« 2007年5月 | トップページ | 2007年7月 »

2007年6月30日 (土)

6月30日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月30日朝刊)

[尼崎JR脱線]背景に懲罰的企業体質

 百七人が死亡した二〇〇五年四月の尼崎JR脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、運転士に懲罰的な「日勤教育」を課すなどJR西日本の管理方法に問題があった、とする最終報告書をまとめた。

 事故の背景には、懲罰的な企業体質があり、ただ厳しく管理しただけでは事故を防げないと戒めている。

 事故原因は、日勤教育を恐れた運転士が車掌と輸送指令員との交信に気を取られてブレーキ操作が遅れ、時速七十キロを大幅に超える約百十六キロでカーブに進入、脱線したと考えられる、としている。

 日勤教育は、草むしりや就業規則の書き写し、反省文を延々と書かせるなど、一部の運転士は運転技術向上に効果のないペナルティーだと受け取っていたという。

 これまでの調査で、運転士は事故直前の駅で約七十二メートルオーバーランしていた。車掌が走行中にこれを無線で輸送指令員に報告。その交信を聞くことに気を取られ、ブレーキ操作が遅れたのではないか、とみられている。

 オーバーラン後、運転士は車内電話で車掌に「まけてくれへんか」と虚偽報告を依頼している。車掌は「だいぶと行ってるよ」と答え、乗客から「何でおわびの放送をしないのか」と言われて運転士との会話を打ち切った。

 このため虚偽報告に車掌は否定的だと感じた運転士が、車掌と輸送指令員の交信に「特段の注意を払っていた可能性が考えられる」と報告書は結論づけている。

  運転士はオーバーランなどで過去に三回、日勤教育を計十八日間受け、賃金の一部をカットされていた。友人に「次は乗務を外されるかも」と話していた。また 日勤教育をやらされるかもしれない、という恐れが車掌に虚偽報告を求め、無線交信に気を取られた心理的要因であり、今回の事故原因の核心といえる。

 一方で、乗務員に厳しく統制を求める半面、安全整備ではずさんな面も明らかになっている。ブレーキのハンドルが特定の位置に入ると利かなくなる車両が報告されたが、対策が講じられなかった。実際の速度を表示しない速度計も直さないまま使用していた。

 事故調査委は、新型の列車自動停止装置(ATS)が設置してあれば事故は防げたとしている。事故後、国はカーブでのATSの設置を義務付け、同社も安全設備を改善している。

 遺族の悲しみや怒りは今でも消えない。身近な公共交通・鉄道の安全を保つためにも、報告書の指摘を真摯に受け止めてもらいたい。

[クイナ繁殖計画]これこそ私たちの責任だ

 ヤンバルクイナを飼育によって繁殖させる試験実施計画を環境省那覇自然環境事務所が発表した。

 マングースや野犬、猫によって絶滅の危機にさらされている状況を考えれば、妙案といっていい。

 ヤンバルクイナは、“東洋のガラパゴス”と称される沖縄本島の北部地域だけに生息する貴重な動物だ。個体数を増やすことは、私たちに課せられた重大なテーマである。二〇〇八年度からの計画が危機的状況の打開につながるよう期待したい。

 環境省の計画は、来年の繁殖期(四―六月)までに繁殖の基礎となるヤンバルクイナのつがいを十組確保。慎重に飼育して、一七年度末には二百羽程度に増やしていく考えだ。

 国指定天然記念物を人工的に飼育する手法を疑問視する声もあるが、手だてを尽くさず絶滅の日を待つよりはずっといいのではないか。

 ここは人間の英知と繁殖技術の粋を集めて、トキの二の舞いだけは絶対に避けるようにしてもらいたい。

 ヤンバルクイナの発見はわずか二十数年前のことだ。当時、東村、大宜味村などで確認された固体はマングースの北上とともに北に追いやられてきた。

 山階鳥類研究所などの調査によると、〇四年に約八百十羽、〇五年には七百十七羽にまで減っている。この数字は、「個体数が千を切れば種の保存が難しくなる」という分岐点を超え、既に絶滅寸前にある証しといっていい。

 個体数減に、マングースなどの捕食が影響しているのは確かだ。

 だが、それにも増して私たち人間による輪禍、そして森林開発やダムや林道建設などの公共事業、畑地の開墾がその生息域を狭めてきたことも忘れてはなるまい。

 人工飼育による繁殖計画は、事態が一刻も猶予ならぬ時期を迎えていることを意味する。言うまでもないが、ヤンバルクイナは沖縄だけでなく世界的にも貴重な動物だ。絶滅を食い止めるだけでなく、今以上に数を増やしていくことを目指していきたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月30日 朝刊 1面)

 教員免許の十年更新制が二〇〇九年から導入され、更新時には講習が課される。「授業力」が先生に問われている。

 那覇市役所勤めから県内初の民間人校長となった横山芳春さん(宇栄原小)が四年目に到達したのは「授業中心の学校づくり」。子どもを高めるには上質の授業が不可欠であり、教員は教材研究を深める必要がある。

 職人は技を磨くべし、という当たり前の話だが、学校現場では「雑多な資料作成や諸行事に忙殺される」と職員が嘆き、一部の指導力不足の先生に管理職が頭を抱えるのが典型という。

 「教育改革論議の中で授業の大切さが死角に入っている」との懸念を校長経験者から聞く。教員の技量アップがおざなりでは?との疑問に民間人校長が立ち向かおうとしている。宇栄原小は全国に学校を公開する。

 教員が授業を自他校の教員に公開し、教授法を研さんする試み。他県にも参加を呼び掛ける。来年二月の予定で、教員は今夏から準備に着手。宮城教育大の横須賀薫前学長ほか本土の研究者らも入り、同校で教材研究に参画する。教えるプロに導かれる児童の輝きに注目したい。

 横山校長がうれしく思った言葉がある。教員免許更新制を決めた中央教育審議会の主要メンバーから「宇栄原小学校のようにやれば免許更新制度は必要ない」と評価された。自由に教材研究できる学校経営が不可欠だ。民間人校長が新風を吹かせるか期待したい。(屋良朝博)


【琉球新報・社説】

公安庁元長官逮捕 捜査を尽くし全容解明を

 事件は発覚当初から異例ずくめだった。
 表面化してわずか2週間余、意外な方向へ急展開した。容疑事実も報じられた当初とは大きく変わるなど、事件内容は一段と衝撃的だ。
 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売買をめぐる不正登記事件で、緒方重威・元公安調査庁長官が東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された。
 緒方元長官は35億円の購入代金を支払う意思がないにもかかわらず売買契約を結び、東京都千代田区にある朝鮮総連中央本部の土地と建物をだまし取った、という容疑だ。元長官のほか、仲介役とされた元不動産会社社長、資金調達役とされた元銀行員の2人が逮捕された。
 売り手の総連側には売却の意思があったと判断し、総連は詐欺事件の被害者との見方だ。
 緒方元長官は容疑を否認しているが、もし事実だとすればとんでもない話だ。法務・検察の信頼にもかかわる。
 公安調査庁のトップを務め、高検検事長を歴任した人物がなぜ詐欺に手を染めたのか。東京地検には事件の全容を早急に解明してもらいたい。
 事件は、中央本部の土地・建物の所有権が投資顧問会社に移転登記されていたことが発覚したのが発端だった。投資顧問会社の代表取締役が元長官である。
 朝鮮総連は、在日朝鮮人系信用組合の不良債権問題で整理回収機構から627億円の返還請求訴訟を起こされていた。長官らによる取引が代金を決済しないまま所有権が移っていたため、本部の差し押さえを逃れるための偽装売買の疑いが持たれていた。
 ところが事件の構図は一転した。元長官らが「投資する金主が確実にいる」などと偽って売買契約を交わし、土地と建物を詐取したというのだ。
 取引のすぐ後に訴訟を控えていた。機構側の請求が認められれば、中央本部は差し押さえられ、競売にかけられる可能性が強かった。特捜部が描く構図の通りであれば、総連側の弱みにつけこんだ悪質な詐欺ということになる。
 しかし詐欺はだまされた被害者がいる。いつかはばれる。大物検察OBがそんな単純な詐欺に走るだろうか。常識的に考えにくい。
 事件にはほかにも分からないことが多い。総連から元社長らに渡ったとされる約5億円にはどんな目的があったのか。
 総連が和解によって差し押さえを防ぐため、債務弁済の条件などをめぐり総連と首相官邸が協議していたとみられる、総連側代理人の元日弁連会長のメモも明らかになっている。検察の実態解明が待たれる。

(6/30 10:04)

飼育下繁殖計画 追い詰められたクイナ

 環境省の鳥類レッドリストで最も絶滅の恐れが高い「絶 滅危惧(きぐ)種IA」に分類されているヤンバルクイナを保護するための環境省の対策が、次のステップに進むことになった。本来なら改善に向かっているこ とを期待したいところだが、現実は深刻だ。これを機に、より一層クイナ保護に力を注がなくてはならない。
 環境省は28日、ヤンバルクイナの保護 策として飼育下繁殖を目指す「基本方針」を発表した。具体的には飼育下でクイナのつがいを10組つくって繁殖させ、10年後の2017年度末までに200 羽程度まで増やす計画である。既に繁殖試験は始まっており、来年3月までに10組のつがいを確保する方針だ。
 飼育下繁殖はトキ、ツシマヤマネコに次ぎ3例目となるが、軌道に乗せるのは容易ではない。
  しかし、繁殖が可能になれば、最悪の事態を回避できるだろう。環境省の計画では飼育下で繁殖させたクイナを野生に返す方法についても検討することになって いる。生育環境を整えたうえで、クイナの生息域を広げることが可能になろう。最も望ましいのは、クイナを自然のまま保護することである。この努力を続けな ければならない。専門家や地元の人々だけの問題ではない。県民一人一人が、自分の問題として取り組む必要がある。
 いよいよ飼育下繁殖が唯一の保護策となった場合、純粋の野生のヤンバルクイナの命は風前のともしびとなる。
 環境省には最悪の事態を回避する研究を進めてもらいつつ、わたしたちは、今できることを実践したい。
 クイナの輪禍を防ぐため車を徐行運転することもその1つ。犬、猫をやんばるの森などに捨てないことは当然のことだ。
 沖縄で誇れるものを問うた場合、多くの県民は「豊かな自然」と答えるだろう。ならば貴重な生物が絶滅すること、それはすなわち「誇り」を失うに等しいといえよう。現実の深刻さをしっかり受け止めたい。

(6/30 10:03)

【琉球新報・金口木舌】

 「宵越しの銭は持たぬ」は、江戸っ子の気性の1つだといわれる。江戸は2、30年ごとに大火があり、そのため人命や財産への保証がなく、蓄財意識が低くなったためともされる
▼その中で火災は運命共同体として連帯感を築き、定火消(じょうびけし)制度をつくった。火は一瞬にして住民の生命、財産を奪うだけに、何よりも迅速な消火対策が重要だ
▼豊見城市消防本部で慢性的な人員不足が深刻だという。そのため超過勤務が増えるなど災害への体制不備が浮き彫りとなった。消防職員1人当たりの人口は約1000人が理想とされる
▼5万3千人の同市では消防職員約50人が適正というが、現状は42人。平均年齢は46・8歳と県内消防で2番目に高い。休暇も思うように取れず、さらに市民への予防喚起のための防災訓練指導や講習会に対応するため休日出勤も増えているという
▼結果、職員の資格取得にも影響があり、水難事故の救命船を現場近くまで牽引(けんいん)するための免許を全職員が取得していないことも分かった。同市も改善に向け対策に動くが、自治体の財政難も深く影を落とす
▼となれば問題は、豊見城市消防だけではなさそうだ。「宵越しの銭―」と逃げず、防火体制に知恵を絞りたい。

(6/30 10:02)


【東京新聞・社説】

安倍政権 禍根を残す強行一辺倒

2007年6月30日

 社会保険庁改革関連法など重要法案の成立をもって、今国会は事実上、幕を閉じる。安倍晋三首相と与党の強行一辺倒の運営が目立った。議会の秩序を壊したのは禍根を残したのではないか。

 首相はメールマガジンで「国民のためにやるべきことを、ただひたすらに、愚直にやっていく。どのような批判を浴びようとも、この三法案は必ずこの国会で成立させる」と述べている。

 社保庁改革法と年金時効撤廃特例法に続き、天下り規制を柱とした改正国家公務員法も動きだす。言行一致して参院選で審判を仰ぐということなのだろう。

 与党が週内成立にこだわったのは、会期末ギリギリの来週まで持ち越せば、野党の出方次第で審議未了-廃案になりかねないためだ。強行採決の悪い印象を一日だけで済ませたい思惑も見え隠れした。

 野党が激しく抵抗し追い込んだ側面もあるが、強行採決を「国民のため」というひと言で片づけていいはずはない。

 終盤国会の最大の焦点は年金問題だった。国民が求めたのはもう記録の不備はないのか、なぜ問題は起こったのかを明らかにすることだ。政府は真相解明を有識者の検証委員会に丸投げし、説明責任は残された。

 与党は最終盤の衆院厚生労働委員会の審議を見送っている。野党は火付け役である民主党の長妻昭氏の質問を封じたと批判した。法案成立で区切りをつけ、参院選での逆風を鎮めたい与党の本音がちらついた。

 そもそも国会が荒れた発端は、首相が公務員法改正案の今国会成立にこだわり、会期を延長したことだ。これには与党内からも異論が出ていた。首相はメルマガ通り批判を浴びても押し通した。

  しかし、改正案は公務員の再就職を一元的に斡旋(あっせん)する「新人材バンク」の具体像など、肝心なところがはっきりしないままだ。野党は「あんこの 入っていないあんパン」と批判し、与党からも「野党の言う方が正しい。もう少し内容を詰めた方がいい」との声が上がった。

 審議する参院内閣委員会は野党議員が委員長とはいえ、最後は委員会採決を省いて本会議採決に踏み切る「荒業」まで用意した。

 今国会では改正案も含め審議時間が衆院の七割程度になれば、そのまま通すことが相次いだ。慣例化したら二院制の意味がない。

 わずかだが、会期はまだ残っている。首相が出席して年金問題などを審議すべきだ。それくらいしないと、参院選でしっぺ返しを受ける。

日本年金機構 監視の目が届くのか

2007年6月30日

 社会保険庁が解体され、非公務員型の日本年金機構ができても国民の年金不安は解消できない。国税庁と一体化した「歳入庁」など従来とは根本的に違う組織のあり方を検討する時期ではないか。

 機構は社保庁の年金業務を引き継ぎ、二〇一〇年にスタートする。業務効率やコスト意識を高める点においては多少ましになるだろう。

 だが、社保庁改革法案の国会提出は年金記録不備問題が表面化する前で、記録管理の徹底という視点に欠けている。総務省の検証委員会で記録不備の発生原因を解明し、再発防止策を盛り込むべきだったが、それがされていない。

  オンラインシステムに入力され該当者が不明の五千万件の納付記録、入力されずに放置されていた千四百万件の記録などについて、最後の一件まで年金受給に結 びつける作業が今後始まるが、社保庁解体で職員を大幅に減らして遂行できるのか。機構に移行する前にすべての作業を終えるよう全力を尽くし、責任が曖昧 (あいまい)にならないようにすべきだ。

 三年前、社保庁職員が年金保険料を娯楽施設の建設など目的外流用していたことが明るみに出た が、その防止策が機構では不徹底だ。保険料を「年金教育・広報」などに充てることが従来通り認められており、抜け道になりかねない。社保庁に群がっている 多数の天下り法人の廃止に一切手をつけておらず、流用継続の受け皿になる恐れがある。

 しかも機構の職員は「民間人」なのに給料は税金で賄われ、国家公務員よりも高水準になる可能性があると野党は指摘している。国家公務員法も適用されず天下りはし放題になる。これでは改革とはいえない。

 こんな看板の掛け替えのような組織が年金業務を引き継いでも国民の納得は得られない。特に国民年金の未納・未加入者の増加に歯止めをかけることは極めて難しく、無理に徴収しても反発を招き、徴収コストが膨れあがるだけではないか。

  現行制度の信頼がここまで失われた以上、制度を抜本的に変える必要がある。英米と同じように社保庁と国税庁を統合した「歳入庁」を設け保険料と税を一緒に 徴収する方式を検討すべきだろう。組織をスリム化できるうえ、規律が保て、天下りも規制できる。保険料の徴収率アップも期待できる。

 保険料を徴収する社会保険方式自体に限界があるなら、国民年金(基礎年金)の保険料を全額税で賄うことも視野に入れるべきではないか。国民の賛同が必要だが、未納・未加入問題は一掃され、国民すべてに年金が保障される利点があるからだ。

【東京新聞・筆洗】2007年6月30日

 逆転の決め手は「環境との共生」だった。今年は見送 りと思われた島根県大田(おおだ)市の石見(いわみ)銀山遺跡が、ユネスコの世界文化遺産に登録されることが決まった。地元紙は号外を発行、溝口善兵衛県 知事も「県民の願いが通じた」と大喜びだ▼五月のユネスコ諮問機関の現地調査では「普遍性の証明が不足している」と登録延期の勧告が出て、地元は落胆し た。だが、その直後からユネスコ日本代表部や文化庁、県の関係者が、登録委員会の各国メンバーに、説得の反転攻勢に出た▼大航海時代の海外文献や銀精錬の 工程の詳細を補足資料で提出した。とりわけ江戸時代、廃鉱跡に植林した先人の環境への配慮が、アジアや中南米代表から「未来につながる」と絶賛され、流れ が変わった▼新緑の季節に、この銀山遺跡を訪ねたことがある。川沿いに延びる緑のトンネルをくぐりながら、坑道跡の一つ「龍源寺間歩(まぶ)」に潜ってみ た。全長六百メートルの入り口から百五十メートルほどを歩いて見学できる。手を伸ばせば届く両側に、ノミ跡が確認できた▼石見銀山は十六世紀に開発が始ま り、「灰吹(はいふき)法」の導入で生産が拡大、最盛期には世界の銀産出量の三分の一を占めた。戦国大名の尼子氏、毛利氏が争奪戦を演じ、豊臣氏を経て江 戸幕府の天領となる▼十六世紀のポルトガルの世界地図には「イワミ」の名が記される。ジパングへの憧(あこが)れ、鉄砲やキリスト教伝来の裏に、スペイ ン、ポルトガルによるこの石見銀をめぐる覇権争いがうかがえる。世界史読み替えへの関心もそそられる今回の登録決定だ。


【河北新報・社説】

参院選まで1ヵ月/政治の気流はどこに向かう

 年金記録不備問題などを背景に安倍晋三政権への逆風がやまない。7月29日投票の参院選まで1カ月。世論の政権批判は続くのか、それとも政局の転換で潮目が変わるのか。それがこの期間の最大の焦点である。

 共同通信の世論調査(23、24両日)で、安倍内閣の支持率は33.5%と昨年9月の発足以来の最低を更新した。

 底流に年金不信はあるが、安倍内閣が国家公務員法改正案を与党攻勢に転じるための踏み台として仕掛けた国会会期延長が内閣支持率低落の歯止め策にはならなかったことを裏付けた。

 自民党の中川秀直幹事長は「今が(支持率の)底値で、流れは変わる」として、支持率回復は可能との考えを示す。

 それなら与党はこの先、局面打開に向けてどんなカードを持っているというのだろうか。

 参院選への実績にしたいのは改正国公法のほか社会保険庁改革法、年金時効撤廃特例法、改正政治資金規正法…。しかし、いずれも野党から構造欠陥を指摘されている法案で、これらが切り札となるか疑問符が付く。

 最強のカードは「時間」との言い方もある。与党内には、1カ月の時間をかければ年金問題批判を沈静化できないかとの思惑があるが、それは姑息(こそく)だ。

 「参院選で与党が負ければ、上向き始めた景気に影響する」という揺さぶりもカードになり得るが、今の景気の二極分化が地域格差を際立たせている現状では効果は小さい。6月からの住民税増税も景気に水を差す。

 自民党内では参院選に負けた場合の責任論が浮上し始めた。「大敗なら内閣総辞職も含めて考えざるを得ない」(舛添要一参院政審会長)といった声が出るのも、与党の議席過半数割れが現実味を帯びてきたからだ。

 しかし、首相が言うように政治は結果責任だ。責任論は党内の引き締め狙いでも、党外には敗北主義をさらけ出すもので、無責任としか言いようがない。

 自民党が選挙の責任を論じる前になすべきことは、世論が大きな関心と不安を抱く年金問題で、納得の行く具体的な対応策を誠実に積み重ねることだ。

 小泉前政権から負の遺産として引き継いだ格差問題で明確な是正策を示すことも重要。憲法問題もいいが、世論が求めるのは、生活に直結する分野で安倍色を鮮明にすることだ。

 自民党の森喜朗元首相は「参院選は中間選挙みたいなもの。政権を賭けるものではない」と言う。しかし共同通信の世論調査では、多くの人が与党敗北の場合に衆院解散を求めており、森発言はそうした感情を逆なでする。与党は参院選を政権を賭けた選挙と覚悟するべきだ。

 一方、民主党などの野党は年金問題を中心に据え、投票日まで与党を攻め続ける戦術に没頭するだけでいいとは思えない。

 小沢一郎民主党代表は「野党が参院で過半数を取れば、政権の枠組みの問題が生じる」と政界再編の可能性に触れている。

 それなら、再編後や政権交代後の政権の形を国民に戦略的に明示しておく必要があろう。
2007年06月30日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 尼崎JR脱線事故の遠因の1つに1991年の信楽高原鉄道事故を指摘する見方がある。民事裁判の一審で同鉄道とJR西日本の過失が認定され、JR が控訴。二審も敗訴で確定したのは2003年▼事故から10年以上だ。「損害賠償の裁判に勝とうとしている間に安全対策の改善という本質的な部分で負けて しまったのではないか」。失敗学で知られる畑村洋太郎東大名誉教授が書いている

 ▼ 法廷闘争の間、安全に対して上の空だったのかもしれない。少なくとも悲惨な事故から教訓を引き出し、安全の基本に据え直す姿勢には欠けていただろう。事故 を防ぐのは事故に学ぶ謙虚さだ▼国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が尼崎脱線事故の最終報告書をまとめた。懲罰的な運転士教育に対する問題提起や安全 軽視の企業体質など、さまざまな課題をあぶり出した

 ▼「女性が宙を飛んだ」「ねじりつぶされたアルミ缶のようなすき間を男性が吹き飛ん だ」「車内は洗濯機の中のようだった」。報告書が描き出す事故の瞬間にあらためて衝撃を覚える▼JR東日本は研修施設に事故の歴史展示館を設け、リアルな 訓練を行っている。信楽事故も展示施設がある。無論、JR西でも事故の芽を摘む地道な努力は続けていよう。風化させてはならない悲劇の記憶である。

2007年06月30日土曜日


【京都新聞・社説】

緒方元長官逮捕  徹底捜査し真相解明を

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部をめぐる売買事件で、元公安調査庁長官の緒方重威容疑者らが詐欺容疑で東京地検に逮捕された。
 公安機関の元トップで、高検検事長まで務めた大物検察OBが刑事責任に問われるのは極めて異例の事態だ。地検には、厳正公平な捜査で事件の徹底解明をあらためて望みたい。
 緒方元長官らは、三十五億円の購入代金を支払う意思もないのに、朝鮮総連代理人の土屋公献・元日弁連会長らに「確実な金主がいる」とうそをつき、所有権を移転登記させ、中央本部の土地・建物をだまし取った疑いだ。元長官は容疑を否認しているという。
 今回の事件の不可解さは、購入代金が支払われていないのに所有権の移転登記が行われていたことだ。
 朝鮮総連は、経営破たんした朝銀信用組合の不良債権を引き継いだ整理回収機構から約六百二十七億円の返還を求められる訴訟を抱えていた。
 地検は当初、元長官や総連側が中央本部に対する強制執行を逃れるための仮装売買とみて捜査を進めてきた。だが、総連側には売却する意思が実際にあったと認め、元長官らが最初から詐欺目的で仕組んだものと判断した。
 総連の敗訴を見越した元長官らが売却先を探していた総連の弱みにつけ込んだというわけだ。「北朝鮮の大使館的施設を守りたい」と売買目的の大義を主張していたが、結局はかつての監視対象をだましたということだ。
 元長官が逮捕されたとはいえ、疑惑は深まるばかりだ。
 弁護士でもあり、法律知識に詳しい元長官がなぜ、出資者がいなければ詐欺行為が発覚するような犯罪に手を染めたのか。ふに落ちない。
  売買交渉の過程で、共犯で仲介役の元不動産会社社長側に、総連側から約四憶八千万円が渡されている。そのうち一億円が元長官に流れたともされている。提供 された資金は報酬金だったのか。その目的などがいまだ不透明だ。元長官と元社長との金銭をめぐるつながりも解明する必要がある。
 元長官との所有権移転登記は白紙撤回され、訴訟の判決を受け、中央本部の土地と建物は整理回収機構が事実上、差し押さえている。
 中央本部の差し押さえについて、総連側と首相官邸が昨年末、和解条件を協議していた、とする土屋氏のメモがあることが分かった。水面下で政治的交渉があったことをうかがわせる。もし事実なら今回の事件の真相を解明する上でも、政府は事実を国民に説明すべきだ。
 元長官逮捕は検察側にとって「身内」の不祥事といえよう。迅速な逮捕は法務・検察当局の信頼回復への意欲と理解したい。中途半端な幕引きは断じて許されない。

[京都新聞 2007年06月30日掲載]

大詰め国会  法案審議尽くさぬまま

 「年金の逆風」が強まる中で、重要法案可決・成立へ正面突破を図る与党。問責決議案などを連発しても押し切られる野党-。
 参院選を前に与野党の激しい攻防で未明まで及んだ国会は、衆院で圧倒的に多い議席を持つ「数の力」を背景に、次々と法案を成立させてきた安倍晋三政権の今国会運営を象徴するものといえよう。
 年金記録不備問題にからんで注目された社会保険庁改革関連法案と年金時効撤廃特例法案は、先の教育改革関連三法案や、イラク特別措置法改正案などと同じく、参院委員会での採決強行を経て、土壇場の関門をくぐり抜けさせた。
 天下り規制の強化を図る国家公務員法改正案に至っては、与党が委員会審議を省略して、本会議で一気に成立を図る「中間報告」の奇策を用意した。
 安倍政権や与党側の強引な姿勢が国民の目にどう映ったろうか。
 参院選の日程を先送りしてまで会期延長したにもかかわらず、法案審議が尽くされたとは言いがたい。国民の納得はとうてい得られまい。
 安倍首相の強気の国会運営は、後半国会でとりわけ目立った。上昇しかけた内閣支持率が、「消えた年金」問題や松岡利勝前農相の自殺で急落したことによるあせりもあったのだろう。
 委員会審議で与党側が質疑を打ち切って採決を強行、野党議員が委員長席に詰め寄って騒然となる…。そんな場面がどれだけ繰り返されたことか。
 政府・与党と野党が論議を通じて法案の問題点を洗い直し、よりよい法律に仕上げていくのが本来の国会審議の姿だろう。だが今国会で、与党が野党の修正に応じることはほとんどなかった。
 憲法改正手続きを定める国民投票法案をめぐって、衆院憲法調査特別委員会の理事会レベルで自民、公明、民主の三党が修正合意に近づいたことがあった。
 だが「改憲を参院選の争点にする」との安倍首相の発言に民主党の小沢一郎代表が反発、頓挫した。
 事務所費問題で浮上した政治資金規正法改正案でも、民主党が領収書添付を義務づける金額などで与党案に歩み寄りをみせたが、与党側が応じなかった。
 重要法案が軒並み成立した一方で、日の目を見なかった法案も多い。安倍内閣の新たな目玉をめざした日本版国家安全保障会議創設のための法案や、首相が就任前から唱えてきた再チャレンジ支援政策の一つだった最低賃金法改正案など労働三法案は継続審議となった。
 格差是正問題が今国会の大きな柱とまでいわれただけに、国民の期待に応える論議を深められなかった与野党双方に責任があろう。
 来月十二日に公示される参院選では、年金問題に限らず、今国会であまり焦点が当たらなかった政策にも目を向け、考え抜いて審判を下したい。

[京都新聞 2007年06月30日掲載]

【京都新聞・凡語】

宮沢喜一元首相、死去

 戦後政治の大きな曲がり角には、いつもこの人の姿があったように思え る。元首相の宮沢喜一氏は、まさに政治史の生き証人だった▼自民党内ではハト派を代表し、中国古典に造詣の深い教養人でもあった。が、案外、素顔は語られ てこなかった。温厚な知識人のイメージは強いが、衆院議員の谷垣禎一氏は「いやすごい闘争心をお持ちでした」と恩師の一面を紹介する▼そういえば、かつて 暴漢に襲われたとき灰皿一つで長時間立ち回りを演じたという語り草が残る。物腰柔らかだが、「敏しょう性と、たぐいまれな体力の持ち主だった」(谷垣氏) ▼その強靱(きょうじん)さは、自らの内閣が退陣に追い込まれた五年後に、なおも小渕内閣で蔵相を務める決断力に表れた。平和主義の見識を愚直なまでに貫 いたのも、秘めたる闘志と反骨精神があればこそだろう▼もう一つ、宮沢氏が素顔をのぞかせる場面があった。京都の大徳寺にしばしば足を運んだ。庭を愛 (め)で、比較文明学者の梅棹忠夫氏らと、文化論に花を咲かせた。「禅の精神が日本を引っ張ってきたが、これからは…」と精神文化の百年の計を案じていた という。二年前が最後の訪問になった▼昨夏、足を骨折し、自宅で療養していた。「ゆっくり寝るわ」。二十八日午後、八十七歳で逝った。折しも国会が大荒れ の最中(さなか)だった。強行採決の連発にどんな思いでいたことか。

[京都新聞 2007年06月30日掲載]


【朝日・社説】2007年06月30日(土曜日)付

国会、閉幕へ―「数の力」振り回す政治

 「政治とカネ」に絡んでの現職閣僚の自殺、噴き出した年金問題と不信、そして数の力でブルドーザーのように法案を通していく与党の強引さ。この三つの点で、今年の通常国会は歴史に記憶されるだろう。

 とりわけ、強引な国会運営は常軌を逸していた。5カ月あまりの会期の中で、審議の続行を求める野党の反対を押し切り、自民、公明の与党だけで採決を強行したのは20回近くにものぼる。前代未聞のことではないか。

 ■相次いだ禁じ手

 押し切った法案の中身もすごい。補正予算を皮切りに、今年度予算、憲法改正の手続きを定める国民投票法、教員免許の更新制などを盛り込んだ教育3法。国の基本にかかわるような重要問題ばかりである。

 とどめにとばかり最後は、政治資金規正法の改正、社会保険庁を分割する法律、「宙に浮いた年金」の時効をなくす特例法、国家公務員の再就職をあっせんする新人材バンクをつくる法律が、次々に採決にかけられた。

 新人材バンク法は、民主党が委員長のポストを押さえていたため、委員会での採決はすっ飛ばし、いきなり本会議で可決させる非常手段に訴えた。

 先日は衆院の懲罰委員会で、民主党が出す委員長を投票ではずしてまで同党議員を懲罰した。これも数の力にものを言わせて突き進む与党の姿勢を象徴するものだった。

 野党側にも、参院選に向けて対決ムードをあおり、わざと与党の強引さを誘った面がうかがえた。選挙まぢかの国会は、与野党とも頭に血が上りがちだ。

 だが、そこを割り引いたとしても、禁じ手に近い手法まで繰り出した与党は「横暴」との批判をまぬかれない。野党が安倍内閣に対する不信任案を出して抵抗したのは当然のことだ。

 なぜ、こんなむちゃな国会運営になってしまったのか。

 ■「強い宰相」への焦り

 安倍首相の、参院選にかける思いがあまりに強いことが原因のひとつだろう。首相が選挙のことを考えるのは当たり前だが、9カ月前、もっぱら有権者受けの良さを買われて自民党総裁の座についた安倍氏には、自らの存在理由にかかわる格別の意味がある。

 小沢民主党との決戦となる参院選に、何が何でも勝たねばならない。この一念から政策を組み立てたのであり、この国会でそれを形にしてみせなければならない。そんな強い焦りが、首相を突き動かしているかのようだ。

 2年前、強引な解散・総選挙で大勝した小泉前首相と比べ、若い安倍氏には「ひ弱」「リーダーシップに欠ける」といった評がつきまといがちだ。「強い宰相」を演じなければという、別の焦りも加わったのだろう。

 「政治とカネ」の問題では、自殺した松岡農水相らの疑惑をかばい続け、年金問題が噴き出すと「1年ですべて照合」と大見えを切る。強気一本やりの国会運営と根は同じだ。

 思い返せば、頼みとする「数の力」をもたらしたのは、小泉時代に勝ちとった衆院の巨大議席数である。だが、考えてみればあの総選挙で自民党が有権者に問うたのは、もっぱら「郵政民営化」だけだった。

 だからと言って、他の政策課題に手をつけるべきでないとは思わないが、これだけ多くの重要法案で野党をなぎ倒すとなると話は別だ。そこまで信任を与えたつもりはない、というのが多くの国民の率直な思いではないか。

 1週間前の朝日新聞の世論調査では、与党の国会運営について「多数決のルールに従っているから問題ない」と見るのはわずか17%で、70%もの人が「数の力で押し切るのはよくない」と答えた。

 いまの「数」は前任者に対する信任である。それも郵政民営化という、ほぼ一点についての信任だ。なのに首相は、あの総選挙で追い出した郵政造反組の議員を続々と復党させ、信任の中身を変質させてしまった。

 それも考え合わせれば、首相があまりに「数」を身勝手に扱いすぎていることが浮き上がる。有権者の信任というものに、もっと謙虚であるべきだ。

 ■品格に欠ける政治

 一定の審議時間が過ぎれば採決し、政府・与党案を可決する。そんな機械的な審議がこの国会では目立った。最後は多数決で結論を導くのは民主主義の基本とはいえ、少数派もまた、有権者の信任を背景としている。それをわきまえることも与党の責任だ。

 選挙で得た多数はあくまで基本であり、国会の役割は具体的な政策や法律のために、さらに大きな多数をつくるべく努力することにある。実のある修正を模索してこそ有権者の期待に応えられるのに、この国会ではまったく顧みられなかった。

 河野洋平、扇千景の衆参両院議長の責任も指摘したい。それぞれ与党にブレーキをかけようとした場面もあるにはあったが、最後は禁じ手のような手法も許してしまった。

 扇氏は、土壇場の会期延長を「落ち着いて審議ができない」と批判しつつ、重要法案をばたばたと採決していった。衆院の判断を改めてチェックするという、「再考の府」としての参院の役割を投げ出したと言われても仕方あるまい。

 「数の力」を振り回す政治は、品格にも欠ける。大きな数を持てば持つほど、謙虚に合意づくりを目指すのが王道であるはずだ。

【朝日・天声人語】2007年06月30日(土曜日)付

 亡くなった宮沢喜一さんが、日米学生会議の一員として初めて渡米したのは昭和14年だった。日中戦争のさなか、日米の空気は険悪の一途である。往路の船中、日本の立場を弁護しようと、仲間と盛んに意思統一をはかった。

 会議に臨むと、向こうの学生は思い思いに意見を述べた。日本を悪く言う者もいるが、自国を批判する者も随分いる。「言論の自由というのはこれか」。知米派で聞こえた元首相の、原風景になった。

  そうした体験をへて身についた「冷静な合理主義」が、政治家としての持ち味になり、弱みにもなる。期待株と目されながら、初入閣から首相就任までに29年 かかった。田中角栄氏ら親分肌のボスに疎まれたためである。「泥田をはいずり回れない」といった陰口もついてまわった。

 首相時代、指導力に疑問符がついたこともある。だがハト派の象徴としての存在感は、最後まで揺るがなかった。自衛隊のイラク派遣に反対し、憲法9条の改正には慎重であり続けた。

 〈どの論理も〈戦後〉を生きて肉厚き故しずかなる党をあなどる 岡井隆〉。ふと胸をよぎるのは、この歌だ。宮沢さんのような「しずかなる民主主義者」をあなどる、粗っぽい空気が、いまの政界を覆ってはいないだろうか。

 「総理大臣が刀を抜いて、『進め、進め!』なんていうのは戦国ドラマの見過ぎ」と、宮沢さんは言っていた。民主主義は、ときに遅々としてじれったいものだ。初入閣から1年で首相の座に就いた現職には、その辺の理解がないのかもしれない。


【毎日・社説】

社説:大詰め国会 あまりに浅はかな採決ラッシュ

 社会保険庁改革関連法と年金時効停止特別措置法が30日未明、参院本会議で可決・成立した。公務員制度改革関連法案も成立する見通しで、積み残さ れていた法案は一気に処理されることになった。しかも公務員法案は委員会採決を省いて本会議で採決するという。異例の性急さだ。

 野党は安倍内閣に対する不信任決議案を衆院に提出するなどして抵抗したが、この動きを食い止めるには至らなかった。むなしささえ感じる徹夜国会である。

 せっかく7月5日まで国会の会期を延長したというのに、なぜ与党はそんなに急いだのか。

 来週まで審議がもつれ込むと、野党の抵抗次第では会期切れを迎えて、法案の採決ができないまま廃案になる恐れがあるというのが表向きの理由である。実はもう一つ理由があるのだろう。

 社保庁改革法は28日の参院厚生労働委員会で、野党が「年金記録漏れ問題の検証がまったくできていない」と反発する中、与党が採決を強行した。公務員法案も野党は反対している。

  「数の横暴」と批判されるのは免れない。だから一挙に採決することで批判を浴びるのは一回だけにしたい。与党はそう考えているのではなかろうか。加えて、 これら採決が終われば、国会は来週、事実上閉会状態になる。この間に強引な採決に対する世論の反発も和らぐとの期待もあろう。

 年金問題で安倍内閣の支持率は急落し、自民党は参院選で苦戦が予想されている。国会の会期を延長し、参院選投票日を当初想定していた7月22日から同29日に先送りしたのも「年金批判が少しでも収まれば」との思惑があった。

 今回の採決ラッシュも参院選を意識したものであるのは間違いなかろう。しかし、浅はかな「選挙対策」はかえって有権者の不信を増幅させるだけではなかろうか。

 既に指摘したように社保庁改革法は年金記録漏れ問題が発覚する前に検討したものだ。状況ががらりと変わったのだから、やはり一から考え直すのが筋だった。

  安倍晋三首相が今国会成立にこだわった公務員法案は、各省庁による天下りあっせんを禁止し、内閣府に置く「官民人材交流センター」に一元化するのが柱だ。 だが、肝心のセンターの具体的な制度設計は今後検討するという。省庁の関与をどこまで排除できるか、あいまいさを残したままだ。

 しかも、同法案を審議してきた参院内閣委員会は民主党議員が委員長を務め、委員会採決ができなかったことから、いきなり本会議で採決するという。確かに過去に例はあるが、これは委員会審議の否定につながりかねない手法だ。

 29日午後成立した改正政治資金規正法は資金管理団体に限って5万円以上の経常経費支出(人件費を除く)に領収書添付を義務付ける内容だが、これも抜け道だらけだ。どさくさにまぎれて成立させたとしか思えない。

 こうした姿勢も有権者には参院選の判断材料となるはずだ。与党はそれを忘れない方がいい。

毎日新聞 2007年6月30日 東京朝刊

社説:JR事故報告 企業体質を一から見直せ

 国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が、05年4月に起きたJR福知山線事故の最終調査報告書を発表した。運転ミスに対する懲罰的な「日勤教育」の重圧が事故を招いた可能性があると推論し、安全を軽視したJR西日本の企業体質を指弾する厳しい内容である。

 運転士は途中駅でオーバーランを起こし、ミスを少なめに報告するよう車掌に依頼した。だが、返事があいまいだったため、運転指令室への無線報告に聴き入り、言い訳を考えるなど注意散漫になってブレーキが遅れた--。それが事故調の描いた事故の構図だ。

 運転士は過去3回、日勤教育を受け、長時間の反省文作成や叱責(しっせき)で追い込まれていた。日勤教育は精神論に偏り、運転技術の再教育という目的から外れて、多くの現場職員は懲罰と受け取っていた、と事故調は判断している。

 JR西日本は事故後、日勤教育を実践的な形に改めた。教育効果が上がるよう、より検討するという。当然のことだ。事故の教訓を生かして、安全意識を高め、技量の徹底向上を図る内容でなければ意味がない。

  安全管理体制にも数々の不備が指摘された。営業強化のためダイヤの余裕時分が削られ、職場間の連携不足で新型ATS(自動列車停止装置)の運用開始が遅れ た。同型電車のブレーキ不具合や速度計の誤差が報告されていたのに、まったく改良されなかった。組織全体の緩みようは目に余る。

 事故調は、当時の鉄道本部長が安全管理に直接タッチしていないと釈明した点にも触れ、経営トップに近い者が積極的に関与すべきだった、と強調している。緊張の欠如、責任逃れの体質は今も残っていないか。もう一度、真剣に自らを省みることが不可欠だ。

 事故後にJR西日本が作った安全性向上計画は上下の意思疎通強化や縦割り組織の改善を掲げた。しかし、JR西労組が今春行ったアンケートでは、職場の約3分の1が現場長との信頼関係がない、不十分と答えた。現状は「風通しのいい職場」とはほど遠い。

 JR西日本の山崎正夫社長は事故調の報告書に関して、内容を厳粛に受け止め、安全性向上計画に代わる新しい安全対策を定める、と説明している。

 組織の基本から、改めて徹底的に見直した方がいい。なにより、すべての社員が安全最優先を共通の誓いとして心に刻み、経営陣と現場、職場間の不信の連鎖を断ち切る努力を重ねることが求められる。でなければ、企業風土の改革など進むはずがない。

 報告書はさらに、被害軽減のため車両構造を強化し、手すりの形などを工夫することや、運転士が仕事に集中できるよう無線交信を制限し、運転指示を文字で見られる装置を導入することなど、ハード、ソフト両面で具体的な改善を提言している。

 経営効率から後回しになりがちな項目が多い。鉄道業界全体で今回の提言を十分に検討し、有効に活用すべきである。

毎日新聞 2007年6月30日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「スパイマスター」とは諜報員の元締めといった…

 「スパイマスター」とは諜報(ちょう ほう)員の元締めといった感じの言葉だが、CIA(米中央情報局)長官だったアレン・ダレスといえば、冷戦の代表的スパイマスターの一人である。そのダレ スは著書「諜報の技術」で釣り上手な人はスパイに向いていると書いている▲釣り上げたときの興奮は誰にも分かる。だが大事なのは素人に分からない準備段階 で、道具や場所、時間の選択、思慮や忍耐のすべてが釣りの技術を構成しているという。諜報も同じく見えないところでの仕掛けこそが重要だといいたいのだろ う▲公安調査庁長官も情報機関のトップだから、わが国のスパイマスターということになろう。では元スパイマスターは釣ったのか、それとも釣られたのか、 どっちだろう。朝鮮総連の土地・建物の売却疑惑は、詐欺事件という意外な様相を見せてきた▲この売却にかかわった緒方重威元公安調査庁長官ら3人が逮捕さ れたのは、はなから代金を支払うつもりがないのに土地などを総連から移転登記させた容疑だった。当初、東京地検は総連としめしあわせた仮装売買とみていた のが、実は総連が不動産をだまし取られていたというのだ▲元スパイマスターなら、ダレスがスパイの動機に「イデオロギー」「ワナにかかったため」「金目当 て」「陰謀好き」をあげているのはご存じだろう。自らの売買疑惑にまず「大義」を掲げて弁明し、最近は「だまされた」とも語っていたのだが、結局は何のこ とはない「金目当て」か▲つまりは差し押さえを逃れたい総連を35億円の疑似餌で釣ったというのが容疑の構図だが、釣果がこの有り様では、とても元スパイ マスターの手際とは思えない。ここにいたる裏の仕掛けを洗いざらい白日の下に引き出す捜査を望む。

毎日新聞 2007年6月30日 東京朝刊


【読売・社説】

楽天対TBS 反発招いた大株主の「力の論理」(6月30日付・読売社説)

 魅力的な事業計画を最後まで提示できなかった楽天が、TBSの安定株主対策に屈した、ということだろう。

 TBSの株主総会で、会社提案の買収防衛策が77%の圧倒的支持を得た。保有株比率20%弱の筆頭株主として、三木谷浩史社長の取締役選任などを求めた楽天の提案は否決された。通信と放送の融合を掲げ、事業統合を迫った楽天の戦略は大きくつまずいた。

 投資ファンドなど「モノ言う株主」の増配などの提案を巡って、激しい委任状争奪戦が繰り広げられたのが、今年の株主総会の大きな特徴だ。

 その中で、ファンドに株式公開買い付け(TOB)を仕掛けられたブルドックソースは会社提案の防衛策が89%の支持を集め、中部電力、電源開発などではファンドの増配要求が大差で退けられた。ファンドの提案は全敗に終わった。

 株主が、長期的利益を重視し、良識を発揮した結果と言えよう。

 さらに、米系ファンドがブルドックの防衛策の発動差し止めを求めた裁判で、東京地裁は、多数の株主が防衛策に賛成したことを重要な理由に、発動を認める決定を下した。

 TBSの防衛策は、企業価値を損なう恐れのある買収者が、20%以上の株式取得を目指した場合、既存株主に新株予約権を無償で割り当て、買収者の保有比率を引き下げるというものだ。

 TBSは、総会での圧勝を背景に、防衛策発動の手続きを進める構えだ。楽天は、裁判で対抗すると見られるが、地裁の決定で苦しい立場に立たされた。

 楽天は一昨年、TBS株の15%を取得し、それをテコに事業統合を求めた。TBSは反発したものの、いったんは業務提携を検討することで合意し、TBSの番組と楽天のインターネット販売を結び付ける事業の展開などを協議した。

 だが、実現には至らなかった。逆に、リクルートなど楽天以外と次々に新事業を始めている。楽天に対し経営権奪取への不信感がぬぐえないからだろう。

 楽天との関係強化には、TBSの従業員や系列局も反対した。会社は株主だけのものではない。楽天には、ステークホルダー(利害関係者)の理解を得る努力も欠けていたのではないか。

 TBSをはじめ多くの企業が、株式の持ち合いを復活させている。敵対的買収を防ぐ最も強力な手段だ。

 ファンドの跳梁(ちょうりょう)など、やむを得ない状況もあるが、行き過ぎれば経営権を守るためだけに資金を寝かすことにもなりかねない。少なくとも、持ち合いを経営者の“精神安定剤”にすべきではない。
(2007年6月30日1時21分  読売新聞)

尼崎脱線事故 鉄道の安全向上に報告を生かせ(6月30日付・読売社説)

 あの大惨事は、なぜ起きたのか。背景に何があったのか。

 107人が死亡した一昨年4月の兵庫県尼崎市・JR福知山線脱線事故で、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が、冬柴国交相に最終報告書を提出した。鉄道の安全向上に生かさねばならない。

 報告書によると、死亡した運転士のブレーキ操作が約16秒遅れ、快速電車が制限速度を40キロ以上超えて現場のカーブに突っ込んだのが、事故の原因だ。

 ブレーキ操作の遅れは、直前駅でのオーバーランを車掌が報告する無線交信に気を取られたか、ミスの言い訳を思案していたことなどによると考えられる。

 その背景にある問題として、報告書は、JR西日本の「日勤教育」が、死亡した運転士を心理的に追いつめた、と指摘した。社内連携の悪さや無理なダイヤも挙げている。

 日勤教育は、ミスをした運転士を乗務から外して実施された。運転技術などではなく、精神論が主だ。反省文を書かせ、繰り返し、あいさつをやり直させる。賃金もダウンする。報告書は、一部の運転士は“懲罰”と受け止めていたと指摘し、見直すべきだとしている。

 事故防止策として報告書は、懲罰的でない報告制度の整備や緊急性の低い無線交信の制限など3項目を求めた。一昨年秋に提言した自動列車停止装置(ATS)の機能向上などに続くものだ。全鉄道事業者は、早急に実施すべきである。

 事故当時、国は、カーブのATS整備を義務づけていなかった。設置していれば、事故は防げたはずだ。国の安全管理上の規制が十分でなかったことが事故につながったとすれば、そうした分析も報告書にあってよかった。

 万一に備えた被害軽減策も必要だ。

 事故の直接の衝撃だけでなく、車両が変形して空間が小さくなったことで窒息死などの犠牲者が多く出たことも指摘された。スピードアップなど効率化のため軽量化が進む車両構造の問題がある。材質や形状を見直す契機にすべきだ。

 最終報告書まで2年2か月かかった。事故調は昨春、鉄道事故調査官を倍増して14人にしたが、初動段階で鉄道総合技術研究所や大学の専門家の応援を求めるなどして、調査の迅速化を図りたい。

 JR西は、遺族らに事故原因の説明を求められても口を閉ざしてきた。最終報告書を機に本格化する警察の捜査で、JR西が不利になるような言質を取られたくないとの意識からではないか。

 関係者の刑事責任の有無が、今後の焦点になる。捜査を尽くし、JR西の安全管理の実態に迫ってもらいたい。
(2007年6月30日1時22分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月30日付 編集手帳

 沈黙は金、という。西洋伝来の格言は、「雄弁は 銀」とつづく。はっきり自分を主張することを美徳とする西洋人が雄弁を低く評価したのはなぜだろう ◆「岩波ことわざ辞典」によれば、格言の起こりは19世紀中ごろのドイツで、当時の西欧諸国は銀を基準にした貨幣制度、いわゆる銀本位制が大勢であったと いう。古人はどうやら現在の意味とは逆、「雄弁の銀」を上位に置いたつもりで格言をこしらえたらしい◆交易に、暮らしに、世界の国々にとってなくてはなら ぬ銀の供給役を務めたのが日本である。17世紀の初めには世界に流通する銀の3分の1を日本産が占め、なかでも石見(いわみ)銀山(島根県)から採掘され た銀の量は飛び抜けていた◆16世紀半ばにポルトガル人がインドで製作した日本地図には、石見のあたりにポルトガル語で「銀鉱山王国」と記されている。 “王国”の夢の跡、「石見銀山遺跡」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された◆ユネスコの諮問機関が「普遍的な価値の証明が十分で ない」と登録延期を勧告していただけに、地元の喜びもひとしおである。自然と調和した「文化的景観」の魅力を日本政府が、腕ずくならぬ口ずくで各国に説い て回ったのが功を奏しての逆転登録という◆格言本来の意味を思い出させる「雄弁の銀」だろう。
(2007年6月30日1時34分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】社保庁改革 必死の努力で不信なくせ

 問題の社会保険庁を解体し、3年後に非公務員型公法人の「日本年金機構」に年金業務を引き継ぐための社保庁改革関連法案が30日未明可決、成立した。今後は迅速かつ着実に改革を推し進めることが求められる。

  まず、何よりも年金不信を払拭(ふっしょく)し、国民から信頼される組織に生まれ変わることが大切である。国民の信用が得られなければ、保険料は徴収でき ず、年金制度そのものが成り立たなくなるからだ。高齢化はますます進む。真に国民の老後を支える組織でなければ、それにも対応できなくなる。

 改革は(1)監督権者は厚労相(2)業務は可能な限り民間に委託する(3)社保庁職員は全員が退職した後に再雇用される-が主な柱である。

 なかでも肝心なのが、非常勤職員を含む2万9000人の職員の再雇用である。内閣官房に新設される有識者による第三者機関が、採用の人数など基本方針を決める。その後、厚労省の採用審査会が具体的に職員をふるいにかけて選別していく。

 国民のために労を惜しまず、まじめに働く職員かどうかを見極めたうえで再雇用しなければならない。仕事を制限する組合の覚書にしがみつくような職員はもういらない。人事面での妥協は許されない。大胆な人事刷新で、社保庁の不祥事を繰り返す体質を変えなければならない。

 次に民間委託である。保険料の徴収、記録、相談、給付といった一連の年金業務の一定部分が民間へ委託される。できるだけ身軽にして効率的な運営を目指すためだ。

 どこまで委託するかは、内閣官房の第三者機関が検討する。第三者機関はその責任の重さを十分自覚し、任務を遂行してほしい。

  一方、5000万件をはじめとする年金記録の紛失問題は総務省に事務局を置く「検証委員会」が原因を究明し、責任の所在を明らかにする作業を進めている。 領収書などの保険料支払いの証拠がないときに年金給付の是非を判断する審査基準については、「確認委員会」が検討している。

 組織が改まるからといって年金問題がすぐに解決するわけではない。引き続き、政府が解決の努力を続けなければならないのは言うまでもない。

(2007/06/30 05:18)

【主張】JR事故報告 企業体質が問われている

 平成17年4月に死者107人を出した兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)は、事故原因などを盛り込んだ最終報告書をまとめた。

 直接の原因は死亡した23歳の運転士のミスとしたが、規則に反した運転士らに課す日勤教育が事故の背景にあったと指摘した。

 最終報告書によると、脱線した列車は直前の停車駅でオーバーランし、発車が約1分20秒遅れた。運転士は車掌がミスを輸送指令に報告している交信内容に気をとられ、制限速度が時速70キロの現場カーブに約116キロで進入し、脱線した。

  この異常な運転について、事故調は運転士が「日勤教育を懸念」したためとした。日勤教育は乗務中にミスなどを犯した運転士を対象にした再教育制度である。 だが、実際は上司が厳しく叱責(しっせき)するなど懲罰的な側面が強く、過去に3度の日勤教育を受けた運転士にとっては大きな心理的な負担となったとみら れる。

 日勤教育については、事故直後から問題となり、運用も見直されたとされる。そのうえでJR西日本の幹部は今年2月の事故調による意見聴取会で、「必要かつ有益」と反論した。

 しかし、日勤教育が事故につながった可能性があるとの指摘が持つ意味は大きい。懲罰的な日勤教育が行われていなかったら、事故も起こらず、多数の犠牲者も出なかった可能性があるからである。

 事故調はさらに、新型の列車自動停止装置の設置の導入先送りや、ブレーキの欠陥など、安全性を軽視し続けた企業体質も厳しく批判した。再発防止のために、企業体質まで踏み込んで批判するのは極めて異例だ。

 過度の懲罰は教育ではない。JR西は報告を真摯(しんし)に受け止め、日勤教育が本当に必要かどうかも含め、徹底的な見直しを図る必要がある。同時に、批判された企業体質を根本的に改善する努力を続けるべきである。

 兵庫県警は最終報告を受け、運行関係者を業務上過失致死傷容疑などで立件する方針だ。すでに事故から2年以上もたった。真相解明を求める遺族感情は強く、刑事上の責任追及も厳正に行われなければならない。

(2007/06/30 05:17)

【産経抄】

 政界入りが遅かった分だけ後輩扱いされていたが、宮沢喜一氏は田中角栄、中曽根康弘の両元首相より1歳年下なだけだった。日本の運命を左右する現場にいたということではむしろ「先輩」だったかもしれない。それは昭和20年代にさかのぼる。

 ▼25年4月、当時の池田勇人蔵相は秘書官の宮沢氏らを従え渡米する。講和に関する米政府の対応を瀬踏みする、という吉田茂首相からの密命を帯びていた。だが表向きは、戦後日本にデフレ路線を敷いたジョセフ・ドッジ国務省顧問に成果を報告するというものだった。

 ▼日本にいるマッカーサーの介入を避けるためである。一行はしばらく時間を費やした後、休日にひそかにドッジと会い、吉田の講和への意向を伝えた。異論はあるものの、宮沢氏は後に著書などで「講和条約はこれによって結ばれることになる」と述べている。

 ▼その池田蔵相は日米安保条約改定直後の昭和35年首相となる。それまで「タカ派」的イメージが強かったが、経済優先政策や低姿勢路線を打ち出し、国民を驚かせた。これもまた黒子役の宮沢氏や大平正芳氏ら旧秘書官グループによる「演出」だったといわれる。

 ▼だが失礼を承知で言えば、宮沢氏の「華」はこの黒子時代にあったようだ。鈴木内閣時代、教科書検定に関する「宮沢談話」は中国などへの屈服に過ぎなかった。遅咲きで首相になっても、政治改革という時代の波に乗ることはできず「55年体制」の幕引き役となった。

 ▼戦後日本の枠組み作りに一役買ったという強烈な自負があったのだろう。強烈すぎて、そこから抜け出せなかったのかもしれない。あたかも憲法改正や教育改革など「戦後レジームからの脱却」が議論される中、ひっそりと去っていった。

(2007/06/30 05:00)


【日経・社説】

社説1 「モノ言う株主」が苦戦した今年の総会(6/30)

 上場企業の株主総会がほぼ終了した。今年の最大の注目点は大幅増配などを求める株主提案の行方だったが、終わってみれば株主提案はことごとく否決 され、一安心した経営者も多いだろう。しかし、総会は一里塚にすぎない。業績好調の日本企業だが、現状に満足することなく、経営改革の加速が求められる。

 今年の総会に出された株主提案は30社を超えたとみられ、過去最多を記録した。だが、結果は連戦連敗。TBSに取締役の派遣などを求めた楽天の提案は大差で否決され、Jパワーなどに大幅増配を求めた英投資ファンドの提案も退けられた。

  理由の1つはモノ言う株主の性急な提案に、他の株主がついていけなかったことだろう。ブルドックソースの経営権取得を目指しながら、経営方針を明示しな かった米スティール・パートナーズについて「真の狙いが不明」という疑念が出ていた。TBS株の買い増しを表明した楽天にしても、わずかばかりの株買い増 しが両社の将来にどんな意味を持つのか、外部からは判然としない。

 経営者は株主に説明責任を負うが、株主の側も他の株主に同意を求める場面では説明責任が生じる。それを十分果たさなかったのが、連戦連敗の一因ではないか。

  もう一つの背景は、日本企業の株主構成の問題だ。株式の持ち合いは大幅に崩れたとはいえ、今も金融機関(信託銀行除く)と事業法人を合わせた持ち株比率は 上場企業全体の34%に上る。その大部分は当該企業の取引先とみられ、経営陣に心情的に近かったり、経営体制の急変に不安を抱いたりすることが多い。

 だが、株主の監視が厳しくなければ、経営の規律が緩む恐れがある。最近は敵対的買収に備えて、持ち合い復活の機運もあるが、以前の株式持ち合いが企業統治の空洞化を招いた教訓を忘れてはならない。

  経営者も株主提案を敵視するだけが能ではない。小野薬品工業では、同社株を過去10年持ち続ける米ファンドが大幅増配を提案した。取締役会はそれに反対し たが、一種の対案として向こう3年間の配当政策を示し、その間のフリーキャッシュフロー(現金収支)をすべて配当などの形で株主還元すると公約した。

 今年の総会シーズンは幕を閉じたが、ファンドを中心とした株主サイドの攻勢は今後も続くだろう。経営者は緊張感をもって株主と向き合いながら、利益分配を含めて説得力あるビジョンを打ち出す必要がある。株主提案を退け、「勝った、勝った」と余韻に浸る暇はない。

社説2 規律高い年金機構へ再生を(6/30)

 社会保険庁改革関連法案の成立で同庁は解体され、公的年金に関する業務は2010年1月に発足する「日本年金機構」が引き継ぐ。一連の年金記録騒動に対して責任を負うべき社保庁を解体するのは当然だ。ここ何年間も同庁に不祥事が続いたことを考えると、遅すぎたくらいだ。

  社保庁は年金運営組織として不適格だと国民の多くは感じている。新しい組織に衣替えするだけでは、失墜した信頼を取り戻すことはおぼつかない。規律高い組 織として再生させるために、日本年金機構に魂を入れる作業に政府は全力を挙げるべきだ。また社保庁職員は無条件で機構に移れるわけではないことを肝に銘じ てほしい。保険料や納付記録は払った国民のものという、あたり前のことさえ理解しない職員はリストラされることを覚悟すべきである。

 機 構発足までの間に、厚生労働省や社保庁をはじめ年金行政に携わる人がやるべきことは多い。まず、宙に浮いた5000万件の年金記録の持ち主を愚直に突き止 める作業だ。すでに年金を受け取っている高齢者の分を優先して取り組むとともに、現役世代に対しても把握している加入歴を役所側からわかりやすく伝え、本 人の確認を求めることが必要だ。

 給付漏れの時効が撤廃されることで年金給付の事務量も増える。今後も大勢の年金生活者が各地の社会保険事務所に押し寄せるだろう。できるものは民間委託し、効率よく「接客」にあたってほしい。厳格な守秘義務を課すのは当然だし、窓口対応は親切丁寧を第一とすべきだ。

 もともと社保庁解体の第一の目的は改善が遅れている年金保険料の納付率を高めることだった。記録漏れへの国民の憤りがこれだけ高じていることは、徴収業務に強い逆風だ。だからといって手は緩められない。債権回収に実績を持つ民間企業に委託するなど、手を尽くすべきだ。

  社保庁から年金機構に移る職員は真にやる気のある人だけを選ばなければ国民は納得しない。組織を挙げての怠慢が今回の問題の原因であることが明らかだから だ。29日、国家公務員にボーナスが支給された。多くの社保庁職員は一部を国庫に返納するとみられるが、それが免罪符にならないのは当然である。

【日経・春秋】(6/30)

 今年ももう半分が過ぎる。カレンダーを見ながら半年の間にあった 悪いこと反省すべきことを思う人も多かろう。そういう人のために6月末日には古来「夏越(なごし)の祓(はらえ)」がある。大みそかの大祓(おおはらえ) から半年の間にたまった罪穢(つみけが)れを消す行事だ。

▼江戸後期の本『東都歳時記』には「諸人群集」してにぎわう隅田川べりの真先 (まっさき)神明宮の絵が載っている。そのお宮の現在の姿である東京・南千住の石浜神社には、チガヤを束ねて作った直径2メートルほどの「茅(ち)の輪 (わ)」を設けてある。これを3度くぐって、自分の罪穢れを移した紙の人形(ひとがた)を神社に納め祓い清めてもらう。

▼7月5日まで会 期が延びた国会で与野党のせめぎ合いが続いている。参院選を目前に内閣支持率が急落する危機に陥った与党は選挙戦で有権者に訴える政策づくりの成果がほし いし、野党は与党が横暴な国会運営をした印象を国民に与える好機と考えるから、双方とも踏ん張りどころなのだ。

▼1月の自民党大会で安倍 首相はこう言った。選挙は「正攻法で臨めば勝ち抜ける」。それが半年の間に年金問題やら松岡・前農相の自殺やらが積み重なり防戦一方だ。『東都歳時記』の 神明宮の絵に添えたこの歌のような心境は、首相や自民党幹部には、さぞ、うらやましいだろう。〈おのずから心の底もすみだ川 罪も祟(たた)りも夏祓いし て〉


↓おじさんの雑談も面白いジャンと思ったらクリック。(笑)
人気blogランキングバナー

OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60 CE OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60

販売元:オリンパス
発売日:2007/09/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月29日 (金)

6月29日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月29日朝刊)

[「集団自決」意見書]示された「県民の総意」

 高校歴史教科書の文部科学省の検定で、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に日本軍が関与したとする記述が削除、修正された問題で、検定意見の撤回を求める意見書が県議会をはじめ、県内四十一市町村の全議会で可決された。

 五月十四日の豊見城市議会を皮切りに、読谷村議会が「賛成多数」、それ以外は「全会一致」で足並みをそろえた。

 全市町村での意見書可決は、二〇〇四年の沖国大への米軍ヘリ墜落事故で抗議決議・意見書を可決して以来だという。

 意見書は「沖縄戦における『集団自決』が『軍による強制・強要・命令・誘導等』なしには起こり得なかったことは否定することのできない事実」などと指摘している。

 全市町村議会が自主的に検定意見の撤回を求めたことは、地方自治と主権在民の立場から国への「異議申し立て」であることは言うまでもない。

 「史実を正しく伝え、二度と戦争を繰り返してはならない」という地域住民の思いがそのまま反映され「県民の総意」が強く打ち出されたといえる。

 県議会は当初、最大会派の自民党が党内で意見が折り合わなかったものの、最終的に「日本軍による関与があった」という点で一致した。全県民の声が集約され、一つのうねりとなって可決を後押ししたといえよう。

 政府・文科省は、この県民の総意を真摯に受け止め、検定の撤回と記述の回復を速やかに図ってもらいたい。

 文科省は、今なお「軍による直接的な命令があったかどうかは不明確。『強いられて』という表現は高校生には命令があったように誤解される」というが、それでは「集団自決」の事実がうやむやにされてしまいかねない。

 確かに、日本軍の直接の命令が渡嘉敷、座間味、慶留間の各島であったかどうかは定かでないし、大阪地裁で係争中の民事訴訟で当時の指揮官が命令の事実を否定するなどの動きもある。

 だが、言葉による命令があったかどうかということが、日本軍が「強いた」とみるかどうかを決定づけるものでは必ずしもないはずだ。

 当時の皇民化教育や軍国主義社会、さらに戦時下の極限状態の中で「いざという時は自決するように」と日本兵が手りゅう弾を配ったことには多くの住民の証言がある。

 少なくとも、広い意味での日本軍の関与、軍の圧力があったのは紛れもない事実といえる。

 歴史の事実は一つであり、変えられない。正しい歴史を示すことが未来への道標となる。

[ロッテキャンプ]石垣市への定着に期待

 プロ野球の千葉ロッテマリーンズが来年二月の春季キャンプを、石垣市内で行う。

 ロッテが加わると、県内でキャンプを張るのはセ・パ両リーグで計九球団となり、全十二球団のうち四分の三が沖縄に集結する。オープン戦や県出身選手らの活躍など話題も増え、いっそうにぎやかさを増すに違いない。

 石垣市がロッテ球団誘致に動いたのは昨年十一月からで、約半年のスピード決定となった。八重山商工で活躍した大嶺裕太投手の入団をきっかけに、石垣キャンプの話へと急展開した。

 地元の商工・観光関係者が「呼ぼう会」を結成し、これに市も呼応してプロジェクトチームを稼働させるなど、官民挙げた誘致活動が実を結んだ。

 球団側も、それまで二年続けたオーストラリア・キャンプより、移動の時間や適度な気温差、費用、安全管理、地元の熱意などを考慮して石垣キャンプに傾いた。

 バレンタイン監督が強く石垣を希望したのも大きな要因という。

 春季キャンプがもたらす経済効果については、りゅうぎん総合研究所が、今年は八球団で五十三億三千七百万円に上り、前年比5・8%(二億九千六百万円)増えたと試算した。

 テレビなどのメディアがキャンプ地を取り上げるPR効果も計り知れない。来季はロッテ球団が加わる。さらに那覇市は読売巨人軍の誘致に力を入れており、実現に期待したい。

 八重山はもともと野球熱が高い地域である。甲子園に送るために支援する民間人の活動をベースに、熱心な指導者が強いチームに育て、甲子園行きを実現したのが八重山商工だった。今では島外から「野球留学生」が入学するほどだ。

 キャンプは教育効果も高い。プロの選手の動きや練習方法を間近で見ることができ、野球少年らにとっても大いに刺激になるだろう。

 八重山の「地元球団」として声援を送り、盛り上げ、春季キャンプを定着させてほしい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月29日 朝刊 1面)

 那覇高校では、今年から本格的に「スカート丈検査」が始まった。床に高さ五センチの角材を置き、その前で女子生徒がひざ立ちをする。角材にスカートが触れなかったら、身なり違反。

 「五センチはきつい」「見ていないところでは、また短くする」と生徒の評判は芳しくない。規則や身だしなみの大切さを訴える教師たちも、検査自体は「気持ちのいいものではない」と悩む。

 制服指導の取り組みや反応、地域の声を同校放送部が「スカート丈狂騒曲」としてラジオドキュメントにまとめた。生徒自身が問題と向き合った作品は、今月開かれたNHK杯全国高校放送コンテスト県大会で最優秀賞を受賞した。

 短くする理由は「今しかできない」「自分の存在感をアピールする」…。作品は男生徒の本音に迫り、犯罪に巻き込まれる可能性にも触れ、「このままでいいのですか」と問い掛け、終わる。

 制服のスカートが短くなったのは九〇年代半ばからという。そのスタイルは「女子高生ブーム」にのり東京から全国へと広がった。今やひざ上十センチは当たり前、二十センチ以上も珍しくない。

  太ももあらわな姿を、みっともないと感じるのは感性の違いか。逆に何が何でも短くしたいのなら「校則を変えよう」くらいの元気さがほしい。自己を主張しな がら「みんな短いから」と横並びに徹する矛盾。制服を着崩している高校生が、実は制服に縛られているように思えてならない。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

「撤回」要求決議 県民は軍命削除を許さない

 来年度から使用される高校歴史教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制に関する記述が修正・削除された問題で28日、嘉手納町議会と国頭村議会が「検定意見の撤回」を求める意見書を全会一致で可決した。これで県内41全市町村で撤回決議が可決された。
 先の県議会の撤回決議も含め、「検定意見の撤回」要求が、名実ともに「県民総意」となった。
 意見書で嘉手納町議会は「集団自決が、日本軍の関与なしに起こり得なかったことは紛れもない周知の事実」と指摘し、国頭村議会は「体験者による数多くの証言や、歴史的事実を否定しようとするもの」と批判している。県、他市町村の意見書も同様の趣旨だ。
 広大な米軍嘉手納基地を抱える嘉手納町は、基地被害にも触れ、戦後世代が増え、戦争体験者の減少が進む中で沖縄戦の実相を伝えることの大切さを指摘している。民を苦しめる「軍隊」の問題は、日米の国の違いはあれ、沖縄ではいまも続く「歴史」である。
 沖縄戦を直接体験した歴史の証言者が沖縄にはまだまだ健在だ。一部の研究者や官僚たちが「軍命があったとの明確な証拠はない」と言い張っても、「集団自決」で肉親を失った体験者たちの口は封じられない。
 賛成多数の読谷村を除く40市町村議会が、全会一致での「撤回」要求の可決だ。全議会の決議を、国は重く受け止めるべきだ。
 文科省は県の仲村守和教育長の撤回要請に、「集団自決で日本軍が関与したと思う」(布村幸彦審議官)と認めている。だが、検定意見の撤回には「政治家は口出しすべきではない」(伊吹文明文科相)として、応じる気配がない。
 文科相には教科書検定意見に対する「正誤訂正の勧告権」があると研究者は指摘している。政治の介入で改ざんされた教科書は、「正確な史実」によって是正されるべきである。だが、史実を突きつけ、史実を認めさせても、なお是正を拒む政治がそこにある。
 いまなぜ歴史教科書から「軍命」を削除しなければならないのか。ここ数年、国民保護法などの有事法制が整備されている。防衛庁の省昇格、集団的自衛権の行使に関する有識者懇の発足、米軍と自衛隊の融合を進める米軍再編特措法、憲法改正を狙う国民投票法の成立と続く。
 一連の政府の動き、政治の流れに「新たな戦争準備」を警戒する声もある。その動き、流れの中に、教科書検定問題がないか。
 悲惨な戦争を二度と日本が繰り返さないためにも、議会決議を県民運動に広げ、政府が歴史の史実を正しく後世に伝えるよう、強く求め続けたい。

(6/29 9:32)

石垣キャンプ 12球団集結の夢実現も

 来春の楽しみが増えた。プロ野球の千葉ロッテマリーンズが、来年2月から石垣島で春季キャンプを張ることが28日、正式に決まった。石垣島では25年ぶりのプロ野球のキャンプ。ビッグニュースに島を挙げて喜びに沸いていることだろう。
 沖縄はすでに国内随一のプロ野球キャンプ地。すでに12球団中8球団が春季キャンプを張っている。ロッテを加え、来春からは9球団に増える。
 次は「奥武山新球場に巨人」との話も聞く。新垣渚投手が活躍するソフトバンク、人気の西武が加われば、12球団が沖縄にそろう。ぜいたくな夢だが、現実になるかもしれない。そんな期待を抱かせるロッテの石垣入りだ。
 そのロッテといえば、大嶺祐太投手。八重山商工高校のエースとして、甲子園で旋風を巻き起こし、沖縄にとどまらず全国、とりわけ島々の子どもたちに夢と元気を与えてくれた。
 今度は、入団先のロッテを、ふるさと石垣島にグッと引き寄せてくれた。もちろん、市民のバックアップがあってこそだ。
 大浜長照市長をはじめ石垣市民はプロ球団の誘致に向け、市営球場や多目的広場の土を入れ替え、芝を替えるなど、12項目もの要望に応える努力を重ねてきた。丁寧な対応で球団の信頼をつかんでいる。
 澄んだ空と海、温暖な気候、うまい食べ物、温かな人情が沖縄の魅力という。全国に広がる航空路線網、国内有数の観光地として優れた宿泊施設を備え、球場など関連施設も整ってきた。それが、キャンプ地としての沖縄の魅力を高め、プロ球団を引き寄せている。
 9球団がそろう沖縄は、球団にとってもファンにとっても練習試合やオープン戦の対戦メニューの豊富さ、一県で多球団を楽しめる「集結のメリット」も魅力だ。
 そして経済効果。琉球銀行の試算では約53億円(2007年)の経済波及効果と約23万人の集客効果を挙げている。
 「公式戦が実現すれば効果は倍増」との期待も膨らむ。来春が待ち遠しい。

(6/29 9:31)

【琉球新報・金口木舌】

 七色のさえずり、とでも言おうか。「ピックリン ピックリン」「キュッキョロ キュッキョロ」。人によっては「チョコレート クレクレ」と聞こえるらしい。シロガシラ(白頭)の声音は本当に軽やかで、楽しい気分にさせる

▼県や国、市町村、JAなどはこのほど「沖縄地域野生鳥獣対策連絡会議」を設立した。本島北部ではカラスとイノシシ、南部ではシロガシラによる農作物被害が深刻になっている。2006年の県内の被害額は2億7400万円で、この5年では最悪だ
▼シロガシラが沖縄本島で確認されたのは1976年、糸満市。その後、生息域は北上、拡大している
▼だが本島のそれは、八重山に生息する在来の希少種ヤエヤマシロガシラに比べ、頭頂の白毛部分がやや広いといわれ、亜種のタイワンシロガシラと断定された。農家にとっては頭の痛い問題だが、オツムの面積で希少種、害鳥と分けられるのをシロガシラはどう思っているのか
▼「ヘンチクリン ヘンチクリン」。さえずりはそうも聞こえる。▼17年前にシロガシラによる農作物被害の取材をして以来、そのさえずりが気になって仕方がない。「害鳥」でなければ、声質といい、賢そうな雰囲気といい、無条件に好きな野鳥なのだが

(6/29 9:32)


【東京新聞・社説】

元長官逮捕 背後に何があったのか

2007年6月29日

 なんとも謎の多い事件である。元公安調査庁長官がかつての監視対象だった朝鮮総連中央本部の売却話にからんで詐欺の疑いで逮捕された。背後に何があったのか明らかにしてほしい。

 「中央本部の差し押さえを防ぐため三十五億円で売買契約を結んだ」

 公安庁の元長官だった緒方重威(しげたけ)容疑者は、朝鮮総連中央本部の土地・建物の購入が表ざたになったとき、こう説明した。

 ところが、東京地検特捜部による逮捕容疑は詐欺罪だった。朝鮮総連側に代金三十五億円を支払うつもりがないのに、自らが社長を務める「ハーベスト投資顧問」に土地・建物の所有権を移転させ、だまし取った疑いだという。

 こんな手口で法の網をくぐろうとしたのなら、お粗末としか言いようがない。緒方容疑者は公安庁長官だけでなく、最高検公安部長や高検検事長も歴任している人物だ。

 今回の事件は司法機関や情報機関の信用にも深くかかわる。複雑な売買契約までの経緯や背景。売買代金とは別に億単位の金が総連側と元長官との間で動いたともいわれる。不可解な部分が多い。闇の部分にも光を当ててほしい。

 もともと、この事件は謎が多い。

 まず元公安庁長官と朝鮮総連との取り合わせが奇妙だ。朝鮮総連は、破壊活動防止法に基づいて公安庁の調査対象になっている。

 この売却話は、在日朝鮮人系の朝銀信用組合の不良債権をめぐり、整理回収機構が二〇〇五年、朝鮮総連に六百二十七億円の返済を求めて提訴したことに発端がある。

 東京地裁は、さる十八日に全額の返済を命じた。個人・法人名義の六百億円余は実質的に総連への貸し付けと認定したからだ。

 この巨額な資金の返済のめどはたっていない。本国の北朝鮮への送金、総連直轄事業の失敗の穴埋めなどに使われたともいわれているが、真相は不明のままだ。

 緒方容疑者はこうした経過を最もよく知る立場にあった。「中央本部には北朝鮮の大使館的役割があり、在日朝鮮人の権利保護が必要」(緒方容疑者)というきれい事でないこともよく知っているはずだ。

 また、朝鮮総連の最高実力者といわれる許宗万責任副議長は、取引仲介者らに数億円を提供したといわれる。中央本部の差し押さえを回避するためだろうが、総連のかかわりも謎のままである。

 今回の売却話を解明することは、朝鮮総連にもまつわる不可解な部分を解くことにもつながる。

宮沢元首相死去 また一人消えた良識派

2007年6月29日

 二十八日死去した宮沢喜一元首相は、戦後自民党一党支配下の最後の内閣総理大臣であると同時に、ハト派政治家の代表格でもあった。故後藤田正晴氏に続いて良識派政治家がまた一人減った。

 宮沢氏を形容して「ハト派」「護憲」「戦後政治の証人」「良識派」「秀才」などの表現が使われた。

  同氏は旧大蔵省の官僚時代に故大平正芳氏(元首相)とともに池田勇人蔵相の秘書官となり、サンフランシスコ講和会議に吉田茂首相に随行するなど、戦後政治 の枠組みづくりに深くかかわった。吉田首相の特使となった池田氏に随行し、日本の防衛力整備をめぐる池田・ロバートソン会談の通訳を務めた。当時の経緯を 記録した宮沢氏の著書「東京-ワシントンの密談」は、戦後政治の裏面史を物語る名著である。

 学生時代に渡米したこともあり終始親米とみられたが、戦後の占領時代を回顧して宮沢氏は「あんなに悔しかった時代はない」とも語っていた。単なる親米ではなく、福沢諭吉の「独立の気概」を大事にするという点では、骨っぽさを持った「親米・ハト派」だった。

  「平和憲法」「議会制民主主義」「軽軍備」「自由主義経済」を柱とする吉田政治の保守本流路線を終生尊重した宮沢氏にとって、近年の小泉、安倍両内閣にお ける改憲ムードの加速は、苦々しいものだったに違いない。宮沢内閣当時の一九九二年にPKO(国連平和維持活動)協力法の制定にかかわったのはハト派宰相 としては歴史の皮肉だったが、「海外での武力行使は、いっさいしないというのが現憲法の原点だ」との姿勢を晩年まで貫いた。

 九一年、首相の座に就いたときは「生活大国」づくりを掲げたが、政策の具体化を手がける前に金丸信自民党副総裁への五億円献金事件など政治腐敗についての対応に追われ、内閣不信任決議案の可決-小沢一郎グループの離党-総選挙敗北で自民単独政権最後の首相となった。

 首相退陣後に自ら会長を務めていた宏池会を加藤紘一氏に譲ったが、結果的に派閥の分裂を招いた。「知の政治」においては大きな功績を残した半面、「力の政治」では十分な実績を残せなかったのが宮沢政治の実像だったろう。

 戦後六十二年にして政治に限らず、日本社会全体が保守化、右傾化している中で、いま本当に必要なことは、戦後民主主義の良さを継承し、悪い点を是正していくという冷静な論議である。そのような時に宮沢氏のような良識派政治家を失ったことは、損失といわざるを得ない。

