々と築き上げてきた海外とのネットワークがある。沖縄科学技術大学院大学も開学する。日本の“南の玄関”としての地の利も生かせる。

 そういったメリットを加味しながら、魅力のある受け入れ態勢を築くための施策を早急につくる必要がある。世界を結ぶネットワークが形成されることを、沖縄にとって絶好のチャンスととらえたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月22日 朝刊 1面)

 テストは自らの達成度を確かめるもの。能力の状態や度合いを試すものだ。昨年四月の東京都足立区の学力テスト。区西部の公立小の校長らは児童の答案用紙を指さして誤答に気付かせるなどしていた。しかも不正行為は学校ぐるみだった。

 テストは子どもたちのためではなく、校長らの保身と学校評価を高めるためだけのものだった。教科に対する理解を深め、高得点を目指し、徹夜で机に向かう。ヤマを張る。誰しもが経験している。

 ところがくだんの小学校では、テストに傾向があることをいいことに校長は、回収しなければならない問題を不正にコピー、何度も児童に練習させていた。解答を覚える児童まで出たという。本末転倒以外の何物でもない。

 極め付きが「トントン」。児童に間違いを分からせようと、答案用紙を指でたたいたのだ。肩トントンなら聞いたことがあるが…。インチキは良くない。曲がったことはするな。当たり前の道理で、校長もそう教えてきたはずだ。何が校長を変えたのか。

 「トントン」された子どもたちは、この行為をどう受け止めたのだろうか。大人がどれだけ立派なことを言っても「きれい事」と片付けてしまうのではないか。

 営業成績のごとく学校間を競い合わせる教育システムに問題の根底があるはずだ。お上から学校現場に下ろされる成果主義の徹底はすさまじいのだろう。主人公であるべき子どもたちは置いてきぼりだ。(崎浜秀也)


【琉球新報・社説】

6ヵ国協議閉幕 非核化の流れを確実に

 北朝鮮の非核化を目指す6カ国協議の首席代表会合は、 最大の焦点だった「次の段階」となる核施設の無能力化や、すべての核計画申告の手順、履行期限の明示が、プレスコミュニケに盛り込まれないまま終わった。 一方、日本が重視している拉致問題については、日朝会談が実現したにもかかわらず依然、進展を見せていない。拉致、核問題のいずれを取っても先行き、楽観 は許されない状況だと言っていい。
 コミュニケでは北朝鮮が、すべての核計画の完全な申告、すべての既存核施設の無能力化の約束を「真剣に実施す る」とあらためて述べたことを明記した。これを見る限り、核放棄の流れは一応、進んだといえる。しかし、申告の手順やその履行期限については、明らかにし ていない。なのに、無能力化の見返りとして95万トンの重油に相当するエネルギー支援を実施することは明記された。
 コミュニケではまた、日朝、米朝国交正常化や、朝鮮半島非核化、経済とエネルギー協力などの5つの作業部会を8月末までに開催することも明記した。さらに、次回6カ国協議は9月初め、その後できるだけ早い時期に6カ国外相会合を開くことも盛り込まれた。
 「初期段階措置」として、寧辺などの核施設の稼働停止と封印は、2月に合意していた。この時点で、北朝鮮の非核化プロセスは、「次の段階」に向けて弾みをつけることが期待されていた。
 だが、次の措置である履行期限が決められなかったことで、今後予定されている作業部会などでの協議が難航する恐れも出てきた。実際、2月の6カ国協議合意では、初期段階措置について60日以内の履行期限を設けていたが、北朝鮮資金の送金問題で、約3カ月も遅れている。
  そのほかにも、米朝の対立がさまざまな局面で出てくることが予想される。例えば、すべての核計画の申告に関しては、まず、今回の核危機の発端となったウラ ン濃縮による核開発疑惑だ。米国は申告の対象としているが、北朝鮮はそもそもウラン濃縮否定の立場を変えておらず、申告に応じるか不透明というのが現状だ ろう。
 一方、日朝間の最大の懸案である拉致問題については、見るべき進展はなかった。日朝首席代表会談に関し、日本側は「(拉致問題を含めた) 懸案問題解決に努力することで一致した」としているのに対し、北朝鮮側は「(拉致問題は)朝日関係はもちろん、6カ国協議にも危機が訪れている」と真っ向 から批判する。

(7/22 10:44)

増える少年補導 まず家庭でしっかり対策を

 少年補導が最悪ペースで推移している。県警の調べ によると、2007年上半期に補導された少年は延べ1万8172人で、前年同期の1万7237人より5・4%(935人)増加しているという。このままだ と、年間補導件数で過去最悪を記録した昨年の3万7860件を上回る見通しだ。
 また、上半期に摘発・補導された刑法犯少年は1013人で、前年 同期比で6・9%(75人)減った。しかし、うち中学生が62・6%を占めるのも深刻な事態だ。これは全国最悪という。ちなみに、昨年1年間、刑法犯で摘 発・補導された少年は2063人で、中学生の占める割合はやはり6割強に上る。非行の低年齢化・凶悪化を示す一例といえる。
 県内の小中高校では、ほとんどの学校で夏休みに入った。これまでの傾向から、1学期は何でもないのに休み期間中に非行化し、補導される少年が増えるという。従って、休み期間中の少年対策をしっかり取ることが、非行防止の1つの手だてとなろう。
  折しも、7月は「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」。各地でさまざまな行事が予定されているが、20日には全国非行防止大会沖縄大会も開催され た。県内では初めてとなる。全国から2100人の関係者が参加、学校、地域、家庭が一体となって、すべての大人が協力して問題に取り組むことを申し合わせ た。また、県警も夏休み期間中の少年非行を防ごうと21日から8月31日まで、対策活動を強化する。
 長い休みは、ついつい気も緩みがちになる。 不良行為が増えるのも、この時期の特徴だ。不良行為とは喫煙や飲酒、深夜はいかい、不良交友など。少年補導の中でも最も多い。上半期の補導全体のうち、深 夜はいかいが9290人。以下、喫煙が5503人、飲酒が1709人と続く。
 子どもたちがこうした行為に走るのも、やはり家庭に居場所がないからだろう。この時期だからこそ親子のしっかりとした対話が必要。地域、学校の役割は重要だが、やはり基本となるのは家庭だ。

(7/22 10:42)

【琉球新報・金口木舌】

 「沖縄のロゼッタ・ストーン」と呼ばれる石をご存じだろうか。北谷から読谷にかけての一帯で見つかった年代不明の「線刻石版」のことだ。船などをかたどったようなものが刻まれているが、いまだに解読されていない
▼嘉手納町中央公民館の民俗資料室で実物を見たことがある。どんな人がいつ、この線を刻んだのだろうか。古代琉球固有の文字との説もあるだけに、想像をかき立てられた
▼先ごろ3万7千年前の人骨・山下町洞人が国内最古の「新人」と発表された。人骨は1万年もたつと酸化して溶けてしまうが、隆起石灰岩で覆われた沖縄は、人骨が化石化するため、古い時代の人骨を発見できる貴重な環境にある
▼19日付で琉球・沖縄史に関する県内高校生の知識不足が報道された。一部の教師が熱心に取り組んでいるが、県全体として体系的に教育していない以上、子供たちだけを責めるわけにはいかない
▼例えば港川人と現代人はつながっているのか。沖縄には未解明のことが多い。裏を返せば足元に「宝」が数多く眠っていることになる
▼地元の歴史をきちんと教えることは、宝を発掘する人材を育てることにもなる。かの石版の謎も、いつの日か解明できるかもしれない。

(7/22 10:40)


【東京新聞・社説】

週のはじめに考える 地球時代の処世訓

2007年7月22日

 社訓が飾り物になっていませんか。不祥事の多発を受け企業コンプライアンス(法令順守)が叫ばれていますが、必要なのはグローバル時代を生き抜く処世訓です。

 グッドウィル・グループ(GWG)のホームページに次の「十訓」(一部略)が掲載されています。

一、お客様の立場にたて

一、夢と志を持ち、チャレンジせよ一、困難の先に栄光がある

一、物事の本質を見抜け

一、公正に判断せよ

一、積極果敢に攻めよ

一、変化をチャンスと思え

一、自信、謙虚さと思いやりを持て一、笑顔と共に明るくあれ

一、正しくないことをするな
通用しない家訓の徳性

 GWGは、介護報酬の過大請求などが発覚して身売りに追い込まれた介護大手コムスンの親会社です。

 十訓は、人材派遣を原点に事業拡大したベンチャー企業らしい自己実現の教えや戒めですが、不正が表面化した今では少々興ざめします。

 次の伝統的な家訓と見比べてください。三菱財閥の創立者、岩崎弥太郎が遺(のこ)した家憲です(第一勧銀経営センター編「家訓」から抜粋)。

・決して投機的の事業を企つる勿(なか)れ

・奉公至誠の赤心は寸時も忘る可(べ)からず

・勤倹身を持し慈恵人を待つ可し

・能(よ)く人格技能を鑑別し適材を適所に用いよ

・部下を優遇し事実上の利益は成る可く多く彼等(かれら)に分与す可し

 投機の戒め、社会奉仕、従業員の優遇など、経営者の心構えとして現代でも十分通用可能な教えだと思われる方も多いのではありませんか。

 儒教倫理が色濃い時代ですから、岩崎家に限らず古い商家、富豪の家訓を貫く徳目は、仁・義・礼・智・信であり、従業員に対しても勤勉、倹約、正直、礼儀、創意、信用といった徳性を求めています。
法令順守では足りない

 でも、この十数年で様変わりしたようです。額に汗して働いた勤労の成果が、報いられるとは限らなくなりました。家訓が奨励する日本人の徳性や、相互信頼に基づく日本社会の強さが、容易には発揮できない経済の仕組みがやってきたからです。

 経済のグローバル化です。市場競争原理が導入され、種々の規制緩和や情報通信革命によって世界的大競争の時代に突入したのです。

 これに伴い、日本型資本主義の原動力だった終身雇用制が崩れ、パートや派遣など雇用の流動化が激しくなりました。同時に格差問題が深刻化したのは周知の事実でしょう。

 さらに、利益至上主義を反映して企業の不祥事発覚も相次ぎました。一審で有罪判決の出たライブドア、村上ファンド事件をはじめ、ゼネコンの官製談合、ごまかし契約勧誘の「駅前留学」NOVA、食品偽装のミートホープなど、私益優先の無責任企業が続出しています。

 規制緩和により行政主導の護送船団方式が廃止され、事前規制型から事後制裁型社会へ転換したことや、情報公開制の進展で隠ぺいが難しくなったという背景があります。これもグローバル化の断面といえます。

 だからでしょう。コンプライアンスが大盛況です。規範意識の徹底を図る組織が増えたのです。

 でも、法令さえ守っていればよしという姿勢は事なかれ主義になりかねません。社会貢献という視点を見失うからです。「売り手よし、買い手よし、世間よし」。必要なのは、この近江商人に伝わる「三方よし」の精神の現代版かもしれません。

 先日の公開講座で同志社大ビジネススクール教授の浜矩子さんが、個人の生き方も含め新時代にふさわしい処世訓のヒントを示してくれました。

 まず、浜さんはグローバル化で生じる三つの側面を指摘します。

  最初の側面は、地球の裏側の人々の参入で物価も賃金も最下位競争を強いられ、結果的に国内外で各種格差が拡大することです。二つ目は、単一で共通の尺度を 用いる競争社会の成果主義がもたらす単純化と画一化です。三つ目は、統合ドイツのように旧西独と東独の人々が経済格差から反目し合う排除の表面化です。融 合が融和につながらないのです。

 こうしたグローバル時代を生き抜くために、浜さんは「一つの心意気と四つの条件」を提唱します。

  四つの条件とは(1)体力(2)知力(3)愛敬(あいきょう)(4)度胸。体力とは経済力、知力とは創造力です。愛敬は、外の人と付き合う心の豊かさであ り、度胸はその背後にある胆力です。米国はイラク戦争など変な度胸はあってもほかは失格、日本は体力、知力はあっても愛敬と度胸に欠けるそうです。
一人はみんなのために

 心意気とは「一人はみんなのために、みんなは一人のために」。ラグビー用語として知られます。

 意味するのは、格差や画一化、排除ではなく、平等や多様性、寛容、融和を目指そうという気概です。家訓や社訓のように創業家、一企業のための教え、戒めではありません。新しい地球時代の国や組織、人々の指針、処世訓となり得るものです。

【東京新聞・筆洗】2007年7月22日

 歌を聴いている人の琴線に触れているのだろうと思え る時間だった。♪嘘(うそ)だと言ってください/あなたが死んだなんて/二十年ぶりの同窓会…。長崎で被爆した男と女。愛すればこそ迷惑をかけられない と、女は何も言わずに男の元を去る。でも男は再会を約束した同窓会を前に白血病で死ぬ▼題名は「嘘だと言ってください」。二十五年ほど前、茨城県つくば市 に住む長崎出身の鶴文乃さんが作った詩に、同郷で知人の歌手寺井一通さんが曲をつけた▼鶴さんは四歳のときに被爆し、父と兄を失った。作詞当時は体調を崩 しており、自分も子どもを残して死ぬのかと思っていた。そんな時、中学時代の同級生が白血病で死んだことを知る。突き動かされるように詩を書いた▼歌をめ ぐる物語はこれで終わりでもおかしくない。でも長崎で細々ながら歌い継がれ、二年前につくば市でコンサートが開かれた。その縁から、父を戦争で失っている 林順子さんが歌を広める会をつくり、今年は二度目のコンサートを会主催で開いた▼会場には愛知県瀬戸市に住む田中妙子さんの姿があった。大学生活を送った 広島で、慕ってくれた子どもが白血病で死んだことが還暦の今も忘れられない。来年は自分たちが歌で平和の大切さを伝えたいと思っている▼鶴さんは「だめも と」の精神で「平和の鐘、一振り運動」に取り組んでいる。八月九日午前十一時二分、長崎の悲劇を忘れないために教会や寺などで鐘を鳴らそうとの呼びかけ で、賛同者は徐々に増えている。思いはいつか通じるのだと実感する。


【河北新報・社説】

原発耐震性の危機/小手先の対応は許されない

 原子力発電所の地震への備えがこれほどずさんだったとは、がくぜんとしてしまう。
 新潟県中越沖地震に見舞われた東京電力の柏崎刈羽原発(柏崎市、刈羽村)で、火災や放射性物質の放出など多くのトラブルが明らかになった。
 原発の地震被害としては最悪のケースだが、そもそも地震を引き起こした断層が原発の真下まで延びていた可能性があるというのだから、危険極まりない。事実なら、地震による被害を防げという方が無理だろう。

 深刻な被害をもたらした原因を根本的に解明するのが絶対に必要だし、今後の安全性が保証されない限り運転再開はあり得ない。どんな地質データを集め、断層の評価を行ったのかについても十分に説明する責任がある。

 原発の耐震性が信頼できるのかどうかについては、以前から疑問が出されていた。建物は壊れなかったが、設計段階で想定した最大の揺れよりも実際の地震による揺れが大きくなるケースがあったためだ。

 東北電力の女川原発では2005年の8.16宮城地震(マグニチュード=M=7.2)の際、「限界地震」を超える揺れが観測された。国内の原発では初めての事態だった。
 原発建設に当たっては実際には起こりえないような地震を想定し、それでも壊れないように設計する。念には念を入れてということだが、計算した結果、一部の周期で限界地震の揺れを上回っていたことが判明した。