【東京新聞・筆洗】2007年6月29日

 朝のNHK国際ニュースを見ていたら、十年務めた英 国首相の座を明け渡したトニー・ブレア氏の官邸からの引っ越し風景を流していた。その後、番組は、BBCなど共同制作のドキュメンタリー『フセイン裁判』 に変わる。なんとも皮肉な取り合わせ▼天才政治家と謳(うた)われたブレア氏にとって、命取りはイラク戦争だった。その後始末は、サダム・フセイン元大統 領の極刑をもってしても、収拾にはほど遠い。各国政治指導者の行く末に思いをはせていたら、午後になって宮沢喜一元首相の訃報(ふほう)が飛び込んできた ▼八十七歳なら、天寿を全うといえるのだろうが、改憲を宣明する安倍政権の強引な国会運営さなかに、自民護憲派リーダーの退場はこれも時代の流れか▼夕方 になって、朝鮮総連本部ビルの差し押さえと競売逃れを仲介した元公安調査庁長官、緒方重威弁護士が詐欺容疑で逮捕のニュースも流れた。国の滅亡に立ち会っ た自らの引き揚げ体験まで語り、在日朝鮮人の拠(よ)り所を守ってやりたかったという会見での弁明は、カネもうけの隠れみのだったか▼ブレア氏の雄弁はク リントン米前大統領とともに天賦の才だろう。窮地に立たされても、リーダーの口舌一つで劣勢をはね返せるのは、さすがシェークスピア劇のお国柄だ。ブレア 氏の最後の議場あいさつは「これでおしまい」と一言。死刑論告求刑を聞いたフセイン元大統領の「上出来だ」と好一対▼国会論戦を見ても、日本の政治リー ダーのは聴くに堪えない。教育改革はまず政治家の国語力強化から始めてほしい。


【河北新報・社説】

緒方元長官を逮捕/経歴利用の詐欺行為だ

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地取引をめぐる事件で28日、詐欺の疑いで元公安調査庁長官の緒方重威容疑者が逮捕された。
 北朝鮮や朝鮮総連などの情報を収集する公安調査庁の元トップが、よりによって総連の土地を詐取しようとしたことになる。緒方容疑者は否認しているが、同時に逮捕された元不動産会社社長らとともに、最初からだますつもりで総連側に接近した疑いも浮上している。

 仙台高検などの検事長を務めた緒方容疑者にとって、犯罪行為と商行為の区別ができないわけはないだろう。公安調査庁や検察庁への信頼にもかかわる。なぜ、怪しげな土地取引にのめり込んでいったのか、東京地検特捜部は詳しく解明すべきだ。

 朝鮮総連本部の土地(東京都千代田区)をめぐる事件は、最初から不可解だった。
 35億円の売買代金が支払われないまま所有権が移転登記されたが、普通の取引では考えられないことだろう。買ったのは緒方容疑者が代表取締役の投資顧問会社で、もともと自己資金があったわけではない。投資を募って資金を調達しようとしたが、結局は集まらなかったという。

 朝鮮総連の土地が通常の商取引の対象になるのかどうかは、そもそも怪しかった。
 総連に対し整理回収機構は2005年、約630億円の支払いを求めて提訴した。破たんした在日朝鮮人系信用組合の不良債権の中には、実質的に総連への融資分があったとの理由だった。

 この訴訟で負ければ、土地などを強制執行される可能性があるのは以前から分かっていたことであり、そんな土地に大金を投資する人物が果たしているのだろうか。

 実際、今月18日の東京地裁の判決では、総連が支払いを命じられている。
 これまでの経過をたどれば、逮捕された元不動産会社社長が総連側代理人の土屋公献・元日弁連会長と緒方容疑者を引き合わせ、土地の売買交渉が始まったという。

 総連からは4億円以上が元不動産会社社長に提供されており、さらに元社長から緒方容疑者に1億円が渡ったことも分かっている。
 緒方容疑者らはその肩書なども利用して最初から総連の土地をだまし取ろうと計画し、所有権を移転させたとみなされても仕方はないだろう。
 事件が表面化してから登記は戻されたが、既に億単位の金も動いており、立件されるのは当然だ。

 緒方容疑者は当初、土地売買の理由について「朝鮮総連には大使館的な役割もある」「在日朝鮮人の権利保護のため」などと話していた。だが逮捕容疑では逆に、助けるはずの総連をだましたことになる。悪質な不動産ブローカーの手口だろう。
 元不動産会社社長らとの密接なつながりが事件の要因になったのかもしれないが、決して越えてはならない線を自ら越えていたのは確かだ。
2007年06月29日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 開けたビニール袋から、あんパンをほお張る。その姿に似ていることから、シンナー吸引行為に付けられた俗称が「アンパン」。甘さなどない苦さだけ が後に残る姿なのに▼それをもじった「ガスパン遊び」。法規制があるシンナーに代わり制汗スプレーやライター用ボンベなどのガスを袋にためて吸う。 1990年前後から中高生の間に広がった

 ▼ 仙台市宮城野区のアパート爆発事故で重軽傷を負った中学3年の男女6人もガスを吸っていたらしい。たばこも吸い、その火がガスに引火した可能性があると警 察はみている▼ガスの主な成分はブタン。空気より重いため肺にたまると酸素が欠乏する。脳を巡る血液の酸素不足から幻覚を見るほど意識が薄れ、窒息死する 場合がある。燃えやすいのも特徴という

 ▼遊びではすまされない命にかかわる危険な行為。96年には全国で少年16人が死亡している。 が、警察白書が警告したのはその報告である97年版だけ。「遊び」が潜行していた証しといえ、その怖さをあらためて訴える必要がある▼西洋では好奇心とい えば猫を連想する。見るものすべてにちょっかいを出すからだが、災いも招くため「好奇心は猫をも殺す」と戒める。何にでも興味を抱く10代。好奇心は時に 危険と隣り合わせであることを忘れないで。

2007年06月29日金曜日


【京都新聞・社説】

採決強行  何のための会期延長か

 延長国会が始まったのもつかの間。もう大詰めらしい。
 安倍晋三首相が重視する社会保険庁改革法案と年金時効撤廃特例法案、それに政治資金規正法改正案が、きのうの参院委員会で可決した。きょうの本会議で成立を図る。
 与党による採決の強行だ。今国会では国民投票法案や教育関連三法案など何度も見せつけられた「数の力」の繰り返しである。政治不信を助長する。
 会期延長の「大義」となった国家公務員法改正案は、民主党が委員長ポストを握る参院内閣委での採決を見送った。与党は委員会採決を省略し、本会議で議決する「中間報告」も辞さない構えだ。
 成立にこだわる首相の強い意向を反映しているようだが、与党の国会運営はあまりに強引過ぎはしまいか。
 審議はどうだったか。首相は「十分に議論してきた」と採決を促すが、法案の中身について「深い論戦」は伝わってこない。参院選に向けた政権の実績づくりや、与野党の損得勘定だけに目が向いているとすれば、国会軽視も甚だしい。
 とりわけ年金記録不備問題では、社保庁のずさんな管理の実態が次々に発覚、後を絶たない。政府の対応は後手に回るばかりだ。日本の行政史上、例のない不祥事である。国民の年金不信、社保庁に対する怒りは収まらない。
 社保庁改革法案は、こうした問題が明らかになる前に検討された。社保庁を廃止・解体して、二〇一〇年に新たに非公務員型の特殊法人「日本年金機構」を発足させる内容である。
 不明記録などの対応には、膨大な作業が待っている。それも侵害された受給権回復という重い任務だ。長い年月、大がかりな陣容、予算が不可欠であろう。現社保庁を六分割し、スリム化することで、どこまで問題解決に対応できるのか。疑問がつきまとうのは当然だ。
 年金給付の是非を判断する第三者委員会、問題の原因と責任の所在を解明する年金記録問題検証委員会の調査・検討は始まったばかりである。
 政府は提出した法案をいったん廃案にし、両委員会の一定の報告を待って出し直すのが筋であろう。何がなんでも通す。それも修正せず「無傷で」では、冷静で誠実な対応とは言えない。
 国会の会期は十二日間延長された。七月五日までだ。きょうが会期末でもあるまい。参院選の日程を一週間ずらし、投開票日を七月二十九日(十二日公示)に先送りした異例の延長である。
 国民の理解と信頼を得るためにも時間いっぱい審議を尽くすことが大事だ。はや「店じまい」では、首相から社保庁職員までの賞与返納の動きとも絡んで、問題の幕引きと映っても仕方あるまい。
 会期延長を主導したのは首相である。「強行突破」とか「参院選での批判を沈静化させる時間稼ぎ」と批判されないためにも、国民にていねいな説明がいる。

[京都新聞 2007年06月29日掲載]

JR西事故報告  企業体質の改善を急げ

 百七人が亡くなった尼崎JR脱線事故に関する国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の最終報告書がまとまった。
 事故の原因は、手前の伊丹駅でオーバーランした運転士が「日勤教育」を受けさせられるのではないかと懸念し、運転から注意がそれた可能性が高い、とした。
 直接的には運転士のミスに違いないが懲罰的な日勤教育やブレーキの不備を放置するなど、JR西日本の企業体質が背景にあった、と強く批判した。
 二年二カ月を費やし、千人を超す口述や情報を集め、安全軽視ともみえるJR西の企業体質まで踏み込んだ点は評価したい。
 報告書では、日勤教育の改善、ブレーキの改良、さらには人命優先の事故対応マニュアル整備や車体構造の改良なども求めた。
 JR西はトップをはじめ社員一人一人が、これらの指摘を重く受け止め、悲惨な事故を二度と起こさぬよう社内体制の改善に努めなくてはならない。
 多くの人命を預かる公共交通機関として安全確保は当然の使命であり、犠牲者や遺族に応える道は他にあるまい。
 JR西の対応に対する遺族の不信感はなお根強い。意を尽くし、丁寧に説明することだ。
 報告書には不満も残る。「JRの責任がはっきりせず、再発防止効果も疑問」とする遺族の批判に加え、国の鉄道監督行政についての検証がいかにも甘い。
 国には、懲罰を前提としない事故報告制度の推奨と、走行中の運転士の交信制限などを提言したにすぎない。
 速度を監視する最新の列車自動停止装置「ATS-P」が設置してあれば事故は防げたとしながら、安全対策として、ATS設置を義務づけていなかった国の責任には触れていないのだ。
 事故調査委は「独立して職権を行う」と法律で定められているとはいえ、国土交通省の下に置かれている。独立性が十分ではないため、「身内」へ遠慮したと指摘されても仕方あるまい。
 これを機に、米国の国家運輸安全委員会(NTSB)のような独立機関にすることを検討するべきだ。
 併せて、事故犠牲者の遺族の支援の在り方も考えたい。
 米国には、遺族のための家族支援法がある。NTSBの活動も遺族のためにという理念で貫かれ、NTSBに遺族支援を専門に担当する「家族支援局」が設けられている。
 米国の例を参考に、遺族の要望もくみながら、支援のための法整備と担当部署設置を急いでほしい。
 今後は、兵庫県警による刑事責任の追及が焦点になる。「なぜ娘は死ななければならなかったのか、真実が知りたい。最終報告書は出発点」-と言う遺族の言葉をかみしめたい。

[京都新聞 2007年06月29日掲載]

【京都新聞・凡語】

電磁波予防策は必要

 「電化製品の使い過ぎに注意を!」。やがてこんな警告が登場するかもしれ ない▼世界保健機関(WHO)はこのほど、電化製品や高圧送電線から出る超低周波電磁波が人体に与える影響について、「小児白血病発症との関係が否定でき ない」として予防的な措置を取るよう各国に勧告し、初の環境保健基準を示した▼約十年にわたる調査結果で、電磁波と健康被害の間に直接の因果関係を認めな かったが、予防策は必要、と結論づけた。おおざっぱな対応のようだが、悪影響の疑いが否定しきれない以上は、用心に越したことはないだろう▼WHOの国際 会議に出席した関係者も「交通事故や喫煙に比べ死にいたるリスクは非常に低く、過敏になる必要はない」としながらも、高圧送電線や電子機器から一定距離を 取ることや、妊婦が電磁調理器を使うのは避けた方がいいとしている▼通常の使用で電磁波が強いものに、ドライヤー、電気かみそり、掃除機、電子レンジなど をあげるが、暮らしのなかでなじみのものばかりだ。使うたびに「健康に悪影響」と思っていては気がめいる▼使用の目安がほしいが、環境保健基準は対策を講 じた国を紹介しただけで具体的規制値を示さなかった。自主的対応を重んじたに違いない。来年は携帯電話など高周波電磁波の影響も公表の予定だ。政府も腰の 引けた対応では許されない。

[京都新聞 2007年06月29日掲載]


【朝日・社説】2007年06月29日(金曜日)付

社保庁改革―これでは見切り発車だ

 社会保険庁を解体して非公務員型の公法人にするための改革法案が、参院の委員会で可決された。野党側は反発しているが与党は押し切り、今日にも成立する方向だ。

 しかし、社保庁の長年にわたるずさんな管理のため宙に浮いたり消えたりした年金記録の問題は、いまだに全体像すら解明されていない。

 膨大な記録を正しい状態へ直す作業も、どうしてこんなことになったのかという原因と責任の追及も、これから始まろうという段階である。

 過ちの全体像とその原因をはっきりさせてから、二度と再発させない組織と運営方法を考えるべきだと私たちは主張してきた。法律の成立を優先させたのは、見切り発車といわざるを得ない。

 可決を強行した安倍首相は、年金記録の照合・修正と、原因の究明と、新しい組織の詳細設計という三つの作業に、同時並行で取り組まねばならない。

 年金記録を照合し、漏れていたものを救済するには、コンピューターで自動的に名寄せするだけでは済まない。最終的には市町村が持つ手書きの原簿との突き合わせも必要だ。

 組織を解体し人員を削減しながら、その作業をどのように進めるのか。安倍首相は「最後の一人まできちんと払う」と胸を張るからには、工程表をまず明らかにしてもらいたい。

 法律成立を受け政府は、内閣に第三者機関を設ける。新しい公法人が自ら行う業務と民間に委託する業務を振り分け、定員などを決める作業に入る。

 政府はもともと、新組織へ移す職員を減らすリストラを狙っていた。だが、法案提出後に記録の不正が発覚した。

 したがって、今後は再発防止を最重点に新組織を設計すべきだ。今回、年金の記録をきちんと管理することが極めて重要であることが分かった。百年単位の運用に耐えるにはどうしたらいいのか。知恵をしぼる責任がある。

 公的な年金である以上、何か不都合が生じれば、最後は国が全責任を負うことを明確にしておくべきだ。そうでなければとても安心できない。

 再発防止のために、加入者の払った保険料が一目で分かる通帳方式や、医療や介護保険と一体となった社会保障番号などが提案されている。これらは混乱の中で拙速に決めることは避け、中期的な課題として検討すべきだろう。

 それにしても、安倍首相は「宙に浮いた年金記録」の存在を、昨年末から今年の初めに知らされていたという。

 なのに、2月に民主党から追及され、「年金不安をあおる危険がある」と反論していた。握りつぶそうとしていたと思いたくなるほど後ろ向きだった。

 安倍首相は「私がいちばん大きな責任を背負っている」という。その言葉どおりに、7月末の参院選では政府・与党の対応のすべてが問われるに違いない。

総連本部売買―元公安長官が詐欺容疑とは

 「本部は北朝鮮の大使館としての機能を持っている」と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)を守るようなことをいい、購入代金が集まらなかった時には「だまされたとは言いたくないが、乗せられた」と語っていた。

 その元公安調査庁長官の緒方重威弁護士が、朝鮮総連中央本部の土地と建物をだまし取ったという疑いで、東京地検に逮捕された。

 犯罪を摘発する検察官として、高検検事長まで上りつめた人物である。本人は否認しているが、詐欺容疑と聞いて、驚きとともに憤りを感じる。検察官の信頼を失墜させる事態だ。東京地検は捜査を尽くして、事件の全容を解明してもらいたい。

 一連の中央本部の売却問題は、発覚当初から驚きの連続だった。

 東京都千代田区にある中央本部の土地と建物の所有権が、投資顧問会社に移転登記されていた。その会社の代表取締役が、総連を調査対象としている公安庁のトップを務めた人物だった。

 さらに取引の内容にも疑惑が生じた。移転登記をしたにもかかわらず、購入代金は支払われていなかった。競売を逃れるための偽装売買の疑いが持たれた。

 元長官だけではない。売り手の朝鮮総連に加えて、総連の交渉窓口となった土屋公献・元日弁連会長にも疑惑の目が向けられた。

 ところが、検察の描いた事件の構図はまったく異なった。

 元長官と仲介役の不動産会社元社長らが「いい買い手が見つかった」と総連側にうその売買話を持ちかけて、土地と建物をだまし取ったというのだ。総連側は詐欺の被害者ということになる。

 朝鮮総連は在日朝鮮人系の朝銀信用組合から融資を受けた627億円の返済を求める訴訟を、整理回収機構から起こされていた。総連側は競売にかけられるのを避けるため、売却後も立ち退かずにすむことができる買い手を探していた。

 元長官らはそうした朝鮮総連の弱みにつけ込んだことなる。

 とはいえ、まだ謎がいくつも残る。

 もともと出資者がいなければ、総連に売買代金を払うことができず、だましたことはいずればれる。事件や法律に通じているはずの元長官がなぜ、そのようなことに手を染めたのか。

 総連側から元社長らに渡ったとされる約4億8000万円はどこに流れたのか。

 捜査の流れとは別に、朝鮮総連の苦境はいっそう深まっている。裁判の敗訴を受けて、整理回収機構から中央本部の土地と建物の競売を申し立てられた。

 朝鮮総連の象徴だった中央本部が立ち退かねばならない可能性が強まった。

 だが、もとはといえば、今回の事件も、朝鮮総連がなんとか居座ろうと無理を重ねたことが背景にある。

 ここは現実を認めて、新たな拠点を探し、出直した方がいい。

【朝日・天声人語】2007年06月29日(金曜日)付

 大正の流行作家、田村俊子の代表作に「木乃伊(みいら)の口紅」がある。一人の女性が夢で、唇に鮮やかな紅をさしたミイラを見る話だ。言われてみればミイラは、冷徹な「死」の中にも「生」を引きとめて離さない、不思議な表情を持っている。

 エジプトで確認されたハトシェプスト女王のそれも、幽明の境に漂うような、生の名残を宿している。紀元前15世紀に栄華を極めたという女帝である。「ツタンカーメン王以来の重要な発見」と考古学界は興奮気味らしい。

 ツタンカーメンの墓を1922年に発見した英国の考古学者カーターらが、それより前の03年に発見していた。だが誰だかわからず、1世紀余を身元不明で過ごしてきた。DNA鑑定の進歩によって素性が明らかになった。

 「この光景を前にしては、人間のはかない命を基準にした時間など展望を失ってしまう」。ツタンカーメンの棺を開けたカーターの回想である。古代エジプト人は霊魂の不滅を強く願った。その宿る所として、肉体にも永遠を与えようとした。

 カンヌ国際映画祭で受賞した河瀬直美監督の「殯(もがり)の森」を思い起こす。殯とは、死者の本葬前に霊の復活を願いつつ鎮める、古代日本の風習だった。河瀬さんは、殯という「死者と生者の間にある結び目のような時空」を、深い森に求めて、現代の物語を撮った。

 女王は3500年のあいだ霊魂を待ち続け、死者として存在してきた。それ自体が「結び目」のようなものだろう。荘厳さの漂う面ざしには口紅よりも、王冠の方が似合うようである。


【毎日・社説】

社説:緒方元長官逮捕 総連本部売買の真相解明を

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物が登記上売買された事件は、元公安調査庁長官の緒方重威(しげたけ)容疑者(73)逮捕と いう衝撃的な事態に発展した。公安調査庁のトップを務め、検事長も歴任した大物検察OBが事件にどうかかわったのか、東京地検特捜部は早急に真相を解明す ることが求められる。

 特捜部に詐欺容疑で逮捕されたのは、緒方元長官と、売買取引を考案したとされる元不動産会社社長、資金調達役を務 めたとされる元銀行員の計3人。3人は、東京都千代田区にある朝鮮総連中央本部の土地・建物について、売買代金を支払う意思も能力もないのに、緒方元長官 が代表取締役を務める投資顧問会社に所有権移転の登記をすれば売買代金の35億円を支払うとうそをつき、今月1日に登記してだまし取った--というのが逮 捕容疑である。

 特捜部は、朝鮮総連側を被害者と見立て、だまされた直接の当事者を朝鮮総連代理人を務める元日本弁護士連合会会長の土屋 公献(こうけん)弁護士らと認定した。当時、整理回収機構から約627億円の返還請求訴訟を起こされていた朝鮮総連が、中央本部の土地・建物を差し押さえ られるのを避けるために売却先を探していたことに、緒方元長官らが乗じた、というのが特捜部の描く構図だ。

 確かにこれまでの経緯を見る と、緒方元長官の言動には不自然な点も少なくない。元長官は記者会見で「中央本部は在日の権利擁護の拠点。存続し続けることは日本の国益になる」「大義の ために引き受けた」と正当性を強調した。しかし、元長官が会見で「出資予定者」と説明した男性については「1度だけ会ったが、名刺はもらわなかった。姓は 分かるが、名は分からない」などと、常識では通らない弁明を重ねた。

 さらに、この男性は実際には代金を払うめどが最初からなかったとい う。捜査が始まった後、緒方元長官は「男性が金を出す意思を見せ、それを信じたことにしよう」と、元不動産会社社長や元銀行員と口裏合わせをしていたとさ れる。だとすれば、悪質な証拠隠滅行為と言わざるを得ない。

 特捜部の捜査は、毎日新聞の報道で最初にこの問題が明らかになってから、わ ずか半月で緒方元長官の逮捕にこぎ着ける急ピッチの展開だ。朝鮮総連を調査対象とする公安調査庁の元トップの関与に政府内の批判が高まる中、法務・検察が 早急に決着を図ろうとする「組織防衛」の側面も感じられる。特捜部には、政治的な捜査と疑われることのないよう、事件の徹底解明を望みたい。

  被害者とされる元日弁連会長も含め、法曹界の重鎮が不透明な売買取引にかかわったことに、国民の司法への信頼は大きく揺らいだ。緒方元長官が事件に関与し た動機は何か、これによって不当な利益を得ているのかなど、まだ不明な点はたくさんある。特捜部はそうした数々の疑問点を解明し、事件の全容を国民の前に 明らかにしてほしい。

毎日新聞 2007年6月29日 東京朝刊

社説:宮沢元首相死去 最後までハト派の象徴だった

 宮沢喜一元首相が28日、87年の生涯を閉じた。戦後保守政治の生き証人でありハト派の代表的な政治家だった。また堪能な英語をはじめ思想、哲学などに通じ、「政界の知性派」が宮沢さんの代名詞だった。

 折しも安倍晋三首相が登場し、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を訴えている。首相の手で教育基本法が改正され、国民投票法も成立した。集団的自衛権の見直し論議も進んでいる。

 首相が壊そうとしている、この戦後日本のレジーム作りに参画した人物こそ宮沢さんだった。

  宮沢さんは憲法9条改正に慎重で、自衛隊のイラク派遣にも強く反対した。小泉純一郎前首相の靖国神社参拝にも「おやめなさい」と苦言を呈していた。今後、 国民が向かうべき目標を聞かれ、即座に「心がけることは軍事大国にならないことです」(聞き書 宮澤喜一回顧録)と答えている。

 安倍政治に対しては病床で気が気ではなかったのではないか。自民党のリベラル色が薄まる状況だからこそ、政権に対する直言が聞きたかった。

 宮沢さんの政治人生を振り返れば四つの時代に区分できよう。

 まず戦前に旧大蔵省に入省、敗戦を経て蔵相、首相を務めた池田勇人氏の側近として戦後の国造りにかかわった時代。

 51年にはサンフランシスコ講和会議に全権随員として出席。53年の「池田・ロバートソン会談」にも同行し、「軽武装・経済優先」という戦後政治の基礎作りに加わった。脇役ながら大いに輝いた時代でもあった。

 第2期は首相になるまで。池田氏の死後、同氏が作った自民党派閥「宏池会」のプリンスとしていつかは首相になると言われた。しかし常に政治家としてのひ弱さが指摘され、91年にトップの座に就いたがすでに72歳になっていた。

 第3期は首相時代だが、必ずしも国民の期待には沿えなかった。バブル崩壊後の景気の低迷や日米経済摩擦に悩まされた。後になって、この時になぜ不良債権処理に当たらなかったのかと責められることになった。

 国連平和維持活動(PKO)協力法を成立させ、自衛隊を海外派遣する道を開いた。海外派遣に慎重だった宮沢さんには皮肉なめぐり合わせだった。カンボジアPKOの選挙監視をしていた文民警察官の高田晴行さんが死亡したことには晩年まで責任を感じていた。

 時代の変化に対応できなかったことも事実だ。政治改革を実現するとの公約を果たせず、政権から転落。38年に及ぶ自民党一党支配を終えんさせる結果となった。

 第4期は首相退陣後だ。いったんは表舞台から消えたが小渕内閣で蔵相、森内閣では初代の財務相を務めた。

 病床では分裂した宏池会の合併問題を気にしていたという。体調のよい時を見計らって派閥の後輩である古賀誠氏や谷垣禎一氏の訪問を受け、「そうなさったら」などと相談に乗っていた。最後までハト派の象徴的な存在であった。

毎日新聞 2007年6月29日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「日本政府は講和後の米軍の駐留を依頼してもいい」…

 「日本政府は講和後の米軍の駐留 を依頼してもいい」。占領下日本の吉田茂首相の極秘メッセージが米国政府に伝えられたのは1950年5月3日だ。戦後の日本の運命を決めたこの出来事は、 訪米した当時の池田勇人蔵相に随行した宮沢喜一さんの証言で世に知られた▲この訪米で2人は1日7ドルの安ホテルのツインルームで日本酒を酌み交わす。洗 面器に湯をくんで燗(かん)をつけたが、米国は蛇口から湯が出る国と改めて感心したというのも宮沢さんの話だ。安ホテルは被占領国だからと米国側が選んだ という▲この日から日米同盟と平和憲法の二つの軸をもつ戦後日本の歩みが始まった。宮沢さんはその後ずっとこの歩みの歩幅と方向を決める現場に立ち続け る。戦後保守本流と呼ばれる経済優先、日米基軸、専守防衛の政治路線は、日本の経済大国化と共にやがて宮沢さんによって代表された▲それが戦後55年体制 下の自民党長期政権の幕引きをつとめる首相となり「自民党の徳川慶喜」という役回りを果たしたのは、歴史の女神の皮肉なのか。戦後保守政治の負の資産であ る政治とカネをめぐる国民の政治不信を引き受けての退場は、いかにも運命的なめぐり合わせであった▲良くも悪くも話題となったのはそのエリート主義であ る。英字紙を読む宮沢さんに「日本語を読め」と言って「国会議員だからあなたも英字紙を読みなさい」と言われたのは浜田幸一氏だ。一方で84年に暴漢と渡 り合った後に「政治家をなめてはいけない」と語った度胸と気迫も忘れられない▲英語で名高い宮沢さんだが、政治の基本を示すのには「王道」という言葉を好 んで使った。戦後というまっさらな時代に、自らの信ずる王道をつき固め、信ずるままに歩んだ生涯だった。

毎日新聞 2007年6月29日 東京朝刊


【読売・社説】

緒方元長官逮捕 総連事件の闇を徹底解明せよ(6月29日付・読売社説)

 「架空取引ではない」としきりに強弁してきたが、通るはずもなかった。

 公安調査庁の緒方重威・元長官が東京地検特捜部に逮捕された。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の東京・千代田区にある中央本部の土地と建物を、総連側からだまし取ったとする詐欺容疑である。

 法務省外局の情報機関である公安調査庁は、北朝鮮、朝鮮総連の動向も主要な調査対象としている。そのトップだった人物が、朝鮮総連がらみの事件で逮捕されるという異例の展開だ。

 特捜部によると、緒方容疑者は中央本部を35億円で購入するとみせかけ、緒方容疑者が代表の投資顧問会社に所有権だけ移転させたという。

 しかし、朝鮮総連は単なる被害者の立場なのか。この売買を仕組んだのは、もともと総連側で、総連側の誘いに乗ったのが緒方容疑者だとみられていた。

 実質的に総連の最高責任者とされる許宗萬・責任副議長が自ら関与していたという構図だった。

 許氏は北朝鮮の国会議員である最高人民会議の代議員も務めるなど、本国と密接なつながりを持つ人物だ。

 加害者と被害者の関係が、逮捕容疑のような単純なものなのか。総連側に違法性はないのか。特捜部には、全容を徹底的に解明してもらいたい。

 そもそもの発端は、破綻(はたん)した朝銀信用組合の債権を引き継いだ整理回収機構が朝鮮総連を相手取り、約627億円の返還を求めて起こした訴訟である。

 総連全面敗訴の判決が今月18日に東京地裁で出たが、この判決を前に、総連は中央本部が差し押さえられるのを逃れようと企て、緒方容疑者が買い取った形にして、5年後に買い戻す念書まで交わしていたとされる。

 朝銀信組の破綻処理では1兆円以上の公的資金が投入されている。整理回収機構が総連を訴えたのも、この国民負担を少しでも軽くするためだ。総連は返済義務を忠実に果たそうとせず、機構の作業を妨害しようとしたのではないか。

 35億円の仲介役とされる元不動産会社社長らも共犯の容疑で逮捕されたが、この仲介役には総連から4億8400万円の資金が支払われている。こうした資金の流れや許氏の動きなど、まだ不明な部分があまりに多い。

 東京地裁は、整理回収機構の申し立てを受け、中央本部について強制執行を認める決定を出した。もともと、総連の乱脈運営が招いたことである。整理回収機構も、中央本部を含め、総連からの債権回収を着実に進めてもらいたい。
(2007年6月29日2時15分  読売新聞)

宮沢元首相死去 戦後政治の「生き証人」だった(6月29日付・読売社説)

 華やかな政治経歴が、戦後政治史と重なり合う。「戦後政治の生き証人」だった。

 1991年11月から93年8月まで首相の座にあった宮沢喜一元首相が死去した。

 池田勇人蔵相(後に首相)の秘書官時代に全権団随員としてサンフランシスコ講和会議に出席し、その後、政界に転出した。首相就任まで、経済企画庁長官、通産相、外相、官房長官、蔵相などの要職を務め、日本の政治意思決定の中枢にかかわり続けた。

 宮沢氏は、日本の主権回復と国際社会への復帰、戦後復興から高度成長、経済大国への歩みを通じ、吉田茂元首相直系の保守本流にあって、「軽武装・経済主義」の立場を貫いた。生涯、変わることのなかった政治的な立脚点である。

 国際派、知性派、有数の政策通として「ニューライトの旗手」「ニューリーダーの一人」などと称された。政界のプリンスとして「いつかは総理に」は、衆目の一致するところだった。

 だが、実際に首相となって、政治家としての頂点を極めた時は、72歳だった。時代は、冷戦の終結、バブル経済の終焉(しゅうえん)で、内外とも激動期を迎えていた。既に、宮沢氏の時代ではなく、遅すぎた首相就任だったのだろう。

 自らの首相退陣が、自民党の長期政権からの転落、55年体制の崩壊と重なったのは、皮肉なことだった。

 宮沢氏は、よく「王道と覇道があるが、自分は覇道は取らない。首相にはなろうとしてなるものではない」と語った。何度も首相候補に挙げられながら、権力欲の薄さが災いし、機会を逸した。

 「自分で泥をかぶろうとしない」「冷静な合理主義者」と評された面が、指導者として、政治課題の解決への強いリーダーシップを欠くことにもなった。

 首相時代、バブル崩壊で銀行に巨額の不良債権が発生したことについて問題提起しながら、事態の解決へ、具体的な対策を講じようとしなかった。これが、平成不況を長期化させ、一層深刻なものとすることになった。

 未曽有の経済危機のさなか、98年に発足した小渕内閣で、宮沢氏は請われて蔵相に就任した。戦前、同様に首相を経験した後に蔵相となって金融恐慌を乗り切った高橋是清の先例から、「平成の高橋是清」とも言われた。だが、在任中に危機克服は、成らなかった。

 今、安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げている。戦後レジームを体現した政治家とも言える宮沢氏は、生涯の終わりに、この時代の政治の姿に、どんな思いを抱いていただろうか。
(2007年6月29日2時16分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月29日付 編集手帳

 宮沢喜一氏が次代の首相候補に数えられていたこ ろ、ある財界人が別荘で静養中の氏を訪ねた。通された部屋のソファに雑誌が置いてあった。宮沢氏は腰をおろすとき、隠すようにそれを尻に敷いた◆ちらりと 目をかすめた表紙は写真週刊誌のようであったという。政界きっての政策通、知性派で知られ、英字新聞を読む姿が誰よりも似合った人は、自身のイメージが傷 つくのを嫌ったのかも知れない◆のちに首相となって金融危機の到来にいち早く気づき、公的資金を投入する必要を真っ先に訴えながら、官庁や経済界の反対に 遭うと投入論を引っ込めた。飛び切り鋭い頭脳と、先を見通す眼光をもちつつ、図太(ずぶと)い神経とは無縁であった人の一面を、別荘のひとこまに重ねるこ ともできる◆宮沢元首相が87歳で死去した。小渕内閣のもとで恐慌寸前の経済危機に際し、首相経験をもつ大物蔵相「平成の高橋是清」として登場したとき の、重厚な風姿は忘れがたい◆そうして編成した型破りの積極予算を宮沢氏は、「大魔神(抑えのエース、佐々木主浩投手)をいきなり投入したような」と自評 した。氏自身もまた、ベンチにデンと座る監督よりも、絶体絶命のピンチに登板する「大魔神」が似合う政治家であったのだろう◆その眼光を借りたくとも、繊 細な神経の救援投手はもういない。
(2007年6月29日2時14分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】元長官逮捕 総連との関係も解明せよ

 朝鮮総連中央本部の土地・建物をめぐる仮装売買事件で、東京地検特捜部は元公安調査庁長官、緒方重威容疑者ら3人を詐欺容疑で逮捕した。予想されたこととはいえ、北朝鮮などを監視する日本の情報機関の元トップが逮捕されたことは衝撃である。

  緒方容疑者は資金調達の見込みがないのに可能であるかのように装い、総連中央本部の土地・建物をだまし取ったとされる。この詐欺容疑に関しては、総連は被 害者である。しかし、売買そのものは、整理回収機構(RCC)から627億円の返還を求められていた総連の中枢が、強制執行を免れるために計画した疑いが 強い。総連の関与も徹底解明されるべきである。

 緒方容疑者とともに逮捕された満井忠男容疑者は、住宅金融債権管理機構による差し押さえ を免れるために財産を隠した強制執行妨害罪に問われ、有罪判決を受けている。緒方容疑者はその裁判で、満井容疑者の弁護士を務めた。今回の総連中央本部の 仮装売買に通じるものがあり、この点からの2人の関係解明も必要だ。

 公安調査庁は破防法施行に伴い、法務省の外局として設置された行政機関である。北朝鮮や総連以外に、過激派やオウム真理教(アーレフに改称)の動向など国内外の公安情報を収集する重要な役割を担い、その情報は内閣にも上げられる。

 緒方容疑者はそのトップとして公安庁内の最高機密を把握できる立場にあった人物だ。検察庁では最高検公安部長、広島高検検事長などを歴任し、公安庁では北を重点的に監視する調査第2部長も務めた。

 その元公安庁長官が監視対象の朝鮮総連への強制執行を免れる行為に手を貸していたこと自体、公安庁の信頼を失墜させる行為である。

 緒方容疑者は公安庁長官時代の平成6年の衆院予算委員会で、朝鮮総連について「北朝鮮と一体関係にあると見ている」「非公然組織『学習組』約5000人が非公然活動に従事していると承知している」などと踏み込んだ答弁をしていた。

 検察エリートでもあった元長官がなぜ、朝鮮総連と深いかかわりを持つようになったのか。検察当局はこの深い闇を明らかにすべきだ。

(2007/06/29 05:07)

【主張】TBS株主総会 楽天は矛を収める潮時だ

 楽天はTBSとの戦いの矛を収めるべきときが来たのではないか。買収防衛策導入の是非などをめぐり、両社が委任状争奪戦を繰り広げた末に行われたTBSの株主総会はTBSの圧勝に終わった。

 TBSの全提案は可決され、防衛策導入は出席株主の議決権の77・1%の賛成を得た。楽天の保有比率は19・86%だ。他の株主の賛同はほとんど得られなかったのである。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長は、結果をどう受け止めているのだろう。一昨年10月、楽天はTBS株の15%超を取得、経営統合を提案した。放送とインターネットを融合し、世界に通用するメディアグループをめざすというのが三木谷氏の説明だった。

 これに対し、TBSは「事前連絡もなく、短期間に大量の株式を取得され、唐突」と強く反発した。三木谷氏が楽天のオーナー経営者であることから、個人が間接的にテレビ局を支配する構図への危惧(きぐ)もあった。

 楽天は経営統合案を撤回、約1年半の提携協議も成果をあげることができず、今年4月、今度は出資比率20%超まで株式を買い増すと通告した。TBSは買収防衛策導入を株主総会に提案し、楽天はこれに対抗して防衛策発動要件の厳格化を提案したのだった。

 楽天は株の買い増しを断念していない。TBSの防衛策発動が決まれば、法廷闘争に持ち込むとみられる。

 しかし、これ以上TBSに固執するメリットが楽天にはあるのだろうか。放送業界とネット業界の提携は活発化している。だが、それは特定の放送局とネット企業が緊密な関係をつくるのではなく、内容次第でさまざまな企業、放送局が手を組んでいるのだ。

 楽天はTBSと提携して何をめざすのか、放送とネットの融合構想を示し得ていない。総会は三木谷氏自らが説明する格好の場と期待されたが、欠席した。これではTBSの株主、社員、視聴者らの理解は得られまい。

 TBSとの攻防の間に楽天の時価総額は約5000億円目減りし、ほぼ半分になった。これは楽天の株主も、TBSとの攻防の長期化を望んでいない証左ではないか。TBSと楽天の関係が今後急速に改善する可能性は低い。三木谷氏はTBSから離れ、戦略転換を図るべきである。

(2007/06/29 05:07)

【産経抄】

 さぞ、ドラえもんも仰天しているだろう。「押し入れに入れれば、ドラえもんが何とかしてくれると思った」。広島高裁で始まった山口県光市母子殺害事件の差し戻し審で、こんな証言が飛び出した。

 ▼ 本村弥生さんと生後11カ月の夕夏ちゃんが、当時18歳の少年に殺されたのは、平成11年4月のこと。殺人罪などに問われた被告が、2人の遺体を押し入れ と天袋に入れた理由を語ったものだ。のび太のように、ドラえもんがポケットから取り出す秘密道具の力を借りるつもりだったのか。

 ▼そこはドラえもんが寝床にしていたのび太の部屋の押し入れではない。常軌を逸した発言はこれにとどまらない。弥生さんを乱暴するのが犯行目的と検察側は主張するが、被告は「弥生さんを通して(亡くなった)母を見ていた」「甘えるつもりだった」と否認した。

 ▼極めつきは、弥生さんの遺体に性的暴行を加えたことへの弁明だ。「生き返ってほしいという思いだった」。伝奇小説のなかにあった死んだ女性を復活させる儀式をまねたというのだ。

 ▼ そもそも2審の無期懲役判決に対して検察側が上告、最高裁が2審判決を破棄して審理を広島高裁に差し戻したのは異例のこと。社会の関心を集めた裁判で、死 刑廃止に熱心な弁護士たちが張り切るのもわかるが、物事には限度がある。妻と娘の遺影を抱えて傍聴する本村洋さんが「怒りを通り越して失笑」するのも当然 だ。

 ▼のび太は、いつもドラえもんに依存しすぎるとの批判の声がある。「ドラえもん学」を提唱する横山泰行さんによれば、短編作品にはそんな部分もあるが、長編作品は仲間と協力して難局を克服するストーリーが目立つ。被告の自立の道はただひとつ。真実を語ることだ。

(2007/06/29 05:43)


【日経・社説】

社説1 防衛策で株主意思を尊重した東京地裁(6/29)

 異例な買収防衛策の発動を、東京地裁が認めた。ブルドックソースが株主総会で決議した防衛策は違法であるとして、米投資ファンドのスティール・パートナーズが防衛策の差し止めを求めた仮処分申請で、地裁は申し立てを却下した。スティールは東京高裁に即時抗告した。

 圧倒的多数の株主の意思を尊重し、防衛策を認めたことは妥当な判断といえよう。ただ防衛策の是非は個々の事例ごとに判断される。経営者は今回の決定を自らに都合よく解釈して防衛策を乱用すべきでない。

  スティールに敵対的TOB(株式公開買い付け)をかけられているブルドックは、今月24日の株主総会で防衛策を提案した。内容は、全株主に新株予約権を割 り当てるが、スティールには新株を渡さず、その予約権を総額23億円で買い取るというものだ。スティールの持ち株比率を10%強から3%弱に下げる狙いで ある。総会では、出席株主の議決権で3分の2以上の賛成が必要な特別決議が成立した。

 仮処分申請でスティール側は「特定の株主を差別するのは会社法の株主平等原則に違反する」などと主張。一方、ブルドック側は「スティールが当社の事業を理解しているか疑わしく、株主共同の利益を損ねる」などと反論していた。

  地裁は株主平等の原則が重要だと認めつつ、その原則には反していないと認定した。株主総会で特別決議をして、予約権の買い取りでスティールにも経済的補償 があるとの理由だ。防衛策が必要かどうかの判断は「原則として株主総会に委ねられるべき」とし、その策が違法となるのは総会の判断が「明らかに合理性を欠 く」場合に限ると述べた。

 スティールは経営権を得た場合の経営方針などを明確に示していない。こうした姿勢に、東京地裁は「ブルドックの株主が企業価値を損なうとの疑念を抱くのは無理もない」と指摘。ブルドックの総会の判断が合理性を欠くとはいえないとした。

 主張の多くを認められたブルドックだが、TOBへの対応には一考の余地があったのではないか。防衛策を用いなくても、スティールのTOBに応じるかどうか株主の判断に任せるという選択肢もあったためだ。

 決定をみて、他社の経営者は「特別決議と買収者への経済的補償さえあれば、敵対的買収を阻止できる」などと短絡的に理解すべきでない。今後、ケースによっては違った決定が出る可能性もあろう。経営者にとっては防衛策に依存せず、企業価値を高め続けるのが王道である。

社説2 元長官らの詐欺、全容解明を(6/29)

 前代未聞の事件である。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物をめぐる売買疑惑は、緒方重威・元公安調査庁長官らが詐欺の疑いで東京地検特捜部に逮捕されるという異例の展開となった。

  緒方元長官は広島高検検事長なども歴任した法曹界の重鎮だ。そうした人物が、かつての調査対象でもあった総連の資産をだまし取ったとして逮捕されるとは、 極めて衝撃的だ。元長官は容疑を否認しているが、法曹や検察組織への国民の信頼を著しく損なう事態であり、捜査当局には事件の徹底解明を望みたい。

  この疑惑は、総連中央本部の土地・建物の所有権が、元長官側に移っていることが表面化したのが発端だった。総連は整理回収機構(RCC)から627億円に 上る債務返還請求訴訟を起こされて窮地に陥っていた。元長官は総連を救うために、あえてこのような行動を取ったと釈明していた。

 移転登記がされたにもかかわらず、代金は未払いだった。このため特捜部は総連の資産差し押さえ逃れを狙った虚偽登記の疑いで捜査に乗り出した。ところがその過程で浮かび上がったのは、元長官が売買仲介役の元会社社長らと共謀して、総連の資産を詐取したという構図だ。

  元長官は当初、「在日朝鮮人の権利を守りたかった」などと強調していた。しかしその実は、差し押さえが迫る総連の弱みにつけ込んだ不動産詐欺だったことに なる。仮に、これまでの見立てのように、総連を助けるための仮装売買という図式であったとしても言語道断だが、今回の容疑事実は、これとはまた次元の異な る悪質さである。

 事件はなお謎に包まれている。元長官らがこれほどあからさまな詐欺に手を染めた真の動機や背景は何か。元長官らは将来、詐取した中央本部の土地・建物をどう扱おうとしていたのか。解明すべき点は多い。

 また、仲介役の元会社社長らは総連側から、今年4月に4億9000万円もの事前報酬を受け取っていたことが分かっている。今回の容疑事実に関しては総連は被害者の立場だが、事件の全容解明のためには、この資金の性格や流れなどについても徹底した捜査が必要となろう。

【日経・春秋】(6/29)

 皇居の「石橋(しゃっきょう)の間」には、前田青邨画伯の絵が飾られている。能舞台の「石橋」のシテのモデルを務めたのは、昭和を代表する名人、喜多六平太だ。2人と交流があった宮沢喜一元首相は、絵の制作現場に立ち会ったことがあるという。

▼ 小学生のころから能が好きだった宮沢氏は、喜多六平太のひざに抱かれて話を聞いた体験もある。「とても小さな方で、みんな喜多ちっぺい太と言ってました ね」。こんな思い出を語っていた。能にのめり込んだ少年時代から、少し斜に構えたところがあったのだろう。むき出しの権力闘争は不向きで、嫌っていた。

▼ 池田勇人蔵相の秘書官として注目を浴び、自民党の「ニューライト」の旗手と称された。しかし軌跡を振り返ると、通産相時代の日米繊維交渉、蔵相時代のバブ ル経済、首相時代の不良債権処理などの失敗例が目立つ。首相退任後に蔵相として再登板し「平成の是清」と呼ばれたが、ばらまき財政のツケを残した。

▼ 自衛隊を初めて海外に派遣したカンボジアPKO(国連平和維持活動)などが宮沢政権の成果と言えるだろう。政治家としての真骨頂は戦後民主主義を全面的に 肯定し、自民党リベラル派の旗頭であり続けたことだ。「戦後レジーム」からの脱却を唱える安倍首相の時代に、戦後を見つめてきた老政治家が逝った。


↓おじさんの雑談も面白いジャンと思ったらクリック。(笑)
人気blogランキングバナー

OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60 CE OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60

販売元:オリンパス
発売日:2007/09/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月28日 (木)

6月28日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月28日朝刊)

[慰安婦決議案]歴史認識への問い掛けだ

 米下院外交委員会が、第二次大戦中の従軍慰安婦問題で日本政府に責任を認め公式に謝罪するよう求める決議案を賛成多数で可決した。

 決議案は、「慰安婦制度は日本政府による強制的な売春」「日本政府は、日本軍が女性を性的奴隷にしていないとの主張の誤りをただすべきだ」などとし、元慰安婦に対する国際社会の声に配慮―するよう求めている。

 政府が最大の友好国とし、同盟国と考える米国議会が突きつけた、安倍晋三首相とその周辺の“歴史認識”への異議申し立てとみていい。

 法的拘束力はないが、今後の日米関係に影響を及ぼす可能性はある。その行方を注視していく必要があろう。

 従軍慰安婦問題は、一九九〇年代初めに日韓の問題として出てきた。

 従軍慰安婦については、沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」とともに旧日本軍の関与や「軍命」があったとするのが通説になっている。

 元慰安婦として悲惨な体験をした女性らの証言も数多くあり、その声に耳を閉ざしてはなるまい。

 九三年には、当時の河野洋平官房長官が「心身にわたり癒やしがたい傷を負われたすべての方々に対し心からおわびと反省の気持ち」を表明している。

 一部で「河野談話」を否定する動きはあったが、それでも村山富一、橋本龍太郎、小泉純一郎前首相らが「談話」を引き継ぎ、謝罪してきた。

 しかし、安倍首相の根底に「(旧日本軍の)強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」とする考えがあるのは明らかだ。就任当初に「河野談話の見直し」を打ち出したのはそのためだ。

 中国や韓国をはじめアジア各国から反発が相次いだため、「談話の継承」に転じたが、そのあいまいさが自らの認識や政治信条の間でずれを生じさせたのではないか。

 とはいえ、「広義の強制性はある」が「狭義の強制性はない」とする論法が説得力を持ち得てないのは誰の目にも明らかであり、決議案はこの主張にも異を唱えたことになる。

 政府は「米議会の問題」とし静観を装っている。だが、米議会に誤解があるのならなぜ理を尽くして説明を試みないのか。日米関係が重要なのであれば、なぜきちんと対処しようとしないのか、理解に苦しむ。

 私たちには史実を真正面から受け止めることで、歴史から多くを学ぶ喜びがある。歴史の大切さはそこにこそあるはずだ。米下院の決議は、首相だけでなく私たち一人一人が歴史の事実にどう向き合おうとしているのかを厳しく問うているのだと受け止めたい。

[年金記録不備問題]「けじめ」より解決策示せ

 国民が怒るのは当たり前だろう。いわゆる「消えた」あるいは「宙に浮いた」年金をめぐり、次々に明らかにされる社会保険庁のずさんな仕事ぶりやその後の不誠実な対応は目に余る。

 長い間、コツコツ積み立ててきた国民の年金記録が転記ミスなどで分からなくなったり、記録そのものがなくなっている場合もあるというのだから、あまりのお粗末ぶりに開いた口がふさがらない。

 国民の心情に配慮してだろうか一連の年金記録不備問題で、安倍晋三首相や柳沢伯夫厚生労働相らは夏のボーナスの一部を返上。自民党の厚労相経験者らは年金の受け取り辞退のほか、党の役職辞任など、「けじめ」を表明している。

 政治は結果責任だ。年金記録の不備問題について、首相の責任は問われてしかるべきだが、この時期に果たしてボーナスの一部返上という「けじめ」が必要だろうか。

 首相は「年金記録の問題で、国民に心配をかけ不安を与えた。こういうことが起きたことのけじめが必要だ。行政の長として大きな責任がある」と説明するが、いかにも分かりにくい。

 国民が今、切実に求めているのは中途半端な「けじめ」や「責任論」より将来の年金不安の解消だ。

 多くの国民は、老後のために払ってきた年金がもらえなくなるのではないか、と不安に思っている。老後の安心を担うはずの年金制度そのものの根幹が揺らいでいるのである。

 国民の不安解消に向けて、しっかりした解決の道筋も示しきれていない状況で、いきなり「けじめ」が必要と言われても説得力に乏しい。実際、野党からは「参院選に向けたパフォーマンス」などの指摘が出ている。

 天下分け目と称される参院選まで約一カ月。国民は年金の記録不備問題をきっかけに、政治に対してかつてないほど厳しい目を向けている。

 安倍首相らが示した「けじめ」とそれに続く政策や政治姿勢も当然、判断材料になることを忘れてはなるまい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月28日 朝刊 1面)

 佐賀県の野口美佐子さん(63)は、二十年前に子育てに悩んでいた。小学生の息子は周りより大きく成長したが、忘れ物ばかり。学校から度々呼び出された。

 特に熱中するものもなく、どこか注意散漫だ。「どうしたらいいか」と考えるが、妙案はない。ところが、たまたま見掛けたサッカーに夢中になり態度が急変した。チームに入り、毎日練習。学校の呼び出しはぱったりなくなったという。

 美佐子さんはひたむきにボールを追う息子の姿が好きでグラウンドによく出掛けた。「厳しい指導でしたが、好きでやっていること。私はただ見守るしかなかった」。

 一度だけ怒ったことがある。「負けるかもしれんから応援はいらん」。対外試合前、息子の言葉に「相手も同じようにご飯を食べている。始まる前に負けると分かるなら試合に出るな」。

 息子は大学まで活躍したが、同世代は日本代表級がごろごろ。プロはあきらめるがサッカーとの縁は切れなかった。沖縄で工事現場近くの道にパラソルを立て、サザエのつぼ焼きを売り、クラブを設立させた。

  沖縄初のJリーグ入りを目指し奮闘中のFC琉球代表・野口必勝さん(30)だ。美佐子さんは、本土での試合はすべて出掛けるが負けが込む。「きついのは分 かるが言うことはない。息子は沖縄の多くの人たちに支えられていることを分かっている」。スタンドから息子の「夢実現」を信じ、見守っている。(石川達 也)


【琉球新報・社説】

国保算定ミス 未交付の全額補てん早急に

 厚生労働省が1993年度から2005年度までの13年間、国民健康保険(国保)の特別調整交付金の算定方式を誤り、05年度には全国605市町村で過不足が生じ、那覇市など県内32市町村を含め370市町村で本来の額より少なく交付していたことが分かった。
 厚労省は対応策として、07年度以降の特別調整交付金から過不足を調整するとしている。過大交付した市町村の交付金を減らし、その分を交付不足の市町村に充当する方針である。
 しかし、この問題は時間をかけて帳尻を合わせればいいというものではない。過大交付を受けた市町村に対しては緩やかに調整していくことが必要だ。そして、未交付分のあった市町村にはすぐに交付することを求めたい。
 多くの市町村にとって、国保財政の立て直しは緊急の課題になっている。厚労省のいう「07年度以降から」を待っていられる状況にはないのである。
 国・地方財政の三位一体改革の一環として、国保の国庫負担をこれまでの40%から34%に削減する改正国保法が05年に成立している。
 その影響もあって、全国の自治体の多くは国保制度の運営に苦しんでいる状況にある。基金を取り崩したり、一般会計からの繰り入れなどで、どうにか運営している状況にある。
 那覇市は本年度から一般被保険者1世帯当たり平均で保険税を4919円、4・27%引き上げた。14年ぶりの実質値上げは、積み重なった未交付金が影響していることは明らかである。
 同市の試算では96年度から05年度までの10年間で、本来交付されるべき約5億5160万円が未交付となっている。
 問題解決に向けた厚労省の姿勢は二転三転した。「過去の分を訂正するという形はない」と追加交付に消極姿勢を示したものの、その後「国のチェック漏れで生じたことなので補てんするのは当然」と方針転換。そして「起算点をどうするか検討しなければならない」と後退した。
 未交付問題の原因は厚労省にある。業者が作成した算定ソフトを導入した93年に、しっかりチェックしておれば、このような問題は発生しなかった。
 チェックの甘さだけではない。那覇市が県を通して特別調整交付金が増額になったことについて問い合わせたことで算定ミスがあったことが分かりながらも、この間、放置していた。これでは国民の信頼を得られない。
 厚労省は事の重大さを認識し、不足分をすべて補てんすることを基本とし、早急に対応してもらいたい。

(6/28 9:50)

慰安婦謝罪要求 真摯に受け止めるべきだ

 米下院外交委員会が第2次大戦中の従軍慰安婦問題をめぐり、日本政府に対して公式に謝罪するよう求めた決議案を賛成多数で可決した。
 決議自体には法的拘束力はなく、日本政府は「日本がその都度反応すれば、問題がさらに深刻化しかねない」と静観する構えである。
 安倍政権発足後、従軍慰安婦問題への日本軍の関与はなかったとする動きが加速し、韓国をはじめ、中国でも日本への批判は強まっている。
 米下院外交委員会での謝罪要求決議案可決もその表れである。日本政府はそれを静観するのではなく、真摯(しんし)に受け止めるべきである。
 謝罪要求が日米関係の悪化を招くと懸念する声もある。しかし、それ以前に、世界は従軍慰安婦問題で日本が責任を認め、謝罪しているとは認識していない現実を直視する必要がある。
 外務省幹部は「4月の日米首脳会談などで、1993年の河野洋平官房長官談話に沿って『謝罪』を表明した安倍晋三首相の言葉がすべてだ」としている。
 確かに安倍首相は2006年10月、政府が従軍慰安婦に「心からのおわびと反省の気持ち」を表明した河野談話を継承する考えを示してはいる。
 だが、安倍首相はその後「官憲が人さらいのように連れて行く強制性はなかった」と「狭義の強制性」を否定している。これで河野談話を継承していると言えるのだろうか。
 決議案は「慰安婦制度は日本政府による強制的な売春」とし「日本には問題軽視の教科書や世論がある」と指摘している。
 自民党内には河野談話見直し論が根強く、歴史教科書からは従軍慰安婦に関する記述が消えてきている。決議案はこのような動きをけん制する意味合いもある。
 日本が過去の歴史としっかり向き合い、被害者に明確に謝罪しない限り、今後も従軍慰安婦問題は尾を引くことになろう。
 河野談話の歴史的意義を再確認し、それに沿って対応していくことが日本には求められている。

(6/28 9:49)

【琉球新報・金口木舌】

 「遺言」講演会というタイトルにぎょっとさせられた。講演者は成田空港建設反対闘争や自衛隊を果敢に取材した報道写真家の福島菊次郎さん。今年86歳。満身創痍(そうい)で体重は37キロという。タイトルに引かれ会場の明治大学に足を運んだ
▼「ジャーナリズムの在り方をタブーなく論じる最後の機会」と主催者。写真集などで過去の活動に接したことはある。「健在だったんだ」というのが正直な感想だ
▼会場に現れた福島さんは足取りも軽やか。足腰の鍛錬のため散歩は欠かせないという。「年相応に数字と人名を忘れてしまう」と笑いを取りながら、国民への説明責任を果たさぬ政権を「ウソばっかりだ」とバッサリ
▼自衛隊内部に潜入し、写真を発表。反響を巻き起こした。「僕をだました軍隊への怨念(おんねん)がある。仕返しをしてやった」。ひょうひょうとした語り口だが、圧倒的な凄(すご)みがある
▼政府は24日の米海軍掃海艦の与那国寄港の目的を「友好および親善」と説明するが、裏には台湾有事をにらんだ情報収集という狙いがあった(本紙23日付朝刊)。ここにもウソが隠されている
▼「もう、だまされない」という気概と注意深さがウソを見抜く。政府を監視する目の鍛錬が必要だ。

(6/28 10:08)


【東京新聞・社説】

慰安婦決議案 日米間のトゲにするな

2007年6月28日

 対日非難決議案の細部や米政界の思惑などに反発しても建設的な効果は見込めまい。従軍慰安婦問題の歴史的な暗部を直視し、従来の反省と対応を繰り返し説明して、日本の信頼感を築きたい。

 第二次世界大戦中の従軍慰安婦問題をめぐり、日本政府を追及する決議案が米下院外交委員会で採択された。慰安婦制度は日本政府による強制売春だったと判定し、事実と歴史的責任を認めて謝罪するよう促している。

 賛成三九、反対二という投票結果は、超党派の厳しい空気の反映だ。下院本会議でも、採決されれば可決は確実とされる。

 一方、決議案には日米同盟の重要性を確認する項目も、付け加えられた。一九九三年に河野洋平官房長官が旧日本軍の関与を認めて「おわびと反省」を表明した談話にも触れ、談話の誠意について理解を広げるためにも謝罪すべきだと論じた。

 日本側も、責任逃れと受け取られるような反論に精力を費やすべきではない。多数の女性の名誉と尊厳を損なった責任を受け入れ、謝罪の気持ちと、これまでに示した誠意を、繰り返し説明するほかない。

 この問題は、日米両国間の対立の芽にしてはいけない。アジアの近隣国が必ずしも政治的に工作したわけでもあるまい。旧軍の加担などで心身に傷を負った女性らに機会ごとに謝罪し、現在の日本の人権感覚、倫理観について米国、国際社会の理解と信頼を得ることが正道だ。

 ただし、対日非難が何度も蒸し返される原因については、教訓を学んでおく必要がある。

 安倍晋三首相は、四月に訪米した際、ブッシュ大統領に「心から同情している。申し訳ない思いだ」などと心境を説明し、大統領は謝罪を受け入れた。首相は、米議会指導者らにも同様の心境を説明している。

 それで沈静化したはずの問題が再燃したのは、今月半ば、日本の一部の評論家らが米紙に意見広告を掲載し、慰安婦募集をめぐる「狭義の強制性」の否定といった事実認識を展開したためともいわれる。

 特定の有志の広告が対日政府決議案の引き金になったとすれば遺憾だが、その背景には、首相が当初、官憲による強制連行などを否定する見解を強調していた経緯もある。

 米政界では、来年の大統領選や議会選を控え、アジア系組織票に敏感になっている議員は少なくない。人権重視の姿勢を有権者に訴えたい議員も多いだろう。首相は現実の環境も考慮に入れ、さまざまな発言に繊細な注意を払わねばならない。

野球特待生 まず原点に立ち返れ

2007年6月28日

 高校野球の特待生制度見直しが動きだした。ただ、根本的なところの論議はこれからだ。さまざまな側面を持つこの問題では、何ごともまず原点に立ち返って考えてみるのが大事ではないか。

  プロ野球の裏金発覚に端を発し、アマ球界に波及して論議が沸騰した高校野球の特待生問題。日本高野連は学生野球憲章に抵触する特待制度を全面否定する動き に出て、多数の球児が違反と認定される混乱を招いた。これに対し、私学側からは制度の維持と、憲章見直しを求める声が続出。高野連は協議のうえ、とりあえ ず来年度は暫定的に特待制度を容認し、有識者会議を設けて本格的な検討を進めることとした。

 いずれにしろ、ここは高校球界の正念場だ。高校野球の根幹に直結する問題である。先送りではすまない。特待制度はどうあるべきかを早急かつ明確に示す時が来ている。そして、これを考えるには、あらためて「高校野球とは何か」という根本からスタートすべきだろう。

 高校野球は、成長途上の少年が教育の場で行う活動だ。そこにはおのずからそれなりの意味があり、枠組みがある。野球選手の活動の前に、まず高校生としての生活がなければならないし、野球技術を磨くだけでなく、人間として幅広く成長していくための活動でもあってほしい。

  だが、これまでは、その当然のことがほとんど忘れられていたように見える。「野球本位」の意識が疑問なく広がっていた。それに伴って野球を学校の広告塔と する傾向が目立ち、プロまがいの選手獲得合戦や不明朗な金銭授受、第三者の介入なども行われていた。「野球本位」が必然的にもたらす弊害だ。本来のあるべ き姿をきちんと直視しなければ、ルールをつくったとしても、いずれはまた同じゆがみが現れる。

 制度維持を求める側は「他の競技もやって いる」「学校経営の問題」などとしているが、そこには「高校野球は本来どうあるべきか」の視点が乏しい。ゆがんだ実態を正してこなかった高野連も同様だ。 少年たちの才能をどう生かし、育てるかという論議は、まず関係者すべてがあらためて原点に思いを致すことから始めるべきである。

 そのう えで、野球だけでなく、すべての競技が知恵を絞り、特待制度の統一基準をつくってはどうか。どの競技であれ、問題は変わらない。大事なのは、高校生に本当 にふさわしい形は何かということだけだ。誰もが納得できる統一基準ができれば、それは間違いなく日本の高校スポーツを変えるだろう。

【東京新聞・筆洗】2007年6月28日

 米下院外交委が従軍慰安婦問題で、日本政府の謝罪を 求める決議を採択した。昨年九月に次いで二度目で、今回は本会議でも可決必至の形勢だ。在米日系人社会は一九八〇年代の自動車摩擦で起きた日系人排斥の再 現を恐れる▼この問題は、安倍首相がことし三月「狭義の強制性はなかった」と国会答弁、米ワシントン・ポスト紙に社説で批判されたのが再燃の火種となっ た。翌月の訪米時に首相は釈明と反省をしていったん沈静化したはずだった▼それが今月十四日になって、自民、民主の超党派の国会議員と評論家らが同紙に 「ザ・ファクツ(事実)」の大見出しで意見広告を掲載、これが米議会の憤激を買った。とりわけ「慰安婦は公娼(こうしょう)」「米占領軍も日本政府に慰安 所の設置を求めた」の指摘が火に油を注いだ▼村山内閣の時にでき、この三月に解散した「アジア女性基金」の設立に尽力した大沼保昭東大大学院教授が『「慰 安婦」問題とは何だったのか』(中公新書)を緊急出版している▼大沼教授は、歴代首相の「お詫(わ)びの手紙」で元慰安婦の女性たちの心をつかみながら、 韓国では被害者救済の実も取れぬまま終了した基金の“失敗”を、右も左も「法的責任」にこだわるあまり「道義的責任」を軽視したこと、政府と国民が分かち 合うべき公共性が欠けていたとみる▼加藤陽子東大准教授は近著『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書)で、旧陸軍の国防思想普及運動の手口は「事実」で 「推断」させることだったと紹介する。米紙への意見広告は先祖返りを思わせる。


【河北新報・社説】

東北ルネサンス計画/共生型の文明を提示したい

 東北芸術工科大(山形市)は本年度から山形、仙台両市を拠点に東北の埋もれた人や思想を掘り起こす「東北ルネサンス・プロジェクト」を始動させる。
 芸術的創造活動によって、豊かな日本を取り戻す「芸術立国」を目指すという。単なる「復興」にとどまらない、大胆で野心的な取り組みを期待したい。
 1992年、公設民営方式で開学した芸工大は、東北に根差した芸術とデザインの創造を追究してきた。

 とりわけ、99年に設立された東北文化研究センター(赤坂憲雄所長)は、大自然との共生を特徴とする縄文文化を東北の基層文化と位置付け、ユニークな研究活動を繰り広げてきた。

 今回、プロジェクトの名称を古典古代の文化復興を意味する「ルネサンス」としたのは復古主義からではない。危機にひんする現代文明を救う原理を縄文の知恵の中に求め、「原東北」にもう一度光を当てることで新たな世界観を構築する―との戦略が込められている。

 山形側では、東北ルネサンス会議やセミナーなどを開催。運動を理念面で支えるとともに、地域遺産を掘り起こす雑誌「東北遺産―あるく・みる・きく」の刊行などを予定している。

  仙台では同大仙台スクールを舞台にした「文芸復興」が主テーマ。東北ゆかりの思想家、文学者を紹介する公開講座や、作家の熊谷達也氏らを講師に迎え「小説 家養成講座」「編集者養成講座」などを開く。雑誌「東北文学」の刊行や「東北文学賞」の創設などを通して、若い才能も発掘する。

 今年、開湯1200年を迎えた山形県大蔵村肘折温泉でのプロジェクトは、温泉街を丸ごと美術館にする。学生や卒業生、教官らの作品が至る所に展示され、作家向けに滞在型の制作環境も整えていく。いわば湯治場を舞台にした「芸術村構想」だ。

 わたしたちは県庁所在地同士が隣接する全国的にも珍しい地勢条件を生かし仙台、山形両市があらゆる回路で交流を拡大していくことが、東北全体の底上げにつながると主張してきた。

 東北ルネサンス・プロジェクトは文化・学術面での仙山圏交流といえるが、計画で仙台を「文化交流拠点」とした意味を真剣に考えてみる必要がある。
 現状では東北学を究めようとしても、人文系の情報や人材のネットワークは県ごとに寸断されてしまっている。

 仙台が山形を含めた東北全体を意識し、つなぐ役割を担っていくのでなければ、ルネサンスの試みは早晩、水泡に帰すことになるだろう。この点、プロジェクト推進委員会(座長・藤井黎・前仙台市長)のコーディネート力が問われる。

 大和による征服史観で描かれ、自らの言葉で歴史を語り継ぐことを許されてこなかった東北。だが、1万年のかなた、縄文文化の豊(ほう)穣(じょう)さの中に、東北発の新しい文明誕生につながるヒントが隠されている。
 目指すべき方向は「汝(なんじ)の足元を深く掘れ、そこに泉あり」とする赤坂所長の呼び掛けに、端的に表されている。
2007年06月28日木曜日

【河北新報・河北春秋】

 日本を含め100カ国以上が参加して、対人地雷全面禁止条約の調印式がオタワで開かれたのは、10年前の1997年12月だった▼この年、地雷廃 絶運動に熱心だった英国のダイアナ元皇太子妃が事故死し、運動を推進した国際的非政府組織(NGO)がノーベル平和賞に選ばれたことが、消極的だった各国 の姿勢を変えたと言われる

 ▼ 近年「第2の対人地雷」と呼ばれるのがクラスター(集束)弾。内蔵する数十―数百発の子爆弾をばらまき、広い範囲を攻撃できる兵器だが、不発率が高い。こ のため、戦闘が終わっても、不発弾で犠牲になる民間人が後を絶たない▼クラスター弾禁止に向けて世界をリードしているのは、NGOとノルウェーなどの有志 国だ。日本政府は「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで行うべきだ」として、有志国による国際会議に消極的

 ▼そのCCW の専門家会合は先週、禁止条約の制定交渉開始に合意できないまま閉会した。日本、米国などは交渉入りを支持したが、中国、ロシアなどが支持しなかったとい う▼10年前と似たような状況になってきたクラスター弾禁止運動。今度もぜひ実現に結びつけたい。もっとも、対人地雷全面禁止条約は発効したものの、条約 に未加盟の中国やロシア、米国は大量に保有したままだ。

2007年06月28日木曜日


【京都新聞・社説】

借金1000兆円  財政再建を忘れないで

 国と地方を合わせた債務残高(借金)がついに一千兆円を超えたという。
 赤ちゃんからお年寄りまで国民一人あたりにすると、国だけで六百五十三万円、地方を合わせると七百八十三万円の借金を抱えている勘定だ。次代を担う子どもたちに大変な負担を残すことになる。財政再建の道筋をしっかりつけていかねばならない。
 財務省によると二〇〇六年度末の国債と借入金などを合わした国の借金は約八百三十四兆円で過去最高を更新した。国内総生産(GDP)に対する債務残高の割合は先進国の中で最悪だ。
 地方自治体全体の債務残高は約二百兆円の見通しで、国の重複分などを調整後の合計は約一千兆円に達するという。国も地方も借金まみれである。
 政府は一一年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化することを財政再建目標にしている。行政サービスなどの政策的経費をすべて税収で賄えるという健全な財政状態だ。成長戦略による税収の増加と厳しい歳出削減で達成可能との見通しを示した。
 確かに景気回復で国の税収は伸びている。〇三年度は約四十三兆円まで落ち込んだが、〇六年度は四十九兆円台になりそうだ。ただ五十兆円を見込んでいた予算額は下回り、伸び悩んでいる。
 今後の景気や企業業績の動向は慎重な見方も増えており、税収は不確かだ。金利の上昇はもっと深刻な影響を及ぼす。財務省は長期金利が1%上がれば国債の利払い費が年五兆四千億円程度増えると試算する。場合によっては税収増を食いつぶすことになってしまう。
 歳出削減も危うくなってきた。「聖域なき構造改革」の前政権に比べ、安倍晋三首相の歳出削減に向けた改革姿勢は政府予算と骨太方針をみても後退気味だ。むしろ参院選を前にばらまき的な政策が浮上してきた。国・地方ともに歳出削減の手綱をゆるめてはなるまい。
 全国の自治体で住民税騒動が起きている。国から地方への税源移譲に伴って六月から住民税が大幅に上がり、納税者の不満が高まっているのだ。
 政府と自治体は所得税と住民税の課税方法や時期の違いを説明、トータルの納税額は変わらないとPRに躍起だが、定率減税の全廃と重なって増税になったのは間違いない。これを機に税金の使途に関心をもてば国と地方の役割分担の議論や行政監視にも役立とう。
 年金保険料も値上げされ、〇七年度の税負担と社会保障負担を合わせた国民負担率は39・7%と四年連続で上昇、過去最高を更新する見通しになった。
 少子高齢化の進展で年金や国民健康保険など社会保障関係費の増加は避けられず、財源をどうするかは最大の政治課題だ。安定的財源として財政再建を進める上でも消費税の扱いが焦点になる。各党は明確な方針を示すべきだ。

[京都新聞 2007年06月28日掲載]

「慰安婦」決議  意を尽くし説明したか

 米下院外交委員会は、第二次大戦中の従軍慰安婦問題で日本政府が責任を認め、公式に謝罪するよう求める決議案を可決した。
 法的な拘束力はないとはいえ、今後、本会議でも可決されれば日米関係に深刻な影響を及ぼしかねない。
 北朝鮮による拉致問題で両国の連携のきしみも指摘されるだけに、日本政府は冷静に事態を見きわめ、無用な摩擦が生じないよう誠実に対応する必要がある。
 安倍晋三首相は四月下旬に初訪米した際、政府として「おわびと反省」を表明した一九九三年の河野洋平官房長官(当時)談話に沿って、ブッシュ大統領や米議会幹部らに元従軍慰安婦への「謝罪」を表明した。
 今後とも、日本政府のこうした基本姿勢を繰り返し丁寧に説明していくことが必要だ。
  今月十四日付の米紙に、日本のジャーナリストら有志が、旧日本軍が従軍慰安婦を強制的に動員した事実はなかったと主張する意見広告を出した。これに多数の 国会議員が賛同人に名を連ねたことから、米側が態度を硬化させた。安倍首相の謝罪表明で期待された事態の沈静化もご破算になったといえよう。
 同様の決議案は、過去四回、下院に提出された。昨年九月には外交委員会で可決されたが、本会議採決は見送られている。
 だが、今回の決議の共同提案者は下院定数の三分の一を超えたうえ、圧倒的多数で可決された。決議案の背景に有権者を意識した議員の選挙対策や、共和・民主両党の駆け引きなどがあるにせよ、この結果を軽視してはなるまい。
 米議会の対日批判がこれまでになく高まったのは、もとはといえば安倍首相が国会答弁で「狭義の強制性」を否定する発言をしたからだ。
 親日・知日派の議員や有力メディアからも「安倍外交の二枚舌」といった批判が起こったことを真剣に受け止めるべきだろう。
 今回の決議の背景には、従軍慰安婦問題をめぐる発言で一貫性を欠く安倍首相への疑念があるのは間違いなかろう。
 安倍首相は四月の米ニューズウィーク誌のインタビューで従軍慰安婦問題について「彼女らが非常に苦しい思いをしたことに対し責任を感じている」と述べ、「われわれは常に自らの歴史に謙虚になり、わたしたち自身の責任に思いを致さなければならない」と強調した。
 この言葉の通り、安倍政権は従軍慰安婦問題に誠実に取り組むべきだ。そうしてこそ、国際的な信用の獲得につながろう。
 拉致問題の解決に向けて国際社会の理解と後押しを得るためにも、過去の歴史を直視し、問題の克服に真摯(しんし)に向き合う日本の姿を発信していくことが大切だ。

[京都新聞 2007年06月28日掲載]

【京都新聞・凡語】

飲酒運転の恐怖

 テレビ画面に流れた衝撃的な映像と、親子の仲むつまじい新聞写真が脳裏に焼き 付いて離れない▼映像は、兵庫県尼崎市で飲酒運転のワゴン車がタクシーに激突する一瞬をとらえたシーンである。タクシーに搭載されていたドライブレコー ダーのカメラが自動的に撮影したものだ。車線を越えワゴン車が突っ込んでくる映像はあまりにも生々しい▼亡くなったタクシー運転手と乗客の恐怖は想像を絶 するものがあっただろう。命を奪った容疑者は、ろれつも回らなかったという。しかも、事故直前に死亡ひき逃げ事件を起こしていた疑いもある。事実なら、言 語道断である▼この事故の二週間前には、福岡市で昨夏、幼児三人が犠牲となった飲酒運転追突事故の初公判が始まった。被告の元公務員は謝罪の言葉を述べた が、子どもを一度に失った両親の悲しみは深く、法廷にその姿はなかった▼もう一つは事故三日前に撮影されたという幼児三人と母親の笑顔の写真(本紙十二日 付夕刊)である。被告は写真を見ただろうか。事故をきっかけに飲酒運転根絶への世論が高まり、刑の厳罰化が効果をあげてきたのは確かだろう。だが飲酒運転 はいっこうになくならない▼飲酒運転は、反社会的で憎むべき犯罪行為である。映像と写真はそう教えてくれているのではないか。この訴えを心に刻み、しっか りとハンドルを握りたい。

[京都新聞 2007年06月28日掲載]


【朝日・社説】2007年06月28日(木曜日)付

慰安婦決議―首相は深刻さを認識せよ

 「日本政府は……歴史的な責任を公式に認め、謝罪し、受け入れるべきだ」

 米下院の外交委員会が、旧日本軍の慰安婦問題についての決議案を可決した。39対2の圧倒的多数だった。7月にも本会議で採択される見通しだ。

 日本が過去の過ちを反省していないと、米議会が国際社会の面前で糾弾している。その意味は重い。

 私たちは、首相の靖国神社参拝や慰安婦など歴史認識がからむ問題に、政治家が正面から取り組むべきだと主張してきた。戦前の行動や価値観を正当化するかのような言動は、日本の国際的な信用にもかかわることだからだ。

 それがこんな事態に立ち至ったことに、やりきれない思いである。日本がそんな国と見られているのかと思うと残念であり、恥ずかしい。

 決議案に疑問がないわけではない。歴代首相が元慰安婦におわびの手紙を出してきたことが触れられていないし、軍の関与を認めて政府として謝罪した河野談話の位置づけも不十分だ。

 しかし、決議案にあるように、河野談話を批判したり、教科書の記述を改めたりする動きがあったのは事実だ。慰安婦の残酷さを非難する決議案のメッセージは、真摯(しんし)に受け止める必要がある。

 今回、決議案が採択の方向となったことについて、戦術的な失敗が指摘されている。今月、ワシントン・ポスト紙に決議案に反論する意見広告が掲載された。それが、沈静化していた問題に再び火をつけたという批判だ。

 確かに、40人あまりの与野党の国会議員とともに、安倍首相のブレーンの外交評論家まで名を連ね、決議案を「現実の意図的な歪曲(わいきょく)」などと批判した全面広告は異様だった。4月の初訪米でおわびを述べた首相の言葉は台無しになったと言えるだろう。

 だが、問題の本質は、自らの歴史の過ちにきちんと向き合えない日本の政治自体にある。

 安倍首相は「米議会ではたくさんの決議がされている。そういう中の一つ」「コメントするつもりはない」と述べた。とんでもないことだ。日本に重大な疑念と非難が向けられているのである。河野談話やアジア女性基金などの取り組みを説明し、改めて認識を語るべきだ。

 首相は日米同盟の土台として「共通の価値観」を強調する。だが、決議案はその価値観にかかわる問題であることを、首相は分かっていないのではないか。

 日本は戦後、自由と人権を重んじる民主主義国として再生し、侵略と植民地支配などの過去を深く反省した。「過去の反省」が揺らいでいる印象を与えれば、価値観への疑念を招く。

 小泉前首相の靖国参拝以来、日本の歴史への取り組みに対する国際社会の目は厳しい。日本の民主主義は大丈夫なのか。今回の決議案はその警告として受け止めるべきである。

猪瀬副知事―知事にノーと言えますか

 年齢は一回り以上違うが、似た者同士と言えるかもしれない。ともに作家であり、あくの強さが売り物だ。

 猪瀬直樹氏が東京都の副知事に就任する。石原慎太郎知事に請われてのことだ。知事は「国に対し発言力がある」と期待し、猪瀬氏も「東京を地方分権のエンジンにしたい」と意欲を示す。

 個性の強い2人がうまくいくのか。迎え入れる都庁から不安の声もあがる。

 一方では、ワンマンになりがちな石原氏をチェックし、ゆがみを正せるのではないかという期待もかかる。ここはまず猪瀬氏の手腕を見守っていきたい。

 猪瀬氏には、幅広く資料を集め、データを積み上げた作品が目立つ。最近では特殊法人の無駄遣いを粘り強く追及してきた。その底にあるのは、権力を監視するという視点だろう。