 今年3月の能登半島地震(M6.9)でも、北陸電力の志賀原発で限界地震を超える揺れになっている。今回の地震で被害を受けた柏崎刈羽原発でも超えてしまった。

 限界地震は「M6.5クラスの直下型地震」などが目安になっているが、最近はより大きな内陸直下型地震が相次いでいるし、中越沖地震も6.8に達している。想定した地震の規模が既に意味を失っていると言っていい。

 原発の耐震指針は昨年改定され、それぞれの立地条件に合わせて想定地震を決める方式になった。電力各社は現在、新指針によって耐震性を再点検中だが、原発周辺の断層を漏れなく突き止め、その危険性を正確に評価できるかどうかが重要なポイントになる。

 東電はもちろん、柏崎刈羽原発周辺の地質を徹底して調べ直さなければならない。自ら調査するのではなく、断層や防災の外部の専門家に委ねるべきだ。本当に原発直下に断層があり、近い将来にまた地震を起こす可能性があるようなら、かなり深刻な事態になる。

 立地条件としては最悪と言ってよく、仮に大規模な耐震補強を行うにせよ、基本的な安全性に大きな不安を抱かれるのは当然だ。
 原発の耐震性に対する国民の関心は高い。世界有数の地震国であれば当たり前のことだ。柏崎刈羽原発のような被害が現実になった以上、どこの原発であっても、中途半端な安全対策はもはや信用されない。
2007年07月22日日曜日

【河北新報・河北春秋】

 仙台市の緑化行政はどうもちぐはぐだ。湿った半日陰を好むモチノキを人口100万人達成の記念に、日当たりのいい市役所前庭に植えたことがある。 当然、ほどなく枯れた▼街路樹のトウカエデの葉が市内の全域で黄変したことがある。なぜか市は樹木の病気と思い込んだ。薬剤を散布したり枝を切ったりし た。原因は単なる水不足だったことが後に分かる

 ▼ 今回は地下鉄東西線工事に伴う青葉通のケヤキをめぐる迷走だ。当初、223本のうち50本の撤去が必要だった。市は全部を移植する方針を示したが、実に多 くの市民が反対して計画撤回▼年老いたケヤキを移植しても残念ながら多くが枯れてしまう。高額な移植経費も問題だ。常識で考えてみれば、結論は言わずもが なだったろう。かわいそうでも、やはり伐採が妥当な選択だ

 ▼市が委嘱した杜の都の環境審議会にも責任がある。というのは、過去に移植し たケヤキの多数が枯れ、それを表ざたにするなという意見が委員から出ているからだ。事実を隠され、市民は蚊帳の外に置かれた▼おかげで2度も市民アンケー トを行うなど痛い授業料を払った。ただし維持管理に法外な費用がいらない緑化を考える契機にはなったか。ちぐはぐぶりを解消するためにも今後は市民がオー プンに議論できる場をぜひ。

2007年07月21日土曜日


【京都新聞・社説】

投票時間  繰り上げは慎重にして

 二十九日投開票の参院選では、投票締め切り時刻の繰り上げが大幅に増える。
 締め切り時刻の繰り上げは国民の権利である選挙権を侵しかねない。より慎重な判断が必要ではなかったか。
 総務省の調べでは、全国約五万千七百カ所の投票所のうち、30%近い約一万四千八百カ所で、午後八時の投票締め切り時刻が繰り上がる。
 前回二〇〇四年の参院選で繰り上げた投票所は約一万千四百カ所。およそ三割の増加となる。地元の繰り上げは京都府で七十一(前回五十)カ所、滋賀県内で三十三(同三十二)カ所だ。
 全投票所に占める繰り上げ実施の割合では、全国の十一県で五割を超える。なかでも鹿児島(92%)や秋田(89%)、岩手(87%)、高知(86%)では八割以上に達する。驚くべき事態だ。
 東京、千葉、神奈川、大阪の四都府県は繰り上げがなく、京都府は6・9%、滋賀県は3・5%だ。大都市圏との格差はあまりに大きい。
 投票時間はもともと「午前七時から午後六時まで」だった。ところが、国政選挙などで投票率の低落傾向が目につき始め、一九九七年の公職選挙法改正で「午後八時まで」と二時間延長された。
 ただし「特別の事情」があれば、市町村選管の裁量で、締め切り時刻を最大四時間繰り上げできることにもなった。
 離島や遠隔地では、以前から「繰り上げ」を行っているが、なぜ、こんどの参院選で、こんなに急増したのか。
 九九年から始まった「平成の大合併」がかかわっているとの見方が出ている。
 市町村合併で自治体の面積が広がる。開票所への投票箱の運搬に時間がかかることになり、開票開始時刻に間に合わせるよう終了時刻を早める自治体が多いためではないかというのだ。
 耳を疑う話だ。よもや、そんなことはあるまい。開票時刻に合わせて投票時間を削るとは、本末転倒ではないか。
 市町村選管は地域の実態や夜の投票状況などを十分踏まえ、繰り上げを判断したのであろう。迅速な開票、人件費の削減といった意図もあるかもしれない。
 しかし、選挙権は国民の基本的人権の一つであり、最も重要視されなければならない参政権の要である。投票の機会は十二分に保障されねばならない。
 前回参院選での時間別投票状況では、午後六時から八時までの投票割合は全国平均で15%だ。京都府では18・74%と全国で五番目に高い。都市部が中心であるとはいえ、「夜の投票」は決して軽視されてはなるまい。
 締め切り時刻の繰り上げ拡大は投票時間の二時間延長を事実上、市町村の判断で空洞化させかねない。看過できない。
 繰り上げが有権者の投票に支障を及ぼしていないのは確かか。周知は十分か。政府も府県もこの参院選できちんと検証し、実態を明らかにしてもらいたい。

[京都新聞 2007年07月22日掲載]

校門前児童刺傷  地域と学校の一体化を

 終業式の早朝、宮城県大郷町の小学校門前で登校した小学六年女児が包丁をもった男に刺される事件があった。
 女児は重傷だが命に別条ないようで、逃走した男は通報で駆けつけた警察官が学校近くの自宅で逮捕した。
 女児は一人で登校、教員が終業式準備で門に立つのが遅れたすきに襲われた。
 男は女児を刺したことを認めたが、動機については意味不明の説明をしているといい、警察は刑事責任能力の有無を含めて捜査している。
 学校や通学路の安全対策が全国的にとられるようになり久しいが、不審者による被害にあう子どもが後を絶たない。今回も安全なはずの校門前で事件が起こった。苦しむ女児を目撃した児童もいる。
 学校側は児童らへ心のケアとともに、安全対策をしっかり見直すことだ。その結果を全国の学校への教訓としたい。
 小学校は農村部にあり、児童数は約八十人。県委嘱の子どもの安全を見守るボランティアが同町にも配置されていた。
 学校には保護者、地域住民のボランティア組織もあったといい、児童は防犯ブザーをもち、「子供一一〇番の家」も設置されていた。
 安全対策はとられていたが問題は機能していたかどうかだ。集団下校の指導はあっても、集団登校はしていなかった。
 校区が広く、各家庭の登校時間がまちまちで、車で送る親まであっては集団登校はむつかしい。被害女児の自宅は学校から約二キロで、自転車で通学し、登校時間も早かったという。
 児童が少ない学校で、早い時刻に登校すれば周囲に人がいないのと同じだ。見知らぬ男に襲われ、重傷を負って校庭に逃げ込んだ女児の気持ちを思うと胸が痛む。学校側の責任は重い。
 学校の安全管理対策で文部科学省が危機管理マニュアルを初めて作成したのは五年前。大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件がきっかけで、遺族はさらに学校やPTA、地域、警察など行政と一体となった安全対策を講じるよう求めた。
 京都では一九九九年の日野小(伏見区)や二〇〇三年の宇治小(宇治市)で侵入男による児童殺傷事件があり対策は進んだ。
 こうした結果、何らかの防犯対策をとる小学校は全国で99・0%(文科省の昨年三月調べ)にまで高まった。
 だが緊急時の避難先を示す通学安全マップや、監視カメラなどの防犯設備も、人手、経費の制約で不十分なままのところが少なくない。
 文科省は今回の事件を受けて五年ぶりに危機管理マニュアルの改訂作業を急ぐようだが、不審者によるこれまでの事件を総括し、学校、PTA、地域の声も反映させた、充実したものにしてほしい。
 通学路の安全確保は地域の支援なくしてはあり得ないし、児童生徒の安全のためには人も金も惜しむべきではない。

[京都新聞 2007年07月22日掲載]

【京都新聞・凡語】

ブランドエコバック

 思わぬものが人々を熱狂させている。数日前京のデパートに徹夜の列ができ た。若者から中高年まで、お目当ては布製のエコバッグ。英国の超人気デザイナーによる作品だ▼英国では一時間で二万個も売れた。台湾や香港の売り場には、 警察が出動する騒ぎになったという。さすがに京都ではそんな場面はなかったものの、予想通り、瞬く間に完売した▼それにしても、ブランドを追い求める消費 者心理はすさまじい。ネット上では、店頭価格の十倍以上の高値を呼んでいるというから、恐れ入る▼限定販売と聞かされると、なおさら手に入れたくなるのが 人情か。有名デザイナーが、レジ袋削減と地球環境を訴えて世に送り出したとはいえ、計算高い環境ビジネスの顔も垣間見える▼でも立ち止まって考えてみた い。消費者のあくなき購買意欲を刺激してエコ社会への転換を図るという発想もあっていいのでは、と。そんな知恵でも出さないと、もはや瀬戸際にある地球環 境は克服に向かってカジを切れないのかもしれない▼レジ袋問題は、今や世界的な関心事だ。日本では年間三百億枚余りが消費されるという。今回の騒ぎでPR 効果が上がれば、削減運動に弾みもつく。ただ気になるのはバッグが日常、買い物袋として使われるかどうかだ。ブランドという神棚に祭りあげられてしまって は、それこそ、もったいない。

[京都新聞 2007年07月22日掲載]


【朝日・社説】

2007年07月22日(日曜日)付

温暖化と選挙—高感度の議員を選ぼう

 地球温暖化にどう立ち向かうか。これも参院選で問われるテーマの一つだ。

 脱温暖化の大切さは、だれも異論がない。だが、政党や候補者の公約を比べれば、力点の置き方や政策の違いがある。脱温暖化の流れを加速できるかどうかは、有権者の選択にかかっている。

 課題は、三つある。

 まず、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減を先進国に求める京都議定書の約束を果たすことだ。日本は来年から12年までに90年の水準より6%減らさなければならないが、今のままではおぼつかない。

 二つ目として、来年の洞爺湖G8サミットに向けて環境外交を進める必要がある。京都議定書から抜けた米国、議定書で義務を負っていない中国やインドにも、13年以降の排出抑制の枠組みで相応の負担をしてもらうレールを敷かなくてはならない。

 長い目でみれば、脱炭素社会に向けて産業やくらしをどう変えるかの青写真をまとめ、それを促す仕組みを築くことが大切だ。これが三つ目の課題である。

 議員たちに最も求められるのは、三つ目の脱炭素社会の設計だ。今年のG8サミットで、「地球の温室効果ガス排出を50年までに半減すること」が真剣に検討すべき目標として合意された。これは日本の政治にとっても避けて通れない。

 脱炭素社会の設計図が政党の公約から見えてくるか。

 自民党の主張で気になるのは「国民運動の展開」に力点を置いていることだ。

 たしかに、CO2の排出量は家庭や事務所で大幅に増えている。省エネ型商品に買い替えたり、クールビズを徹底したりするという生活の見直しは大きな効果があるだろう。

 だが、政治にもっと求められるのは、数十年先を見通して産業の中身を変えることだ。CO2を大量に出す工場を減らし、環境保護型の商品づくりを促す必要がある。その方向は打ちだしているが、具体的な工程表が見えない。

 一方、民主党のマニフェストには、数値目標が並んでいる。日本の温室効果ガスの排出量は20年までに90年比で20%減らし、50年よりも早く半減をめざす。風力、太陽、バイオマスなどの再生可能エネルギーも、20年までに全体の10%程度にしたいとしている。

 国内に排出量取引の市場を設け、地球温暖化対策税を導入することも挙げる。これらは産業界を動かす仕組みにはなるだろう。ただ、それだけでは目標の達成は難しい。産業の姿をどう変えるか、シナリオを描くことがやはり必要だ。

 地球環境という新しいテーマに対して具体策をうち出すには、政党側の準備がまだ整っていないように見える。

 こうした中で、有権者がとるべき選択は何か。政党の環境政策を吟味することに加えて、環境問題への感度が高い議員を1人でも多くふやすことだろう。

耐震補強—命を守る決め手だ

 地震で一番怖いのは、強い揺れで瞬時に家をつぶされ、その下敷きになってしまうことだ。阪神大震災の死者の8割は建物の倒壊による圧死だった。

 規模こそ違うものの、今回の新潟県中越沖地震でも同じことが繰り返された。10人の犠牲者のうち9人が、壊れた建物に押しつぶされて亡くなった。

 地震による犠牲者を少なくする決め手は、古い木造住宅を改修して補強することに尽きる。それが95年の阪神大震災の教訓であり、その年のうちに耐震改修促進法を制定した理由でもあった。

 ところが、肝心の耐震補強が思うように進んでいない。今回の地震で被害が集中した柏崎市の場合も、この春から耐震補強の助成制度を始めたが、申請はゼロだった。残念と言うしかない。

 進まない理由の一つは、耐震改修の基本方針づくりをしている国土交通省の硬直した姿勢にある。

 現行の建築基準では、建築物に「耐震強度1以上」を求めている。震度6の揺れでも倒れない強さである。国交省は「公金を投じる以上、古い住宅でも改修後はこの基準を満たすものでなければならない」という。

 しかし、この基準に沿って補強をすれば、平均して百数十万円の費用がかかる。所得の少ない家庭や年金で暮らすお年寄りには負担しきれないのだ。

 耐震補強が進まないことに悩む自治体の間では、国交省の方針を乗り越えて独自の支援を始める動きが広がっている。先陣を切ったのは東京都の墨田区だ。

 強度の足りないところに柱や筋交いを入れる。それで少しでも地震に強い家にする。費用も数十万円ですむ——昨年から始めた簡易改修の助成事業である。後に続く自治体が相次いだ。

 国内には強い地震に耐えられない住宅が全体の25%、約1000万戸もある。中央防災会議は2015年までにこれを10%に減らす目標を打ち出している。

 この目標を達成するためには、国と自治体がもっと柔軟な発想で取り組む必要がある。補強が進まないうちに地震に襲われて犠牲者が増えるようなことは、何としても防がなければならない。

 むろん、行政を批判すれば事足りる話ではない。防災の基本は自助である。住民自身が「自分の命は自分で守る」という気概を持つことが大切だ。

 その意味で学びたいのは、宮城県松島町の取り組みである。東北工業大学の田中礼治教授らの協力を得て、3年前から中学生に住宅の耐震診断のノウハウを伝授する授業を始めた。

 田中教授は「中学生を大人として扱い、防災の担い手にしたい。授業は、親や祖父母との対話のきっかけにもなる」と語る。松島町の試みは宮城県だけでなく、隣接県にも広がりつつある。

 私たちは、いつどこで地震に襲われてもおかしくない国に生きている。命を守るために、さらに知恵を絞りたい。

【朝日・天声人語】2007年07月22日(日曜日)付

 物理学者の寺田寅彦は、防災の大切さをことあるごとに説く警世家でもあった。1935年(昭和10年)に亡くなる直前、地震の研究に長くかかわってきた感想を、『災難雑考』と題して記している。

 プレートがぶつかり合う位置にある列島の危うさを、寅彦は「日本の国土全体が一つのつり橋の上にかかっているようなもの」と例えた。そして「つり橋の鋼索が、あすにも断たれるかもしれないという、かなりな可能性を前に控えている」と警鐘を鳴らしている。

 寅彦の時代にはなかった様々な人工物が、いま、不安定な「つり橋」の上にひしめいている。全国に55基を数える原発もそうだ。その一つ、東京電力柏崎刈羽発電所が、新潟県中越沖地震に揺さぶられ、多くの弱点があぶり出された。

  そもそも建設の際、直下にある断層を見逃していたという。微量だが、放射能が海や大気中に漏れた。変圧器は黒煙を上げ、消せないまま燃え続けた。あわてた 国の調べで、他の原発のお寒い防災体制も分かってきた。これでは55本の剣が、国民の頭上に、ゆらゆらつり下がっているようなものだ。

 根拠のない「安全神話」が、原発にもあると聞く。様々な神話の数だけ、その崩壊する悲劇があった。ジャンボ機もかつては、まことしやかな「墜(お)ちない神話」に彩られた。22年前に日本で崩れたのは、記憶になお鮮明だ。

 地震はどうにもならないが、被害は人間次第。それが寅彦の持論だった。必要なのは空疎な「神話」ではない。今回の教訓を生かした「実話」であろう。


【毎日・社説】

社説:’07参院選 終盤戦へ 「選択」の重みが増してきた

 毎日新聞が21日にまとめた電話世論調査などに基づく中盤情勢調査によると、自民党に対しては強い逆風が吹き、民主党が大幅に議席を伸ばすとの結果が出た。

 29ある1人区では自民党は各地で民主党に苦戦し、比例代表でも民主党にリードを許している。このままでは焦点である与党の過半数維持は難しい情勢だ。

 公明党も与党として逆風を受けて防戦を強いられている。共産、社民両党さらに国民新党、新党日本も厳しい戦いで存在感の発揮に腐心しているようだ。

 もちろん誰に投票するかを決めていない有権者も多く、情勢変化があるかもしれない。

 だが、与党が大幅に過半数を割った場合は、安倍晋三首相の退陣など進退問題も取りざたされよう。

 政府が提出した法案に対して野党が反対すれば、今後3年間は参院で否決され続ける事態にもなりうる。政権運営が行き詰まり、衆院の早期解散やさらには政界再編にもつながる可能性もある。

 一方、安倍政治には不満を持っても自民、公明の枠組みでの政権の安定を望む有権者もいるだろう。選挙後のことを考えれば有権者の1票がますます重くなり、かなりの緊張感を持った選挙戦になってきた。

 自民党への逆風は国民の政権への信頼の欠如から生まれている。世論調査で安倍内閣の実績を評価するかと聞いたところ「評価しない」は6割を超えた。

 政府が打ち出した年金記録漏れ対策についても、これで「解決すると思わない」は実に8割に及んだ。首相は「やれることはすべてやっている」と話しているが、有権者は信用していないのだ。

 赤城徳彦農相の事務所経費問題でも国民に十分な説明がなされておらず、松岡利勝前農相の悲劇の教訓が生かされていない。

 麻生太郎外相からは「アルツハイマー発言」も飛び出した。外相は発言を撤回し謝罪したが、内閣全体の緊張がゆるんでいる印象を国民に与え、政権不信につながっているのではないか。

 民主党の支持率は31%と自民党の21%を大きく上回った。自民党の支持率を超えたのは7年ぶりで30%突破は結党以来初めてのことだという。ただこれは国民の民主党への期待が高まっているというより、自民党の不振に助けられている部分が大きいのではないか。

 民主党は敵失に頼らず、国民の関心の高い年金制度改革などについて、具体的な財源の手当てを示しながらあくまで政策論争を自民党に挑むべきだ。

 選挙戦も残り1週間になった。 私たちは今度の選挙は安倍政治を問う選挙であり、年金ばかりでなく教育、憲法、格差是正、農業政策−−など重要なテーマがあることを指摘してきた。

 各党はていねいに考え方を示し有権者はそれを吟味して投票日を迎えたい。

毎日新聞 2007年7月22日 東京朝刊

社説:EU新条約 憲法が死に欧州合衆国遠のく

 欧州連合(EU)は暗礁に乗り上げた欧州憲法を放棄し、大幅に簡略化した改革条約に取り組んでいる。憲法が発効しないまま意思決定の枠組みが機能せず、加盟国を増やせない最悪の事態は避けられた。新条約は現実に即した収拾策かもしれない。

  ロシアは欧州通常戦力(CFE)条約の履行一時停止を宣言した。元スパイ毒殺事件をめぐる英露の対立は外交官追放に拡大している。資源大国ロシアと欧州の 緊張は「新冷戦」とも表現され、EUには不安要因だ。憲法を持つことであたかも連邦国家のように一体化する路線は修正されたが、欧州の統合は深める必要が ある。

 欧州憲法は議論に3年間をかけて04年、調印された。発効には全加盟国の批准が必要であり、18カ国が批准した。だが、オランダ とフランスが05年、国民投票で否決したため、発効は困難となった。今後、クロアチアなどバルカン諸国の新規加盟が予想されるのに、既存の条約では現在の 27カ国体制にしか対応できない。新しい基本法がいずれにしても必要だった。

 ブリュッセルで6月、開かれた首脳会議は全加盟国の批准を確保することを優先し、争点となる項目を憲法から次々に削った。

  合意文書をみると、連邦国家とみなしうる要素やシンボルを徹底的に追放したことがわかる。名称の「憲法」そのものを「改革条約」といいかえた。「外相」は 「外交上級代表」と呼び、「共同体(コミュニティー)」は「連合」といいかえた。「法」も使わず、旧来の「指令」などを残した。「国旗」(青地に12の 星)、「国歌」(ベートーベン「歓喜の歌」)も削除した。「多様性の中の統合」という「標語」も消えた。

 ここまで気をつかったのは、加 盟国や市民がEUの成果を手放しで歓迎していない現実があるためだろう。EU本部でこまごまとした規則を決める肥大化した官僚制への不満は強い。身近な効 果が見えない拡大政策へのいらだちもある。自国の主権よりEUが優越することへの批判が広がり、フランスやオランダで憲法を否決する理由のひとつとなっ た。

 「われわれはある種の欧州合衆国を建設しなければならない。そうすることによってのみ、何億もの人々が人生を価値あるものとする喜 びと希望を取り戻せるのだ」。第二次大戦で破壊された欧州の再建について英国の指導者チャーチルは1946年の演説でこう呼びかけた。米国の国名になぞら えた「欧州合衆国」は統一欧州の夢を語る合言葉のように響いた。

 EU統合は加盟国が平和や自由など共通の目的のため主権の一部を譲り渡す「超国家」建設の性格を持つ。だからこそ、主権国家の壁を崩す人類の実験とみなされてきた。冷戦構造をひきずる東アジアの将来にとっても刺激となる。

 国民国家の主権を乗り越えることは欧州にとっても困難な作業であることを示したのが、欧州憲法の死亡宣告だった。障害を克服して統合をどう進めるか、欧州の新たな挑戦に期待したい。

毎日新聞 2007年7月22日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:愛知県豊橋市で開かれた「農業コンクール」で…

 愛知県豊橋市で開かれた「農業コンクー ル」で、京都府南山城村の西窪武さんが「日本で唯一の牧草ビジネス」を報告した。お客さんは、なんと全国13の動物園やサーカスの草食動物。飼料という と、酪農や畜産、養鶏を思い浮かべるが、動物園やサーカスの動物は、ちょっと思いつかない▲米国の大規模酪農で13カ月間、研修した。日本で飼料作物を栽 培したいという夢をもった。しかし、いざ日本で飼料作物を栽培すると、価格面で輸入飼料にまるでかなわない。そんな時に、京都市動物園が飼料の調達先を探 しているという話が耳に入った▲京都の冬は寒い。冬場の飼料調達が難題だった。「冬でも飼料を作れる」と売り込んで、初めて3カ月分の契約をもらった。 1984年のことだった。そこから、西窪さんの奮闘が始まる。その動物に必要な成分、含まれてはいけない成分を飼育係から徹底的に教わり、自らも研究する ▲自分の牧場の牧草だけではとても対応できない。レッサーパンダ用の竹を耕作放棄地や里山に探しに行く。機械は使わず、カマで飼料を刈り取る。農薬は一切 使わない。単一作物の規模拡大ではなく、動物の多様さに合わせた多品種少量生産。通常の農業の発展とは逆の工夫ばかりだ▲動物園やサーカスの動物は世界的 に希少であったり、サーカスの生活がかかっている。自分が供給した飼料で動物の体調を崩してはならないという強い責任感で「24時間365日25年間」と 西窪さんは振り返る▲西窪さんのおかげで、動物園やサーカスの飼育係は飼料の調達から解放され、飼育に専念できる。西窪さんの会社の名前は「クローバー リーフ」。しかし、クローバーの葉だけではない、広い飼料の世界の開拓に成功したようだ。

毎日新聞 2007年7月22日 東京朝刊


【読売・社説】

農業 市場開放に備え体質強化を競え(7月22日付・読売社説)

 国際競争力が弱く、世界貿易機関(WTO)の自由化交渉などに臨む際、「市場開放の足かせになっている」と指摘されるのが日本の農業だ。

 “汚名”返上のためにも、農政改革は待ったなしの課題である。

 その農業問題が、参院選の重要な争点に浮上している。地方の1人区で、農民票がポイントになると見られるためだ。与野党とも、農業の体質強化について、大いに議論を戦わせて欲しい。

 自民、公明の両与党は“攻めの農業”を合言葉に、「品目横断的な経営安定対策」の実施に力点を置いている。

 昨年度まで、政府はムギ、大豆など個別品目ごとに、すべての生産農家に補助金を出してきた。

 今年度からは、補助金の支給対象を、経営面積が一定以上の農家や、地域の農家が共同作業し、経理も一本化した集落営農組織などに限ることにした。

 農家に規模拡大を促して生産性を向上させるのが狙いだ。両党はこの経営安定対策を、今後も推進すると強調する。

 農地の集約化はコスト削減に欠かせない。輸入品との価格差が縮小すれば、関税引き下げへの抵抗感も薄れよう。

 民主党は「小規模農家の切り捨て」と批判する。農業の生産性を高める具体策を聞いてみたい。

 民主、共産、社民など野党は、農家に一定の所得を補償する政策をそろって公約し、与党側との違いを鮮明にした。

 民主党は、年50万円以上を出荷する販売農家すべてを対象に、「戸別所得補償制度」の新設を掲げている。コメ、菜種など個別品目ごとに生産コストと市場価格の差を、補てんする仕組みだ。

 例えば、コメについてはこうだ。「コメが一俵5000円になっても所得は補償される」とし、コストとの差額1万円を補助することで、農家の手取りは合計1万5000円になると訴えている。

 制度実施のために必要な費用は、公共事業が中心となっている現在の農業予算を大幅に組み替え、年間1兆円を確保すると約束している。

 これに対し自民党は、「コスト分しかもらえないので、農家のもうけにつながらない」「単なる補助金のバラマキ」などと批判する。

 この制度で懸念されるのは、今後の市場開放との関係だ。安い外国農産品の流入が進めば、それに連れて国産品の価格も下がる。農家に対する補償費用も拡大し、予算は1兆円では足りなくなるのではないか、との見方もある。

 民主党は、こうした声に対し、丁寧に説明する必要があろう。
(2007年7月22日1時38分  読売新聞)

毒ガス判決 新たに遺棄の「事実」が争われた(7月22日付・読売社説)

 旧日本軍が毒ガス兵器を遺棄した証拠はないと、国が新たな主張を展開した。日中共同声明の解釈も論点となった。その意味で注目された判決である。

 中国の工事現場などで見つかった毒ガス兵器や通常砲弾で死傷したとして、中国人被害者ら13人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は国に1億9000万円の賠償を命じた1審判決を取り消し、請求を棄却した。

 1審判決は、日本政府が中国政府に情報を伝えていれば被害を防ぎ得たとし、国家賠償法上の賠償責任を認めた。

 高裁判決は、情報を提供していても場所の確定が難しく、事故は必ずしも防げなかったとして、請求を退けた。

 国は日華平和条約や日中共同声明などにより、毒ガス兵器の被害に関する請求権は放棄されていると主張してきた。

 最高裁も今年4月、日中戦争遂行中に生じた中国国民の日本国への請求権は、日中共同声明により放棄されたとの初判断を示している。

 今回の判決では、毒ガス兵器の被害に関する請求権が日中共同声明で放棄されたか否かについての言及はなかった。最高裁はどう判断するだろうか。

 1審で法律問題だけを主張した国は、この控訴審で事実関係も争った。

 当時の国際法は、毒ガス兵器の使用を禁じたが、保有は認めており、ソ連や中国国民党政府なども保有していた。

 問題の毒ガス兵器や砲弾は、旧日本軍のものと断定できず、仮にそうであっても、ソ連侵攻後の混乱の中で弾薬庫に放置されたものか、武装解除の際にソ連軍などに渡ったものと、国は主張した。

 判決は、その形状などから旧日本軍の兵器とし、日本でも終戦時に海に投棄されたことや、海軍で痕跡を消す指示が出されたことなどから、旧日本軍関係者が遺棄したと認定した。

 ただし、通常砲弾の爆発事故については、この地域を占領したソ連軍の砲弾処理に問題があった可能性を指摘し、日本の責任を否定した。

 政府は、97年に発効した化学兵器禁止条約などに基づき、中国国内にある旧日本軍毒ガス兵器の回収を進めている。

 条約は「他の国の同意を得ることなく遺棄した化学兵器」の廃棄を義務づけている。日本から連合国側に渡った毒ガス兵器でも、引き渡した証拠がなければ日本が廃棄しなければならない。

 政府によると、毒ガス兵器の引き渡しは、これまでに台湾と上海で各1件確認されているだけだ。

 賠償義務はなくとも、回収処理は進めて行かなくてはなるまい。
(2007年7月22日1時38分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月22日付 編集手帳

 「堅気に迷惑をかけない、などといった言葉が完全 に有名無実化している」と今年の警察白書に書かれている。暴力団についてのことだが、もともとこんなことを信じている人はいないだろう◆芝居や浪曲でなじ みの遠州は森の石松や番場の忠太郎も、「一本刀土俵入り」の主人公・駒形の茂兵衛も、正業には就いていないのだから、直接、間接に「堅気」の人に迷惑をか けていたはずだ◆こんな大衆芸能や暴力団をヒーロー扱いした映画などの影響もあるのか、白書は「任侠(にんきょう)や仁義といった大義名分に目を奪われ、 暴力団を必要悪として容認したり、面白がり親しみを感じたりする風潮が社会に残っている」とも指摘する◆警察庁が建設業者にアンケート調査したところ、暴 力団との結びつきは近畿や四国で強く、北海道や東北では薄い西高東低ともいえる結果が出た。昨年の銃器発砲件数も、西日本が全体の7割を占めている◆繁華 街には暴力団の息のかかった飲食店があり、暴力団の関係企業も増えているが、見分けがつかない。以前、暴力団幹部が議長をしている地方議会があるとささや かれたこともある。今はどうだろう◆こうした勢力は「明治期より治安上の大きな問題だった」という。暴力団の排除は容易でないが、警察にはまず、暴力団情 報を積極的に出してもらいたい。
(2007年7月22日1時38分  読売新聞)