 その一方で、政治との距離を縮めてきた。小泉首相時代に道路公団民営化推進委員を務め、今は政府税制調査会と地方分権改革推進委員会の委員を兼ねる。

 政治の観察者から助言者へ。そして、今度は都政の担い手になる。

 都政の課題は多い。待ったなしなのは新銀行東京の処理だ。巨額な赤字のうえに、ろくに貸出先がないような状態では、撤退するしかない。新銀行については当初から危ぶむ声があったが、だれも知事に直言できなかった。知事の首に鈴をつけるのが最初の仕事だろう。

 これまでの発言を聞くと、知事と相いれない政策もありそうだ。例えば、都心部を政府の直轄にし、そこの税収の一部を地方に回すという猪瀬氏の「DC特区構想」だ。知事に「洗脳する自信がある」と反論された。猪瀬氏はトーンダウンしたが、このまま引き下がるのか。

 石原都政の下では、学校での日の丸・君が代の強制が全国でも突出している。これについても考えを聞きたい。

 猪瀬氏にとっては、国よりも知事の方が手ごわい相手になるかもしれない。

 大きな力とぶつかった時、猪瀬氏はどう動くか。一つのヒントは道路公団民営化が大詰めを迎えた時の言動だろう。

 民営化案は猪瀬氏ら委員の思いとはかけ離れたものになり、大半の委員は辞めたりした。だが、猪瀬氏はとどまった。

 猪瀬氏はその時の真意をこう述べている。「踏みとどまったのは、獲得したものをゼロにしないため監視を続ける義務があるからだ」「辞任するのは瞬間の美学に過ぎない」

 今後も同じような難しい局面に立たされることがあるだろう。もちろん、「瞬間の美学」だけでは困るが、「永遠の妥協」に陥るのはもっといただけない。

 都政の問題は政策にとどまらない。石原氏はこれまで「三国人」や「テロ容認」など問題発言を繰り返してきた。身内の起用問題や豪華な出張もあった。

 そんな時に「ノー」と言えるのか。知事と対立したら、どう振る舞うのか。都民が見ているのはそこである。

【朝日・天声人語】2007年06月28日(木曜日)付

 しばらく前のことだが、NHKの「みんなのうた」で『ねっこ君』という愉快な曲が流れていた。地中で踏ん張って大木を支える根っこの歌だ。切ってしまえば、桃栗3年柿8年、木がまた育つには長い時間がかかります――。掛け合いの歌声を面白く聞いた。

 思い出したのは、仙台のケヤキ並木の「処遇」について先日書いたら、多くの便りをいただいたからだ。「切らずに残して」がほとんどだった。人が樹木に寄せる愛着のほどを、あらためて思った。

 その割には、ほうぼうで簡単に切られることが多い。開発ばかりではない。近ごろは、薄暗い、目が届かないといった防犯上の理由で、公園や校庭の木が切られている。

  『私たちは本当に自然が好きか』。問いかけをそのまま題名にした本を、塚本正司さんが著した(鹿島出版会)。住宅地の計画に長く携(たずさ)わった人で、 冷遇される木々に心を痛めてきた。新緑、万緑と愛(め)でられる。その一方で、落ち葉が邪魔、虫が多い、など人の都合で厄介者にされてきたからだ。

  桜に生涯をささげ、岐阜の荘川(しょうかわ)桜の移植を手がけた故・笹部新太郎も、樹木の生命を軽んじる人間の身勝手を憤った。植物は動物と違い、死ぬの と殺されることに区別を付けにくい。「木を殺す意味の漢字を一字だけ作ってほしい」と、たぎるような言葉を残している。塚本さんの思いにも通じるものがあ ろう。

 『ねっこ君』の歌には、近ごろ森が少なくなったと嘆くモグラが登場する。一本の木に育まれる生命の多彩さにも思いをめぐらせたい。


【毎日・社説】

社説:「従軍慰安婦」決議 安倍外交にも問題がある

 米下院外交委員会はいわゆる従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案を可決した。決議案は「日本政府は、帝国軍隊が若い女性に性的奴隷を強制したことに対して明確に公式な謝罪をすべきだ」という内容である。

 外交委での決議は昨年9月に続いて2度目だが、今回はぺロシ議長が採択を目指す意向を表明し、来月中にも本会議で初めて可決される可能性が高まっている。

 日本政府は93年の河野洋平官房長官(当時)の談話で、旧日本軍の関与を認め「心からおわびと反省の気持ちを申し上げる」と謝罪した。

  安倍晋三首相も河野談話を踏襲し、4月の訪米ではブッシュ大統領や議会関係者におわびの気持ちを表明している。米国内にも「残念なのは慰安婦問題をめぐる 米国内の動きだ。日本の首相が謝罪しているにもかかわらず、こういうことが続くのか」(ダニエル・イノウエ上院議員)という日本を擁護する声もある。

 それにもかかわらず日本の立場が理解されず可決に至ったことは極めて残念なことだった。

 可決に対して塩崎恭久官房長官は「他国の議会の決定にコメントすべきではない」と語っている。

 しかし他国の議会ではあるが、米国民を代表する議員の意思表示は重く受け止めねばならない。日米関係に影響を与えかねない事態で、従軍慰安婦問題が将来にわたって両国関係を損なわないような対応をしなければならない。

 今回の事態を招いた要因としては、安倍首相の姿勢にも問題があった。首相は3月、国会答弁で決議案に関連して「軍や官憲による強制連行を示す記述は(資料に)見当たらなかった」と「狭義の強制性」を否定した。

  首相は就任前は河野談話に批判的な立場をとっており、首相発言は河野談話の見直し論にくみするものと受け止められてしまった。このため米メディアを中心に 激しい批判にさらされた。首相は訪米でおわびの気持ちを表明したが、結果的には議会の対応に何らの影響も与えることはできなかった。

 さらに今月14日付の米紙に平沼赳夫元経済産業相ら国会議員や評論家らから、従軍慰安婦の強制性を否定する内容の全面広告が出された。これに対してはラントス外交委員長が「事実に対抗するばかげた主張だ」と反発するなど可決の呼び水になってしまった。

 平沼氏は27日「事実に基づかない決議は両国に重大な亀裂を生じさせる」との声明文を発表した。しかし強制性を否定する平沼氏らの言い分が、米議会では理解されていないことが明らかになったことも事実だ。

  3月末に解散したアジア女性基金では、償い金を届けたり歴代首相がおわびの手紙を送るなどの活動を行ってきた。しかし政府はそういう努力を世界に十分ア ピールしてこなかった。「他国のこと」と片づけるのではなく首相が先頭に立って、河野談話に基づいて誠心誠意、日本の立場を説明し続けることが必要だ。

毎日新聞 2007年6月28日 東京朝刊

社説:社保庁改革案 立ち止まって考え直そう

 社会保険庁改革法案が今国会で成立する運びという。無責任体質のまん延した社保庁を壊し、規律を持った新しい組織に生まれ変わること自体にはまったく異存がない。

 だが、政府提出の法案は年金記録漏れ問題が発覚する前に検討されたものだ。状況が一変した中で、職員を大量リストラし、業務を民間に任せて、果たして記録漏れの後始末までできるのか。心もとないと言わざるを得ない。

  法案の表向きの狙いは、社保庁の体質改善と保険料納付率の向上である。そのため社保庁を解体し、2010年に「日本年金機構」に衣替えする。職員は非公務 員化され、保険料徴収などの業務はできる限り民間に委託する。その結果、約1万7000人の正規職員の大量解雇が焦点になる。職員の採否などは、改正法成 立後、内閣官房に置かれる第三者機関が決めるという。

 地方採用の社保庁事務所で働く職員は、もともとは地方事務官だったという生い立ちから民主党支持の自治労に所属している人が多い。政党との関係を世に知らしめて「労組いじめ」をするには選挙前の成立が効果的なため、裏の狙いは参院選対策といわれてきた。

  しかし、そんな与党の思惑を吹き飛ばす社保庁の大失態が、法案提出後に明らかになった。社保庁の管理する年金記録が宙に浮いたり、消えたりしていたのだ。 かつての個人記録のぞき見、信じられないような労働慣行、納付率アップのための不正操作に加え、大量の記録漏れで国民の年金不信は倍加した。1日に数十万 件の相談が殺到、社保庁の電話はパンク状態となった。

 年金騒動を機に、内閣支持率が急降下した安倍晋三首相は大あわてで5000万件の 不明記録を1年で本来の持ち主に統合させると言明した。この言葉にはトリックがひそむ。コンピューター内の不明データを氏名、生年月日などで束ねる作業は プログラムを開発したらおそらく1年で可能だろう。しかし、オンライン化されたデータ自体が誤って入力されていたら、人の目で原簿とデータを見比べるしか ミスの見つけようがない。人数にもよるが、10年かかる作業という関係者もいる。

 3年後に社保庁が解体された後、この膨大な作業はどこが引き継ぐのか。後継組織がやっていくしかないだろう。職員がリストラされた少人数の新組織できちんと運営できるのだろうか。

 ぬるま湯につかっていた職員の意識変革を行い、二度とずさんな管理を繰り返さない仕組みを作らなければならないのは言うまでもない。でも、親方日の丸から非公務員型へ移行したら、処理を求められている懸案がすべて解決するわけでもなかろう。

 記録漏れ処理が新組織の使命に加わったのに、今の改革案はこうした疑問に答えていないし、国会でその問題を議論した形跡もない。立ち止まって、この法案が本当に年金の信頼回復に結びつくものなのか、考え直す必要がある。

毎日新聞 2007年6月28日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:さて、貧乏神にとりつかれぬようにするには…

 さて、貧乏神にとりつかれぬようにするに はどうすればいいか。「大みそかに酢の物を食べる」「食事中ひざをゆすらない」、さらに江戸時代の橘守部という国学者の本には、家中の部屋を日に一度は掃 除して風を通し、使わない時は閉め切っておけと書いてある▲これは以前、本紙大阪、西部本社版に連載された「異界の杜(もり)」の受け売りだ。このコラム は国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベース(DB)のスタッフがDBを活用して書いていた。たとえばDBで貧乏神を検索すれば、おのずとそ の“防御策”も分かったのだ▲妖怪DBは民俗学の調査報告論文や、江戸時代の随筆などから怪異や妖怪の伝承を集めて構築され、5年前にネット公開された。 開設後は80万件のアクセスを数える人気DBとなり、収録情報も当初の2万件から約3万5000件にまで増えている▲だが一般の妖怪ファンは民衆の豊かな 想像力が描き出した妖怪たちの姿も知りたかろう。そんな期待に応え、妖怪DB作りを進めてきた日文研の小松和彦教授のチームが今度は昔の絵巻などに描かれ た妖怪の画像をデータベース化する構想を発表した▲画像は日文研所蔵の資料などから集めた500種を予定し、3年以内にネット公開するという。ならば漫画 ではよく見る貧乏神だが、昔の人が描いた貧乏神はあるのだろうか。とりつかれないようにするには、その姿も知っておくにこしたことはない▲かつては身近な 夜の闇や家の暗がりに潜んでいた妖怪やもののけが、今や犯罪者か何かのようにコンピューターにデータ登録されるのはさみしくもある。だが妖怪の大半はここ でデータを残しておかねば、永遠に闇へと去って戻らない。確実に残るのは貧乏神だけだ。

毎日新聞 2007年6月28日 東京朝刊


【読売・社説】

慰安婦決議 米議会の「誤解」の根元を絶て(6月28日付・読売社説)

 いわゆる従軍慰安婦をめぐる対日決議案が米下院外交委員会で採択された。全くの事実誤認に基づく決議である。

 日本政府は、将来に禍根を残さないよう、米側の誤解をときほぐし、当面、本会議での採択阻止に努めなければならない。

 決議案は日本政府に対し、「日本の軍隊が若い女性を強制的に性的奴隷化」したことへの歴史的責任を認め、謝罪せよと言う。「慰安婦制度は20世紀最大の人身売買事案の一つ」と表現している。

 事実をきちんと確かめることもせず、低水準のレトリックに終始した決議案だ。米議会人の見識を疑わせる。

 安倍首相は4月、米大統領や議会首脳らとの会談で、元慰安婦への「心からの同情」と「申し訳ない思い」を表明した。「20世紀は人権侵害の多い世紀で、日本も無関係でなかった」とも述べた。

 だが、こうした首相の発言も、決議案の採択見送りにつながらなかった。

 米議会で採択される数多くの決議の一つにすぎない。法的な拘束力もない。従って、重く受け止める必要はない、という指摘もある。

 これは間違っている。反論することを控えれば、この誤った「歴史」を独り歩きさせるだけだろう。

 戦前、親やブローカーの手で、自らの意思に反して、慰安婦にさせられた女性は多数いた。しかし、これと、日本軍による、いわゆる「強制連行」とは、明らかに意味が違う。

 「軍や官憲による強制連行」を直接示す資料は、これまでの調査で何も見つかっていない。政府は、今年3月の答弁書でも、この点を明確にしている。

 一体、対日決議案は、何を論拠にしているのか。大きな拠(よ)り所とされているのが、1993年に出された河野官房長官談話だ。そこには「官憲等が直接加担した」などと、「強制連行」があったと誤って受け止められる記述がある。

 当時、慰安婦問題での韓国側の圧力をかわすために考えられた政治的文言が、その後、誤解を広げた根元にある。

 安倍首相は、「河野談話」を継承すると言う。外交的配慮からだろうが、その立場をとる限り、「強制連行」という誤解は消えない。談話に誤りがあるなら、見直しを躊躇(ちゅうちょ)するべきではない。

 麻生外相は3月、決議案をめぐる動きについて、「日米を離間させる工作」と指摘した。背後で、中国・韓国系の反日団体などが影響力をふるっている。

 このままでは、謝罪要求が繰り返されることになりかねない。筋道を立てて歴史の事実を明らかにしていくべきだ。
(2007年6月28日1時46分  読売新聞)

特待生制度 高野連の体質・機構も改革せよ(6月28日付・読売社説)

 来年度の入学生については現行制度の延長適用を認め、再来年度以降に関しては第三者機関を設置して、そこでの議論をもとに決める――。日本高校野球連盟が、特待生制度に関する当面の方針を公表した。

 来年度については、早急に対応を決める必要があった。高校は生徒募集要項の作成時期を迎えている。中学3年の球児たちは、それを参考に進学先を絞るころだ。特待生制度の存続を求める私学の強い声に、高野連が譲歩した形だ。

  現在の状況は、統一基準もない曖昧(あいまい)なものになっている。一度は制度の「根絶」を決めた高野連だが、社会の批判を浴びると一転、「救済措置」を 打ち出した。その際に、具体的な特待生の救済方法や救済対象などについては事実上、判断を各高校に“丸投げ”したためだ。

 生徒募集に当たって、高校と球児の双方に、特待生制度への誤解が生じないよう、高野連は丁寧な説明が必要だ。

 第三者機関として設立される「特待生問題有識者会議」には、教育、法曹、スポーツ界などから有識者十数人が集められる。10月までに意見をまとめる。

 自民党の高校野球特待生制度問題小委員会が先週公表した「提言」を受けて設置が決まった。この提言は、ブローカーなどの介入を排した公平・公正な特待生制度の容認を高野連に求め、その基準作りのためにも、第三者機関の設置が必要だ、としていた。

 独善的な体質に批判も多かった高野連が、外部の意見を聞きつつ改革に乗り出す姿勢を見せたことは一歩前進だ。ここは高野連の体質や機構改革にまで踏み込んだ議論を望みたい。メンバーにはプロ野球関係者を加える必要もあろう。

 この有識者会議では、野球部員の特待生制度を禁じた日本学生野球憲章の見直しも論議される予定だ。

 他の多くのスポーツで特待生制度が活用され、そこで育った才能ある選手たちがプロや世界レベルで活躍している。野球だけは特別という高野連の考え方は、今の時代、逆に選手の才能の芽を摘む結果をもたらしかねない。

 憲章の見直しと、あるべき特待生制度の基準作りは表裏一体の作業である。

 自民党小委の提言には、才能の発掘・育成のあり方を探るため、野球関係団体が一堂に会する場や、統括団体の設立が必要だ、という指摘もある。

 サッカーやフィギュアスケートなど、プロとアマが協力して選手を育て上げることに成功している競技もある。

 両者の健全な関係の構築こそ、日本の野球界にとって喫緊の課題だろう。
(2007年6月28日1時47分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月28日付 編集手帳

 速くて正確なのはどちらか、そろばんと電気式計算 機の対抗試合が東京・日比谷で催されたのは1946年(昭和21年)の11月である。米軍の機関紙「星条旗」が主催した◆加減乗除に混合算の計5種目を競 い、4種目を制したそろばんに軍配が上がっている。敗戦の翌年でもあり、「戦勝国を打ち負かした」「日本は死なず」と喜んだ人も多かったと伝えられる◆時 は移り、電卓全盛の世を迎えたが、慣れるとこちらが速いからと、職場などでいまでもそろばんを愛用している方は多かろう。上級者になると、珠(たま)をは じく指の感覚で計算の間違いに気づくという◆学力向上の手段として教育の現場でも見直されつつあり、珠算能力検定の受験者数は昨年度、26年ぶりに増加し た。対抗試合の熱気とまではいかずとも、伝統の計算術に復権の兆しが見えるのはうれしい◆牛肉を偽装した食肉加工会社、虚偽申請をした介護サービス会社、 契約時の説明を偽った英会話学校…と、経営の誤算に気づく「指の感覚」を忘れ、目先の金勘定に電卓をたたきつづけた企業が世を騒がせている◆利益の珠をは じく指が「あなた、間違ってますよ」と告げてくれるかどうか、その声を聞き取れるかどうかに、要は尽きよう。まだじわりとはいえ、せっかくの珠算熱であ る。経営者も指と耳を磨くに限る。
(2007年6月28日8時44分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】慰安婦決議案 事実を示し誤解を解こう

 米下院外交委員会で、慰安婦問題で日本の首相に公式謝罪を求める対日非難決議案が賛成多数で可決された。残念な結果である。

 可 決された決議案は「日米同盟がアジア太平洋地域に占める重要性」を盛り込むなどの修正が加えられ、民主党のマイク・ホンダ議員が提出した当初の決議案より 表現がやや緩やかになっている。しかし、「慰安婦制度は日本政府による軍用の強制的な売春」と決めつけるなど、多くの誤りを含んでいる。

  慰安婦問題をめぐり、日本の官憲が奴隷狩りのように強制連行したという説が一部で流布されたこともあるが、日本政府が2年がかりで集めた約230点の資料 の中には、そのような事実を示す証拠は1点もなかった。慰安婦は主として民間の業者によって集められ、軍は性病予防対策などで関与していたのである。

 決議案は来月にも下院本会議で採決される見通しだ。議会の決議に法的拘束力はないが、国際社会では、誤った事実に対して何も反論しないことは、それを認めたことになりかねない。日本の外務当局はこれまでに集めた公式文書などを有効に使って誤りを正すべきである。

 米下院外交委員会では、慰安婦問題をナチス・ドイツが行ったホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と同列に論じる非難の声も上がったといわれる。南京事件などをめぐり、これまでも米国の州議会などでしばしば繰り返されてきた誤解である。

 米国でベストセラーになった中国系米国人、アイリス・チャン氏の著書『レイプ・オブ南京-第二次大戦の忘れられたホロコースト』の影響がいまだに残っているようだ。

  4月末の日米首脳会談で、安倍晋三首相は「慰安婦の方々が非常に困難な状況の中、辛酸をなめられたことに対し、人間として首相として心から同情している」 と述べた。ブッシュ大統領もこれを評価した。最近、外務省が米国で実施した対日世論調査でも、日本を「信頼できる」と答えた一般人が74%と過去最高を記 録した。

 日米同盟を一層揺るぎないものにするためにも、歴史問題で正しい事実を示し、誤解を解く粘り強い外交努力が必要である。

(2007/06/28 05:03)

【主張】野球特待制度 現場の声に柔軟な対応を

 とりあえず、高校野球の特待制度は来年度も容認されることになった。問題を抱えた私学関係者は胸をなで下ろしただろうが、これで事態が進展したわけではない。

 野球部員であることを理由に金品を受け取ることを禁じた日本学生野球憲章は厳然と存続し、今回は5月に在校生に限り認めた暫定措置を継続しただけだ。しかも、特待生選考についての明確な基準が示されたわけではなく、学校側に一任された。

 仮に今後の方向性を決める第三者機関「特待生問題有識者会議」が、この暫定措置と逆の結論を出したとしたら、混乱し批判にさらされるのは学校現場にほかならない。

 問題噴出から2カ月以上たつ。多くの声が特待制度は存在してしかるべきとするなかで、日本高等学校野球連盟(高野連)は今回、将来に向けた方向性だけでも示すべきだった。それすらできなかったところに、この組織の当事者能力の欠如を見た思いだ。

  高野連の脇村春夫会長は有識者会議について、「憲章見直しを前提としたものではない」と言い切る。内部には依然、憲章を順守し、特待制度は解釈によって可 能たらしめればよいとの声もあると聞く。だが、考えてもみてほしい。その解釈の受け止め方にさまざまあったからこそ、問題がここまで紛糾したのではなかっ たのか。

 勉学はいうまでもなく、スポーツあるいは芸術の分野でも奨学制度、特待制度は十二分に機能している。

 ただ、 高校野球は熱狂的な支持を集めるがゆえに、この制度を拡大解釈して使う向きが多かった。だからこそ、将来に禍根を残さないためにも、きちんと見直すところ は見直し、制度として憲章に記し、明確な基準を設けることがいま必要なのである。もちろん、野球が学校教育の一環であることも十分、考慮されなければなら ない。

 有識者会議には、学校現場の声やアマチュア球界に加え、プロ野球界や世の中の声をひろい、しっかりと議論し前向きの提言を望みたい。そして高野連関係者はこれまでの硬直した思考を捨て、柔軟な対応をすべきだ。

 “延長戦”にまでもつれ込んだ試合が、凡戦のまま終わってしまうのか、球史に残る名勝負たりえるのか。11月に出されるという結論は重い。

(2007/06/28 05:02)

【産経抄】

 人の目を欺く手段には偽装とか迷彩がある。北朝鮮の工作員が、日本人を拉致したときに駆使した手口だから今は聞きなれた。あこぎな犯罪は国内にもごろごろしている。マンションの耐震偽装は1級建築士の仕業だったし、息子と偽ってカネをせしめる振り込め詐欺もそう。

 ▼最近では、牛のミンチにブタの内臓を混ぜ、上から牛の血液で色づけした食肉加工の社長が登場した。自ら「食肉の職人」を任じていたらしいが、実像は偽装の名人だった。口答えすれば即解雇だから、誰もトップの暴走を止められない。

 ▼“ミンチ社長”が「半額セールにだまされた方が悪い」などと、開き直ったのにはあきれた。気楽に厚かましくが、彼の処世訓らしい。「身過ぎ世過ぎは草の種」とかで、暮らしていくための手段はいろいろだ。しかし、他人さまを欺けばやがて天罰が下るのは人の世の道理だ。

 ▼偽装や迷彩には、あらぬ方向へ巧妙に導く手口もあるそうだ。北京で反日暴動が発生したときに、天安門広場を目指した群衆を途中の道で公安警官が流れを変えた。「あっちあっち」と日本大使館の方向に誘導していたことをテレビカメラがとらえていた。

 ▼実はこれと似たような現象が、米下院の慰安婦をめぐる対日非難決議にも感じられる。連邦議会には、中国が石油ほしさからスーダンに武器を輸出し、大量殺戮(さつりく)を見逃しているという非難の嵐がある。そこに湧(わ)いた慰安婦決議が対中非難を薄めた。

 ▼いまや、ワシントンのキーワードは「人権」であるらしい。人権問題は国境も過去現在も区別しないから、慰安婦問題も北の拉致事件も一緒くたにされてしまう。いまは、「こっちこっち」と拉致事件の解決の方に誘導する知恵がいる。

(2007/06/28 05:00)


【日経・社説】

社説1 中国化進む香港の10年 「民主」なお課題(6/28)

 「東洋の真珠」とうたわれた香港が7月1日、英国から中国に返還されて10周年を迎える。香港経済は低迷を経て最近は高成長を続け、国際金融セン ターとしての地位も上がった。半面、香港のトップを選ぶ行政長官選挙は間接選挙のままだ。香港がさらに輝き続けるには、普通選挙への移行など民主化への歯 車をしっかりと回さなければならない。

 香港の資本主義制度を50年間維持する「一国二制度」の下、香港経済はこの10年間、揺れ動いた。返還翌年の1998年の域内総生産(GDP)はアジア通貨危機のあおりで初めてマイナス成長(前年比5.5%減)を記録。深刻な不況が続き、失業率は一時、8%を超えた。

 転機は新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)が香港を襲った2003年だった。この年、中国政府は香港との「経済緊密化協定」(CEPA)に調印したほか、一部本土住民の香港への個人旅行解禁など支援策を相次いで打ち出した。

 経済はV字型に回復、04年8.6%、05年7.5%、06年6.9%と3年連続で高成長を続けている。株式相場の指標であるハンセン指数も10年前の2倍を超え、6月に入っても最高値を更新している。

 香港は曲折を経て再生したが、中国への依存度が急速に高まっているのが実情だ。香港の株式市場時価総額は97年末の約4000億ドルから昨年末は約1兆7000億ドルに膨らんだが、うち50.3%を中国工商銀行など中国本土系企業の銘柄が占める。

 06年の香港への観光客は前年比8.1%増の2525万人。同年の訪日外国人旅行者(733万人)の3倍以上だが、中国本土から香港への観光客が1359万人と全体の半数を超えた。

 一国二制度の原則は守られたとはいえ「香港の中国化」が進んだ。この制度の象徴ともいえる香港ドルと中国の人民元の通貨価値が今年1月に逆転したことは記憶に新しい。

 一国二制度はそもそも中国が台湾に統一を呼び掛けるために考え出した。香港はそのショーウインドーでもある。香港基本法は行政長官選出の「最終目標は普通選挙」と明記しているが、まだ実現していない。

 それどころか中国の呉邦国・全国人民代表大会常務委員長は香港返還10周年を記念する今月6日の北京での座談会で「高度の自治権は香港固有のものではなく、党中央が与えた権利だ」と発言、波紋を広げた。

 総統を既に普通選挙で選んでいる台湾の人たちは香港の現状をどう見ているだろうか。

社説2 スーダンの悲劇放置するな(6/28)

 アフリカのスーダン西部、ダルフール地方の人道危機が放置されている。スーダン政府の支援を受けたアラブ系民兵組織が黒人系農民を中心にした反政府武装勢力と戦闘、これまでに20万人が死亡、200万人以上が家を追われた。

 国際社会は制裁強化も視野に入れスーダン政府、反政府勢力の双方に和平受け入れ圧力を強めるべきだ。スーダン政府に影響力を持ちながら紛争解決に無頓着だった中国は、とりわけ真剣な努力を問われる。

 パリで25日にフランス政府主催でダルフール紛争解決をめざし国際会議が開かれた。サルコジ仏大統領は「黙っていることは殺人行為と同じ」と強調した。その通りだ。

  ダルフール紛争が始まったのは2003年2月。それから4年以上もこの悲劇に終止符が打たれないできた。紛争当事者がいずれも好戦的な姿勢を続けたうえ、 国際社会の努力も不十分だったからだ。国連安全保障理事会はスーダン政府に一定の制裁も科しているが、主要国が一致結束してダルフール紛争に対応してきた とは言えない。中国がスーダン政府への圧力強化に反対し、足並みをそろえられなかったのが実情だ。

 中国は日量約50万バレルの産油国スーダンへの最大の投資国であり、直近ではスーダン原油の6割を輸入し同国財政を支えている。中国は否定するが、政府側に禁輸対象の武器を供給しているとの指摘もある。

 このため欧米で08年北京五輪ボイコットを求める声もあがるほど、中国への批判が高まっている。中国は今春、ダルフール問題担当の特使を任命し、胡錦濤国家主席もバシル大統領に和平を働きかけるなど、ようやく対応を始めた。和平実現に向けた中国の影響力行使が必要だ。

 国連、アフリカ連合(AU)、スーダン政府の三者は今月、ダルフールの平和維持軍を増強することで合意した。だが、スーダン政府には、過去に国際的な合意を反故(ほご)にした経緯もある。国連、AUは増強部隊をできるだけ早く組織し、スーダンに受け入れを迫るべきだ。

 日本政府は26日、難民を対象にした約400万ドルの人道援助を決定した。日本も引き続き紛争解決、人道援助に貢献すべきである。

【日経・春秋】(6/28)

 ニッポンのヘソが、また東へ動いた。住民一人ひとりがみな同じ体重だと仮定して、ちょうどバランスが取れる「人口重心地」の話だ。2年前の国勢調査から総務省がはじき出した新しいヘソは、岐阜県関市の富之(とみの)保(ほ)という場所らしい。

▼ 重心はこの40年間に23キロも東側へ移動している。首都圏への人口集中のせいだ。明治時代は滋賀県にあったというから、当時の関西や西日本の「重さ」が 知れる。畿内が大いに栄えた古代に遡(さかのぼ)れば、ヘソはさらに西にあったに違いない。高松塚古墳のある奈良県明日香村などはずいぶん重かったことだ ろう。

▼その高松塚の極彩色壁画を救うための石室解体が無事終わった。カビに覆われた飛鳥美人や白虎が残る壁石を1枚ずつ取り外し、修理 施設に運ぶ作業は片時も気を抜けなかったようだ。しかし本当の問題はこれから。修復に何年かかるのかはっきりせず、いずれは古墳に戻すのか、外部で保存す るのかも不透明だ。

▼そもそも、石室を解体する羽目になったのは文化庁のずさんな管理が大きな原因だった。損傷隠しも記憶に新しい。加え て、先のことは行き当たりばったりというのでは文化庁に文化財をゆだねるのが不安になる。お役人たちは飛鳥の地の重みなど顧みず、役所にこそ重心があると 思い込んでいるのかもしれない


↓おじさんの雑談も面白いジャンと思ったらクリック。(笑)
人気blogランキングバナー

OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60 CE OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60

販売元:オリンパス
発売日:2007/09/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月27日 (水)

6月27日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 



【沖縄タイムス・社説】(2007年6月27日朝刊)

[国保算定ミス]厚労省は誠実な対応を

 災害などの特別の事情に応じて国が市町村に配分する国民健康保険の特別調整交付金をめぐり、厚生労働省の交付金の算定方法に誤りがあることが判明した。

 交付金額の算定ソフトの誤りがあったことが原因だった。那覇市の試算によると、過去十年間で配分額が約五億五千万円少なかったようだ。

 浦添市でも二〇〇五年度までの八年間で、二億円以上の交付不足があるという。

 厚労省は当初「ソフトに誤りがあったというだけで追加交付はできない」「交付金は市町村の申請によるものであり、国だけの責任ではない」と説明し、補てんは法的に困難としていた。

 しかし、過少交付の原因になった算定ソフトが計一千程度の市町村に導入されており、那覇市、浦添市に限らず全国の各市町村にもこの問題が波及していくことが必至の情勢になった。

 厚労省は一転して、交付不足が確認できた年度分を補てん(追加交付)する方針を明らかにした。当初の対応はいただけないが、追加交付の決定は当然の判断である。

 厚労省によると、昨秋、一部職員が特別調整交付金の過少交付に気付いたが、問題が放置された。対応のまずさをなぜ当初から認めないのか。同省の対応の在り方が厳しく問われよう。

 市町村が運営する国民健康保険は、被用者以外の自営業者や無業者などを対象にしている。退職や転職などで他の保険制度から外れた人も国保に加入する仕組みになっている。

 他の保険制度と比べて、高齢者が多く所得額も低い。失業者も含まれ、市町村国保財政は構造的な赤字体質になりがちだ。市町村にとって交付不足は軽視できない問題だ。特に財政力が弱い沖縄では影響は大きい。

 那覇市の場合、国保の基金(預金)残高も底をつき、一〇年度までに二十三億円の累積赤字が見込まれている。医療費が伸びている一方で保険料収入が追いつかない。

 このため、同市では本年度の国民健康保険税の税率を改定し、一般被保険者の一世帯当たりで平均四千九百十九円(4・27%)引き上げた。

 那覇市議会は特別調整交付金の算定に関する意見書を全会一致で可決し、「未交付額は国保財政はもとより、市民にとって大きな負担を強いる」などと指摘。未交付額の補てんする特別措置などを実施するよう求めた。

 県内では那覇、浦添以外の市町村にも影響が出るものとみられ、各地で批判の声が挙がっている。厚労省は責任の所在を明確にし、関係市町村の要請に誠実に対応していくべきだ。

[北朝鮮核問題]核放棄への行程を急げ

 北朝鮮は核放棄に向けた初期段階措置として、寧辺の核施設の稼働停止と封印などを定めた二月の六カ国協議合意の履行に着手すると表明した。

 マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結された資金問題が解決したと判断したからだ。

 北朝鮮外務省報道官は送金完了を受け、「『行動対行動』の原則に従い、合意の履行に入る」と宣言している。

 この表明を受け、国際原子力機関(IAEA)のハイノネン事務次長ら実務代表団が二十六日、平壌入りした。北朝鮮の合意履行へ向けた五日間にわたる実質的な協議の開始で、鍵は北朝鮮の出方にかかっているといえる。

 訪朝した六カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補によると、北朝鮮側は核施設の稼働停止を二、三週間でできると示唆したという。

 初期段階措置では、寧辺の核施設の稼働停止と封印、IAEAの査察官を受け入れ、その見返りとして重油五万トン相当のエネルギー支援がなされる。

 ただ、これまでの北朝鮮の行動を見れば楽観視は禁物だ。紆余曲折を経る可能性は高い。正念場はこれからであり、関係国はそのことを念頭に置く必要がある。

 ヒル次官補は、先の訪朝で、北朝鮮側がすべての核開発の完全な申告、全核施設の「無能力化」について「準備ができている」と述べたことを明らかにした。

 予断は禁物だが、仮に初期段階措置が履行された場合、次の段階は無能力化の実現である。速やかに実行に移すべきだ。

 北朝鮮は、その見返りに米国にテロ支援国家の指定解除を強く求める可能性がある。

 日本などは拉致問題の未解決などを理由に指定解除に反対しており、日米は緊密な連携が求められよう。

 資金送金問題が決着し、今度は北朝鮮が六カ国協議の合意を履行する番だ。IAEAとの協議で核施設の稼働停止と封印に応じ、全核放棄に向けた動きを加速させてもらいたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】

(2007年6月27日 朝刊 1面)

 通勤にはバスを使っている。同時間に同路線に乗る。当然ながら九割がた同じ顔ぶれがそろう。ところがこれが雨となると普段とは違った雰囲気になるのだ。

 梅雨の盛りのころだった。ちょうどラッシュ時と雨が重なったこともあって、いつもは見かけない人たちが次々と乗車してくる。それぞれ傘をたたみながら慌ただしげだ。ずいぶん込み合ってきたなと思ったころ、妙な声が聞こえてきた。

 つり革につかまっていた女性が突然「ゴヨータシー」と歌うように言ったのだ。車内に流れるお店のCMで若者にも人気があるという意味なのだろう「近所の学生、御用達!」と流す。それに唱和したのだ。

 バスの中には不特定多数の人がいる。CMを流すにはいい場所だ。ただ、音声だけなのでいかにインパクトのある宣伝文句を流すか。そこが勝負だ。乗客が無意識ながらCMに呼応するというのはそれだけ琴線に触れているということだ。

 どこがそうなのか。それは最後の部分。呼び掛けるように長母音を使っている。いわば実質的にメロディーを付けているのと同じと考えられる。単に文章を読むだけのCMが多いなかで、効果を挙げている。

 世の中、商売の世界だけでなく宣伝の仕方がことの成否や人の人生を左右する時代。いかに違いをアピールするか。そのためには観察力と感性が問われるのだろう。雨の日は普段より乗客が多いという点にも商機があるのかも。(真久田巧)


【琉球新報・社説】

医師確保対策 無理なく働ける環境を

 全国的に産婦人科医が不足している中で、県立八重山病院に産婦人科の医師3人が7月1日付で採用され、同科は現在の3人態勢から6人態勢に増強されることになった。
 常勤医が5月末で退職し医師不在になっていた座間味診療所にも7月13日付で常勤医を配置。県立北部病院にも産婦人科医1人を来月1日から派遣するという。
 地域の医療環境が改善されることを心から喜ぶと同時に、北部病院産婦人科をはじめ、すべての欠員が早期に解消されるよう期待したい。
 だが、医師個人の使命感に頼っているだけでは付け焼き刃になりかねない。問題の根底に、県立病院の過酷な勤務環境が横たわっているからだ。
 県内5つの県立総合病院に勤務する医師267人(2006年度)の大半は当直勤務の回数が月平均5、6回に上り、全国平均のおよそ2倍に達している。
 ほとんどの医師は当直明けの後、引き続き日勤勤務に就いており、連続32時間労働が恒常的に繰り返されている実態も明らかになっている。
 たとえ崇高な使命感を持つ医師であっても、長年にわたって過酷な生活を強いられていると、いつか投げ出したくなるのではないか。医師を現場につなぎ留めるためには、厳しい労働環境を改善することが不可欠である。
 一方で、県の努力だけでは限界もある。全国的に、繁忙な診療科を避け、比較的余裕のある診療科に進む医師が増えているからだ。
 医学部の学生の間では、呼び出しが多く、医療事故などで訴訟を起こされるリスクの高い産婦人科や小児科などを敬遠する傾向が強まっているという。
 医師の数は毎年3500人から4千人増えているというのに、産婦人科医は、厚生労働省の集計(04年)によると35県で2年前より減っていた。
 診療科ごとの医師の偏在を是正するには、産婦人科医や小児科医などを優遇するような制度的措置があってもいいだろう。
  政府、与党は国の主導による緊急的な医師の派遣や、出産などで離職した女性医師の復職支援、勤務医の過重労働解消などを盛り込んだ医師確保対策をまとめて いる。何よりも、過重労働が勤務医の不足につながり、勤務医の不足が過重労働を生むという悪循環を断ち切ることが大切だ。
 今回、県立病院に新たに採用・派遣される医師はいずれも県外出身者だ。遠方の地での勤務を引き受けてくれた、その志に応える必要がある。
 こうした医師が無理なく働ける環境を整え、いつまでも沖縄に定着してもらえるようにしたい。

(6/27 10:06)

観光庁新設 沖縄誘客の追い風にした

 観光振興の担当部署を統合した「観光庁」(仮称)が2008年度から国土交通省内に新設される方針が固まった。庁の設置によって、観光立国を推進する体制を強化し、外国人客の誘致や観光を起爆剤にした地域再生などを図っていくという。
 沖縄への観光誘客を図る上で、強力な追い風にしたい。
 観光庁が推進することになる、国交省の観光立国推進基本計画案は10年までに外国人旅行者数を1千万人に、日本人の海外旅行者数を2千万人に増やすことを目標に掲げている。
  併せて、外国人旅行者をスムーズに受け入れる態勢づくりを進め、国際会議の国内での開催数を05年の168件から11年までに5割以上増やすことも基本目 標に盛り込んだ。一口に観光立国と言っても、国内の観光地がパイの奪い合いをしているだけでは、栄える地域が出る半面、廃れる地域も生まれてしまう。
 国際競争力が高く、外国人の目からも魅力たっぷりの観光地を数多く育てていくことが重要だ。
 とりわけ、亜熱帯の温暖な気候、美しい海、伝統文化など豊富な観光資源を備えた沖縄は、多くの可能性を秘めている。
 県観光商工部のまとめによると、沖縄の昨年の入域観光客は563万7800人となり過去最多を記録した。これに伴い観光収入も初めて4千億円を突破している。
 内訳を見ると、国内客が前年比3・4%増の554万4400人、外国人客は前年比31・6%減の9万3400人だった。
 県は07年度の目標値として、外国人客15万人、国内客を合わせて590万人と設定した。
 目標達成には外国人客を大幅に増やすことが不可欠だが、観光客はただ数さえ増えればいいというわけではない。1人当たりの県内消費額が減少したのでは、十分な経済効果が得られず「豊作貧乏」と化してしまう。
 エステ・スパやエコ・ツーリズムなど、沖縄の特色を生かした体験滞在型の観光商品を数多く開発し国内外に売り込みたいところだ。

(6/27 10:04)

【琉球新報・金口木舌】

 「記憶」を辞書で引くと「物事を忘れずに覚えている、覚えておくこと」とある
▼本紙が慰霊の日を前に実施した県内四十一市町村アンケート調査で、半数以上の自治体が慰霊祭以外に独自の平和事業を行っていると回答した。だが、中には予算ゼロという自治体もあった
▼沖縄戦終結から六十二年の月日が流れた。自治体担当者からは、戦争体験の語り部の減少や財政難などの、平和行政を取り巻く厳しい状況を指摘する声も上がる
▼慰霊の日の前夜、沖縄市中央の小さな飲食店で、沖縄戦と平和について考える集まりがあった。出席者は沖縄戦を実際には体験していない、ほとんどが戦後生まれの人たちだった。彼らは祖父や父母らから伝え聞いた話を語り合った
▼小さな集まりだったかもしれない。だが、「物事を忘れずに覚えておく」には大事な試みだ。こうした試みは人が集まる場所さえあれば、家族や友人同士など、誰とでもできることだ
▼沖縄戦体験者自身が戦争を語ることが不可能になる日はいずれ訪れる。戦争体験の継承は、行政主導の事業に頼るだけのものでもない。県民一人一人が祖父母や父母らから聞いた自らの沖縄戦の記憶を語ること、それも記憶の継承となるはずだ。

(6/27 9:31)


【東京新聞・社説】

ボーナス返納 すり替えではいけない

2007年6月27日

 年金記録不備問題で安倍晋三首相らが夏のボーナス自主返納を決めた。野党などから責任問題のすり替えとの批判が出ている。大切なことは問題の全容を明らかにし、解決に全力を尽くすことだ。

 ボーナスの自主返納は、首相のほか、官房長官、厚生労働相、同副大臣、政務官、事務次官、社会保険庁長官らが率先して行い、社保庁の全職員にも職種のランクに応じた返納を要請する。社保庁幹部のOBにも寄付を求める。

  安倍首相は「けじめをつける」と説明している。社保庁の杜撰(ずさん)な業務で国民・厚生年金加入者、受給者の信頼を裏切った以上、当然と受け止める国民 は多いようだ。だが、自主返納は、参院選を目前に控え、窮地に陥った安倍政権のパフォーマンスと受け取れなくもない。少しでも国民からの批判をかわしたい との狙いがうかがえるからだ。

 社保庁の責任は今後、徹底的に問う必要があるが、ボーナスを自主返納したところで、年金記録不備問題が解決するわけではない。

 優先すべきは、政府が持つ全資料を公表したうえで間違った年金保険料の納付記録をただし、救済する作業日程を明確に示すことだ。それを政府全体で推進すべきだ。ところが、政府はいまだに問題の全容を国民に明らかにしていない。

  政府は社保庁のオンラインシステムに入力されていて該当者不明の五千万件の納付記録の照合を一年以内に終えると確約した。ところが、社保庁改革関連法案、 年金時効撤廃特例法案の衆院可決のあと、参院での野党の追及にオンライン未入力の千四百万件の納付記録が五千万件とは別にあることをしぶしぶ認めた。

  その五千万件の納付記録自体、詳細は不明なままである。二千九百万件は受給年齢到達者の記録だが、受給総額が一体幾らになるのか。国会での野党の再三の追 及にもかかわらず、政府は公表を拒んでいる。仮に一件平均二十万円の年金が未払いだったとしても総額は約六兆円になる。ボーナスの自主返納で見込まれる総 額十億円とは桁(けた)が違うのだ。

 政府は五千万件の照合作業が済めば問題が解決するような、誤解を与える発言は控えるべきである。

 記録不備の原因や責任を明らかにする検証委員会に続き、納付の証拠がない場合に給付の可否を判断する第三者委員会が活動を始めた。検証委の中間報告、第三者委の給付判定基準は参院選の直前に公表される。

 選挙目当ての日程を優先させ、年金受給権の回復という本来の責務をおろそかにしてはならない。

独禁法見直し 制裁強化はやむを得ぬ

2007年6月27日

 談合など独占禁止法違反の制裁強化などを促す報告書がまとまった。公正取引委員会が検事と裁判官役の一部を兼ねる日本独自の審判制度は、国際的にも調和するよう検討を要するのではないか。

  報告書は官房長官の私的懇談会がまとめた。今回の論議は課徴金引き上げなどをめぐって公取委と日本経団連が対立した昨年一月の法改正の“仕切り直し”と位 置づけられているが、来年の通常国会を目指す法改正は国内ばかりに目を奪われずに、海外の競争政策も視野に入れて進めるべきだ。

 課徴金 の算定率は昨年の改正で大企業製造業の場合、6%から10%に引き上げられているが、報告書は「違反行為の動機づけを失わせるのに十分な水準に」と再引き 上げの必要性を指摘した。談合などの主犯格企業への算定率引き上げも明記した。その理由として「欧州に比べ水準が低い」などを挙げている。

  大企業が下請けに買いたたきなどの不公正取引を強いる優越的地位の乱用については、排除命令に加え、新たに課徴金を科す方針を示した。経団連は厳罰化に抵 抗を示しているが、警察官を巻き込んで官製談合を主導したゼネコン大手の大林組など、不祥事が後を絶たない現実を見据えるならばやむを得まい。

 ただ「処分早期化などの成果を挙げている」として維持する方針を打ち出した審判制度は、あらためて検討を要するテーマだ。

  日本の現在の審判制度は、公取委が違反行為があると判断すれば処分を下し、不服があれば司法の第一審に相当する公取委の審判で争い、さらに不服があった段 階で高裁に持ち込まれる。欧州連合(EU)と米国は、ともに処分後の不服審査はすべて独立した司法に委ねられ、いわば国際標準にもなっている。

  EUは巨額の制裁金で価格カルテルを抑え込むなど、競争政策強化で域内経済を成長させる戦略を進めている。東芝など複数の日本企業が、欧州で販売実績がな いのに一社で百億円を超える制裁金を命じられたのは、その典型事例だ。日欧企業が相手国市場への参入を互いに手控えて市場を分割し、価格競争をゆがめたと の認定だが、不服審査は司法の場で行われている。

 公取委には国際カルテルの摘発事例がないが、早晩、外国企業の違反と向き合うことになろう。その際、審判制度の中立性をめぐって外国企業からの反発を招きかねない。

 経済のグローバル化により市場の単一化が進む現在、日本の審判制度も国際標準に近づける必要があるのではないか。

【東京新聞・筆洗】2007年6月27日

 出会った人の誰もが八十歳と思わなかったという。日 焼けした肌、しまった足の筋肉。原野亀三郎さんは野宿もできる荷物を積んだスポーツタイプの自転車で、颯爽(さっそう)と風を切っていた▼自転車での日本 一周が人生の目標だった。「自給自足をしたい」と東京から一人で移り住んだ長野県内の自宅を昨年四月に出発し、日本海側を北上。北海道を回って日本列島を 南下した。鹿児島、沖縄などを経て、当初は今月三十日に帰宅する計画だった。それが五日早まり、悲劇が待っていた。自宅まで約四十キロの地点で大型ダンプ カーにはねられて亡くなった▼なぜ原野さんは日本一周を考えたのか。昨年七月、北上の途中で雨に降られて一泊した福島県内の旅館のおかみ村上美保子さん に、心の内を明かしている▼戦争を体験した原野さんには青春がなかった。戦死した戦友には永久に青春がない。「残された自分が青春を楽しまなかったら、あ の世に行ったときに彼らにあわせる顔がない。今、青春をしている」のだという。自転車で走ると、戦友と旅を楽しんでいるように感じるとも話していた▼日本 一周中の原野さんに出会った人は、みんなファンになっている。穏やかな人柄に加え、学ぶところがあったのだろう。村上さんは「原野さんを知って、年齢を理 由にして何かをできないと思うことはやめようと思った」と振り返っている。人生における人との出会いの大きさを感じる▼無念の死になるのだろうが、思い 切って旅に出た甲斐(かい)はあった。颯爽と戦友に再会していることを願う。


【河北新報・社説】

株主総会がピーク/丁寧に企業戦略の説明を

 経営陣と「モノ言う株主」の対立、シャンシャン総会の終焉(しゅうえん)―。今年の株主総会の特徴を端的に表現すれば、こうなるだろうか。

 時代は様変わりしており、近い将来、東北の企業の株主総会も決して例外ではあり得ない。

 東証上場の3月期決算企業の半分以上に当たる約960社は28日株主総会を開き、総会シーズンはピークを迎える。

 目立つのは、外資系投資ファンドを中心に、大幅な増配や買収防衛策の廃止を求める株主提案が相次いでいることだ。

 敵対的な株式公開買い付け(TOB)を次々に仕掛け、株主提案を行う米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドは、その典型だろう。

 2002年に日本で投資を始め、40社ほどの株を大量取得しているとみられる。東北では、電気通信工事会社の株を取得、今年3月末で保有比率は5%を超えていた。

 スティールは、江崎グリコやブラザー工業などに大幅増配を提案。現在は、ブルドックソースに対し、TOBを実施中だ。

 これに対抗し、ブルドックソースは新株予約権を使って、スティールの保有株比率を下げる買収防衛策の議案を今月開いた株主総会で提案。株主の3分の2以上が賛成する「特別決議」で承認された。

 だが、スティール側は、新株予約権の発行差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請。事は法廷闘争に発展、近く司法判断が下されることになるという。

 外資に限らず、TBSと楽天のように、会社と株主が提案の優劣を競い、株主に働きかけて議決権を集める委任状の争奪戦も増加している。

 株主要求も多岐におよび、経営トップの聖域だった取締役人事の修正や取締役報酬の公開など、従来あまり例を見ない内容を含んでいるようだ。

 企業の価値を高めて、株主に報いようとする提案や議論は決して悪いことではない。逆に、議論が活発化すれば、企業に新しい道が開ける可能性がある。その点、「モノ言う株主」が増えることにより、企業側にも緊張感が生まれ、好結果にもつながっていくだろう。

 しかし、株を買い占め、高値で売り抜ける「グリーンメーラー」は言うに及ばず、短期的な利益ばかりを優先する提案は、結局は信用されないし、日本の企業風土の中で、生き残れないのではないか。

 大事なのは企業としての理念、目標、長期戦略を綿密に策定した上、従業員の継続雇用などを示すことだろう。

 一方、日本企業は従来、企業同士の株の持ち合いなどを通して基盤が安定していたこともあって、個人株主をおろそかにしてきた面は否めない。経営陣が、経営実態や戦略を丁寧に説明することが必要だ。

 個人株主には、企業を見極める目が求められよう。
 28日の東北の企業の株主総会でも、個人株主の多くが率直な疑問をぶつけ、経営者が真摯(しんし)に答える場面を期待したい。
2007年06月27日水曜日

【河北新報・河北春秋】

 「人気のセ、実力のパ」。プロ野球の両リーグがそう評された時代があった。パが力を見せる舞台となったのが夢の球宴・オールスターゲームだ▼東北 楽天の野村克也監督は史上最多、21回の出場を誇る。ホークス時代に自らを「月見草」に例えた名捕手は「ヒマワリ」たちを相手にパの投手陣をリードした。 その頭脳をもってしてもこの事態は予想外だったよう

 ▼ 締め切られたオールスターゲーム・ファン投票の最終中間発表。先発投手の新人・田中将大ら楽天の7選手が部門トップ。投票で決まる出場枠12のうち8つま でを楽天勢が占めた▼未集計分を含めた最終結果は来月2日の発表。当選はほぼ確実だ。ただいまリーグ5位。「本旨からは外れている」という監督の戸惑いも 分からないではない。が、オールスターは「夢のゲーム」

 ▼大リーグのそれは1933年にシカゴ万博のイベントとして誕生した。リーグが 違う「ベーブ・ルースと豪腕ハッベルとの対決が見たい」。少年が夢をつづった一通の手紙がきっかけだった▼大量得票の分析はさておき、楽天勢に投票した少 年ファンは少なからずいる。今季第2戦・フルスタ宮城でグラウンドを埋める楽天の選手たちが見たい。そんな「夢」がかない、また別の「夢」を与えてくれそ うなのが何よりだ。

2007年06月27日水曜日


【京都新聞・社説】

高松塚解体  保存態勢づくりを急げ

 極彩色壁画をもつ高松塚古墳(奈良県明日香村)の石室解体が「男子群像」の西壁を取り外してほぼ終わった。
 石室をそっくり取り出し、カビによる劣化を防ぐ異例の全面解体は、約三カ月の作業で絵が描かれた壁石や天井の石、計十二枚を近くの修復施設へと運んだ。
 慎重な作業で傷一つつけずに壁画を無事に”救出“できたことを喜びたい。だが問題はこれからどうするかだ。
 カビ繁殖などでくすんだ壁画にかつての美しさをよみがえらせるにはどういう方法があるのか。修復は十年がかりというが、その後は地元展示を含めてどんな保存方法が一番いいのか。
 具体策はなにも決まっていないのだ。文化庁は総合的保存対策を一日も早く明らかにしてもらいたい。
 高松塚古墳で極彩色壁画が見つかったのは三十五年前だ。壁石には、「飛鳥美人」と称される女子群像、「玄武」「白虎」などの四神図、天井の石には天文図がそれぞれ描かれ、七世紀末から八世紀初めとみられる古墳からは大陸文化との強いかかわりがしのばれた。
 極彩色壁画は国宝指定され、その後、近くのキトラ古墳でも発見されたが今もこの二古墳以外では見つかっていない。
 文化庁は高松塚古墳などを部外者の出入り禁止にし、古墳保存を図ってきたがそれがあだとなったようだ。
 六年前に壁面に大量のカビが発生したが、防護服を着ないで石室入り口の天井工事をした直後だった。
 五年前には担当者が作業ミスから壁画を傷つけ、事後処理として、ひそかに石室内の土を殺菌して塗っていた。
 「人災」ともいうべき行為が明らかになったのは、はびこったカビのため壁画が消滅の危機に陥り、石室解体が決まってからだった。
 隠しようがなくなってようやく関係者の口が開いたのだ。長い歳月で「自然劣化」もあり得るが、文化庁が設置した有識者の調査委員会は昨年、庁内の縦割り行政、情報公開への認識の甘さが背景にあることを指摘した。
 古墳を外部の目から遠ざけたことが甘い管理態勢を生んでいたのだ。文化庁が早く気づいていればと、悔やまれる。
 昨年の調査は不十分さも指摘されており、今回の石室解体で新たに判明した壁画の劣化原因もあるだろう。
 それだけに今後の対策を立てるため、壁画の劣化原因と結果の関係をきちんと調べ直すべきだろう。
 文化庁は庁内の風通しをよくすることだ。継続して対応する「高松塚ウオッチャー」の設置も考えてもらいたい。修復や保存対策のために広く国内外から知識や意見を募ることも心がけるべきだ。
 文化庁長官は国民が注視すると思えば簡単に情報隠しはできない、説明義務も出てくるという。まず実行してほしい。

[京都新聞 2007年06月27日掲載]

年金給付基準  「加入者保護」で判断を

 支払った保険料に見合う年金がもらえるのか。消えたままにならないか。
 そんな思いで見守っている人も少なくないだろう。
 不明年金問題で、領収書などの証拠がない場合の給付を審査する「年金記録確認中央第三者委員会」の初会合が開かれた。
 申し立てる人の立場から、給与明細などの間接的資料を検討して判断する、というのが基本的な考えのようだ。
 「消えた年金」は、社会保険庁のずさんな管理によって生じたのだから当然だろう。加入者保護を前提に、できる限り給付を認める方向で判断基準(ガイドライン)づくりを進めてもらいたい。
 昨年八月以降、社保庁に年金記録を照会した人は二百十五万人にのぼる。
 二万人は「証拠がない」として支給申請が却下され、このうち二百八十四人は社保庁の決定を不服として再調査を求めている。第三者委は、まずこの二百八十四件について調査、類型化しガイドラインをつくることになるという。
 肝心なのは、その中身だ。
 第三者委は、間接的資料の具体例として、銀行の振り込みや雇用保険(失業保険)の加入記録などを挙げる。
 政府も「過去の雇い主や同僚の証言」を例示するなど、厚生年金は比較的、資料を集めやすいとみるが、問題は自営業者や主婦らが加入する国民年金だ。
 保険料を自分で納付するため第三者の証言を得るのが難しい。オンライン化した際、「原簿」となる手書き台帳が破棄されている場合は、追跡も期待薄だ。
 保険料を納めたことを記した家計簿なども間接資料として認めるべきだが、残している人は多くないだろう。
 不正受給への留意は必要だが、納税している人の多くは保険料も納めていることから、状況証拠なども加味し、資料として認めるなど柔軟に考えてほしい。
 ガイドラインを受け、実際に審査する地方第三者委員会にも注文がある。
 社会保険事務所に問い合わせ、納得のいかない場合は、全国五十カ所の総務省の出先機関(行政評価事務所)に設けられる地方第三者委に申し立てるが、それがどのくらいの数になるのか、政府もつかみかねているのが実情だ。
 申請が却下された二万人を上回るとの見方もある。「手が回らない」事態にならぬよう、体制を組む必要があろう。
 安倍晋三首相は、自身と厚労相や社保庁長官をはじめ同庁全職員ボーナスの一部の自主返上を決めたが、国民が望んでいるのは問題の本質を明らかにし、対応に全力を挙げることではないか。
 要のガイドラインは七月中にも策定する方針という。参院選前に「救済」の道筋をつけたいとの思惑だろうが、中途半端な内容だと各地方委によって異なる判断が示され、混乱を招く恐れもある。
 明快で納得のいくガイドラインにすることが肝要だ。いま国民の目は厳しい。

[京都新聞 2007年06月27日掲載]

【京都新聞・凡語】

観光庁の新設

 ベルサイユ宮殿「鏡の間」が三年間かけた修復作業を終え、往時の美しさを取り戻 したという。本紙が伝える記事の最後に「宮殿には年間一千万人が訪れる」とある▼フランスを代表する名所だ。数字には若干の国内客も含まれるのだろう。そ れにしても一千万人とは驚く。日本を訪れる外国人観光客は、二〇〇六年で七百三十三万人。一国が、一名所にも及ばないとは▼「観光日本」へ、国土交通省は 観光庁を新設する方針を固めた。かねて目標の「二〇一〇年・外国人観光客一千万人」達成を目指すという。ことし一月には、観光立国推進基本法も施行された ▼観光庁には、予算配分が複数省にまたがり、ばらばらになっている観光行政を一元化するねらいもある。国交省内の担当課統合だけでは、間に合わない。経産 や、環境、文科、総務など各省総ぐるみの実力部隊にすべきだ▼外国人客誘致を進めるヒントは中韓台三カ国だろう。〇六年は、三カ国が訪日外国人客数のベス ト3となり、総数で全体の57%を占めた。とくに中国は十年前の約三倍と伸びが著しい▼中韓台を誘致増の中心に位置づけたい。ありのままの日本を体験して もらうことが相互理解の大きな力になる。国交省は一千万人達成で六十五兆円の経済効果を見込む。観光立国が経済狙いだけでよいのか。観光庁には仕事の的を 外さないよう望みたい。

[京都新聞 2007年06月27日掲載]


【朝日・社説】2007年06月27日(水曜日)付

社保庁の賞与―民間なら返納では済まぬ

 年金記録をずさんに扱った「おわび」として、上は安倍首相から下は社会保険庁の一職員まで、夏のボーナスの一部を自主返納することになった。

 歴代の厚生労働、厚生省の事務次官や社保庁長官ら幹部職員OB数千人にも寄付を求めるという。

 年金はわれわれの老後の生活を支える資金である。そのために預けた保険料をここまでずさんに扱っておいて、おめおめとボーナスを受け取るのか、というのが国民の気持ちだろう。

 社保庁は「不正のデパート」とまで言われてきた。こんど明らかになった大量の「宙に浮いた記録」「消えた記録」の前にも、年金記録ののぞき見や保険料の無駄づかい、本人の了解を得ない保険料の免除など、でたらめな仕事ぶりが次々と露見している。

 こんな仕事をしていたら、民間企業ならばお客の信頼を失って、とっくに倒産していたはずだ。

 じっさいに、北海道の食品加工卸会社ミートホープは、牛ミンチの偽装や賞味期限の改ざんなど数々の不正が発覚し、廃業の方向となった。その結果、従業員は解雇され、ボーナスはおろか給与さえもらえなくなる。

 これが民間の常識だ。

 公務員の身分は法律で手厚く守られている。そのうえ、年金は政府が徴収・管理していて他に代わりがないから、廃業にもできない。公務員が責任を負わないことに、国民は歯ぎしりしている。

 公務員の給与などは人事院の勧告にもとづいて一律に決まる。現制度では社保庁だけ減額するわけにはいかない。「自主返納」という方法は中途半端だが、現状ではやむをえないだろう。

 若い末端の職員は「古い人の責任なのに」と不満かもしれない。だが、記録の不備で年金を手にできない人の思いを実感する機会と考え、甘受すべきだ。

 安倍首相は、よもやボーナス返納で国民の怒りが収まり、逆風を脱出できると思っているわけではあるまい。

 返納の総額は約10億円。政府は「宙に浮いた年金記録」の支給推計額を明らかにしていないが、共産党は少なくとも3兆円を超えると試算している。

 朝日新聞の世論調査では国民の92%が「まだ怒りが続いている」という。

 返納は「おわび」の気持ちを表すもので、「責任」を明示したわけではない。

 なぜこんな過ちが生じたのか。政府は管理責任や労使関係にメスを入れて解明したうえで、どんな組織がいいのか、あるべき姿を検討するべきだ。

 それなのに政府・与党は、社保庁を六つに分割する改革法案について、28日にも参院の委員会で採決を強行する方向だ。順序が逆ではないか。

 「戦後レジームからの脱却」と叫び、やみくもに法案の成立を強行すれば、国民の年金不信はさらに高まる。参院選で手痛いしっぺ返しを受けるに違いない。

野球特待生―時代に合うルール作りを

 高校野球の特待生をどう考えるか。日本高校野球連盟は二つの方針を決めた。

 ひとつは、いまいる特待生を事実上認めた今年度の暫定措置を、来年度も続けることだ。

 もうひとつは、将来のあり方については有識者による諮問会議を外部に設け、そこで論議してもらうことだ。この第三者機関は10月をめどに結論を出す。

 私たちはこれまで社説で、「特待生をすべて否定するのではなく、行きすぎを防ぐ方法を考えた方がいい」と主張し、第三者機関をつくって幅広く意見を聴くことを提案してきた。

 高野連は第三者機関には白紙の状態で諮問するという。その結論によっては、野球特待生を認めてこなかった従来の原則を見直すということだろう。高野連の新たな方針を歓迎したい。

 結論を出すまであと3カ月しかないが、第三者機関は広い視野で論議し、多くの人が共感できる仕組みを練り上げてほしい。

 特待生制度は陸上やサッカー、バレーボール、卓球、バスケットなど多くの競技にある。しかし、きちんと運用するルールはほとんどない。そこでは不明朗な金の動きを指摘する声も出ている。

 そうした中で、第三者機関を設けてまで取り組むのは、野球が初めてといっていい。影響は高校野球にとどまらず、その意義は大きい。

 第三者機関が特待生を認めるとしても、論議すべき問題はいくつもある。

 まずは、選手を高校にあっせんするブローカーや金銭の授受をどのようにして排除していくかだ。ブローカーを使うなどした高校には何らかのペナルティーを科すことを考えた方がいい。

 特待生は入学金や授業料の免除だけか、ほかの支援も認めるのか。どこかで線引きをしなければならない。特待生制度と表裏の関係にある野球留学にも歯止めをかける必要がある。

 そのうえで、特待生の数や内容を公表すべきだろう。

 そもそも特待生制度を考えるには、学校教育の中でスポーツや芸術活動をどう評価し、位置づけるかまで論議する必要がある。「一芸」をどのように伸ばし、ほかの授業とのバランスをどう取っていくか。論議は広くならざるをえまい。

 もとはといえば、特待生問題が表面化したのは、西武球団の新人発掘をめぐる裏金がきっかけだった。特待生制度が悪用され、ゆがみが生まれる背景のひとつには、プロが中学生や高校生のときから優秀な選手に目をつけ、スカウト活動をしていることがある。

 第三者機関にはプロの代表も入れ、議論を深めた方がいい。

 プロは特待生制度にからんで、何をしてもいいのか、何をしたらいけないのかをきちんと整理する必要がある。それはスポーツ界と教育界とのつながりを改めて考える機会にもなる。

【朝日・天声人語】2007年06月27日(水曜日)付

 伝わるところでは、日本で初めてボーナスを出したのは、三菱の創始者岩崎弥太郎だったという。三菱史料館によれば、明治9年、英国の船会社と上海航路の覇を競い、勝って相手を撤退させた。

 弥太郎は喜んだ。「社中各員別(わ)けて勤勉事務を担任し其(そ)の功績を見ること少なからず」。幹部から給仕まで、給料のほぼ1カ月分にあたる報奨金を奮発したそうだ。ボーナスは働きに報いて支給されたものだった。

 「勤勉事務」とは縁遠かった社会保険庁が、全職員にボーナスの自主返納を求めることになった。幹部から末端までを対象とし、退職者にも応分の「寄付」を求めるという。安倍首相や柳沢厚労相も率先して返納する。官邸主導による、政官あげての「総ざんげ」の趣だ。

 「当然だ」と言う人、「まだ甘い」と収まらない人、さまざまだろう。だが、国民の不満をそらす演出を感じる人も、少なくないのではないか。参院選は1カ月の後に迫っている。

 総ざんげの元祖といえば、終戦直後の「一億総ざんげ」である。その正体を、「緊急の場面に直面した支配層の放ったイカの墨」と突いたのは政治学者の丸山真男だった。今度のざんげも選挙前の目くらましではないのか。いぶかる声も聞こえてくる。

 弥太郎は、英国会社との競争の際、経費節減のために自らの報酬を半分にした。社員もならって3分の1を返上したという。目的のある返納なら張り合いもあろう。だがイカの墨となってやがて消えるなら、国民にも職員にも、残るのはむなしさだけである。


【毎日・社説】

社説:野球特待生 不正の介入許さぬ制度を

 野球特待生をめぐり、日本高校野球連盟は26日、特待生問題私学検討部会と臨時理事会を開き、新たな基準をまとめた。来春の入学予定者に限った暫 定措置ながら、加盟校が「スポーツ技能に優れた生徒に対する経済支援を必要とする」と判断した場合、特待制度を適用できることにした。部員、選手を理由と した金品の受け取りを一律に禁止した日本学生野球憲章の規定からは軌道修正となる。

 4月に高野連が「野球特待生の根絶」という強い姿勢 を打ち出して以来、肩身の狭い思いをしてきた野球部員やその家族は全国に少なくないが、胸をなでおろしていることだろう。野球部員を特別に厚遇する必要も ないが、反対に冷遇する必要もない。高野連の現実的な対応を歓迎したい。

 今回の高野連の措置は、来春の入試要項を早急に取りまとめなけ ればならない私立高校側の要請を受けた暫定的なものだ。従って09年度以降も「スポーツ活動」を考慮した特待制度を容認するのかどうかは今後の検討とな る。また、高校に関係しない人物が関与した不正を防ぐための措置もまだ十分ではなく、積み残された課題は少なくない。

 高野連では、学生野球憲章の見直しを含め、有識者による第三者機関で、これらの問題を論議することにしている。広く国民一般の理解を得られる制度を作り上げてもらいたい。

 ただ、今回の高野連の確認事項にもあるように、中学生の勧誘に第三者が介在したり、公表された特待制度を超える金銭などの授受は、教育の一環としての高校野球にふさわしくないのはいうまでもない。今後も厳しく監視し、排除していかなければならない。

  一連の経過を振り返ると、多くの教訓をくみ取ることができる。特待制度に焦点が当てられた発端は、一部の加盟校の明らかな脱線行為だった。プロ球団からの 不正な資金の流れに、高校野球関係者が直接関与していたこともわかった。衝撃の強さが高野連の早急な反応を引き出した。

 野球部員の特待制度を採用していたのは大半が私立高校だった。少子化の時代を迎え、特待制度が学校経営に欠かせない役割を果たしている側面もあるが、そこにブローカー的な第三者が介在する余地を残しているのも確かだ。

 一方で、チームスポーツとしての野球は、フェアプレーの精神や「仲間や相手を思いやる気持ち」など、教育的な効果を期待できるスポーツであることも忘れてはならない。野球の持つ特性を教育の中で生かすことができる特待制度を関係者が総がかりで作り上げていく必要がある。

  特待生問題に対する国民の関心の強さは、そのまま高校野球に対する期待の大きさでもある。甲子園から巣立った野球のスター選手がさまざまな場で日本人を元 気付けてくれている現実も忘れてはなるまい。高校野球をより愛されるものに育て上げるため、災いを福に転じる好機と考えたい。

毎日新聞 2007年6月27日 東京朝刊

社説:賞与返納 おかしなけじめのつけ方だ

 未曽有の年金記録漏れ問題で、政府は社会保険庁の 全職員1万7000人に賞与の一部返納を求めることを決めた。返納額は長官が270万円、部長クラスで100万円、係長クラス7万~13万円、若手職員2 万~3万円になる。社保庁職員の労働組合は要求を受け入れる声明を出した。

 社保庁のずさん極まりない仕事ぶりに怒りは高まるばかりで、 何らかのけじめをつけるのは当然のことだ。労組も非を認めざるを得なかったのだろう。しかし、原因究明の作業が始まり、責任の所在が明確になっていない段 階で、ボーナス一律返納措置は何とも釈然としない。法律に基づいた処分ではなく、行政のトップの意向を優先させた超法規的対応といえる。参院選の逆風を弱 めようとの狙いも透けて見え、やるべきことをはき違えているという印象が強い。

 今回の措置はルールに基づいていないので、職員が任意で 国庫へ寄付した、という解釈をとるのだろう。責任ある立場の人はともかく、誇りを持って仕事に取り組んでいる若い職員は、突然の「命令」に立場上文句も言 えず、従わざるを得ないはずだ。トップの感情一つで「何でもあり」が許される風潮の広がることを憂う。

 塩崎恭久官房長官は記者会見で 「(社保庁では)信じられないようなずさんなことが行われてきた。首相も正直、怒っている」と述べ、社保庁全職員に及ぶ事実上の処分に安倍晋三首相の意向 が強く働いていることをほのめかした。政府が設置した「年金記録問題検証委員会」の結論が出る前に、職員全員に責任を負わせるような措置は、かえって責任 の所在を拡散させてしまうことにならないか。

 年金問題が発覚したあと、政界の景色は一変した。安倍内閣の支持率は急落し、自民党は参院 選で苦戦するだろうと伝えられている。首相にとってまさに年金ショックだったろうが、あたふたと対応策を繰り出すものだから、どれも浮ついたものになる。 今回の一律返納も、参院選前に国民の怒りを少しでもやわらげようという動機が丸見えなのだ。

 選挙向けのパフォーマンスに心をくだくよ り、政府が今やらなければならないことは、はっきりしている。(1)保険料を払ったはずなのに年金記録が残っていない人をいかにして救済するか(2)だれ に帰属するかわかっていない宙に浮いた記録を早急に統合させる(3)原因の究明と責任の所在を明らかにする--ことだ。ボーナスの返納よりこちらの方が優 先度が高いし、国民もそう望んでいるはずだ。

 29日の公務員ボーナス支給を控え、社保庁職員への全額支給は世論の猛反発を受けると、首相官邸内にあせりの気持ちが充満していたことは想像に難くない。しかし、ここは腰を据えて年金制度の不備にも思いをめぐらすべきだ。

 今回の教訓として、職員を悪者にするだけでなく、記録管理に不備は付きものとの前提に立ち、定期的に国民にチェックを受ける仕組みも必要とわかったはずだ。

 何事もせいては事を仕損じる。

毎日新聞 2007年6月27日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「のんこの茶碗…

 「のんこの茶碗(ちゃわん)、黄檗山金明竹(おうばくさんきんめいち く)、寸胴(ずんどう)の花活(はないけ)、『古池や蛙(カワズ)飛び込む水の音』とある風羅坊正筆の掛け物、沢庵・木庵・隠元禅師張交(はりま)ぜの小 屏風(こびょうぶ)……」。店番の与太郎に加賀屋の使いが骨董(こっとう)品を早口でまくし立てて主人に言づてしろという。落語「金明竹」だ▲結局与太郎 は加賀屋のだんなが道具を買わず(カワズ)に古池に飛び込んだと主人に伝えた。噺(はなし)を聞く客にも伝言はちんぷんかんぷんだが、「古池や」の句は耳 に残っているから笑える。客も与太郎の身になって一緒に伝言ゲームをしたような笑いだ▲伝言ゲームで人は、自分の関心を強く引きつけた言葉を中心に無意識 のうちに伝言を作り替えてしまう。やがて伝言は最初と似ても似つかぬものになるのだ。だがゲームならぬ現実で、人命にもかかわる重大な伝言がゆがめられる どころか途中消えてしまったのはどうしたことだろう▲東京の温泉くみ上げ施設爆発事故で、施設を運営する企業グループには天然ガスの危険性や安全対策の必 要が温泉調査会社などから伝えられていたという。だが情報は運営の現場にはまったく生かされていない。ガスの安全にかかわる情報だけがどこかですっぽり抜 け落ちたのである▲北海道の偽装牛ミンチ事件では、農林水産省に昨年の2月に寄せられた内部告発情報が行方不明になった。北海道庁に連絡したという農水省 と、連絡はないという道庁の間の水掛け論も見苦しい。確かなのは告発が偽装を食い止められなかった苦い現実だ▲骨董品を早口でまくし立てる口上ではあるま いし、天然ガスの危険や、食肉偽装などという重大な情報が、人の耳を素通りすることなどありうるのだろうか。もしそれら重大事がはなから関心の外だったと いうのなら言葉もない。

毎日新聞 2007年6月27日 東京朝刊


【読売・社説】

年金記録確認委 迅速、確実な権利回復が第一だ(6月27日付・読売社説)

 国民の年金受給権をいかに守るか。この委員会が担う役割は大きい。

 総務省に設置された「年金記録確認中央第三者委員会」が活動を開始した。

 記録確認委は、年金保険料を納めたはずなのに記録がなく、本人も領収書を保管していない、といった困難な事例を取り扱う。どんな資料や証言があれば納付が事実と認定するのか。来月中旬をめどに基本方針を示す。

 先に発足した「年金記録問題検証委員会」と両輪を成す第三者機関である。当然のことながら、信頼を失った厚生労働省及び社会保険庁は、両委員会の事務方から排除された。

 総務省が担当することになったのは、安倍首相の意向である。

 保険料をきちんと納めていたのに、年金を受給する権利が損なわれることがあってはならない。だが、あるはずの加入記録がない、と社保庁に申し立てても、保険料の領収書など“直接証拠”がないと、ほとんど門前払いにされてきた。

 現在でも、納得できない場合は社会保険審査会に持ち込めるが、社保庁の判断を覆した事例は極めて少ない。

 今後は、記録確認委が全国50か所に設置する地方委員会で申し立てを受け付ける。地方委で結論がでない場合は中央委に持ち込まれる。

 地方委を構成する弁護士や税理士、社会保険労務士などが、本人と協力して、雇用保険の加入記録や預金通帳の記載内容など、年金保険料を納めていたと推定できる“間接証拠”を探す。

 その結果、本人の主張に筋が通っていると判断すれば、年金記録の訂正を社保庁に勧告する。社保庁は記録確認委の判断に従う。

 委員長の梶谷剛・前日弁連会長は「調査は本人の申し立てを十分に汲(く)み取り、国民の目線で対応する」と語っている。申し立てを信用し尊重する、という姿勢は今後も貫くべきだ。

 嘘(うそ)の申告で不正受給をたくらむ者が現れる恐れはあるが、それを許さぬためにも地方委には経験豊かな元判事を起用するなど、人選が重要になる。

 安倍首相や柳沢厚労相、村瀬社保庁長官らは夏のボーナスを返上し、社保庁の全職員にも一部自主返納を求めるという。だが、これだけでけじめが付くというものではなかろう。

 年金制度への信頼を取り戻す方策は、迅速かつ確実に権利の回復を進めていく以外にない。説得力のある“判例”を積み上げていくことが、記録確認委には求められよう。
(2007年6月27日1時38分  読売新聞)

ブルドック 株主の反感かった投資ファンド(6月27日付・読売社説)

 一般株主の圧倒的多数が、目先の利益ではなく、企業の長期安定成長に軍配をあげた。日本の資本市場の健全性が浮き彫りになったのではないか。

 投資先企業に買収防衛策の撤回や大幅増配を求めている米系投資ファンド、スティール・パートナーズ・ジャパンが、株主総会で連敗している。

 スティールの株式公開買い付け(TOB)に対抗する防衛策導入の是非が問われたブルドックソースの総会では、約8割が会社提案の防衛策を支持した。より強い効力を持つ特別決議に必要な「3分の2以上の賛成」を大きく上回った。

 大幅増配が争われたブラザー工業と因幡電機産業では、スティールの株主提案が、いずれも大差で否決された。

 一連の総会の前、来日したスティールのリヒテンシュタイン代表は「我々は経営者との関係を重視する長期的な投資家だ」「日本の防衛策は世界最悪だ」などと述べた。ブルドックの株主にも、防衛策に反対することが「長期的な会社の利益になる」と支持を呼びかけていた。

 だが、その株主は「百年を超える企業に土足で入ってくるところは許せない」「具体的な経営構想を示していない」などと、スティールに強い反感を示した。株式を買い集めて強引な要求を突き付ける手法への拒絶反応と言えるだろう。

 総会は乗り切ったものの、ブルドックにはまだ難関が残されている。スティールが、防衛策発動の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請したからだ。

  ブルドックの防衛策は、〈1〉7月10日現在の株主に1株につき3株の新株予約権を割り当てる〈2〉ただし、スティールには権利の行使を認めず、ブルドッ クが約23億円で予約権を買い取る――というものだ。発動されれば、スティールの保有比率は約10%から3%未満に下がる。

 買収の動きを受けた防衛策については東京高裁が2005年、ライブドアに対するニッポン放送の防衛策を巡る裁判で経営者に厳しい判断を示している。

 買収者が自らの利益のために、会社の解体など企業価値を壊そうとしている場合を除き、事後的な防衛策は経営者の保身に当たり「著しく不公正」とした。

 ブルドックの裁判では、東京地裁がスティールの投資手法をどう判断するか、8割の賛成を集めた特別決議の重みをどう評価するか、などが注目される。

 日本企業2社がスティールに初めてTOBを仕掛けられた03年、動揺した2社は法外な増配に追い込まれた。防衛策で対抗するようになったのは一つの進歩だが、経営者はそれに安住せず、株主の支持を得るための努力を続けるべきだ。
(2007年6月27日1時37分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月27日付 編集手帳

 皿の魚を猫が失敬する。皿には魚のにおいが残って いる。あとからやってきた別の猫が皿をなめていると、家人にみつかり、とっちめられた◆その光景を見て古人は、人の世も同じだな、と感じたのだろう。「皿 なめた猫が科(とが)を負う」という慣用句が生まれた。「食い得」の猫がいれば「叩(たた)かれ損」の猫もいる、と◆年金記録漏れ問題の責任を取り、政府 は社会保険庁の全職員に賞与(ボーナス、期末・勤勉手当)の一部返納を求めるという。「賞」という文字も「勤勉」を冠した言葉も、まったくもって不似合い な役所であるのは分かっている◆分かっていてもその“処分”がどうも胸にしっくりこないのは、年金という魚を消失せしめたまま、役人人生を満腹のうちに終 えた「食い得」の猫がいれば、皿のそばにいるだけで咎(とが)めを受ける「叩かれ損」の猫もいるからだろう◆安倍政権という船はいま、時化(しけ)の海に 立ち往生している。人気取りの波よけ、風よけのつもりならば、世間を甘く見すぎている。社会保険庁に向けた首相の怒りが年金問題の着実な解決につながらな ければ、賞与返納に意味はない◆英語の猫「キャット」には、動詞で「錨(いかり)を揚げる」という意味もある。政権の肌を鋭い爪(つめ)で引っ掻(か)く か。波浪を鎮め、航海を再び始める一助となるか。奇策の答えはまだ出ない。
(2007年6月27日1時55分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】社保庁賞与返納 国民感情はおさまらない