【産経・社説】

主張】外交官追放 ロシアは不信除く努力を

 元ロシア情報機関員のリトビネンコ氏毒殺事件をめぐり、英国が行ったロシア外交官の追放に対して、ロシアも英外交官追放を含む報復措置を発表、英露対立が高まってきた。

 リトビネンコ氏は英国に亡命してプーチン露大統領や支持勢力を批判する言論活動をしていたが、昨年11月、ロンドンで放射性物質ポロニウム210を服用させられて死亡した。

 英当局は約半年の捜査の後、直前に同氏と面会した旧ソ連国家保安委員会(KGB)職員のルゴボイ氏を容疑者と断定、ロシアに引き渡しを求めた。ところが、ロシア政府が引き渡しを拒否したため、英国が外交官追放に踏み切り、ロシアも対抗措置をとった。

 英露の経済通商関係が深まる中で、冷戦時代を思わせる外交官追放合戦は確かに異常だ。欧州では「新冷戦」を懸念する声も出ている。一方では、両国ともビジネス・通商部門には触れておらず、一般人を交流規制対象から外すなどの配慮もうかがえる。

 プーチン大統領は「小さな危機であり、克服は可能だ」と述べた。対立のエスカレートはどちらの得にもならない。無益に冷戦時代に逆戻りすることがないよう、英露双方とも冷静に外交の知恵をしぼってもらいたい。

 だが、そのことと事件の解明は別問題だ。猛毒の放射性物質が使われたことについてブラウン英首相は「多数の人が殺される恐れがあった」と指摘した。不特定多数の市民を巻き添えにしかねない政治テロといってよいほどの重大事件だったからだ。

 ロシア政府は「憲法の規定」を理由に容疑者引き渡しを拒んでいる。それでも、発生当初から関与を疑われた元情報職員らの活動などについて、ロシア政府がもっと積極的に英当局に捜査協力をしていたならば、英露対立の悪化は防げたかもしれない。

  それでなくとも、リトビネンコ氏のように英国に亡命したロシア人政商の暗殺未遂事件が発覚したり、ロシアが欧州通常戦力(CFE)条約の履行停止を一方的 に発表するなど、最近のロシア政情や外交姿勢に対する不信感が欧米には広がっている。問題の根はそうした不信にある。それを解消する意味でも、プーチン政 権は今回の事件解決に全面協力すべきではないか。

(2007/07/22 05:45)

【主張】元長官詐欺事件 総連の闇も徹底解明せよ 

 朝鮮総連中央本部をめぐる詐欺事件で、東京地検特捜部は元公安調査庁長官、緒方重威容疑者らが4億8400万円を総連から詐取したとして再逮捕し、新たな捜査段階に入った。

  この事件は当初、中央本部の土地・建物をめぐる仮装売買事件として発覚した。総連側が整理回収機構(RCC)の差し押さえを免れるために、代金未納のま ま、緒方容疑者のペーパーカンパニーに移転登記を行ったという疑惑だった。東京地検も当初は、この容疑(電磁的公正証書原本不実記録)で緒方容疑者宅など を捜索した。

 しかし、先月末、緒方容疑者が逮捕されたときの容疑は、代金を支払う意思がないのに、それがあるかのように見せかけ、中央本部の土地・建物をだまし取ったという詐欺だった。朝鮮総連は詐欺の被害者になっていた。

 公安調査庁は朝鮮総連などを監視する重要な機関で、緒方容疑者は最高検公安部長や広島高検検事長なども務めた検察エリートである。検察側が「身内に甘い」という批判を受けないために、詐欺容疑での緒方容疑者の逮捕を急いだことは十分に考えられる。

 だが、総連側は「だまされたという認識はない」と記者会見で述べ、「刑事訴追を積極的に希望しない」との確認書を緒方容疑者側と交わしている。このため、公判で紛糾することも予想される。

 検察の描く構図が詐欺事件に変わったとはいえ、仮装売買の疑惑が消えたわけではない。この取引で総連が果たした役割もきちんと解明すべきだ。

  朝鮮総連は北朝鮮の統一戦線部に直結する組織として、さまざまな工作活動を行ってきた。原敕晁(ただあき)さん拉致事件には、総連傘下の在日本朝鮮大阪府 商工会幹部らが関与し、昭和48年に失踪(しっそう)した主婦の2児が拉致された事件は、総連幹部が設立した都内の貿易会社が舞台になっていた。

 朝銀信用組合の破綻(はたん)の原因となった不正融資事件で、総連中央本部の元財政局長が警視庁に逮捕されたが、朝銀から総連に還流した巨額のカネが、どれだけ北に流れ、何に使われたかなど詳細は不明だ。

 国民が本当に知りたいのは、こうした疑惑だ。検察、警察当局は、朝鮮総連の“闇”に迫ってもらいたい。

(2007/07/22 05:32)

【産経抄】

 新潟県柏崎市に工場をもつ自動車部品メーカー、リケンの前身は理化学興業である。理化学研究所長だった大河内正敏が昭和2年に設立した会社だ。まだ農村に近かった柏崎に出現した近代的工場に感激、大河内を慕って上京したのが田中角栄少年だった。

 ▼やがて田中は自ら会社を興し政治家、首相への道をたどる。「一年中太陽がふりそそぐ太平洋側で工業、雪に閉ざされる日本海側で農業というのはおかしい」というのはその名セリフだった。「列島改造論」の原点は理化学興業にあったと言ってもいいだろう。

 ▼そのリケンの工場が中越沖地震で被害を受けたとたん、トヨタなど12の自動車メーカーが生産ラインを止めた。何と国内エンジン部品の50〜70%のシェアをリケンがもっている。地震で工作機械の一部が倒れて操業が止まり、そうした部品の供給ができなくなったのだ。

 ▼皮肉にもその最中、トヨタの今年上半期の販売台数が世界一となったことがわかった。コスト削減のため部品の在庫を持たないなどの特殊な事情もある。それにしても、日本経済の牽引(けんいん)車である自動車産業を日本海側の一工場が支えている。そのことには驚いた。

 ▼考えようによっては、角栄流「列島改造」が実を結んでいると言えるのかもしれない。しかし地震を振り返ってみると、亡くなったのは全員が70歳以上だった。ほとんどの人が一人暮らしや、高齢者だけの世帯であった。家を失ってしまったお年寄りも多かった。

 ▼「地方」が日本経済の「心臓部」を担うことはできても、高齢者が家族といっしょに安全に暮らすことはできない。豊かな街づくりと結びついていなかったのだ。いったい地方の振興とか格差是正とは何なのか。考えさせられてしまう。 

(2007/07/22 06:23)


【日経・社説】

社説 〔07参院選 政策を問う〕実効性ある地球温暖化対策を競え(7/22)

 地球温暖化の 抑制は今や国際政治の最重要テーマの一つである。今回の参院選は日本でも温暖化対策が重要な政策課題だと広く認識されるようになってから事実上、初めての 国政選挙だ。選出される議員の任期と重なる格好で日本は京都議定書に基づき2008—12年に温暖化ガスの排出を1990年比で6%減らす実行を迫られ る。13年以降の枠組みづくりでも今後、主導力を問われる。各党は温暖化問題に対する重い責任を自覚しているだろうか。

経済的手法が不可欠

  温暖化対策の重要性では各党とも認識が一致している。ほとんどの政党が選挙公約で環境問題を柱の一つに据え、温暖化対策の基本的な考え方を示している。自 民党は「環境立国への主導力」、民主党は「地球環境で世界をリード」などの標語を掲げており、標語を見ただけではどの政党なのか区別できないほどだ。

  ところが、各党とも京都議定書の定めた目標達成については強い決意が見られない。目標達成に向けた対策強化をうたう自民党も達成を確約していないし、他の 政党も達成を明言していない。先進国にだけ排出削減を課した京都議定書は温暖化防止の第一歩である。温暖化対策で世界を主導するつもりなら範を示すべき だ。国会が全会一致で批准承認した議定書の目標を、達成できなくてもしかたがないという気持ちになっているとすれば、問題である。

 90 年比で6%削減の目標達成は容易ではない。日本はすでに90年比で約8%も温暖化ガス排出が増えており、これから14%相当の削減が必要になる。目標達成 には産業界だけでなく国民すべてに対応を求めざるを得まい。自民党が掲げる国民運動の展開はその意味で重要だ。ただし、ライフスタイルの変更まで問われる 課題でありながら、各党とも公約はおしなべて厳しさに欠ける。

 排出削減を自律的に進めるには、削減が利益につながる排出権取引などの経 済的な手法の導入が欠かせないが、自民党は国内での排出権取引導入を明記していない。日本経団連や経済産業省は、事業所ごとに排出上限を定める形の排出権 取引に反対を続けており、自民党は産業界の排出削減を経団連の自主行動計画に委ねている。社会システムの変革を求められているときに、これまで通りの姿勢 でいいのか疑問である。

 議定書の目標達成やその後の継続的な削減を考えれば、排出権取引は不可欠の手段になるはずだ。経済的手法の導入 という点では民主党の方が積極的で、公約に国内排出権取引市場の創設を明記している。排出権取引市場はすでに欧州連合(EU)が整備し、先行している。京 都議定書を離脱した米国でも、政府と距離を置く地方自治体や企業が排出権取引の導入に動いている。世界の潮流を考えれば、民主党の主張の方に理があるとい えるだろう。

 民主党は温暖化対策税を導入する考えも示している。前回の衆院選の際の公約にも盛り込んだが、考え方が同じなのか定かでは ない。税の趣旨や課税方法、増税なのか既存のエネルギー諸税の組み替えなのか、税収をどう使うのか。消費税を上げないとする同党が温暖化対策税の導入を言 うなら、詳しい説明が必要だ。

 温暖化防止に向けた中長期の目標でも政党間に違いがある。

達成の道筋を明確に

  安倍晋三首相は6月の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)で50年までに世界の温暖化ガス排出を半減させる提案をし、宣言にも文言が盛り込まれ た。その実績は評価すべきだが、日本自体の中長期の削減目標を明示していない。この点では民主党が20年に1990年比で20%減、50年までに半減と日 本の目標を明確にしている。

 京都議定書以後の国際的枠組みづくりでは、自民、民主両党とも主要排出国の米国、中国、インドの参加を促す としている。米中印を巻き込む外交戦略からは、日本の中長期の削減目標をいま明らかにした方がよいか、判断は分かれるだろう。自民党が公約の中で日本の中 長期の削減目標を示さない理由は、外交戦略上の理由なのか、別の理由もあるのか、自民党に問いたい。

 安倍首相はポスト京都議定書につい て、柔軟で多様な枠組みを提案した。それを日本が拘束力ある削減目標から逃れる布石とみられるようでは、温暖化対策外交で主導権を握ることはできない。 20年に20%減の目標を掲げた民主党も、実現の根拠、目標達成への道筋と覚悟を示す責任がある。民主党よりも高い目標を掲げた政党もしかりだ。温暖化防 止で重要なのは実効性である。志を高くしたうえで、低炭素社会に着実に結びつく政策論争を望みたい。

【日経・春秋】(7/22)

 最初の3日で1000件を超えたという。「証拠はないけれど確かに払った年金保険料の記録が残っていないのはおかしい」。そんな訴えを聴き本当に払ったかどうかを判定する年金記録確認第三者委員会が受け付けた「申し立て」の数だ。

▼ 自分たちのいいかげんな仕事の後始末に税金を使い第三者の手を煩わせる始末になったと、申し立ての受付窓口になる社会保険庁の職員はよほど反省しないとい けない。年金保険料は国民から預かったお金。大切に扱わなければ、との当たり前の責任感を持ち合わせていなかったのだから。

▼国民からの 預かり金を巡って、こんな逸話がある。1940年3月に、今の東京都中央区晴海の埋め立て地を主会場にして万国博覧会を開くはずだった。地鎮祭をすませ事 務局棟もできた後に無期延期が決まったが、資金づくりのため前売りした入場券100万枚のうち約2割が払い戻されないまま国民の手に残った。

▼30 年後、大阪万博のとき、これをどう扱うかが国会でも取り上げられ結局「国民の協力を求めて販売された」経緯を考え、入場券として通用させ実際 3077枚が使われた。以上の逸話を生んだ「幻の万博」の記録映画が中央区立郷土天文館で見られる。社保庁の職員はこれでも見て、お金を預かる責任の重さ に思いを致してほしい。


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2007年7月21日 (土)

7月21日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月21日朝刊)

[米軍装甲車侵入]実に傍若無人な行為だ

 米軍は一体どういう感覚をしているのだろうか。

 装甲車というのは、物資や兵士を運ぶトラックなどの車両とは異なり戦闘車両といっていい。そのような米海兵隊の異様な車が、うるま市にある県立沖縄高等養護学校の敷地内に侵入し、方向を転換して出て行った。

 海兵隊は誤って進入したことを認めている。だが、生徒らの恐怖感をあおり、不安を与えたのは確かだ。米兵の傍若無人な行為には怒りを覚える。

 防犯カメラには迷彩色を施した装甲車が正門から入り、しばらくして出て行くのが写っている。言うまでもないが、周辺の風景からそこが学校だということは容易に察しがつく。

 しかも、装甲車がUターンした所は生徒らが日常の活動を行っている場所だ。実際、装甲車が入ってきたとき、生徒五、六人が近くを走っていた。

 そのような場所に乗り入れ、四十秒ほど後進や前進を繰り返したというのだから呆れ果てるしかない。兵士への教育はどうなっているのか、在沖海兵隊指導部の感覚を疑わざるを得ない。

 同校の塩浜康男校長は、「養護学校には、大きな音や見慣れないものを見るとパニックを起こす生徒もおり、許せる問題ではない」と話している。

 仲井真弘多県知事も「常識外というか、普通なら考えられない。あいさつも断りもなく(学校内に)入るなんて、日米地位協定以前の問題。非常識の極み」と述べている。

 当然であり、今回の行為は絶対に許されるものではない。

 海兵隊報道部は「日米地位協定に基づき、通常訓練から戻る途中だった。地域に不安を与えたとすれば残念だ」とコメントしている。

 宜野座村漢那の村加工直売センター「未来ぎのざ」駐車場への乗り入れしかり。米軍は、事あるたびに地位協定を盾に弁明するが、もうそういうことをやめさせようではないか。

 確かに地位協定は、基地や訓練施設間の移動の際の公道使用を認めている。だが、それは今回のように学校施設内にも及ぶのだろうか。

 もし、そうであればそれこそおかしいのであり、地位協定を抜本的に改正していく必要がある。

 外務省は「学校に無断で進入することは不安を与える行為であり、今後同じことが起きないよう米大使館に申し入れたい」と言うが、悠長に過ぎる。

 私たちが求めるのは外務省による怒りの抗議であり、県民の憤りを県民の側に立って訴えることだ。申し入れるだけではなく、このようなことは二度としないと約束させることが大事だ。