 当然な行為であるが、これで帳消しにしたら国民は納得しないだろう。政府が社会保険庁の年金記録紛失問題の責任を取り、急遽(きゅうきょ)決定した夏のボーナス(29日支給予定)返納である。

  年金記録の紛失問題については、その原因を究明し、責任の所在を明らかにするため、第三者機関の検証委員会が問題点を洗い出している最中である。26日夜 も2回目の委員会が開かれた。秋には出される検証委の報告書を受け、政府が厳正な処分を下すことが肝要だ。それがけじめであり、国民の期待はそこにあるの ではないか。

 夏のボーナスについては、安倍晋三首相、塩崎恭久官房長官、柳沢伯夫厚生労働相などのほか、厚労省事務次官と社保庁長官も全額返納する。

 社保庁の1万7000人の全職員にも自主的に50%~5%の返納を求め、職員OBにも同じ程度の金額を国庫へ寄付するよう求めた。

 社保庁職員は仕事をまじめにこなさず、その結果、年金記録紛失などのさまざまな問題が露呈し、社保庁は“不祥事の百貨店”とまで揶揄(やゆ)され、国民の信頼を完全に失った。

 この社保庁が仮に民間企業だったらどうなるだろうか。ボーナス返納どころの事態では済まない。経営が行き詰まり、会社自体が存続しなくなる倒産の危機に直面する。株主に対する責任もある。給与カットは言うまでもないだろう。

 ただ、公務員の場合、法的に懲戒処分の対象とならない限り、減給はできない。それゆえ今回は、自主的返納となったという。

 社保庁問題の根っこには、労使の異常なまでの癒着がある。

  社保庁は年金記録システムのオンライン化を導入するため、昭和54年ごろから、仕事を制限する非常識な覚書を自治労国費評議会(現・全国社会保険職員労働 組合)といくつも結んできた。長官をはじめとする少数の厚労省キャリアは年金実務に疎いうえ、自らの出世を先に考え、この体質を改革しようとしなかった。

 こうした体質を改めるのが、職員を非公務員化して社保庁を解体する社保庁改革関連法案である。ぜひ、この法案を今国会で成立させ、社保庁を真に年金制度を支える組織に変えたい。

(2007/06/27 04:36)

【主張】総連差し押さえ 強制執行を突破口にせよ

 整理回収機構(RCC)の朝鮮総連に対する 627億円の債権回収問題で、東京地裁はRCCの強制執行の申し立てを認める決定を出し、RCCは総連中央本部(東京都千代田区)などを差し押さえる強制 執行の手続きに入った。また、債権回収をめぐる訴訟で敗訴した総連は控訴を断念した。

 これにより、北朝鮮の大使館的な機能を持ち在日朝鮮人のシンボル的な存在だった総連中央本部は、競売を経て明け渡されることが確実になった。当然の結末といえる。RCCは粛々と強制執行の手続きを実行すべきだ。

  総連が先の判決で敗訴する前に発覚した中央本部の仮装売買事件は、強制執行を免れるためのものだった。購入を引き受けた緒方重威元公安調査庁長官は「実質 的な大使館を守ってあげなければと思った」と話し、総連の代理人である土屋公献元日弁連会長も「在日の人が総連というよりどころを失ってしまう。何として も本拠は守らなければならない」と説明していた。

 もともと、この問題は破綻(はたん)した朝銀信用組合の不正融資事件に端を発してい る。この事件で朝鮮総連の当時の財政局長が警視庁に逮捕されるなど総連中枢が深くかかわっていたことが明らかになっている。朝銀信組の破綻処理には1兆円 を超える公的資金が投入された。公的なRCCが、それを回収するために総連中央本部を差し押さえるのは当たり前である。

 北朝鮮の大使館的な機能は、中央本部以外の場所でも可能だ。土屋、緒方両氏の説明は、強制執行の回避を正当化する理由にはなっていない。

  総連中央本部の仮装売買をめぐり、緒方元長官らが出資の裏付けがないまま総連側と売買契約を結んでいた疑いや、5年後に3億5000万円を上乗せした38 億5000万円で総連が買い戻し上乗せ額は緒方氏側の利益になる予定だった疑いも、新たに浮上している。疑惑は深まるばかりだ。

 緒方氏 は公安庁長官時代の平成6年3月の衆院予算委員会で、日本から北朝鮮に送られた金について「巷間(こうかん)600億円とか800億といわれている」と答 弁し、当時は「踏み込んだ発言」(警察関係者)と評価された。総連を通じた北への不正送金についても、検察当局などの徹底解明を期待する。

(2007/06/27 04:36)

【産経抄】

 戦前の爆笑王・桂春団治は、天才的な話術と破天荒な生き方でなにわの人気者だったが、希代のトラブルメーカーでもあった。昭和5年、所属していた吉本興業に無断でラジオに出演し、会社に損害を与えたと財産の差し押さえを食らったのである。

 ▼執行官が家財道具にぺたぺたと差し押さえの紙をはっていると、春団治はその1枚を破りとって自らの口にはった。わが口舌こそ最大の財産だと芸人の意地をみせ、ピンチをギャグに変えたこの逸話は、春団治伝説の白眉(はくび)だ。

 ▼家具や電化製品にまで差し押さえの紙をはられるくらい屈辱的なことはない、とは経験者の話である。きのう在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の活動拠点である中央本部が整理回収機構によって事実上、差し押さえられた。許宗萬責任副議長ら幹部のみなさんはさぞ悔しかろう。

 ▼ かつての朝鮮総連なら、商工人と呼ばれる在日の実業家から本部差し押さえを免れるため必要な数十億円のカネを即座にかき集められたはずだ。だが、日本人拉 致事件に対して真剣な反省をせず、本国の核実験強行になんの反対もしないでは、常識ある商工人たちの心が離れていったのも当然だ。

 ▼それにしても朝鮮総連経由で多額の献上金や贈り物を受け取ったはずの金正日ファミリーからまったく助け舟が出ないのは、どうしたことか。いまや総連に代わって韓国がコメや重油をせっせと運んでくれるからもう用はないのだろう。

 ▼米国のヒル国務次官補もお友達になってくれているから体制も安泰だ。将軍様にとってカネの切れ目が縁の切れ目なのだ。許副議長もいつまでも逃げ回っていないで真相を話されてはいかがだろう。それとも春団治ばりに口に差し押さえの紙でもはりますか。

(2007/06/27 04:36)


【日経・社説】

社説 談合根絶へ実効ある独禁法再改正を(6/27)

 官房長官が主宰する独占禁止法基本問題懇談会が独禁法違反企業への制裁強化を検討すべきだとの意見を盛り込んだ報告書をまとめた。

  競争政策の強化によって企業に技術革新やコスト削減を促すことは、消費者の利益を高め日本経済を強くする。経営者に入札談合やカルテルを断じて許さない仕 組みが不可欠だ。カルテルや談合に対する制裁強化は世界的な流れでもある。来年の国会では独禁法の再改正が予定されており、政府は違法根絶へ実効ある改正 案づくりを進めるべきである。

 制裁強化は世界の流れ

 現行の改正独禁法は2005年に成立、06年1月に施行した。改正に反対していた日本経団連や自民党の一部議員の意見をいれて2年後に見直すことになっていた。

 前回の改正は課徴金制度について算定率の引き上げや違反事実を公正取引委員会に申告した企業への減免制度など違反の摘発を容易にし、抑止力を強めることに重点をおいた。

  これが功を奏して旧首都高速道路公団のトンネル設備工事、国土交通省のダム用水門工事などの談合事件が摘発された。特に企業側の告白によって、あまり表に 出なかった官製談合が相次ぎ明るみに出た。とはいえ、名古屋市営地下鉄をめぐる談合など、改正法の施行後も違法行為が続いていた例がある。前回の法改正で 違反抑止力は高まったが、談合根絶にはなお十分とはいえまい。

 抑止力強化には第1に、事件を犯した企業にとって「割に合わない」水準にまで課徴金を上げることが必要だ。前回改正では大手製造業や建設業の課徴金算定率を違反で得た売上高の6%から10%にした。違反を繰り返した企業は15%に割り増し、早くやめれば8%に割り引く。

  それでも国際的にみると日本の課徴金はまだ低い。欧州連合(EU)の欧州委員会は1月、変電設備装置の国際カルテルで日欧10社に総額1200億円の制裁 金を命じた。独シーメンスには1社で610億円だ。米国はビタミン剤の国際カルテルでスイスのロシュに罰金5億ドルを科した。日本はごみ処理施設の談合で 5社に計270億円の課徴金の納付命令が出たのが最高だ。上限5億円の罰金を併科する可能性を考えても軽い。「談合は、ばれてもともと」という不届きな考 えを経営者が捨て去る水準にまで高めるのが妥当だ。

 懇談会は談合などで主導的役割を果たした企業に課徴金を加算する考え方を示した。主導的かどうかを判断するのは難しいが、もし客観性の高い判断基準をつくれるなら、課徴金の加算は十分検討に値する。

  第2に、課徴金の時効の延長が欠かせない。日本は3年だが、米国は5年、EUは当局が調査を始めるまでに5年、調査開始後さらに5年の通算10年だ。グ ローバル化で日本企業が国際カルテルに加担する例も増えており、そうした違反を摘発しやすくするためにも期間を欧米にそろえるのは急がれる課題である。

  また懇談会は重大な違反行為に対して課徴金という行政罰と刑事罰を併科する現状について、維持が適当とした。課徴金は違反行為の影響度に応じて金銭上の不 利益を課すもの、刑事罰は犯罪行為であることを明確にするもので、性格が異なる。また刑事罰は企業の名誉を著しく損なうから、違反を防ぐのには捨てがた い。脱税でも重加算税という行政処分と刑事罰が併存する。独禁法についても両方あって良いはずだ。

 また企業が極端な値下げなどで他社の 参入を妨げたり追い出したりする「排除型私的独占」や「優越的地位の乱用」などを新たに課徴金の対象とする考え方を述べている。これらの行為は実際には正 当な競争か不正かを区別しにくい。安売りは消費者にとってありがたいことでもある。課徴金をかける場合にはその基準を明確にしておくのが重要だ。

 審判制の透明性高めよ

 課徴金の納付命令などに企業側が納得できない場合に開く行政審判のあり方も論点となった。現在は公取委内の組織がその審判も手がけている。経団連は公取委が検事と裁判官の二役を兼ねているようなものだと主張し、審判を廃止して地方裁判所へ直接提訴する制度を求めている。

  行政不服審査は国民から見て透明性と独立性が確保されていることが不可欠だ。その点で経団連の主張には一理ある。だが、独禁法違反を裁くには専門性を必要 とするので、大型談合の摘発が相次いでいる現状を考えれば行政不服審判を残すのはやむを得ない。当面は法曹資格を持つ外部からの審判官(7人中4人)をさ らに増やすなど独立性を高める工夫が求められる。長期的には地裁への直接提訴方式も検討課題になろう。

 独禁法再改正の目標は納税者と消費者の利益をより高めることにおくべきだ。競争政策の強化を通じて企業の創意工夫を最大限引き出す仕組みを目指さなければならない。

【日経・春秋】(6/27)

 「感激に打ち震えながら、頭の中が徐々にはっきりしていく。ことばの神秘の扉が開かれたのである」。1歳半で視覚と聴覚を失ったヘレン・ケラーは、家庭教師のサリバン先生の助けで言葉というものを知った感覚を、そう自伝(新潮文庫)に書いている。

▼1880 年の今日が誕生日のヘレン・ケラーが「奇跡の人」として生まれ直したのは、サリバン先生の指が記す文字を手のひらで感じ取った、このときだ。「water が、私の手の上に流れ落ちる、このすてきな冷たいもののことだとわかった」瞬間に魂が目覚めたと回想するのだから。

▼安倍晋三首相、官房 長官、厚生労働相が、保険料記録漏れなどで「年金不安」を生じさせたのをわびて、夏の賞与を一部返上すると発表した。それなら私たちは全額を、と厚労次 官、社保庁長官が続き、社保庁では全職員に半額から5%の返納を呼び掛けた。反省を目に見える形で示し「けじめをつける」そうだ。

▼野党 幹部のようにパフォーマンスなどとけなすまい。ただ「奇跡の人」は、目に見えるものよりずっと強い力を言葉が持つことを教えてくれる。言葉によって「光と 希望と喜びを手にし、牢獄(ろうごく)から解放された」というほどだ。年金不安の深い闇は、政治が発する説明の言葉の“光”がなければなくせるものではな い。


↓おじさんの雑談も面白いジャンと思ったらクリック。(笑)
人気blogランキングバナー

OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60 CE OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60

販売元:オリンパス
発売日:2007/09/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月26日 (火)

6月26日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月26日朝刊)

[米艦船・与那国寄港]やはり理不尽で許せない

 「友好親善」という美辞の裏には「軍事調査」という牙が隠されていた、というべきだろう。米海軍佐世保基地(長崎県)所属の掃海艦ガーディアンとパトリオットの初の与那国寄港のことである。

 日本最西端の国境の島への寄港目的を米軍は「乗組員の休養と友好親善」と触れ込んだ。

 だが、実際は民間港湾の状況、燃料の調達方法、給水、医療や通信施設、クラブ、レストラン、ホテルの状況、はては「寄港反対運動」などの住民調査も盛り込まれていた。

 石垣市、竹富町を含め八重山の各離島は、中台紛争の台湾海峡有事の際、在留邦人や米国人の非戦闘員、台湾の避難民などの緊急避難先として利用される可能性が極めて高い。

 今回の米艦船の与那国寄港には、台湾海峡を間近に見据える与那国島を「布石」に、米軍が石垣港を軍事利用したいという意図が見え隠れしている。

 与那国の祖納港の現状は、掃海艦よりさらに大きい艦船は入港できない。しかし、石垣港なら台湾海峡にほど近く、検疫や出入国管理施設も備わり、大型艦船が入港できるからだ。

 二隻の掃海艦は、外間守吉与那国町長の「反対」や港湾管理者である県の「自粛要請」を押し切り、祖納港にあえて「接岸」し、艦内を一般公開した。その狙いが、町民の「軍事アレルギー」を解消、緩和させることにあるのは言うまでもない。

 米軍のやることを許せば、慣らされてしまいかねない、のは多くの県民が肌で感じているはずだ。日本政府も寄港の見返りにいずれ地域振興策を持ち出し、住民を懐柔するのは目に見えている。これから先がもっと危うい。

 外間町長は寄港に反対したが、崎原孫吉町議会議長は艦内での夕食会で歓迎の意を示すなど、人口千七百人の島の指導者の対応が分かれているのも悲しく、複雑な現実といえる。

 同町は、地理的に石垣島より近い台湾との交流拡大を目指し、チャーター船など外国船を受け入れる「開港」を日本政府に求め続けてきた。

 しかし、検疫や出入国管理の施設がなく、貨物量の実績も少ないため、開港されないのが現状だ。

 片や、米艦船は開港、不開港を問わず、国内の民間港湾に無料で入港する権利を日米地位協定第五条(港または飛行場への出入国)が保障している。

 民間港湾に限らず、民間空港も必要なときには無料で「自由使用」できるようになっており、米軍だけは常に特別扱いである。

 やはり、理不尽であり許せない。

[スポーツ特待制度]肝要なのは学業との両立

 プロ野球西武の裏金問題に端を発した日本学生野球憲章に違反するスポーツ特待制度問題は、日本高野連が二十六日に開く特待生問題私学検討部会で本格的な議論が始まる。

 県内二校を含む三百七十六校がスポーツ特待制度を実施していたことが日本高野連の全国実態調査で分かり、あらためて「スポーツと金」の問題の根の深さに驚かされた。が、スポーツ特待制度イコール悪、でないことは言うまでもない。

 頂点にプロの組織を擁する野球、サッカーなどに限らず、スポーツを志す小・中学生にとって、選手育成に定評のある指導者がいる高校に行けるかどうかは、今後の選手生活を左右する重要なターニングポイントだ。

 高校が同一都道府県内にあるならまだいい。それが保護者の元を遠く離れて行かざるを得ない場合、保護者の経済的負担は相当なもの。特待制度が活用できれば、保護者も助かり当人も将来に希望が持てる。

 スポーツにたぐいまれな素質をもった者が、保護者の経済力のなさで日の目を見ないのは大きな損失だ。学業に秀でた者と同様に、体育に優れた人材にもさまざまな恩典があっていい。

 もちろん当該スポーツばかりできても駄目だ。学生の本分である学業も、優秀といかないまでも平均以上の力がないと真の学生アスリートとはいえない。特待制度で学べる環境を得るには学生としての本分もしっかり持った上でないと認めるべきでない。

 自民党の取りまとめた提言、「部活動の趣旨を損なわずに公平、公正で透明性のある特待制度は認められるべきだ」は議論に値する。

 検討部会には来年度の新入生募集要項作成のための早急な基準作りが迫られているが、間に合わせのための付け焼き刃的であいまいな基準では、ファンや父母、関係者の賛同が得られないのは明らかだ。

 ここは、有識者による第三者機関を発足させて抜本的な基準作りに着手するのが肝要だろう。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月26日 朝刊 1面)

 新聞は多くの人たちの支えを得て成り立っている。なかでも新聞の質を左右する情報を得るのは大変重要である。

 地域に密着した通信員も欠かせない存在だ。本紙には、本島や離島、海外を含め総勢六十人近い通信員がおり、本社や支社・支局の記者が対応できない地域のニュースを日々取材してもらい、紙面に反映させている。

 特筆されるのは、世界中の国々や地域に住むウチナーンチュ・県系約三十六万人を取材する海外通信員だ。世界でも例を見ない貴重なネットワークで、二十人以上の通信員が郵便やインターネットの電子メールを使い、現地から最新情報を届けてくれる。

 最長老は二十四日に亡くなったブラジルの宮城松成さんだった。一九七四年、本紙の海外通信員第一号となり、県系社会の動きを余すことなく伝えてきた。市井の人を取り上げて記事にする人で、掘り起こした秘話は枚挙にいとまがない。

 宮城さんは本部町瀬底島生まれ。三七年に移住し、コーヒー園の小作から行商を経て会社等を経営。その一方で、県人会役員やブラジル沖縄文化資料館長を務めるなど県系社会の結束と発展に尽力してきた。

 九十歳を超えても毎週二本の記事を郵送するほどまめで、訃報直前にも記事が届いた。海邦国体参観でブラジル生まれの二男と来沖し、古里・瀬底島で先祖の話をしていたのが印象的だ。沖縄や本紙はそんな愛郷心の強い人たちに支えられている。(福島輝一)


【琉球新報・社説】

参院選挙 政治への関心が生活守る

 開会中の国会は終盤戦。参院選挙を目前に控え、与野党の攻防が激しさを増してきた。
 年金記録不備問題などで与党は守勢に立たされている。安倍晋三首相の内閣支持率は低下が続く。安倍政権が国民の信頼を回復できる政策を打ち出せるか、どうかが、選挙戦を左右する。
 地域の選挙戦も徐々に熱くなりつつある。安倍首相の支持率急落が地域までどう影響するのかが焦点の一つだ。
  7月12日公示、同29日投開票予定の参院選沖縄選挙区(改選1議席)に向けて、立候補を予定している現職の西銘順志郎氏(自民公認、公明推薦)、前職の 糸数慶子氏(無所属、社民、社大、共産、民主推薦)が24日、琉球新報社など主催の「公開討論会」で、論戦を交わした。
 今選挙戦に向けての初の公開討論会となった。両氏は同日、基本政策も発表した。論戦はいよいよ本格化してきた。有権者は自分たちの生活にも直結する政治に関心を持って、論戦に耳を傾けたい。
  公開討論会で西銘氏は普天間代替基地について、「最も重要なことは普天間の危険性の除去。何としても早急にやらなければならない。県内移設も一つの選択 肢。知事と連携し、3年をめどとした閉鎖状態に持っていくことに全力で頑張る」。糸数氏は「沖合に寄せろといっても、沖縄の海に基地を造ることに変わりは ない。県内移設は認めない。辺野古ではなく、グアムに移すことにもっと力を入れるべきだ」と県内移設に反対を表明。両氏の主張は対立する。
 憲法改正の問題では、西銘氏は「憲法制定から60年、マッチしない部分もある。特に環境権の問題、個人情報保護の観点などは国民投票で判断を仰がなくてはならない」などと加憲を訴える。
 糸数氏は「憲法の改悪には反対。現憲法は県民、国民の暮らしに何か不都合があるのか。憲法は間違った方向に向かわないようにする指針。改悪されると戦争のできる国へと向かう」と護憲の立場だ。
 カジノ導入でも意見が対立する。西銘氏が賛成、糸数氏は反対の立場だ。
  基本政策では、西銘氏は「沖縄の自立発展をキーワードに、沖縄の持つ優位性を発揮し、日本の中の沖縄、世界にはばたく美ら島沖縄をつくる」。糸数氏は「争 点は平和と暮らしの問題。新たな基地建設を許さず、沖縄のことは沖縄が決めるという自己決定権を確立していく」。西銘氏が「自立」、糸数氏は「平和」を中 心に訴える。
 投票日までは後1カ月余。私たち有権者は各候補者、陣営の政策を見極め、貴重な1票の権利を行使したい。

(6/26 9:52)

欧州憲法改定 再び動きだした政治統合

 欧州連合(EU)の首脳会議は、発効の見通しが立たなくなっていた新基本条約「欧州憲法」を改定する方針で合意した。改定する新基本条約は2年後の2009年の発効を目指す。
 EUは約4億9千万人の統合市場を背景に、経済的には影響力を強めてきているが、政治的には05年のフランスとオランダの国民投票で憲法批准が否決された後、停滞していた。ここに来て、政治的統合も再び動きだすことになった。
 今回の首脳会議では、ポーランドと英国が早期合意に反対し、最後まで波乱続きだった。ポーランドは意思決定方式が人口の多い国に有利だとして、強硬に反対していたが、議長国ドイツのメルケル首相の粘り強い説得などで、合意が成立した。
 メルケル首相は「交渉過程で多くの妥協を強いられたが、最悪の危機は脱することができた」と評した。
  新基本条約は、未批准国の抵抗が強かった「憲法」の呼称を外し、内容も簡素化した。半年ごとに交代している欧州理事会(首脳会議)議長を、任期2年半の常 任議長にすることは憲法どおり。欧州委員会の副委員長を兼務する「EU外相」の名称は、「外交安保上級代表」のまま据え置かれる。
 「憲法」「外相」の名称を見送ったのは政治統合を嫌う英国などの国民感情に対する妥協ともいわれる。ポーランドが反対していた人口の多い大国が有利な採決方式の実施は、17年まで先延ばしされた。
 全会一致が原則だった内務・司法分野でも、多数決方式を採用するが、これに加わらない自由も認められた。意思一致する国だけがけん引車となる「先行統合」となる。後から統合に加わる2速度方式の道が開かれた。
 新条約を発効させるため、7月に政府間会議を開始、12月に調印し、欧州議会選挙のある09年に発効させる日程も確認した。
 結束を強めるEUの今後の動向は世界の政治・経済に影響を与えるだけに注目される。

(6/26 9:51)

【琉球新報・金口木舌】

なし


【東京新聞・社説】

フェロシルト 『会社ぐるみ』の犯行だ

2007年6月26日

 有害物質を含む石原産業の土壌埋め戻し材「フェロシルト」を大量に野に埋めた産業廃棄物不法投棄事件で、津地裁は直接関与した元副工場長に実刑、同社にも罰金を科した。当然の判決だ。

 判決はこう述べている。「会社(石原産業)の対応は、会社の社会的責任を忘れ、従業員に法令順守を徹底する責務を放棄し、被告人らに犯行の責任を負担させながら、会社の経済的利益を追求したものと言わざるを得ない」。そして「会社の刑事責任は重い」と断じた。

 そもそも廃棄物処理法は、産業廃棄物の処理責任を事業者に課している。不法投棄と判断されれば、よほどのことがない限り、両罰規定による会社の責任は免れない。

 一連のフェロシルト事件は、産廃不法投棄の責任の所在を論ずる上で、全体的な悪質性が極めて高い。

  三重県のリサイクル認定品だったフェロシルトの材料に、別の工程から出る無届けの廃液を混入して産廃としての処理費を浮かせていたことといい、それを“販 売”する際に「用途開発費」などの名目で買値をはるかに上回る金額を売り手に渡していた「逆有償」の実態といい、どう見ても「会社ぐるみ」の犯行だが、経 営トップにまで刑事責任が及ばなかったことにはやはり疑問が残る。

 石原産業は一九七二年、四日市公害訴訟の被告企業の一員として、津地裁四日市支部に損害賠償の支払いを命じられるなど、公害の責任を法廷で問われるのはこれで三度目だ。

 かつて、産廃は闇を流れるものだった。臭いものにふたをすることも容易だったに違いない。

 だが、今は時代が違う。環境問題に対する消費者の意識は格段に高くなり、汚染企業に対する住民の監視の目は厳しくなった。

 廃棄物の不法投棄は国際的な問題になり、政府もアジアにおける資源循環システムの構築に意欲を見せている。

 環境問題は、情報の開示と共有により社会全体で解決すべき時代になった。こうした流れを無視する企業は、早晩消えていくしかない。

 石原産業は目先の利益追求に執着するあまり、罰金よりはるかに重い代償を支払った。「社会的信用の失墜」という代償だ。

 企業が利益を追求するのは当然だが、ルールや法令順守はその大前提だ。ところが、北海道の食肉偽装事件のように、嘘(うそ)に嘘を重ねた揚げ句、企業の存立そのものを危うくするような不祥事は、後を絶たない。

 判決は、環境問題だけでなく、企業が本来あるべき姿を問うている。

英新首相 独仏と連携が不可欠だ

2007年6月26日

 英国のブラウン新政権が二十七日に発足する。新首相の経済財政手腕は評価されているが、外交力量は未知数だ。欧州連合(EU)が政治統合へ再び動きだす中で、独仏との連携が欠かせない。

 ブラウン財務相は労働党の臨時党大会で、退任するブレア首相に代わって新党首に選出され、エリザベス女王から新首相に任命される。

 党首受諾演説でブラウン氏は「党を率い国を変えることに大きな責任を感じている」と表明し、ブレア氏も「偉大な首相となる資質を有している」と賛辞を贈った。

 何かにつけて、両氏はよく比較される。ブレア氏が派手な行動と演説で国民を引きつけてきたのに対しブラウン氏は地味な性格で、ブレア氏ほどのカリスマ性はないが、首相就任までの十年が物語るように忍耐強い。ブレア政権下で英国の繁栄を維持してきた手堅さには定評がある。

  新政権の第一の仕事は、イラク戦争で分裂した労働党内の融和と国民の信頼回復だ。ブラウン氏は党大会で党内の結束を促し「イラク戦争の教訓に学ぶ」として 「変革と挑戦」に対応していく決意を示している。当面は、国民保健制度の改革、教育の拡充など、ブレア政権の残した内政課題に取り組まざるを得まい。

 最近の世論調査によると、ブラウン氏への支持率が野党・保守党のキャメロン党首を大きく引き離し、新政権への期待をにじませている。

 新政権の内政は、教育、イラク問題などを抱える日本にとっても人ごとではない。

 ブレア首相が出席したEU首脳会議は「改革条約」に合意した。EU大統領、外交安保上級代表(実質的なEU外相)の新設、政策決定への投票制など、拡大に伴うEUの制度を整備し、経済統合に続いて「政治統合」を促進する決定だ。

 首脳会議はポーランドなどの異議にもめにもめたが、最終的に加盟国の譲歩と妥協で合意にこぎ着けた。議長国ドイツのメルケル首相は先の主要国首脳会議に次いで指導力を発揮し、サルコジ・フランス大統領が各国首脳を説得するなど、これまでのような「独仏枢軸」が復活した。

 EUは気候変動、中東和平などの諸課題に対してEUとしての外交を強化し、国際社会での影響力増大を図る戦略にある。その前提は英独仏三カ国の緊密な協力関係だ。

 現代の外交には首脳の個性が反映される。ブラウン氏はブレア外交を継承すると言明した。英国が、米国とともに独仏とどう緊密な関係を築くか、新政権の外交を注視したい。

【東京新聞・筆洗】2007年6月26日

 「コンプライアンス」という言葉自体は定着している のだろうが、概念を短い日本語で表すのは難しい。一般的には「法令順守」と訳されるのだが、弁護士の浜辺陽一郎さんはこの訳に「少し誤ったニュアンスを伝 えてしまう危険性を孕(はら)む」と否定的だ。法令だけをとにかく守ればいいなどと理解されては困るからだ▼浜辺さんはコンプライアンスを考えるときは 「最終的に完全な物やサービスを提供しようとする誠実な姿勢こそが大事」と説いている(「コンプライアンスの考え方」中公新書)。誠実は正直と言い換えて もいいのだろう。それが企業の信頼につながる▼北海道苫小牧市の食肉加工卸会社「ミートホープ」に捜査のメスが入った。豚肉などを混ぜたひき肉を「牛ミン チ」として出荷していたことが疑惑の発端だが、時間の経過とともに産地やブランド、賞味期限の偽装と背信行為は底なしの様相を呈している▼田中稔社長はひ き肉の偽装を始めた七、八年前には違法の認識がなかったと説明している。だから問題はないと言いたいのだろうか。疑惑発覚後は責任転嫁の発言を繰り返して おり、「コンプライアンス以前」の経営者に見える▼従業員はいつか露見するとおびえながら、偽装を続けることに悩んでいたとの証言がある。内部告発に踏み 切った人もいるが、それでも多くの人がワンマンの社長に逆らうことができなかった。人間は弱いものだと思う▼食品業界だけでなく、企業の不祥事には「ミー トホープ」に似た構図が少なくない。誠実と正直の価値に光をあてたい。


【河北新報・社説】

牛ミンチ偽装事件/食品安全行政を立て直せ

 あきれ返るというよりも、気分が悪くなるような食品偽装事件だ。北海道苫小牧市の食肉加工販売会社「ミートホープ」の悪質さは想像を超える。

 肉の種類や産地を偽ったばかりか、牛の血でミンチ(ひき肉)を着色するという疑いまで明らかになっている。一般消費者が及びもつかない手口であり、こんな肉が出回ってはたまったものではない。

 北海道警は不正競争防止法違反の容疑で捜査に乗り出した。偽装の実態はもちろん、経営層の関与や不当に得た利益などの解明を目指すべきだ。

 捜査と並行して食の安全に関する行政の監視機能を見直すことが迫られている。ミート社の不正については、これまで何度も情報提供があったのに放置する結果になった。行政側の無責任体質も追放しなければ再発防止は無理だろう。

 ミート社に対する直接の容疑は、豚や鶏の肉を混ぜながら牛のミンチと偽り、取引相手の「北海道加ト吉」に販売した疑い。同社製の牛肉コロッケを扱っていた日本生活協同組合連合会や加ト吉のDNA鑑定では、豚や鶏の肉が混入されていたことが分かっている。

 中には全量豚肉だったものもあったし、牛肉も豚肉も検出されず、鶏か羊のミンチで作られたと思われる「牛肉コロッケ」もあった。

 ミンチにすれば元が何の肉か簡単には分からないだろうと、高をくくっていたのだろうか。確かにその通りだし、冷凍食品に加工されたらなおさら分かりづらい。

 だからこそ、食品業者は表示した品質を守る責務があるわけだ。取引企業や消費者との最低限の約束事であり、ごまかした責任は重い。豚の心臓を使ったり牛の血や脂まで利用したりする手口は、弁解のしようがないあくどさだ。

 農水省の立ち入り検査では、牛や豚の内臓の混入ばかりか、産地や賞味期限の改ざんも判明している。

 事件は企業体質だけの問題では済まされない。農水省や北海道庁の無作為責任も追及されるべきだ。昨年4月、ミート社の元役員が偽装されたミンチの現物を農水省の出先に持参したのに、職員は「証拠にならない」と取り合わなかったという。

  その2カ月ほど前にも農水省側に情報提供があり、「道庁所管の業者」と北海道に調査を要請したが、道は「要請された事実はない」と食い違っている。農水省 担当の広域業者として自ら調査すべきだった。苫小牧保健所にも昨年8月に内部告発があったのに、具体的な対応を取っていない。

 立て続けに起きた不手際は、行政の意欲と能力の欠如を示しているのではないか。食の安全を脅かす問題は今に始まったわけではなく、雪印乳業による大規模食中毒や丸紅畜産の鶏肉偽装があったし、昨年は不二家の不正も発覚した。

 それなのにまだこの鈍さでは無策に等しい。行政側は経緯と対応を包み隠さず明らかにしなければならない。
2007年06月26日火曜日

【河北新報・河北春秋】

 牛のひき肉に豚肉を混ぜる羊頭狗肉(くにく)のみみっちい手口を手始めに、出るわ出るわ。血で着色したり、水を注射して増量したりの悪質な数々。 北海道の食肉加工業「ミートホープ」の偽装はやりたい放題だ▼社長の「業界全体が悪い。消費者も安いものばかり求めるから…」という言い訳は無論のこと、 やり口が実に不快な感じを消費者に与える。商取引を支える信頼をこれほどばかにした例はない

 ▼ これを使った商品は主に各地の生協が販売していた。残留農薬や添加物など食品の安全性に関しては厳しいチェックを敷く。しかし、牛肉と表示された製品が本 当にそうかといった検査は行っていない▼当然のことだ。私たちの社会はある程度の善意と信頼を前提に成立している。いちいち疑って掛かってはきりがないか らだ。偽装肉の検査など思いもよらない。生協も被害者だろう

 ▼雪印食品、スターゼン、全農チキンフーズ、丸紅畜産などによる牛肉や鶏肉 の偽装。過去には類似した事件が多数発覚している。これらを尻目にミート社はぬけぬけと偽装を続けていたことになる▼食品を扱う資格のない会社が食品を手 掛けていた。不正競争防止法の虚偽表示というレベルの問題では既にない。社員の解雇を発表したが、さっさと業界から退場してもらうしかあるまい。

2007年06月26日火曜日


【京都新聞・社説】

中小企業再生  もっと幅広く、柔軟に

 破たん寸前にある中小企業を支援し、再び軌道に乗せる国の再生計画事業が京都府内で順調に推移している。
 再生計画の適用を受けた企業数は、二〇〇三年の産業活力再生法施行後、計四十三社(三月末現在)にのぼり、近畿八府県でトップとなった。
 二位の大阪・兵庫(各三十一社)を大きく上回っており、地元としては胸を張ってよい数字といえそうだ。
 国は都道府県に中小企業再生支援協議会を設置している。京都では、地元金融機関や商工会議所、府などが協議会のメンバーに名を連ね、公認会計士、税理士らが再生計画策定に加わっている。
 再生支援を受けた府内の企業のうち、製造業が四割を占める。このあと卸・小売、飲食旅館の順で続き、伝統技術を受け継ぐ老舗も目立つ。
 全国有数の産業機械の製造技術を持ちながら、不動産投資の失敗や地元二信組の破たんで資金調達できず、倒産寸前に追い込まれていた企業もあった。
 再生計画によって、大手ホテルとの業務提携やネット活用による外国人観光客呼び込みなどの事業展開で、息を吹き返した料理旅館もある。
 これらの企業再生によって、従業員二千三百三十二人の雇用が守られたというのは大きな収穫だった。
 今のところ再生計画策定後の破たんも起きておらず、全国でも再生計画づくりの優等生といえそうだ。
 京都の協議会の中では、地元金融機関と京都信用保証協会が、「再生担当者会議」を独自に設置している。
 担当者会議では、担当者らが企業の実情と潜在能力を分析し、債務返済や融資継続の実務面で意見を交わす。協議会で事業存続が可能と判断されれば、再生に向けての青写真を描く。きめ細かな対応が功を奏したようだ。
 とはいえ、再生計画の対象となった中小企業はほんのひと握りに過ぎない。再生計画で支援を受けるには、地域の中核企業であることなど、一定の条件を満たすことが必要でハードルが高いからだ。
 協議会事務局が相談を受け付けた計百八十五社のうちの約四分の一にとどまっている。しかも売上高一億円以下の企業は二割に満たなかった。
 景気回復感に乏しく、倒産も相次ぐなど、今も中小企業を取り巻く状況は厳しい。必要なのは、優れた技術と意欲を持つ中小零細企業をもっと幅広く支える仕組みではないか。
 政府は、この再生計画事業とは別に、企業支援策として「地域力再生機構」の創設を決めた。新たな機構づくりより、今の協議会に何が足りないのかを見つめ直し、充実させるのが先決だ。
 京都では、再生計画で積み上げてきた手法をさらに柔軟に活用し、地元の中小零細企業の破たん防止など、身近な再生支援策としてその機能を生かしたい。

[京都新聞 2007年06月26日掲載]

ミート社不正  消費者無視の悪質偽装

 出るわ出るわ、悪質な偽装のオンパレードだ。ひき肉偽装事件で北海道警の捜索を受けた苫小牧市の食品加工販売会社「ミートホープ」の不正行為が次々に発覚している。
 消費者を食い物にした故意の不正に強い憤りを覚える。食品業界からの退場は当然だ。同時に、内部告発を受けながら不問に付していた行政の責任も見逃せない。
 同社が、豚肉を混ぜたひき肉を「牛ミンチ」として出荷した疑いが判明したのは今月二十日。当初は自らの関与を否定していた田中稔社長だったが、不正が次々と明らかになる過程で、自らが不正行為を主導していたことを認めた。
  具体的な疑惑は、▽牛ミンチの原料に豚の肉や心臓などを混ぜた原料偽装▽ブラジル産鶏肉を国産と偽って学校給食用に卸した産地偽装▽他社の国産鶏肉の袋を 偽造して安い外国産鶏肉を詰め販売したブランド偽装▽買い取った冷凍食品の賞味期限を書き換えて転売した賞味期限偽装-などだ。
 さらには、取引先からのクレームで返品があった場合などに支払われる損害保険金を不正受給した疑いも出てきた。
 いずれも手の込んだ悪質さだ。同社が操業を始めた約三十年前から、さまざまな偽装を続けてきたとの元幹部証言もある。本当なら、同社は消費者を欺く詐欺的行為を利益追求のけん引役にしてきたことになる。順法精神や企業倫理以前の経営姿勢といえよう。
 北海道警は、不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で関係先を家宅捜索した。詐欺容疑も当然、視野に入ろう。
 一連の不正には取引先の「北海道加ト吉」(北海道赤平市)の関与も疑われ、同じく捜索を受けた。偽装牛ミンチの一部は同社で加工され、「牛肉コロッケ」として日本生活協同組合連合会(生協)ブランドで全国販売されていた。
 食の安全が売り物の生協自身に対しても、加入者の憤りは強い。生協の安全対策も見直しが迫られよう。
 それ以上に見過ごせないのが行政の不作為だ。農水省は昨年二月、ミート社が日本農林規格(JAS)法に違反しているとの情報提供を受けながら「北海道庁所管の業者だ」との誤った判断で調査を行わなかった。
 苫小牧保健所には昨年八月、「牛肉に他の食肉が混入している」との内部告発も寄せられたが、保健所は具体的な対策をとらなかったという。
 ミート社が不正を続けている期間中には、雪印食品など食の安全にかかわる数多くの企業不祥事が起きている。その教訓も生かされていなかった。
 一連の不正が、どこまで広がるのかはまだ分からないが、製造業者から加工、販売業者、行政まで、不正がすり抜けてしまった現実は、うすら寒い。
 事件の徹底解明を急いだ上で、責任の追及と再発防止策をたてる必要がある。

[京都新聞 2007年06月26日掲載]

【京都新聞・凡語】

中間報告

 国会には「中間報告」という秘策がある。法案の委員会採決を飛ばし、本会議でいっき に成立を図るという荒っぽい手法だ▼週明けから延長国会が始まった。会期延長に対する野党側の反発で、焦点の国家公務員法改正案は、審議する参院内閣委の 開催めどがたたない。委員長ポストは民主党が握り、与党の採決強行も難しい▼そんな中与党内で「中間報告」がささやかれる。審議の遅延や放置などで会期内 の議決が困難な場合に、国会法で認められた措置だ。だが、異例、非常手段に変わりない▼もともと「審議時間が足りない」と抵抗する参院自民党を押しのけ、 官邸主導で送り込まれた公務員法改正案だ。延長国会の混迷は予想された事態。事前に”禁じ手“も視野に強行突破を狙っているとすれば、二院制を無視した話 ▼ことしは参院創設六十周年。衆院の「数の政治」に対し「補完と抑制」が参院の本来の立場だ。ここで「良識の府」としての知恵を出さないと、「衆院のカー ボンコピー」批判は免れない。議会政治の信頼は失墜し、年金不信も加速しよう▼会期延長の際、扇千景議長はボソボソ不満を漏らした。「いつも、最後のしわ 寄せが参院に来て、落ち着いた審議ができない。不本意だ」。今期で引退する扇氏。持ち味の歯に衣(きぬ)着せぬ発言とよく通る声で、与野党を冷静にする手 綱さばきを見せてほしい。

[京都新聞 2007年06月26日掲載]


【朝日・社説】2007年06月26日(火曜日)付

温暖化対策―途上国を巻き込む知恵を

 中国の二酸化炭素(CO2)排出量が06年、米国を抜いて世界最大になった。そんな試算をオランダの調査機関が発表した。中国をはじめ、インドやブラジルなどの新興工業国を温暖化防止の枠組みにどのように取り込むか。この議論を早く詰めなくてはならない。

 こうした国々は人口が多く、成長に伴ってCO2の排出量が急増すると予想される。2030年の排出量は、中国、インド両国だけで世界の3割を超えると国際機関は予測している。

 先進国はこれまでの発展の過程で大量の温室効果ガスを出してきた。途上国も同じように発展する権利がある。だから、まず先進国側がより大きな責任を負うべきだ。こうした途上国側の言い分を京都議定書は受け入れ、先進国だけに排出削減義務を課した。

 実際、1人あたりのCO2排出量では、中国は米国の5分の1、インドは19分の1しかない。先進国と同じ土俵で削減義務を言われても困る、という主張は分からないではない。

 だが、地球温暖化の脅威は、そんな事情とは無関係に広がっていく。気候変動枠組み条約は、先進国と途上国が「共通だが、差異ある責任」を負うとしている。この途上国の責任をどのように具体化するか。それが「ポスト京都議定書」の枠組みづくりの大きな課題である。

 とりわけ重要なのは新興工業国の取り組みだ。中国はこのところ、「ポスト京都」で応分の責任を果たす姿勢を見せている。地球環境への配慮なしに持続的な発展は望めない、との危機感があるのだろう。歓迎すべき動きだ。

 私たちはさきに発表した「提言 日本の新戦略」の社説で、中国やインドなどに排出抑制の義務を負うよう促すのが日本の環境外交の役割だと主張した。

 そのために、省エネ技術や公害対策で積極的に協力の手を差し伸べるべきだ。先進国と同じように「エネルギーがぶ飲み」の経済構造をつくる必要はない。最初から省エネ型の経済社会を建設するよう支援していく。それが中国などにとっても、地球にとっても利益になる。

 政府の途上国援助(ODA)をこの面で有効に使いたい。技術の移転にあたっては、日本企業の知的財産権をきちんと守る仕組みも考えなければならない。

 「ポスト京都」をめぐる論議は、この秋から本格化する。米国が主宰する国際会議を含め、先進国と主要途上国による協議が続き、年末には国連の気候変動枠組み条約締約国会議がインドネシアで開かれる。

 少なくとも、中国など新興工業国が参加する形で排出を抑制、削減する枠組みを目指す。何らかの義務づけを考える。こうした基本については、年内に合意にこぎつけたい。

 来年の洞爺湖サミットを価値あるものにするためにも、政府は途上国の参加を後押しするような知恵を出すべきだ。

東証の新体制―世界が評価する市場に

 東京証券取引所が新たなスタートを切った。先週の株主総会と取締役会で、野村証券副社長や産業再生機構社長を歴任した斉藤惇氏が新社長に就任した。

 東証トップには、旧大蔵省OBが長らく座ってきた。ここ3年は東証の生え抜き社長、次いで、東芝出身の西室泰三会長がシステム障害を機に社長も兼ねた。証券会社出身は実に46年ぶりだ。

 東証は日本の資本市場の中核だが、内外に難題が山積している。斉藤新社長は米ウォール街の市場でもまれてきた。その実務経験を生かし、スピーディーな経営のかじ取りを期待したい。

  世界のマネーの流れの中で、東証の存在感が低下している。国内の景気は戦後最長を更新しているのに、株価の伸びはいまひとつ。東証は上場企業の時価総額こ そ世界2位を保っているものの、絶好調の米国市場と、バブル的な過熱に沸く中国などアジア市場に挟まれ、谷間のような状況に甘んじている。

 西室前社長はニューヨーク、ロンドン、シンガポールの各市場などとの国際提携を進めた。しかし、東証の地盤を底上げできるか、はっきりしない。

 一方、国内の投資家を引きつける魅力も物足りない。1500兆円もある個人金融資産は、有利な投資対象を求めて海外に流出する動きが目立つ。

 内外の投資家の眼鏡にかなう資金運用の場となるには、魅力的な投資商品をそろえるといった対策が急務だ。

 政府が工業原料や農産物、金融先物などの各取引所と東証を一体化した「総合取引所」構想を打ち出したが、統合するには時間がかかる。まずは東証が他の取引所と連携して、株式以外へも対象を広げ、投資しやすい商品づくりを進めることが先決だろう。

 新興企業向け市場マザーズの立て直しも急がれる。昨年のライブドアショックで相場崩壊ともいえる打撃を受けて低迷している。上場審査の厳格化や不適格な企業の退場により、投資家の信頼を取り戻さなければならない。

 東証は今秋、持ち株会社に移行する。経営を統括する持ち株会社の下に、株式市場を運営する子会社と、市場ルールをつかさどる自主規制法人ができる。斉藤氏は持ち株会社と市場運営子会社の社長を務めるが、自主規制法人のトップには財務省OBの林正和氏が就く。

  自主規制法人は、ルールに基づき上場審査や売買監視を担う。裏方のようにみえるが、世界の取引所と「品質競争」をするのが実はこの分野だ。取引を公正に保 つだけでなく、現行ルールの問題点を洗い出し、ルールを常に改善するには、自主規制法人が高い能力と鋭い感度を保つことが欠かせない。

 そのトップに天下り官僚が座るのは、適任とはいいがたい。「役所以上にお役所的」と評される東証を改革し、日本の証券市場の地位を回復できるか。斉藤新社長の手綱さばきが問われよう。

【朝日・天声人語】2007年06月26日(火曜日)付

 ストレスの多い職場では「のむ」「うつ」「かう」がはやると聞いたことがある。昔ながらの三拍子ではない。当節、「のむ」のは胃腸薬や胃カメラ、「うつ」は博打(ばくち)ではなく「うつ病」なのだそうだ。

 「かう」のは宝くじである。「当たったら辞めてやる」。晴ればれと辞表を差し出す我が姿を、誰でも一度ぐらいは夢見たことがあろう。だが、まずは当たらないから、幸か不幸か今日のレールは明日も続く。

 うらやましい6億円の大当たりが、それも2本、スポーツ振興くじ(サッカーくじ)で出た。日本のくじ史上で、最高の額という。Jリーグ14試合の勝ち負けが、すべて的中した。確率は約480万分の1というから、針の穴を通り抜けたようなものだ。

 老婆心ながら、在米中の取材を思い出す。くじで当時米史上最高の3億ドル余(約370億円)を当てた男性がいた。満面の笑みが報じられた何カ月か後、風俗クラブで泥酔して約3000万円を盗まれ、再びニュースになった。

 生活が一変したらしい。「大金を持ち歩き、歓楽やギャンブルに入りびたり」と警察はあきれ顔。仏の詩人コクトーの皮肉、「金持ちになった貧乏人は、贅沢(ぜいたく)な貧しさをひけらかすだろう」(「恐るべき子供たち」)が頭をよぎったものだ。

 人の幸運を「禍福はあざなえる縄」と見るのは、運つたなき者のひがみか。濡れ手で粟を夢見て筆者も年に何度か買う。だが、これまでの当選金は最高で3000円である。身を持ち崩すような「幸運」に巡り合ったことは、幸か不幸かない。


【毎日・社説】

社説:ミンチ肉偽装 こんな無法がなぜ通ったのか

 北海道警は、牛ミンチに豚肉を混入していた苫小牧市の食肉加工卸「ミートホープ」の捜査に入った。同事件については、行政の対応が適切であったかも、問われなければならない。

 最初は、牛ミンチに安い豚肉を混ぜて高く売っていたという話だった。田中稔社長は、牛も豚も同じ機械でミンチにするので混ざったのでしょう、と説明していた。

  それが、時間の経過とともに、社長自らの指示のもとに、組織的に混入が行われていたことが明らかになった。そして混入も、牛に豚を混ぜるだけでなく、中国 で鳥インフルエンザが流行したときに価格が暴落した中国産カモを混ぜる、豚の心臓や鶏や羊の肉も混ぜる。それだけでなく文字通り水増しするなど、底なしの 状況が浮かび上がってきた。

 さらに、主要な取引先である北海道加ト吉の工場長から賞味期限切れの冷凍コロッケの横流しを受けて、系列会社に転売する。そして社長は「安いものばっかり追い求める」と、消費者に責任を転嫁しようとさえする。

  BSE(牛海綿状脳症)の国内での発生、病原性大腸菌O157による食中毒、雪印乳業の食中毒事件、雪印食品や大手食肉会社による食肉偽装など、食品に関 する多くの事件事故を通じて、わが国では「食の安全・安心」が求められるようになった。店頭における食品の表示には正確さが求められ、多くの食品には生産 者から消費者に至る経路が追跡可能なシステムが導入されてきた。

 しかし、私たちが今目撃している「ミートホープ」の世界は、別世界だ。利益至上主義の下で無法がまかり通っている。この世界では、消費者の信頼を得なければ企業の存続はないという、多くの失敗から学んだ食品業界の鉄則が通用しない。

 食品業界という、まさに食の安全と安心を担う業界に、現在に至ってもなお、こうした企業が存続していたことに、深く失望せざるを得ない。

 行政もまた、多くの失敗を通じて、業者寄りではなく消費者側に立った行政を行わなくては、国民の信頼は得られないということを学んだはずだった。にもかかわらず、今回の農水省の対応はどうだったろう。

 昨年4月にミートホープの元幹部が、農水省北海道農政事務所に不正を告発した。にもかかわらず、農水省は告発を取り上げなかった。なぜ、取り上げなかったのか、農水省は実態を調査の上、国民に説明する義務があるだろう。さもなければ、農水省への信頼は、また地に落ちる。

  道警は不正競争防止法に基づき、虚偽表示の容疑で捜査している。流通業界は一斉にミートホープがかかわった商品の確認に入り、棚から撤去した。しかし私た ちは、知らずに、まさかという食品を提供されていた。こうした事態の再発を防ぐには、事実の解明が欠かせない。道警は、不正がどのように重ねられてきたの か、徹底的に解明してほしい。

毎日新聞 2007年6月26日 東京朝刊

社説:年金第三者委 公正透明で納得できる判定を

 年金保険料の納付記録や領収書がない人に対する給付の可否を判断する中央第三者委員会の初会合が開かれた。来月初旬までに判定基準を作り、地方に置かれる第三者委はこの基準に沿って作業を進める段取りだ。

 今回の年金騒動では、記録の管理がいかに大切かを思い知らされた。きちんと保険料を納めていたのに、何らかのミスで社会保険庁の年金記録に残っていなかったら、当然支給額は減らされる。こんな不条理なことは許されていいはずがない。

 公正で透明な運営は年金制度への信頼をつなぎとめる最後の命綱である。第三者委には、正直者が不利益をこうむらないような判定基準を示してもらいたい。同時に運用にも弱者の立場に立った細心の配慮を求めたい。

 安倍晋三首相の判断で、第三者委は騒動の当事者である厚生労働省ではなく総務省に置かれた。弁護士、税理士、社会保険労務士らで構成されている。

  払ったはずなのに記録がない「消えた年金」問題の一因に、社保庁の職員が保険料を横領していたケースも指摘されている。会計検査院の資料によると、89年 から02年までの保険料横領額は、発覚した分だけで1億1000万円にのぼっている。犯罪行為であり、社保庁は全国規模で徹底調査を行い、国民に報告すべ きだ。

 安倍首相は、仮に領収書がなくても、当時の銀行通帳、家計簿、本人の言い分を照らし合わせ、筋道が通っていれば給付に道を開くという考えを示している。

 問題は、年金給付を認定するに足る判定材料の範囲である。これまで銀行通帳の出金記録、元雇用主の証言、納税証明書のほか雇用保険(失業保険)記録などが挙げられている。

  とりわけ雇用保険の加入者情報は、厚生年金の加入者記録とほぼ重なっているため、有力な判断材料の一つとみられている。雇用保険制度では、1人でも雇えば 事業主に加入の届け出を義務づけている。加入者の氏名、生年月日、事業所名などの情報がデータ化され、保存されている。

 公的年金は、国 が強制的に保険料を集めることで成り立っている制度なので、記録がないことの挙証責任も一義的には社保庁にあるというべきだろう。厚生年金の加入記録が見 つからない人には、本人に雇用保険の記録を参照する同意を得たうえで職歴証明とするなど積極対応が必要だ。

 政府・与党は5000万件の 不明記録の統合を1年間で完了させると約束した。国会審議では、照合、統合、名寄せ、突合(とつごう)などさまざまな用語が飛び交い、1年後に何がどう完 了しているのか、国民はさっぱり要領を得ない。専門家の間では、原簿とオンライン上のデータを照合するだけで膨大な日時と人手がかかると指摘されている。 政府は具体的な作業日程を丁寧に説明する義務がある。

 「最後の一人まで解決する」という首相発言を選挙向けリップサービスで終わらせてはいけない。

毎日新聞 2007年6月26日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:英国の経済学者のケインズは…

 英国の経済学者のケインズは、万有引力の発見者である ニュートンについてこう書いている。「ニュートンは理性の時代の最初の人ではなかった。彼は魔術師たちの最後の人、最後のバビロニア人にしてシュメール人 であった」▲古典力学を完成させたニュートンは、その一方で錬金術や神学研究などに打ち込む神秘思想の持ち主だった。だがその神秘主義を示す手稿は、子孫 が1936年に競売に出して散逸してしまう。ケインズは私財を投じて手稿類の再収集に取り組み、コレクションを大学に寄贈したのだ▲このたびエルサレムの ヘブライ大で公開されたニュートンの文書も、その36年の競売でユダヤ人が落札したものという。それが広く世界に報じられたのは、書かれていた「早ければ 2060年に世界の終末が来る」という“予言”のせいである▲共同電によると文書のいう「2060年」は旧約聖書のダニエル書の暗号めいた表現から割り出 されたもので、「その後に世界の終わりが来るかもしれないが、それ以前に終わる理由は見いだせない」と書かれていた。“予言”といっても結構流動的だ▲さ て現代の終末予言はといえば、今年1月に核戦争による地球滅亡までの時間を示す米誌の「終末時計」が「終末7分前」から「5分前」に4年ぶりに進められ た。危険は高まっているというわけで、会見では英物理学者のホーキング博士が「われわれは警告の義務がある」と述べた▲300年を隔てた二人の英科学者の 言葉を聞いて見回せば、なるほど核戦争ばかりか地球温暖化や新型ウイルスの脅威など世界規模の破局の危険に事欠かない現代だ。だが今や世界を破滅に導く力 を持ってしまったのが人類なら、それを防ぐ英知も人類にしかない。

毎日新聞 2007年6月26日 東京朝刊


【読売・社説】

牛肉偽装 また食品への信頼が裏切られた(6月26日付・読売社説)

 食品への信頼を裏切る事件がまた起きた。

 北海道の食肉製造加工会社ミートホープが、豚の心臓や羊肉を混ぜた「牛肉ミンチ」を販売していたとして、北海道警が不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で家宅捜索した。詐欺罪の適用も視野に入れているという。

 この容疑以外にも、輸入した牛肉を国産に混ぜて出荷したことが農林水産省の立ち入り検査で判明した。取引先の北海道加ト吉から、賞味期限が切れた冷凍コロッケを引き取り、期限を書き換えて販売したこともわかった。

 コスト削減を優先した社長が自ら指示し、従業員は拒めなかった。ワンマン経営の企業にありがちな体質だ。「業界全体の問題。喜んで買う消費者にも問題がある」と、社長は責任転嫁とも取れる発言を繰り返した。

 直接口に入る食品を製造・販売していることへの責任を、社長はほとんど感じていなかったのではないか。道警は徹底した捜査で、全容を解明してほしい。

 食品に関しては過去、何度も偽装や賞味期限切れ製品の販売といった不祥事が起きている。

 雪印食品は5年前に、輸入牛肉を国産品と偽り、会社解散に追い込まれた。不二家も消費期限切れの牛乳を使ってシュークリームを販売するなどして、他の大手食品会社の傘下に入った。

 違法行為は、消費者に迷惑をかけるうえ、企業の滅亡に直結する。ミートホープも休業し、全従業員を解雇する方向となった。他の企業の経営者は、一連の教訓を肝に銘じるべきだ。

 ミートホープの偽装に関して、規制当局の不手際が指摘されている。昨年2月には、農水省の出先機関に偽装の情報が寄せられていた。農水省は、この件の担当は北海道庁だと判断して、道庁に連絡したと説明するが、道庁側は受け取った記録はない、としている。

 真相はヤブの中だが、早期に偽装を見破る機会を逸したことに変わりはない。この種の情報があった場合、素早く対応できるよう関係省庁、自治体で体制を整えておく必要がある。

 食肉の偽装を見破るには、遺伝子を調べるDNA検査が有力な手段だ。牛肉と他の肉を混ぜても、巧妙に加工すれば発見は難しい。しかし、DNA検査なら確実に違いを識別できる。

 すべての製品をチェックすることは不可能だろう。だが、随時、抜き打ち検査することにしておけば違法行為の抑止に役立つ。農水省は、早急に具体策の検討に入るべきだ。
(2007年6月26日1時51分  読売新聞)

パレスチナ 分裂統治を放置するのは危険だ(6月26日付・読売社説)

 パレスチナの状況は、惨たんたる、としか形容のしようがない。分裂統治という未知の事態が固定化しつつある。

 これで、イスラエルとパレスチナの2国家共存という中東和平の最終目標は、一層遠のいた。

 発端は、イスラム原理主義組織ハマスと、アッバス自治政府議長が率いるファタハによる武力衝突だった。パレスチナ自治区ガザの治安権限の獲得を目指すハマスがファタハ治安部隊に攻勢をかけ、ガザ全域を制圧した。

 両者による権力闘争、というのがことの本質だろう。ともあれ、ハマスは力ずくで、パレスチナの“領土”の一部を奪取したことになる。

 ハマスは、イスラエルの生存権の承認や武力闘争の放棄など、中東和平交渉のテーブルに着くための条件を認めてこなかった。そればかりか、今回の事態は、パレスチナ内部の結束維持すら、ハマスにとってたいした重要性を持たないことを示している。

 昨年のパレスチナ評議会選挙を経て、ハマスはパレスチナ政治の表舞台に出てきた。その事実は重いが、だから何をしてもよい、という理屈は通るまい。そもそも、ガザでの支配権を確立しても、外部からの支援なしに、ガザ住民140万人の暮らしをどう支えていくのか。

 アッバス議長は、ハマス主導の「挙国一致内閣」のハニヤ首相を解任し、新たに「非常事態内閣」を発足させた。議長はこれまで、ハマスとファタハとの融和に意を尽くしてきたとされるが、今回はハマスとの対話も拒否した。

 だが、将来のパレスチナ国家を構成するはずのヨルダン川西岸とガザで、別々の統治が続くのは、不自然である。

 米国や欧州連合(EU)は、アッバス議長への支持を明確にし、財政支援を再開すると約束した。イスラエルも、自治政府に代わって徴収してきた税金の一部を、新内閣に返還することを決めた。

 それ自体は、経済的に苦しむパレスチナの人々にとって朗報だ。しかし、現状のままでは、西岸住民だけがその恩恵に浴し、ガザにおける窮状は、さらに悪化することになりはしないか。

 絶望したガザで、これまで以上に過激派が勢力を伸ばす環境が醸成される、とする不気味な予測もある。放置する危険性を考慮すべきだ。

 直ちには無理だとしても、やはり、分裂統治の解消へファタハとハマスを仲介する努力が必要だろう。3月、挙国一致内閣の実現に力を発揮したサウジアラビアやエジプトなどアラブ主要国に、大きな期待が寄せられるゆえんだ。
(2007年6月26日1時51分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月26日付 編集手帳

 「家」という字のうかんむりは住居を、下の「豕」 は豚を意味する。神に供える生贄(いけにえ)が豚であるという。家族の無事と平穏な暮らしを祈る心がこもった字だろう◆漢字とは面白いもので、うかんむり の下に置く動物が牛だと「牢(ろう)」になってしまう。家と牢では天と地のひらきがある。豚と牛はともに食卓には縁の深い家畜だが、ごっちゃにするもので はないらしい◆全国に販路をもち、手広く営業していた会社が一気に行き詰まる。これも豚と牛をごっちゃにした末の“天と地”だろう。牛肉ミンチに豚肉を混 ぜていた北海道苫小牧市の食肉製造加工会社「ミートホープ」が警察の捜索を受けた◆社長の指示で牛肉偽装工作に使われたのは豚肉にとどまらない。豚の心臓 や舌、羊のクズ肉、パン、鳥インフルエンザの流行で価格が暴落したカモ肉…と、安くさえ上がれば見境がなかったようである◆会社は従業員に全員解雇の方針 を伝えた。消費者の家庭に食と健康の不安を振りまき、従業員の家庭を生活の不安に沈める。「家」という字の成り立ちを忘れ、金儲(もう)けに目がくらんだ 経営者の罪は深い◆「豕」を用いた熟語は「豕心(ししん)」(欲張り)や「豕突(しとつ)」(暴走)など、困った経営者を連想させるものばかりで、いい言 葉があまりない。うかんむりの下に置くに限る。牛と間違えぬように。
(2007年6月26日1時51分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】北京五輪 成功への鍵握る環境対策

 オランダの研究機関が先ごろ、中国の昨年の二酸化炭素(CO2)排出量が世界一になったと発表した。これに対して中国政府やマスコミが激しく反論している。

 さもありなん、飛躍的な経済発展を続ける中国にとって、大気汚染や水質汚染など環境問題は喉(のど)に刺さった棘(とげ)であり、来年8月8日に開幕が迫った北京五輪でも克服すべき最重要課題に挙げられる。環境汚染イメージが定着することを恐れている。

  先週末23日は「オリンピックデー」だった。1894年のこの日、フランス人貴族ピエール・ド・クーベルタンによって提唱された近代オリンピックの開催が 決まった。これを記念して世界各地では毎年、さまざまなイベントが行われる。今年、最も熱い思いでこの日を迎えたのは中国であろう。あらゆる機会を利用 し、国家の威信をかけ五輪成功に弾みをつけたい。その鍵を握るのが環境にほかならない。

 クーベルタンの昔にはなかった環境が、スポー ツ、文化と並ぶオリンピックの柱となるのは1994年の100周年記念国際オリンピック委員会(IOC)コングレスからだ。以来、開催都市や招致を望む都 市に、環境対策は大きなテーマとなった。北京は、五輪開催が決まった2001年当時からIOC委員の間で大気汚染が懸念され、克服課題として念押しされ た。

 「緑の五輪」をスローガンに、北京市はこの10年間で1200億元(約1兆9000億円)の対策費を投じてクリーンエネルギー普及 に取り組んできた。結果、CO2などは基準値を下回ったという。さらに市内では300万台に達した自動車の排ガス規制の強化や天然ガス燃料のバス4000 台の導入、周辺地域の政府と協力した汚染物質対策にも力をいれていく方針だ。

 恐らく、北京市内に限れば来年の開催までに環境のハードル はクリアするだろう。しかし、現時点でIOCの不信感はぬぐい去られてはいない。各国地域選手団の間では競技直前まで北京に入らず、周辺国で調整する動き もみられる。これらに、北京は納得できる回答を用意できるだろうか。

 不信払拭(ふっしょく)は、北京に限らず中国全土に環境改善への意識、対策を行き渡らせるかどうかにかかる。反論だけではなく、国を挙げた対応が必要だ。

(2007/06/26 05:41)

【主張】年金確認委 公正で柔軟な審査基準を

 年金記録の紛失問題で、領収書などの保険料支払いの証拠がない場合、年金給付の是非を判断する「年金記録確認中央第三者委員会」の初会合が開かれた。

 社会保険庁は年金確認委の判断をそのまま受け入れる方針なので、確認委は事実上の最終決定機関となる。それゆえ、確認委の責任は重い。給付を受ける国民が納得できる公正で的確な審査基準を策定しなければならない。

 確認委について安倍晋三首相も「国民の立場に立って検討し、まじめに保険料を納付された方が1人残らず年金を受け取れるようにできるだけ早く公正な判断を行いたい」と述べている。まさにその通りで、それが国家として当然の義務だろう。

  確認委は総務省内に事務局を置く中央委員会と、全国50カ所の地方委員会で構成される。中央委のメンバーは、日本税理士会連合会副会長、前日本弁護士連合 会会長、東京都社会保険労務士会副会長、行政相談委員ら有識者10人でスタートし、最終的には30人程度に増員される。地方委は7月半ばにも、それぞれ裁 判官OBや税理士ら10人以内の委員で発足し、個別のケースについて判断を下す。

 社会保険事務所に照会があり、証拠となる記録がなく、その分の年金の支払いが却下されたケースは、半年間で2万件以上はある。

 給付の是非を判断する方法の一つとして、雇用保険の加入記録の利用も挙がっている。雇用保険の加入記録は厚生年金の加入記録と重なる情報が多いからだ。しかも所管は、ずさんな管理をしていた社保庁でなく、厚生労働省職業安定局だ。

 安倍首相が総務省への年金記録確認委の設置を指示したのは6月11日だった。その後、菅義偉総務相が中央確認委のメンバーを内定、19日に閣議決定され、25日に初会合を開いた。審査基準は7月中旬にも策定されるというからまさに急ピッチの作業である。

 7月29日に安倍政権の最初の審判となる参院選の投開票が予定されているから「急いでいる」との声が一部にある。ただ、急ぐあまり、拙速の審査基準となっては意味がない。公正でかつ個別の相談や苦情に柔軟に対応できる審査基準が求められる。

(2007/06/26 05:39)

【産経抄】

 豆腐の水気を切り、ニンジン、ギンナン、ヤマイモなどを加えて丸め、油で揚げる。がんもどきは、仏教で肉食を禁じられている僧侶が知恵をしぼって作り出したものだ。味が鳥の「雁(がん)」の肉に似ていることから、名付けられたという。

 ▼いわゆるそっくり食品のルーツともいえる。その後も、魚肉ソーセージや植物油と海藻を原料にした人工イクラなど、次々と“名作”が生まれた。なかでもスケソウダラなどのすり身から作ったカニかまぼこは、いまや海外で引っ張りだこだ。

 ▼味や形だけではなく、歯応えまで本物に近づけようとする。旺盛な好奇心と発想力、さらに「もどき」をおもしろがる遊び心なしには生まれない。そっくり食品は、日本の食文化のひとつといっていい。

 ▼ 北海道苫小牧市にある「ミートホープ」の田中稔社長(68)は、発想力が自慢だった。ひき肉撹拌(かくはん)機の考案で文部科学大臣表彰創意工夫功労者賞 も受賞している。確かに豚肉やカモ肉の混入にとどまらず、化学調味料を入れたり、豚の心臓を混ぜて赤みを出したりと、牛肉に似せるために、よくまあこれだ けアイデアが出てくるものだ、と感心する。

 ▼ただし「もどき」を公表しない偽装は許されない。発覚によって、消費者の食肉加工品への信頼は失われ、従業員は解雇を通告された。取引会社への打撃も大きい。人をおもしろがらせるどころか、多くの人を不幸のどん底に陥れた。

 ▼ 会見では「工場長に相談された」などと、責任のがれの発言を繰り返し、あげくのはてに「消費者も安いものばかりを求めるから」とだまされる方が悪いといわ んばかり。こんな人物に、食文化の大切さを説いても詮(せん)ないことだが、「発想力」を他に生かす道はなかったのか。

(2007/06/26 05:35)


【日経・社説】

社説1 「消えた年金記録」復活へ丁寧な基準を(6/26)

 「消えた年金加入記録」を復活させ、年金支給に結びつけるための総務省の中央第三者委員会が25日初会合を開いた。今後、支給の是非を判断する基 準作りを進める。社会保険事務所や市町村のずさんな対応により、保険料を納めたのに記録が残っていないケースが多数存在する。加入者が領収書を持っていな くても手掛かりは少なくないはずだ。幅広く、しかも丁寧に洗い出し、基準を作ってもらいたい。

 民間サラリーマンが加入する厚生年金では 企業が保険料を社会保険事務所に納めるため、記録が消えることは少ないとみられてきた。しかしかつて勤めていた企業が倒産したような場合に、その間の記録 が欠けているというケースも実際に出ている。何度も転職したという人で、その一部が記録漏れとなっていることが少なくないようだ。

 サラリーマンの場合、厚生年金だけでなく、健康保険や雇用保険にも加入するのが一般的だ。だから厚生年金の加入記録がない場合、他の社会保険の加入状況がどうなっているかを調べることはできる。そうした年金以外にも手掛かりを求めて記録回復の努力をするのは当然だろう。

  農家や自営業などの人が加入する国民年金では、加入者自らが市町村に保険料を納める、という形をとってきたために問題を一層複雑にしている。保険料を窓口 で納めたにもかかわらず、加入記録が残っていないという苦情が相次いでいる。問い合わせたところ「納めたのなら領収書があるはずだから、それを提示しなけ れば証拠とはならない」と門前払いされたという人も多い。

 何十年も前の領収書を今も保管していることはまれだろう。また実際に納めたにもかかわらず、それを受け取った職員が着服したケースもあるという。言語道断である。

  国民年金では2001年度まで国に納める現金を市町村が直接受け取ることができないため、印紙を発行して収納した。だから印紙の発行状況も手掛かりの1つ となるのではないか。かつて未納の期間をまとめて納めることができる「特例納付」を実施したが、そのときは現金を社会保険事務所に納めた。着服があったと すればこの機会だったのではないかと思われるが、その点でも事実関係を調査しなければならない。

 中央委員会で基準を作り、これから各都道府県につくられる地方の第三者委員会では基準に沿ってきめの細かい調査をし、保険料を納めた人たちが損をしないよう、万全を期してほしい。

社説2 消費者を裏切る食肉偽装(6/26)

 「またか」と、怒りを通り越してため息がでる。 北海道苫小牧市の食肉加工販売会社「ミートホープ」の食肉偽装問題である。コムスン、NOVAなどへの行政処分が相次ぐ中、いったい企業の法令順守はどう なっているのか。かつて雪印食品の牛肉偽装事件が大きな社会問題になったにもかかわらず、安全・安心を最優先すべき企業でこうした偽装が後を絶たないのは なぜなのか。

 日付や原材料など食品表示への関心は高まっている。加工食品が増え、消費者がスーパーなどで食品を選ぶ際、表示に頼る例が増えた。表示が信頼できないとなれば、いったい何をもとに買えばいいのか。消費者の怒りの声が聞こえてきそうだ。

  明らかになった偽装の実態はあまりにひどい。牛100%と偽って豚や鶏の肉を混ぜるのは序の口で、豚の心臓を混ぜる、家畜の血液で着色して牛にみせかけ る、水を混ぜて増量するなどまさに消費者無視だ。取引先の北海道加ト吉から賞味期限切れ前後の冷凍食品を安く買い入れ、日付を付け替えて転売していたこと もわかった。利益をあげるためなら何をしてもいいといわんばかりだ。

 農林水産省が日本農林規格(JAS)法違反で立ち入り検査したのに続き、北海道警は不正競争防止法違反の疑いで本社工場や社長宅などを捜索。さらに厳しい詐欺容疑での立件も検討しているという。なぜこうした偽装が次々と行われたのか、徹底的に解明してもらいたい。

  偽装が始まったのは20年ほど前からとされる。それほど長く悪質な偽装を放置した責任は行政にもある。なぜ、もっと早く不正を察知できなかったのか。昨年 2月に不正を告発する情報が寄せられたというが、農政事務所と北海道庁の連携がきちんと取れていなかった。迅速な対応がなければ、法令違反をやめさせるた めに導入された公益通報者(内部告発者)の保護制度も生きない。

 偽装ひき肉は大手食品会社でコロッケなどに加工され、多くの消費者の口に入った。大手企業は納入業者のチェックをきちんとすべきだ。ミートホープ社は全従業員約60人に解雇を事実上通告した。不正行為が働く人も不幸にすることを忘れてはならない。

【日経・春秋】(6/26)

 腐りきっている、とはこのことだろう。賞味期限切れのパンをひき肉に混ぜ、水を足して増量し、羊肉や豚の内臓などを牛ひき肉に混ぜて売る。あげくに、顧客からクレームがつくと、過失を装って保険金をだまし取り、買い取りや補償費に充てていたという。

▼ 自社製のインチキ牛ひき肉が入った冷凍カレーを顧客から引き取り、廃棄せずに別ルートで売りさばいていたらしい。次々に判明する北海道苫小牧市の食肉加工 販売会社「ミートホープ」による底なしの非道。これは、道徳のかけらも持たない特異な経営者による例外的な所業なのだろうか。

▼昨春に同 社の偽装ミンチについて内部告発を受けた農水省・北海道農政事務所は、北海道庁に連絡したとしているが、この1年間、疑惑の解明は進まなかった。今ごろに なって農水省と北海道が責任をなすりあっているが、その怠慢ぶりからすると、こんな不正はそう珍しくない、と役所はみていたのではないか。

▼BSE 問題では、国産に偽装した輸入牛肉をノーチェックで買い取った農水省と、合計で100億円を超す税金をだまし取っていた食肉業界、という負の記憶が残って いる。ミート社の経営陣ならば、自らの経済的な損失を逃れようと、従業員を解雇し、資産の移転・売却を急ぐかもしれない。迅速な捜査を期待する。


↓おじさんの雑談も面白いジャンと思ったらクリック。(笑)
人気blogランキングバナー

OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60 CE OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60

販売元:オリンパス
発売日:2007/09/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月25日 (月)

6月25日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:CASIO Ex-word (エクスワード) 電子辞書 XD-SW7600 日中韓対応手書きパネル搭載 音声対応 23コンテンツ収録 韓国語モデル


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月25日朝刊)

[国会会期延長]やはり「年金隠し」なのか

 通常国会の会期延長が決まった。安倍晋三首相が天下り規制を強化する国家公務員法改正案の今国会成立に強くこだわったためだ。

 二十三日までの会期は十二日間延長される。これを受けて参院選の投票日は七月二十二日から同二十九日に一週間先送りされた。

 安倍首相が成立にこだわる国家公務員法改正案は、首相の再就職あっせんを一元化する「官民人材交流センター」の設置を柱にしている。これに対して野党側は「政府公認の天下りあっせん機関だ」と強く批判している。

 会期延長には官邸主導でまとめた同改正案など重要法案を成立させ、年金記録不備問題や松岡利勝農相の自殺を契機とした政権への逆風をしのぎ、政府、与党に対する厳しい批判を和らげたいとの思惑があるのだろう。

 だが全国の自治体は当初予定の投開票日を視野にポスター作製などの準備を進めてきた。直前の変更により経費の無駄遣いも生じる。日程変更に合理的な根拠があるとは思えない。党利党略による延長と批判されるゆえんだ。

 会期延長に野党は「国会は首相の従属物ではない」と反発を強めている。与党内にも「首相は裸の王様になりかかっている」などの批判が渦巻く。

 参院自民党は国家公務員法改正案を衆院で継続審議にして今国会で終えるよう要請したが、首相の意向で押し切られた。官邸と党の双方で調整役となる司令塔役の不在が浮き彫りになっており、参院選で自民党が敗北した場合の首相の責任論も浮上している。

 与党側は延長国会で社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案などを成立させる方針だ。労働関連三法案は審議時間の確保が厳しいため、衆議院で継続審議扱いになる見通しだ。

 しかし延長国会では与党による強行採決が行われるのは確実だ。国民はどう評価するだろう。政権の実績アピールにつながるのかどうか疑問である。

 参院選をめぐる責任問題について安倍首相は「私は首相であり自民党総裁なので、日々すべての事柄に責任を持っている。常に一番大きな責任があるとの覚悟で取り組んでいる」と述べ、選挙結果によっては責任を取る考えを示した。

 過去二十年間の国会で参院選前に通常国会が延長されたのは一九八九年、九八年の二回。参院選の日程を直前に変更は異例だ。いずれの選挙でも自民党が惨敗し、首相退陣につながった。

 国会会期延長はやはり「年金隠し」のための時間稼ぎなのかどうか。夏の参院選は国政の行方を占う「天王山」になる。国民一人一人が国会審議を見守っていく必要がある。

[牛ミンチ偽装]企業の社会責任忘れるな

 企業による食品偽装がまた、発覚した。北海道の食肉加工販売会社が豚肉を混ぜたひき肉を「牛ミンチ」と表示して出荷していたのだ。同社はさらに、冷凍コロッケの賞味期限を改ざんして販売した疑いがあるほか、他にもさまざまな偽装があったという。

 消費者を無視し、その信頼を裏切る行為であることはいうまでもない。コンプライアンス(法令順守)やCS(顧客満足)という企業にとって大切な精神が欠如していると言われても仕方あるまい。

 すでに、農水省や北海道が調査や検査を実施。北海道警も強制捜査する方針だ。だが、問題なのは事件になるかどうかという以前に、企業がその社会的責任を忘れ、利益だけを唯一の目的としていたことではないか。

  同社は偽装の目的を「豚くず肉を10―20%混ぜることで、一、二割安くなった」と説明し、偽装が常態化していたことを明らかにした。豚以外に、より低価 格のカモや鶏肉を混入したことも認めている。当初から合いびき肉として出荷していたら何の問題もないものを、価格をつり上げるためにだけ偽装していたわけ だ。

 何よりも責められるべきは発覚後も不正行為を糊塗し、責任を回避しようとした点だろう。

 同社の社長は今回の行為が明らかになった直後、「誤って混ざってしまった可能性がある」と釈明したが、その後に「部下に相談されて(混入を)承認した」と説明が変化。さらに、翌日には「コストを下げるために豚肉を混ぜるよう指示した」と一転、自ら主導したことを認めた。

 この間の言動には反省どころか、消費者や取引先への謝罪の念などまったく感じられず、まさに不遜としかいいようがない。企業の危機管理のケースとしても最悪のパターンだろう。

 「儲かれば何をしてもいい」という企業が存続し続けることは難しいし、存続する意義もない。企業は社会的な存在だということを経営者は決して忘れてはならない。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月25日 朝刊 1面)

 テレビのニュースで見覚えのある冷凍牛肉コロッケのパッケージが映っていた。北海道の食肉加工卸会社の偽装牛肉を使ったとされる商品だ。

 確かわが家でも最近食卓に上った。風味について特段変わった印象は残っていないが、強いて記憶をたどれば、肉が入っているのか、分からないほど少なかった、ということぐらいか。

 食品の偽装事件で思い出すのは狂牛病対策に端を発し、外国輸入牛肉を国産と偽った複数の大手企業による不正事件だろう。食品への安全神話と企業への信頼が崩れ、国中の企業、社会が猛省したのはつい四、五年前の話である。

 今回の事件とは直接関係ないようだが、数日前、全国食肉公正取引協議会が表示販売の実態についての昨年度の消費者アンケートの結果を発表した。それによると、県内では食肉表示について「ある程度」を含めて「信頼している人」は93%も占めている。

 一方、店頭表示の情報では「分かりにくい」と答えた人は55%もいた。健康志向の高まりで食材へのこだわりを持つ人が増えている半面、生活パターンの変化により安価で便利な加工食品への依存を余儀なくされている消費者の戸惑いが見えるようだ。

 それにしてもスーパーやコンビニの店頭に並ぶ加工食品の豊富さには驚く。消費者は自己責任として食材を選ぶ知恵、努力が求められているが、前提には企業倫理が問われていることは間違いない。(比嘉弘)


【琉球新報・社説】

牛ミンチ偽装・監督官庁の責任も重い

 またしても食の信頼を裏切る行為が発覚した。北海道苫小牧市の食肉加工販売会社「ミートホープ」が豚肉などを混ぜたひき肉を「牛ミンチ」として出荷していたことが判明、北海道警が強制捜査に踏み切った。
  ミート社の食肉偽装は田中稔社長が自ら指示し、会社ぐるみで恒常的に行われていた疑いが強まっている。豚肉以外にもカモ肉、鶏肉などを混入した疑いや、ブ ラジル産鶏肉を国産と偽って学校給食用に出荷した疑い、店舗から返品された冷凍コロッケを安く買い取り、賞味期限を改ざんして転売した疑いなどが相次いで 浮上し、まさに偽装のオンパレード。あまりの悪質ぶりに、怒りを通り越してあきれるばかりだ。
 事態を重く見た行政側は、北海道庁が食品衛生法な ど違反の疑いで裏付け調査を始めた。農水省は原材料名を適正に表示するよう定めた日本農林規格(JAS)法に基づき、同社と取引先を立ち入り検査。道警も 不正競争防止法違反容疑で同社や取引先などを家宅捜索し、刑事事件に発展した。
 ミート社によると、牛ミンチの注文が増え始めた7、8年前から偽 装が常態化した。問題が発覚した当初、田中社長は「誤って混ざった可能性がある」として工場長に責任をなすり付けるような釈明をしたが、再度開いた会見で 取締役の長男から「本当のことを言って」と諭され一転、自らの指示を認めた。
 関与を認めた後は「商売をやっている人間なら誰でもコストを下げたい」などと開き直ったが、工場長の「雲の上の人だから何も言えなかった」というコメントに、社長のワンマンさがうかがえる。利益至上主義が招いた事態だとしたら、消費者不在と言わざるを得ない。
 消費者の信頼を欺いたミート社の責任は厳しく問われよう。事件の全容解明は道警の捜査を待たないといけないが、原因と背景、責任の所在を明確に示してもらいたい。
 同時に、監督官庁である農水省や道庁の責任も重い。数回も内部告発を受けながら、なぜ具体的な対応を取らなかったのか。これだけの不正疑惑を「所管の道庁に任せた」「いや聞いていない」とか「調べたが確認できなかった」では済まされないだろう。
 消費者の声に「雪印や不二家の問題が教訓になっていない」との指摘があったが、食の安全・安心が一段と叫ばれている昨今、行政がこの対応では職務怠慢のそしりは免れまい。
 問題の根源を突き止め、再発防止への有効な手だてを考えてほしい。食品安全行政にもっと消費者を参加させる仕組みづくりなども含め、検討を急ぐ必要がある。

(6/25 9:48)

与那国に米掃海艦・町民の不安が募るだけ

 佐世保基地を拠点とする在日米海軍の掃海艦2隻が日 本最西端の与那国島・祖納港に寄港した。米艦船の県内民間港への寄港は復帰後、初めてである。米側は「親善・友好と乗組員の休養」と日本側に通知している が、本紙が入手した海軍の港湾情報調査票には港湾周辺や島内の状況をつぶさに調査する項目が並び、情報収集の色合いが濃い。
 台湾有事をにらんだ 米軍の民間港利用への布石だとしたら、疲弊する辺境の地を脱し、国境の島としての自立モデルを目指す与那国町にとって看過できまい。距離的に近く、歴史的 に交流もある台湾とは友好関係を構築中だ。米艦船の寄港がいたずらに台湾・中国側を刺激しないか心配だろう。
 加えて今回の寄港は、町民生活まで細かく調べ上げられる可能性が否定できないという。実際、島内には艦船の入港を前に海軍の先遣隊らしき男性らが入り込んでおり、祖納港に近い集落の飲食店では米兵らしき男性らが客の収容規模などを尋ねたりする様子が確認されている。
  外間守吉町長は「親善・友好と言いながら、島内を調査しているのは非礼だ。町内を巡回するのはやめてほしい」と不快感をあらわにした。現時点で米兵と町民 との間で大きなトラブルが起きているわけではないが、米側の真の狙いがいまひとつはっきりしないだけに、町民が不快感や違和感を覚えるのは当然だろう。
  与那国町は昨年10月、政府の第十次構造改革特区募集に「国境交流特区」を提案した。キャッチフレーズに「自立・定住できる日本のフロント・アイランド」 を掲げており、ことし3月の与那国空港拡張式典では那覇直行便に加えて台湾、東南アジアを結ぶ国際航空路開設への夢が膨らんだ。
 そんな矢先の艦船寄港である。寄港が恒常化し、与那国島で軍事色が強まれば観光入域客数の伸長やアジア各国との交流拡大に少なからず影響が出よう。それは島が目指す本来の姿ではない。有事対応の島ではなく、有事と縁のない島にしていく努力こそが求められている。

(6/25 9:46)

【琉球新報・金口木舌】

 学生時代に訪れたインドで飲んだ、ミルクと砂糖たっぷりの紅茶「チャーイ」の味は格別だった。炎天下、汗をかきながら素焼きの器で飲んだ
▼紅茶の木を代表するアッサム種は1823年にインドで発見された。中国茶と違い茶葉が大きく暑さに強い。苦み成分が含まれているため、発酵させて苦みをうまみに変える紅茶に向く
▼1950年代、沖縄にアッサム種が持ち込まれ紅茶製造に成功した。1958年11月28日付琉球新報は「有望な沖縄の紅茶/リプトンにもおとらない」との見出しで紹介している
▼ この記事を読んだ今本智子さんが本島北部で50年前の茶樹を見つけ「琉球紅茶」作りに成功した。今本さんの取り組みを内海=宮城恵美子さんが「沖縄ビジネ スウーマン!」で紹介している。沖縄はアッサム地方と同じ北緯26度に位置し、本島北部の土壌は、日本で唯一自然の状態でアッサム種が育つという
▼紅茶産業を興して基幹産業に育てようと、経済人らが「沖縄の紅茶を育てる会」発足に向け動きだしている。生産から商品化・販売、紅茶に合う沖縄のお菓子作りなど裾(すそ)野は広い
▼沖縄産の紅茶がブランドとして世界中に流通する日を想像するだけで愉快になる。

(6/25 9:47)


【東京新聞・社説】

WTO暗礁 日本は打開の役割担え

2007年6月25日

 世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の主要四カ国・地域の交渉が決裂した。自由貿易体制強化への動きを止めてはならない。日本は事態打開へ積極的に汗を流すべきだ。

 米国、欧州連合、インド、ブラジル(G4)の閣僚会合は対立が解けず、年内合意に黄信号がともった。ラウンドは関税はじめ自由貿易の障害物を可能な限り取り除き、モノやサービス取引、投資拡大などのルールづくりが大きな目的だが、それが行き詰まった。

 交渉は、食料輸出国・世界一の座をブラジルに譲った米国が競争力を維持するための国内補助金の削減を、インドとブラジルが国内産業を守るため、先進国からの鉱工業製品輸入を抑えようと関税引き下げを、頑強に拒んだために利害対立が深刻化し、物別れに終わった。

 ドーハ・ラウンドは正式には「ドーハ開発アジェンダ」と呼ばれ、従来の先進国主導から途上国重視へと大きく転換した。インドなどに代表される途上国が目覚ましい経済成長を背景に発言力を強める一方、先進国はかつての余裕を失いつつある。

 WTOのラミー事務局長はG4で大枠の合意をとりつけ、その後、百五十の加盟国・地域による多国間交渉で最終決着に持ち込む手順を描いていたが、狙いはもろくも崩れた。

  現在、貿易自由化は二国間の自由貿易協定や経済連携協定の締結によっても進められている。ただ二国間に限ったいわば“差別的”な取り決めであり、全加盟国 にルールを公平、無差別に適用するWTOの規律強化は各国共通の重要課題のはずだ。貿易の紛争処理などは中立機関であるWTOの機能に頼らざるを得ない。 交渉が失敗した場合の打撃は甚大であり、ここは加盟国すべてが早期再開に努めるべきだ。

 それにしても日本の動きの鈍さが気にかかる。前回のウルグアイ・ラウンドでは米欧と交渉を牽引(けんいん)してきたが、ドーハでは蚊帳の外だ。農産品の市場開放から目をそらす。そんな姿勢が見透かされたのだろうか。

 日本は貿易自由化の恩恵を最も享受し、経済成長を遂げてきた。ラウンドが自由化交渉である以上、国内農業への痛みは避けて通れないが、むしろ、意欲のある担い手育成などの好機ととらえて自由化がもたらす痛みを克服する。そうした道筋をつけながらの交渉が求められている。

 この際、米国や同じアジアのインドなどとの仲介役を買って出て、主要国の閣僚会合を再開させるくらいの気概を見せてほしい。これこそが日本のできる国際貢献ではないか。

環境技術 生活者の理解があれば

2007年6月25日

 政府は、地球温暖化問題の突破口として環境技術の活用と開発を重視する。暮らしの危機を自覚して、それを選び、操る「人」を併せて増やしていかないと、高い「技術」も生かされない。

 地球温暖化対策が最大の課題になった主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)は、京都議定書の約束期間が終わった二〇一三年以降の新たな対策の枠組みに、議定書を離脱した米国が復帰するなどの成果を挙げて閉幕した。

 その成果は、「温室効果ガスのすべての主要排出国が、五〇年までに排出量を少なくとも半減させるよう真剣に検討する」とした経済宣言の一節に要約される。

 米国の復帰を最優先に考えた、あいまいで、実効性のない目標との批判も高い。

 日本は、五月末に打ち出した長期戦略「美しい星へのいざない」の中で「世界全体の排出量を現状に比して五〇年までに半減する」とうたっており、サミットの結論の提案者を自任する。「半減」への責任はとりわけ重いということだ。

 だが、一口に「半減」とはいうものの、容易ならぬ目標だ。

 京都議定書で課された削減義務は、先進国全体で一二年までに一九九〇年比5%、日本は6%だが、現実には逆に7・8%も増えている。現状では「半減」など夢のまた夢ではないか。

 ことしの環境白書は、地球温暖化対策を進める「技術」に焦点を当てている。

 政府は「美しい星-」の中でも「革新的技術開発」を重視する。

 ハイブリッド車に象徴される日本の環境技術は世界のトップレベルを走っており、技術を駆使して石油ショックや公害を克服してきた実績もある。環境技術を高めることは、国際競争力を高めることにも今後ますます結びつく。

 しかし、技術ばかりが突出すると、それに頼る気持ちが強くなる。温暖化対策が「人ごと」になってしまう恐れもある。

 日本には世界最高水準の省エネ家電がそろっている。だが、消費者に選ばれなければ意味はない。省エネ家電に買い替えたくなるような、そして使いこなしたくなるような社会システムの組み合わせが必要だ。

 政治や経済だけでなく、暮らしの危機としての温暖化問題をさらに分かりやすく伝える工夫も大切だ。生活者の理解が深まり、環境技術を自ら選択する気持ちが高まれば、おのずと「国民運動」も動きだし、「半減」への道も見えてくる。

【東京新聞・筆洗】2007年6月25日

 「バラのつぼみ」。この言葉を残して新聞王とも呼ば れた男ケーンが壮大な邸宅で死んだ。最後の言葉は何を意味するのか。ケーンの正体を探るための手がかりとして、一人の記者が調べ始める▼一九四一年に二十 代半ばのオーソン・ウェルズが、監督・脚本・主演の三役をこなして制作した映画「市民ケーン」の冒頭の場面だ。傑作の名をほしいままにしている作品だが、 米国映画協会が十年ぶりに改定した「最も優れた米国映画ベスト100」で一位の座を守った▼映画の筋を追うと、記者はケーンを憎んでいた人、愛していた人 の双方から話を聞く。映画評論家の佐藤忠男さんの弁を借りれば、そこから「他人の幸せも不幸も屁(へ)でもない。金と地位と名誉と権力をとことん追求する 生き方」が見えてくる。でも「バラのつぼみ」の意味は分からない▼記者は「人生の謎を解くような便利な言葉はない」との結論に落ち着く。でも映画の最後で 観客には意味が分かる。子ども時代に失ったものに答えはあった。これ以上は映画を見てもらった方がいいのだろう▼ケーンの正体を探ることは結局、人間に とって何が幸せなのかを探すことを意味していた。映画から伝わってくるのは、金と地位と名誉と権力でケーンの心が満たされることはなく、孤独のまま死んだ ということだ▼人間はだからといって、ケーン的な生き方を今なお否定していない。競争社会の中では肯定的にとらえる人が増えているようにも感じる。「市民 ケーン」が一位であり続ける理由もそこにあるのかもしれない。


【河北新報・社説】

政投銀民営化へ/地域支援機能の継続を

 日本政策投資銀行を民営化するための「株式会社日本政策投資銀行法」がこのほど成立、施行された。

 政府系金融機関改革の一環で、現在の政投銀は解散、2008年10月、新たに政府全額出資の特殊会社が設立される。その後、政府は13―15年ごろをめどに、保有株式をすべて処分し、完全民営化するスケジュールだ。

 政投銀は、1999年10月に当時の日本開発銀行と北海道東北開発公庫が統合して誕生した。旧北東公庫時代を含め、東北とはなじみが深い。

 政投銀は、東北全体を見据えたシンクタンク的機能を保持し、地域開発や地域の自立支援を行う役割を担ってきた、と言ってよい。

  中小企業、ベンチャー企業育成のため、官民出資の「東北インキュベーションファンド」や「東北グロースファンド」の形成、出資で一翼を担ったり、自動車産 業を東北の産業の柱にするよう、産学官の連携を提唱したりしたのは、その一例だ。知恵と情報収集に加え、政策金融という資金力で地域を支えてきたことは間 違いない。

 政投銀の貸出残高は06年3月末で、12兆9200億円。このうち、東北分のシェアは各年度のプロジェクトにより変動もあるが、平均で10%前後に上っている。

 民営化に当たり、変えてほしくないのは、広域的な視点で地域振興を図る基本姿勢だ。

 政投銀は完全民営化後、移行期間中は認められる財政融資資金の借り入れや政府保証債発行ができなくなり、自力で市場などから資金調達しなければならない。

 社債の発行や民間借り入れなどをすることになり、その分コストがかかり、他の民間銀行と競うには、収益力の高い新しいビジネスモデルも必要になってくるだろう。

 しかし政投銀の特徴は、単に利益追求ではなく、長期融資、公共心、中立性、信頼性などを理念とする政策金融だった。

 その特徴、独自性を、他の民間銀行にはない利点として、生かすことが必要だ。環境、エネルギー、街づくり、防災、医療、福祉など、今後需要が高まる幅広い分野で、さらに金融展開することも肝心だろう。

 そして、政投銀は、都道府県と市町村が地域産業振興を目的に策定し、国が認定する地域再生計画の事業融資などで、自治体や地方銀行と信頼関係を築いている。

 政投銀は自治体や地銀との連携、協力を強固にし、場合によっては出資を求める道もある。政府は、疲弊する地方の現状を直視し、格差是正のため、政投銀の地域支援機能を充実させる方向で対応することが必要だ。
2007年06月25日月曜日

昇降機の安全性/日常の保守点検がずさんだ

 マンションやオフィスビルのエレベーターの安全性が脅かされている。国土交通省による全国規模の緊急調査では、過去1年間のうちに、42基のエレベーターでワイヤロープを構成する金属線の束の破断が起きていた。

 すぐさま落下事故につながることはないとしても、エレベーターを支えるロープの強度にかかわる。早くすべてのエレベーターについて調べ、破断が見つかったなら交換して不安解消に乗り出すべきだ。

 調査の過程で明らかになったのは、破断の危険性が保守点検作業で見落とされていたことだ。日常的に多くの人が使用するエレベーターなのに、安全性の確認が驚くほどおろそかになっているのが現実だ。

 国交省の全国調査は東京都港区にある六本木ヒルズ森タワー(54階)で起きた火災がきっかけになった。4月4日にエレベーター機械室から煙が出て数百人が避難した。

 原因は金属線の束のうちの1本が破断し、周囲と接触するうちに火花が発生したためらしい。メーカーは2005年にロープのさびを確認し、きれいにしようとしたものの除去できなかったという。

 半月ほど前に点検しているが、大量のさびによって金属線の様子が十分に確認できず、そのうちに破断したとみられる。安全確保のためには当然、破断に至る前の補修や交換が求められる。損傷を確認できなかったのは点検作業の不備だろう。

 同様の破断が見つかった各メーカーのエレベーターでも、直前の点検では「良」判定がほとんどを占めている。中には点検から数日後に破断が発覚し、ロープを交換した例もあった。

 エレベーターは建築基準法によって年1回の検査が義務付けられているが、通常は保守管理業者と契約して月に1、2回は点検している。

 そのペースできちんと調べていれば、破断の兆候はほぼ確実につかめるはずであり、実際の点検は相当にずさんだと思うしかない。

 破断の原因は経年劣化が最も多いが、異物による損傷や腐食、何らかの要因で異常にすり減ったケースもあった。メーカー側は予想外の原因がないのかどうか十分調べなければならない。マンションやビルの所有者側も任せきりでなくもっと注意を向けるべきだろう。

 東京都港区のマンションで高校生がエレベーターに挟まれ死亡したのは昨年6月だった。警視庁の捜査では、ブレーキ部品の劣化によって異常が起きていたのに、点検で見落としたことが重大な事故につながった可能性も指摘されている。

 危険を避けるには日ごろからしっかりと点検するしかない。
2007年06月25日月曜日

【河北新報・河北春秋】

 「今の日本人は魚を庶民の食べ物だと錯覚している」と水産総合研究センターの小松正之さんが近著に書いている。実は食品の中でも割高で世界的には ぜいたく品▼各国で魚食ブーム。牛海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザの影響で魚需要が増大したためだ。途上国の所得向上も見逃せない。ぜいたく品を 多くが食べるようになったのだ

 ▼ 従って魚の争奪戦は白熱する一方。マグロは既に漁獲規制の動きが本格化している。欧州連合(EU)はヨーロッパウナギの稚魚の漁獲削減を決めた。ロシアは 日本へのカニ輸出の監視を強める▼乱獲でいまや7割以上の魚種は保護が必要な状況。このままでは魚そのものが入手できなくなる心配が頭をかすめるが、ま あ、好んでそうした魚を選ぶのでなければ大丈夫だろう。近海に余っている魚がいる

 ▼代表格がサンマ。今の3倍近く捕っても心配ない。値 崩れを恐れて漁獲を制限しているだけだ。魚粉を別の養殖魚の餌にするなど、活用法はあるのにもったいない。カツオ、カタクチイワシ、イカも資源量は十分▼ これらこそ間違いなく「庶民の食べ物」。マグロやエビを安く食べようというのがむしろ間違い。身近な魚を工夫していい料理に仕立てる伝統が日本にはあっ た。それがまだ生きている。使わない手はない。

2007年06月25日月曜日


【京都新聞・社説】

地域力再生  格差是正へ施策大胆に

 京都府が設置する「府地域力再生プロジェクト推進会議」が、地域力再生に向けた府の来年度の実施方針となるアクションプランの概要などを公表した。
  同推進会議は、人と人がつながった温かい地域社会を築くため、地域に根ざす地域力再生活動を応援する目的で昨年十一月に設けられたものだ。同プランには各 種の具体案を盛り込んだ。そのひとつ、「地域力再生を担う公的人材の育成」では、地域住民の合意形成などに助言できる人材の育成をあげ、府内各地に派遣す るとしている。大いに進めてもらいたいが、これでは少し物足りない。
 行政と住民の中間に位置づけられる「中間支援組織」の創設も、同プランに盛 り込まれた。地域振興事業に対して、その活動が継続するよう大学やNPO(民間非営利団体)などでつくる組織が支援するということだが、実際に効果をあげ ようと思えば、もっと工夫や仕掛けが必要となってくるだろう。
 検討課題としておもしろいのは、町家や里山、古い建築物などを証券化して出資を募る事業、住民税を納める際に一部を地域振興に使うよう指定する「1%基金」の創出だ。さまざまな観点から比較検討し、実行に移していく知恵やノウハウを学び、進めてほしい。
 地域再生の基本は産業経済力であり、その強化も急務だ。「府成長力底上げ戦略推進円卓会議」も府によって創設された。雇用や中小企業の活動向上などを通じて経済基盤のアップを図る趣旨だが、地域力再生に連動させる形での活動を望みたい。
  産業経済の急速な変化は、地域経済に対しても大きな影響を与える。現在、進んでいる経済のグローバリズムは、世界経済の構造を変え、市場主義の大きな波が 地域経済にも打撃を加えてきたのは明白だ。この波は、地域から雇用を奪い取ってきたといえる。だから、地域は総じて元気がなくなり、地域格差が生じること になった。
 背景としては大手工場の海外移転による工場の閉鎖などがある。地域の中堅・中小企業で安価な輸入製品と競合するなかで廃業や倒産に追 い込まれていったところが多数出た。もうひとつは、公共事業の支出が絞られ、建設関係を中心に事業が縮小していったことがある。郊外の主要道路幹線沿いを 中心に大型商業施設が誘導されて中心市街地からにぎわいを奪い取る展開も続いた。
 こうした流れの中で格差をつけられた地域はどうすればよいの か。やはり経済面や文化面などで新たな力を独自でつけていく以外にない。その支援策のひとつとして推進会議のアクションプランも数えられると思う。府では 十二月に最終案をまとめ、来年度の予算編成に反映させたいとしている。地域の再生に向けて大胆な施策導入を期待したい。

[京都新聞 2007年06月25日掲載]

EU改革条約  政治統合への基盤整う

 欧州連合(EU)の首脳会議は、発効の見通しが立たない欧州憲法に代えて、新たに「改革条約」を採択することで合意した。
 新条約では欧州憲法を大胆に修正、憲法の呼称を削除するなど連邦色を薄めた。
 経済統合の基本原則となる「公正な競争」の文言が、英国の抵抗で条約前文から除かれたのを見ても、当初の統合理念からはやや後退している。
 加盟各国の利害を調整して妥協を図ったためだが、組織機能の強化はそのまま継承された。
 「EU大統領」を置いて組織の運営体制に一貫性を持たせ、外交統括ポストとしての「外交安保上級代表」に大きな権限を与えた。
 意思決定の方式でも、全会一致のルールを変え、司法や治安など約四十の分野で多数決制を導入する。テロや移民問題などで効率的な決定が可能になる。新条約を機に、外交政策の共通化や決定が円滑になるのは間違いない。
 加盟国数が、ことし二十七にまで拡大したEUには、効率的運営のために新しいルールが必要だった。
 二十五カ国で二〇〇四年に調印した欧州憲法は翌年、フランスとオランダが国民投票で批准を拒否。一国でも反対があれば発効は不可能になるため、統合はエネルギーを失いかけていた。
 新条約合意で、EUは二年間の停滞を終わらせ、再拡大と政治統合へ向け一歩前進したといってよかろう。
 外交、通商などの交渉で二十七カ国・五億人の共同体が、一つになって主張したり要求する威力は強大だ。
 「強い欧州」の出現は、世界の多極化を促すだろう。新条約は、来年中の発効を目指すという。加盟国が遅滞なく批准手続きを済ませ、今度こそ発効を実現させてもらいたい。
 新条約をまとめた立役者は、メルケル独首相とサルコジ仏大統領だった。首脳会議は、人口を基準にした意思決定方式(二重多数決)の導入をめぐり、強硬に反対するポーランドをどう説得するかで成否のヤマ場を迎えた。
 独首相は高い外交能力で、最後は導入時期を二〇一七年までずらす妥協案を決断した。仏大統領は各国首脳を味方につけ、合意を渋るポーランド首脳を説き伏せた。統合は、引き続き独仏の二人が主導して進めることになろう。
 矛盾や問題点も抱えているとはいえ、EUの新条約は、日本を含め地域統合を目指す東アジアや南米、アフリカの各国にとって生きた先進事例だ。
 二度の大戦を経験した欧州は、根深い対立と憎悪を乗り越えれば、平和と繁栄に向かう道が開けることを拡大EUという形で示した。
 統合の共通基盤づくりは、まず乗り越えることからだ。どうすれば可能か、欧州の先達からそこを学び取りたい。

[京都新聞 2007年06月25日掲載]

【京都新聞・凡語】

投票年齢引き下げ

 ひと昔前なら青年団に入って大人の仲間入りをしたのが十六歳-という地域の 慣習に基づき十六歳以上に住民投票権を与えようとしたのが、野洲市の「まちづくり基本条例案」だった▼投票年齢を二十歳から十八歳に下げた憲法改正のため の国民投票法よりもさらに二歳引き下げる。同年齢の条例は神奈川県大和市以外にないという思い切った案だった▼「今どきの十六歳」が大人かどうか市民の意 見は分かれたが、十六歳は義務教育を終え、女性が結婚できる年齢でもある。「自分のまちのことを決める制度。若い人に任せてみることも必要」などと教育効 果や若者の発想に期待する声が多かったという▼しかし、二十二日の市議会で条例は成立したものの、年齢などを削除する修正が行われた。どうも修正した議員 らには、住民投票の導入で議会の影が薄くなるという危機感の方が強かったようだ。市長与党であるため、否決はせず修正にとどめた、ということらしい▼海外 の投票年齢は十八歳が一般的だが、欧州では十六歳に下げる動きが出ている。国内でも国民投票法の十八歳の採用や少年の刑罰対象年齢の引き下げから、成人年 齢などの見直しが課題となっている▼そんな中、野洲市は住民投票の実施のための条例作りに着手する。さて、投票年齢をどうするのか。この際、住民投票で意 見を聞いてみてはどうか。

[京都新聞 2007年06月25日掲載]


【朝日・社説】2007年06月25日(月曜日)付

ミンチ偽装―業者も役所もひどすぎる

 店で売っている食べ物はどこまで信用できるのか。そう思いたくなる出来事がまた起きた。

 北海道の食品加工卸会社ミートホープが、牛肉ミンチに格安の豚肉などを混ぜて出荷していた。この偽ミンチは冷凍コロッケをはじめとする身近な食べ物に加工され、全国の食卓に上っていた。

 消費者は肉の種類をごまかされたうえに、高い肉の代金を払わされていた。

 「混ぜれば分からないと思った」。この社長の言葉からは、食品を扱う会社の自覚や責任が全くうかがえない。

 不正は豚を牛と偽ったことにとどまらない。小中学校の給食用として、ブラジル産の鶏肉を国産だとごまかして出荷した疑いも出てきた。

 さらに、ミート社の元幹部が耳を疑うような発言をした。腐臭がするほど古い肉を仕入れ、殺菌処理をしたうえで、家畜の血液で赤く色をつけて牛肉に見せかけた、というのだ。事実とすれば、肉の安全性も疑わざるをえない。

 北海道警は虚偽表示を禁じた不正競争防止法違反の疑いで家宅捜索をした。徹底した解明を求めたい。

 それにしても、こんな不正が何年間も続いていたのに、加工や流通の過程でなぜ見抜けなかったのか。

 北海道加ト吉などいくつもの会社が、ミート社の肉を仕入れていた。加工食品の場合、消費者は加工業者や販売元を信用して品物を選ぶ。おかしな肉が混ざっていてはブランドにも傷がつく。材料のチェックに万全を期してほしい。

 なんとも理解しがたいのは、行政のお粗末な対応だ。

 ミート社のやり方を見かねた元役員らが昨年2月、農林水産省の北海道農政事務所に会社の不正を告発し、偽の牛ミンチを証拠として持ち込んだ。ところが、まともに調査しないまま、事実上、放置していた。

 農水省が立ち入り検査をしたのは、朝日新聞が同じような情報を手に入れ、ミンチを調べて不正を報道してからだ。

 農水省は「食品表示110番」を設けるなどして、偽装の疑いのある食品を通報するよう市民に呼びかけている。しかし、いくら通報しても、たなざらしにするようでは何の意味もない。

 北海道庁との関係もちぐはぐだ。今回寄せられた告発の情報について、農水省は道庁に伝えたと言い、道庁は否定するなど説明は食い違ったままだ。貴重な情報をどのように扱ったのか。放置した責任はだれにあるのか。きちんと調べて、明らかにしなければならない。

 かつて雪印食品は輸入牛肉を国産と偽るなどして解散に追い込まれた。消費期限切れの原料を使った不二家は一時、生産休止を余儀なくされた。それでもなお食品業界の不祥事はなくならない。

 このままでは、食品業界はますます疑いの目で見られ、消費者の加工食品離れが進むだろう。

大気汚染訴訟―高裁の和解勧告を生かせ

 東京都内で道路の近くに住んだり、近くで働いたりして気管支ぜんそくなどに苦しんできた患者の救済が、大きな山場を迎えた。

 患者が損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めた東京大気汚染訴訟の控訴審で、東京高裁が原告と被告の双方に和解を勧告した。被告は国と東京都、首都高速道路、自動車メーカー7社である。

 その中で注目されたのは、自動車メーカーに解決金として12億円の支払いを求めたことだ。

 解決金の支払いは患者が要求していた。一審でメーカーは責任を認められなかった。高裁がメーカーに解決金の支払いを求めたのは、法的責任はともかくとして、メーカーにも社会的な責任を負ってもらおうという強い意思の表れだろう。高裁の判断を評価したい。

 解決金の額については患者とメーカーの主張の間に隔たりがあり、いずれも不満かもしれない。高裁も勧告で、「(双方に)苦渋の選択を迫るものであろう」と述べた。

 ここは双方とも勧告を前向きに受け止めて、結論を出してもらいたい。

  02年に東京地裁で言い渡された一審判決では、自動車の排ガスと健康被害の因果関係が認められた。しかし、賠償を命じられたのは、国などの道路管理者だけ だった。大気汚染の元凶とされたディーゼル車のメーカーは「車の使用者が排ガスを出す主体であり、メーカーはその移動を制御できない」として責任を認めら れなかった。

 控訴審が結審した昨年9月、東京高裁は双方に和解協議をうながした。

 原告が示した3条件のうち、医療費助成制度は東京都が音頭を取り、国や首都高速道路、メーカーも協力を約束した。環境対策は国や東京都などが実行することになった。残された課題が解決金の支払いだった。

 和解勧告について、患者側は「具体的に検討に入りたい」とだけ語った。要望してきた25億~30億円とは開きがある。すんなりと受け入れるわけにはいかないのだろう。患者の中で意見の違いが出てくるかもしれない。

 メーカーも明確な態度は示さなかった。メーカーにすれば、そもそも一審では勝っている。ほかの地域でも同じような負担を求められたら、巨額になりかねないという心配もある。

 一方で、この額なら支払ってもいい、という考えもメーカーから漏れてくる。環境対策はメーカーにとって避けて通れない課題であり、勧告を拒めば、企業イメージが悪くなるからだろう。

 この訴訟は最初の提訴からすでに11年がたった。提訴は6次にわたり、原告は約630人になった。そのうち、すでに100人以上が亡くなっている。

 患者もメーカーも高裁の和解勧告を生かす道を考えて、一日も早い解決を図ってもらいたい。

【朝日・天声人語】2007年06月25日(月曜日)付

 欧州に住んでいた女性の話である。6 年前の夏、日本の母親が信号無視の車にはねられ、急死した。一番早い飛行機と新幹線で帰郷し、スーツケースを引きずって斎場に駆け込むと、火葬が始まって いた。後日、実家の洗面所で母を見つけ、そっとティッシュにくるむ。ブラシの毛髪だ。

 横浜市で開かれた葬祭見本市で、「手元供養」の商品群を見た。たとえば、遺骨や遺髪から合成するダイヤモンドは、炭素の結合力を故人とのきずなに見立てる。遺骨と石の原料を溶かして飾りにする業者は、工程を遺族に見せるという。

 「愛する人たちとの死別に比べれば、他のことはいずれも、人生で取るに足らない」。物理学者の米沢富美子さんは『二人で紡いだ物語』(朝日文庫)で、夫との別れをこう書いた。

 風になると思えば、いくらかは安らぐ。でも、「人の世の悲しみをよそに、自然は容赦なく営みを継続し、春がゆき、夏が来ようとしている」(同書)という心境になれば、愛する人の「かたち」を欲することもあろう。

 日本の死者は03年に年100万人を超え、葬祭関連の市場も膨らんでいる。一方で、介護や医療の負担もあって、葬儀1件あたりの出費は減る傾向という。都会では、お墓や仏壇が縁遠くなりつつある。

 死者をしのぶ行為は本来、すぐれて個人の心の問題だ。しきたりや世間体を離れ、簡素でも自分に正直に、気が済むようにすればいいとも思う。私事にわたるが、冒頭の話は今回、手元供養をめぐるやりとりの中で、妻から初めて聞かされた。


【毎日・社説】

社説:パレスチナ 独立への夢をしぼませるな

 いったい何のための戦いなのか。一般市民には同情を禁じえない。67年6月の第3次中東戦争で、ヨルダン川西岸やガザ地区などがイスラエルに占領 されてから40年。占領下で苦しい生活に耐えてきたパレスチナ人たちは、ここへきて指導部が分裂するとは思いもしなかっただろう。

 分裂後、ガザはイスラム原理主義のハマスが、西岸地区はアッバス自治政府議長の支持母体ファタハが支配するようになった。ハマス出身の首相だったハニヤ氏とアッバス議長が対立し、二重権力状態の中でハマスとファタハが抗争を繰り広げた末の分裂である。

  連立政権は崩壊し非常事態内閣が組織された。ハマスとファタハのどちらが勝ったというより、双方とも敗北しつつあるのではないか。ガザは東京23区の約6 割の面積で、西岸は千葉県より少し広い。その二つの地域に独立国家を樹立するのがパレスチナ人の目標なのに、ただでさえ前途遼遠(りょうえん)な目標がさ らに遠のいてしまった。

 これを独立への「生みの苦しみ」と考える人もいる。なるほど、抗争を通じてハマスとファタハが自分たちは運命共 同体だと悟れば、「雨降って地固まる」の効果も望めるからだ。だが、両者の抗争が長期化すれば、パレスチナを占領するイスラエルへの批判は国際的に衰え、 パレスチナ独立を支持する動きも冷え込むだろう。

 前者のシナリオをたどるよう祈りたい。民衆の長年の苦労を水泡に帰してはなるまい。西岸とガザへの独立国家樹立は、一般に「ミニ・パレスチナ構想」と呼ばれる。ただでさえ小さい二つの地域を自ら分断して、どんな国をつくろうというのか。

 歴史を振り返ると、第二次大戦前からパレスチナではイスラム教の聖職者が独立運動を率い、60年代になると宗教色の薄いパレスチナ解放機構(PLO)に主導権が移った。ファタハはPLOの主流派であり、故アラファト議長が育てた組織だ。

  80年代後半になるとPLOの闘争は行き詰まり、イスラムの立場からパレスチナ解放を求めるハマスが台頭する。ハマスは06年の評議会選挙でファタハを抑 えて圧勝した。パレスチナ人がイスラム主義と世俗主義の間で揺れ動いているように見えるのは、長い閉塞(へいそく)状況の中で、懸命に変化を求めてきたか らだろう。それを思えば、ハマスとファタハは歩み寄るしかないはずだ。

 パレスチナ指導部の分裂に対し、米国と欧州、アラブ主要国はアッバス議長への支持を表明した。米欧は、凍結していた直接支援の再開も約束した。イスラエルがガザに侵攻する可能性もある。

  だが、民主的な選挙で勝ったハマスを強硬手段で排除すれば、中東全体に悪影響が及ぶ。ハマスを忌避する米ブッシュ政権の仲介は非現実的としても、ハマスと 一定のパイプを持つロシアや、新時代の中東外交を模索する日本が仲介に関与してもいい。中東情勢をさらに悪化させないために、国際的な連携が必要だ。

毎日新聞 2007年6月25日 東京朝刊

社説:カエルツボカビ症 生態系の危機に目を凝らせ

 これまで知られていなかった感染症が猛威を振るう。「新興感染症」に脅かされているのは人間だけではない。

 両生類の世界では「カエルツボカビ症」が脅威となっている。98年にオーストラリアとパナマで発見され、その後も世界各地で確認されている。

 昨年末には日本でも外国産のペット用カエルの発病が確認された。6月には野生のカエルの感染が明らかになった。麻布大などの調査によると、餌用や実験用のカエルでも感染が確認されている。

 これは単にカエルの危機にとどまらない。生態系への影響を考え、迅速に手を打つ必要がある。

 このカビはカエル、イモリ、サンショウウオなど200種類以上の両生類に感染する。感染しても発病しない種もあるが、致死率が90%以上に上る種もある。感染力は非常に強く、水などを介して次々と広がっていく。

  両生類は世界に約5700種いる。そのうち3割が絶滅の危機にひんし、120種が80年代以降に絶滅したと推測される。ツボカビはこうした両生類の激減・ 絶滅の重要な要因と考えられる。日本にもオオサンショウウオのような固有種を含め65種が生息しており、影響が気にかかる。

 カエルの減少は食物連鎖を通じ生態系にも大きな影響を与える。カエルを餌にしているサギやヘビ、イリオモテヤマネコやカンムリワシなどを減少させ、場合によっては絶滅を招くかもしれない。

 逆にカエルが餌としている昆虫は増加する。その結果、農作物の被害が増えたり、昆虫が媒介する感染症が増える恐れがある。

 環境省は自治体などと協力し野外のカエルの調査を計画している。早急に実態を把握し、対策をたてなくてはならない。

 カエルツボカビが国内で確認されて以来、研究者らが中心となって広報活動や相談窓口のネットワーク作り、検査体制の確立などを自主的に行ってきた。今後は、国や自治体が予算や人の手当てを積極的にしていく必要がある。

  両生類の感染症については法的整備がなされていないため、水際での食い止めや、ペット業者への指導、追跡調査などが実施しにくいという問題もある。国や自 治体は検疫の強化、販売・流通の監視にも力を入れてほしい。生態系の保護に焦点をあわせた法整備を検討する必要もあるだろう。

 ペット業者やカエルを実験に使う研究者の自主的対応も欠かせない。両生類を飼っている人が十分な知識を持つ必要もある。カエルなどが病気になったり死んだりしても、野外に出したり埋めたりしてはいけない。飼育していた水も消毒する必要がある。

  カエルツボカビは人には感染しないし、カエルの治療法もある。おかしいと思ったら獣医師に相談してほしい。ツボカビに詳しい「コア獣医師」や、知識のある 動物園、水族館なども相談を受け付けている。カエルを守ることが、私たちを守ることにつながることを忘れないようにしたい。

毎日新聞 2007年6月25日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:英国植民地だった香港が中国に…

 英国植民地だった香港が中国に返還された97年7月1 日は、バケツをひっくり返したような大雨だった。その中を進駐してきた中国軍に、香港の人々は主権交代を実感した。返還後初の立法会選挙が行われた98年 5月24日も土砂降りの雨だった。香港返還は雨と縁が深い▲98年の選挙を取材したが、ズボンのすそをまくり上げ、靴に水をためながら投票所に向かう市民 の姿に、胸が熱くなった。政治には無関心といわれた香港人が、自分たちの権利を守ろうとする熱気が伝わってきたからだ。投票率もそれまでの30%台から 53%に大幅アップした▲中国は香港に高度な自治を保障する「1国2制度」を50年間実施すると約束した。来月1日で、返還から10年の節目を迎える。約 束の期間の5分の1が過ぎたばかりというのに、香港はすっかり様変わりしてしまった▲ビジネスセンターの地位を上海に取って代わられ、今年1月には、人民 元と香港ドルの通貨価値が逆転するなど、地盤沈下が進む。中国との貿易拡大や大陸からの観光客増加に活路を求める香港経済は、今や中国頼みの状態だ▲それ でも、立法会や行政長官の普通選挙を求める声は根強い。3月の行政長官選挙では、民主派が初めて対抗馬を擁立した。親中派に有利な間接選挙では民主派候補 に勝ち目はなかったが、その訴えは市民の共感を呼んだ。民主化を求める熱気は、まだ消えていないと信じたい▲最高実力者として香港返還を指揮したトウ小平 氏は、半世紀たてば、中国は香港に追い付くと考えていたという。ならば経済だけでなく政治でも、香港で改革を先行させ、中国はそれを目指して進めばいい。 中国がそんな度量を持って前向きに活用してこそ、壮大な実験は意義あるものになる。

毎日新聞 2007年6月25日 東京朝刊


【読売・社説】

光化学スモッグ 中国発の「越境汚染」が問題だ(6月25日付・読売社説)

 1970年代に社会的な問題となった「光化学スモッグ」が再び多発している。しかも以前とは異なり、大都市部だけでなく地方でも被害が出始めた。

 原因として、中国から飛来した大気汚染物質による「越境汚染」が指摘されている。政府は、早急に対策に取り組まねばならない。

 光化学スモッグは、自動車や工場、事業所などから出る窒素酸化物や炭化水素といった大気汚染物質に起因する。これに太陽の光が当たると、光化学反応が起きて、主にオゾンなどからなる「光化学オキシダント」を生じる。

 大量発生すると白く靄(もや)がかかった状態になるため、スモッグと呼ばれる。

 体育の授業などで長時間、屋外にいることの多い児童、生徒を中心に頭痛がしたり、失神したりと健康被害が出る。症状が軽い場合でも、目がチカチカしたりセキが出たりする。

 都道府県は、光化学オキシダント濃度に応じて注意報を出している。70年代には、都道府県の発令日数の合計が年間延べ300日を超えることもあった。80年代になると、自動車、工場などの排ガス規制が功を奏して、これが延べ100日を下回り始めた。

 ところが、2000年以降は、発令日数が、毎年延べ100日を超え、200日を突破した年もある。

 特に今年は、先月末で発令日数が延べ44日に達している。過去5年と比べて10倍超のハイペースだ。5月9日には、光化学スモッグと無縁だった新潟県を含め22都府県で注意報が発令された。

 気象庁も、きめ細かい光化学スモッグ予測をスタートさせた。まず首都圏で実施し、全国への展開を目指している。

 国立環境研究所などは、中国の工場や自動車から排出された窒素酸化物が光化学オキシダントに変わり、これが西風に乗って日本に飛来している、という分析結果を発表している。

 光化学スモッグが多発している福岡県など九州地方の自治体も対策に動き始めた。外務、環境両省に、アジア地域での大気汚染物質の監視や、中国に対する大気汚染対策の申し入れなどを要請している。両省は対応を急ぐべきだ。

 無論、国内でも、自動車排ガス、塗料などに含まれる炭化水素による大気汚染は解消された訳ではない。こちらの対策も着実に進める必要がある。

 同時に、光化学スモッグが広域に及ぶことを前提に、全国で備えを充実させなくてはならない。速やかな注意報の発令や屋内避難の呼びかけなどを通じて被害を最小限に抑えることも大切だ。
(2007年6月25日1時33分  読売新聞)

ドクターヘリ 整えたい空の救命救急体制(6月25日付・読売社説)

 医師を乗せて救急現場に急行するドクターヘリは、一刻を争う患者の救命に役立つ。

 その全国的な配備を目指す特別措置法が成立した。来年4月施行される。法制定を機に空からの救命救急体制を確立したい。

 心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞は発症後の素早い治療が生死を分ける。道路が寸断された事故現場やへき地、離島では、ヘリコプターの搬送が唯一の救出手段になる。

 大災害ではとくに緊急性が高い。だが、阪神大震災の時は、発生当日に医師の乗っていない消防用ヘリが患者1人を運んだだけだった。

 この反省から、国は、ドクターヘリを試験的に導入し、2001年度から補助制度を設けた。都道府県が救急センターや大学病院などヘリが常時待機する病院を指定し、ヘリ運航会社とリース契約を結ぶ。年間1億7000万円を上限に維持管理費を国と折半する仕組みだ。

 だが、自治体の財政難から配備は遅々として進まず、北海道、千葉、静岡、岡山など10道県の11機にとどまる。

 特措法では、都道府県が病院の配置などを定める医療計画にドクターヘリの整備目標年次や配置先を盛り込むよう求めた。来年度は、医療計画の5年ごとの改定時期に当たる。各都道府県はヘリ配備に積極的に取り組んではどうか。

 財政負担軽減のため、補助制度に加えて、保険業界などから寄付を募って助成金を出す仕組みの創設もうたった。

 70~80年代にドクターヘリの配備が進んだ欧米各国では、救急患者の治療開始までにかかる時間が従来の3分の1に短縮された。ドイツでは、半径50キロごとの拠点病院にヘリを配備し、交通事故の死者を3分の1に減らした。

 日本でも、救急車に比べて、死者数が4分の1減り、社会復帰も5割近く増えた、という厚生労働省の研究がある。

 特措法では、ヘリの迅速な出動や安全運航のため、都道府県に対し、関係機関との連絡体制構築を求めている。傷病の状況による出動基準、救急車などと緊密に連携した指令システムが必要だ。

 ヘリが未配備の地域では、近接県からの出動や防災ヘリの活用も考えたい。

 着陸場所の確保や騒音対策も課題だ。現在、ドクターヘリの出動は、全国で年4000回に上るが、住民の苦情で回数制限を受けるケースもある。命を救う飛行に理解を求めることも大事だ。

 今は日中の運航だが、照明設備のあるヘリポートを整備すれば、夜間も可能になる。市町村や道路管理者の協力で、校庭や公園への着陸、高速道路上の事故対応もスムーズに行えるようにしたい。
(2007年6月25日1時34分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月25日付 編集手帳

 体重1トン近い大型馬が、最大1トンもの鉄製そり を引いて突進する。北海道帯広市で、ばんえい競馬を間近に見た。馬のいななきや、騎手が振るうムチの音が伝わってきて、大変な迫力だった◆長さ200メー トルの直線コースに二つの坂がある。二つ目の高い坂をどう乗り切るかがレースのヤマ場だ。農耕用で力の強いばん馬でも、重いそりを引いて登り切るのは容易 ではない◆アワを吹きあえぎにあえぐ。つまずいてひざをつき、おいてけぼりにされる馬もいる。企業やサラリーマンの厳しい生存競争を思いだし、身につまさ れる人も多いことだろう◆ばんえい競馬自体も試練の中にある。昨年度までは旭川、北見、岩見沢でも開催されていたが、長年の赤字に耐えかね、全面廃止も検 討された。民間企業が支援に乗りだし、今年度から帯広に一本化することで、ようやく存続が決まった経緯がある◆競馬場では喫煙を制限し、トイレを改装する などして、女性や子供も訪れやすいように模様替えした。今月半ばから初のナイター営業をスタートさせ、イルミネーションを飾って雰囲気を盛り上げた◆おか げで、入場者数や売り上げは、今のところ予想を上回っている。本州などからの観光客も訪れるようになった。民間手法の導入が活を入れたが、本当の勝負は “しばれる”冬になるという。
(2007年6月25日1時33分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】総連仮装売買 副議長関与の徹底解明を

 朝鮮総連中央本部の土地・建物をめぐる仮装売買事件で、東京地検は総連ナンバー2の許宗萬(ホジョンマン)責任副議長を事情聴取した。総連の中枢にどこまで捜査のメスが及ぶか注目される。

  これまでの関係者の証言などによると、売買契約が成立する1カ月前の4月中旬、許氏側から取引仲介役の不動産会社元社長に4億8400万円の資金が提供さ れたことが判明している。資金の名目は、総連の家賃や購入を了承した元公安調査庁長官の緒方重威弁護士への謝礼、不動産会社元社長への手数料だったとされ る。

 総連が整理回収機構(RCC)から627億円の返済を求められた訴訟で敗訴することを想定し、許氏らが中心になって中央本部の差し押さえを回避しようとしていた疑いが強い。

  許氏は財政担当副議長などを経て、平成5年から責任副議長を務めている。平成13年に韓徳銖(ハンドクス)前議長が死去して以降、「実質的な最高実力者」 (公安関係者)といわれる。総連元幹部の告白などによると、許氏は総連直営のパチンコ店経営やバブル時代の地上げ、北朝鮮への献金などに深く関与していた とされる。検察当局による徹底解明が待たれる。

 総連中央本部の仮装売買には、不動産会社元社長のほか、信託銀行元行員や投資顧問業者ら の関与も明らかになっている。緒方元長官は、朝鮮総連が敗訴した後の会見で、「今になってみると、すべてよく分からん人物。だまされたとは思いたくない が、乗せられたのかと思う」と話した。

 緒方氏は最高検公安部長、広島高検検事長などを務めた法律のプロで、この言葉をそのまま信じるこ とはできない。不動産会社元社長は旧住宅金融専門会社(住専)の債権回収を妨害した強制執行妨害容疑で摘発され、緒方氏はその裁判で元社長の弁護も務め た。検察当局には、「身内に甘い」といわれないための厳正な捜査を重ねて求めたい。

 自民、公明両党も近く、緒方氏から事情聴取し、実態解明に向けた調査を行う。元公安調査庁長官も関与した朝鮮総連の仮装売買は、国の治安にもかかわる重大事件である。緒方、許両氏らの参考人招致も含め、国会でも真相解明が必要である。

(2007/06/25 05:03)

【主張】ミンチ偽装 消費者無視の会社犯罪だ

 北海道苫小牧市の食肉加工販売会社「ミートホープ」による食肉偽装問題は、刑事事件に発展した。同社は、牛肉のミンチに豚肉や鶏肉を混入させて販売するなど、数々の不正行為の疑いが指摘されている。

 北海道警は、これは不正競争防止法違反(虚偽表示)に当たると判断し、ミート社の本社など関係個所を捜索、強制捜査に乗り出した。

 会社の利潤だけを目的に、消費者をだました手口は悪質極まりなく、詐欺行為に等しい。警察の捜査着手は当然で、食の信用・信頼を失墜させた今回の事件の徹底解明を求める。

 ミート社は、食品会社「北海道加ト吉」などに「牛100%」と表示しながら、豚肉や鶏肉を混入させた偽装の牛ミンチ肉を販売していた。この牛ミンチを原材料にした「牛肉コロッケ」は、人気ブランドで、全国の消費者の口に入っていた。

 警察のこれまでの捜査で、ミート社の幹部社員らは、「牛肉に豚肉や鶏肉を混ぜてもわからない」などと、社長自らの指示で、ミンチの偽装工作が行われていたと証言している。

 牛ミンチの偽装問題が発覚した当初、社長は「間違って豚肉などを混ぜてしまった」などと偽装工作を強く否定する記者会見を行っていた。

 ミート社は社長のワンマン企業とされ、社長主導による牛ミンチの偽装などが長年実行されていたようだ。会社ぐるみの犯罪といえよう。

 疑惑はこれだけでなく、賞味期限が切れた冷凍コロッケを格安で仕入れ、期限を変えて転売したり、大手鶏肉販売会社の袋をコピーし、別の会社から仕入れた鶏肉を詰めて売るなど、次々と信じられないような不正が発覚している。

 食品を製造、販売する会社は、消費者に品質の良い、安全な「食」を提供することが絶対条件である。しかし、最近は賞味期限切れの製品を偽装して販売するなど、食品会社の企業モラルが問われる事件が後を絶たない。

 今回のミート社の事件は、これまでの事案のなかでも悪質性が際立っている。北海道警は詐欺罪の適用も視野に入れ、厳しく追及してもらいたい。このような会社には、食品を製造、販売する資格などない。

(2007/06/25 05:02)

【産経抄】

 1869(明治2)年のきょう、政府は士農工商の身分制度を廃止した。といっても形ばかり。人々の差別意識は、なかなかなくならなかった。「等し く八文の銭を払って、丸裸で同じ湯につかっている。それなのにどうして士族は旦那(だんな)と呼ばれて威張り、平民は貴様などと軽蔑(けいべつ)されても 恐縮しているのか」。

 ▼ 「私権論」のなかで、銭湯を例にとって嘆いた福沢諭吉は、自分でも三田の慶応義塾の真向かいで、銭湯を経営していた。実はこれ、東京都の浴場組合が発行し ているPR誌「1010」6月号の記事の受け売り。先日、あまりの蒸し暑さに耐えかねて、飛び込んだ銭湯で目に留まった。

 ▼平成7年から、同誌で「風呂屋のオヤジのフロント日記」の連載を続けているのが、墨田区にある銭湯「さくら湯」の2代目、星野剛さん(72)だ。15歳で親類の経営する銭湯に修業に出てからの半生をつづった『湯屋番五十年銭湯その世界』(草隆社)などの著書もある。

 ▼昨年3月からは、ブログも始めた。経営はすでに3代目の長男に任せているが、今も番台ならぬフロントに立つ毎日だ。修業時代は、1日に1000人近くあった客が、今は百数十人。昭和43年に2687軒もあった都内の銭湯も、900軒あまりに減った。

 ▼客も変わった。「暑いですねえ」と声をかけても、何の返事もしない無愛想な若者が増えた。それでも、おなじみのお年寄りや子供たち、風呂好きの外国人とのやりとりは楽しい。ブログのネタに困ることはないという。

 ▼暗い話は銭湯には向かないから、渋谷で起こった温泉施設の事故も、客との話題にならない。「あそこは単なる遊びの場所。地域に根ざしたわれわれの商売とは違います」と星野さんはいう。

(2007/06/25 05:00)


【日経・社説】

社説 好業績に慢心せず新たな成長戦略を(6/25)

 企業経営者が年に一度、株主と正面から 向かい合う株主総会が今週ピークを迎える。2007年3月期は上場企業の連結経常利益が5期連続で増え、 1976―80年度の増益記録に肩を並べた。日経平均株価が約7年ぶりの高値を回復したのも、一層の業績拡大への期待だろう。経営者は足元の好業績に慢心 することなく、より長期的な成長に向けた道筋を示してほしい。

緊張走る株主総会

 今年の総会では経営陣に対抗する株主提案が過去最多となる。株主がモノ言わぬ時代の象徴だった「シャンシャン総会」は過去の話になった。株主と経営者が緊張感をもって向き合う時代がやってきた。

  例えば機関投資家の企業年金連合会は、自己資本利益率(ROE)が3年連続で8%以下にとどまる企業には、取締役の再任に原則反対する方針を打ち出した。 ブルドックソースとの攻防が注目される米国の投資ファンド、スティール・パートナーズも、ブラザー工業や因幡電機産業に大幅な増配要求を突きつけた。

  企業は収益の回復でバブル崩壊の傷から立ち直った。健康体に戻れば経営者が追うべき目標も変わる。もうけを「ためる」から「戦略的に使う」姿勢への転換 だ。だが、企業の手元流動性、つまり手元に保持している資金の総額は増え続け、国内総生産(GDP)の1割に相当する50兆円まで積み上がった。安全経営 を優先するあまり、利益を成長のために使うことにためらいが残る。

 こうした姿勢が株主のいらだちを呼んでいる。米メリルリンチが世界の 投資家に「企業はもうけを何に使うべきか」と聞いたところ、借入金の返済などを求める声が8%だったのに対し、新たな成長につながる「設備投資」を重視す る回答が40%に上った。「成長の道筋を示せ。それができないなら、配当などの形でため込んだカネを還元してほしい」というのが、日本企業を取り巻く株主 からの要求である。

 経営者にとっても、攻撃的な株主におびえ、買収防衛策を整えることが本来の仕事ではない。説得力ある成長のシナリオを提示し、それを着実に実行することこそ重要だ。

 日本企業にはまだまだ成長の余地がある。その大きなカギを握るのがグローバル化だ。円安の追い風もあって、「日本企業は国際競争力を回復した」といわれる。そこに死角はないだろうか。確かに、日本の輸出額は過去10年で50兆円から75兆円へと高い伸びを示した。

 だが、国際競争力の強い産業セクターはトヨタ自動車やキヤノンなど組み立て系製造業に偏っている。21世紀型産業といわれる金融業やIT(情報技術)の分野では、世界との水があいているのが実態だ。

  不良債権を克服したメガバンクの収益は高水準だが、世界展開は欧米勢に著しく出遅れた。医薬品やソフトウエアなど知識集約型の産業でも、日本勢は劣後す る。従来こうしたセクターは、規制や日本的な商慣行に守られ、「内向き」のままでもやってこられた。今や少子化で国内市場が縮む中で、グローバル化は待っ たなしの課題に浮上している。

 世界に目を転じれば、内需産業の代名詞だった小売業でも、英テスコのように買収をテコに世界展開する企業もある。製造業に限らず、サービス業や金融、ITでも世界の舞台で活躍できるプレーヤーを生み出すことは、日本経済の大きな課題だ。志ある経営者の登場を期待したい。

 もう一つのカギは新しい技術や商品、サービスを生み出す新機軸の促進だ。「日本企業は飛躍的な新機軸を見いだすのが苦手」という指摘もあるが、そんなことはない。

グーグルしのぐ任天堂

  例えば新型ゲーム機の「Wii(ウィー)」がヒットした任天堂は社員1人あたりの純利益が5000万円を突破し、米マイクロソフトやグーグルを上回った。 株式時価総額でも松下電器産業を追い越した。「ゲームは一部マニアのもの」という通念を捨て、高齢者から子供まで幅広い層に受け入れられる商品設計がブー ムにつながった。

 ほかにも世界的な広がりを持つイノベーションの種子は数多くある。電子マネーの普及は、IC乗車券との併用が進む日本 が世界の先頭ランナー。「21世紀の鉄」とも呼ばれる軽くて強い炭素繊維は、東レなど日本勢の独壇場だ。地球温暖化を防ぐための環境技術でも、日本は1日 の長がある。こうした種を現実のビジネスに着実に結びつければ、成長の可能性が広がるだろう。

 今の企業業績の好調は順風満帆の世界経済に負う部分が大きい。経済に循環はつきもので、いずれ下降局面が来る。足元の明るいうちに競争力に磨きをかけ、グローバル化や次のイノベーションに布石を打つ。それが持続的成長のために不可欠であり、株主の声に応える道である。

【日経・春秋】(6/25)

 昭和30年代までの小説や映画には「BG」という言葉がよく登場する。ビジネス・ガールの略だ。当時は働く女性をこう呼び習わした。それが「OL」に改まるきっかけは、週刊誌「女性自身」による新しい呼称案の読者投票だった。

▼ 「サラリー・ガール」「ビジネス・レディ」など様々な呼び名が寄せられたが、1位は「オフィス・レディ」。1963年というから40年以上昔だ。往時は輝 きを放っていたに違いないこの言葉も、今やすっかり手あかが付いている。補助的な役割という響きがあって、当の女性たちにもあまり評判はよくない。

▼ 今春には改正男女雇用機会均等法も施行され、「OL」への違和感はますます強いはずだ。しかし職場の実態はどうだろう。2007年版の男女共同参画白書に よると、日本では管理職に占める女性の比率がようやく1割ほど。欧米には遠く及ばず、アジアの中でも低い。20年前と比べてもさほど伸びていない。

▼ 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」。こんな考え方に賛成する人が日本は欧米よりもはるかに多いと、今回の白書は指摘している。意識改革を図るのは簡 単なことではなさそうだ。かつての「BG」呼び替え案には、なんと「オフィス・フラワー」というのがあった。隔世の感、とは言い切れない気がする。


↓おじさんの雑談も面白いジャンと思ったらクリック。(笑)
人気blogランキングバナー

OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60 CE OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek DS-60

販売元:オリンパス
発売日:2007/09/14
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月24日 (日)

6月24日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月23日朝刊)

[慰霊の日]検定撤回は県民の総意

軍官民共生共死の論理

 文部科学省の教科書検定で、高校用歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる記述から日本軍の関与を示す記述が削除された。県民の間に沖縄戦の歴史歪曲への強い懸念が広がる中で、「慰霊の日」を迎えることになったのは残念である。

 沖縄戦では「軍官民共生共死」の論理の下で多くの非戦闘員が死に追い込まれた。各地で住民証言が収集され、「集団自決」は軍による強制・強要・命令・誘導等によって引き起こされたというのが戦後蓄積されてきた沖縄戦研究の成果である。

 なぜ今になって日本軍の関与が削除されるのか、私たちは沖縄戦の実相を踏まえ、考えなくてはならない。

 「集団自決」は県内の激戦地で起きた。渡嘉敷島、座間味島、慶留間島では住民が肉親に手をかけた。手りゅう弾やカミソリ、かま、棍棒などが使われ、阿鼻叫喚の地獄絵が広がった。多くの子供たちも犠牲になった。

  渡嘉敷島での「集団自決」で両親と弟妹を失い、生き残った金城重明さんは、「母親たちは嗚咽しながら、迫りくる非業の死について、子供たちに諭すかのよう に語り聞かせていました。恐ろしい死を目前にしながら、髪を整え、死の身支度をしていた婦人たちの様子が忘れられません」(「『集団自決』を心に刻ん で」、高文研)と、犠牲者らの最後の姿を伝えている。

 沖縄戦から六十二年。世代交代が着実に進み、沖縄戦の体験者も年々減少していく。後世に生きる人々が沖縄戦の記憶をどう継承していくかが重い課題として浮上している。こうした問いに正面から向き合うことなしに沖縄の将来を切り開くことはできない。

 県議会は「慰霊の日」の前日、検定意見を撤回し記述を元に戻すよう国に求める「教科書検定に関する意見書」を全会一致で採択し、文部科学省などへの要請行動を展開した。

 「『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者による多くの証言を否定しようとするもの」という批判は、与野党を超えた県民の総意である。政府は県民の声を重く受け止めるべきだ。

日本軍の残虐性薄める

 沖縄戦に関する教科書検定の経緯を振り返ると、政府にとって都合の悪い沖縄戦関連の記述を歴史教科書から消し去りたいかのようだ。研究者らが同様に指摘するのは、日本軍の残虐性を薄める方向での修正の動きである。

 一九八二年度の教科書検定で、沖縄戦での日本軍による住民殺害の記述が削除された。しかし、県民の抗議の高まりなどを受けて記述が復活した。

 そして今回は「集団自決」に関する記述について「沖縄戦の実態について誤解する恐れがある表現」として、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正するよう指示した。

 文部科学省が、教科書を審査する教科用図書検定調査審議会に対し、日本軍の関与を示す記述の削除を求める意見書を提出していたことも判明した。

 伊吹文明文部科学相は「軍の関与があったことは認めている。ただ、すべての集団自決について軍が関与したという記述は必ずしもそうじゃないんじゃないか」と述べ、大臣として検定には介入しない考えを示している。

 文科省の審議官は検定調査審議会の中立性を強調し、今回の削除・修正は審議会の判断だとしている。

 軍の関与は認めつつ、軍関与を示す記述の削除についても理解を示す。これは一体どういうことなのか。

首相の歴史認識を問う

 安倍晋三首相は「戦後体制からの脱却」を掲げ、憲法改正、教育問題を重視してきた。「愛国心」重視の教育基本法を改正し、従軍慰安婦問題で「狭義の強制性」を否定した。靖国問題など首相の歴史認識が問われている。

 今回の検定で「軍の関与」が削除されれば、住民は自発的に死を選んだという意味合いになる。そこには審議会による判断だという説明だけでは済まない大きな論理の転換がある。

 沖縄戦研究者は政府は「集団自決」という言葉に靖国思想を意味する「殉国死」のニュアンスを込めていると指摘する。「今回の検定には文部科学省だけでなく政府筋の介入を感じる」という声さえ出始めている。

 沖縄戦の記憶は今試練にさらされている。「慰霊の日」に犠牲者を追悼していくために、今回の検定問題を契機に沖縄戦の実相を究明し、沖縄戦についての認識をさらに深めていきたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月23日 朝刊 1面)

 鎮魂の願いが島を覆う。沖縄で平和を考えるときどうにも虚無感が付きまとう。

 サイパンが玉砕し、勝機がない中で米軍の本土進攻を遅らせるために沖縄が捨て石にされた。戦後の日本は経済成長を優先させ、安保政策は沖縄で基地を提供してきた。いまも続くこの構図は捨て石の延長ともいえよう。

 ソ連封じ込めなど米国の冷戦政策を設計した外交官ジョージ・ケナンが一九四八年来日し、マッカーサー極東軍司令官と沖縄について協議した。「十分な兵力を沖縄に置けば本土に基地は必要ない」。司令官は本土の非武装化と沖縄の戦略拠点化を主張。

 さらに「住民は単純でお人よし。基地開発でかなりの金を得て比較的幸せな生活を送るだろう」と吹き込んだ。ケナンは「米国による沖縄の戦略的支配を恒久化する」との報告書をまとめた。基地建設と経済振興策で「沖縄人も満足するだろう」と見通した。

 日本に戦争放棄を誓わせて、沖縄に米軍基地を保持することが日米同盟の基盤を成している。皮肉だが、日本国憲法の平和主義は沖縄の米軍基地を担保に可能となっている。そしてお人よしの沖縄人に我慢させるため、振興策という鎮痛剤を打ち込む。

 戦後レジームを変えるという安倍晋三首相にマッカーサーの呪縛から沖縄を解き放つ力はあるだろうか。集団的自衛権の行使が対米追従では沖縄基地がさらに恒久化する。首相は沖縄の慰霊祭でどう平和を誓うか。(屋良朝博)


【琉球新報・社説】

慰霊の日 沖縄戦の記憶は“平和の砦”

 きょうは「慰霊の日」。鎮魂の思いを込め「沖縄忌」とも呼ばれる。六十二年前、二十万人余が犠牲になった沖縄戦が、事実上終結した日とされる。戦後沖縄の原点となるこの日に、戦争と平和について考えたみたい。
 きのう午後、県議会は、文部科学省の高校教科書検定で沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制などの記述が修正・削除された問題で、検定意見の撤回を求める「意見書」案を、全会一致で可決した。
 「慰霊の日の前に、可決されて本当によかった」と、安堵(あんど)の声が上がったのは、直前まで揺れた県議会の対応があった。
 「軍命の有無が検証されていない」との声が、県議の中から出て、全会一致どころか、決議自体が危ぶまれていた。
 県議会の内輪もめをよそに、県内四十一市町村中、三十六市町村議会が検定意見撤回を求める意見書を可決している。二十八日までには全議会が可決の見込みだ。

改ざんに手を貸す政府

 県議会は意見書で「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍の関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と指摘し、「今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである」と強く批判している。
 県議会の意見書可決で、名実ともに県民世論は「検定意見の撤回」の要求を政府に突きつけた。
 だが、政府の壁は依然として厚い。意見書への見解を求められた久間章生防衛相は二十二日、「防衛省は日本軍のことを引き継いだ訳でなく、防衛省が答える話ではない」と、どこ吹く風だ。軍命の有無にも「そんな昔のことは私は知りません」と、はねつけている。
  久間防衛相は、自衛隊と「日本軍」は異なる。そう言いたいのであろうか。だが、自衛隊はまぎれもなく「日本の軍隊」である。日本軍と違うと強調すること で、過去の日本軍の犯した過ちを、忘れようとしている。歴史に学ばない軍の責任者は、また過ちを繰り返しかねない。見識を問いたい。
 十五年ほど前、東京で沖縄戦を指揮した第三二軍の高官・神直道航空参謀に会った。なぜ、住民を巻き添えにしたのか。なぜ軍は住民を守らなかったのか。その問いに「軍隊は敵のせん滅と戦争遂行が役目。住民を守るという命令は無かった」と、淡々と語った。
 「軍は民を守らない」。沖縄戦で生き残った多くの県民が経験で学んだ教訓である。
 戦後六十二年を経て、ことし五月、沖縄では大砲を備えた海上自衛隊の掃海母艦が、米軍基地建設の支援のため、沖縄に派遣された。国民を守るべき自衛隊は、基地建設に反対する市民と対峙(たいじ)し、「民を威圧する行為」との批判を受けた。

体験者の声を聞こう

 自衛隊情報保全隊による「国民監視」の実態も明らかになった。 「軍は民を守らない」との沖縄戦が残した教訓を超える「軍の論理」がそこにある。
 沖縄戦は遠い昔の話ではない。山積する戦後処理問題は、戦争の傷がいまだ癒えない沖縄の現実を冗舌なまでに物語っている。
 沖縄戦での直接の犠牲者のうち、ことし三月末までに十八万三千九百三十五柱が収集された。しかし、四千柱を超える遺骨が、地中深く、あるいは野ざらしになり、収集を待っている。
 県内では二〇〇六年度だけでも八百七十六件もの不発弾処理が行われている。だが、毎年三十㌧を超える処理を続けても、今なお地中には二千㌧を超える不発弾が残る。
 一方で、遺族年金の受給者はこの十年で九千五人(一九九六年)から約四千人(〇六年)と半減している。沖繩戦の実相を知り、戦争体験を語り継いできた「語り部」たちがこの世を去っていく。
 「歴史の目撃者」たちが少なくなり、新たな歴史観による教科書の書き換えが進む。教科書検定問題で「集団自決」での軍命の有無を争点にしているが、本質はまぎれもなく存在する政府の開戦責任も含めた「戦争責任」である。
 歴史の見直しを理由に、政府に都合のいい教科書を書き上げることを考える前に、歴史に何を学ぶかを考えるべきであろう。
 沖縄には、文科省の検定を受けない゛生きた教科書゛たちが、まだまだ健在だ。沖縄戦の体験を直接聞ける。慰霊の日を、戦争と平和を考え、歴史と向き合う節目の日としたい。

(6/23 9:49)

【琉球新報・金口木舌】

 一歩踏み入れると、そこは、ひんやりしていた。が、かび臭く、間もなく額にじんわりと汗がにじんだ
▼公開されている陸軍病院南風原壕。第32軍(沖縄守備軍)の常設病院壕で、日本軍が摩文仁へ撤退するまでの約2カ月間、激戦で多くの死傷者が出る中、軍医や看護婦、ひめゆり学徒らが懸命に看護を続けた場所だ
▼約30に上る手掘りの横穴壕があるが、比較的保存状態の良い20号壕が一般公開された。長さ70メートル、高さと床幅は1・8メートルと狭く、息苦しさも感じる
▼2 月、長野市松代町の「松代大本営」を訪ねた。案内してくれた縣(あがた)重夫さん(松代大本営の保存をすすめる会代表)は1991年に松代大本営に来たひ めゆり学徒たちが「ここに来て沖縄戦が何のために、誰のために戦われたのか分かった思い、と話していた」と紹介してくれた
▼大本営とは、戦時や事変に対応する最高統帥機関。「国体の護持」を目的に地下壕の総延長は約6キロ。象山地下壕を歩いたが、複数人が横列で歩けるほどで、南風原病院壕の息苦しさとだいぶ違う
▼戦争体験者も高齢となり次代に実相が伝えにくくなっている。教科書から集団自決の軍命削除はその流れに拍車を掛ける。「戦争遺跡」が史実を語る。

(6/23 9:43)


【東京新聞・社説】2007年6月23日

延長国会 問答無用で押し通すな

 国会の会期延長が与党の賛成多数で議決された。重要法案をじっくり審議するのならともかく、時間がきたら強行採決では困る。与党は「数」にものをいわせ、問答無用の運営をすべきでない。

 安倍晋三首相は自民党内の消極論にもかかわらず会期延長を決めた理由について、参院選の勝利より「国民のために何をすべきか考えた」という。ならば、一度、頭を冷やして、いま押し通そうとしている法案が本当に国民のためになるのか考え直してはどうか。

 与党は年金時効撤廃特例法案と社会保険庁改革関連法案を二十九日に成立させ、天下り規制を柱にした国家公務員法改正案の早期成立も目指す。いずれも野党は反対だから、強行採決方針が透けて見える。

 “消えた年金”問題では、関連法案が衆院通過した後、該当者不明の約五千万件の納付記録とは別に、千四百万件の未入力の記録が見つかった。首相は年金などの個人情報を一元管理する社会保障番号の導入検討まで踏み込んだ。法案の想定を超えた事態だ。

 首相は「昨年暮れから今年初めにかけて問題があることを知り、よく調査するよう指示していた」とも語っている。ならば、会期延長までしてバタバタするのはどうしたことか。本気なら仕切り直すのが筋だ。

 首相が成立にこだわる天下り規制の法案も疑問が消えない。

  政府案は各省庁による押し付け的な天下りを根絶するため、内閣府に「官民人材交流センター」(新人材バンク)を設置し、再就職の斡旋(あっせん)を一元化 するのが柱だ。しかし、新人材バンクへの各省庁の影響をどう排除するかなど、肝心のところがはっきりしない。十分な説明がないまま法案を成立させても、逆 風を静める“得点”になるとは限らない。

 与党は資金管理団体に限り、五万円以上の経常経費に領収書の添付を義務づける政治資金規正法改正案も成立させる方針だ。資金管理団体以外の政治団体に付け替えたり、五万円未満に小分けすれば、報告義務を免れる。こんな「ザル法」を強行採決するなら国民の反発を買おう。

 参院は「再考の府」といわれる。衆院での審議を補い、必要なら修正して衆院に差し戻す。これが二院制の意義である。「最後のしわ寄せが(参院に)来て、落ち着いて審議できない。大変不本意だ」という扇千景参院議長の苦言はもっともだ。

 衆院の審議時間の七割を消化したら、有無を言わせず可決する。そんなことが定着すると、国会の形がい化が一段と進むことになる。

慰霊の日 沖縄県民の怒りに耳を

 基地の島、沖縄には国際的な軍事情勢を映し出す現実がある。軍と住民との間の不幸な過去がある。県民の怒りに耳を傾け、軍事組織を国民の目で厳しく監視し、統御する重要性を確認したい。

 沖縄は二十三日、戦没者を悼む慰霊の日を迎えた。太平洋戦争末期の一九四五年三月二十六日、米軍の慶良間(けらま)諸島上陸で始まった沖縄戦は、六十二年前のこの日、日本軍が組織的抵抗をやめたことで終結した。

 この戦いは女子学生も含むほとんどの住民が動員され、激しい地上戦に巻き込まれた。二十万人の日本側死者の七割近くが住民である。

 その傷がまだ癒えきっていないのに、沖縄県民にとっては傷口に塩をすり込まれるような出来事が相次いだ。高校の歴史教科書検定で、集団自決の記述が修正させられ「軍の強制」が消されたのは代表例だ。

 軍の関与、強制についてはたくさんの証言がある。事実を無視する文部科学省に対し県民の怒りと不信の声があがったのは当然だろう。

 それだけではない。政府は、米軍普天間飛行場を移設する予定海域の調査に、住民の反対行動に備えて海上自衛隊を出動させた。自衛隊が市民運動や報道陣の取材活動を「反自衛隊活動」と敵視し情報収集していたことも明るみに出た。

 これらの事実で、避難した壕(ごう)から軍人に追い出されたり、方言を使ってスパイ扱いされた経験を想起した県民もいる。自衛隊の行動が、味方のはずの軍から銃を向けられ、軍事優先の意味を身をもって知らされた体験と重なって見えたのだ。

 日本の復興、発展の陰に、沖縄におけるそうした厳粛な事実があったことを、いまなお過重な負担を沖縄に強いていることを、多くの日本人が忘れかけていないだろうか。

 国土面積の0・6%しかない県内に在日米軍施設・区域の75%が集中し、県面積の10%は米軍施設だ。自衛隊の基地、施設も多い。憲法改定が声高に語られ、自衛隊の海外派遣が常態化し、日米の軍事一体化が進む中で、沖縄は太平洋の“要石”として前面に立たされている。

 他方、日本社会の世代交代に伴って、戦争体験の風化が指摘され、戦争の悲惨さに対する想像力の欠如が目立つ。半世紀以上も続いた平和を持続できるか、不安も語られる昨今である。

 いまこそ、最後の激戦地、摩文仁(まぶに)の丘に並ぶ平和の礎(いしじ)に名前を刻まれた犠牲者の無念を胸に刻み、沖縄県民と怒りをともにしたい。沖縄戦の歴史と、沖縄のおかれた現実に正面から向き合いたい。

【東京新聞・筆洗】2007年6月23日

 梅雨空の銀座をぶらついて、書店で面白い本を見つけ た。田中長徳著『晴れたらライカ、雨ならデジカメ』(岩波書店)▼ページを繰るうち「デジタルの海に銀塩の船が浮かぶ」といわれるこの十年ほどの写真をめ ぐる革命的変化を思い知る。最近は「フィルムカメラ」を「銀塩カメラ」というのがおしゃれらしい▼写真家でエッセイストの田中さんは、女性向けのカメラ隔 月刊誌『PHaT(ファット) PHOTO(フォト)』で、「女子ライカ部」というコラムを担当している。普通の女性が普通に高級骨董(こっとう)のライ カを買い「ついでに写真も撮影する」というムーブメントに注目。これら「女性ライカ使い」を青鞜派(せいとうは)以来の「女子民権カメラ運動」と位置づけ る▼本のタイトルは、この女性たちが部の結成パーティーで、持参のデジカメで記念写真を撮影したことに着想を得た。女性たちは「こういう暗い場所はライカ で撮影するのはもったいない、デジカメで十分」と言った。ライカ党の男性カメラマンたちにはない発想で、デジカメに押されっぱなしだった銀塩カメラ復権 と、コンパクトカメラも合わせた共存の可能性を開くと田中さんはみる▼手ぶれ防止技術や解像力の驚異的進歩、画像保存や通信手段の革命的変化に、自身もコ ンパクトカメラを重用、プリンターは使わないという田中さんの懇切なデジカメの技術解説が初心者にもわかりやすい▼国会図書館によれば、五百年単位で古記 録の保存を考えれば「和紙に墨書き」がベストとか。銀塩フィルム再評価の動きが、オールドファンにはうれしい。


【河北新報・社説】

自民の道州制報告/説得力に乏しくはないか

 都道府県に代わる新たな広域自治体とされる道州制の骨格を検討してきた自民党道州制調査会(杉浦正健会長)が、導入に向けて中間報告をまとめた。
 政府が3年以内につくる道州制ビジョンと道州制推進基本法の制定などを経て、8―10年後をめどに「完全に道州制に移行する」としている。自民党はこれを参院選公約に反映させる。

 支持率下降にあえぐ安倍内閣がこれで地方の支持を何とかつなぎ留めたい気持ちは分かる。しかし、中間報告には不自然で理解できない点が幾つかある。
 一つは国の役割についてだ。報告は、国が外交など「国家の存立」や資源エネルギー対策など「国家戦略」にかかわる機能を担い、内政は道州に任せると明記したが、なぜか「国土保全」も国の役割に加えている。