[キジムナーフェスタ]親子で感動を味わいたい

 先ほどまでおしゃべりしたり、ふざけ合っていた子どもたちが舞台が始まると、じっと見入る。興味津々といった表情だ。そして笑いの渦が会場を包む。演技者の一つ一つの動きにくぎ付けだ。子どもたちは目を輝かし、演劇に感動した様子だった。

 昨年の国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ(愛称・キジムナーフェスタ)の一公演の光景である。優れた児童演劇は国も言葉も越え、子どもたちだけでなく大人の心も魅了する。

 今年のキジムナーフェスタは、二十一日から二十九日までの九日間、沖縄市で開かれる。沖縄市、実行委員会などが主催し、沖縄タイムス社などの共催だ。

 世界十五カ国から三十九劇団が集い、四十六作品が上映される。

  新しい企画としては絵本カーニバルがあり、「日本昔ばなし」でおなじみの市原悦子さん、常田富士男さんが民話の世界に誘う。このほか演劇を通して紛争地域 の子どもたちのことを考えるシンポジウム、バレエなどのワークショップ、琉球古典音楽、落語など多彩な公演がめじろ押しだ。

 三回目となるフェスタは好評で、前売り券が完売した作品も多いという。過去二回で、世界の児童演劇の素晴らしさがすっかり定着したのだろう。見る人たちの五感に訴える演劇の奥深さが理解されたのかもしれない。

 優れた文化、芸術との出合いは子どもたちの感性を磨く。子どもの時に触れた文化、芸術がその後の心の成長に大きく影響するからだ。郷土文化で子どもたちの心をはぐくむと同時に、楽しみながら世界の文化に触れるのがキジムナーフェスタの良さである。

  さまざまな言語による物語。創造性をかきたてる演技。心を和ませるユーモア。舞台と会場の一体感も楽しい。どれも生の演劇でしか味わえない感動がある。演 劇を通して世界の出来事を知る絶好の機会にもなるはずだ。夏休みも始まった。親子一緒に夢にあふれる舞台をぜひ見てもらいたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年7月21日 朝刊 1面)

 オールディーズのバンドで有名な那覇市松山のライブハウス。午前零時を過ぎて、いよいよ盛り上がりを見せるころ、車いす四人を含むグループが入ってきた。

 客が乗れば大半はフロアで踊る店だから、どうなるんだろうと心配したが、すぐに杞憂となった。何人かは常連さんのよう。頭上に大きく手拍子を打ち、上半身でリズムを取ってノリノリだ。何の違和感もない。

 彼らが入店した直後に、驚くべき光景が。フロアにある約十五センチの段差を、前輪を浮かし、バイクの「ウイリー」状態でバランスを取り自力で降りてしまった。ただ者ではない。話してみると、車いすバスケで有名な沖縄シーサークラブのメンバーだった。

 うちの一人、平良幸一さんの職場を後日訪ね、話を聞いた。「あれくらいなら、うちのメンバーだとだいたいできます。やろうと思えば階段だって降りますよ」。バスケは高さを競うので、片輪を浮かしてシュートする技もあるとか。

 平良さんは中学三年のときに不慮の事故で車いす生活になった。約三十年前だ。街に出ると奇異に見られ、差別的な視線を受けたと振り返る。今は障害者に対する理解や設備が進み、当時がうそのようだと言う。

 「不便ではあるが不自由さはない」と何度も繰り返す。でも平良さんのように、スポーツまで楽しめる例は少ない。「ほとんどの車いす利用者は、周囲の手助け、介助が必要なんです」と穏やかに話した。(山城興朝)


【琉球新報・社説】

米軍装甲車侵入 許されない傍若無人さ/占領意識の払しょくが必要だ

 またも米軍の事件であ る。18日、事もあろうにうるま市の沖縄高等養護学校内に米軍装甲車が無断で侵入し、公然とUターン。かと思えば、宜野座村の特産品加工直売施設の駐車場 に相次いで計7台の装甲車が乗り入れ、買い物客を騒然とさせる。まさに傍若無人の振る舞いである。
 装甲車が無断侵入し、Uターンした養護学校内では、陸上部の生徒たちがランニング中だった。同校の防犯カメラに映った映像を見ると、その危険性は明らかだ。
 突然の装甲車の学校侵入に「陸軍が入ってきた」と職員に訴えてきた生徒もいたという。
 養護学校の中には、人一倍繊細で敏感な生徒たちも少なくない。恐怖はいかばかりか。

行為は「非常識の極み」

 ヘルメットをかぶった兵士が装甲車のハッチから頭を出し、通りをうかがう様子も確認されている。
 米中枢同時テロ(9・11)以後、米国はアフガン進攻、イラク攻撃といまなお「戦時」にある。だからというのであろうか。
 有事でもなかろうに、学校内や民間地に装甲車が大挙押し寄せる。沖縄戦が終わってすでに62年。日米講和条約が発効し55年。米軍統治下から沖縄が本土に復帰して35年にもなる。まさか米軍は、沖縄をいまだ米軍統治下の占領地とみてはいないか。
 事態に、仲井真弘多知事は20日午前の定例会見で「いくら軍隊とはいえ、学校に断りもなく(乗り入れ)、Uターンするとは常識以前の問題だ」「非常識の極み」とまで怒りをぶつけている。
 米軍側の釈明はこうだ。特産品駐車場への乗り入れは「安全整備のために一時停車」。学校侵入は「一台が方向を誤り、国道224号沿いの学校の駐車場へ侵入したが、即刻方向転換し、車列に戻った」。とても納得などできない。
 安全整備の場所が足りず、民間駐車場を使う。沖縄本島の20%を占める米軍基地である。整備の場所はいくらでもあるはずだ。
 緊急な整備が必要な事態が起きたとすれば、なお問題だ。何しろ、3年前には整備不良で米軍ヘリを大学構内に墜落炎上させた“前科”もある。タガが緩んでいないか。
 米軍はそこが学校であることを認識しながら侵入している。本紙への回答文で米軍は「海兵隊は地域の方々そして隊員の安全を最優先事項としている」と強調しているが、学校への無断侵入は生徒の安全を無視した行為だ。
 しかも今回の一連の事件に、米軍は装甲車が「道路の通行を許可されている」としているあたりは、問題としての認識が欠如しているとも受け取れる。
 納得がいかないのは外務省の対応だ。学校内への無断侵入も含め「法的に立ち入ってはいけないとはならない」と、米軍の行為を容認している。

犠牲強いる“欠陥協定”

 日米地位協定に詳しい本間浩法政大教授は「米軍が無断で民間施設を使うことは全く許されていない」と、米軍の協定違反を指摘している。
 専門家の指摘を、外務省が否定する。「本土で起これば国会で厳しく指摘される問題」(本間教授)が、沖縄なら許されると米軍も外務省も甘くみてはいないか。
 3年前、本紙は日米地位協定改定キャンペーンを展開した。国民・県民に犠牲を強いる不平等協定の重大な問題点を、外務省の機密文書で明らかにした。
 航空法で禁じる米軍の低空飛行を「基地間移動」と拡大解釈で容認し、裁判権放棄で米軍優位の裁判を支援し、国内法違反の米軍戦車移送を法改定で合法化するなど対米追従の政府・外務省の姿勢と米軍優先の実態が、機密文書で次々に明らかになった。
 格安の自動車税、高速道路のタダ乗り、使い放題の光熱水費と、日米地位協定を超える「思いやり予算」の問題もある。
 「法律順守の意識を持っていない人たちが指揮官」(本間教授)という米軍にいかに再発防止を求めるか難題だが、学校への無断侵入すら「合法」とする外務省の対応は、あまりに悲しすぎる。
 地位協定違反の有無を問う前に、暴挙を抑止できない米軍優先の地位協定自体が問題の本質である。再発防止のためにも“欠陥協定”を国民本位に改定し、傍若無人の米軍のふらちな行動に、きちんと歯止めをかけたい。

(7/21 10:03)

【琉球新報・金口木舌】

 やはり、難しいということなのだろうか。「慰霊の日」を前に一般公開した「沖縄陸軍病院南風原壕群20号」は1カ月がたち、壕内の劣化が進んでいるという
▼先日開かれた「南風原平和ガイドの会」(藤原政勝会長)での意見交換会で、劣化は“予想以上”だということが分かった。一度に多くの見学者を受け入れず、じっくりと戦争遺跡と向き合い戦争の実相を知ろう、という取り組みは大切だ
▼これまでの見学者は2100人。一度の見学人数を10人以下に抑え、“壕の負担”を最小限にする取り組みにボランティアガイドの支えも大きい。壕中央の天井に掘られた「姜」の文字は劣化し薄くなっている。誰かが指で触れた跡もあるという
▼ガイドは、壕内のものに触れないよう見学者に説明するが、耳を傾けない人がいるのは残念だ。「保存と公開」の論議は以前から続く。保存処理のためレプリカにしたらどうかという声がある一方で、すべてを見せるのが重要との声も
▼保存処理には多額の費用が掛かる上、崩落の危険性もあるようだ。一般公開をした以上、公開しながら保存する方策について皆で知恵を出し合いたい
▼難しいから、とあきらめるわけにはいかない。戦争遺跡が語る歴史は重い。

(7/21 10:24)


【東京新聞・社説】

6カ国協議 米国は重荷を背負った

2007年7月21日

 北朝鮮の「核放棄」へ向けて「次の段階」の措置に進むことが合意された。しかし、肝心の実施期限は明記されなかった。北朝鮮との直接接触で六カ国協議を先導してきた米国の責任は重い。

 予想された通りだった。

 六カ国協議の首席代表会合は、三日間の日程を終え、中国の武大偉外務次官は共同報道文を発表して、参加国が「次の段階」への移行を確認したことを成果として強調した。

 さる二月の六カ国協議で合意した「初期段階の措置」である五つの核施設の稼働停止・封印は、すでに実施に移された。

 「次の段階」では、北朝鮮が「すべての核計画の完全な申告」と「すべての既存の核施設の無能力化」を実施することになっている。

 このため、今回の会合の焦点は「次の段階」の実施期限を設定できるかどうかにあった。

 米国代表のヒル国務次官補は「年内実施」の見通しを示していたが、北朝鮮は抵抗し、報道文に期限を盛り込めなかった。期限がなければ時間稼ぎを許すことになる。

 核兵器を体制保証の最大の“武器”とみる北朝鮮にとって、核放棄は存亡をかけた判断になる。期限設定の難航はかねて予想されていた。

 今回の会合では、八月に非核化、経済・エネルギー支援、北東アジアの平和と安全−など五つの作業部会、九月上旬には次回の六カ国協議を開くことで合意した。

 ここで、具体的段取り、期限を設定できるよう、周辺国はこれまで以上の連携が求められる。

 とくに米国には重い責任がある。最近、北朝鮮が求める米朝直接折衝にしばしば応じて、六カ国協議を先導する形になっているからだ。

 しかも、資金洗浄という不法行為を不問に付し、ヒル氏は平壌まで出かけて行った。協議の進展には、ある程度の妥協は必要だが、一度妥協すると、北朝鮮はさらに要求をつり上げ、時間稼ぎをする。

 これからもテロ支援国の指定解除や「体制の保証」など、難題を持ち出しそうだ。妥協は結果として核放棄を遠ざける。

 また米朝が進むのに伴い、北朝鮮は米国と他の周辺国との離間策を使い始めた。日本に対しては拉致問題などを理由に非難を繰り返し、米朝軍事会談を提案して韓国はずしを画策するなど攻勢をかけている。

 日本も韓国も「次の段階」での見返りの対北支援では重要な役割を果たさざるを得ない。それに、多国間の枠組みでなければ、「核放棄」は実現できない。米国は周辺国との一層の意思疎通が必要だ。

若者の雇用 正社員化進める方策を

2007年7月21日

 景気回復と団塊世代の退職などを背景に雇用情勢は改善したが、フリーターやニート(無業者)など若者の状況は厳しいままだ。参院選では若年者の雇用対策をもっと論じてもらいたい。

  今や労働者の三人に一人は非正規雇用者である。総務省の労働力調査では昨年の正規雇用者は前年比三十七万人増えて三千四百十一万人に、非正規雇用も四十四 万人増の千六百七十七万人となった。今年四月の完全失業率は3・8%と九年一カ月ぶりに4%を下回った。雇用の改善は順調だ。

 だが若者 たちの雇用は依然として厳しさが残る。十五−三十四歳のフリーターは三年連続で減少したが百八十七万人もいる。非労働力であるニートは六十二万人。せっか く就職しても三年間に離職する者が中卒で約七割、高卒で約五割、大卒で三割以上という“七五三現象”が続く。これが高い失業率に結びつく。

 こうしたことから今年の青少年白書は「社会的自立が困難な若者が多い状況は、健全な社会とは言えない」と警鐘を鳴らしたほどだ。

 フリーターなどを放置すれば所得や結婚、教育、年金などあらゆる場面で格差が拡大する。少子化対策も進まない。高齢化で生活保護も拡大しよう。政府が若年者対策に真剣なのもこうした理由があるためだ。

 政府の「フリーター二十五万人常用雇用化プラン」は企業によるトライアル雇用などを通じて若者たちの就職を支援するものだ。厚生労働省は「三十五万人の就職を実現し九割以上が正社員になった」という。

  政府はさらに再チャレンジ支援策の一環として国家公務員3(ローマ数字の3)種(高卒程度)で初めて中途採用試験を今秋に実施する。また十月施行予定の改 正雇用対策法では企業に募集や採用時での年齢制限を原則禁止し、中途採用の増加を求める狙いがある。これらはしっかりと推進すべきだ。

 だが肝心の企業側の姿勢は厳しい。日本経団連が昨年夏に実施した企業アンケートによると、フリーターの中途採用について約七割が「経験・能力次第で採用する」などと答えたものの、「採用しない」とはっきり回答した企業も24%強あった。こうした姿勢は変える必要がある。

  今回の参院選で各党は格差是正と雇用対策を重点公約に掲げている。自民党は就職氷河期に直面した年長フリーターの正社員化推進を掲げ、民主党も非正規雇用 者の均等待遇やフリーター・ニートの就職支援を打ち出した。各党の政策の方向は正しい。さらに踏み込んだ具体策をまとめ有権者の審判を仰いでほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年7月21日

 随筆家岡部伊都子さんは西瓜(すいか)好きである。 「ま夏はほとんどごはんが食べられない…ともかく、ではじめたころから、なくなってしまう終(おわ)りまで、毎日西瓜を配達してもらって…三度三度、西瓜 をしゃりしゃり食べておくのが、毎年のならわしとなった」(『伊都子の食卓』藤原書店)▼岡部さんは、沖縄で戦死した婚約者や、学徒兵として南方で戦死し た隣家の医学生と食べた西瓜が忘れられない▼灯火管制下の大阪・心斎橋に出て、二重の暗幕をあげてはいったある喫茶店で、少女が無邪気にかぶりついた真っ 赤な西瓜から、ピュッとお汁が飛んで、青年の頬(ほお)にかかった▼出征前夜「この戦争は間違っていると思う。天皇陛下の御為なんか死ぬのはいやだ」とい う婚約者に「私やったら喜んで死ぬけど」と言ってしまった。戦争に加担したという慚愧(ざんき)の思いが、戦後の文筆活動の出発点となる▼岡部さんは、自 殺を思いつめた人や、へとへとに疲れ切った人々にはこういう。「ともかくも、今夜はおいしいものを食べてちょうだい。あなたのいちばん好きなものを食べ て、それから、これからどうするかを決めましょうよ。おいしいものを食べて、美しくお化粧をしてね。それからよ、死ぬのは」。好きなものを食べることがで きれば生きていられる▼八十四歳になった岡部さんの著作百三十三冊から選(よ)りすぐりの言葉を集めた『清(ちゅ)らに生きる』(同)が出た。その一つに 「人間の愛とは、よりそうことだと思う。一方が一方に近づくのではなく、双方からよりそうことだ」とある。