 国土保全と言えば、確かに全国的な震災対策や国土計画など国が関与すべきものはあるが、国道や一級河川、重要港湾の管理・建設など道州に移した方がいい権限にまで国の口出しを認めるということなのだろうか。
 国土交通省の応援団を任ずる「族議員」が動いたとしか思えない。この際、古い自民党の復活は霞が関の中央省庁の抵抗とともに、地方分権の最大障壁であることを忘れないでほしい。

 二つ目は市町村の合併についてだ。報告は「(市町村は)一定の人口・財政規模を有するものに移行すべきだ」として、さらなる合併推進を求めている。
 報告は市町村の数や人口規模の明記は避けたが、党道州制調査会内部では、市町村数を現在の約1800から300に改編する案が検討された経緯がある。

 しかし、一つの自治体の人口が20万以上と試算される300自治体への改編は、適正人口も地域の歴史や経済力も異なる市町村の機械的組み替えを意味する。「平成の大合併」を経て、合併の余力がある市町村など残っていないのも現状で、これ以上の合併は無理というものだ。

 三つ目は、デリケートながら、早急に議論を始めなければならないテーマを参院選対策として軒並み先送りしたことだ。
 まずは道州の区割りと州都。区割りでは政府の地方制度調査会が既に全国を9、11、13に分ける三案を示しているが、案によって東北や九州が一つにまとまったり南北に分割されたりして、伝統ある地方ブロックの再編論議が余儀なくされる。

 州都も既に、各ブロックの中枢都市を中心に県庁所在市間で州都指定に向け水面下の綱引きが始まっているケースもある。
 こうしたテーマに深入りすれば参院選で反発を招きかねないとしても、自民党としては区割りや州都選定の基本的考え方ぐらいは示すべきではなかったか。責任ある政権公約にするならなおさらだ。

 税源が一極集中する東京都の在り方も先送りされた。これは地方税収の格差是正という問題をはらむテーマだ。参院選で東京の大都市票も改選定数1人区の地方票もほしい同党としては「触らぬ神に…」の選択となったわけだが、そんな逃げ腰、及び腰はとてもいただけない。
2007年06月23日土曜日

【河北新報・河北春秋】

 あの世とは、こんな場所かと思われるほど、荒涼とした風景が広がる。むき出しになった岩肌。硫黄孔からは水蒸気が噴き出し、線香のようにたちこめ る。本州最北端の霊場、むつ市の恐山▼年に一度の例大祭は7月20日に始まる。名物は死者の霊魂を呼び寄せるとされるイタコの「口寄せ」だ。数が減り、現 在では20人足らずというが、例大祭には必ず集まる

 ▼ イタコは、よろず相談に応じるカウンセラーでもある。最近目立つのが病気に関する相談だという。青森県立保健大の藤井博英教授のグループが県内の慢性疾患 患者670人を対象に調査したところ、約35%がイタコを訪れていた▼今の大病院は3時間待ちの3分医療。これではとても患者とのコミュニケーションは図 れない。その点、イタコは医師が受け止めてくれない患者の訴えに、じっくりと耳を傾けてくれる

 ▼調査では「病院で治らないものが治る」 といった霊力を信じる人はわずかで、大半は「心が癒やされる」「苦悩や苦痛から逃れたい」とメンタルヘルス面での癒やし効果を期待していた▼東北は医師不 足が深刻。公立病院の統合が進み、規模を縮小する病院も相次いでいる。患者と医師との心の距離は遠くなるばかり。年老いたイタコたちも、まだまだ引退する わけにはいかない。

2007年06月23日土曜日


【京都新聞・社説】

沖縄戦  歴史と真摯に向き合え

 「日本軍による関与なしに起こりえなかったことは紛れもない事実だ」。これが沖縄県民の総意といっても差し支えあるまい。
 第二次大戦中の沖縄戦で、日本軍が住民に「集団自決」を強制したとの記述を削除した教科書検定について、沖縄県議会が、検定意見を撤回して記述を元に戻すよう国に求める意見書を可決した。
 一部に慎重論もあった自民党を含め、地元の県議会が一致して可決した意味は大きい。多くの住民の悲惨な戦争体験の記憶があればこそだ。
 県内の大半の市町村議会も同様の意見書を可決、署名は十万人分にのぼる。
 国は県民の思いを正面から受け止め、沖縄戦の歴史と真摯(しんし)に向き合うべきだ。
 確かに、自決の軍命令があったかどうかは研究者らの間で解釈が異なるが、軍から捕虜になるくらいなら自決せよ、と手りゅう弾を渡されたと数多くの住民が証言しているのも、また事実だ。
 検定による削除・修正は、こうした証言を否定するもので、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとっては到底容認できない、と意見書で反発しているのは当然だろう。
 撤回は「沖縄戦の実相を正しく伝え、悲惨な戦争を再び起こさないようにするため」なのだ。
 この春の検定後、文部科学省は、検定意見は教科用図書検定審議会の判断と説明してきた。
 ところが、実際には同省の調査官が、記述の修正を求める「調査意見書」を審議会に提出していた。削除は文科省の意向ということになる。
 前年までの方針を文科省が変えたのは「戦後体制からの脱却」を掲げる安倍晋三首相の思いと無縁ではないだろう。
 従軍慰安婦問題での首相や閣僚、自民党幹部の発言と合わせ、安倍政権の歴史認識に、どこか危うさを感じる人は少なくないのではないか。
 沖縄県民の戦争犠牲を償うため戦後、国が適用を拡大してきた戦傷病者戦没者遺族等援護法との関係も気になる。
 非戦闘員への適用は軍令など、軍の関与を国として認定したケースだけだ。
 軍の強制を削除した今回の検定に対し「援護法の適用は調査に基づいており、教科書検定に左右されることは今後もない」というのが厚生労働省援護課の立場とされる。
 いわば「二重基準」を抱えたことになるわけで、それをどう説明するのか。
 意見書、つまりは沖縄が問うているのは国の歴史観だ。同じように、私たち国民一人一人にも問いかけている。
 きょう二十三日は、沖縄戦が終結した「沖縄慰霊の日」だ。
 幼子も含め、多くの住民がなぜ集団自決しなければならなかったのか。静かに考える一日としたい。

[京都新聞 2007年06月23日掲載]

ヒル氏訪朝  北朝鮮のペースに懸念

 北朝鮮の核開発をめぐる六カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補が電撃的に北朝鮮を初訪問、協議の進展へ本格的な動きが始まった。
 ヒル次官補は帰路、日韓両国にも会談結果を報告、マカオの資金送金問題による遅れを「取り戻したい」と張り切るが、外交的成果を焦るあまり北朝鮮のペースにはまり込む懸念がぬぐえない。
 二月の六カ国協議で北朝鮮は核放棄の初期段階措置として寧辺の核施設停止・封印と国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れなどで合意していた。六十日以内に実施する期限付きで、誠実に実行することは北朝鮮の国際公約だ。
 ところが三月の協議で資金の凍結解除要求を持ち出し、約束を守らなかった。北朝鮮にとって金融制裁がいかに死活的問題か、を如実に示すものだ。にもかかわらず米国は自ら制裁を骨抜きにする形で資金を返してしまった。
 米国の内情を見極めた北朝鮮はIAEAを招請、初期段階措置の履行に取り組む姿勢をみせて、すかさずヒル次官補の訪朝を促した。六カ国協議と金融制裁解除をからめた北朝鮮の高等戦術にまんまと乗せられたともいえよう。
 米政府高官の訪朝は約五年ぶりで、ブッシュ政権が敵視政策から米朝の信頼醸成へ対話路線に転換したことの証しだ。米朝直接交渉を熱望していた北朝鮮にとって大きな外交得点である。
 イラク情勢やイランの核開発問題などブッシュ政権の外交政策は行き詰まっている。任期が残り少なくなり、せめて北朝鮮の核問題で外交的成果を上げたいとの焦りがあるのではないか。
 対話路線はライス国務長官の主導だ。一九九四年のカーター元大統領訪朝による米朝合意以来、オルブライト国務長官らも訪朝したが、すべてほごにされて核開発を見逃した苦い過去がある。一筋縄でいかない北朝鮮を相手に結果を急げば思うつぼにはまるだけだ。
 ヒル次官補は北朝鮮の外相や六カ国協議首席代表と会談して「あらゆる問題」を討議、北朝鮮は合意の履行と「次の段階」の準備を再確認したという。
 六カ国協議の内容は多岐にわたり、参加国の立場と思惑にも違いがある。協議が早期に再開されるのは望ましいが、いま一度北朝鮮を除く五カ国の結束を確認しておく必要がある。
  いざ協議が始まれば北朝鮮が前言を翻し、無茶な要求をすることは多い。曲がりなりにも北朝鮮が初期段階措置の合意と実行に前向きの姿勢をみせたのは国際社 会の圧力を無視できないからだ。特に日本は拉致問題の解決が不可欠である。五カ国は北朝鮮の分断作戦に乗じるすきを与えてはなるまい。
 米朝交渉もあくまで六カ国協議の基本的な枠組み内で行うべきだ。でなければ最終的な目的である核放棄を北朝鮮に決断させることはできないだろう。

[京都新聞 2007年06月23日掲載]

【京都新聞・凡語】

イラクの現実

 遠い日の「大本営発表」が、現在も。読後感を一言で表せばこうなろうか。「イラ ク占領-戦争と抵抗」(緑風出版刊)を読んだ率直な感想である▼著者は英インディペンデント紙の特派員P・コバーン氏。もう三十年近くもイラクで現地取材 を続けている国際ジャーナリストだ。彼の目に映ったイラクの現実は、為政者たちの説明とは全く異なる▼バグダッドでの記者会見は、要塞(ようさい)化した グリーンゾーン(安全地帯)内で行われる。米当局者による会見は、占領直後から一貫して「勝利は常に地平の、すぐ向こうにあった」▼だが、そのグリーン ゾーンですら、もはや安全とは言えない状況に。昨年四月、マリキ首相が誕生した当日などはグリーンゾーン内のイラク国防省には「迫撃砲弾が雨のように降り 注ぎ、イラク人七人が死亡した」という▼宗派・民族対立、国際テロリストの暗躍…無法状態が続く中で、住民の間に外国軍への反感は強まるばかりという著者 の指摘は重い。反感は当然、多国籍軍全体に向いていよう▼国会でイラク特措法が改正され航空自衛隊派遣の二年延長が可能となった。だがバグダッドに乗り入 れている空自の活動実態や危険の程度について政府の説明は乏しい。隊員の危険とひきかえにイラク国民に感謝されるどころか、その反対なら…。「大本営発 表」に懲りた歴史を繰り返したくない。

[京都新聞 2007年06月23日掲載]


【朝日・社説】2007年06月23日(土曜日)付

沖縄慰霊の日―集団自決に見る軍の非情

 沖縄は23日、「慰霊の日」を迎えた。太平洋戦争末期の沖縄戦で、日本軍の組織的な抵抗が終わった日である。

 今年の慰霊の日は、昨年までとは趣が異なる。沖縄戦で犠牲になった人たちを悼むことにとどまらない。沖縄戦とは何だったのかを改めて考えようという動きが広がっているのだ。

 きっかけは、「集団自決」についての教科書検定である。文部科学省が「日本軍に強いられた」という趣旨の記述を削らせた。軍の強制を否定する資料が出てきたというのだ。

 沖縄では一斉に反発が起きた。各地の市町村議会に続き、県議会でも検定の撤回を求める意見書が全会一致で可決された。意見書は「日本軍による関与なしに起こり得なかった」と主張する。

 保守、革新を問わず、憤ったのはなぜか。集団自決が日本軍に強いられたものであることは、沖縄では疑いようのない事実とされてきたからだろう。

 集団自決が主に起きたのは、米軍が最初に上陸した慶良間(けらま)諸島だ。慶良間諸島だけで犠牲者は700人にのぼる。

 多くの悲惨な証言がある。例えば、元沖縄キリスト教短大学長の金城重明さん(78)は集団自決の現場で、手投げ弾が配られるのを見た。手投げ弾は自分にまで回ってこず、母と弟妹を自ら手にかけて殺した。「手投げ弾は自決命令を現実化したものだ」と語る。

 集団自決に直接かかわった人たちだけではない。沖縄の人たちが「集団自決は日本軍に強いられたものだ」と口をそろえるには理由がある。

 沖縄の日本軍は1944年11月、「軍官民共生共死の一体化」の方針を出した。足腰さえ立てば住民を一人残らず動員し、生死を共にさせようというのだ。

 子どもから老人まで駆り出された住民は、食糧や弾薬の運搬などだけでなく、戦闘員として敵に突入を命じられた。

 陣地の構築にも動員されたため、住民は軍事機密である日本軍の配置まで知ることになった。そこで日本軍は住民が捕虜になることを許さず、「敵に投降するものはスパイとみなして射殺する」と警告し、実行していった。

 一方で、「鬼畜米英」軍に捕らえられたら、女性は辱めを受け、男性は残忍な方法で殺される。日本軍はそう住民に信じ込ませた。

 迫りくる「鬼畜」の敵軍。背後には投降を許さない日本軍。そうした異常な状態が集団自決をもたらしたのだ。

 沖縄戦の3カ月の犠牲者は20万人を超える。本土から来た兵士より住民の犠牲の方が多かった。日本軍の任務は本土決戦の時間をかせぐため、米軍をできるだけ長く沖縄に足止めすることだった。

 沖縄の人たちは「捨て石」にされ、根こそぎ動員されて日本軍と一緒に戦い、そこで集団自決が起きた。いまさら「日本軍は無関係」と言うのなら、それは沖縄をもう一度裏切ることになる。

米代表の訪朝―北朝鮮の行動を注視する

 6者協議の米国代表、ヒル国務次官補が北朝鮮を訪れた。米政府高官の訪朝は約5年ぶりだ。来月には中国外相も訪朝する。北朝鮮をめぐる外交がにわかに慌ただしくなってきた。

 引き金になったのは、マカオの銀行口座に凍結されていた北朝鮮の資金の国外への送金だ。訪日中だったヒル氏は北朝鮮の招きに応じて、急きょ、韓国を経由して米軍機で平壌へ飛んだ。

 きのうソウルに戻ったヒル氏によると、北朝鮮は2月の6者合意に沿って、核施設をすみやかに停止する意思を明らかにした。ヒル氏は「これから非核化という本題に戻るときだ」と語った。本当に合意を実行するかどうか、北朝鮮の行動を注視したい。

 原子炉などの停止・封印の手順を話し合うため、来週には国際原子力機関(IAEA)の係官が訪朝することになっている。これが予定通り実現するかどうかが最初の試金石だ。

 そのうえで、早急に核施設の稼働を止めることだ。6者合意が期限とした4月中旬から、すでに2カ月も遅れている。その間も原子炉は動きつづけ、核爆弾の原料となるプルトニウムが生成されていたとすれば、一刻も早くストップしなければならない。

 北朝鮮は新たな条件をつけたりせず、今度こそ誠実に約束を果たすべきだ。

 ヒル氏によれば、北朝鮮は次の段階である「無能力化」、つまり原子炉などを再び稼働できないようにする措置もとる準備があると語ったという。

 停止・封印後はただちにこの段階に進めるよう、6者協議の関係国は対応を急いでもらいたい。

 5年ほど前、米高官が訪朝した際には、米側が北朝鮮にウラン濃縮による核開発の疑惑をぶつけ、いまに至る核危機の出発点ともなった。その危機を平和的に解決しようと4年前に始まったのが6者協議である。

 一昨年には北朝鮮の核放棄と米朝・日朝の関係正常化という最終目標を描いた共同声明をまとめた。だが、その後は米朝対話がもつれ、核実験を強行するまで事態は悪くなった。

 それが再び米高官の訪朝までこぎつけたのは、意義のある進展である。とはいえ、この間に進んでしまった北朝鮮の核開発や交渉の長い停滞を考えると、痛恨の思いも禁じ得ない。

 北朝鮮が動くならば、米国や日本など他の国も動かねばならない。今回、北朝鮮が合意を再確認したからといって、これから順調に行くとは楽観できない。けれど、この動きに弾みをつけるためにも、エネルギー支援や国交正常化へ向けての作業を始動する必要がある。

 日本には、核問題の進展に対して「拉致問題が置き去りになる」との懸念が聞かれるが、それはあたらない。「核」が進めば「拉致」も解決への環境ができていくのではないか。

【朝日・天声人語】2007年06月23日(土曜日)付

 沖縄戦の激戦地となった本島南端に、20万人余の死者の名を刻んだ「平和の礎(いしじ)」がある。青い海へまっすぐ伸びる中央の園路に立つと、円錐(えんすい)のモニュメントが見える。その突端から、「慰霊の日」である6月23日の太陽は昇ってくる。

 この日の太陽が沈む方位に向けて、宜野湾市にある佐喜真美術館が立っている。屋上のコンクリート壁に20センチ四方ほどの「窓」が開けてある。そこへ、東シナ海に没する夕日が正面から差し込む設計だ。きょうは沖縄にとって、重い一日である。

 美術館にはいま、約400人もの、おじい、おばあの顔写真が張り巡らされている。沖縄の方言である「島クトゥバ(言葉)」で、悲惨な地上戦の証言を残したお年寄りたちだ。

 証言する姿を、字幕つきの映像で見ることもできる。弾雨の中の逃避行、累々たる死者、集団自決……。つらい回想である。だが使い慣れた島の言葉で話すと、心を許し、表情まで豊かになるようだ。伝えたいという「熱」が、画面から感じられる。

 写真も映像も、地元の写真家比嘉豊光さん(57)が手がけてきた。80代や90代なら、伝聞ではなく体験をじかに語れる。残り時間と競争しながら、とにかく、とりあえず聞いてきた。「一人の声はか細くても、集まれば確固とした全体像が見えてくる」という。

 比嘉さんだけではない。多くの研究者や志ある人々が、「沖縄戦の実相」を営々と積み上げてきた。悲惨な歴史から見えてくる教訓は何か。沖縄の重い一日を沖縄だけのものとせず、考えをめぐらせたい。


【毎日・社説】

社説:ヒル氏訪朝 非核化へ日米の連携崩すな

 「私たちはみな、あなたを待っていました」という李根(リグン)・米州局長の言葉に、北朝鮮側の満足感が表れている。李氏が出迎えたヒル米国務次 官補(6カ国協議首席代表)も北朝鮮を離れる際、「いい話し合いを持った」と語った。北朝鮮は核施設の稼働停止・封印などの「初期段階措置」を実行する意 思を示したという。とりあえず歓迎したいが、言葉より行動が大切である。

 02年10月のケリー国務次官補(当時)以来の米高官の訪朝 だった。ヒル氏の電撃訪朝の直前には、「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」の北朝鮮関連資金の送金作業が完了している。BDA問題で「ゴネ得」を通した 上に、初期段階措置も履行しないまま本国に米高官を迎える。北朝鮮にすれば、この上ない成果だろう。

 ヒル氏は北朝鮮の金桂冠(キムゲグァン)外務次官、朴宜春(パクウィチュン)外相と会談した。訪朝後、ソウルで記者会見したヒル氏によると、北朝鮮側は初期段階措置の履行に加え、次のステップである寧辺の核施設の無能力化についても準備ができていると語ったという。

  だが、BDA問題が一応片づいた以上、先の6カ国協議の合意(初期段階措置)を履行するのは当然だ。それよりヒル氏が北朝鮮の非核化について、可能だと思 うが時間がかかるとの認識を示したことが気になる。ブッシュ政権下で北朝鮮の核問題を解決するのは無理だと言いたいのか。また、北朝鮮非核化のためには核 計画の全体を知る必要があるが、「包括的リスト」の提出についてどんな協議をしたのか、詳しく説明しなかった。この点にも不満が残る。

 そもそも、北朝鮮に譲歩を重ねる米国の姿に危うさを感じる。ブッシュ政権はイラクの泥沼で身動きできない。だから北朝鮮に柔軟姿勢を示し、外交的なポイントを稼ごうとしている、という見方もあながち的外れではあるまい。

  麻生太郎外相はヒル氏の訪朝に関して、焦って安易な譲歩をしないよう、米国に厳しい調子で注文した。日米のすきま風を感じさせる異例の発言だ。00年にオ ルブライト国務長官(当時)が訪朝した時のように、日本が置き去りにされた印象があるのか。北朝鮮の非核化という最終目標に向けて、日米は拉致問題も含め た率直な意見調整を行い、強い連携を保つ必要があるのではないか。

 北朝鮮問題で米国が主導的役割を担うのは確かだが、独走は禁物だ。超 大国が譲歩を重ねれば、北朝鮮も柔軟姿勢を見せるだろう。だが、それは一時しのぎというものだ。北朝鮮の核問題が解決しない限り、米朝の永続的和解はあり えない。今は日本が北朝鮮の直接的な脅威を受けているが、北の核・ミサイル開発の最終的な標的は米国である。

 中国の楊潔〓(ようけつち)外相は来月初めに訪朝する。米朝外相会談が実現する可能性もある。日本をはじめとする関係国は、国際原子力機関(IAEA)による査察や6カ国協議の再開に向けて連携し、核廃棄への動きに弾みをつけるべきだ。

毎日新聞 2007年6月23日 東京朝刊

社説:視点 沖縄戦 捨て石の無念と不信は今も消えない=論説委員・玉木研二

 沖縄は23日「慰霊の日」を迎える。1945年のこの日、沖縄は組織的戦闘が終結した。9万人とも10万人以上ともいわれる住民を犠牲にした戦いは、今なお癒やせぬ傷を残す。それを改めて示したのが教科書書き換え問題である。

 沖縄県議会は22日、集団自決をめぐる高校日本史教科書の検定意見撤回と記述回復を求める意見書を全会一致で可決した。

  文部科学省の検定意見は「軍の命令があったかどうか明らかでない」とし、教科書会社は「日本軍から集団自決を強制された人もある」などとしていた記述を削 除・修正した。これに対し意見書は「軍の関与なしに起こり得ない」と反論し、「沖縄戦の実相を正しく」伝えることを求める。反対意見書は既に県内の大半の 自治体議会でも可決し、署名運動も広がった。何が人々を動かしたのか。

 公開中の映画「ひめゆり」を見た。13年をかけた長編ドキュメンタリーである。野戦病院に動員されたひめゆり学徒隊の数少ない生存者たちが戦跡に立ち、極限の体験や亡き友を語る。

 当時10代の彼女たちは45年4月の米軍沖縄本島上陸前から軍に組み込まれ、南部への後退も軍と行動を共にした。そして6月18日、突然軍に「解散」を命じられる。

  「この壕(ごう)を出て行け、と言われても全部アメリカ軍に包囲されている。どこに行けという指示もない。こんなことってあるか、と本当に悔しい思いがし ました」「目の前が真っ暗になり、へなへなと座り込みました」「捕虜になることは国賊、非国民と呼ばれ、誰からも相手にされない恐ろしいことでした。兵隊 たちが『米軍は男は虐殺し、女は辱めを受けた後、戦車でひき殺されるぞ』と言ったのを信じ込んでいました」……。

 ひめゆりの犠牲者は解散命令後に急激に増えた。手投げ弾による集団自決も含まれている。投降はあり得ぬ選択だった。戦闘終了まで数日という時期に少女たちは死地に追いやられた。敗走兵らに壕を追われた一般住民も同様だ。

 日本軍にとって沖縄は米軍を引きつけて消耗させ、本土決戦の準備時間を稼ぐ島だった。一方水面下では政府や重臣、宮中の中に「和平」を模索する動きがあった。だが中央の要人たちは互いに顔色をうかがい、特に軍部を恐れ、優柔不断のまま時を空費する。

 国の中央がかじ取りを失ったような無責任の連鎖状態の中で、沖縄は文字通り「捨て石」として放棄された。現地でも軍には住民の保護、安全確保という発想や態勢が極めて乏しかった。

 62年前に沖縄の人々が味わった絶望と孤立無援の恐怖、死地へ押し出される無念。それを想像、実感することはたやすくないが、今生きる私たちがそれに鈍感であってはならない。23日の式典に参列する安倍晋三首相はそのことを霊と県民に語りかけてほしい。

毎日新聞 2007年6月23日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「紛らかす」「だまかす」といった言い方は…

 「紛らかす」「だまかす」といった言い方 は最近あまり使われないが、「ごまかす」は健在だ。その昔、弘法大師がたいた護摩の灰なるものを売り歩く押し売りがあったが、その「護摩」に「紛らかす」 などの語尾をつけて「ごまかす」になったというのが「大言海」の説だ▲なるほど灰では、弘法大師がたいたとも、きのうのたき火の灰とも見分けがつかない。 いや灰ばかりではない。ミンチにして混ぜれば牛肉も豚肉も、豚の心臓も見分けがつかないと考えたのが北海道の食品加工卸会社ミートホープの社長だ▲「羊頭 狗肉(くにく)」という言葉があるから、この社長にすれば今さら牛ミンチに豚肉を混ぜる「牛頭豚肉」程度で驚くなということかもしれない。ミンチのごまか しは7、8年前から始められ、製品は大手食品会社の加工食品や、学校給食でも使われた▲ごまかしは偽装発覚後の社長の説明にまで及ぶ。当初は事故のように 装ったかと思えば、次に部下に責任を押しつけ、結局は会見の席で自分の指示だと白状せざるを得なくなる成り行きは、ごまかしが招く自滅の典型例として企業 コンプライアンス(法令順守)の教科書にのりそうだ▲気になるのは、偽装ミンチの内部告発を農林水産省が昨年2月には受けながら、調査に踏み出していな かったことだ。北海道との間の連携ミスのように説明されているが、食の安全に影響するかもしれない告発がお役所の間で中ぶらりんになるようでは困る▲売り つけられるのが灰なら、はなからいかがわしいと分かる。ただ本物とまがいものの見分けがつかなくなれば、当の食品全体の信用も文字通り灰と化そう。行政も 業界も消費者の安心を揺るがす食のごまかしには、いささかも甘い顔をみせてはいけない。

毎日新聞 2007年6月23日 東京朝刊


【読売・社説】

国会会期延長 年金記録漏れだけが争点なのか(6月23日付・読売社説)

 重要な課題があれば、会期を延長してでも処理するのは、政治の責任である。

 国会の会期が7月5日まで12日間延長された。この結果、参院選は7月29日投票となる。

 与野党対立のあおりで、国会には、社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案、国家公務員法改正案などが、積み残しとなっている。

 社保庁改革法案は、社保庁の廃止・解体、非公務員化によって、“お役所”体質の払拭(ふっしょく)と転換を図るものだ。

 一般常識とかけ離れた長年の労働慣行の下で、5000万件余もの年金記録漏れの問題や、職員の不祥事などが相次いで起きたことを考えれば、速やかに成立させ、改革を急がねばならない。

 民主党は、国税庁と社保庁を一体化した「歳入庁」構想を主張しているが、事実上、公務員労組を温存しようとするものだ。これでは、問題の根本的な解決にはなるまい。

 年金時効撤廃特例法案も、年金記録漏れの点検と、正確な納付記録に基づく年金支給の作業を進めるための基本的な前提条件を整えるものだ。これも、早期成立が必要だ。

 民主党など野党は、参院選に向けて、年金問題を争点に政府・与党を追い込もうとしている。安倍首相の側にも、年金問題で内閣支持率が急落しているため、社保庁改革法案などの成立で巻き返す意図がうかがえる。

 だが、年金問題は、国民生活の基本にかかわる。いたずらに政争の具にするのではなく、問題解決のための建設的な議論が必要だ。

 この間、与野党の応酬は、年金記録漏れに集中した。肝心の年金制度改革の論議はどこへ行ったのか。政治の本来の責務を忘れたものと言わざるを得ない。

 ただ、安倍首相が今国会中の成立に執心し、会期延長を決意したとされる国家公務員法改正案には、やはり疑問がぬぐえない。

 天下りを根絶するために官民人材交流センター(新・人材バンク)を作るという。だが、早期勧奨退職の慣行の見直しや、スタッフ制の創設、定年延長などがないままで、新・人材バンクが円滑に機能するとは思えない。

 野党は、「延長してもなお審議時間は足りない」とし、法案の時間切れ、廃案に追い込む姿勢だ。内閣不信任決議案提出のタイミングもうかがっている。延長国会では与野党対決が強まるだろう。

 大事なのは、参院選に向け、重要政策の選択肢を示す論戦だ。いたずらに混乱劇を演じてはならない。
(2007年6月23日1時47分  読売新聞)

ヒル次官補訪朝 核廃棄へ「北」の具体的行動迫れ(6月23日付・読売社説)

 核廃棄の義務履行へ、北朝鮮に具体的な行動をとらせることはできるのか。

 6か国協議で米国首席代表を務めるヒル国務次官補が訪朝し北朝鮮外相らと会談した。

 北朝鮮は、2月の6か国協議で「60日以内」と約束した「初期段階の措置」を、今もって実施していない。

 次官補は「失われた時間を取り戻したい」として核廃棄プロセスの進展を図る意向を伝え、北朝鮮は核施設の運転停止など合意実施の意思を示したという。

 北朝鮮は先週、国際原子力機関(IAEA)代表団を受け入れると発表した。米国は、2月の合意の見返りに、マカオの銀行で凍結された北朝鮮資金の返還に応じた。その送金作業がようやく実行に移されたことを受けてのことだった。

 北朝鮮に、義務の早期履行を求めるのは当然だ。問題は、北朝鮮がどこまで核廃棄へ動くのかという点にある。

 初期段階に続く「次の段階」で、北朝鮮は「すべての核計画の申告」と「既存の核施設の無能力化」を実行しなければならない。だが、肝心の核兵器や保有プルトニウムの廃棄をめぐっては、まだ何の協議も行われていない。

 「次の段階」をめぐる交渉でも、北朝鮮がすんなり濃縮ウラン計画を認めたり、核施設の解体に応じるとは考えにくい。核を自国の安全のための唯一、最大のカードとしているからだ。軽水炉の提供など法外な要求を持ち出し、できるだけの見返りを得ようとするだろう。

 初期段階の措置を履行すれば、6か国協議の再開や、6か国外相会議の開催など、関係国間の外交は活発化する。

 問題は、日米中韓露の5か国が一致した行動をとれるかどうかだ。各国の対応にずれが出て、北朝鮮につけいる隙(すき)を与えてはならない。

 日本としては、米国との緊密な関係を維持することが重要だ。

 2月の合意で、米国はテロ支援国指定から北朝鮮を解除する作業に着手することを約束した。北朝鮮は、米国による敵視政策の撤廃が核廃棄の前提として、指定解除を要求している。だが、拉致問題に進展がない現状で解除することは、日本としては認めがたい。

 ヒル次官補の訪朝に先立ち、麻生外相はライス国務長官との電話会談で、北朝鮮に、拉致問題を含む日朝関係に正面から取り組むよう働きかけることを要請した。次官補は北朝鮮に、拉致問題について日本と話し合うよう促したという。

 日本は、核と拉致、ミサイルの包括的解決という立場を堅持して対処しなければならない。
(2007年6月23日1時48分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月23日付

 夏目漱石の「虞美人草(ぐびじんそう)」に、「蛾(が)は燈 (ひ)に集まり、人は電光に集まる」とある。主人公が東京・上野の勧業博覧会に出かけた場面である◆博覧会が開かれたのは1907年(明治40年)のこと で、電灯3万5000個を用いた光の装飾が人々をあっと驚かせた。漱石は書いている。「文明に麻痺(まひ)したる文明の民は、あっと驚く時、始めて生きて 居るなと気が付く」のだと◆それから100年、光に満ち満ちた夜も現代人にはもはや当たり前となり、絶佳の夜景を目にするのでもない限り、あっと驚くこと は稀(まれ)になった。漱石の言う「文明の麻痺」は度が進んだようである◆昨夜から三夜の予定で今年も、環境省などによる催し「100万人のキャンドルナ イト」がはじまった。夜景の名所や商業施設が一定の時間、照明を消す。5年目の今年は約6万の施設が参加するという◆消灯は家庭でもできる。資源を節約す るぞ、地球環境を考えるぞと、ことさら肩に力を入れることもない。子供の昔、ろうそくの明かりに家族が顔を寄せ合った停電の夜を思い起こすだけでも、「麻 痺」にはささやかな薬だろう◆詩人の杉山平一さんに「闇」という作品があった。「ルームライトを消す/スタンドランプを 消す/そうして/悲しみに灯を入 れる」。明かりを消し、遠い記憶に灯を入れるのもいい。
(2007年6月23日1時47分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】JR混乱 事後対応にも万全の策を

 朝の通勤通学客でごった返す首都圏のJR線で架線の切断・停電事故が発生、ダイヤがほぼ終日混乱して19万人近くが影響を受けた。

 幸いけが人は報告されていないが、一部の乗客は雨の中を最寄り駅まで線路上を歩かされたほか、最長で4時間半も冷房が切れた電車内に閉じこめられて気分が悪くなり、救急車で病院に運ばれる乗客も少なくなかった。

 路線が複雑に入り組み、過密ダイヤで乗客数も多い首都圏の鉄道は、ちょっとしたトラブルが思いがけぬ大事故につながりかねない。運行停止が長びけば、社会生活にも甚大な影響を及ぼすことになる。

 JR東日本には、原因の徹底解明はもちろんだが、トラブル発生時の迅速、適切な振り替え輸送など、混乱を最小限に抑える乗客対応策に問題がなかったか、再点検を求めたい。

 首都圏のJR線では、乗客10万人以上が影響を受ける運行トラブルが昨年だけで少なくとも6件あった。ことし3月にも、ATC(列車自動制御装置)の故障から京浜東北線が3時間あまりストップし、乗客27万5000人が影響を受ける事故があった。

  この中には、地震や落雷といった自然災害によるものもあるが、工事ミスによる線路の沈下や隆起といった人為的原因も目につく。今回の事故についても、電車 が本来停止すべきでない場所で停止したことによる架線ショートの疑いも指摘されている。同種事故の再発防止の観点からも、原因の徹底解明が急がれる。

 鉄道をはじめ公共交通機関にまず求められるのは安全第一の思想だ。危険性がある場合は躊躇(ちゅうちょ)なく運行を停止し、安全確認に努めることは当然である。その結果、乗客の側も多少の不便は受忍すべきこともあろう。

 同時に運行者側は、乗客の混乱を避けるためにもトラブルの現状、見通しなどについて、適時、適切に情報を提供していくことが重要である。

 代替輸送機関への振り替えについては、JRと他の民間鉄道、バス会社など関連輸送機関が日ごろから連携を密にしておく必要がある。相手側からの要請を待つのではなく、トラブル発生には相互に情報を共有し、独自で速やかな受け入れ態勢を構築すべきだ。

(2007/06/23 05:15)

【主張】沖縄戦集団自決 文科省は検定方針を貫け

 沖縄県議会で、教科書の沖縄戦集団自決に関する記述に付けられた検定意見の撤回を求める意見書が、全会一致で採択された。県議会で与党最大会派の自民党までもが国の検定方針に異を唱えたことは残念であり、沖縄県の特異な政治状況をうかがわせる。

 意見書は「集団自決は日本軍の関与なしに起こり得なかった」「教科書記述の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものだ」などとしている。

 しかし、文科省の検定意見は、日本軍の命令によって住民が集団自決を強いられたとする誤った記述に対して付けられたものだ。軍の関与や体験者の証言を否定しようとはしていない。

  集団自決は昭和20年3月下旬、米軍の第1陣が沖縄本島西の渡嘉敷、座間味島などに上陸したときに起きた悲劇的な出来事である。軍命令説は、昭和25年に 発刊された沖縄タイムス社の沖縄戦記『鉄の暴風』に書かれ、大江健三郎氏の『沖縄ノート』などの本に孫引きされた。多くの教科書もこの軍命令説に基づいて 書かれていた。

 しかし、作家の曽野綾子さんが『鉄の暴風』の記述に疑問を提起したノンフィクション『ある神話の背景』を出したのをはじ め、学者らによる実証的な研究が進められた結果、軍命令説は信憑(しんぴょう)性を失った。また、集団自決当時の女子青年団員や沖縄の元援護担当者らか ら、軍命令はなかったという証言が相次いでいる。

 文科省の検定は、こうした最近の研究や証言に基づいて行われたもので、当然の措置といえる。沖縄県議会の意見書に限らず、さまざまな抗議運動が起きているが、検定はこうした政治的な動きに左右されるべきではない。

 この問題をめぐり、文科省で教科書検定を担当する企画官を外郭団体に異動させようという動きが伝えられた。検定への抗議運動に対する配慮だとすれば、禍根を残すことになろう。

  沖縄では、集団自決の後、住民を巻き込んだ地上戦が展開され、軍民合わせて18万8000人が戦死した。このうち、沖縄県民の犠牲者は12万人を超える。 戦後も27年間、米国の施政権下に置かれた。きょう23日は沖縄慰霊の日。沖縄県民の苦難の歴史を改めて思い起こしたい。

(2007/06/23 05:14)

【産経抄】

 昨年3月、合併によりその名が消えた奄美大島の旧名瀬(なぜ)市で、長い間「論争」が続いた。名瀬は「なぜ」と読むのか「なせ」なのかをめぐってだった。市議会で「なぜナセをナゼと言うのか」と、大まじめで質問する議員もいたという。

 ▼地元の人にとって、地名はその読み方にもこだわりがあるということだろう。地名の読み方といえば、小笠原諸島にある「硫黄島」がこれまでの「いおうじま」から「いおうとう」にと変更された。国土地理院と海上保安庁が、小笠原村の要望を受け入れて決めたという。

 ▼先の大戦での激戦の島である。最近では、日米の映画にもなった。戦前まで地元での読み方は「いおうとう」だった。当時から一部では「いおうじま」という人もいたらしいが、戦後20年以上、この島を占領していた米軍がこう呼んだことから定着したという。

 ▼地元にとって、ようやく「戦後」や「占領」が終わったということかもしれない。ところがこの呼称変更に米国社会がクレームをつけている。米国でも「イオウジマ」だったからだ。どこまで本気かわからないが、あるテレビ局は「日本が歴史を書き換えた」と伝えたそうだ。

 ▼米国にとって「イオウジマ」は、大戦での輝かしい勝利を象徴する地名である。それだけ旧軍人を中心に不満が多いという。勝利に誇りを持つのは当然だ。だがそのことで島を奪われた地元民の気持ちをくめないというのなら、日本流に言えば「傲慢」である。

 ▼戦後、日本を占領した米国は日本人に歴史観を押しつけた。大戦の名称も「大東亜戦争」を「太平洋戦争」に変えさせた。「硫黄島」への反応や慰安婦問題をめぐる対日批判決議の動きを見ると、まだ占領軍のつもりかと問いただしたくなる。

(2007/06/23 05:44)


【日経・社説】

社説1 和解を成立させ道路公害対策を急げ(6/23)

 東京都内のぜんそく患者らが、自動車排ガスによる大気汚染が病気の原因だとして国と都、首都高速道路会社、自動車メーカーに損害賠償などを求めた訴訟で、東京高裁が和解案を出した。

 係属中の第1次訴訟控訴審だけでなく、第2―6次訴訟の一括解決を目指している。関係者は和解を成立させ、和解条件にある、医療費助成制度と道路公害対策の拡充を速やかに実行に移してほしい。

 医療費を助成する制度は、1次訴訟一審判決で国と共に賠償責任を負わされた東京都が提案した。年間約40億円を被告4者で分担する計画だ。メーカーに続き、国が応分の資金を都へ拠出する方針を表明し、この助成制度は実現のメドが立った。

 過去の大気汚染訴訟では、国は和解のために資金を出すのを拒んできたから、従来のかたくなな姿勢を転換したと評価できる。

  ただしぜんそく患者には、1974年施行の公害健康被害補償法で公害病と認定すれば、医療費を助成してきたことを忘れてはいけない。この公害病認定は 88年に打ち切ったが、それ以降も大気汚染による被害を訴える患者は現れ、東京訴訟でも原告患者計522人のうち37%は同法による認定を得られなかった 人たちだ。今回の助成制度は同法による助成を復活させる格好だ。国は88年の打ち切りが正しい判断だったか検証する必要があろう。

 自動 車メーカーは1次訴訟一審判決では賠償を命じられなかった。国の排ガス規制に適合する車を開発・販売してきたこと、幹線道路に自動車が集中するのを防ぐ権 限はメーカーにないことなどが理由だ。控訴審でも判決になれば一審の判断が支持される可能性は高いとみられるので、メーカー各社が解決一時金の支払いに抵 抗を感じるのは無理からぬところがある。

 しかし和解案が指摘するとおり「自動車排ガスが一つの要因となって大気が汚染され、環境に好ま しからざる影響が生じている事実」は否定しようがなく、その環境汚染が住民の健康被害につながる。環境基本法は環境を保全するための対策を講じる義務を 国、地方自治体と並んで事業者にも課し、特に事業者には事業活動から生じる公害の防止を図る責務を負わせている。

 和解が成立すれば、現に健康被害が発生している幹線道路周辺の大気汚染を軽減する国や都の対策が早く実施できる。解決一時金の支払いに応じ和解を成立させる決断が企業の社会的責任を果たす道である。

社説2 現実見すえた宇宙基本法に(6/23)

 自民、公明両党が議員立法を目指して衆院に宇 宙基本法案を提出した。安全保障の観点から偵察衛星など防衛目的の宇宙利用を進めやすくするとともに、関連産業の振興の趣旨も織り込んだ。利用範囲の拡大 など宇宙開発の自由度を高め、技術力を高めるのに異論はないが、宇宙利用や産業強化には熟考しておくべき点が多い。法案審議では現実をしっかり見据え日本 の宇宙開発のあるべき姿を徹底議論するよう求めたい。

 日本は1969年の国会決議で宇宙開発を「平和利用」に限定している。趣旨説明で 「平和利用」を「非軍事」としたことから、自衛隊の宇宙利用にも制約がかかっている。政府は商業利用が一般化している宇宙技術、衛星は「非軍事」と解釈 し、情報収集衛星も導入したが、性能は商業衛星並みだ。今後、防衛省が高性能の偵察衛星を保有しようとしても、拡大解釈には限界がある。

  国際情勢を考えれば、安全保障に絡む宇宙利用をいつまでもタブー視はできない。ただ、筋を通すなら国会で真っ正面から議論し決議をやり直すべきではなかっ たか。便法として立法措置で「平和利用」を定義し直すにしても、利用の範囲は明確にせざるを得まい。中国が衛星破壊実験を行うなどの動きもあり、定義にあ いまいさを残すと宇宙軍拡に巻き込まれる恐れがあるからだ。安全保障と宇宙開発の透明性確保との兼ね合いも考えておく必要があろう。

 法 案は産業強化もうたっている。だが、防衛省が高性能の偵察衛星を持てるようになったら国内調達とは限るまい。同盟国の米国からの調達もあり得るだろう。日 本はかつて米国から商業衛星調達の圧力がかかり、衛星産業を育成できなかった。産業強化には強い意志がいる。宇宙関係者には基本法で宇宙予算の拡大という 期待も強い。だが、財政状況を考えれば皮算用ではないのか。

 基本法は日本の宇宙開発のあり方を決める。成立に際しては民主党など野党も 含めて超党派での合意が望ましい。法案はいいことずくめという幻想にとらわれずに、問題点を掘り下げて審議するよう期待したい。日本の宇宙開発は総花的な 戦略、官需頼みの傾向が強い。法案審議はそれを考え直すよい機会でもある。

【日経・春秋】(6/23)

 何年か前の夏のある日。不思議な光景に出合った。雨が上がり家を出ると、道行く人が皆同じ方角を見上げて携帯電話をかざしている。その全員が嬉(うれ)しそうに笑っている。何事かと空を仰ぐと、大きな虹がかかっていた。しかも二重に。

▼ 東京でこれほど見事な虹を見る機会はめったにない。古代人なら思わずひれ伏したに違いない。そんな圧倒的な色彩だった。写真に収める通勤人がいる。電話を かける主婦がいる。幸運を分かち合いたい「誰か」が一人ひとりの携帯の向こう側にいる。姿は見えない人々の笑顔を、あたりの空間の中にふと感じた。

▼ 虹は7色とはかぎらない。東南アジアやイスラム圏には4色と見る地域がある。色は光の波長の違いであり、その光とは電磁波のほんの一部にすぎない。赤の外 側には赤外線と様々な電波が無限に続く。紫の下方に行けば、紫外線、X線、さらにガンマ線が連なる。人間が数える色の数など、実はちっぽけな話だ。

▼ 米欧とインド、ブラジルの4者によるWTO交渉が決裂した。だが他の国々の声はどうなのか。4者会合や主要7カ国など、自由貿易の恵みはわずかな国だけで 分け合うものではあるまい。世界には“目に見えない”国々が無数にある。4色でも7色でも、儚(はかな)く消える前に虹の周りにも目を凝らし、耳を澄ませ たい。


※来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。それにつけても思い出すのは、あの日本の9・11、2005年9 月11日の小泉の郵政選挙でした。ほとんど小泉の詐欺的と言ってもいい「争点は郵政改革だけです、改革をやるんですかやらないんですか」のワンフレーズ、 やらなければ日本がまるで沈没でもするような迫り方でした。

 結果、われわれの目の前に現れたのは自公独裁体制・強行採決オンパレードの国会でした。

 いま振り返ってみると、特に朝日系列に顕著だった、小泉政権へのすり寄り、地方紙以外の中央主要マスコミの翼賛体制はひどいものでした。

 はたして、これから参院選までのあいだ、どのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存しようと考えました。以下の社説とコラムです。

地方紙:沖縄タイムス(社説コラム)、琉球新報(社説コラム)、東京新聞(社説コラム)、河北新報(社説、コラム)、京都新聞(社説コラム

主要紙:朝日(社説コラム)、毎日(社説コラム)、読売(社説、コラム)、産経(社説、コラム)、日経(社説、コラム

OLYMPUS Voice-Trek V-61 CE OLYMPUS Voice-Trek V-61

販売元:オリンパス
発売日:2007/03/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月23日 (土)

6月23日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月22日朝刊)

[骨太方針07]先送り項目が多過ぎる

 「美しい国へのシナリオ」を副題に閣議決定した安倍内閣初の「骨太の方針2007」は、全体として小粒の政策を総花的に並べただけという印象がぬぐえない。

 骨太の方針は、安倍政権が来年度の予算編成にどう臨むか。その基本姿勢を国民に示すものといっていい。

 歳出・歳入の一体改革を策定し、二〇一一年度に政策経費を借金に頼らず税収などで賄う「基礎的財政収支」を黒字化させるという目標を掲げた小泉前政権から継続する税財政改革は、どうなっているのか。

 その進捗状況や歳入、歳出における基本姿勢はどうなのか。そのために、どの政策を優先させるのか。具体策が求められていたはずである。

 だが、肝心の部分について方針は「国、地方を通じ歳出全般にわたり最大限の削減を行う」という文言をわずかに記しただけだ。

 そこからは、安倍晋三首相の熱意を読み取ることはできない。

 歳出増を要請する声で、民間議員が求めた「公共投資3%減」など具体的な削減幅を明記できなかったというが、抵抗を押し返せなかったのは首相の指導力に問題があるからではないか。

 年金問題も同じだ。方針は、領収書などがない場合に年金給付の是非を審査する第三者委員会の判断を踏まえて「加入者・受給者全員が、本来受け取れるはずの年金を全額間違いなく受け取ることができる」と明記している。

 そのための相談態勢強化や年金記録管理システムの構築も掲げた。

 だが、記入漏れの数は膨大で、首相が「完全に支払う」と述べても解決の糸口を見いだすことが難しいのは明らかではないか。

 だからこそ解決までの工程表(ロードマップ)が必要だったのであり、なぜそれを作らなかったのか、その理由を首相は説明する責任がある。

 そのほかにも道州制や地方企業の再生を支援する「地域力再生機構」「ふるさと納税」の検討、経済連携協定(EPA)の推進、農地改革、行財政システム改革から地球温暖化対策、教育再生などきめ細かく並べている。だが、実効性にはやはり疑問が残る。

 基本方針を首相がこだわる「美しい国」に絡めたことも、国民の理解からは程遠い。国民が求めているのは、政策の実効性なのであり首相の政治理念との整合性ではないからだ。

 後の世代に負担は残さないとしながら、消費税改革を含む項目の多くを秋以降に先送りしたことしかり。実効性がなければ「骨太の方針」は絵に描いた餅になる。

[体験型観光]持続発展できる仕組みを

 体験型観光に携わる地域や企業など県内の五十八団体が今月十三日、県体験型観光推進協議会を設立した。受け入れ側による自主・横断的な資質向上への取り組みとして期待したい。

 昨年の入域観光客は五百六十四万人と過去最高を更新した。仲井真弘多知事は、向こう十年間で一千万人誘致を政策として掲げている。

 ただ、観光客一人当たりの消費額は頭打ち状態で推移し、外国を含む他地域との激しい値引き合戦によりホテルなどは消耗戦を強いられている。

 付加価値の高い体験滞在型観光は地域経済への波及やリピーター効果が高い。より成熟した観光の形態であり、沖縄観光が目指すべき姿といえる。

 二〇〇七年の修学旅行は、六年ぶりに減少する見通しとなった。盛り返すには、魅力的な体験学習のプログラムを提供することが欠かせない。

 幸い、独自の自然や文化・歴史、農漁業がある沖縄は、体験型観光にうってつけの素材に恵まれている。

 東村などはエコツーリズムで先駆的な取り組みをし、根付いてきた。しかし農業体験のグリーンツーリズムや、健康保養をうたうウエルネスなどはいまひとつ形が見えてこない。

 観光客に三線や民芸品づくり、農漁業を実際に体験をしてもらうには、まずそれを教えることのできる地域の人材が必要だ。さらに、その知恵と経験をうまくプログラムに結びつけるコーディネーターの養成も求められる。

 何よりも、地元にとっては客をもてなす負担ばかりなく、それに見合う利益をもたらすような仕組みでなければ持続は難しい。

 南城市は、体験滞在型観光の拠点として三施設を整備し、食・歴史・海と多彩なプログラムを準備している。今後の取り組みに注目したい。

 県推進協議会は、まず情報交換し課題を洗い出すことからスタートする。いずれは体験メニューの情報センター機能や、報酬・業界内の約束事などのガイドラインを示す、指導的な役割を担う組織に育ててほしい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月22日 朝刊 1面)

 「ハーリー鉦が鳴ると梅雨が明ける」といわれる。ハーリー鉦からは少し遅れたが、二十一日沖縄は梅雨明けした。カーチーベー(夏至南風)の季節の到来だ。

 今でもお年寄りたちは梅雨のことをスーマンボースー(小満芒種)と呼ぶ。梅雨を表す言葉としては、なぜかこちらの方がしっくりくる。今年のように激しく降り、降水量が多いとなおさら。それだけにカーチーベーの響きが心地よい。

 消防庁が運用するおもしろいホームページがある。現在まで語り継がれる自然災害や防災に関する言い伝えを集めた「災害伝承情報データベース」。災害に対する教訓として二千近いデータを公開している。

 「東の空に虹が立つと台風が近い」など広く伝わるものから、「多良岳に雲がかかれば雨」(長崎県諫早市)といった地域版までさまざま。「デイゴの花が多く咲くと台風が多い」など県内の事例も紹介されている。

 岩手県に残る「津波てんでんこ」は、地震があったら「てんでんばらばら」に逃げようと教える。薄情にも思えるこの言い伝えは、明治三陸地震津波で親が子を、子が親を助けようと共倒れになった体験から生まれたのだという。

 学術的な裏付けのないものもあるが、過去の災害を後世に伝えたいという先人たちの願いが読み取れる。継承が難しい時代である。地域で語り継がれてきた事実の重みと、自然とともに生きた人々の言葉を大切にしたい。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

国会の会期延長 政争の具とは情けない

 国会の会期延長が決まった。12日間の延長は、安倍晋三首相が執念を見せる国家公務員法改正案の今国会成立を目指すためという。重要案件の論議の 時間が欲しいなら、文句も少なかろう。だが、多数与党の強行採決が横行する今国会だ。会期延長までも「政争の具」になるようでは、あまりに情けない。
 会期延長は、自民、公明の与党の国対委員長会議、党首会談で決まった。野党は反対しているが、多数与党の力で22日にも衆院で議決される見込みだ。
 与党は、会期延長で天下り規制のための国家公務員法改正案の来月4日成立を図るほか、社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案の成立を今月29日にも目指すという。
 国民が注目する3法案である。会期延長で改正案の中身を十分に精査し、与野党で白熱した論議を行い、国民の理解と了解を得られるような国会審議が展開されるのであれば大いに歓迎したい。
 だが、今国会での論議を見る限りではイラク特措法、教育改革3法、米軍再編法など重要事案での与党の「強行採決」が目立つ。
 数で押し切る「与党の横暴」が印象に残る中で、12日間の会期延長を行ったところで「結果」は見えている。失った国民の信頼を取り戻すのは容易ではない。延長を決めた安倍首相をはじめ与党は、そのことを肝に銘じるべきだ。
  会期延長で、来月22日に予定されていた参院選挙の投票日が29日に延びる。那覇市などは22日を前提に、すでに投票のための入場券を印刷済みだ。会期延 長で、24万枚を刷り直す。延長国会の審議の中身しだいでは、無駄な出費になりかねない。市民生活への影響も少なくないだろう。
 その参院選の勝敗は、年金問題や公務員制度改革の「成果」が左右するというのが与野党の一致した見方だ。与党が国会の会期延長を強行するのも、参院選で国民にアピールする「成果」づくりのためだ。だとするならば与野党ともに覚悟が必要だ。
 延長国会で論議される公務員制度改革は、官製談合の温床とされる天下り防止の対策が焦点で、公務員の「新人材バンク」が対策の目玉だ。だが、談合の抑制効果には否定的な見方が強い。
 年金問題は、社会保険庁の記録不備に始まり、社保庁のミスで受け取れなかった受給者の救済問題、さらにはグリーンピアに代表される官による年金基金の膨大な無駄遣いなど、枚挙にいとまがない。
 いずれも問題の核心となる原因究明、再発防止、確実な救済策の構築が求められている。数に頼らず、国民の疑問に丁寧に答え、ニーズに応える徹底論議こそが、国会に国民の信頼を取り戻すすべだ。

(6/22 9:54)

教育3法成立 見切り発車は現場混乱に

 昨年12月の教育基本法の60年ぶりの改正を受け20日、教育改革関連3法が参院本会議で可決、成立した。教員免許更新制の導入や教育委員会への国の関与の強化など、全国約110万人の教員、学校現場に大きな影響を与える。
 3法は、学校教育の目標などを定めた学校教育法、国と地方のかかわりを規定した地方教育行政法、新たに免許更新を盛り込んだ教員免許法だ。
  安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」の一環として「教育再生」を最重要課題に掲げている。教育は「100年の大計」だ。だが国会審議では、 与野党双方が求めた教育関連予算や教職員定数の拡充、免許更新制の実効性への疑念など、論議が不十分なまま採決となった。「現場無視だ」「参院選の目玉づ くり」「国会の会期日程をにらんでの政治思惑優先の採決」との批判も当然だ。
 改正3法の中身をみると、学校教育法では義務教育の目標として「我 が国と郷土を愛する態度」や公共の精神、規範意識の養成を明記している。「歴史について正しい理解に導き」との表現もある。正しい歴史は国が判断するのだ ろうか。沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定での日本軍の関与が修正・削除されたことに対し、県民から「沖縄戦の実相をゆがめるもの」として、撤回要求が 出されている。国の見方や価値判断の押し付けには危うさが伴う。
 その上、地方教育行政法では、教育委員会への文部科学相の是正指示、要求権を盛り込み、改正教育基本法では自治体の教育基本計画作りで政府の基本計画を参考にするよう求めている。教育への政府の影響力をかなり強化している。
 国の関与が強まれば、教育は良くなるものでもないだろう。むしろ地域の特性や学校の創意工夫が失われないか懸念する。
 教育改革は国民に「愛国心」を強制することではない。愛される国造り、そのための教育者と人材育成が基本である。十分な論議も尽くさず、見切り発車での教育3法改正は将来に禍根を残しかねない。

(6/22 9:53)

【琉球新報・金口木舌】

 「記憶」を辞書で引くと「物事を忘れずに覚えている、覚えておくこと」とある
▼本紙が慰霊の日を前に実施した県内四十一市町村アンケート調査で、半数以上の自治体が慰霊祭以外に独自の平和事業を行っていると回答した。だが、中には予算ゼロという自治体もあった
▼沖縄戦終結から六十二年の月日が流れた。自治体担当者からは、戦争体験の語り部の減少や財政難などの、平和行政を取り巻く厳しい状況を指摘する声も上がる
▼慰霊の日の前夜、沖縄市中央の小さな飲食店で、沖縄戦と平和について考える集まりがあった。出席者は沖縄戦を実際には体験していない、ほとんどが戦後生まれの人たちだった。彼らは祖父や父母らから伝え聞いた話を語り合った
▼小さな集まりだったかもしれない。だが、「物事を忘れずに覚えておく」には大事な試みだ。こうした試みは人が集まる場所さえあれば、家族や友人同士など、誰とでもできることだ
▼沖縄戦体験者自身が戦争を語ることが不可能になる日はいずれ訪れる。戦争体験の継承は、行政主導の事業に頼るだけのものでもない。県民一人一人が祖父母や父母らから聞いた自らの沖縄戦の記憶を語ること、それも記憶の継承となるはずだ。

(6/27 9:31)


【東京新聞・社説】2007年6月22日

温泉施設爆発 都会の死角に安全策を

 東京都心の繁華街近くで温泉施設が爆発で吹き飛んだ。都会で増えている癒やしの場所だが、天然ガスが充満、引火したらしい。原因究明とともに、安全管理基準の整備を急がなくてはならない。

 東京都や千葉県の地下は天然ガスを埋蔵している「南関東ガス田」だ。大半はメタンガスで、高圧のために水や湯に溶けた状態だが、地上に噴き出すと燃えることもある。

  二〇〇五年二月には東京都北区の温泉掘削現場で天然ガスを含んだ水に引火し、炎が十メートル以上も上がった。今回の現場となった渋谷区松濤(しょうとう) は都内屈指の高級住宅街として知られるが、二十三区内はどこでも深く掘っていけば、温泉水とともに天然ガスが噴き出す可能性がある。

 北 区のときは人的被害はなかったが、渋谷の温泉施設では女性従業員三人が死亡し、近くを歩いていた男性も巻き込まれて重体という惨事になった。爆発したの は、温泉利用棟とは別の、更衣室兼休憩室の従業員用建物だった。地下室にガスが充満して爆発したとみられるが、もし一体化した施設だったら、もっと悲惨な 事故になっていただろう。

 天然ガスもわいてくる温泉施設であれば、設備が整っていたかどうかが問題だ。ガスを湯から分離する装置が必要 となる。山間部の温泉なら開放的だからガスが室内にたまる可能性は低いが、都市部の施設だと屋内や地下室に装置が設けられるケースが多く、湯から分離した ガスを外部に排出する機器もいる。

 それでも屋内にガスがたまる危険性がある。ガス検知器も不可欠だ。これらが設置、機能して初めて安全 性が確保される。検知器がなく、換気扇が機能しなかった疑いが出ている。運営会社や施設の管理保守会社は天然ガスの危険性を認識していたかどうか疑いがも たれている。警視庁には徹底した原因究明を望む。

 ボーリング技術が進み、深くまで掘削できるようになったことで、都市部では温泉施設は増えている。都内の源泉数は百四十八カ所にのぼるという。安全確保をないがしろにしたままでは、営業がおぼつかなくなるだろう。

 北区での火災の教訓から、都は掘削時については指導要綱をつくり、ガス対策を求めている。しかし、営業施設をチェックする具体的な仕組みはない。安全管理上の盲点であり、行政の怠慢ともいえよう。

 自治体は温泉施設の緊急点検に乗り出したが、速やかに安全管理対策に取りかかるべきだ。危険が野放しにされたままでは、事故が繰り返されることになってしまう。

高速道路料金 大幅な引き下げを急げ

 関越自動車道と中央自動車道が二十三日直結する。両道を結ぶ首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が完成したためだ。課題は割高な通行料金。政府は全国の高速料金の大幅引き下げを急ぐべきだ。

 圏央道は都心から四十-六十キロ圏を走る環状道路。計画約三百キロのうち今回は東京・あきる野インターチェンジ(IC)と八王子ジャンクション(JCT)間約九・六キロが開通する。数年後には東名、東北、常磐、東関東自動車道などと結ばれる予定である。

 問題は料金だ。短い区間でも六百円以上かかるため、地元は「待ち望んだ開通だが、これでは市民が利用できない」と強く反発した。このため国土交通省は急きょ夜間・早朝の割引を実施することを決めた。

 今回に限らず、高速道路料金への不満は全国的なものだ。内閣府が昨年七月に行った「道路に関する世論調査」では高速道路の通行料金は「高い」とし、管理・サービス水準を下げたり、新たな財源措置を検討して今より低い料金にすべきだと答えた人が51・8%に達した。

 海外との比較でも日本の高速料金は一キロメートル当たり二四・六円と高い。米国の原則無料は別として、フランスの約一一・五円、イタリア約七・五円と比べて突出している。また日本の高速道路の利用割合は低く、結果的に二酸化炭素の排出量も多い-と国交省も指摘している。

 一方、一昨年十月に発足した高速道路会社六社の業績は好調だ。サービスエリアなど関連事業の好調もあって今年三月期連結決算は当初予想を上回る純利益を計上した。料金下げなどの利益還元が期待されたが、各社は内部留保にあてるという。

 日本は建設費など借入金を料金収入で返済する償還主義をとっているため、高速料金は割高になる。

 国交省側も料金には「問題意識は持っている」という。その対策として主要道での休日・夜間帯の割引を行う「社会実験」を行ってきた。同省は実験をさらに拡大する方向だ。また中日本高速道路(本社・名古屋市)などは企画割引を実施中だ。

 それも結構だが一時的でなく根本的な値下げを考える必要がある。昨年末の道路特定財源見直しの際、政府・与党は二〇〇八年度からの料金引き下げで新たな措置を講ずることで一致した。それならば早く実施すべきだ。

 また社会実験や割引はノンストップ料金収受システム(ETC)利用者に限定されている。高速道路でのETC利用率は現在約七割だが、全体の装備率はまだ低い。幅広い値下げになるように工夫してほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年6月22日

 <でんきを消して、スローな夜を>と呼びかける 『100万人のキャンドルナイト』が今年も、夏至の二十二日から三日間行われる。夜八時から十時までの二時間の消灯で、ゆるやかにつながるくらやみのウ エーブを世界大に広げようとの試み▼呼び掛け人代表の、マエキタミヤコさんは「日常の中でごく自然に電気を消して、キャンドルの光のそばで過ごす時間が少 しずつ増え、暮らしそのものが変わっていってほしい」。そんな想(おも)いを伝える文化活動だという ▼参院選目前の与野党攻防で会期を延長、強行採決を乱発する国会は、とてもスローな夜どころではない。消えた年金問題に火が付き、重要法案を次々成立させ る駆け足日程で、あとからボディーブローのように効いてくるのは、おそらく改正教育三法だ▼“戦後レジームからの脱却”をとなえる安倍政権。教員免許更新 制や地方分権に逆行する学校管理強化で国家を前面に立てる動きは、戦前回帰を思わせる。従軍慰安婦問題で米下院が日本政府批判を強める動きを侮ってはなら ない▼歴史学者の原武史さんが、自身の小学生時代を振り返る『滝山コミューン一九七四』(講談社)は、戦後社会の理想と現実を鋭く問う好著▼東京西郊の団 地族が“みんな平等”のジレンマに傷つきながらも、児童や女性が学校現場に直接参加して、熱い連帯の“公界(くがい)”を実現した。少なくともそこに不登 校問題はなかった。原さんとは同世代のマエキタさんらが呼びかけるキャンドルナイトは、ネットを現代の公界にしようとの試みにも見える。


【河北新報・社説】

福島県汚職初公判/「わいろ性」徹底した議論を

 5期18年にわたって福島県政を担った前知事佐藤栄佐久被告(67)の裁判が21日、東京地裁で始まった。
 県発注のダム工事をめぐり、弟の祐二被告(64)とともに収賄罪に問われた栄佐久被告は初公判で「まったく身に覚えのない事実で起訴された」と全面否認、無罪を訴えた。祐二被告も同様に否認し、検察側との対決姿勢を鮮明にした。

 2人が受注業者の選定にどうかかわったのか、相互の連絡はあったのかどうか、さらに実際に高値の土地取引だったのかどうかなどが裁判の争点になりそうだ。
  起訴事実では、栄佐久被告らは2000年の木戸ダム(福島県楢葉町)の入札で、ゼネコンの前田建設工業(東京都)などが落札できるよう便宜を図った。その 謝礼として2002年、郡山市の土地をダム工事の下請けに入った水谷建設(三重県)に高値で買い取らせるという形で、多額のわいろを受け取ったとされる。

 取引された土地は栄佐久被告らの実家の会社とも言える「郡山三東スーツ」の社有地約1万1000平方メートルで、価格は約9億7000万円だった。
 公共工事に絡む汚職事件では現金でわいろを受け取ることが多い。土地売買によるわいろの授受は異例のケースだろうが、実際に金銭が移動しており、わいろと認定されても不思議はない。

 検察側はわいろの額を約1億7000万円と判断した。土地の時価はどう見積もっても8億円を超えず、その差がわいろに当たるとの考えだ。弁護側は通常の商取引であり、わいろの授受ではないと主張している。
 土地はその後、約8億円で事件とは関係のない企業に転売されたことが分かっている。弁護側主張を支える事実になるのだろうが、仮に02年に時価に近い価格で売買されたにしても、ダム工事にかかわった業者が買ったということだけで十分に疑念を抱かれる行為だ。

 価格の妥当性はもちろん、工事を請け負った業者が買う理由がどこにあったのかは、これからの公判で十分に解明されなければならない。
 受注の際の栄佐久被告の関与も重要なポイントになる。検察側は栄佐久被告が「前田建設が一生懸命営業しているようだな。考えてみたら」などと当時の県土木部長に言ったことを指摘したが、弁護側はそんな事実はなかったと反論した。

 栄佐久被告の関与の有無は事件の成立に直結する。県政全般に絶大な権限を持つ知事という立場を考えれば、業者名を挙げただけでもかなりの影響を及ぼすのではないか。
 被告弁護側は初公判で、検察の捜査を批判した。かなり厳しい取り調べが行われたことを訴え、罪を認めたとされる2人の供述調書は信用できないと指摘している。
 汚職事件はそもそも物証に乏しいことが多く、供述内容が重要になってくる。それだけに取り調べ状況を確認しながら、調書の信用性などをしっかりと検証しなければならない。
2007年06月22日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 きのう自民、公明の党首会談で国会の12日間延長が決まった。ここ20年間で参院選前の通常国会の会期が延長されたのは1989年、98年と2回 ある。妙な符合でまたもや9年ぶり。「九」は「苦」にも通じる数字だ▼延長に伴い参院選の投票日は当初予定より1週間繰り延べされ7月29日となった。た だ、選挙事務を担う自治体には「22日投票」の線で既に走りだしていたところもあり、苦しい対応を迫られている

 ▼ 宮城県は日付入り選挙啓発ポスター約1万3000枚を印刷済み。「シールを張り訂正する。刷り直しより費用がかかるかも」と担当者。八戸市は広報誌約9万 部を配布。訂正のチラシを配り直す予定だ▼苦虫をかみつぶしているのは群馬県選管。経費節減を狙い同日選となるよう知事選を22日に設定した。が、あてが 外れ経費負担が見込みより約3億円も増えるという

 ▼「突然やってくる解散総選挙と事務的に変わりはない」と言うのは、投開票所172カ 所の確保が必要な仙台市選管。だが、夏休み本番でスポーツや地域の行事が入っている施設も。言葉の平静さとは裏腹に主催者との調整に苦戦を強いられそう▼ ちなみに過去2回の会期延長後の参院選はいずれも自民党が大敗。宇野、橋本両内閣が総辞職した。さて、今回は。

2007年06月22日金曜日


【京都新聞・社説】

パレスチナ分裂  独立国家の悲願どこへ

 パレスチナ自治区が二つに割れ、分裂が固定化しかねない情勢に陥っている。
 自治政府内で穏健派ファタハと、強硬派ハマスが衝突。ファタハはヨルダン川西岸、ハマスはガザ地区を支配地域としてにらみ合い、権力の並立状態が出現した。
 治安部隊の権限をめぐる両派の確執から武力衝突が起こり、ハマス勢力がガザ地区を制圧したのが直接の原因だ。
 ファタハを率いるアッバス議長は、ハマスのハニヤ首相を一方的に解任。独立系のファイヤド氏を新首相とする緊急内閣を発足させた。
 両派を中心に、ことし三月に発足したばかりの挙国一致内閣は、もろくも崩壊してしまった。
 悲願の「西岸地区とガザ地区を基盤にした独立国家」を、一丸になって目指すはずが、これではパレスチナは分断され中東和平のプロセスは方向を見失ってしまう。
 独立国家という民族の悲願をあきらめてよいのか。流血や憎悪を乗り越え、両派はもう一度歩み寄るべきだ。
 周辺のエジプトやヨルダンなど穏健派諸国には仲介の動きも見える。両派を加え、早急な和平協議開催を望みたい。必要なら、周辺各国の国際部隊派遣も考えねばならないだろう。
 ハマスは、米国がテログループとみなすイスラム原理主義組織だ。ファタハと違いイスラエル承認を拒否してきた。今回、ガザ地区に勢力を集中させた結果、西岸地域で影響力を喪失した。
 事態の変化に、欧州連合(EU)や米国はファタハ新内閣の支持を発表、ハマス単独内閣の発足(昨年三月)以来停止していた援助の再開を決めた。イスラエルも同調する姿勢を示している。
 アッバス議長は、こうした動きを歓迎しながらハマスとの交流を一切、打ち切ると宣言した。
 交渉断絶による分割統治の固定化は、西岸地区に比べて経済格差が大きいガザ地区住民百五十万人の生活をさらに苦しめることになろう。
 イスラエルの建国以来、苦難を耐え忍んできたパレスチナ民衆を見捨ててはなるまい。ハマスと交流の窓口は常に開けておくべきだ。
 ハマスとしても、イランから支援があるとはいえ、現状では経済封鎖で締めつけられる状態は変わらない。じり貧を避けるためにも、銃を置いてファタハと向き合う方が得策ではないか。
 ガザ地区ではハマスの攻勢を警戒して国境周辺にイスラエル軍が部隊を集結させ、小競り合いから二十日にはガザ北部を空爆した。
 パレスチナで、いま最もやってはならないのがイスラエルの介入だ。ファタハとハマス両派を説得し、イスラエルに自重を促す。日本を含めて、国際社会の圧力を一層強めたい。

[京都新聞 2007年06月22日掲載]

会期12日間延長  国会は官邸の下請けか

 あす二十三日までだった国会の会期は、十二日間延長され、七月五日までとなる。
 これにより来月二十二日予定の参院選は一週間先送りされ、二十九日投開票(十二日公示)となる。
 参院選前の会期延長は異例だ。それも安倍晋三首相が天下り規制の強化を目指す国家公務員法改正案の成立に強くこだわったためである。
 年金記録不備問題や松岡利勝農相の自殺をきっかけに、安倍内閣の支持率は急落した。この状態での参院選入りを回避するために、重要法案を仕上げ、その実績をアピールしたかったのであろう。
 参院自民党や公明党の反対を押しのけて、局面の転換を図ろうとしたところに、官邸の「あせり」が見て取れる。
 もちろん会期延長は、すべて問題視されるわけではない。重要法案の審議を尽くすうえで、時間が足りなければ、当然、延長の選択肢もあり得よう。
 問題は、そうした前提で会期延長されるのかどうかだ。国会は最終盤にきて、重要法案はだんご状態にある。二週間足らずの延長幅で、どこまで審議を深められるか。首をかしげざるを得ない。
 重要法案には問題が多い。首相肝いりの国家公務員法改正案にしても、これで本当にキャリア官僚の省庁による「押しつけ的な天下り」は根絶できるのか。それどころか「天下り容認法」になりはしないか。疑念は深まるばかりだ。
 とりわけ「宙に浮いた年金」「消えた年金」問題は深刻だ。社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案で、国民の不安、不信は解消できそうにない。
 政府が新たにつくる「第三者委員会」が救済役を担う。国民の権利回復を判断する重要な機関が、役所まかせの政令、省令で済ませていいのか。新たな混乱は生じないか、心配は尽きない。
 政治資金規正法改正案や労働関係三法案なども残っている。延長国会は、せいぜい採決に持ち込むための一定の「時間稼ぎ」が見え見えである。
 こんど改選となる参院議員の任期は七月二十八日である。国会を任期満了まで延長し、与野党は修正協議を含めて、国民が納得する政策論争を進める。そのうえで、参院選に臨み、国民の審判を受ける。そんな選択もあったはずだ。
 それにしても「数の力」による与党の相次ぐ採決強行は目に余る。出した法案は通す。修正もしない。これでは国会は何のためにあるのか。存在意義が問われよう。政治不信を増幅させかねない。
 国会は官邸の下請け機関でなければ、追認機関でもない。延長国会では厳に慎まなければならない。民主党衆院議員に対する懲罰問題も度を越している。
 衆参両院議長は与野党間のアンパイア役だ。国民は見ている。かびくさい先例や規則にしばられることなく、公正、公平な国会運営を基本に、民意を背にした「個性ある指導力」を求めたい。

[京都新聞 2007年06月22日掲載]

【京都新聞・凡語】

富山地裁の冤罪事件

 過ちては改むるにはばかることなかれ-。日本の捜査当局は論語の教えが大 嫌いのようだ。富山地裁であった冤罪(えんざい)事件の再審初公判は、「お上」の体質をあらためて見せつけた▼事件の内容はこうだ。無実の男性が女性暴行 事件の犯人にされ、裁判で服役した。刑を終えた後に真犯人が現れ誤認逮捕と分かった。証拠を十分調べないまま無理やり自白させる捜査を絵に描いた事件だっ た▼再審は、男性の有罪を取り消し名誉を回復するための措置である。ところが、検察側は「被告人は無罪です」の一言だ。弁護側が求めた県警取調官に対する 証人申請は「必要ありません」と述べ裁判長も却下した▼こんな言葉だけで、父親の死にも立ち会えなかった男性の冤罪が晴れたとでも言うのか。ずさんな警察 の捜査をうのみにした検察、裁判所の責任も重いはずである。問題なのは、やってもいない犯罪を男性がなぜ自白したかである▼「誰も信じられなくなった。自 分が犯罪者と思い込み、感情を押し殺した」。男性はそう語った。密室の取調室で何があったのか。検察の一部で取り調べを録画・録音する試行が始まったが、 警察はいまだ導入に消極的だ▼裁判員制度導入を控え、警察や検察、裁判所は男性の次の言葉を何と聞く。「(裁判に)絶望した」。論語には、こんな言葉もあ る。〈過ちを改めざるこれを過ちという〉

[京都新聞 2007年06月22日掲載]


【朝日・社説】2007年06月22日(金曜日)付

教育3法―現場を画一的に縛るな

 文部科学省がこれまで以上に教育現場に口をはさみ、画一的な考え方を押しつけることにならないか。

 そんな疑問が解消されないまま、教育関連3法が成立した。

 安倍首相にとっては、「愛国心」を盛り込んだ半世紀ぶりの教育基本法改正に続く教育改革である。

 文科相が教育委員会に是正要求や指示をすることができる。教員の免許を更新制にする。学校に副校長や主幹教諭を置くことができる。こう並べていくと、今回の法改正が上意下達の強化を狙っていたことが改めてわかる。

 これが本当に教育の再生につながるのか。学力を引き上げ、不登校やいじめを解決することになるとは思えない。

 それどころか、教育委員会や学校、教師が萎縮(いしゅく)し、新たな試みをしなくなるのではないか。それが心配だ。

 法律が成立したとはいえ、どのように運用するのか、あいまいなところが多い。文科省は現場の判断を重んじ、創意工夫の芽を摘まないようにしなければならない。

 教育委員会に対し、文科相が指導などだけでなく、是正要求や指示までできるよう改正されたのは、いじめ自殺と必修科目の履修漏れがきっかけだった。

 しかし、今後、どのようなときに指示などを出すのかははっきりしない。文科相は国会答弁で「私が判断した時」「(どんな状態かは)定義はあらかじめできない」などと答えた。これでは文科省の権限が際限なく広がりかねない。

 文科省には慎重な運用を求めたい。万一、発動する場合には、なぜ、是正要求や指示が必要なのかをきちんと説明しなければならない。

 講習を条件に教員免許を10年ごとの更新制にしたことも、現場への影響が大きい。だが、どんな講習を受け、免許を取り上げられるのはどういう場合なのか。具体的な内容が示されていない。

 これでは教師の不安が増すのも無理はない。優秀な人材が集まらなくなる恐れもある。講習の内容や判定の基準を公開し、透明性を高めてもらいたい。

 学校に副校長や主幹教諭を置くことも、画一的に進めない方がいい。中間管理職が増えて、子どもたちに向き合う教師が減るのでは、なんにもならない。この制度を使うことを教育委員会や学校に無理強いしてはいけない。

 それにしても、安倍首相の教育改革では、不思議なことがある。教育予算については、何ら手だてが講じられていないことだ。

 国会審議でも教育予算の増加について与野党を問わず要求が相次いだが、首相の歯切れは悪かった。骨太の方針に盛り込まれた内容もあいまいだった。教育への公的支出を見ると、日本は先進国の中でも低いレベルにとどまっている。

 これで教育が改革の本丸だと胸を張るのは、なんともちぐはぐだ。

イラク特措法―ブッシュ政権支援法か

 イラクで輸送業務にあたっている航空自衛隊の活動が、さらに2年間延長されることになった。そのためのイラク特別措置法改正が成立した。

 イラクでは宗派間のテロや米軍への攻撃がやまず、犠牲者は増える一方だ。派遣部隊を撤収、縮小する国が相次いでいる。そこに自衛隊をとどめるかどうか。そんな重大な判断だったのに、国会で政府は十分な説明をしたとは言い難い。

 この戦争は間違った情報に基づいて始まった。小泉前首相はそれを支持し、世論の反対を押し切って自衛隊まで派遣した。この出発点の誤りを率直に認めることが大前提のはずだ。なのに、政府・与党はそれをほおかぶりしたまま延長を決めた。極めて遺憾である。

 そのほかにも、ふたつの大きな問題が放置されている。

 第一に、どのタイミングで航空自衛隊をイラクから引き揚げるのか、いわゆる出口戦略がない。第二に、自衛隊が現地でどんな活動をしているのか、ほとんど説明されていないことだ。

 政府が出口戦略を語れないのは当然だろう。そもそも自衛隊の派遣を続けるという結論が先にありきなのだ。日米同盟への配慮を最優先してイラクに自衛隊を出した以上、いつ完全撤収するかも米国の政策次第で判断せざるを得ない。それが本音なのではないか。

 ブッシュ米大統領は昨年の中間選挙で大敗し、いまや支持率が3割を切る苦境にある。来年に迫る大統領選挙では、共和党陣営の劣勢が必至だ。イラク政策への批判がその底流にある。

 イラクで活動する自衛隊は、そうした大統領を支える日本側の「証し」となっている。特措法は名目こそイラク復興支援をうたうが、実態はブッシュ政権支援の側面が大きいのだ。

 航空自衛隊は、どんな物資を運んでいるか。政府側の国会答弁によれば、今春までの9カ月間に運んだ物資のうち、95%は多国籍軍向けだった。人道復興支援より、もっぱら米軍などの軍事作戦を下支えしているのが実態ではないのか。

 しかも、攻撃への危険を避けるため、輸送機の運航を中止するケースが増えているようだ。どれほど危険なのか、詳しく説明すべきだ。

 自衛隊の活動について、政府の秘密主義は明らかに行き過ぎている。国会に実態を報告しないことには、文民統制は機能しようがない。

 都合の悪い情報にふたをするのは、先ごろ共産党が自衛隊の内部文書として追及した情報保全隊の問題にもつながる。

 イラクへの自衛隊派遣に反対する人々の動きを監視したという文書を「政府が公表したものでないのでコメントしない」というのでは、はなから説明する気がないとしか思えない。

 派遣延長を含め、こうした政府のやり方は、日米同盟や自衛隊に対する国民の信頼を高めることにはならない。

【朝日・天声人語】2007年06月27日(水曜日)付

 伝わるところでは、日本で初めてボーナスを出したのは、三菱の創始者岩崎弥太郎だったという。三菱史料館によれば、明治9年、英国の船会社と上海航路の覇を競い、勝って相手を撤退させた。

 弥太郎は喜んだ。「社中各員別(わ)けて勤勉事務を担任し其(そ)の功績を見ること少なからず」。幹部から給仕まで、給料のほぼ1カ月分にあたる報奨金を奮発したそうだ。ボーナスは働きに報いて支給されたものだった。

 「勤勉事務」とは縁遠かった社会保険庁が、全職員にボーナスの自主返納を求めることになった。幹部から末端までを対象とし、退職者にも応分の「寄付」を求めるという。安倍首相や柳沢厚労相も率先して返納する。官邸主導による、政官あげての「総ざんげ」の趣だ。

 「当然だ」と言う人、「まだ甘い」と収まらない人、さまざまだろう。だが、国民の不満をそらす演出を感じる人も、少なくないのではないか。参院選は1カ月の後に迫っている。

 総ざんげの元祖といえば、終戦直後の「一億総ざんげ」である。その正体を、「緊急の場面に直面した支配層の放ったイカの墨」と突いたのは政治学者の丸山真男だった。今度のざんげも選挙前の目くらましではないのか。いぶかる声も聞こえてくる。

 弥太郎は、英国会社との競争の際、経費節減のために自らの報酬を半分にした。社員もならって3分の1を返上したという。目的のある返納なら張り合いもあろう。だがイカの墨となってやがて消えるなら、国民にも職員にも、残るのはむなしさだけである。


【毎日・社説】

社説:国会延長 選挙に有利とはならない

 自民、公明両党は21日、今国会の会期を7月5日まで12日間延長することを決めた。これにより、参院選の投票日は当初想定されていた7月22日 から同29日に1週間ずれ込むことになる。候補者や各地の選挙管理委員会などが「22日投票」を前提に動き始めていた中での異例の延期である。

 なぜ国会延長か。理由はやはり年金支給漏れ問題に行き着く。

  延長を主導したのは公務員制度改革関連法案の成立にこだわった安倍晋三首相だ。年金問題で支持率が急落し、今のままでは選挙は首相が争点にしたかった憲法 改正や教育再生は影を潜め、年金一色になる可能性がある。そんな中、各省庁の天下りあっせんを禁じる公務員制度改革は国民に支持されやすい改革の旗印にな ると考えているのだろう。

 ところが、各種の世論調査を見ても公務員改革への有権者の関心は決して高くない。首相は最近、社会保険庁の歴 代幹部の天下りや同庁の無責任体質に言及し、それを変えるためにも公務員改革が必要だとも語っている。しかし、これも多くの有権者にはこじつけのように聞 こえているはずだ。

 一方、自民党は中央官庁が反発している事情から元々、この法案に熱心ではなかった。それでも延長を受け入れたのは、1週間でも参院選が延びれば年金問題への有権者の怒りが少しは収まると期待しているからではなかろうか。

 7月29日投票となれば夏休みが本格化し、投票率が下がって公明党などの組織票が決め手になるとの思惑もあると野党側は指摘している。だとすれば、これも有権者をばかにした話だ。なりふり構わぬ延長は逆に有権者の怒りを増幅させるのではなかろうか。

 会期を延長し、審議時間を確保して議論を積み重ねるのは無論、悪いことではない。だが、現実には社会保険庁改革法案など今後も与党の強行採決ラッシュが続くと思われる。数の力を頼りに突き進む首相や与党は、参院選を前に焦るばかりで、冷静さを失っているとしか思えない。

 対する野党も強行採決を期待している節がある。与党の「数の横暴」をアピールできるからだ。実際、野党には否決されるのを承知で内閣不信任案を提出するなど抵抗の手段が限られているのは確かだ。ただ、有権者はそんな混乱劇ばかりを望んでいるだろうか。

 年金支給漏れ問題は民主党議員が、こつこつと調査し、しつこいほどに厚生労働省や社会保険庁を追及して、長年にわたる無責任の連鎖を暴いたものだ。貫くべきはそうした姿勢であるはずだ。

 小沢一郎代表は20日、民主党などが提出した河野洋平衆院議長の不信任決議案を採決する衆院本会議を欠席し、地方回りをしていたという。自民党が「与党を国会軽視と批判する資格があるのか」と反発するのも当然だろう。

 せっかく会期を延長するのだ。参院選前に争点や論点をきちんと整理するため、ぜひとも安倍首相と小沢代表ら野党党首との党首討論を実現させるべきである。

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊

社説:イラク派遣延長 いよいよ出口戦略を考えよ

 航空自衛隊の活動を2年間延長する改正イラク復興支援特別措置法が成立した。政府は1年間の活動内容を定めた基本計画を作成し、8月からイラクでの5年目の活動に入る。

 イラク情勢は、多くの民間人や兵士の命が失われ依然として泥沼状態が続いている。派遣隊員は安全を確保しながらの慎重な任務遂行が求められる。

 私たちは活動の延長を認める前提として、審議を通じて活動内容の詳細をできるだけ国民に開示すること、イラク開戦を支持した政府判断の徹底検証--などを求めてきた。

 しかし国会では敵に手の内をさらすとして非公開が前提となり、十分な情報の開示がなされなかった。検証も「大量破壊兵器が開戦当時は存在すると信じるに足る理由があった」という答弁が繰り返され論議は深まらなかった。

 開戦と統治については米、英でも深刻な反省が生まれている。政府は検証委員会などを作り報告をまとめるべきだ。仮にそれが政府の判断ミスを認めることになっても、今後の国家戦略を練る上で貴重な教訓になるはずだ。

 不十分な審議の中でも明確になったこともあった。昨年7月、陸上自衛隊はサマワから撤退した。それ以降の空自の輸送回数は150回でそのうち国連関連の人員・物資輸送が25回だった。

 政府は具体的な人員・物資の内容を明らかにしていないが、国連以外はほぼ米軍を中心とする多国籍軍の輸送であることが透けて見えてきた。活動が当初の人道復興から米軍支援に変化したのだ。

 政府関係者は空自の活動は米国からも非常に感謝されていると話す。日本は北朝鮮の核・ミサイル問題を抱え、安全保障を米国に頼っている。C130輸送機3機での活動は、日米同盟維持の費用対効果の面でも割安だという考え方を口にする国防関係者も多い。

 そうであるならば国会でもきちんとその実態を説明すべきだったし、今後もその趣旨で国民に理解を求めるべきだ。人道復興支援を強調することは正直ではない。

 活動が危険を伴うことも明らかにされた。バグダッド空港では、ミサイル攻撃のおとりにするために火炎弾(フレア)を放ちながら着陸するケースも多いという。久間章生防衛相は「刃の上で仕事をしているようなもの」と表現した。

 同相が危険性に言及した背景には、批判を極力避けようと安全性を強調する官僚に対して、「危険な目にあっている実態を明らかにすべきだ」という自衛隊内の不満に応える意味もあったようだ。

 今後、米軍の兵力は削減されながらも駐留は長期化するのではないかという見通しが出ている。新政権になっても早急な完全撤退は考えにくいかもしれない。

 撤退時期について久間防衛相は「国際社会や米軍増派の効果など全体を見ないと判断できない」と語るにとどまった。主体的な出口戦略を考えないと米軍に追随するしかない状況に追い込まれ、引き際が難しくなる危険性がある。

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:来日した物理学者のアインシュタインが…

 来日した物理学者のアインシュタインが関西に 行く途中の汽車から「ああ、あそこに大層不経済なものがある」といって指さした。そこには電信柱の電灯が白昼ついていたという。そこで誰かに「もったいな い」という日本語を教わったかどうかは知らない▲谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」といえば、日本家屋のうす暗がりの美をたたえた名随筆だ。 このアインシュタインの話が出てくるのは、すでに暗がりの美を忘れ、何もかも電灯でこうこうと照らし出す近年の日本人の無神経と浪費をたしなめるくだりだ ▲「近頃(ちかごろ)のわれわれは電灯に麻痺(まひ)して、照明の過剰から起る不便と云(い)うことに対しては案外無感覚になっている」「待合、料理屋、 旅館、ホテルなどが、一体に電灯を浪費し過ぎる」「何より彼より、一遍(いっぺん)明りを減らしてみたら覿面(てきめん)に諒解(りょうかい)するであろ う」▲これが書かれたのは74年前だから、むろん今日の「照明の過剰」は当時の比ではない。ならばここで一遍明かりを減らし、そこで地球環境問題に思いを めぐらしてはどうかという夏至のキャンペーン「100万人のキャンドルナイト」が今年もきょうから24日にかけて行われる▲市民団体と環境省が連携して4 年前から始まったこのキャンペーンだが、期間中は毎夜各地で多彩な催しがある。とくに24日夜8時から2時間のライトアップ施設の消灯には全国6万施設以 上が加わる見通しだ。主催ホームページは家庭にも無理のないかたちでの消灯を呼びかけている▲この世には夜の暗がりでしか見えないものもあるのだろうか。 そこではふだん光の中に埋もれていた感覚やアイデアと出合えるのか。「陰翳礼讃」は、こう結んでいる。「まあどう云う工合になるか、試しに電灯を消してみ ることだ」

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊


【読売・社説】

空自派遣延長 イラク再建へ支援継続が必要だ(6月22日付・読売社説)

 イラク再建の道は依然として険しいが、失敗は許されない。日本は、引き続き国際社会の共同支援活動の一翼を担い、責務を果たすべきだ。

 改正イラク復興支援特別措置法が成立し、航空自衛隊の輸送活動の期限が2年間延長された。

 イラクでは今、米英など26か国の部隊計19万人以上が治安維持や人道復興支援に従事している。アジア太平洋地域からも、日本以外に、韓国、豪州、シンガポールなど5か国が参加中だ。

 テロが続発するイラクでは、安全な活動はあり得ない。開戦以来の米兵の死者は3500人を超えた。多くの国が犠牲者を出しながらも、イラク復興と中東の安定のために尽力している。

 空自のC130輸送機3機による輸送の危険性は、かなり限定的とされる。イラク国内の空港の着陸時には、武装勢力の地対空ミサイルなどへの警戒を怠れないが、実際に攻撃された例はない。

 多国籍軍や国連の人員・物資の輸送は3年余で500回以上になる。イラク政府や国連の評価は高い。イラク情勢が最大の課題である米国を支援することで、日米同盟の強化にも寄与している。

 危険を最小限に抑えつつ、日本の人的貢献を最大限アピールする。空自の活動は、日本の国益に合致する現実的な選択肢と言える。

  日本が2003年秋に表明した50億ドルの政府開発援助(ODA)のうち、実施されたのは15億ドルの無償援助だけだ。35億ドルの有償援助は、10件、 21億ドル分の使途が決まったが、着手されていない。治安の悪さに加え、イラク政府の受け入れ態勢が整っていないことが原因だ。

 ODA実施や文民の活動が困難な状況下で、自衛隊の活用は当然のことだ。

 改正イラク特措法の衆院通過時には、空自の撤収に関する「出口戦略」の検討を求める付帯決議が採択された。

 陸上自衛隊は昨年7月、イラク南部サマワから無事、撤収した。多国籍軍から地元への行政権限の移譲や、この地域からの英豪両軍の撤収の時期に合わせるという、入念な出口戦略が奏功した。

 空自についても、他国軍の動向や現地情勢を慎重に見極めつつ、将来の出口戦略を練る必要がある。

 イラクの治安回復には、宗派対立の解消や周辺国の協力が欠かせない。

 日本は3月にイラク各派の有力者を東京に招き、国民融和セミナーを開催した。5月にエジプトで開かれたイラク安定化国際会議では、麻生外相が、イラン、シリアの協力を呼びかけた。こうした地道な外交努力を重ねることも重要だ。
(2007年6月22日1時36分  読売新聞)

被害者裁判参加 冷静、慎重な運用が求められる(6月22日付・読売社説)

 あくまで慎重な運用が求められるだろう。

 刑事裁判への「犯罪被害者参加制度」の新設を柱とする改正刑事訴訟法などが成立した。来年12月までに導入される。

 犯罪被害者本人や遺族は、希望すれば法廷で、被告や証人に質問したり、求刑に関して意見を述べたりできるようになる。殺人や誘拐、死亡交通事故などの重大事件が対象だ。被害者は弁護士を付けられる。日本の刑事裁判の形態を大きく変える制度だ。

 「裁判の蚊帳の外に置かれてきた」と訴えてきた多くの犯罪被害者は、新制度の導入を歓迎している。

 被告は、自らに有利になる証言をすることが多い。これに対し、遺族しか知らない事実を示して、反論することもできる。これが、真実解明に役立つという意見もある。

 一方で「被告の顔を法廷で見ることにより、改めて心が傷つく」として、制度の導入に反対してきた被害者もいる。

 犯罪被害者の声を尊重するのは、当然のことだ。だが、被害者と被告のやりとりが感情的になった場合、冷静な事実認定の障害になる恐れがある。刑事裁判の運用に支障をきたす制度になってしまっては、元も子もない。

 法務省は、「検察官が被害者の質問を事前チェックするので、感情的な質問は防げる」としている。しかし、それだけで十分だろうか。

 検察官は、被害者との意思疎通を密にしなければならない。裁判官には、法廷の秩序を守る訴訟指揮が求められる。

 新制度導入の約半年後には、裁判員制度も始まる。

 被害者の発言が、裁判の素人である裁判員の心情に、どのような影響を与えるかも考えるべき問題だ。検察官が無期懲役を求刑した事件で、被害者が「死刑を」と、意見を述べるケースも出てくるだろう。その際、裁判員の量刑判断に影響を及ぼすこともあり得る。

 裁判所に採用された証拠だけに基づいて、有罪か無罪か、さらに、量刑を決めるのが、刑事裁判の原則だ。裁判官は、裁判員となる人たちに、その原則を周知し、感情に流されない判断をするよう徹底することも必要になる。

 被害者が参加する裁判の量刑が、参加しない裁判より重くなる、といった傾向が出ては、公正さが損なわれる。

 改正刑訴法の付則には、新制度の導入から3年後の見直し規定が明記されている。法務省や最高裁は、運用状況を絶えずチェックし、必要に応じて、制度の抜本的な見直しも行うべきだ。
(2007年6月22日1時35分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月22日付

 各種アンケートの結果を企業が送ってくださる。そのつど興味 深く拝見しているが、長く保管する資料はそう多くない。シチズン時計「夫婦の時間」はいまも手もとにある◆2年前の調査で、全国の夫婦200組に「1週間 で最も心地よい時間」をたずねている。回答の最上位は夫が「土曜の午後9時」、妻が「月曜の午前10時」であったという◆なるほど、私の姿が消える休み明 けが心地よいの、ほほう――と、すねる人はいまい。「そんなものさ」と達観する人、「どこの家も一緒だね」と妙に安心する人、夫の側の感想はそこらあたり だろう◆答える時刻に多少の食い違いはあれ、どこかに「心地よい」と感じる時間があるならば贅沢(ぜいたく)は申すまい。昨年の同じ月を上回ること6%、 4月の離婚件数が急増したという◆離婚後に夫の厚生年金を夫と妻で分け合うことができる年金分割制度の申請が4月から始まった。新制度を待って離婚を切り 出した中高年の妻も多くいたとみられる。「赤い糸夫居ぬ間にそっと切る」という現代川柳があるが、切った糸の断片を見せられる瞬間はなかなか心臓に悪かろ う◆エレベーターやジェットコースターに限らず、結婚生活も日ごろの点検が大切と聞く。「やっぱり、君もあれかね、月曜日かな…」と、家庭内のアンケート でもしてみますか。
(2007年6月22日2時11分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】ヒル氏訪朝 拉致を置き去りにするな

 6カ国協議の米首席代表を務めるヒル国務次官補が、北朝鮮首席代表の金桂寛外務次官らと会談するために訪朝した。核施設封鎖など「初期段階措置」の履行や6カ国協議再開について北朝鮮と直接協議するのが目的だという。楊潔●中国外相の訪朝予定も発表された。

 北朝鮮の核問題は、2月の6カ国協議で寧辺の核関連施設の停止・封印や国際原子力機関(IAEA)査察再開を含む初期段階措置で合意した。にもかかわらず、北朝鮮は米財務当局による金融制裁の解除を要求し、4カ月に及ぶ迷走を重ねてきた。

 ヒル次官補は、米政府がみずから科した制裁を骨抜きにする形で今回の訪朝にこぎつけた。この間、当初は「6カ国協議の枠外で米朝協議はしない」としていた原則は崩れ、「対話と圧力」の重要なテコとなっていた金融制裁も後退してしまった。

 さらに米国が、北朝鮮に対するテロ支援国指定の解除問題に踏み込み始めたことも、日本人の不信感を強めた。拉致問題がからむからである。年初来のヒル次官補のかじ取りに対し、日米同盟国間の温度差を懸念する声が高まっているのは見過ごせない。

  6カ国協議の最終目標は、北朝鮮の保有するすべての核を検証可能で後戻りのできない形で完全廃棄させることだ。米側には、核を放棄して国際社会に復帰した リビア型の解決に期待する志向が強いという。訪朝を通じて完全廃棄への確かな道筋が開けるのなら、それを歓迎しない理由はない。

 だが、初期段階措置はその第一歩にすぎず、その先にはウラン濃縮や既存の核兵器関連物質の完全廃棄と査察検証という困難な作業が待っている。しかも、これまでの北朝鮮には誠意ある姿勢がみられないのが実態だ。

 ヒル次官補は初期段階措置の履行だけでなく、完全廃棄の意思と誠意を北朝鮮から引き出さねばならない。2月合意からいかなる後退も許されないことを銘記すべきだ。その上で、拉致問題の解決についてもきちんと念を押してもらう必要がある。

 核、ミサイル、拉致の包括解決が日本の一貫した方針だ。安倍晋三政権が「拉致解決で進展がない限り、経済支援もしない」と主張してきたのは当然であり、この姿勢を貫くべきだ。

●=簾の广を厂に、兼を虎に

(2007/06/22 05:10)

【主張】会期延長 責任伴う決断を支持する

 安倍晋三首相は公務員制度改革関連法案などの成立を図るため、参院選の日程をずらして国会会期を延長することを決断した。

 首相が天下りの慣行を断ち切るための法案を最重要の課題とする判断を支持したい。参院選に向けて、各党が争点を明確化させることにもつながり、有意義である。

 23日で会期末を迎える今国会の会期は12日間延長され、当初「7月5日公示、22日投票」と想定されていた参院選の日程が1週間遅れる。各候補にとっては、選挙運動や資金面での負担が増えるだろうが、もともと選挙日程が確定していたわけではない。

 会期延長の最大の眼目は、天下り規制強化などを柱とする公務員制度改革法案の成立を図ることにある。

 官による押し付け的な天下りを廃止し、各省OBが契約などをめぐり古巣に口利きするのを禁止するのは、官製談合を断ち切るために不可欠だ。

 関連法案の柱である「官民人材交流センター」(新人材バンク)の創設が、天下り規制の万能薬だとはいえない。しかし、公務員制度の抜本改革に向けた第一歩ととらえ、天下り官僚たちのやりたい放題に一刻も早くブレーキをかけるためにも、その実現を急ぐ必要がある。

 参院選を控えた土壇場での会期延長に野党は反発し、与党内にも異論がある。しかし、やるべき仕事が残っているのに、帰宅時間が来たらほうり出して帰ってしまうようなことは、民間の感覚では考えられない。

 通常国会の会期は150日間で、1回の延長ができるという国会法のルールにも外れていない。

 首相が成立させようとしている法案内容の評価や、会期延長に踏み切ったこと自体の是非についても、参院選で有権者の審判を受ける。与党過半数維持を目指す首相にとって、今回の決断がプラスにつながるかどうか。そのリスクも負ったうえでの会期延長だと考えるべきだろう。

 年金記録紛失問題に政治としてどう対処するかも、残された会期の中で大切なテーマだ。責任の押し付け合いや、加入者の懸念をあおるような議論ではなく、受給漏れや年金制度そのものへの不信を取り除くために、各党は知恵をしぼるべきである。

(2007/06/22 05:09)

【産経抄】

 「失敗学」の提唱者、畑村洋太郎工学院大教授によれば、失敗にも「よい」のと「悪い」のがある。畑村さんが「よい失敗」のひとつに挙げるのが、 1954年に2機の飛行機が起こした空中爆発事故だ。どちらも、英政府の主導で開発された世界初のジェット旅客機、コメット機だった。

 ▼チャーチル首相は「イングランド銀行の金庫が空になっても原因を究明せよ」と厳命した。その結果、実際に使用される状態とは異なる条件で耐久実験を行ったため、金属疲労の計算を誤っていたことがわかった。

 ▼56 人の人命が失われ、社会に与えた衝撃も大きかった。それでも、事故をきっかけに未知の部分が多かった金属疲労の研究が進み、技術の進歩につながったこと は、評価できるという(『失敗学のすすめ』講談社)。では、東京都渋谷区松濤の温泉施設「シエスパ」の爆発事故はどちらの失敗なのか。

 ▼ 地下千数百メートルからくみ上げる温泉はもともと海水だった。プランクトンなどが分解されてできたメタンガスが溶け込み、南関東地域の地下に天然ガス田を 形成している。平成16年7月に千葉県九十九里町のいわし博物館で起きた爆発事故で、その存在が知られるようになる。

 ▼翌年2月、東京都北区の温泉掘削現場で起きた火災は、噴出するガスの恐ろしさを改めて見せつけた。火災の後、東京都が作った安全確保のガイドラインは、あくまで掘削時に限ったもの。営業開始後も危険な状態が続くのは、自明のはずなのに。

 ▼何よりずさんなガスの管理をめぐる、運営会社と管理委託先の責任のなすりあいは見るに堪えない。過去の事故から学ばず、判断ミスを繰り返し、揚げ句の果てに女性従業員の夢を奪った。「最悪の失敗」に決まっている。

(2007/06/22 05:06)


【日経・社説】

社説1 国民に役立つ社会保障番号の制度設計を(6/22)

 年金記録騒動をきっかけに安倍晋三首相が「社会保障番号」を創設する考えを示した。国民1人ひとりに国が1つの番号を決めて、公的年金だけでなく健康保険や介護保険も含めて加入録や保険料納付歴、受給の状況などを一体管理する仕組みだ。

  国民からみて役に立つ制度にするには、社会保障に関する国民と国・自治体との間のやりとりを本人だけが手軽に把握できる仕組みが必要になる。個人情報の流 出を根絶する観点からは政府内のどの部局を運営主体とするのか、厳格に運用する体制を整えなければならない。納税者番号制度との関係を整理することも課題 だ。年金問題でわかったずさんな情報管理体制を立て直すためにも、制度設計に早急に着手すべきだ。

 制度創設は今年の骨太の方針にも盛り 込まれた。税制改革に関連して「納税者番号の導入に向けて社会保障番号との関係の整理を含めて検討する」と指摘し、社会保障の項で「個人が自分の健康情 報、年金や医療などの情報をオンライン管理し、手続きを安全かつ簡単に行うことができる仕組みの構築」に言及した。

 首相は「カードにす る制度としてつくったら便利ではないか。年金など自分の情報を確かめやすい」と述べている。ICカード化した健康保険証を国民1人ひとりが持つ「健康IT カード」を念頭においた発言とみられる。厚生労働省は2012年度に導入する計画で、その際は1人に1つの固有の番号をつける。

 この番 号で各人の年金や医療の負担・給付の状況を管理するとともに関連情報をカードに入力すれば、保険料納付や受診の履歴がパソコンなどで一覧できるようにな る。将来の年金受給額も試算できる。いわゆる社会保障サービスの可視化だ。転職したときなどに年金記録が宙に浮くような事態も解消しやすくなろう。

 将来は番号の「使い道」をどこまで広げるかが課題になる。例えば住民票の請求や旅券申請など公的サービスを受けるときに番号を示せば本人確認しやすくなる。金融取引の際に提示を義務付けるなど納税者番号の機能を持たせることも可能だ。

 現在、国民を対象に政府がふっている番号制度には基礎年金番号と住民票コードがある。どちらかの機能を充実させて社会保障番号として使うことは検討課題だが、新たな番号制度の創設を含め、低コストで効率的な方法を研究すべきである。

 プライバシーをしっかりと守りつつ、「払ったお金の記録はきちんと把握してもらいたい」という国民の当然の思いに応える制度が必要だ。

社説2 懸案を処理して審判仰げ(6/22)

 国会の会期が7月5日まで12日間延長されるこ とになった。これに伴い7月22日に予定されていた参院選の投票日は同29日にずれ込む。参院選のある年の会期延長は異例だが、安倍晋三首相は国家公務員 法改正案などの成立を期すために勝負に出た。必要な法案を処理したうえで、与党はその実績と意義を、野党はそれぞれの政策を訴え、参院選で審判を仰ぐこと が重要だ。

 参院自民党などの慎重論を押し切り、首相が今国会成立にこだわる国家公務員法改正案は、官民人材交流センター(新・人材バン ク)の創設などの天下り規制が柱になっている。各省による天下りあっせんを禁じ、内閣府に設けるセンターが一元的に再就職を支援する形に改める。首相は 「公務員のリストラを促すためには、こうした透明なシステムが必要」と強調している。

 緑資源機構などの相次ぐ官製談合事件では、天下り の弊害が改めて浮き彫りになった。天下り規制は急務である。センターの具体案が示されていないため、国会審議はいまひとつ深まらない。官房長官の下に設け る有識者会議で制度設計をすることになっており、法成立後、速やかに検討作業を始めるよう求めたい。

 延長国会のもう1つの焦点は、社会保険庁改革法案と年金時効撤廃特例法案を巡る与野党攻防だ。民主党が追及してきた年金の記録漏れ問題では、社保庁のずさんな記録管理の体質が露呈した。

  社保庁改革法案は保険料徴収などで不祥事が相次いだ社保庁を廃止・解体して、2010年1月に新たに「日本年金機構」を発足させるという内容だ。機構は独 立行政法人に似た公法人だが、より民間に近い組織になる。信頼が地に落ちた現在の社保庁を残すわけにいかないのは明らかだ。今国会で成立させて、社保庁解 体の道筋をつける必要がある。

 年金への不安感を鎮めるには、支給漏れが判明した人に5年の時効を適用しない特例法の制定は不可欠だろ う。政治資金規正法改正案などの他の重要法案とともに、着実に成立させなければならない。異例の会期延長を生かして、今国会でまだ2回しか実施されていな い党首討論も、ぜひ開催してほしい。

【日経・春秋】(6/22)

 「陰が極まり陽に変じる日」が冬至なら、夏至は「陽が極まり陰に変じる日」だ。柚湯(ゆずゆ)に入ったりカボチャや小豆(あずき)粥(がゆ)を食べたりする冬至と違って、これといった夏至の習わしがないのは、縁起の良い一陽来復とは対極にある日だからか。

▼ その夏至の今日、国会は12日間の会期延長を決める。与党からもあがった強い反対の声を抑え込み、選挙日程が1週間ずれ込むので「大変ご苦労をかけるが」 と頭を下げつつ押し通した強行策を議決・承認する日が、たまたま「陽が極まり陰に変じる日」に重なったのは安倍晋三首相には気掛かりかもしれない。

▼ 燮――あまり見ないこの難しい字は「しょう」と読み、意味は「和らげる」。燮理と書けば「和らげ治める」で、古代中国では物事を和らげるのが善い政治とさ れたのか宰相の別称に使われ、慣用句の「陰陽を燮理す」は、天地万物を生成する陰と陽の性質を和らげ程よく整える優れた政治のたとえに用いられる。

▼ 会期を延ばすのは、天下りあっせんを禁止し官製談合をなくすとの効能書きを付けた国家公務員法改正案や、社会保険庁を解体・出直しさせる改革法案を成立さ せたいからだ。緑資源機構事件や年金記録漏れで噴出した国民の不信を、それで和らげ「陰陽を燮理」できるか。参院選に向け安倍政権の正念場は続く。


※来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。それにつけても思い出すのは、あの日本の9・11、2005年9 月11日の小泉の郵政選挙でした。ほとんど小泉の詐欺的と言ってもいい「争点は郵政改革だけです、改革をやるんですかやらないんですか」のワンフレーズ、 やらなければ日本がまるで沈没でもするような迫り方でした。

 結果、われわれの目の前に現れたのは自公独裁体制・強行採決オンパレードの国会でした。

 いま振り返ってみると、特に朝日系列に顕著だった、小泉政権へのすり寄り、地方紙以外の中央主要マスコミの翼賛体制はひどいものでした。

 はたして、これから参院選までのあいだ、どのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存しようと考えました。以下の社説とコラムです。

地方紙:沖縄タイムス(社説コラム)、琉球新報(社説コラム)、東京新聞(社説コラム)、河北新報(社説、コラム)、京都新聞(社説コラム

主要紙:朝日(社説コラム)、毎日(社説コラム)、読売(社説、コラム)、産経(社説、コラム)、日経(社説、コラム

OLYMPUS Voice-Trek V-61 CE OLYMPUS Voice-Trek V-61

販売元:オリンパス
発売日:2007/03/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

現在、雑談日記だけでなく、いくつかのブログが攻撃されているようです。バナーが全然動かなくなってます。

追記:最初の表題「安倍にはよほど具合が悪いらしい、現在、雑談日記にあるバナーが強烈な攻撃をされているようだ。全然動かなくなってしまった。」 だったのを変更しました。バナーが攻撃されているようですが、雑談日記作成と言うことだけではなくてある特定のサイトのバナーが動かなくなっているようで す。

 ここ2、3日動きが悪かったのだが、特に、この『投票日横暴繰り延べに一矢、「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナー(笑)』をアップしてから全然動かなくなってしまった。

投票日横暴繰り延べに一矢、「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナー(笑) 投票日横暴繰り延べに一矢、「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナー(笑)

 アニメGIFの仕様そのものはおおやけのものであるので、どのような攻撃か想像もつかない。

 雑談日記作成のバナーはかなり広範囲に使われていて、他のサイトのものはISPがNifty以外のものはもちろんのこと、雑談日記と同じココログでも他のサイトのは切れよく動いているのを確認しています。直リンクで、ココログであっても動いているのを確認している。

 逆に、違うISPでもZAKIさんの野生化の時代のところでは同じく全然動かなくなってしまっている。

 この調子だと、現在は雑談日記にあるバナーが主に攻撃の対象であるけれど、その内雑談日記作成バナーは他のISPにあるものも含めてすべて動かなくなってしまうかも知れない。

 一応、そうなる前にご報告だけしておきます。

※ん、このエントリーをアップしたら他のバナー(『投票日横暴繰り延べに一矢、「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナー(笑)』以外の)は動き出しましたね。夕方から7時間近く動かなかったのだが、。

※追記(2007-06-23 06:16):子路(komichi)さんのところも動いてないですね。雑談日記作成、とりあえずガスパーチョ同志作成すべて止まってます。どうもいくつかの特定のサイトにこの現象があるようです。アニメGIFは有効なわれわれからのイメージスポットCMと考えていたのですが、こんな攻撃があるとは予想もしてなかった。(汗)

関連投稿
投票日横暴繰り延べに一矢、敬愛する美爾依さんに贈るドンキホーテSOBA渾身の力作「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナー(笑)

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2007年6月22日 (金)

6月22日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月22日朝刊)

[骨太方針07]先送り項目が多過ぎる

 「美しい国へのシナリオ」を副題に閣議決定した安倍内閣初の「骨太の方針2007」は、全体として小粒の政策を総花的に並べただけという印象がぬぐえない。

 骨太の方針は、安倍政権が来年度の予算編成にどう臨むか。その基本姿勢を国民に示すものといっていい。

 歳出・歳入の一体改革を策定し、二〇一一年度に政策経費を借金に頼らず税収などで賄う「基礎的財政収支」を黒字化させるという目標を掲げた小泉前政権から継続する税財政改革は、どうなっているのか。

 その進捗状況や歳入、歳出における基本姿勢はどうなのか。そのために、どの政策を優先させるのか。具体策が求められていたはずである。

 だが、肝心の部分について方針は「国、地方を通じ歳出全般にわたり最大限の削減を行う」という文言をわずかに記しただけだ。

 そこからは、安倍晋三首相の熱意を読み取ることはできない。

 歳出増を要請する声で、民間議員が求めた「公共投資3%減」など具体的な削減幅を明記できなかったというが、抵抗を押し返せなかったのは首相の指導力に問題があるからではないか。

 年金問題も同じだ。方針は、領収書などがない場合に年金給付の是非を審査する第三者委員会の判断を踏まえて「加入者・受給者全員が、本来受け取れるはずの年金を全額間違いなく受け取ることができる」と明記している。

 そのための相談態勢強化や年金記録管理システムの構築も掲げた。

 だが、記入漏れの数は膨大で、首相が「完全に支払う」と述べても解決の糸口を見いだすことが難しいのは明らかではないか。

 だからこそ解決までの工程表(ロードマップ)が必要だったのであり、なぜそれを作らなかったのか、その理由を首相は説明する責任がある。

 そのほかにも道州制や地方企業の再生を支援する「地域力再生機構」「ふるさと納税」の検討、経済連携協定(EPA)の推進、農地改革、行財政システム改革から地球温暖化対策、教育再生などきめ細かく並べている。だが、実効性にはやはり疑問が残る。

 基本方針を首相がこだわる「美しい国」に絡めたことも、国民の理解からは程遠い。国民が求めているのは、政策の実効性なのであり首相の政治理念との整合性ではないからだ。

 後の世代に負担は残さないとしながら、消費税改革を含む項目の多くを秋以降に先送りしたことしかり。実効性がなければ「骨太の方針」は絵に描いた餅になる。

[体験型観光]持続発展できる仕組みを

 体験型観光に携わる地域や企業など県内の五十八団体が今月十三日、県体験型観光推進協議会を設立した。受け入れ側による自主・横断的な資質向上への取り組みとして期待したい。

 昨年の入域観光客は五百六十四万人と過去最高を更新した。仲井真弘多知事は、向こう十年間で一千万人誘致を政策として掲げている。

 ただ、観光客一人当たりの消費額は頭打ち状態で推移し、外国を含む他地域との激しい値引き合戦によりホテルなどは消耗戦を強いられている。

 付加価値の高い体験滞在型観光は地域経済への波及やリピーター効果が高い。より成熟した観光の形態であり、沖縄観光が目指すべき姿といえる。

 二〇〇七年の修学旅行は、六年ぶりに減少する見通しとなった。盛り返すには、魅力的な体験学習のプログラムを提供することが欠かせない。

 幸い、独自の自然や文化・歴史、農漁業がある沖縄は、体験型観光にうってつけの素材に恵まれている。

 東村などはエコツーリズムで先駆的な取り組みをし、根付いてきた。しかし農業体験のグリーンツーリズムや、健康保養をうたうウエルネスなどはいまひとつ形が見えてこない。

 観光客に三線や民芸品づくり、農漁業を実際に体験をしてもらうには、まずそれを教えることのできる地域の人材が必要だ。さらに、その知恵と経験をうまくプログラムに結びつけるコーディネーターの養成も求められる。

 何よりも、地元にとっては客をもてなす負担ばかりなく、それに見合う利益をもたらすような仕組みでなければ持続は難しい。

 南城市は、体験滞在型観光の拠点として三施設を整備し、食・歴史・海と多彩なプログラムを準備している。今後の取り組みに注目したい。

 県推進協議会は、まず情報交換し課題を洗い出すことからスタートする。いずれは体験メニューの情報センター機能や、報酬・業界内の約束事などのガイドラインを示す、指導的な役割を担う組織に育ててほしい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月22日 朝刊 1面)

 「ハーリー鉦が鳴ると梅雨が明ける」といわれる。ハーリー鉦からは少し遅れたが、二十一日沖縄は梅雨明けした。カーチーベー(夏至南風)の季節の到来だ。

 今でもお年寄りたちは梅雨のことをスーマンボースー(小満芒種)と呼ぶ。梅雨を表す言葉としては、なぜかこちらの方がしっくりくる。今年のように激しく降り、降水量が多いとなおさら。それだけにカーチーベーの響きが心地よい。

 消防庁が運用するおもしろいホームページがある。現在まで語り継がれる自然災害や防災に関する言い伝えを集めた「災害伝承情報データベース」。災害に対する教訓として二千近いデータを公開している。

 「東の空に虹が立つと台風が近い」など広く伝わるものから、「多良岳に雲がかかれば雨」(長崎県諫早市)といった地域版までさまざま。「デイゴの花が多く咲くと台風が多い」など県内の事例も紹介されている。

 岩手県に残る「津波てんでんこ」は、地震があったら「てんでんばらばら」に逃げようと教える。薄情にも思えるこの言い伝えは、明治三陸地震津波で親が子を、子が親を助けようと共倒れになった体験から生まれたのだという。

 学術的な裏付けのないものもあるが、過去の災害を後世に伝えたいという先人たちの願いが読み取れる。継承が難しい時代である。地域で語り継がれてきた事実の重みと、自然とともに生きた人々の言葉を大切にしたい。(森田美奈子)


【琉球新報・社説】

国会の会期延長 政争の具とは情けない

 国会の会期延長が決まった。12日間の延長は、安倍晋三首相が執念を見せる国家公務員法改正案の今国会成立を目指すためという。重要案件の論議の 時間が欲しいなら、文句も少なかろう。だが、多数与党の強行採決が横行する今国会だ。会期延長までも「政争の具」になるようでは、あまりに情けない。
 会期延長は、自民、公明の与党の国対委員長会議、党首会談で決まった。野党は反対しているが、多数与党の力で22日にも衆院で議決される見込みだ。
 与党は、会期延長で天下り規制のための国家公務員法改正案の来月4日成立を図るほか、社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案の成立を今月29日にも目指すという。
 国民が注目する3法案である。会期延長で改正案の中身を十分に精査し、与野党で白熱した論議を行い、国民の理解と了解を得られるような国会審議が展開されるのであれば大いに歓迎したい。
 だが、今国会での論議を見る限りではイラク特措法、教育改革3法、米軍再編法など重要事案での与党の「強行採決」が目立つ。
 数で押し切る「与党の横暴」が印象に残る中で、12日間の会期延長を行ったところで「結果」は見えている。失った国民の信頼を取り戻すのは容易ではない。延長を決めた安倍首相をはじめ与党は、そのことを肝に銘じるべきだ。
  会期延長で、来月22日に予定されていた参院選挙の投票日が29日に延びる。那覇市などは22日を前提に、すでに投票のための入場券を印刷済みだ。会期延 長で、24万枚を刷り直す。延長国会の審議の中身しだいでは、無駄な出費になりかねない。市民生活への影響も少なくないだろう。
 その参院選の勝敗は、年金問題や公務員制度改革の「成果」が左右するというのが与野党の一致した見方だ。与党が国会の会期延長を強行するのも、参院選で国民にアピールする「成果」づくりのためだ。だとするならば与野党ともに覚悟が必要だ。
 延長国会で論議される公務員制度改革は、官製談合の温床とされる天下り防止の対策が焦点で、公務員の「新人材バンク」が対策の目玉だ。だが、談合の抑制効果には否定的な見方が強い。
 年金問題は、社会保険庁の記録不備に始まり、社保庁のミスで受け取れなかった受給者の救済問題、さらにはグリーンピアに代表される官による年金基金の膨大な無駄遣いなど、枚挙にいとまがない。
 いずれも問題の核心となる原因究明、再発防止、確実な救済策の構築が求められている。数に頼らず、国民の疑問に丁寧に答え、ニーズに応える徹底論議こそが、国会に国民の信頼を取り戻すすべだ。

(6/22 9:54)

教育3法成立 見切り発車は現場混乱に

 昨年12月の教育基本法の60年ぶりの改正を受け20日、教育改革関連3法が参院本会議で可決、成立した。教員免許更新制の導入や教育委員会への国の関与の強化など、全国約110万人の教員、学校現場に大きな影響を与える。
 3法は、学校教育の目標などを定めた学校教育法、国と地方のかかわりを規定した地方教育行政法、新たに免許更新を盛り込んだ教員免許法だ。
  安倍晋三首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」の一環として「教育再生」を最重要課題に掲げている。教育は「100年の大計」だ。だが国会審議では、 与野党双方が求めた教育関連予算や教職員定数の拡充、免許更新制の実効性への疑念など、論議が不十分なまま採決となった。「現場無視だ」「参院選の目玉づ くり」「国会の会期日程をにらんでの政治思惑優先の採決」との批判も当然だ。
 改正3法の中身をみると、学校教育法では義務教育の目標として「我 が国と郷土を愛する態度」や公共の精神、規範意識の養成を明記している。「歴史について正しい理解に導き」との表現もある。正しい歴史は国が判断するのだ ろうか。沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定での日本軍の関与が修正・削除されたことに対し、県民から「沖縄戦の実相をゆがめるもの」として、撤回要求が 出されている。国の見方や価値判断の押し付けには危うさが伴う。
 その上、地方教育行政法では、教育委員会への文部科学相の是正指示、要求権を盛り込み、改正教育基本法では自治体の教育基本計画作りで政府の基本計画を参考にするよう求めている。教育への政府の影響力をかなり強化している。
 国の関与が強まれば、教育は良くなるものでもないだろう。むしろ地域の特性や学校の創意工夫が失われないか懸念する。
 教育改革は国民に「愛国心」を強制することではない。愛される国造り、そのための教育者と人材育成が基本である。十分な論議も尽くさず、見切り発車での教育3法改正は将来に禍根を残しかねない。

(6/22 9:53)

【琉球新報・金口木舌】

 「記憶」を辞書で引くと「物事を忘れずに覚えている、覚えておくこと」とある
▼本紙が慰霊の日を前に実施した県内四十一市町村アンケート調査で、半数以上の自治体が慰霊祭以外に独自の平和事業を行っていると回答した。だが、中には予算ゼロという自治体もあった
▼沖縄戦終結から六十二年の月日が流れた。自治体担当者からは、戦争体験の語り部の減少や財政難などの、平和行政を取り巻く厳しい状況を指摘する声も上がる
▼慰霊の日の前夜、沖縄市中央の小さな飲食店で、沖縄戦と平和について考える集まりがあった。出席者は沖縄戦を実際には体験していない、ほとんどが戦後生まれの人たちだった。彼らは祖父や父母らから伝え聞いた話を語り合った
▼小さな集まりだったかもしれない。だが、「物事を忘れずに覚えておく」には大事な試みだ。こうした試みは人が集まる場所さえあれば、家族や友人同士など、誰とでもできることだ
▼沖縄戦体験者自身が戦争を語ることが不可能になる日はいずれ訪れる。戦争体験の継承は、行政主導の事業に頼るだけのものでもない。県民一人一人が祖父母や父母らから聞いた自らの沖縄戦の記憶を語ること、それも記憶の継承となるはずだ。

(6/27 9:31)


【東京新聞・社説】2007年6月22日

温泉施設爆発 都会の死角に安全策を

 東京都心の繁華街近くで温泉施設が爆発で吹き飛んだ。都会で増えている癒やしの場所だが、天然ガスが充満、引火したらしい。原因究明とともに、安全管理基準の整備を急がなくてはならない。

 東京都や千葉県の地下は天然ガスを埋蔵している「南関東ガス田」だ。大半はメタンガスで、高圧のために水や湯に溶けた状態だが、地上に噴き出すと燃えることもある。

  二〇〇五年二月には東京都北区の温泉掘削現場で天然ガスを含んだ水に引火し、炎が十メートル以上も上がった。今回の現場となった渋谷区松濤(しょうとう) は都内屈指の高級住宅街として知られるが、二十三区内はどこでも深く掘っていけば、温泉水とともに天然ガスが噴き出す可能性がある。

 北 区のときは人的被害はなかったが、渋谷の温泉施設では女性従業員三人が死亡し、近くを歩いていた男性も巻き込まれて重体という惨事になった。爆発したの は、温泉利用棟とは別の、更衣室兼休憩室の従業員用建物だった。地下室にガスが充満して爆発したとみられるが、もし一体化した施設だったら、もっと悲惨な 事故になっていただろう。

 天然ガスもわいてくる温泉施設であれば、設備が整っていたかどうかが問題だ。ガスを湯から分離する装置が必要 となる。山間部の温泉なら開放的だからガスが室内にたまる可能性は低いが、都市部の施設だと屋内や地下室に装置が設けられるケースが多く、湯から分離した ガスを外部に排出する機器もいる。

 それでも屋内にガスがたまる危険性がある。ガス検知器も不可欠だ。これらが設置、機能して初めて安全 性が確保される。検知器がなく、換気扇が機能しなかった疑いが出ている。運営会社や施設の管理保守会社は天然ガスの危険性を認識していたかどうか疑いがも たれている。警視庁には徹底した原因究明を望む。

 ボーリング技術が進み、深くまで掘削できるようになったことで、都市部では温泉施設は増えている。都内の源泉数は百四十八カ所にのぼるという。安全確保をないがしろにしたままでは、営業がおぼつかなくなるだろう。

 北区での火災の教訓から、都は掘削時については指導要綱をつくり、ガス対策を求めている。しかし、営業施設をチェックする具体的な仕組みはない。安全管理上の盲点であり、行政の怠慢ともいえよう。

 自治体は温泉施設の緊急点検に乗り出したが、速やかに安全管理対策に取りかかるべきだ。危険が野放しにされたままでは、事故が繰り返されることになってしまう。

高速道路料金 大幅な引き下げを急げ

 関越自動車道と中央自動車道が二十三日直結する。両道を結ぶ首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が完成したためだ。課題は割高な通行料金。政府は全国の高速料金の大幅引き下げを急ぐべきだ。

 圏央道は都心から四十-六十キロ圏を走る環状道路。計画約三百キロのうち今回は東京・あきる野インターチェンジ(IC)と八王子ジャンクション(JCT)間約九・六キロが開通する。数年後には東名、東北、常磐、東関東自動車道などと結ばれる予定である。

 問題は料金だ。短い区間でも六百円以上かかるため、地元は「待ち望んだ開通だが、これでは市民が利用できない」と強く反発した。このため国土交通省は急きょ夜間・早朝の割引を実施することを決めた。

 今回に限らず、高速道路料金への不満は全国的なものだ。内閣府が昨年七月に行った「道路に関する世論調査」では高速道路の通行料金は「高い」とし、管理・サービス水準を下げたり、新たな財源措置を検討して今より低い料金にすべきだと答えた人が51・8%に達した。

 海外との比較でも日本の高速料金は一キロメートル当たり二四・六円と高い。米国の原則無料は別として、フランスの約一一・五円、イタリア約七・五円と比べて突出している。また日本の高速道路の利用割合は低く、結果的に二酸化炭素の排出量も多い-と国交省も指摘している。

 一方、一昨年十月に発足した高速道路会社六社の業績は好調だ。サービスエリアなど関連事業の好調もあって今年三月期連結決算は当初予想を上回る純利益を計上した。料金下げなどの利益還元が期待されたが、各社は内部留保にあてるという。

 日本は建設費など借入金を料金収入で返済する償還主義をとっているため、高速料金は割高になる。

 国交省側も料金には「問題意識は持っている」という。その対策として主要道での休日・夜間帯の割引を行う「社会実験」を行ってきた。同省は実験をさらに拡大する方向だ。また中日本高速道路(本社・名古屋市)などは企画割引を実施中だ。

 それも結構だが一時的でなく根本的な値下げを考える必要がある。昨年末の道路特定財源見直しの際、政府・与党は二〇〇八年度からの料金引き下げで新たな措置を講ずることで一致した。それならば早く実施すべきだ。

 また社会実験や割引はノンストップ料金収受システム(ETC)利用者に限定されている。高速道路でのETC利用率は現在約七割だが、全体の装備率はまだ低い。幅広い値下げになるように工夫してほしい。

【東京新聞・筆洗】2007年6月22日

 <でんきを消して、スローな夜を>と呼びかける 『100万人のキャンドルナイト』が今年も、夏至の二十二日から三日間行われる。夜八時から十時までの二時間の消灯で、ゆるやかにつながるくらやみのウ エーブを世界大に広げようとの試み▼呼び掛け人代表の、マエキタミヤコさんは「日常の中でごく自然に電気を消して、キャンドルの光のそばで過ごす時間が少 しずつ増え、暮らしそのものが変わっていってほしい」。そんな想(おも)いを伝える文化活動だという ▼参院選目前の与野党攻防で会期を延長、強行採決を乱発する国会は、とてもスローな夜どころではない。消えた年金問題に火が付き、重要法案を次々成立させ る駆け足日程で、あとからボディーブローのように効いてくるのは、おそらく改正教育三法だ▼“戦後レジームからの脱却”をとなえる安倍政権。教員免許更新 制や地方分権に逆行する学校管理強化で国家を前面に立てる動きは、戦前回帰を思わせる。従軍慰安婦問題で米下院が日本政府批判を強める動きを侮ってはなら ない▼歴史学者の原武史さんが、自身の小学生時代を振り返る『滝山コミューン一九七四』(講談社)は、戦後社会の理想と現実を鋭く問う好著▼東京西郊の団 地族が“みんな平等”のジレンマに傷つきながらも、児童や女性が学校現場に直接参加して、熱い連帯の“公界(くがい)”を実現した。少なくともそこに不登 校問題はなかった。原さんとは同世代のマエキタさんらが呼びかけるキャンドルナイトは、ネットを現代の公界にしようとの試みにも見える。


【河北新報・社説】

福島県汚職初公判/「わいろ性」徹底した議論を

 5期18年にわたって福島県政を担った前知事佐藤栄佐久被告(67)の裁判が21日、東京地裁で始まった。
 県発注のダム工事をめぐり、弟の祐二被告(64)とともに収賄罪に問われた栄佐久被告は初公判で「まったく身に覚えのない事実で起訴された」と全面否認、無罪を訴えた。祐二被告も同様に否認し、検察側との対決姿勢を鮮明にした。

 2人が受注業者の選定にどうかかわったのか、相互の連絡はあったのかどうか、さらに実際に高値の土地取引だったのかどうかなどが裁判の争点になりそうだ。
  起訴事実では、栄佐久被告らは2000年の木戸ダム(福島県楢葉町)の入札で、ゼネコンの前田建設工業(東京都)などが落札できるよう便宜を図った。その 謝礼として2002年、郡山市の土地をダム工事の下請けに入った水谷建設(三重県)に高値で買い取らせるという形で、多額のわいろを受け取ったとされる。

 取引された土地は栄佐久被告らの実家の会社とも言える「郡山三東スーツ」の社有地約1万1000平方メートルで、価格は約9億7000万円だった。
 公共工事に絡む汚職事件では現金でわいろを受け取ることが多い。土地売買によるわいろの授受は異例のケースだろうが、実際に金銭が移動しており、わいろと認定されても不思議はない。

 検察側はわいろの額を約1億7000万円と判断した。土地の時価はどう見積もっても8億円を超えず、その差がわいろに当たるとの考えだ。弁護側は通常の商取引であり、わいろの授受ではないと主張している。
 土地はその後、約8億円で事件とは関係のない企業に転売されたことが分かっている。弁護側主張を支える事実になるのだろうが、仮に02年に時価に近い価格で売買されたにしても、ダム工事にかかわった業者が買ったということだけで十分に疑念を抱かれる行為だ。

 価格の妥当性はもちろん、工事を請け負った業者が買う理由がどこにあったのかは、これからの公判で十分に解明されなければならない。
 受注の際の栄佐久被告の関与も重要なポイントになる。検察側は栄佐久被告が「前田建設が一生懸命営業しているようだな。考えてみたら」などと当時の県土木部長に言ったことを指摘したが、弁護側はそんな事実はなかったと反論した。

 栄佐久被告の関与の有無は事件の成立に直結する。県政全般に絶大な権限を持つ知事という立場を考えれば、業者名を挙げただけでもかなりの影響を及ぼすのではないか。
 被告弁護側は初公判で、検察の捜査を批判した。かなり厳しい取り調べが行われたことを訴え、罪を認めたとされる2人の供述調書は信用できないと指摘している。
 汚職事件はそもそも物証に乏しいことが多く、供述内容が重要になってくる。それだけに取り調べ状況を確認しながら、調書の信用性などをしっかりと検証しなければならない。
2007年06月22日金曜日

【河北新報・河北春秋】

 きのう自民、公明の党首会談で国会の12日間延長が決まった。ここ20年間で参院選前の通常国会の会期が延長されたのは1989年、98年と2回 ある。妙な符合でまたもや9年ぶり。「九」は「苦」にも通じる数字だ▼延長に伴い参院選の投票日は当初予定より1週間繰り延べされ7月29日となった。た だ、選挙事務を担う自治体には「22日投票」の線で既に走りだしていたところもあり、苦しい対応を迫られている

 ▼ 宮城県は日付入り選挙啓発ポスター約1万3000枚を印刷済み。「シールを張り訂正する。刷り直しより費用がかかるかも」と担当者。八戸市は広報誌約9万 部を配布。訂正のチラシを配り直す予定だ▼苦虫をかみつぶしているのは群馬県選管。経費節減を狙い同日選となるよう知事選を22日に設定した。が、あてが 外れ経費負担が見込みより約3億円も増えるという

 ▼「突然やってくる解散総選挙と事務的に変わりはない」と言うのは、投開票所172カ 所の確保が必要な仙台市選管。だが、夏休み本番でスポーツや地域の行事が入っている施設も。言葉の平静さとは裏腹に主催者との調整に苦戦を強いられそう▼ ちなみに過去2回の会期延長後の参院選はいずれも自民党が大敗。宇野、橋本両内閣が総辞職した。さて、今回は。

2007年06月22日金曜日


【京都新聞・社説】

パレスチナ分裂  独立国家の悲願どこへ

 パレスチナ自治区が二つに割れ、分裂が固定化しかねない情勢に陥っている。
 自治政府内で穏健派ファタハと、強硬派ハマスが衝突。ファタハはヨルダン川西岸、ハマスはガザ地区を支配地域としてにらみ合い、権力の並立状態が出現した。
 治安部隊の権限をめぐる両派の確執から武力衝突が起こり、ハマス勢力がガザ地区を制圧したのが直接の原因だ。
 ファタハを率いるアッバス議長は、ハマスのハニヤ首相を一方的に解任。独立系のファイヤド氏を新首相とする緊急内閣を発足させた。
 両派を中心に、ことし三月に発足したばかりの挙国一致内閣は、もろくも崩壊してしまった。
 悲願の「西岸地区とガザ地区を基盤にした独立国家」を、一丸になって目指すはずが、これではパレスチナは分断され中東和平のプロセスは方向を見失ってしまう。
 独立国家という民族の悲願をあきらめてよいのか。流血や憎悪を乗り越え、両派はもう一度歩み寄るべきだ。
 周辺のエジプトやヨルダンなど穏健派諸国には仲介の動きも見える。両派を加え、早急な和平協議開催を望みたい。必要なら、周辺各国の国際部隊派遣も考えねばならないだろう。
 ハマスは、米国がテログループとみなすイスラム原理主義組織だ。ファタハと違いイスラエル承認を拒否してきた。今回、ガザ地区に勢力を集中させた結果、西岸地域で影響力を喪失した。
 事態の変化に、欧州連合(EU)や米国はファタハ新内閣の支持を発表、ハマス単独内閣の発足(昨年三月)以来停止していた援助の再開を決めた。イスラエルも同調する姿勢を示している。
 アッバス議長は、こうした動きを歓迎しながらハマスとの交流を一切、打ち切ると宣言した。
 交渉断絶による分割統治の固定化は、西岸地区に比べて経済格差が大きいガザ地区住民百五十万人の生活をさらに苦しめることになろう。
 イスラエルの建国以来、苦難を耐え忍んできたパレスチナ民衆を見捨ててはなるまい。ハマスと交流の窓口は常に開けておくべきだ。
 ハマスとしても、イランから支援があるとはいえ、現状では経済封鎖で締めつけられる状態は変わらない。じり貧を避けるためにも、銃を置いてファタハと向き合う方が得策ではないか。
 ガザ地区ではハマスの攻勢を警戒して国境周辺にイスラエル軍が部隊を集結させ、小競り合いから二十日にはガザ北部を空爆した。
 パレスチナで、いま最もやってはならないのがイスラエルの介入だ。ファタハとハマス両派を説得し、イスラエルに自重を促す。日本を含めて、国際社会の圧力を一層強めたい。

[京都新聞 2007年06月22日掲載]

会期12日間延長  国会は官邸の下請けか

 あす二十三日までだった国会の会期は、十二日間延長され、七月五日までとなる。
 これにより来月二十二日予定の参院選は一週間先送りされ、二十九日投開票(十二日公示)となる。
 参院選前の会期延長は異例だ。それも安倍晋三首相が天下り規制の強化を目指す国家公務員法改正案の成立に強くこだわったためである。
 年金記録不備問題や松岡利勝農相の自殺をきっかけに、安倍内閣の支持率は急落した。この状態での参院選入りを回避するために、重要法案を仕上げ、その実績をアピールしたかったのであろう。
 参院自民党や公明党の反対を押しのけて、局面の転換を図ろうとしたところに、官邸の「あせり」が見て取れる。
 もちろん会期延長は、すべて問題視されるわけではない。重要法案の審議を尽くすうえで、時間が足りなければ、当然、延長の選択肢もあり得よう。
 問題は、そうした前提で会期延長されるのかどうかだ。国会は最終盤にきて、重要法案はだんご状態にある。二週間足らずの延長幅で、どこまで審議を深められるか。首をかしげざるを得ない。
 重要法案には問題が多い。首相肝いりの国家公務員法改正案にしても、これで本当にキャリア官僚の省庁による「押しつけ的な天下り」は根絶できるのか。それどころか「天下り容認法」になりはしないか。疑念は深まるばかりだ。
 とりわけ「宙に浮いた年金」「消えた年金」問題は深刻だ。社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案で、国民の不安、不信は解消できそうにない。
 政府が新たにつくる「第三者委員会」が救済役を担う。国民の権利回復を判断する重要な機関が、役所まかせの政令、省令で済ませていいのか。新たな混乱は生じないか、心配は尽きない。
 政治資金規正法改正案や労働関係三法案なども残っている。延長国会は、せいぜい採決に持ち込むための一定の「時間稼ぎ」が見え見えである。
 こんど改選となる参院議員の任期は七月二十八日である。国会を任期満了まで延長し、与野党は修正協議を含めて、国民が納得する政策論争を進める。そのうえで、参院選に臨み、国民の審判を受ける。そんな選択もあったはずだ。
 それにしても「数の力」による与党の相次ぐ採決強行は目に余る。出した法案は通す。修正もしない。これでは国会は何のためにあるのか。存在意義が問われよう。政治不信を増幅させかねない。
 国会は官邸の下請け機関でなければ、追認機関でもない。延長国会では厳に慎まなければならない。民主党衆院議員に対する懲罰問題も度を越している。
 衆参両院議長は与野党間のアンパイア役だ。国民は見ている。かびくさい先例や規則にしばられることなく、公正、公平な国会運営を基本に、民意を背にした「個性ある指導力」を求めたい。

[京都新聞 2007年06月22日掲載]

【京都新聞・凡語】

富山地裁の冤罪事件

 過ちては改むるにはばかることなかれ-。日本の捜査当局は論語の教えが大 嫌いのようだ。富山地裁であった冤罪(えんざい)事件の再審初公判は、「お上」の体質をあらためて見せつけた▼事件の内容はこうだ。無実の男性が女性暴行 事件の犯人にされ、裁判で服役した。刑を終えた後に真犯人が現れ誤認逮捕と分かった。証拠を十分調べないまま無理やり自白させる捜査を絵に描いた事件だっ た▼再審は、男性の有罪を取り消し名誉を回復するための措置である。ところが、検察側は「被告人は無罪です」の一言だ。弁護側が求めた県警取調官に対する 証人申請は「必要ありません」と述べ裁判長も却下した▼こんな言葉だけで、父親の死にも立ち会えなかった男性の冤罪が晴れたとでも言うのか。ずさんな警察 の捜査をうのみにした検察、裁判所の責任も重いはずである。問題なのは、やってもいない犯罪を男性がなぜ自白したかである▼「誰も信じられなくなった。自 分が犯罪者と思い込み、感情を押し殺した」。男性はそう語った。密室の取調室で何があったのか。検察の一部で取り調べを録画・録音する試行が始まったが、 警察はいまだ導入に消極的だ▼裁判員制度導入を控え、警察や検察、裁判所は男性の次の言葉を何と聞く。「(裁判に)絶望した」。論語には、こんな言葉もあ る。〈過ちを改めざるこれを過ちという〉

[京都新聞 2007年06月22日掲載]


【朝日・社説】2007年06月22日(金曜日)付

教育3法―現場を画一的に縛るな

 文部科学省がこれまで以上に教育現場に口をはさみ、画一的な考え方を押しつけることにならないか。

 そんな疑問が解消されないまま、教育関連3法が成立した。

 安倍首相にとっては、「愛国心」を盛り込んだ半世紀ぶりの教育基本法改正に続く教育改革である。

 文科相が教育委員会に是正要求や指示をすることができる。教員の免許を更新制にする。学校に副校長や主幹教諭を置くことができる。こう並べていくと、今回の法改正が上意下達の強化を狙っていたことが改めてわかる。

 これが本当に教育の再生につながるのか。学力を引き上げ、不登校やいじめを解決することになるとは思えない。

 それどころか、教育委員会や学校、教師が萎縮(いしゅく)し、新たな試みをしなくなるのではないか。それが心配だ。

 法律が成立したとはいえ、どのように運用するのか、あいまいなところが多い。文科省は現場の判断を重んじ、創意工夫の芽を摘まないようにしなければならない。

 教育委員会に対し、文科相が指導などだけでなく、是正要求や指示までできるよう改正されたのは、いじめ自殺と必修科目の履修漏れがきっかけだった。

 しかし、今後、どのようなときに指示などを出すのかははっきりしない。文科相は国会答弁で「私が判断した時」「(どんな状態かは)定義はあらかじめできない」などと答えた。これでは文科省の権限が際限なく広がりかねない。

 文科省には慎重な運用を求めたい。万一、発動する場合には、なぜ、是正要求や指示が必要なのかをきちんと説明しなければならない。

 講習を条件に教員免許を10年ごとの更新制にしたことも、現場への影響が大きい。だが、どんな講習を受け、免許を取り上げられるのはどういう場合なのか。具体的な内容が示されていない。

 これでは教師の不安が増すのも無理はない。優秀な人材が集まらなくなる恐れもある。講習の内容や判定の基準を公開し、透明性を高めてもらいたい。

 学校に副校長や主幹教諭を置くことも、画一的に進めない方がいい。中間管理職が増えて、子どもたちに向き合う教師が減るのでは、なんにもならない。この制度を使うことを教育委員会や学校に無理強いしてはいけない。

 それにしても、安倍首相の教育改革では、不思議なことがある。教育予算については、何ら手だてが講じられていないことだ。

 国会審議でも教育予算の増加について与野党を問わず要求が相次いだが、首相の歯切れは悪かった。骨太の方針に盛り込まれた内容もあいまいだった。教育への公的支出を見ると、日本は先進国の中でも低いレベルにとどまっている。

 これで教育が改革の本丸だと胸を張るのは、なんともちぐはぐだ。

イラク特措法―ブッシュ政権支援法か

 イラクで輸送業務にあたっている航空自衛隊の活動が、さらに2年間延長されることになった。そのためのイラク特別措置法改正が成立した。

 イラクでは宗派間のテロや米軍への攻撃がやまず、犠牲者は増える一方だ。派遣部隊を撤収、縮小する国が相次いでいる。そこに自衛隊をとどめるかどうか。そんな重大な判断だったのに、国会で政府は十分な説明をしたとは言い難い。

 この戦争は間違った情報に基づいて始まった。小泉前首相はそれを支持し、世論の反対を押し切って自衛隊まで派遣した。この出発点の誤りを率直に認めることが大前提のはずだ。なのに、政府・与党はそれをほおかぶりしたまま延長を決めた。極めて遺憾である。

 そのほかにも、ふたつの大きな問題が放置されている。

 第一に、どのタイミングで航空自衛隊をイラクから引き揚げるのか、いわゆる出口戦略がない。第二に、自衛隊が現地でどんな活動をしているのか、ほとんど説明されていないことだ。

 政府が出口戦略を語れないのは当然だろう。そもそも自衛隊の派遣を続けるという結論が先にありきなのだ。日米同盟への配慮を最優先してイラクに自衛隊を出した以上、いつ完全撤収するかも米国の政策次第で判断せざるを得ない。それが本音なのではないか。

 ブッシュ米大統領は昨年の中間選挙で大敗し、いまや支持率が3割を切る苦境にある。来年に迫る大統領選挙では、共和党陣営の劣勢が必至だ。イラク政策への批判がその底流にある。

 イラクで活動する自衛隊は、そうした大統領を支える日本側の「証し」となっている。特措法は名目こそイラク復興支援をうたうが、実態はブッシュ政権支援の側面が大きいのだ。

 航空自衛隊は、どんな物資を運んでいるか。政府側の国会答弁によれば、今春までの9カ月間に運んだ物資のうち、95%は多国籍軍向けだった。人道復興支援より、もっぱら米軍などの軍事作戦を下支えしているのが実態ではないのか。

 しかも、攻撃への危険を避けるため、輸送機の運航を中止するケースが増えているようだ。どれほど危険なのか、詳しく説明すべきだ。

 自衛隊の活動について、政府の秘密主義は明らかに行き過ぎている。国会に実態を報告しないことには、文民統制は機能しようがない。

 都合の悪い情報にふたをするのは、先ごろ共産党が自衛隊の内部文書として追及した情報保全隊の問題にもつながる。

 イラクへの自衛隊派遣に反対する人々の動きを監視したという文書を「政府が公表したものでないのでコメントしない」というのでは、はなから説明する気がないとしか思えない。

 派遣延長を含め、こうした政府のやり方は、日米同盟や自衛隊に対する国民の信頼を高めることにはならない。

【朝日・天声人語】2007年06月27日(水曜日)付

 伝わるところでは、日本で初めてボーナスを出したのは、三菱の創始者岩崎弥太郎だったという。三菱史料館によれば、明治9年、英国の船会社と上海航路の覇を競い、勝って相手を撤退させた。

 弥太郎は喜んだ。「社中各員別(わ)けて勤勉事務を担任し其(そ)の功績を見ること少なからず」。幹部から給仕まで、給料のほぼ1カ月分にあたる報奨金を奮発したそうだ。ボーナスは働きに報いて支給されたものだった。

 「勤勉事務」とは縁遠かった社会保険庁が、全職員にボーナスの自主返納を求めることになった。幹部から末端までを対象とし、退職者にも応分の「寄付」を求めるという。安倍首相や柳沢厚労相も率先して返納する。官邸主導による、政官あげての「総ざんげ」の趣だ。

 「当然だ」と言う人、「まだ甘い」と収まらない人、さまざまだろう。だが、国民の不満をそらす演出を感じる人も、少なくないのではないか。参院選は1カ月の後に迫っている。

 総ざんげの元祖といえば、終戦直後の「一億総ざんげ」である。その正体を、「緊急の場面に直面した支配層の放ったイカの墨」と突いたのは政治学者の丸山真男だった。今度のざんげも選挙前の目くらましではないのか。いぶかる声も聞こえてくる。

 弥太郎は、英国会社との競争の際、経費節減のために自らの報酬を半分にした。社員もならって3分の1を返上したという。目的のある返納なら張り合いもあろう。だがイカの墨となってやがて消えるなら、国民にも職員にも、残るのはむなしさだけである。


【毎日・社説】

社説:国会延長 選挙に有利とはならない

 自民、公明両党は21日、今国会の会期を7月5日まで12日間延長することを決めた。これにより、参院選の投票日は当初想定されていた7月22日 から同29日に1週間ずれ込むことになる。候補者や各地の選挙管理委員会などが「22日投票」を前提に動き始めていた中での異例の延期である。

 なぜ国会延長か。理由はやはり年金支給漏れ問題に行き着く。

  延長を主導したのは公務員制度改革関連法案の成立にこだわった安倍晋三首相だ。年金問題で支持率が急落し、今のままでは選挙は首相が争点にしたかった憲法 改正や教育再生は影を潜め、年金一色になる可能性がある。そんな中、各省庁の天下りあっせんを禁じる公務員制度改革は国民に支持されやすい改革の旗印にな ると考えているのだろう。

 ところが、各種の世論調査を見ても公務員改革への有権者の関心は決して高くない。首相は最近、社会保険庁の歴 代幹部の天下りや同庁の無責任体質に言及し、それを変えるためにも公務員改革が必要だとも語っている。しかし、これも多くの有権者にはこじつけのように聞 こえているはずだ。

 一方、自民党は中央官庁が反発している事情から元々、この法案に熱心ではなかった。それでも延長を受け入れたのは、1週間でも参院選が延びれば年金問題への有権者の怒りが少しは収まると期待しているからではなかろうか。

 7月29日投票となれば夏休みが本格化し、投票率が下がって公明党などの組織票が決め手になるとの思惑もあると野党側は指摘している。だとすれば、これも有権者をばかにした話だ。なりふり構わぬ延長は逆に有権者の怒りを増幅させるのではなかろうか。

 会期を延長し、審議時間を確保して議論を積み重ねるのは無論、悪いことではない。だが、現実には社会保険庁改革法案など今後も与党の強行採決ラッシュが続くと思われる。数の力を頼りに突き進む首相や与党は、参院選を前に焦るばかりで、冷静さを失っているとしか思えない。

 対する野党も強行採決を期待している節がある。与党の「数の横暴」をアピールできるからだ。実際、野党には否決されるのを承知で内閣不信任案を提出するなど抵抗の手段が限られているのは確かだ。ただ、有権者はそんな混乱劇ばかりを望んでいるだろうか。

 年金支給漏れ問題は民主党議員が、こつこつと調査し、しつこいほどに厚生労働省や社会保険庁を追及して、長年にわたる無責任の連鎖を暴いたものだ。貫くべきはそうした姿勢であるはずだ。

 小沢一郎代表は20日、民主党などが提出した河野洋平衆院議長の不信任決議案を採決する衆院本会議を欠席し、地方回りをしていたという。自民党が「与党を国会軽視と批判する資格があるのか」と反発するのも当然だろう。

 せっかく会期を延長するのだ。参院選前に争点や論点をきちんと整理するため、ぜひとも安倍首相と小沢代表ら野党党首との党首討論を実現させるべきである。

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊

社説:イラク派遣延長 いよいよ出口戦略を考えよ

 航空自衛隊の活動を2年間延長する改正イラク復興支援特別措置法が成立した。政府は1年間の活動内容を定めた基本計画を作成し、8月からイラクでの5年目の活動に入る。

 イラク情勢は、多くの民間人や兵士の命が失われ依然として泥沼状態が続いている。派遣隊員は安全を確保しながらの慎重な任務遂行が求められる。

 私たちは活動の延長を認める前提として、審議を通じて活動内容の詳細をできるだけ国民に開示すること、イラク開戦を支持した政府判断の徹底検証--などを求めてきた。

 しかし国会では敵に手の内をさらすとして非公開が前提となり、十分な情報の開示がなされなかった。検証も「大量破壊兵器が開戦当時は存在すると信じるに足る理由があった」という答弁が繰り返され論議は深まらなかった。

 開戦と統治については米、英でも深刻な反省が生まれている。政府は検証委員会などを作り報告をまとめるべきだ。仮にそれが政府の判断ミスを認めることになっても、今後の国家戦略を練る上で貴重な教訓になるはずだ。

 不十分な審議の中でも明確になったこともあった。昨年7月、陸上自衛隊はサマワから撤退した。それ以降の空自の輸送回数は150回でそのうち国連関連の人員・物資輸送が25回だった。

 政府は具体的な人員・物資の内容を明らかにしていないが、国連以外はほぼ米軍を中心とする多国籍軍の輸送であることが透けて見えてきた。活動が当初の人道復興から米軍支援に変化したのだ。

 政府関係者は空自の活動は米国からも非常に感謝されていると話す。日本は北朝鮮の核・ミサイル問題を抱え、安全保障を米国に頼っている。C130輸送機3機での活動は、日米同盟維持の費用対効果の面でも割安だという考え方を口にする国防関係者も多い。

 そうであるならば国会でもきちんとその実態を説明すべきだったし、今後もその趣旨で国民に理解を求めるべきだ。人道復興支援を強調することは正直ではない。

 活動が危険を伴うことも明らかにされた。バグダッド空港では、ミサイル攻撃のおとりにするために火炎弾(フレア)を放ちながら着陸するケースも多いという。久間章生防衛相は「刃の上で仕事をしているようなもの」と表現した。

 同相が危険性に言及した背景には、批判を極力避けようと安全性を強調する官僚に対して、「危険な目にあっている実態を明らかにすべきだ」という自衛隊内の不満に応える意味もあったようだ。

 今後、米軍の兵力は削減されながらも駐留は長期化するのではないかという見通しが出ている。新政権になっても早急な完全撤退は考えにくいかもしれない。

 撤退時期について久間防衛相は「国際社会や米軍増派の効果など全体を見ないと判断できない」と語るにとどまった。主体的な出口戦略を考えないと米軍に追随するしかない状況に追い込まれ、引き際が難しくなる危険性がある。

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:来日した物理学者のアインシュタインが…

 来日した物理学者のアインシュタインが関西に 行く途中の汽車から「ああ、あそこに大層不経済なものがある」といって指さした。そこには電信柱の電灯が白昼ついていたという。そこで誰かに「もったいな い」という日本語を教わったかどうかは知らない▲谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」といえば、日本家屋のうす暗がりの美をたたえた名随筆だ。 このアインシュタインの話が出てくるのは、すでに暗がりの美を忘れ、何もかも電灯でこうこうと照らし出す近年の日本人の無神経と浪費をたしなめるくだりだ ▲「近頃(ちかごろ)のわれわれは電灯に麻痺(まひ)して、照明の過剰から起る不便と云(い)うことに対しては案外無感覚になっている」「待合、料理屋、 旅館、ホテルなどが、一体に電灯を浪費し過ぎる」「何より彼より、一遍(いっぺん)明りを減らしてみたら覿面(てきめん)に諒解(りょうかい)するであろ う」▲これが書かれたのは74年前だから、むろん今日の「照明の過剰」は当時の比ではない。ならばここで一遍明かりを減らし、そこで地球環境問題に思いを めぐらしてはどうかという夏至のキャンペーン「100万人のキャンドルナイト」が今年もきょうから24日にかけて行われる▲市民団体と環境省が連携して4 年前から始まったこのキャンペーンだが、期間中は毎夜各地で多彩な催しがある。とくに24日夜8時から2時間のライトアップ施設の消灯には全国6万施設以 上が加わる見通しだ。主催ホームページは家庭にも無理のないかたちでの消灯を呼びかけている▲この世には夜の暗がりでしか見えないものもあるのだろうか。 そこではふだん光の中に埋もれていた感覚やアイデアと出合えるのか。「陰翳礼讃」は、こう結んでいる。「まあどう云う工合になるか、試しに電灯を消してみ ることだ」

毎日新聞 2007年6月22日 東京朝刊


【読売・社説】

空自派遣延長 イラク再建へ支援継続が必要だ(6月22日付・読売社説)

 イラク再建の道は依然として険しいが、失敗は許されない。日本は、引き続き国際社会の共同支援活動の一翼を担い、責務を果たすべきだ。

 改正イラク復興支援特別措置法が成立し、航空自衛隊の輸送活動の期限が2年間延長された。

 イラクでは今、米英など26か国の部隊計19万人以上が治安維持や人道復興支援に従事している。アジア太平洋地域からも、日本以外に、韓国、豪州、シンガポールなど5か国が参加中だ。

 テロが続発するイラクでは、安全な活動はあり得ない。開戦以来の米兵の死者は3500人を超えた。多くの国が犠牲者を出しながらも、イラク復興と中東の安定のために尽力している。

 空自のC130輸送機3機による輸送の危険性は、かなり限定的とされる。イラク国内の空港の着陸時には、武装勢力の地対空ミサイルなどへの警戒を怠れないが、実際に攻撃された例はない。

 多国籍軍や国連の人員・物資の輸送は3年余で500回以上になる。イラク政府や国連の評価は高い。イラク情勢が最大の課題である米国を支援することで、日米同盟の強化にも寄与している。

 危険を最小限に抑えつつ、日本の人的貢献を最大限アピールする。空自の活動は、日本の国益に合致する現実的な選択肢と言える。

  日本が2003年秋に表明した50億ドルの政府開発援助(ODA)のうち、実施されたのは15億ドルの無償援助だけだ。35億ドルの有償援助は、10件、 21億ドル分の使途が決まったが、着手されていない。治安の悪さに加え、イラク政府の受け入れ態勢が整っていないことが原因だ。

 ODA実施や文民の活動が困難な状況下で、自衛隊の活用は当然のことだ。

 改正イラク特措法の衆院通過時には、空自の撤収に関する「出口戦略」の検討を求める付帯決議が採択された。

 陸上自衛隊は昨年7月、イラク南部サマワから無事、撤収した。多国籍軍から地元への行政権限の移譲や、この地域からの英豪両軍の撤収の時期に合わせるという、入念な出口戦略が奏功した。

 空自についても、他国軍の動向や現地情勢を慎重に見極めつつ、将来の出口戦略を練る必要がある。

 イラクの治安回復には、宗派対立の解消や周辺国の協力が欠かせない。

 日本は3月にイラク各派の有力者を東京に招き、国民融和セミナーを開催した。5月にエジプトで開かれたイラク安定化国際会議では、麻生外相が、イラン、シリアの協力を呼びかけた。こうした地道な外交努力を重ねることも重要だ。
(2007年6月22日1時36分  読売新聞)

被害者裁判参加 冷静、慎重な運用が求められる(6月22日付・読売社説)

 あくまで慎重な運用が求められるだろう。

 刑事裁判への「犯罪被害者参加制度」の新設を柱とする改正刑事訴訟法などが成立した。来年12月までに導入される。

 犯罪被害者本人や遺族は、希望すれば法廷で、被告や証人に質問したり、求刑に関して意見を述べたりできるようになる。殺人や誘拐、死亡交通事故などの重大事件が対象だ。被害者は弁護士を付けられる。日本の刑事裁判の形態を大きく変える制度だ。

 「裁判の蚊帳の外に置かれてきた」と訴えてきた多くの犯罪被害者は、新制度の導入を歓迎している。

 被告は、自らに有利になる証言をすることが多い。これに対し、遺族しか知らない事実を示して、反論することもできる。これが、真実解明に役立つという意見もある。

 一方で「被告の顔を法廷で見ることにより、改めて心が傷つく」として、制度の導入に反対してきた被害者もいる。

 犯罪被害者の声を尊重するのは、当然のことだ。だが、被害者と被告のやりとりが感情的になった場合、冷静な事実認定の障害になる恐れがある。刑事裁判の運用に支障をきたす制度になってしまっては、元も子もない。