【河北新報・社説】

’07参院選を問う 憲法/各党は争点明確化に努めよ

 憲法問題が参院選の鮮明な争点になっているかというと、そうとは言えない。公示直前から気になっていたが、自民党も民主党も憲法改正をめぐる各党間論争に後ろ向きに見える。

 年金問題などの風圧が強い自民党は「憲法は票にならない」と、自主憲法制定の党是や「憲法を参院選の争点に」とした安倍晋三首相の約束をどこかにしまい込んでしまった観がある。

 民主党の小沢一郎代表も公示前日の党首討論会で「参院選で憲法問題を掲げる必要性を私は認識していない」と述べ、憲法論戦に冷水をかけてしまった。
 こうした憲法問題の争点外しは二つの点で納得がいかない。

 参院選で「年金」に関心が集中しているのは確かだが、有権者は暮らしの問題だけでなく、「政治とカネ」や安全保障・平和の問題を含めて「国の針路をどう取ったらいいのか」「国の形をどうつくるのか」といったトータルな問いかけをしようとしているのではないのか。

 憲法は大事な問いかけの一つのはず。それを欠くことは有権者に目隠しをするのに等しい。これが納得できない一つだ。
 二つ目は、先の国会で成立した国民投票法(憲法改正手続き法)に関係する。安倍内閣は衆参両院のそれぞれ3分の2の同意が要る改憲発議を2010年に目指すので、この参院選は任期中に初の発議にかかわる参院議員を選ぶ選挙になるのだ。

 国民の憲法観は10年以降の国民投票時にいきなり問われるのではない。それは、この参院選を皮切りに国民投票まで行われる何回かの国政選挙を通して3分の2の合意勢力または反合意勢力を選ぶ過程で問われる。
 これだけ国民投票と深くかかわる今回の選挙で憲法を語らないわけにはいかないだろう。

 新憲法草案をたたき台とした「改憲」の自民、不足点や改正
点を補い改める「論憲」の民主、環境権などを重視する「加憲」の公明、争点化に積極的な「護憲」の共産、社民、自主憲法の国民新…。有権者は各党の立場と主張を比較したいのだ。

 その上で、自民、民主の両党にあらためて注文がある。
 安倍政権は衆参両院の3分の2の改憲発議勢力が不可欠な将来の明文改憲とは別に、首相の肝いりでつくった政府の有識者会議「安全保障の法的基礎に関する懇談会」で日米同盟強化に向けた集団的自衛権行使の容認を柱とする解釈改憲の道をこの秋までに開こうとしている。

 少なからぬ世論は解釈改憲路線が暴走しないか危うさを感じている。安倍首相はこれを否定するなら、明文改憲と解釈改憲の関係を整理して示すべきだ。
 民主党の小沢代表は「憲法改正は国民の合意がなければできない」と繰り返し強調する。しかし、これは当たり前のことだ。
 国民投票法成立後にとりわけ政党に求められる役割は、党としての明確な憲法観と方針を持ち、国民的な合意を形成するための先頭に立つことだろう。
 「国民的合意」という言葉は決して党内意見を調整するための隠れみのではないのだから。
2007年07月21日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 仙台市の緑化行政はどうもちぐはぐだ。湿った半日陰を好むモチノキを人口100万人達成の記念に、日当たりのいい市役所前庭に植えたことがある。 当然、ほどなく枯れた▼街路樹のトウカエデの葉が市内の全域で黄変したことがある。なぜか市は樹木の病気と思い込んだ。薬剤を散布したり枝を切ったりし た。原因は単なる水不足だったことが後に分かる

 ▼ 今回は地下鉄東西線工事に伴う青葉通のケヤキをめぐる迷走だ。当初、223本のうち50本の撤去が必要だった。市は全部を移植する方針を示したが、実に多 くの市民が反対して計画撤回▼年老いたケヤキを移植しても残念ながら多くが枯れてしまう。高額な移植経費も問題だ。常識で考えてみれば、結論は言わずもが なだったろう。かわいそうでも、やはり伐採が妥当な選択だ

 ▼市が委嘱した杜の都の環境審議会にも責任がある。というのは、過去に移植し たケヤキの多数が枯れ、それを表ざたにするなという意見が委員から出ているからだ。事実を隠され、市民は蚊帳の外に置かれた▼おかげで2度も市民アンケー トを行うなど痛い授業料を払った。ただし維持管理に法外な費用がいらない緑化を考える契機にはなったか。ちぐはぐぶりを解消するためにも今後は市民がオー プンに議論できる場をぜひ。

2007年07月21日土曜日


【京都新聞・社説】

6ヵ国協議  「次の段階」中身が重要

 相変わらず北朝鮮のペースだったということだろう。
 北朝鮮核問題をめぐる六カ国協議の首席代表会合は三日間の協議を終え、共同報道文を発表した。
 二月の六カ国協議での合意に基づく核施設稼働停止など「初期段階措置」開始を受け、「次の段階」となる核施設の無能力化と核計画の申告について、北朝鮮が「真剣に履行する」ことを確約。八月中に五つの作業部会、九月上旬に次回六カ国協議を開催することなどで合意した。
 米国が強く求めていた履行期限は盛り込まれず、作業部会に先送りされる形となった。北朝鮮が交渉のテーブルに着くことを優先させたともいえよう。
 米朝枠組み合意による二〇〇二年までの「核施設凍結」状態に戻っただけとの見方もできるが、二月以降、足踏みが続いていたことを考えると前進には違いない。この流れを大事にしたい。
 とはいえ楽観はできない。北朝鮮の今後の出方など不透明な部分が多い。しっかり見極める必要がある。
 五カ国は最終目標である北朝鮮の核廃絶に向け、結束を一層強めなければならない。本当の交渉はこれからだ。
 焦点は、作業部会で調整する「次の段階」の中身と期限だ。「無能力化」の定義や対象施設、手順を決めるだけは十分とはいえない。二度と使えない状態になったかどうかの検証が不可欠だ。
 核計画の申告も同様だ。プルトニウムなどに加え、米国は高濃縮ウランによる核開発疑惑も申告対象としている。計画自体を否定している北朝鮮が、簡単に応じるかどうか。仮に受け入れたとしても自己申告をうのみにはできまい。
 いずれも、検証にかかる期間も考慮し履行期限を定める必要がある。
 二月合意では、「次の段階の措置」を達成すれば、五カ国は重油九十五万トン相当の支援を行う手はずだった。
 履行期限に合意しなかったのは北朝鮮の引き延ばし作戦との指摘もある。措置を細かく区切り、支援を少しずつ引き出す狙いではないか、というわけだ。
 すでに北朝鮮は、見返りとして軽水炉提供などを求めているという。さらに米国に対し、テロ支援国家指定の解除などを要求する構えとも言われる。
 ここに至ったのは、米国が譲歩に譲歩を重ね、北朝鮮に足元を見透かされた結果でもある。
 イラク政策が行き詰まるブッシュ政権にすれば、北朝鮮外交で得点を稼ぎたいところだろうが、あせりは禁物だ。
 拉致問題が進展しない限り支援には参加しない、との方針を貫いている日本も考えどころだ。このまま「次の段階」に進むようだと孤立しかねない。
 日朝作業部会で拉致問題の進展をめざすと同時に、これまで以上に各国に日本の立場についての理解を求める必要がある。日本外交の真価が問われよう。

[京都新聞 2007年07月21日掲載]

地震と原発  事後対応も見直さねば

 新潟県中越沖地震で起きた東京電力柏崎刈羽原発事故について、東電は計六十三件のトラブルが発生したことを明らかにした。
 発生数の多さとともに、事故後の対応に数々の不備があったことに驚く。ハード面の改善はもちろん必要だが、今回の事故を教訓に、全国の原発でソフト面の見直しも徹底させる必要がある。
  東電の発表では、地震により七基ある原子炉すべてが設計時の想定を大幅に上回る揺れに見舞われた。いずれも炉の本体部分に異常はなかったが、うち一基では 二日間にわたり、微量の放射性物質が大気中に放出された。使用済み燃料プールからこぼれ出た水の一部が海に流出したことも想定外の事態だった。
 変圧器の火災は、地震による地盤沈下による影響で高圧ケーブルがショートし絶縁用の油に引火した可能性が高いことが新潟県などの調査で分かった。
 さらに、同原発では油火災に対応できる化学消防車はなく、四人の社員が変圧器火災現場にかけつけたものの、消火栓からの水の出が悪く、爆発の恐れから傍観していたことも明らかになった。
 事故時の対応マニュアルはあったが、今回のような同時多発的なトラブルに対しては、設備も人員態勢も不十分だったのが実情ではないか。
  大気中への放射性物質漏れの防止などは、原発職員にとって基本中の基本だろう。マニュアル通りに排風機を止めていれば防げたはずの事故が、なぜ防げなかっ たのか。うっかりミスで片づけることはできない。作業員のミスが致命傷となったチェルノブイリ事故のようなケースもあるのだから。
 事故後の情報開示も問題が多い。東電は地震発生後、放射能漏れの恐れはないと言い続けた。だが、当日深夜になって外部への水漏れを発表した。大気中への微量放射能漏れは、翌日になってから発表した。
 こうした対応に地元が不信感を抱くのは当然だ。柏崎市の会田洋市長は地盤の傷みを理由に消防法に基づく使用停止命令を東電に出したが、東電の対応への不信感も含まれているのではないか。
 万一の場合には住民を避難させる責任がある地元の行政や警察など関係機関にどこまで情報が提供されていたのか。東電側の情報管理、開示態勢について国は厳しく検証するべきだ。
  ハード面では、原発周辺の海底断層について東電が一九八〇年ごろに確認した際、断層の規模を過小評価したため、設計面で考慮されなかったことも明らかに なった。地層のたわみを重視する変動地形学の観点を考慮しなかったためというが、結果として断層が原発直下まで延びていたことを見落とした。
 想定外のトラブルが多発した今回の事故は、地震列島・日本で、原発の安全を守るのが容易でないことを示している。

[京都新聞 2007年07月21日掲載]

【京都新聞・凡語】

 狗(いぬ)の肉を、羊の肉と偽って売るから「羊頭狗肉(ようとうくにく)」。見かけ倒し、看板倒れの意味だ。北京の「段ボール肉まん」は典型と 思っていたら、テレビ局のやらせ報道だったという▼「告発番組」の看板を掲げたテレビ局自身が、羊頭狗肉だったわけだ。もっとも、市民には段ボール肉まん を信じる声も多い。「中国製品の信用低下を懸念する当局が、やらせ報道と言いくるめた」というのだ▼北京の騒動に驚いてはいられない。新潟県中越沖地震で 深刻な看板倒れが明らかになった。「耐震は万全」としてきた柏崎刈羽原発の、ずさんな防災態勢と断層調査の甘さが露呈。行政命令による運転停止に追い込ま れた▼柏崎市では、自動車部品工場が被災した影響で国内自動車メーカー全社が生産休止に陥る非常事態だ。トヨタをはじめとする得意の生産手法「カンバン方 式」が裏目に出た。徹底した在庫排除は、特定企業に集中して部品供給を頼っている場合は、弱点にもなるという証明だ▼政治家や官僚の看板倒れはもっとひど い。事務所費問題は言うに及ばず閣僚の暴言、失言。年金記録問題は、「日本の看板倒れ構造の象徴」と言ってよかろう▼段ボール肉まんと聞き、四年前の流行 語「毒まんじゅう」を思い出した。政官業を含め、日本社会から看板倒れの毒まんじゅうを全部吐き出させる。八日後の投票日こそ、その機会だ。

[京都新聞 2007年07月21日掲載]


【朝日・社説】

2007年07月21日(土曜日)付

参院選—この風向きをどう読むか

 優勢な民主党、不振の自民党——。朝日新聞などの調査で、こんな参院選挙の情勢が浮き上がってきた。

 いずれも現時点での推計だ。投票先を明らかにしない有権者も多い。獲得議席の推計幅は、朝日新聞調査の場合、自民、民主ともに10議席以上もある。それだけ競り合っているところが多いわけで、状況はまだ流動的である。

 それでも、自民、公明の与党にかなりの逆風が吹いているのは間違いない。与党が参院での過半数を失う可能性も小さくない。場合によっては、安倍首相の交代もありえないことではない。

 そうした空気を感じ取ってのことなのだろう。街頭演説などで危機感を訴える自民党の幹部や候補者たちのボルテージが上がってきた。

 「与野党が逆転すれば、法案はすべて通らなくなる。政局は大混乱だ」

 「政治をガタガタにされて困るのは国民の皆さんだ」

 まるで、このまま民主党政権になっていいのか、と言わんばかりである。

 もともと首相は、選挙が始まる前から「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民の考えを聞きたい」と党首力の戦いを挑み、政権選択選挙という構図を描いてみせた。

 対する小沢民主党代表も「負ければ政界引退」と退路を断って応じた。

 本来、参院選は衆院選のように政権を直接、選ぶものではない。問われるのは安倍政権10カ月の実績に対する有権者の評価である。とはいえ、今回は両党首の気負いに自民党の危機感が加わり、「政権選択」の雰囲気が色濃く漂う。

 さて、与党幹部が言うように、参院で与野党の勢力が逆転したら、本当に「大混乱」になるのだろうか。

 確かに、政府・与党が出す法案や予算案が、衆院は通っても参院で軒並み否決されるような事態は、与党には耐え難い「大混乱」だろう。

 だが、有権者から見れば、景色は違うかもしれない。与党だけで採決を強行する強引な国会運営はできなくなる。その意味で、政治が落ち着きを取り戻す「正常化」でもあるからだ。

 与党が法案を通したければ、野党の主張もとり入れる必要がある。たとえば「政治とカネ」の問題で、抜け穴だらけの政治資金規正法改正でお茶をにごすようなことでは通用しまい。

 民主党にも新たな責任が求められる。与党の案に説得力があるなら、野党が単に与党を追い詰めるために協力を拒んだり、法案をつぶしたりすれば、次の総選挙で有権者のしっぺ返しを食うだろう。政権交代をめざすと言う以上、民主党も軽はずみな態度はとれまい。

 政治の大混乱か、正常化か。政権交代へ歯車を進めるか否か。護憲や弱者、格差への対策を訴える共産党や社民党、あるいはミニ政党に期待を寄せるか。

 あと8日間の考えどころである。

6者協議—次は核施設を使用不能に

 核兵器の材料をつくり続けてきた北朝鮮の主な施設の動きが止まった。封印する作業も始まった。

 次に北朝鮮がしなければならないことは、すべての核計画の「完全な申告」と、すべての核施設を使えないようにする「無能力化」だ。それが2月に6者協議で合意したことである。

 新たな段階の措置をどのように実行していくか。それを話し合う6者協議が昨日まで北京で開かれた。

 2月合意を「真剣に実施する」と6者で確認したのは、当然のこととはいえ、好ましい展開だ。8月末までに五つの作業部会、9月初めに6者協議を開き、実施の行程表をつくることになった。できるだけ早く6者の外相会合を開くことでも一致した。

 だが、「申告」と「無能力化」をいつまでに終えるかという日時の目標は設定できなかった。この二つの措置は、北朝鮮が再び核兵器づくりに戻れないようにするためのものだ。実行の期限を切れなかったのは残念だった。

 とはいえ、6者協議のほか、米朝などの二国間対話で、かなり突っ込んだ意見のやり取りがあったようだ。合意の実行に向けて、作業部会で技術的な問題を含めて細かく詰めてもらいたい。

 その際に大事なのは、北朝鮮と5者がそれぞれ取るべき行動を段階ごとに決めて、綿密に組み合わせていくことだ。

 そうした作業はもちろん容易でない。

 核計画の「完全な申告」というが、北朝鮮はいまの核危機のきっかけとなったウラン濃縮の計画を認めていない。だが、少なくともパキスタンから濃縮装置が渡ったといわれる。申告では、こうした疑惑を解いてもらわねば困る。

 核兵器やプルトニウムなどの核物質がどこにどれだけあるのか。その実態も明らかにされなければならない。

 「無能力化」といっても、具体的にどの施設にどんな処置を施すのか。これまで北朝鮮の核施設が凍結されたことはあっても、永久に使えなくする作業は初めてだ。凍結解除—再稼働という過去の失敗を繰り返さないためだが、無能力化の方法を細かく定めなければならない。

 「申告」と「無能力化」に対応するのが、5者による「重油95万トン相当の経済・エネルギー・人道支援」だ。

 この支援を5者はきちんと実行しなければならない。だが、どんな支援物資をいつ渡すかは、北朝鮮が取る行動ごとに段階を踏んで進める必要がある。その行程表づくりが大切なのだ。

 今回、1時間を超える日朝協議もおこなわれた。それぞれが重視する拉致問題や過去の清算などで基本的な考えの応酬に終わったようだ。解決へ互いに努力することは確認したというが、突破口はなかなか見つからない。

 核の放棄という目標に向けて6者協議を動かしていく中で、日朝作業部会も活用し、話し合っていくしかあるまい。

【朝日・天声人語】2007年07月21日(土曜日)付

 小さな小さなイタリア車の話である。フィアット500が発売50周年を祝った。生産終了から30年たつが、ころころと子豚似の姿はチンクエチェント(500)の名で愛され続ける。過日の式典には各国から1500台が集まった。

  虚飾を排した13馬力の豆自動車に改良を重ね、世界で360万台が売れた。「楽しく、可笑(おか)しく、微笑(ほほえ)ましく、そして時に哀(かな)し く……小さな身体(からだ)の中にはイタリアの薫りがぎゅうぎゅうに詰め込まれていた」(岡崎宏司『わが心に残る名車たち』光文社)。

 チンクエチェント博物館(愛知県南知多町)の深津浩之さんは語る。「整備なしには走ってくれず、乗り心地も快適ではないが、自動車の機能はすべて備えている。機械の本質を伝える生きた遺産です」

 生産を止めた75年、皮肉にも「簡素を是とする時代」の幕が開く。同じ年、日本の衣料大手レナウンは〈飾らない、自分自身を偽らない生活〉を掲げたブランド「シンプルライフ」を発表した。西友が無印良品を世に問うのは5年後だ。

 衣食足りれば、関心は楽しみや安らぎに向かう。価値観は枝分かれする。中で一つ確かなのは、資源や環境の制約だ。大きく激しいモノやコトは、存在理由を厳しく問われよう。筆頭はもちろん、戦争である。

 欧州の路地裏で出会うチンクは、もともとベソをかいたような前面がつぶれ、大泣きになっていたりする。だが、まとう空気は雄弁だ。道具に飾りは要らぬ/まず人が汗をかけ/暑けりゃ窓を開けよ。それは地球からの伝言にも聞こえる。


【毎日・社説】

社説:6カ国協議 引き延ばし戦術を許すな

 北朝鮮の核廃棄をめぐる6カ国協議の首席代表会合が終わった。

 懸念された通り、北朝鮮は引き延ばし戦術に出た。「初期段階の措置」に続く「次の段階の措置」をいつまでに履行するかという期限の設定を拒み、結論は8月の作業部会に持ち越された。

 「核施設の無能力化」という総論で合意しながら、各論に入らず、見返りの経済支援は要求するという北朝鮮の基本姿勢が明らかになった。腹を据えて慎重に交渉を進めないと、成果はあがらない。

 今回、北朝鮮は2月の6カ国協議合意のうちで、「初期段階の措置」とされた寧辺(ニョンビョン)の核関連施設の稼働停止を実行した。

 だが、やすやすと応じたわけではなかった。米国が凍結処分していたマカオの銀行の北朝鮮資金について、凍結解除を要求し、その資金が北朝鮮に届くまで動かなかった。米国の対北経済制裁を揺さぶったのである。

 韓国に対しても、5万トン重油支援の先行実施を受け入れさせた。米韓が譲歩した見返りとして、北朝鮮は、やっと寧辺の施設を稼働停止した。

 今年1月、ヒル米国務次官補はベルリンで北朝鮮側と2国間協議を行った。2月の合意事項は、その延長上にあるとされている。

  その後、ヒル国務次官補は今回の会合の前に北朝鮮を含む関係国を往復した。「すべての既存核施設の無能力化」と、高濃縮ウランなど「核計画の完全な申告」 という「次の段階」の内容を具体化し、8月には6カ国の外相会合を開いて、核廃棄の日程表を決定できるという自信をのぞかせていた。

 だ が北京入りしてから会合の直前に米朝協議を3回もやったが、北朝鮮は「次の段階」に進む意思があるというだけで、問題は先送りされた。米国は「非核化には ずみがついた」と自画自賛しているが、北朝鮮を追い込んでいるというより、米国が振り回されたという印象がぬぐえない。

 次の舞台は作業部会になる。北の核廃棄を必ず実現するという協議の原点に立ち返って、米国は北朝鮮の戦術を再吟味し、日本や韓国、中国との足並みをそろえておく必要がある。そうでないと、議論は空転を繰り返すだけになるだろう。

 日朝協議も行われたが、日本側が解決を迫っている拉致問題は従来のまま進展はなかった。

 しかし北朝鮮側は、元公安調査庁長官が介在して詐欺事件に発展した在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物の問題を取り上げた。日朝の作業部会に尾をひく可能性がある。この問題を提起してきた真意がどこにあるのか、よく見極めておかなければならない。

 今回の首席代表会合では、国際世論が期待するような具体的な結果は出なかった。とりあえず次の作業部会につなげたという点では、必ずしも失敗したというわけではないだろうが、ずるずると北朝鮮のペースにはまらないよう警戒が必要だ。

毎日新聞 2007年7月21日 東京朝刊

社説:農業コンクール 規模拡大超えて地域再生も

 毎日新聞社主催、農水省、愛知県豊橋市・田原市など後援の第56回全国農業コンクール全国大会が豊橋市で開かれ、熊本県菊池市の農業生産法人「コッコファーム」が毎日農業大賞を受賞した。

  今回も農業コンクールには、各都道府県の中でも傑出した農業経営、農業技術をもつ43の農業者、法人が、その成果を出品した。書類審査で20件にしぼら れ、各分野の農業学者で構成される中央審査委員が、現地で成果を調査し、その上で、豊橋市での発表となった。10件に名誉賞(農林水産大臣賞)、10件に 優秀賞が贈られた。

 日本の農業政策は現在、従来の品目別経営安定対策から、品目横断的経営安定対策に、本格化に移行しつつある。具体的には、「担い手」と呼ばれる一定以上の規模の農業を営む認定農業者、集落営農に政策的支援をしぼり、日本農業の規模を拡大して国際競争力の強化を目指す。

 しかし、毎年の農業コンクールに出品する農業者・法人は、そうした農政改革の目標を、はるか以前に自力で実現している。その意味で農業コンクールは、日本の農業の強化・再生が可能であることを、実績をもって報告する場にもなっている。

  ここ数年の農業コンクールでは、先端的農業者・法人が、遊休地や耕作放棄地などをリースで活用して急速に規模を拡大する印象が強かった。しかし今年は、頼 平審査委員長が「私的な利益の追求だけにとどまらず、地元の農地や自然環境の荒廃を防ぐことに真剣に取り組み、有能な農業者の育成や高齢者の生きがいを高 めることに熱心だ」と講評したように、一定の実績を積み上げた農業者や法人が地域や日本農業の再生に取り組み始めたことが印象的だった。

  毎日農業大賞を受賞した「コッコファーム」の松岡義博氏は、40ヘクタールの鶏卵事業とその加工食品の開発などで25億円の売り上げを達成した。その実績 もさることながら、「過疎こそ宝だ」として、35歳までの若い農業者と55歳以上のベテランとの融合をはかり、自然環境型テーマパーク「コッコパーク」に 都市の人々を呼び込む構想など、地域への貢献や、農業から都市への発信なども評価された。

 ようやく本格化した農政改革をよそに、最先端の農業では規模の拡大に一定のめどをつけ、地域や農業そのものへの貢献が模索され始めたのかもしれない。

 また、前回の松山市での農業コンクールでは、南ア原産のキク科多年草オステオスペルマムの新種育成で、苗を欧米に輸出しパテント収入も得るビジネス、ビルの屋上や壁面を植物で覆うグランドカバープランツというビジネスの事例が報告された。

 今回の豊橋市のコンクールでも、全国13の動物園やサーカスの動物の飼料を一手にまかなうという、京都府南山城村の「クローバーリーフ」の西窪武氏の報告があった。農業の最先端では、従来の農業の枠を超えたアグリビジネスの分野も切り開かれつつある。

毎日新聞 2007年7月21日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「偽りのなき香を放ち山の百合」は飯田龍太の句…

 「偽りのなき香を放ち山の百合」は飯 田龍太の句。このユリはめったに人の入らぬ深い渓谷で見事な大輪の花をつけたヤマユリだと黛まどかさんが鑑賞文を寄せている(新日本大歳時記)。赤い斑点 のある白い花弁に金色の線が入ったヤマユリは優美な香りも名高い▲日本の山に自生するヤマユリが1862年に初めて英国王立園芸協会で紹介された時、英国 人は心底その美しさに驚いたらしい。「この花が英国で起こしたセンセーションほど大きな反響を生んだ花が他にあったか」とは出品した園芸商への賛辞だ▲花 の大きさ、気品、つける花の数、力強い香り、すべてが人々を魅了し、これを機に欧州でユリ栽培ブームが起こる。この時すでにオニユリやテッポウユリも伝 わっており、日本はユリの美しさで知られた(春山行夫著「花の文化史」講談社)▲おかげでユリの球根は明治から大正にかけて日本の主要輸出農産物になる。 1912年には横浜の種苗会社1社で1500万個のヤマユリの球根が欧米に輸出された。最盛期には各品種あわせた日本からの輸出球根は4000万個にの ぼったという▲だが、かつてのユリ大国日本も今日では、日本原産の品種などを改良した園芸種の球根を欧州から輸入している。先ごろ中国への日本産米の輸出 が話題となり、日本ブランドの農産物輸出が模索されているおりだ。ユリの昔話を聞けば、花卉(かき)の輸出も往年の勢いを取り戻せないものかと思う▲より 深刻なのは、かつてシーボルトら欧州の植物採集家を驚かせた日本の自生のユリが、乱獲や環境破壊で種類によっては見るかげもなくなったことだ。花を愛する 世界の人を感動させた「偽りのなき香」を日本の山野から失うようなことがあってはならない。

毎日新聞 2007年7月21日 東京朝刊


【読売・社説】

6か国協議 「北」の核廃棄へ楽観は禁物だ(7月21日付・読売社説)

 北朝鮮の核廃棄への手順を詰めることはできず、困難な作業は先送りされた。

 北朝鮮の核・ミサイルの深刻な脅威の下にある日本としては、とても先行きを楽観視することはできない。

 6か国協議首席代表会合は、8月の作業部会と9月初めの6か国協議、それに続く6か国外相会合という当面の日程を確認しただけで終わった。

 北朝鮮の核施設凍結に続く「次の段階」の措置をめぐる具体的な論議には入れず、焦点だった「次の段階」の履行期限目標は設定できなかった。

 2月の合意では、「次の段階」で、北朝鮮は「すべての核計画についての完全な申告」と「すべての既存の核施設の無能力化」を実施しなければならない。その見返りは、「重油95万トン分に相当する経済、エネルギー、人道支援」だ。

 米国は、「年末までに達成可能だ」として、今回の会合で、実施期限を声明文に盛り込むことを目指していた。そのためには、「次の段階」の行程表を作り、細部を詰める必要があるが、突っ込んだ議論はなかったようだ。

 核計画の「完全な申告」や、核施設の「無能力化」、見返り支援の内容とその実施方法について、作業部会は、どこまで十分に討議できるのか。その結果を踏まえて開かれる6か国協議で、行程表を示すことができるのかどうか。

 北朝鮮は核開発で獲得したものは何一つ放棄していない。核計画の申告や、核施設の無能力化が実行されたとしても、その先に、核兵器とプルトニウムなど核物質の廃棄という核心の交渉がある。

 どんな交渉ごとでも楽観は禁物だが、北朝鮮相手ではとくにそうだ。北朝鮮は「初期段階」の措置の履行では、「60日以内」という期限を守らなかった。米国に金融制裁の解除を要求し、マカオの銀行で凍結された資金の全額返還が実現するまでテコでも動こうとしなかった。

 現に、2月合意の完全な履行は、日本と米国の行動次第だとして、「敵視政策を解消する実際的な措置」をとるよう求めている。狙いは、テロ支援国指定解除や経済制裁解除だろう。「次の段階」で履行期限を設けても、見返りの要求が通るまで実行しようとはしまい。

 米国には、合意を急ごうとする姿勢が目立つ。だが、完全な核廃棄へ確かな行程も見えない現状では、安易に妥協を急いではならない。

 日本としても、そうした立場から、米国と緊密に協議する必要がある。8月の日朝作業部会で、北朝鮮の出方をしっかり見極めねばならない。
(2007年7月21日1時42分  読売新聞)

総連課税判決 「公益性」が明快に否定された(7月21日付・読売社説)

 「公益性は認められない」という極めて明快な判断だ。

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)側が東京都に課税処分の取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は、都の主張を全面的に認め、総連敗訴の判決を言い渡した。

 朝鮮総連中央本部の土地と建物について、都は美濃部都政時代の1972年、国交のある国の大使館など在外公館と同様、「外交機関に準ずる機関」として固定資産税などの免除を決定した。

 2003年、この決定を石原知事が見直し、年額約4200万円の税を納めるよう課税通知した。総連側はこれを不服として提訴していた。

 朝鮮総連は「政治的思惑による突然の変更は不当で、信義に反する」と主張した。「日本との民間交流の窓口の役割を果たしている」とも言ってきた。

 地方税法には「公益上の事由」で税を免除できる規定がある。この点について判決は、中央本部の施設は「内部組織の局、委員会などが使う事務室や役員室が相当部分を占めており、不特定多数の者に利用されていると認められる証拠はない」とし、公益性を否定した。

 都は、使用実態を調べ、課税権者として当たり前の対応をしたに過ぎない。そもそも、美濃部都政時代の免除の決定が問題だったとも言える。

 総連関係者が様々な不正工作に関与してきた経緯もある。都が「免除決定を都民が納得するかどうかだ」としてきたのは、それもあってのことだろう。

 都が課税に踏み切ってから、同様の決定をする自治体が相次いでいる。総務省も都道府県を通じ、安易な減免を続けていないか、再三にわたって見直しを求めている。しかし、それでも朝鮮総連関連施設のある自治体の約3割が全額免除したままだ。

 判決は、社会情勢などが変化しているのに、「漫然と減免措置を継続していることは、正当な職務のあり方とは言い難い」とまで述べている。速やかに課税に踏み切るべきだ。

 中央本部をめぐっては、整理回収機構が差し押さえの手続きを進めている。破綻(はたん)した在日朝鮮人系の朝銀信用組合から総連に流れ、不良債権化した約627億円を返済しないためだ。

 朝鮮総連は「中央本部の施設まで強奪しようとする総連弾圧だ」との抗議声明を出している。北朝鮮は国連事務総長に同様の書簡も送っている。法にのっとった措置への筋違いの抗議だ。

 破綻処理では1兆円を超える公的資金が使われた。納税義務はもちろん、返済責任もきちんと果たすべきだ。
(2007年7月21日1時43分  読売新聞)

【読売・編集手帳】7月21日付 編集手帳

 臨床心理学者の河合隼雄(はやお)さんは美しい花 を見ると、ときに心のなかで花に語りかけたという。「あんた、花してはりますの? わて、河合してまんねん」◆俳人の斎藤慎爾(しんじ)さんは「生と死の 歳時記」(法研)に書いている。「『わて』という存在が、一回しかない人生の中で河合隼雄という壮大な劇を演じる」と。人は誰もが透明の仮面をつけ、「… してまんねん」の人生を生きている◆「世界は劇場、男も女もみな役者」はシェークスピア劇の言葉だが、「いい人」と見られることに疲れたり、「元気者」の 看板が重荷になったり、ひとたび楽屋に戻れば、役者は誰しもへとへとだろう◆「わて、…してまんねん」。自分の姓をあてはめて呪文(じゅもん)を唱える と、すうっと肩の力が抜ける。疲れた現代人に数々の著書を通して薬剤を調合してくれた河合さんの、これも「心の処方箋(せん)」に違いない◆高松塚古墳の 国宝壁画を損傷した事故などで心労を重ねたのだろう。文化庁長官当時に脳梗塞(こうそく)で倒れ、療養していた河合さんが79歳で亡くなった。いまの世で は数少ない「大人(たいじん)」の風格をもつ人だった◆ついつい上っ面の正義を振りかざしたり、きれいごとの建前を並べ立ててしまったときなど、ひとり、 花につぶやくことがある。あんた、花してはりますの? わて、編集手帳子してまんねん。
(2007年7月21日1時42分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】07参院選 公務員改革 脱官僚主義へ議論尽くせ

 消えた年金問題で、社会保険庁のずさん極まりない“親方日の丸”の仕事ぶりに国民の怒りが集中した。与野党とも公務員制度の抜本改革を参院選の選挙公約の一つに掲げているのは当然だ。

 とりわけ与党は、天下り防止を柱とする公務員改革関連法を先の国会で会期を延長してまで成立させた。なおのこと安倍晋三首相は、選挙戦でもっと改革の重要性を国民に訴える必要があるのではなかろうか。

 緑資源機構など相次ぐ官製談合の背景には、天下りによる官民の根深い癒着構造がある。公務員の倫理観の乱れをこのまま放置してよいのか、改革は先送りできないところまできているように思える。

 政治評論家の屋山太郎氏が指摘するように、日本の官僚機構は行政だけでなく立法をも牛耳ってきた。それを許し、利権を共有してきた族議員ら政治家の責任は重い。そうした明治以来の悪弊を断ち切るためにも、公務員制度改革は進めなければならない。

 とりわけ問題なのはエリート官僚組織の専横ぶりだ。族議員を動かして業務実態が不透明な特殊法人や公益法人を次々と設け、自らがトップとして転身する。これもまた一つの天下りだ。ポストは数年で後輩にたらい回しされる。そんな仕事に責任感を持てないのは当然であろう。

 今回の法改正で国家公務員の再就職は、内閣府に設置する「官民人材交流センター」(新人材バンク)に一元化される。省庁ごとの従来型斡旋(あっせん)は全面的に禁止されることになる。

  移行時期などで一部与党議員の修正要求を盛り込んだ経緯もあり、新人材バンクには、野党などから「天下り公認機関」との批判もある。たしかに、実際に機能 するかどうかは、今後の制度設計の詳細にかかっている。安倍首相は、その具体像にも踏み込んで、国民に説明を尽くすべきだ。

 公務員制度改革の根本が、行政機構の効率化にあることは言うまでもない。官の役割を根本から見直し、行政コストの無駄を省いてスリム化を目指す。そのことは、公務員の仕事の質向上にもつながる。

 改革の必要性では野党も異存がないはずだ。選挙戦では、何より改革を前に進める論戦を期待したい。

(2007/07/21 05:02)

【主張】6カ国協議 会合の無能力化が心配だ

 北朝鮮の核放棄へ向けた「初期段階の措置」である核施設の活動停止を受けて開かれた6カ国協議は、停止した核施設の“無能力化”など「次の段階の措置」の実施期限を議長声明に盛り込むことができなかった。

 初期段階の措置は「60日以内」という期限が設けられたが、実際は3カ月も遅れた。それよりはるかに困難が予想される「次の段階の措置」に期限を設けられないようでは、実施はいつになることやら見当もつかない。

 6カ国協議は、米国が対北融和路線に転換して以来、いちだんと北朝鮮に振り回されているように見える。このままでは、北の核施設が無能力化する前に、6カ国協議の方が無能力化しかねない。再度、「対話」と「圧力」の原則に立ち返るべきだ。

 米首席代表のヒル国務次官補は期限を設定しなかったことについて、初期段階の措置が期限を設けて遅れたことをあげ、「注意深いやり方だ」と評価した。だが、そうであれば「期限は作業部会で設定する」というのは矛盾であり、言い訳にしか聞こえない。

 イラク問題に手を焼くブッシュ政権は、残り1年半の任期中に何とか北朝鮮問題では成果をあげ、得点としたい考えだといわれる。しかし、形だけの成果では将来に禍根を残すだけで、逆に失点と批判されることだろう。

 米国が次々と譲歩・妥協することを知った北朝鮮は、これからも見返り要求を強めるに違いない。国際金融機関からの対北融資に道を開くテロ支援国家指定の解除は、最優先項目だろう。最近は韓国からの米軍撤退、核撤去要求などもほのめかしている。

 テロ支援国家の指定は日本人の拉致事件も要因の一つだ。安易に解除するようなことがあれば、米国は北朝鮮の支持は得られても、同盟国・日本の支持は失うことになる。

 拉致問題に固執するあまり6カ国協議で孤立する−という説があるが、逆だ。国家として譲れぬ原則を堅持するからこそ、北朝鮮は日本を交渉相手とせざるを得ないのである。交渉しなくては何も得られないからだ。

 北朝鮮が安倍晋三政権への非難を強めているのは、拉致問題の重みの証明であると同時に、参院選の結果への期待の表れでもあるのだろう。

(2007/07/21 05:01)

【産経抄】

 亡くなった河合隼雄さんは60歳を過ぎてから「源氏物語」を通読している。若い時にも一度挑戦しながらよく理解できず挫折した。しかし大学の客員研究員として米国に2カ月滞在したのを機に再挑戦、一気にこの長編を読み切ったそうだ。

 ▼河合さんは言うまでもなく、臨床心理学の第一人者だった。だが、専門外のことでも博覧強記で知られていた。特に「源氏物語」をはじめ「とりかへばや物語」「落窪物語」「浜松中納言物語」など日本の物語への造詣は深かった。晩年は「物語博士」の趣さえあった。

 ▼なぜ物語なのかは著書『物語を生きる』(小学館)で述べている。河合さんらの心理療法は、対象者に症状を自分の物語に組み込み、語ってもらわねばならない。それぞれの物語を後押しすることが大切だ。それにはこちらも、さまざまな物語を知っている必要があるという。

 ▼そのうえで、「源氏物語」を「紫マンダラ」と分析している。この物語、実は作者の紫式部自身を描いたものだと。母、娘、妻とすべての体験をもったであろう彼女が光源氏という男性像を中心に据え、それとの関連で自らの「世界」を提示した物語だというのだ。

 ▼ちょうど、密教で宇宙の真理を描くマンダラの絵のようだというわけである。ここでは光源氏は現実味の薄い「最高の便利屋」みたいな存在である。「源氏」を理想的なプレイボーイの小説と読んできた者には、実に新鮮で「目からウロコ」の思いがした。

 ▼あたかも来年は「源氏物語千年紀」である。国際的なシンポジウムが予定され、通読しようという人も増えているという。俗に言えば「源氏ブーム」である。そんな意味でも、河合さんを失ったことは、痛恨のきわみとしか言いようがない。

(2007/07/21 05:00)


【日経・社説】

社説1 北朝鮮の時間稼ぎの6カ国協議では困る(7/21)

 北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議 の首席代表会合は3日間にわたったが、すべての核施設の無能力化など「次の段階」の措置の実行期限を明示できずに閉幕した。米首席代表のヒル国務次官補は 「今回の会合で勢いをつけることができた」と成果を強調したが、米政府の最近の対応は融和主義的で北朝鮮の時間稼ぎに手を貸しているようにさえ映る。

 今回の首席会合では6カ国協議の2月合意を踏まえ、全核施設の停止など「初期段階の措置」に続き、全核施設の無能力化と全核計画の申告など次の段階の措置の期限を設定することが焦点になっていた。

 ヒル氏は17日北京入りすると、翌日からの首席会合を前に、北朝鮮の金桂官(キム・ゲグァン)外務次官と四川料理をともにするなど同日中に3回も会談を重ね、次の段階は「年内に達成したい」と伝えた。

  首席会合の報道発表文に期限が明記されることが期待されたが、結局は見送られた。ヒル氏は「この時点で期限を区切る必要はない」との見解を示した。これで は計4時間に及んだ米朝会談は何だったのかと疑いたくなる。料理は辛かったかもしれないが、ヒル氏の北朝鮮への姿勢は甘すぎるのではないか。

 私たちが2月合意を「北朝鮮の全面的な核廃棄に向けた第一歩にすぎない」と限定的評価にとどめていたのは、あまりにも抜け穴が多いからだ。北朝鮮が保有する原爆やプルトニウムの取り扱いがあいまいだし、いったんは認めた高濃縮ウラン(HEU)計画も不透明なままだ。

 そもそも初期段階の措置への着手も2月合意よりも3カ月も遅れている。北朝鮮は初期段階を履行するに当たっても、2月合意にはない金融制裁の解除など様々な条件を出して5カ国を揺さぶってきた。

 6カ国協議の目的には日本人拉致問題の解決も含まれている。今回、外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長と金次官との会談がようやく実現したが、実質的な協議は8月末までに開催する日朝国交正常化に関する作業部会に先送りされた。

 6カ国協議が2003年8月にスタートしてから早4年となる。この間、北朝鮮は核保有宣言、ミサイル連射、地下核実験実施などと身勝手な振る舞いを続けてきた。

 これ以上、北朝鮮に時間稼ぎを許すことがないように、議長国・中国を含め5カ国は結束して「対話と圧力」を一段と強める必要がある。北朝鮮の「検証可能で後戻りのきかない全面的な核廃棄」を目指す6カ国協議の原点を忘れてはならない。

社説2 留保を要するバーナンキ証言(7/21)

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長 は18、19日、上下両院で証言した。金融政策運営に関する年2回の議会報告だが、信用度の低い人(サブプライム)向け住宅ローン問題の波及が懸念されて いるときだけに注目を集めた。議長は問題の重大さを認めつつ、経済の先行きへの市場の不安を鎮めようとした。

 問題を直視する姿勢は歓迎 したい。19日の上院証言ではサブプライムローンを組み込んだ金融商品の損失が「500億—1000億ドルに達する」との試算を紹介した。ローンの延滞や 担保の差し押さえで、ローンを組み入れた金融商品の価値が下がっているのを踏まえた発言だ。バーナンキ議長が挙げた損失額は、民間金融機関の推計にほぼ見 合っている。

 そのうえで、バーナンキ議長は国債に対する社債の金利上乗せ幅が依然低水準であることなどを挙げ、金融市場全体は問題を消化しつつあるとの認識を示した。バブル崩壊後の日本では銀行に不良債権が集ったのに対し、米国では証券化を通じてリスクが1カ所に集中していない。

  全体の景気についても、議長は住宅部門の不振を企業部門などが補う形で持ち直しつつあると指摘した。19日公開された、6月27—28日の連邦公開市場委 員会(FOMC)の議事録では、景気下振れリスクが低下したとの見方がFOMCメンバーの大勢だった。バーナンキ証言はこうした認識を踏まえたもので、株 式市場の安心材料になった。

 もちろん、住宅市場の調整がもたらす問題には引き続き注意が怠れない。例えば、米証券ベアー・スターンズ傘下のファンドが投資したサブプライムを組み込んだ金融商品は、洗い直すと紙くず同然だった。

  サブプライムよりは信用度が高い「オルトA」という層向けの住宅ローンも焦げ付きが増えている。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、 オルトAを基にした住宅ローン担保証券を格下げ方向で見直し中だ。市場価格で再評価しようにもできない金融商品も多く、投資家は含み損を抱えている。

 日本のバブル崩壊でも問題は数年かけ次第に顕在化した。米国の住宅市場も山が高かった分、調整に痛みは避けられない。油断は禁物だ。

【日経・春秋】(7/21)

 長嶋茂雄さんは高校時代、タイガースの藤村富美男選手に心酔し、そのフォームをまねて毎日バットを振り続けていた。「下手でも振って振って、好きで好きで夢中でやった」。本紙に連載中の「私の履歴書」で、こう振り返っている。

▼ 甲子園をめざす球児たちが地方大会で熱闘を繰り広げている。何かと物議をかもす高校野球ではあるが、一人ひとりの情熱はミスターにも引けをとるまい。「好 きで好きで夢中」になれるのが若さというものだ。スポーツに限らず、マンガ、写真、映画……。さまざまな「甲子園大会」に高校生が集い、競い合う。

▼ 正岡子規の故郷、松山市の「俳句甲子園」はこの夏で10回目。片や石川啄木ゆかりの盛岡市では昨年から「短歌甲子園」が始まった。今年の大会は出場校も増 え、33チームが啄木流の3行書き短歌に挑む。〈カバン一つ/負いて若さを供(とも)にして/ひゅっと往きたしひとに混じりに〉。昨年の団体戦優勝作品 だ。

▼「意欲がない」「勉強しない」。昨今の高校生の評判は芳しくないけれど、白球を追う若者も詩歌に没頭する生徒も、とても個性的だ。 それを抑えつけ、ありきたりの物差しを当てるのは大人たちなのだろう。早世した歌人、小野茂樹の歌を思い出す。〈あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一 つの表情をせよ〉


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2007年7月20日 (金)

7月20日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

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【沖縄タイムス・社説】(2007年7月20日朝刊)

[ゲートウェイ構想]実現への詰めが大切だ