 法務省は、「検察官が被害者の質問を事前チェックするので、感情的な質問は防げる」としている。しかし、それだけで十分だろうか。

 検察官は、被害者との意思疎通を密にしなければならない。裁判官には、法廷の秩序を守る訴訟指揮が求められる。

 新制度導入の約半年後には、裁判員制度も始まる。

 被害者の発言が、裁判の素人である裁判員の心情に、どのような影響を与えるかも考えるべき問題だ。検察官が無期懲役を求刑した事件で、被害者が「死刑を」と、意見を述べるケースも出てくるだろう。その際、裁判員の量刑判断に影響を及ぼすこともあり得る。

 裁判所に採用された証拠だけに基づいて、有罪か無罪か、さらに、量刑を決めるのが、刑事裁判の原則だ。裁判官は、裁判員となる人たちに、その原則を周知し、感情に流されない判断をするよう徹底することも必要になる。

 被害者が参加する裁判の量刑が、参加しない裁判より重くなる、といった傾向が出ては、公正さが損なわれる。

 改正刑訴法の付則には、新制度の導入から3年後の見直し規定が明記されている。法務省や最高裁は、運用状況を絶えずチェックし、必要に応じて、制度の抜本的な見直しも行うべきだ。
(2007年6月22日1時35分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月22日付

 各種アンケートの結果を企業が送ってくださる。そのつど興味 深く拝見しているが、長く保管する資料はそう多くない。シチズン時計「夫婦の時間」はいまも手もとにある◆2年前の調査で、全国の夫婦200組に「1週間 で最も心地よい時間」をたずねている。回答の最上位は夫が「土曜の午後9時」、妻が「月曜の午前10時」であったという◆なるほど、私の姿が消える休み明 けが心地よいの、ほほう――と、すねる人はいまい。「そんなものさ」と達観する人、「どこの家も一緒だね」と妙に安心する人、夫の側の感想はそこらあたり だろう◆答える時刻に多少の食い違いはあれ、どこかに「心地よい」と感じる時間があるならば贅沢(ぜいたく)は申すまい。昨年の同じ月を上回ること6%、 4月の離婚件数が急増したという◆離婚後に夫の厚生年金を夫と妻で分け合うことができる年金分割制度の申請が4月から始まった。新制度を待って離婚を切り 出した中高年の妻も多くいたとみられる。「赤い糸夫居ぬ間にそっと切る」という現代川柳があるが、切った糸の断片を見せられる瞬間はなかなか心臓に悪かろ う◆エレベーターやジェットコースターに限らず、結婚生活も日ごろの点検が大切と聞く。「やっぱり、君もあれかね、月曜日かな…」と、家庭内のアンケート でもしてみますか。
(2007年6月22日2時11分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】ヒル氏訪朝 拉致を置き去りにするな

 6カ国協議の米首席代表を務めるヒル国務次官補が、北朝鮮首席代表の金桂寛外務次官らと会談するために訪朝した。核施設封鎖など「初期段階措置」の履行や6カ国協議再開について北朝鮮と直接協議するのが目的だという。楊潔●中国外相の訪朝予定も発表された。

 北朝鮮の核問題は、2月の6カ国協議で寧辺の核関連施設の停止・封印や国際原子力機関(IAEA)査察再開を含む初期段階措置で合意した。にもかかわらず、北朝鮮は米財務当局による金融制裁の解除を要求し、4カ月に及ぶ迷走を重ねてきた。

 ヒル次官補は、米政府がみずから科した制裁を骨抜きにする形で今回の訪朝にこぎつけた。この間、当初は「6カ国協議の枠外で米朝協議はしない」としていた原則は崩れ、「対話と圧力」の重要なテコとなっていた金融制裁も後退してしまった。

 さらに米国が、北朝鮮に対するテロ支援国指定の解除問題に踏み込み始めたことも、日本人の不信感を強めた。拉致問題がからむからである。年初来のヒル次官補のかじ取りに対し、日米同盟国間の温度差を懸念する声が高まっているのは見過ごせない。

  6カ国協議の最終目標は、北朝鮮の保有するすべての核を検証可能で後戻りのできない形で完全廃棄させることだ。米側には、核を放棄して国際社会に復帰した リビア型の解決に期待する志向が強いという。訪朝を通じて完全廃棄への確かな道筋が開けるのなら、それを歓迎しない理由はない。

 だが、初期段階措置はその第一歩にすぎず、その先にはウラン濃縮や既存の核兵器関連物質の完全廃棄と査察検証という困難な作業が待っている。しかも、これまでの北朝鮮には誠意ある姿勢がみられないのが実態だ。

 ヒル次官補は初期段階措置の履行だけでなく、完全廃棄の意思と誠意を北朝鮮から引き出さねばならない。2月合意からいかなる後退も許されないことを銘記すべきだ。その上で、拉致問題の解決についてもきちんと念を押してもらう必要がある。

 核、ミサイル、拉致の包括解決が日本の一貫した方針だ。安倍晋三政権が「拉致解決で進展がない限り、経済支援もしない」と主張してきたのは当然であり、この姿勢を貫くべきだ。

●=簾の广を厂に、兼を虎に

(2007/06/22 05:10)

【主張】会期延長 責任伴う決断を支持する

 安倍晋三首相は公務員制度改革関連法案などの成立を図るため、参院選の日程をずらして国会会期を延長することを決断した。

 首相が天下りの慣行を断ち切るための法案を最重要の課題とする判断を支持したい。参院選に向けて、各党が争点を明確化させることにもつながり、有意義である。

 23日で会期末を迎える今国会の会期は12日間延長され、当初「7月5日公示、22日投票」と想定されていた参院選の日程が1週間遅れる。各候補にとっては、選挙運動や資金面での負担が増えるだろうが、もともと選挙日程が確定していたわけではない。

 会期延長の最大の眼目は、天下り規制強化などを柱とする公務員制度改革法案の成立を図ることにある。

 官による押し付け的な天下りを廃止し、各省OBが契約などをめぐり古巣に口利きするのを禁止するのは、官製談合を断ち切るために不可欠だ。

 関連法案の柱である「官民人材交流センター」(新人材バンク)の創設が、天下り規制の万能薬だとはいえない。しかし、公務員制度の抜本改革に向けた第一歩ととらえ、天下り官僚たちのやりたい放題に一刻も早くブレーキをかけるためにも、その実現を急ぐ必要がある。

 参院選を控えた土壇場での会期延長に野党は反発し、与党内にも異論がある。しかし、やるべき仕事が残っているのに、帰宅時間が来たらほうり出して帰ってしまうようなことは、民間の感覚では考えられない。

 通常国会の会期は150日間で、1回の延長ができるという国会法のルールにも外れていない。

 首相が成立させようとしている法案内容の評価や、会期延長に踏み切ったこと自体の是非についても、参院選で有権者の審判を受ける。与党過半数維持を目指す首相にとって、今回の決断がプラスにつながるかどうか。そのリスクも負ったうえでの会期延長だと考えるべきだろう。

 年金記録紛失問題に政治としてどう対処するかも、残された会期の中で大切なテーマだ。責任の押し付け合いや、加入者の懸念をあおるような議論ではなく、受給漏れや年金制度そのものへの不信を取り除くために、各党は知恵をしぼるべきである。

(2007/06/22 05:09)

【産経抄】

 「失敗学」の提唱者、畑村洋太郎工学院大教授によれば、失敗にも「よい」のと「悪い」のがある。畑村さんが「よい失敗」のひとつに挙げるのが、 1954年に2機の飛行機が起こした空中爆発事故だ。どちらも、英政府の主導で開発された世界初のジェット旅客機、コメット機だった。

 ▼チャーチル首相は「イングランド銀行の金庫が空になっても原因を究明せよ」と厳命した。その結果、実際に使用される状態とは異なる条件で耐久実験を行ったため、金属疲労の計算を誤っていたことがわかった。

 ▼56 人の人命が失われ、社会に与えた衝撃も大きかった。それでも、事故をきっかけに未知の部分が多かった金属疲労の研究が進み、技術の進歩につながったこと は、評価できるという(『失敗学のすすめ』講談社)。では、東京都渋谷区松濤の温泉施設「シエスパ」の爆発事故はどちらの失敗なのか。

 ▼ 地下千数百メートルからくみ上げる温泉はもともと海水だった。プランクトンなどが分解されてできたメタンガスが溶け込み、南関東地域の地下に天然ガス田を 形成している。平成16年7月に千葉県九十九里町のいわし博物館で起きた爆発事故で、その存在が知られるようになる。

 ▼翌年2月、東京都北区の温泉掘削現場で起きた火災は、噴出するガスの恐ろしさを改めて見せつけた。火災の後、東京都が作った安全確保のガイドラインは、あくまで掘削時に限ったもの。営業開始後も危険な状態が続くのは、自明のはずなのに。

 ▼何よりずさんなガスの管理をめぐる、運営会社と管理委託先の責任のなすりあいは見るに堪えない。過去の事故から学ばず、判断ミスを繰り返し、揚げ句の果てに女性従業員の夢を奪った。「最悪の失敗」に決まっている。

(2007/06/22 05:06)


【日経・社説】

社説1 国民に役立つ社会保障番号の制度設計を(6/22)

 年金記録騒動をきっかけに安倍晋三首相が「社会保障番号」を創設する考えを示した。国民1人ひとりに国が1つの番号を決めて、公的年金だけでなく健康保険や介護保険も含めて加入録や保険料納付歴、受給の状況などを一体管理する仕組みだ。

  国民からみて役に立つ制度にするには、社会保障に関する国民と国・自治体との間のやりとりを本人だけが手軽に把握できる仕組みが必要になる。個人情報の流 出を根絶する観点からは政府内のどの部局を運営主体とするのか、厳格に運用する体制を整えなければならない。納税者番号制度との関係を整理することも課題 だ。年金問題でわかったずさんな情報管理体制を立て直すためにも、制度設計に早急に着手すべきだ。

 制度創設は今年の骨太の方針にも盛り 込まれた。税制改革に関連して「納税者番号の導入に向けて社会保障番号との関係の整理を含めて検討する」と指摘し、社会保障の項で「個人が自分の健康情 報、年金や医療などの情報をオンライン管理し、手続きを安全かつ簡単に行うことができる仕組みの構築」に言及した。

 首相は「カードにす る制度としてつくったら便利ではないか。年金など自分の情報を確かめやすい」と述べている。ICカード化した健康保険証を国民1人ひとりが持つ「健康IT カード」を念頭においた発言とみられる。厚生労働省は2012年度に導入する計画で、その際は1人に1つの固有の番号をつける。

 この番 号で各人の年金や医療の負担・給付の状況を管理するとともに関連情報をカードに入力すれば、保険料納付や受診の履歴がパソコンなどで一覧できるようにな る。将来の年金受給額も試算できる。いわゆる社会保障サービスの可視化だ。転職したときなどに年金記録が宙に浮くような事態も解消しやすくなろう。

 将来は番号の「使い道」をどこまで広げるかが課題になる。例えば住民票の請求や旅券申請など公的サービスを受けるときに番号を示せば本人確認しやすくなる。金融取引の際に提示を義務付けるなど納税者番号の機能を持たせることも可能だ。

 現在、国民を対象に政府がふっている番号制度には基礎年金番号と住民票コードがある。どちらかの機能を充実させて社会保障番号として使うことは検討課題だが、新たな番号制度の創設を含め、低コストで効率的な方法を研究すべきである。

 プライバシーをしっかりと守りつつ、「払ったお金の記録はきちんと把握してもらいたい」という国民の当然の思いに応える制度が必要だ。

社説2 懸案を処理して審判仰げ(6/22)

 国会の会期が7月5日まで12日間延長されるこ とになった。これに伴い7月22日に予定されていた参院選の投票日は同29日にずれ込む。参院選のある年の会期延長は異例だが、安倍晋三首相は国家公務員 法改正案などの成立を期すために勝負に出た。必要な法案を処理したうえで、与党はその実績と意義を、野党はそれぞれの政策を訴え、参院選で審判を仰ぐこと が重要だ。

 参院自民党などの慎重論を押し切り、首相が今国会成立にこだわる国家公務員法改正案は、官民人材交流センター(新・人材バン ク)の創設などの天下り規制が柱になっている。各省による天下りあっせんを禁じ、内閣府に設けるセンターが一元的に再就職を支援する形に改める。首相は 「公務員のリストラを促すためには、こうした透明なシステムが必要」と強調している。

 緑資源機構などの相次ぐ官製談合事件では、天下り の弊害が改めて浮き彫りになった。天下り規制は急務である。センターの具体案が示されていないため、国会審議はいまひとつ深まらない。官房長官の下に設け る有識者会議で制度設計をすることになっており、法成立後、速やかに検討作業を始めるよう求めたい。

 延長国会のもう1つの焦点は、社会保険庁改革法案と年金時効撤廃特例法案を巡る与野党攻防だ。民主党が追及してきた年金の記録漏れ問題では、社保庁のずさんな記録管理の体質が露呈した。

  社保庁改革法案は保険料徴収などで不祥事が相次いだ社保庁を廃止・解体して、2010年1月に新たに「日本年金機構」を発足させるという内容だ。機構は独 立行政法人に似た公法人だが、より民間に近い組織になる。信頼が地に落ちた現在の社保庁を残すわけにいかないのは明らかだ。今国会で成立させて、社保庁解 体の道筋をつける必要がある。

 年金への不安感を鎮めるには、支給漏れが判明した人に5年の時効を適用しない特例法の制定は不可欠だろ う。政治資金規正法改正案などの他の重要法案とともに、着実に成立させなければならない。異例の会期延長を生かして、今国会でまだ2回しか実施されていな い党首討論も、ぜひ開催してほしい。

【日経・春秋】(6/22)

 「陰が極まり陽に変じる日」が冬至なら、夏至は「陽が極まり陰に変じる日」だ。柚湯(ゆずゆ)に入ったりカボチャや小豆(あずき)粥(がゆ)を食べたりする冬至と違って、これといった夏至の習わしがないのは、縁起の良い一陽来復とは対極にある日だからか。

▼ その夏至の今日、国会は12日間の会期延長を決める。与党からもあがった強い反対の声を抑え込み、選挙日程が1週間ずれ込むので「大変ご苦労をかけるが」 と頭を下げつつ押し通した強行策を議決・承認する日が、たまたま「陽が極まり陰に変じる日」に重なったのは安倍晋三首相には気掛かりかもしれない。

▼ 燮――あまり見ないこの難しい字は「しょう」と読み、意味は「和らげる」。燮理と書けば「和らげ治める」で、古代中国では物事を和らげるのが善い政治とさ れたのか宰相の別称に使われ、慣用句の「陰陽を燮理す」は、天地万物を生成する陰と陽の性質を和らげ程よく整える優れた政治のたとえに用いられる。

▼ 会期を延ばすのは、天下りあっせんを禁止し官製談合をなくすとの効能書きを付けた国家公務員法改正案や、社会保険庁を解体・出直しさせる改革法案を成立さ せたいからだ。緑資源機構事件や年金記録漏れで噴出した国民の不信を、それで和らげ「陰陽を燮理」できるか。参院選に向け安倍政権の正念場は続く。


※来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。それにつけても思い出すのは、あの日本の9・11、2005年9 月11日の小泉の郵政選挙でした。ほとんど小泉の詐欺的と言ってもいい「争点は郵政改革だけです、改革をやるんですかやらないんですか」のワンフレーズ、 やらなければ日本がまるで沈没でもするような迫り方でした。

 結果、われわれの目の前に現れたのは自公独裁体制・強行採決オンパレードの国会でした。

 いま振り返ってみると、特に朝日系列に顕著だった、小泉政権へのすり寄り、地方紙以外の中央主要マスコミの翼賛体制はひどいものでした。

 はたして、これから参院選までのあいだ、どのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存しようと考えました。以下の社説とコラムです。

地方紙:沖縄タイムス(社説コラム)、琉球新報(社説コラム)、東京新聞(社説コラム)、河北新報(社説、コラム)、京都新聞(社説コラム

主要紙:朝日(社説コラム)、毎日(社説コラム)、読売(社説、コラム)、産経(社説、コラム)、日経(社説、コラム

OLYMPUS Voice-Trek V-61 CE OLYMPUS Voice-Trek V-61

販売元:オリンパス
発売日:2007/03/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「投票日繰り延べした、わがまま横暴なお坊ちゃまボンクラ安倍を粉砕するぞバナー」(笑)

 恐らく投票日が迫るにつれ、何千万、何億と言う潤沢な資金を使って、広告代理店を通しあまたのアートな才能を動員しまくるのでしょう、安倍君は。(笑)

 それに対するに、小さなバナー1個で挑まんとする、雑談日記作者ことオイラは、まさにドンキホーテの心境です。(汗)

 かなりバナーが広まってきたとは言え、まだまだネットの大海の中ではほんのちょびっとだしね。(^^;

 いわゆる「さよく」な人とか、「ごけん」の人って基本的に言葉の人、理念の人、お利巧さんな人が多くてバナーなんて鼻先で「フフン」だろうし、。(笑)

 でも、ヒットラーの宣伝相に始まって、映像的な宣伝手法はその悪魔的な効果のゆえに、TVのコマーシャルなどに大いに利用されまくって現実の生活の中に生きている今日のこの頃、みなさんお元気ですか。(笑)

 まあ、上記の流れは、スターリンなどもその範疇に入るのかもしれないのに、「さよく」な人が忘れたかのように視覚的・効果的な手法に目を向けないのは不思議です。

 前置きが長くなりました。AbEnd1周年を記念して、AbEnd提唱者・僕が心から敬愛する美爾依さんに贈るドンキホーテSOBA渾身の力作「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナーです。

投票日横暴繰り延べに一矢、「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナー(笑) 投票日横暴繰り延べに一矢、「その手は桑名の、ボンクラ安倍粉砕」バナー(笑)

※なお、皆さんもお気づきかも知れませんが、最近アニメGIFバナーの動きがはなはだ悪いです。ページの読み込みが終わっても動かないとかです。こ れって、個人でできる範疇ではないと思っています。自宅で使っているパソコンについても、ITについてそれなりの知識を持っている僕自身が理解できないよ うな攻撃を受けています。不気味過ぎるくらい強大な影を感じています。攻撃者を喜ばせるので詳しく書けないのが悔しいです。バックアップ体制、その他考え る対処策はすべてとっているのでどうってことないですけれどね、。

※なお、ドンキホーテたるSOBAは同じくドンキホーテ仲間のZAKIと天木直人氏を全身全霊、知恵と力を振り絞って応援することを表明しておきま す。ZAKIのバナーは僕が作成しました。もう一方の天木氏は、ご存知のようにレバノン大使時代、米国のイラク戦争に反対し、ブッシュに協力する小泉に敢 然と諫言、結果無理やり詰め腹を切らされ外務省を辞めさせられた方です。

ZAKIのバナー

[公式] 天木直人のブログ


 以下、松本幸四郎さんがまだ染五郎と言っていた頃の舞台を紹介しているページです。

Man of La Mancha(ラ・マンチャの男)

12. 「見果てぬ夢」のところで「The Impossible DREAM (Quest )」を聞くことができます。

 以下、劇中で出てくるセリフです。

「……人生自体がきちがいじみているとしたら、
では一体、本当の狂気とは何か? 本当の狂気とは。
夢におぼれて現実を見ないのも狂気かもしれぬ。
現実のみを追って夢を持たないのも狂気かもしれぬ。
だが、一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に、ただ折り合いをつけてしまって、
あるべき姿のために戦わないことだ。」

 以下、僕がクエスチョンのHNで阿修羅に投稿したものです。

ラマンチャ? USA。【アルジャジーラ.infoの漫画です。】
http://www.asyura.com/0306/war37/msg/292.html
投稿者 クエスチョン 日時 2003 年 7 月 21 日 08:37:01:WmYnAkBebEg4M


 以下、関連記事。

参院選、1週間遅れに 公明代表、会期延長に同意【朝日】

以下略、残りはココログ版雑談日記(徒然なるままに、)で。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月21日 (木)

6月21日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:CASIO Ex-word (エクスワード) 電子辞書 XD-SW7600 日中韓対応手書きパネル搭載 音声対応 23コンテンツ収録 韓国語モデル


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月21日朝刊)

[教育3法成立]将来に禍根残しかねない

 安倍晋三首相が今国会の「最重要法案」と位置付けた教育改革関連三法が参院で与党の賛成多数で可決、成立した。

 学校教育の目標などを定めた「学校教育法」、国と地方のかかわりを規定した「地方教育行政法」、新たに免許更新制を盛り込んだ「教員免許法」の三法で、昨年末、約六十年ぶりに改正された「教育基本法」に続き、いずれも公教育の骨格部分に相当する。

 三法に基づき今後、学校教育や地方教育行政に対する国の関与の道を大きく開いた、といえよう。

 野党は徹底審議を求めて反対した。国会でどれだけ歯止めがかかるのか注目されたが、結局、与党の「数の力」で押し切られた。

 有識者からは「教育の管理・統制強化につながる」と指摘され、免許更新制に対しても実効性への不安が教育現場からなお払拭されていない。改革の具体的な効果が不透明だけに、将来に禍根を残しかねないといえる。

 学校教育法の改正では、改正教育基本法を踏まえ義務教育の目標に「規範意識」「公共の精神」「わが国と郷土を愛する態度」などの理念が新たに盛り込まれた。「歴史について正しい理解に導き」という表現もある。

 だが、国を愛する態度とは一体何なのか。何が歴史の「正しい理解」であるのか。改正教育基本法の審議から積み残されたこうした疑問にはなお答えていない。

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」の記述から「軍命」を削除した文部科学省の教科書検定のように、国の解釈を押し付けるようなことがあっては、公教育に国家や政治家個人の意思を持ち込むようなものである。

 「正しい理解」であると、誰が判断するのか。国の考える歴史観を押し付けるつもりだろうか。

 地方教育行政法の改正では、教育委員会に対する是正要求を盛り込んだ。「生徒の教育を受ける権利が侵害されていることが明らかな場合」などの要件を示しているが、侵害に当たるかどうかは国の判断一つだ。

 教員免許更新制を打ち出した教員免許法改正は、終身制の現在の教員免許を二〇〇九年四月一日から有効期間十年の更新制にする。更新前に三十時間以上の講習を条件とした。

 だが、審議の過程で与党側の参考人が「講習が国主導で画一的となれば、自主性や自律性がおかしくなる」と指摘したように、講習の設計次第で画一的な教師づくりにつながる恐れをはらんでいる。

 危うい改革との印象は免れない。

[改正イラク特措法]対米重視策を国民に問え

 改正イラク復興支援特別措置法が成立した。四年間の時限立法で今年七月に期限が切れる同法だったが、改正により航空自衛隊のイラク派遣を二年間延長することが可能となった。

 政府は当面、二〇〇八年七月末まで一年間延長する方針で、それ以降、延長するかどうかはイラクの治安状況などを見て判断する意向だ。

 医療や給水など、純粋に人道支援だった陸上自衛隊がイラク南部のサマワから昨年七月に撤収して以降、クウェートを拠点に人員、物資をイラクに輸送する空自の任務は、ほとんどが米軍を中心とした多国籍軍関係で、国連関係はごくわずかとなっている。

 自衛隊の活動の性格が、人道復興支援から安全確保支援に様変わりし、多国籍軍支援に重点を移していることは明らかだ。

 イラク政策で苦境に立つ米国を支援し、日米同盟の維持、対米重視政策を象徴しているのが、今回の改正だといえよう。

 ブッシュ米大統領は今年一月、世論や野党民主党の反対を押し切る形で増派を決定。現在、イラク駐留米兵は計約十六万人に上るが、治安情勢がいつ安定化するかは不透明だ。

 改正特措法が成立したことに、米国防総省の当局者は、「イラク国民と多国籍軍への支援に感謝する」と日本の支援を評価する立場を強調していることは、ブッシュ政権の置かれた立場からすると、援護射撃となることは間違いない。

 安倍晋三首相の特措法延長の説明は「潘基文国連事務局長から空輸支援への謝意表明や継続要請が来ている」とし、大義名分に「国連」を掲げ、間近に控えた参院選を意識しているとしか思えない。

 今、空自をイラクから撤退すれば、間違いなく日米同盟に多大な影響を及ぼす。北朝鮮問題も考慮し、日米同盟を堅持するならば、政府は改正特措法が実態的には対米支援法に変質していることを率直に認め、国民にその信を問うべきだ。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月21日 朝刊 1面)

 南部出身の「かりゆし58」は、飾り気のない日本語の歌詞が魅力的なバンドだ。「ウージの唄」はシマへの思いを綴る。

 この島に注ぐ陽の光りは/傷跡を照らし続ける/あの悲しみを/あの過ちを忘れることなかれと/南の海の小さな島/こんなにも美しいのは/命の喜びを唄う/あなたが居るから/風の中静かに/生きることの喜びを唄う。

 復帰後にその激戦地を訪ね、シーサー作りを始めた東京在住の出口富美子さん(66)。作品一つ一つに亡くなった人の魂再生への願いを込めているという。国籍を問わず犠牲者すべての数を形にするのが夢だが、「いくつまで生きないといけないかな」と笑う。

 北海道に生を受けた。小学生のころ、教師から北方領土と沖縄の問題を教わり、相通じるものを感じたという。だが、沖縄の人は北方領土のことには意外に関心が低いことに衝撃を受けた。「(相手を)知らないことが押し付けを生む」。双方の溝を埋めたい気持ちが募った。

 陶版シーサーは沖縄の土に、本土で多く使われる土を加え、細かな部分を仕上げる。「異質の土が溶け合うには時間がかかるけど、仕上がりは鮮やかでしょう。それと同じ。互いを理解する心が大切」。

 全国各地の個展は、スーパーの駐車場など場所を選ばない。売り上げを少しでも多く平和活動に寄付したいから。沖縄での個展は「あの日」と同じ灼熱の陽の光りが注ぐ慰霊の月と決めている。(石川達也)


【琉球新報・社説】

コンサル名義借り・課題乗り越え、信頼回復を

 沖縄総合事務局は、国土交通省に登録している県内建設コンサルタント業者131社のうち40社45部門に対し、登録要件を欠くなどしたとして登録を事実上取り消す「消除」措置を取った。
 建設コンサルタント業は国への登録義務はない。しかし、公共工事の入札に参加するには国への登録が必要で、それには技術管理者を常勤させることが条件である。
 登録を取り消された業者約3割の多くが県外に住む技術管理者の名義を借りて、実際には非常勤にもかかわらず、住民票だけを県内に移すなどして常勤の体裁を取って国に登録していた。
 一度に40社が処分されるのは全国で初めてである。業界を挙げて信頼回復に努めてもらいたい。
 名義借りは沖縄だけの問題ではない。全国的に横行しているとみられ、国交省には徹底した調査を望みたい。非常勤を前提として県内企業に技術士を斡旋(あっせん)している人材派遣業者もいる。脱法行為を助長するような業者への指導も求めたい。
 公共工事が減少し受注競争が激化する中、月給5、60万円ともいわれる常勤の技術管理者を抱えることは厳しい面があるだろう。
 しかし、税金を使う公共工事に携わる建設コンサルタント業者が、登録規程に違反することがあってはならない。経営的に厳しい中にあっても、約7割の業者は登録規程を順守し、常勤の技術管理者を雇用しているのである。
 登録を取り消された40社のうち38社は今後、登録要件を満たせば、新規・追加で登録できる。ただ、常勤の技術管理者になる技術士が県内では不足している状況にあるといい、人材確保が課題である。
 県内で技術管理者の常勤が義務付けられたのは1997年である。他府県より制度導入が遅かったことも技術士不足の一因だろう。
 技術士の資格取得試験は大学を卒業したての人に有利といわれる半面、資格によってはその要件である経験を県内で積むことは厳しいともいわれる。
 零細業者の多い県内では仕事に追われ、試験に向けた勉強をする時間、さらには常勤で技術士を雇う余裕がないともいわれる。「工程管理はメールのやりとりなどで十分。非常勤でも全く支障はない」との声も聞こえる。
 国土交通省はこれらの声も十分に検討し、技術管理者の在り方、技術士国家試験の在り方、非常勤でも業務に支障はないかなどを点検する必要があろう。
 適正化に向けては人材育成、財務強化と課題が業者に立ちはだかる。しかし、それを乗り越えなければ、生き残れないことを十分に認識してほしい。

(6/21 9:45)

富山冤罪初公判・失われた時間どう償う

 女性暴行など2つの事件の容疑者として富山県警に逮捕され、約2年1カ月服役した後、無実が判明した男性の有罪を取り消す再審の初公判が富山地裁高岡支部で開かれた。
 男性は2002年1月と3月に起きた女性暴行と同未遂事件の取り調べに対して当初は「身に覚えがない」と否認したが、その後自白し逮捕された。
 自白偏重主義を改めない限り、冤罪(えんざい)をなくすことはできない。警察、検察全体でこのことを再確認してほしい。
 弁護側は誤認逮捕に至ったずさんな捜査を追及するため、当時の取調官の証人尋問を申請したが、藤田敏裁判長は「必要性がない」と却下した。果たしてそうだろうか。
 再審の狙いは、男性の無罪を確定させることである。併せて、冤罪事件の再発防止も司法に求められているのである。
 それには、男性を犯人に仕立て上げた取調官への尋問は不可欠ではなかったか。なぜ強引な取り調べが行われたのかなどを検証しなければ、冤罪の全容解明と防止につながらないのではないか。
 男性は再審前に「ただ無罪では終わりたくない。二度と冤罪事件が起こらないようにしてほしい」と話している。期待を裏切られた男性は閉廷後、弁護士に「(裁判に)絶望した」と話したという。
 弁護側は冒頭陳述で、取調官は予断と偏見で「家族が犯人はおまえに違いないと言っている」「何を言っても無駄だ」と自白を強要したと指摘した。
 「失った時間は戻らないし、刑務所に入った事実は消えない」。人生を台無しにされた男性の声にどう応え、償うのかが警察、司法に問われている。
 富山県警は現場に残っていた足跡が男性のものと一致しないことを認識しながら逮捕している。
 容疑者にとって有利な証拠も含め、さまざまな証拠を綿密に吟味し、あらゆる角度から検討した上で犯人かどうかを判断することが捜査の基本である。それをなぜ怠ったのか、組織の在り方を含め検証が必要だ。冤罪は捜査機関の犯罪だということを肝に銘じてほしい。

(6/21 9:43)

【琉球新報・金口木舌】

 東京・青山のライブハウスで「まるで六文銭のように」と題するコンサートを見た。出演者は1970年代初めに活躍したフォークグループ・六文銭の元メンバーの小室等、及川恒平、四角佳子の3人
▼ステージの後半、「戦争」をキーワードに大岡信、谷川俊太郎らの詩に曲を付けた作品が並んだ。「幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました」で始まる中原中也の「サーカス」も取り上げられた
▼いずれも反戦詩というわけではないが、「サーカス」を歌い終えた後、「こういう詩が教科書からなくなるかもしれない」とメンバーの一人が不安げに語ったのが印象に残った
▼言葉にこだわり、現代詩の楽曲化に挑んできたフォーク歌手は“放送禁止”という壁と闘ってきた。為政者に都合の悪い言葉を消し去ろうという動きには敏感だ
▼今回の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する記述から「日本軍の軍命・強制」の文字が消えた。犠牲者がなぜ自ら命を絶たざるを得なかったのか、検定後の記述から読み取ることはできない
▼集団自決の生存者は、今も癒えぬ心の傷を抱えたまま23日の慰霊の日を迎える。事実の重さを直視せず、言葉のみを消そうとする人たちの鈍感さに怒りを覚える。

(6/21 9:42)


【東京新聞・社説】

国会延長へ 焦る首相の危ない賭け

2007年6月21日

 悪天候でも登山を続けるしかない、そういう心境なのだろう。安倍晋三首相の強い意向で国会の会期が延長される。参院選の投票日程をずらしてまで突っ走るツケは甚大であることを、覚悟の上か。

 首相に近かった自民党参院議員がブログ(いわゆる日記)に書いている。「国民の間に『姑息(こそく)な投票日延ばし』という批判が広がったら、さらなる悪天候につながる可能性もある」と。

 会期を延長するにしても、当初予定された七月二十二日の参院選投票日を一週間後ろにずらすことだけはしてくれるな、という意味だ。

 どう転んでも年金問題の逆風をかわすのは無理なのだから、正々堂々と戦おうじゃないか、とも、この人は書いている。

 安倍首相や党執行部の言い分はこうだ。重要法案を何が何でも成立させたい。“消えた年金”騒ぎをもたらした社会保険庁を解体する、国民の年金不安を解消する、官製談合の元凶の“押しつけ的な天下り”にストップをかける、それには窮屈な土俵を広げる必要がある-。

 背景には激しく下落する内閣支持率がある。ここで引けば再起不能になりかねない、ひるまぬ安倍カラーの演出に活路を求める、ということだろう。そうした建前の一方で、投票日を多少なりとも遅らすことによって逆風が静まるかも、と本音を漏らす自民の議員も少なくない。

 首相らの選択の当否は、今後の野党の動きも吟味された上で、いずれ有権者が判断することになる。

  ただし懸念は残る。大詰めにきて会期を増やす過程で、乱暴な国会運営が当たり前のようになった今の事態である。イラク復興支援特措法、教育関連三法が野党 の反発を押し切る形で可決・成立した。社保庁改革や年金の時効撤廃、天下り規制などの関連法も、強行可決辞さず、が与党の既定方針となっている。

 年金関連でいえば、世論の離反に慌てた首相は、社会保障番号の検討など制度の根幹にかかわる方策を口にした。ならば法案づくりをやり直せ、という野党の主張も一理ある。

 国家公務員法の改正も天下りの現状追認になるとの批判や、実効性を考えれば、今国会で急がねばならない理由は乏しい。

 与野党は既に事実上の選挙戦に突入している。攻防が激しさを増すのは避けられないにせよ、十分な審議の土俵が破壊されるのなら、蚊帳の外の国民には、迷惑なだけだ。

 投票日のずれる延長に渋々同意したとされる参院自民の実力者は、選挙で負ければ首相の責任だ、と言っている。首相の危ない賭けである。

教育3法成立 現場を委縮させるな

2007年6月21日

 教育関連三法改正が今国会で成立したことで、現場の管理体制は一層強まる。公権力が過剰に介入する懸念もあるが、教師は委縮することなく、現場に向き合ってその職責を全うしてほしい。

 参院での教育三法の審議をみても参考人や中央公聴会の公述人からは問題点や否定的意見が多く出た。

 地方教育行政法の改正では、文部科学相による教育委員会への是正の指示・要求権ができた。地方分権一括法では文科相の是正要求権や教育長任命承認権が削除された経緯があり、国の権限が復活させられた。

 いじめ自殺などに教委が適切に対応できなかったことが改正の理由とされているが、主な教委には国からキャリア官僚が出向しており、国の指導や通達にはこれまでも従ってきたはずだ。教委が国の意向に従うだけの組織になりはしないか。

 国が教委に指示や要求をしたからといって、いじめ自殺が減るかどうかは疑問だし、地方分権の流れからは逆行する。一方、教委は私学の教育内容に対し、知事から求めがあれば助言できるようになった。私学の自主性は尊重されなければならず、この運用は慎重であってほしい。

 教員免許法改正では十年に一度、三十時間以上の講習が教員に義務づけられ、免許が更新制となる。管理強化の手段にされる懸念があり、講習に出る教員の穴埋め問題というなおざりにできない課題もある。

 教員に免許更新制が必要かという根本的な疑問はぬぐえない。専門性でいうなら医師や建築士はどうなのか。不適切な人を外すことは現行制度でも十分にできる。教員管理の手段と批判されないよう、手続きの公正さと透明性を確保すべきだ。

  学校教育法改正では、副校長や主幹などが置かれ、学校の運営体制が強化される。東京都はすでに主幹制度を導入しているが、希望者が少なく、うまく機能して いないという。任務が過重のためらしく、中間管理職を増やしてマネジメント効果を上げようという企業的な論理だけでは公立学校の運営は難しい。

 教育の再生には、管理強化よりも現場への支援ではないのか。人や予算の手当てをしないままの改革で効果はあるのか。

  指導力不足や問題を起こす教員は少なくないが、問題が起きた背景を分析し、総合的な対策を講じなくては根本解決はない。教師の一日の残業時間は平均二時間 といい、過酷な労働状況から精神的疾患にかかる人もいる。管理強化で現場の士気が低下し、教職に就くことを敬遠する若者が増えはしないか、気になる。

【東京新聞・筆洗】2007年6月21日

 温泉好きだから、東京の銭湯には、地下から汲(く) み上げた天然温泉を使っているところがあることは知っていた。そこへ最近の都心のスパブームだ。あちこち、地下水を汲み上げてできた大規模施設をハシゴし ては楽しんでいた▼渋谷区松濤の高級住宅街に昨年、女性専用温泉施設「シエスパ」がオープンしたのは知らなかったが、その別棟の汲み上げ管理棟で、温泉水 に含まれていたメタンガスが引火して爆発した。建物は全壊し、大きなコンクリートのかたまりが数十メートルも吹き飛ばされ、中にいた女性従業員三人が死亡 する痛ましい事故になった▼東京の温泉水は「化石水」と呼ばれ、海水が地下水となったもので、海底に沈殿した微生物の死骸(しがい)が発酵してできたメタ ンガスが溶け込んでいる▼二〇〇五年二月に、北区浮間の温泉掘削現場で起きたガス火災は、鎮火に丸一日かかった。シエスパにはガスの分離設備はあったよう だが、ガスの排出管理と日常の点検に不備があったとみられる▼千葉県を中心に首都圏の地下にはメタンなど可採埋蔵量三千七百億立方メートルの「南関東ガス 田」の存在が知られる。今後六百年は採掘可能で、千葉県では一般家庭二十三万戸に供給されている▼新潟県上越市沖など、日本近海の海底にはメタンが高圧の 水に溶け込み、シャーベット状になった「メタンハイドレート」と呼ばれる物質が豊富にあり、新たなエネルギー源として注目されている。大気中へのメタンの 放出は、地球温暖化にも大きな影響を与えるため、開発には慎重で十分な研究が必要だ。


【河北新報・社説】

国会会期延長へ/これはもう参院選の序幕だ

 政府・与党は23日の国会会期末を控え、安倍晋三首相が強い決意を示す国家公務員法改正案の成立のため、会期を12日間延長する方針を固めた。参院選投票日は7月22日から同29日に繰り延べとなる。

 これにより、延長国会最終盤は与野党対決が熾烈(しれつ)を極める荒れ舞台となり、参院選の戦いそのものを凝縮したような緊迫した空気が張りつめる局面となりそうだ。
 与党にとって延長は両刃(もろは)の剣である。

 野党の攻勢を許しながら年金記録不備問題の後始末で会期を終えるより、多少の無理をしてでも、首相が官製談合や天下り防止は「内閣の使命」と強調する公務員制度改革で会期末を迎えた方が参院選に向けて得策というのが与党側の判断だろう。

 最低賃金引き上げなどを盛り込んだ労働関連三法案の成立も見込め、ほかにも得点を稼げる。

 だが、こうした「自ら土俵を広げるような行為」(又市征治社民党幹事長)にはどうしても党利党略の批判がつきまとう。

 公務員の再就職あっせんを一元化し省庁の関与も認める官民人材交流センターは「天下り公認機関」―と野党に酷評される改正案。これを大義名分にしてまで参院選の日程をずらすのは、年金問題への国民の怒りを冷却するためととられかねない。

 だから自民党内に迷いもあって、会期延長―参院選繰り延べの是非に関して「参院選に向けてプラスとマイナスのどちらが大きいか見極める必要がある」という声が消えないのだ。

 一方、民主党など野党にとっては年金問題への国民の関心をいかに持続させるかが参院選勝利のカギだ。その意味で延長国会最終盤は正念場となろう。

 自民党内には「民主党は公務員労組を守るため公務員法改正案に抵抗する―と国民に見られるので、反対しにくいはず」との強気の読みがあるが、民主党がこうした与党の思惑にはまれば風向きが変わりかねない。

 鳩山由紀夫同党幹事長は「会期延長をマイナスにとらえる必要はない」という。延長を逆手にとり、追及姿勢をアピールした方が得策との判断だろう。

 内閣不信任案提出のタイミングを含め、与党攻撃の仕掛けとテンポが今後、国民の支持を獲得できるかどうかが試される。

 参院選の年の通常国会が荒れるのは当然だろう。年金も公務員改革も大事なことは言うを待たない。しかし、延長が決まった最終盤国会で与野党対決の構図が熱を帯びれば帯びるほど、私たち有権者はクールな目で政局を見つめる必要がある。

 自民党の内部事情で政権を引き継いだ安倍首相は衆院の解散・総選挙という形で国民の審判を受けていない。

 それだけに私たちは、安倍首相にとって初の大型国政選挙の参院選を前に、政権の継続を是とするか非とするかを問う準備をしなければならないだろう。

 野党の中心となる民主党には政権交代の力量と気概が認められるのかどうか。その見極めも必要だ。延長国会から透視すべきはそういうことではないか。
2007年06月21日木曜日

【河北新報・河北春秋】

 すさまじい爆風だったらしい。東京・渋谷であった温泉施設の爆発。友人の職場が現場近くにある。電話をすると「数百メートル離れた場所にも壁の破 片らしきものが飛んできた」と驚いていた▼源泉は地下深く約1500メートルという。そこはメタン濃度の高い天然ガスを含む地層。くみ上げた湯はガスを分 離して使う。そのガスが何らかの原因で充満し、爆発したとみられている

 ▼ この種の温泉は「大深度温泉」と呼ばれる。山間の湯治場などに多い自噴型の火山性の温泉とは別。深く掘りさえすれば、平野部であっても、高い確率で非火山 性の温泉を掘り当てることはできる▼掘削技術の進歩と低コスト化でそれが可能になった。現代型の都市温泉がこうして現れた。もともと温泉好きの国民ゆえ、 都会の温泉が人気を呼び、今では温泉付きのマンションさえ珍しくもない

 ▼温泉のありがたみも半減だが、問題が多い。くみ上げ量が増え て、各地で枯渇が現実化している。ガスを分離して大気中に放出していることはどうか。掘削時のガス対策に比べ、開業後の安全管理が不十分との指摘もある▼ 渋谷の施設では、室内などにガス検知器は設置していなかったようだ。仮にそうならば危険に対する想像力が著しく欠如していたと言わざるを得まい。ほかの温 泉施設は大丈夫か。

2007年06月21日木曜日


【京都新聞・社説】

まだない

【京都新聞・凡語】

まだない


【朝日・社説】2007年06月21日(木曜日)付

国会延長―強引さが目にあまる

 今週で終わるはずだった通常国会の会期が、12日間延長されることになった。これにより参院選挙の日程が1週間ずれ込み、7月29日投票となる。

 全国の自治体で投票日をPRするポスターや横断幕を作り直したり、立候補予定者が集会の会場を押さえ直したり。てんやわんやの混乱が広がっている。

 こんな土壇場にきて会期を延長するのは、極めて異例のことだ。

 野党はもとより、参院自民党や公明党にも強い反対論があった。それを押し切ったのは、参院選向けに成果がほしい安倍首相である。国家公務員の天下りをめぐる新人材バンク法案を、何が何でも成立させたいということのようだ。

 ときの首相が、最重要と考える法案のために国会を延長してもらう。そのこと自体を批判するつもりはない。だが、今回の延長には異議を唱えざるを得ない。

 理由の一つは、法案の中身である。

 いまは省庁ごとに行っている官僚の天下りを禁じる代わり、内閣に新人材バンクをつくって一元的に再就職をあっせんする。それが法案の核心だ。

 つまり、政府案が通っても、依然として天下りはなくならないのだ。これで官製談合や税金の無駄遣いを根絶すると言われても、説得力を欠く。

 実際、朝日新聞の世論調査では、この法案が天下りの弊害をなくすのに「有効ではない」と見る人が59%もいた。再就職あっせんの全面禁止を盛り込んだ民主党案とどちらが良いかを尋ねると、「民主党案」の42%に対し、「政府案」は12%と大きく水をあけられた。

 首相にすれば、年金問題への有権者の怒りをかわすためにも、この法案を成立させて「公務員たたき」を焦点のひとつにしたいのだろう。だが、天下り温存では真の対策にはならない。

 もう一つは、今国会で何度も見せつけられた、与党の強引な姿勢だ。

 イラク特措法の延長や教育関連3法をはじめ、与党がこれほど多くの重要法案の採決を一方的に強行した国会がかつてあっただろうか。

 「数の力」を頼んで突き進む姿勢は、民主党衆院議員に対する懲罰で極限に達した。委員長を羽交い締めにして採決を阻もうとした議員の行動にも問題はあった。だが、過去にもそうした行き過ぎはあったことだ。

 それを民主党所属の懲罰委員長を投票で不信任までして、問題の議員を30日間もの登院停止という重い処分にした。もはや横暴に近いと言わねばならない。

 最終盤の国会では、新人材バンク法案のほかに、社会保険庁改革法案や政治資金規正法改正案の採決が見込まれる。ここでも野党の対案や修正案に耳を貸さず、ただ一定の審議時間が過ぎるのを待って採決を強行するのでは、会期を延長する意味がない。

 そんなことで通った法律を「成果だ」と言われても、国民の胸には響くまい。

温泉の爆発―都会の「天然」に潜む危険

 都会の天然温泉ブームに冷や水を浴びせる事件が起きた。3人の生命を奪った東京・渋谷の温泉施設の爆発である。

 手軽な癒やしを求めて、都会の温泉はふえる一方だ。東京都内の温泉は約150にのぼる。90年代半ばに比べれば、約7割も多い。

 だが、都会の真ん中に天然温泉をつくりだすには、二つの危険がつきまとう。

 一つは、泉源を求めて深く掘らなければならないことだ。これが火山近くに古くからある温泉とは違うところだ。

 事故を起こした温泉施設のように深さ1000メートル以上掘ることは、掘削機械やポンプの性能が上がったので、技術上は難しくない。だが、掘れば掘るほど、ほしくないものも一緒にくみ上げる。それがメタンなどの天然ガスだ。

  日本には、地下深くに天然ガスがたまっているところが少なくない。とりわけ東京など関東南部には「南関東ガス田」がある。この一帯が海だった大昔の名残 で、化石水と呼ばれる水が封じ込められプランクトンなど生物の残骸(ざんがい)も多い。それが分解して天然ガスを発生させる。

 ガスは地中の圧力を受けて地下水にも溶け込んでいる。温泉の湯は爆発の危険と一緒にくみ上げられているのだ。

 もう一つの都会の温泉の危うさは、ビルや住宅街の近くにつくることだ。

 天然ガスが漏れれば、周りが事故の危険にさらされる。湯と天然ガスとの分離装置がきちんと働いていたとしても、分離されたガスの扱いに万全の注意を払わなければならない。

 05年には東京都北区の温泉掘削現場で天然ガスによる火災が起き、一日じゅう燃え続けた。

 これをきっかけに、東京都は掘削作業中の安全対策ガイドラインをつくった。深く掘る際にガスの噴出を防ぐ装置をつけることのほか、ガス検知器で常に濃度を測ることなどを求めている。

 しかし、この対象になるのは、掘っている間だけだ。施設ができた後の天然ガス対策を求める条例などはない。

 温泉といえばこれまで、地盤沈下の心配や、成分、水質などの衛生管理面に目が向けられることが多く、ガス対策は法制度上の死角だった。

 室内に天然ガスがたまらないよう設備を整えることやガス検知器をつけることなどのルールづくりが必要だ。

 都会の温泉には危険があるという自覚は、施設を営む人たちにも薄かったのではないか。今回、爆発が起きた施設でも、ガス濃度の点検などをだれがすべきだったのか、施設の運営会社と保守管理会社で言い分が食い違っている。

 東京都はすべての温泉施設の実態調査を始めた。警視庁も業務上過失致死傷の疑いで捜査に乗り出した。徹底した原因解明を望みたい。

 都会にいて、温泉郷にいる気分を味わう。そんな癒やしを商品にするなら、それにふさわしい安全策が欠かせない。

【朝日・天声人語】2007年06月21日(木曜日)付

 日本の地図を眺めてみる。無味乾燥な記号が多い中で、温泉の●だけは味わい深い。地図上、山峡などにこの記号を見つけると、ランプの宿のひなびた風情が思い浮かんだりする。

 ビルの密集する姿からは想像しにくいけれど、東京にも温泉はある。深く掘りさえすれば湧(わ)くらしい。名うてのストレス都市である。癒やしを求める人は多いとみえ、娯楽やマッサージを備えた「都市型温泉」が急増している。

 その一つで惨事が起きた。従業員休憩室などのあった施設が、ごう音とともに爆発した。温泉水に含まれていた天然ガスが充満して引火したらしい。女性3人が犠牲になった。冥福を祈りつつ、入浴客のいる建物だったらと思うと、背筋はさらに冷たくなる。

 湯けむりの中に日常を沈めるのが、温泉の醍醐味(だいごみ)だろう。温泉好きで知られるドイツ文学者の池内紀さんは、それを「再生のいとなみ」だと言う。湯につかって、よみがえる。そう実感するには、温泉物質がほどよく溶けた素朴な湯でなくてはならないそうだ。

 事故のあった温泉では、地下1500メートルから温泉水をくみ上げていた。あまりの深さに、SF小説の古典『地底旅行』を思い出す。物語ではアイスランドの火山に地球内部への道があった。当節は東京の各所が「地底」とつながっている。そこから危険なガスも上がってくる。

 首まで湯につかれば体重は約9分の1になるという。疲れも憂いも忘れられるリフレッシュの場だ。安全への備えに怠りのない、やすらげる●であってほしい。

 ●は温泉マーク


【毎日・社説】

社説:教育3法改正 威圧の法にさせてはいけない

 教育関連3法(学校教育法、地方教育行政法、教員免許法)が改められた。教育現場をどう変えるのか。とことん詰めて問題認識や理解、運用基準など を共有するのが当然だ。しかし、迫る参議院選挙で与党の実績として掲げるべく「今国会で成立」を至上とされ、論議未消化の印象を強く残したまま成立してし まった。

 改正の骨子は、「我が国と郷土を愛する態度を養う」を義務教育の目標に規定▽副校長、主幹教諭、指導教諭の創設▽国の教育委員 会への指示・是正要求権の新設▽私学行政への教委の助言・援助規定▽教員免許の10年更新制と講習義務▽不適切な教員への指導改善研修--などだ。先の教 育基本法改正を受けたもので、安倍晋三首相が唱える「戦後レジームからの脱却」の一環と位置づけられる。

 私たちはこれまで、いきなり法 改正ありきではなく、教育の現状の何が問題なのか、それをどう変えるのか、現行制度でなぜそれができないのか、などを徹底的に検証し、そこから方策を探る べきだと提起してきた。実際、現行法や制度、学習指導要領が壁になって、今回の改正の目的としていること(教育委員会の責任明確化、教員の資質向上など) が阻害されてきたという実情はない。

 しかし、国会では現状を掘り下げた審議が不十分だったばかりか、法改正がどのように現場に適用され るのかも明確にされなかった。例えば、教委への国の介入は限定的、自己抑制的であることが求められるが、どんな場合に「発動」するのか、想定も定義も具体 的にできていない。教員免許更新制の「教員の資質向上や不適格教員のチェックという意味でも実効性が乏しいうえに、教員だけ更新制にする合理的根拠もな い」という批判にも答えきれていない。

 このままでは、教育現場が得心しないまま威圧感のみを与えることになりかねない。そうなると、マ イナス評価を恐れ、不祥事や問題を表に出さない傾向がますます強まるだろう。相次いだいじめ自殺や履修ごまかしで露呈した隠ぺい体質や無責任体制が法改正 論に追い風となったが、改正が逆効果になっては何にもならない。なのに拙速批判をものともせず通した改正が「首相の指導力」を示す方便というのでは「教育 改革は最重要課題」という言葉も泣こう。

 改まった法とどう向き合うか。どのようにプラス効果を上げるか。「上」から「下」への監視、締 め付けの弊害発生をどう避け、過度の管理に陥らないようにするか。法がそれを決めるのではない。運用し、適用される当事者にそれはかかっている。学校や教 委のみならず広く論議し、腐心して共通認識や運用ルールをはぐくむ必要がある。

 それでなくても「安倍教育改革」は教育再生会議など各種有識者会議や審議会などで意見、提言が入り乱れ、具体像を結びにくい。首相側が整理と十分な説明の責任を果たすべきである一方、その論議の方向を国民も見据え、身近に引きつけて考えたい。

毎日新聞 2007年6月21日 東京朝刊

社説:スパ爆発 天然ガスの安全対策を急げ

 屋根や壁が吹き飛び、鉄骨がむき出しになった建物 の映像が爆発のすごさを物語る。東京都渋谷区の女性専用温泉施設「シエスパ」の温泉くみ上げ施設で爆発が起き、女性従業員3人が死亡、けが人も出た事故 は、温泉水に混ざった天然ガスが分離後、施設内に充満し、何らかの原因で引火したためとみられている。

 警視庁は業務上過失致死傷容疑で、施設の運営会社や、保守点検を委託されている会社などを家宅捜索した。今後の安全対策や再発防止に役立てるためにも、一刻も早く事故原因を究明し、問題点を明らかにしてもらいたい。

  都心の閑静な住宅街がこれほどの危険と隣り合わせだったことに驚く。昨年1月に開業したシエスパはビルの中に風呂やサウナ、エステなどがそろい、会社帰り の女性らに人気だった。最近のスパブームで、日帰り利用が可能な都市型の温泉施設が次々に誕生している。しかし、東京、千葉などに広がる日本有数の南関東 ガス田をはじめ、地中には天然ガスが豊富にあり、温泉のくみ上げには危険が付き物だ。同様の施設は安全面の総点検を直ちに行う必要がある。

 身近な温泉施設であるにもかかわらず、驚くことに、危険な天然ガスを営業時に取り扱う際の法規制や安全管理基準などはなく、事実上の野放し状態だ。安全管理は業者任せになっている。国や自治体などは、温泉施設の安全管理対策を早急に整備すべきだ。

 温泉を掘削する時や、掘削のためのポンプを設置する時、公衆浴場として提供しようとする時は、温泉法でいずれも都道府県の許可が必要と定められている。ところが、許可に当たっての統一された安全基準はなく、判断は都道府県に委ねられている。

  掘削をめぐっては05年2月、東京都北区の温泉掘削現場で噴出した天然ガスが22時間にわたって燃え続ける事故が起きた。これを機に都は、掘削時の安全対 策指導要綱を策定し、ガス噴出防止装置の常時設置や、危険濃度に達すると警報が鳴るガス検知器を設置して常時測定することなどを掘削許可の際の指導の基準 にしている。

 しかし、営業時の安全対策は都も含めて手付かずのままだ。この際、国が率先して掘削時から営業時まで幅広く、安全上の規制に乗り出す必要があるのではないか。

  シエスパの運営会社は記者会見で、安全管理面は委託した保守点検会社任せだったことを明らかにした。その保守点検会社は毎日、温泉をどれだけくみ上げたか の確認はしていたものの、天然ガスを分離する装置の点検やガス濃度の測定は「契約内容に含まれていない」と実施していなかったという。ガス検知器などを設 置していたかどうかもはっきりしない。

 安全管理を怠っていたとすれば言語道断だが、安全対策を定める法制度などがないことも事故の背景にあるのではないか。新たな施設が増えるに従って、想定外の事故が起こってしまうこともある。知恵をめぐらし、事故を未然に防ぐ仕組みを整えることが急務だ。

毎日新聞 2007年6月21日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:日本人が世界一清潔な国民であることは…

 「日本人が世界一清潔な国民であることは異論 の余地がない。どんなに貧しい人も日に1度は町のいたるところにある公衆浴場に通っている」とはトロイを発掘したシュリーマンが幕末に訪日した際の観察で ある(「シュリーマン旅行記」講談社学術文庫)▲当時の欧米人を驚かせたのは、町中の多くの浴場、男女混浴、風呂の熱さだった。なかには集団入浴を見て日 本人を道徳的に蔑視(べっし)した人もいるが、そういう人は自らの文明のルーツである古代ローマ人が公衆浴場を愛した歴史を忘れていたようだ▲その古代 ローマ人は欧州各地で温泉を見つけて利用してきたが、現在のベルギーの温泉保養地スパもその一つという。一説にラテン語で「水による癒やし」という語句の 頭文字をつなげたという「スパ」は温泉保養地や施設一般を指す言葉となった▲東京都渋谷区で、そのスパの名を冠した温泉施設「シエスパ」の別棟が突然爆 発、3人の従業員の命が奪われた。まさに青天のへきれきというか、誰もが耳を疑う惨事である。爆発した建物の地下には温泉のくみ上げ装置があり、温泉にふ くまれていた天然ガスの滞留がその原因らしい▲最近の日帰り温泉の急増で温泉井戸は都内で144を数えるが、天然ガスの安全対策はその9割でなされていな い。対策のガイドブックは作られながら、温泉管理者に渡っていなかったともいう。災いをもたらす悪魔は人のうかつを見逃してくれない▲日本人の根っからの 温泉好きに、エステやリラクセーションのブームも加わっての昨今のスパ隆盛だ。だがそれも地底に広がる天然ガス田の上の宴(うたげ)だったと分かればさす がの風呂好きも青ざめる。ただ3人の生命を失わずとも、その安全対策はできたはずなのが悔しい。

毎日新聞 2007年6月21日 東京朝刊


【読売・社説】

教育3法成立 制度の具体化をぬかりなく(6月21日付・読売社説)

 安倍首相が掲げる「教育再生」への足がかりが出来たということだろう。教員免許更新制や、「副校長」「主幹教諭」ポストの新設などを盛り込んだ教育改革関連3法が成立した。

 教員免許法の改正で、教員の資格制度は一変する。現在は大学の教職課程で所定単位を修得すれば生涯有効な免許がもらえるが、2009年度からは10年の有効期限が設けられ、更新時に30時間の講習が義務づけられる。

 問われるのは講習の中身だ。現在ある「10年経験者研修」と似たようなものになっては、実効が上がらない。実際の講習と評価は各地の教員養成系大学で行うが、文部科学省による明確な認定基準の作成は必須である。

 教員免許更新制は、当初、指導力不足などの不適格教員を教室から「排除」することを目的に検討された。しかし、中央教育審議会は、教員の知識・技能の定期的な「刷新」のための制度とするよう答申し、その旨法案化された。

 不適格教員については教育公務員特例法の改正で対処し、「指導改善研修」の義務づけと、改善の見られない教員の免職などを明文化した。教育委員会には厳正な運用を望みたい。

 学校教育法の改正では、校長と教頭の間に「副校長」、校内の教師の取りまとめ役としての「主幹教諭」、他の教員の模範となり、給与面で優遇される「指導教諭」を置くことが可能になった。

 学校の組織運営力を強め、教員の意欲を高める効果が期待される。

 ただ、教員数を増やすことが難しい現状では、新しいポストに就く教員に過重な負担がかからないよう配慮が必要だ。能力と働きに見合った教員給与体系の再構築も、文科省の喫緊の課題である。

 この改正を受け、学習指導要領の改定作業も加速する。小学校英語の必修化の是非、教育再生会議が提言した授業時数10%増の具体化策など課題は多い。拙速を避け、じっくりと議論してほしい。

 地方教育行政法の改正で、いじめ自殺や履修漏れの放置など教育委員会に法令違反や著しい怠慢が見られた場合、文科相が「指示」や「是正要求」を出せることになった。

 「国の統制が強まる」と批判する声もある。しかし、地方に見過ごせない落ち度があった場合に是正に乗り出すことは、むしろ国の当然の責務だろう。

 文科省には、それぞれの制度を具体化する作業をぬかりなく進めてもらいたい。教育再生を実効あるものにするためには財政面での配慮も必要だ。首相の指導力にも注目したい。
(2007年6月21日1時37分  読売新聞)

温泉施設爆発 「安全」の盲点をつかれた惨事(6月21日付・読売社説)

 法令も安全基準もない。その盲点をつかれた惨事だ。

 東京・渋谷で女性専用温泉として人気を博していた施設が爆発し、従業員3人が死亡した。くみ上げた温泉に含まれる天然のメタンガスが建物内にたまり、引火したと見られている。

 都心の繁華街で温泉が掘られ、お湯が湧(わ)いているだけでなく、天然ガスも発生していた。都内の源泉の数は148に達し、最近10年で55か所も増えている。温泉掘削に伴い、東京以外でも、天然ガスが出ているところは少なくない。

 全国の温泉施設を点検し、再発防止の手を早急に打たねばならない。

 爆発事故が起きたのは、地下に温泉のくみ上げ設備がある建物で、浴場のある本館ビルとは別棟になっていた。もし浴場とくみ上げ設備が同じ建物にあれば、来館中の客と従業員約80人も巻き込まれていたかもしれない。

 東京の地下には南関東ガス田がある。源泉には多くの天然ガスが含まれているため、装置を使ってガスを分離することが必要だ。この時に発生したガスが建物外に排出されなかったらしい。

 ガス分離装置や換気扇が正常に機能していなかった可能性がある。そうした場合に警報を発するガス検知器が取り付けられていなかった。運営会社は、天然ガスの危険性について、きちんと認識していたのだろうか。

 運営会社と施設の保守点検を委託された会社から、互いに責任を転嫁するような発言も聞こえてくる。安全管理のどこに落ち度があったのか。警視庁は、業務上過失致死傷の疑いで捜査に乗り出したが、厳しく追及すべきだ。

 行政の在り方にも問題がある。

 温泉施設に関する法律は、温泉法と公衆浴場法がある。前者は環境省所管で泉源の保護と成分表示のルールなどを規定し、後者は厚生労働省所管で衛生管理などを定めたものだ。

 法律も所管官庁も縦割りだ。どこが責任を持って、この種の事故に対処するのか不明確だ。しかも、肝心の天然ガスの安全対策はすっぽり抜け落ちている。

 東京都は、2005年に都内の温泉掘削現場で噴出したガスが燃え続ける事故が発生したため、独自に安全対策ガイドラインを作った。しかし、これも掘削時の安全基準を定めはしたが、温泉施設が開業した後の安全対策にまでは踏み込まなかった。

 温泉の掘削ラッシュとも言える現状に縦割り行政で対応できるはずがない。関係行政機関が連携し、指導・監視する体制を作ることが必要だ。
(2007年6月21日1時37分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月21日付

 井上靖に花火師を描いた「生涯」という詩がある。筒の底に白 熱した鉄片を横たえ、手練の早業で火薬の玉を投げ入れていく◆「頭上はるか高く、己(おの)が打揚げる幾百の火箭(ひや)の祝祭に深く背を向け、観衆のど よめきから遠く、煙硝のけむりの中に…」、その人はいたという。火薬の玉に全神経を集め、目の血走る緊張に耐える人がいて、観衆は心おきなく夜空の華に見 惚(みと)れることができる◆花火に限るまい。娯楽を提供する側が花火師の「血走る目」を忘れ、危険からよそ見をすれば、楽しい祝祭は修羅場に一変する。 ジェットコースターから目を離した遊園地しかり、天然ガスから目を離した温泉施設しかり、である◆3人が死亡した東京都渋谷区の温泉施設 「SHIESPA」(シエスパ)の爆発事故は、源泉を地下からくみ上げる際に出る天然ガスに引火して起きたものとみられている◆施設を運営する会社は「保 守点検はビル管理会社に委託しており、爆発するという認識がなかった」と話す。委託された会社は「ガス濃度の点検は請け負っていない」と話す。ともに、あ ちらの責任と言いたいのだろう。花火師の目はクスリにしたくともない◆惨事が起きて初めて経営者が、そうか、わが社は火薬の玉を扱っていたのだな、と気づ く。ご遺族も霊前に供える言葉が見つかるまい。
(2007年6月21日1時36分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】教育3法成立 問われる教委の存在意義

 教育再生関連3法が成立した。教師の資質向上や教育委員会改革など、荒廃した公教育を変える重要な制度改革が盛り込まれており、今国会成立の意義は大きい。

 教育再生を最重要課題とする安倍晋三首相の意向を強く反映したのが、改正地方教育行政法に盛り込まれた教育委員会の改革だ。

 教委の機能不全ぶりについては、いじめ問題でも明らかになった。現状は、問題が起きた際には学校現場を支援し、解決に尽くすという本来の責務を果たしているとは言い難い。むしろ、責任を現場に押しつけ、実態を隠蔽(いんぺい)することさえあるのが実情だ。

 一部教職員組合となれ合い、毅然(きぜん)とした指導ができない教委も相変わらずある。教委改革は、こうした戦後の教育界の体質を変える意味がある。

 昨年10月に福岡県筑前町で起きた中学2年生のいじめ自殺をめぐる少年審判では、家裁が学校側の責任に言及し、「いじめへの問題意識がはなはだ希薄」と厳しく指摘した。こうした事件のたび、教委や学校には同様の批判が繰り返され不信が募っている。

 国会審議で伊吹文明文部科学相は、教委の役割を「ときには厳しく、ときにはあたたかくくるむ」ものとし、「それができていなかった」と述べた。教委の機能復活なくして、公教育への信頼は取り戻せないだろう。

  改正法では事務方まかせの体制を改め、教委が識見を持って学校活動を点検評価する責務などを明確化した。文科相の是正指示権も盛り込んだ。教委が法令違反 を犯したり、対応を怠ったりした場合には国が責任を持つ。いじめをひた隠しにするような教委は今後は厳しく指弾されよう。

 教委の指導力で改革を進める事例がある。東京都教委は国旗国歌の指導充実や都立高改革を進め、京都市教委は独自の学力向上策や生徒指導の充実で、公立高の人気を復活させた。茨城県教委は県立高校の道徳を必修化するなど注目を集めている。

 地方分権も教委の裁量を問うている。地方の実情に合わせた特色ある教育に力を発揮してほしい。安倍首相は「美しい国」づくりに最も大切なのが教育だと繰り返している。各教委は、日本の教育再生に重大な責任を負っていることを再認識してほしい。

(2007/06/21 05:04)

【主張】スパ爆発 癒やしに安全は不可欠だ

 東京・渋谷の女性専用温泉施設(スパ)で爆発事故が起き、従業員3人が死亡、8人が重軽傷を負った。地中から温泉水をくみ上げる際に混入する天然ガスが棟内に充満し、何かの原因で引火した可能性が高い。

 警視庁は安全管理上の問題がなかったかどうか、業務上過失致死傷容疑で運営会社の家宅捜索を行うなど捜査に乗り出した。

  爆発が起きたのは、入浴施設棟とは別の従業員更衣室や温泉水のくみ上げ装置がある棟だった。装置には温泉水から天然ガスを分離する機能は付いていたという が、はたして作動状態に問題はなかったのか。換気は十分だったのか。人が密集する都心での爆発事故だけに、原因を徹底解明し、再発の防止に努めてほしい。

 首都圏では女性を中心とした“癒やしの空間”として、エステに温泉やサウナなどを組み合わせたスパと呼ばれる温泉施設が人気を集め、数も急増している。温泉付きを売りものにしたマンション建設も目立つ。

 東京都によると、都内で申請・受理された温泉の掘削件数は、この10年間で1・6倍の144件まで増加した。背景には、安いコストで深くまで掘れるようになった掘削技術の進歩があるといわれる。

 しかし、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城の1都4県では、地下500~2000メートルの地層水に天然ガスが溶け込んだ日本最大規模の南関東ガス田が存在し、くみ上げる際の安全対策が重要課題となっている。

 平成16年7月には、千葉県九十九里町の「九十九里いわし博物館」で、地中から天然ガスがわき出し、引火爆発して2人が死傷している。翌17年2月には、東京都北区の温泉掘削現場で、やはり噴出した天然ガスが引火して丸1日燃え続ける事故があった。

 東京都や千葉県などは、一連の事故を教訓に、掘削時の安全ガイドラインを定め、天然ガスの遮断装置や警報検知器の設置を求めている。

 しかし、掘削後の日常的なくみ上げについては、特段の規制や義務規定はないという。渋谷の事故施設にもガス検知器はなかった。今回の事故を教訓に、さまざまな角度からの安全対策が必要である。

(2007/06/21 05:03)

【産経抄】

 敗戦後ウィーンの退廃を描いた映画「第三の男」は、チターの弦の音色が忘れがたい。主人公が水で薄めたペニシリンを売りさばいて、多くの犠牲者を 出した。日本の敗戦直後にも、粗悪な密造酒を飲んだ人々がやはり死んだ。ともに、戦後の混乱期にあって食うがための悪事である。

 ▼ところが現代のニセ薬や毒物入り練り歯磨き、化粧品のたぐいは、決して混乱期の産物ではない。なんといっても、4年連続で2ケタ成長を快走する中国発なのだ。ニセバイク、ニセDVD、ニセ家電は、すっかりなじんでしまって誰も驚かない。

 ▼だが、ニセ薬が好調経済の片棒を担いでいたとなると事は深刻だ。「秘薬」と称するニセ薬は、民間病院の薬品工場で堂々とつくられる。粗悪なカストリ焼酎なら酔いつぶれるのを承知で飲んでいただろうが、中国のそれは高級洋酒を装っているから始末が悪い。

 ▼ 悪漢たちはもうけ主義をひた走る。これには「国家食品薬品監督管理局」という仰々しい名の当局が、にらみを利かす形にはなっている。「毒」をもって毒を制 するはずなのに、そこは蛇の道は蛇であるらしい。この取り締まり当局の前局長がワイロをもらって、ニセ薬を認可したのだという。

 ▼「第三の男」は当局が犯人を下水道に追いつめ、占領下の日本でも経済警察の摘発は厳しかったと聞く。中国も全土に毒が回らないうちに解毒しないと、ワイロ付き商品など誰も買わない。いや、人のことは笑えない。

 ▼日本でも社会保険庁の役人が年金保険料の納付記録5000万件を宙に浮かした。あの朝鮮総連を監視する立場の公安調査庁の元長官が、差し押さえ逃れに一枚かんでいたとかいないとか。こちらも毒がタップリと回ってきている。

(2007/06/21 05:00)


【日経・社説】

社説1 パレスチナ分裂、和平外交の再構築急げ(6/21)

 パレスチナが分裂した。イスラム原理主義組織ハマスとパレスチナ解放機構(PLO)主流派であるファタハの抗争で、ハマスがガザ地区を武力で制圧 した結果だ。サウジアラビアの仲介に基づいて3月に発足した統一政権は崩壊した。パレスチナ自治政府のアッバス議長は危機管理内閣を立ち上げたが、ファタ ハ主導の自治政府は事実上、ヨルダン川西岸地区の政府にすぎなくなり、ハマスが実効支配するガザとの分裂状態は長期化する可能性が大きい。

  中東和平プロセスの基本構想は、ガザと西岸を版図とするパレスチナ独立国家を樹立し、イスラエルとの2国家共存体制をつくることだった。パレスチナ分裂に よって和平構想の前提は大きく変わり、政治的な障害もさらに増える。中東和平の灯(ともしび)を消さないためには、中断状態にあるイスラエルとシリアの和 平交渉復活など、包括的な和平外交の再構築を急ぐ必要がある。

 ブッシュ米大統領とオルメルト・イスラエル首相はアッバス議長を全面支援 することで一致し、米政府は昨年春から凍結してきた自治政府への直接援助を再開する。ファタハ側へのテコ入れによって、ハマス支配下のガザを孤立させ、ハ マスの弱体化を進める狙いだが、米国やイスラエルの思惑とは逆の展開になる可能性も小さくないだろう。

 昨年1月のパレスチナ評議会(国 会に相当)選挙でハマスが勝利し、ハマス主導の内閣が生まれた後、武力闘争放棄やイスラエルとの共存の意思を明確にするようハマスに迫る形で国際的な対パ レスチナ援助凍結の動きが広がった。だが、“兵糧攻め”によってハマスの力が弱まったわけではない。むしろ援助凍結によって経済力の弱いガザの状況がさら に悪化して政治的な反発も強まり、ファタハの地盤沈下が進んだ。

 イスラエルはアッバス議長をパートナーにパレスチナ側との和平交渉再開 を模索する一方、ガザと武力を前面に出して向き合う構図になる。イスラエル軍は 20日、ガザを空爆した。攻撃激化も予想されるが、現地の社会状況の一段の悪化を防ぐためにも、主要国、国際機関による人道援助の実施は不可欠である。

  ガザに新たな前線を抱えたイスラエルは、北の前線であるシリアとの関係の戦略的見直しを迫られる。イスラエルとシリアの和平交渉復活の成否が、今後の中東 和平プロセスで重要性を増す。支持率が低下気味のオルメルト政権が新たな和平路線に踏み出せるよう、外交環境を整えていく国際社会の努力も重要になる。

社説2 運用も問われる改正教育3法(6/21)

 教育改革に関連する3つの改正法が成立した。いずれも学校現場に与える影響は大きく、今後は文部科学省がこれらをどう運用するかを注視する必要がある。

 3法のなかで最も議論が高まったのは、教育委員会への国の関与を明確にした地方教育行政法の改正だ。教委の法令違反などにより児童・生徒の生命が脅かされたり、教育を受ける権利が侵されたりした場合、文科相は教委に指示や是正要求ができる。改正法はこう定めている。

 こうした規定に対しては法案化の段階から、地方分権に逆行し文科省の権限増大を招くとの指摘があった。同省が規定を拡大解釈して教委への画一的統制を強めるのではないかという不安がぬぐえないからだ。

 国会審議を通じても、この懸念が十分に解消されたとは言い難い。教委にどんな逸脱や不手際があった場合に指示や是正要求をするのか、その判断基準ははっきりしない。

 ただでさえ、教委は文科省の出先機関の役割を負い、その顔色をうかがっている。文科省がこの規定を背景に現場を萎縮させるようなことがあってはならない。あくまでも、万一の場合の「伝家の宝刀」にとどめて慎重に運用してもらいたい。

 ほかの2つの改正法にも、運用次第では教育の多様性や柔軟性を制約しかねない側面がある。

 教育職員免許法の改正では、教員免許を10年ごとに更新する制度を導入した。これによって本当に教員の質を向上させられるのか、不適格教員の排除につなげられるのかどうか、具体的な設計は今後の課題だ。

 一方で、免許更新制は文科省による一元的な教員養成・登用システムの堅持を前提にしており、教壇に幅広い人材を受け入れようとする流れとは必ずしも合致しない。免許更新制には一定の意義があるとしても、これだけが教員制度の改革ではないことを強調しておきたい。

 学校教育法の改正は、小中学校などに副校長や主幹教諭など新たな管理職を置くことができるようにしたのが柱だ。学校マネジメントを確立する効果は期待できるが、実際の運用は地域や学校の実情に即して考えればよいのではないか。文科省は画一的な対応は避けるべきである。

【日経・春秋】(6/21)

 世界の首脳が地球の温暖化対策などを語り合ったドイツのハイリゲ ンダム。バルト海に臨む美しい保養地が周辺に連なる。旧東独時代に開発が進まなかったせいか、結果的に古き良きたたずまいが残る街並みに今目立つのは、ス パ(温泉)やタラソテラピー(海洋療法)を名乗る宿だ。

▼日本のハマナスそっくりの花が咲く白砂の海岸。そこでの海水浴に加えて、ホテル やペンション内での様々な温水浴、海藻を使った全身マッサージなどで、女性客やリタイアした熟年夫婦客を集めている。美容と健康と癒やし。魅力的な入浴療 法を看板に掲げるのが、観光地、保養地の世界標準になりつつある。

▼わざわざ保養地や温泉地に出かけなくとも、都会でそれが気軽に味わえる。東京のど真ん中、繁華街渋谷と住宅地松濤の境に、女性専用の温水浴施設「シエスパ」は開業した。その従業員用施設で起きたガス爆発は、3人の命を奪った。メタンガスが原因という。

▼ 掘れば出る率は高い温泉列島、プログラムとサービスを競い、スパビジネスは伸びてきた。が、温泉と一緒に出てくるメタン対策は十分だったのか。石油の掘削 なら、随伴ガスの処理は基幹技術だ。煮炊きに使う都市ガスとメタンは全く同じ物質である。そのリスクを、事業者も行政も軽視してはいなかったか……。


※来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。それにつけても思い出すのは、あの日本の9・11、2005年9 月11日の小泉の郵政選挙でした。ほとんど小泉の詐欺的と言ってもいい「争点は郵政改革だけです、改革をやるんですかやらないんですか」のワンフレーズ、 やらなければ日本がまるで沈没でもするような迫り方でした。

 結果、われわれの目の前に現れたのは自公独裁体制・強行採決オンパレードの国会でした。

 いま振り返ってみると、特に朝日系列に顕著だった、小泉政権へのすり寄り、地方紙以外の中央主要マスコミの翼賛体制はひどいものでした。

 はたして、これから参院選までのあいだ、どのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存しようと考えました。以下の社説とコラムです。

地方紙:沖縄タイムス(社説コラム)、琉球新報(社説コラム)、東京新聞(社説コラム)、河北新報(社説、コラム)、京都新聞(社説コラム

主要紙:朝日(社説コラム)、毎日(社説コラム)、読売(社説、コラム)、産経(社説、コラム)、日経(社説、コラム

OLYMPUS Voice-Trek V-61 CE OLYMPUS Voice-Trek V-61

販売元:オリンパス
発売日:2007/03/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ブログ・インフルエンス、僕の「お勧めサイト&ブログ」から任意に選んで他のブログを調べてみました。

 「Bloginfluence 」Rate your influence in the blogosphereで調べました。

 今日現在です。1ヶ月換算推計アクセス数と言うことでしょうか。

 まず一般ブログ。自分の雑談日記も調べておきました。

 ほぼ実感とも合ってます。きっこのブログは別格として、AbEndにアクティブにPingを飛ばしているブログがやはり上位を占めてます。

 ヘンリー・オーツ氏が現在それほど活動していないのにこの位置と言うのはさすがです。今までの蓄積と言うことでしょうか。広島瀬戸内新聞主筆さとうしゅういちのブログが意外と上に来ている気もしてます。

 なごなぐ雑記はこれから伸びそうな予感。ちょっと一言は実力ブログと思いますので、AbEndにPingを送れば伸びるような気がします。

※全体をざっと見渡してみて、雑談日記作成のバナーをはっているブログが目立ちます。僕が作成したバナーがアクセスを伸ばしていると言うよりも、バナーをはってみると言う遊び心、心の余裕が訪問した人にビビビっと電気信号みたいに良い印象として伝わるのではないかと思っています。ネットウヨがさかんに雑談日記作成のバナーを中傷しているにもかかわらず、。(笑)

きっこのブログ    93184
カナダde日本語    37255.4
雑談日記(徒然なるままに、。)    35984
らんきーブログ    24404.8
カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの虚業日記    19846.4
きまぐれな日々    16043.3
喜八ログ    15164.5
反戦な家づくり    14758.9
BLOG版「ヘンリー・オーツの独り言」    14467.7
低気温のエクスタシーbyはなゆー    14251.9
とくらBlog    14040
薫のハムニダ日記    13751.4
ぬぬぬ? いろいろあるけど...明日晴れるといいね    13184.6
とむ丸の夢    11131.9
とりあえず    11047.4
広島瀬戸内新聞主筆さとうしゅういちのブログ    10686.2
Like a rolling bean (new) 出来事録    10026.9
らくちんランプ    9443
エクソダス2005《脱米救国》    9152
晴耕雨読    9009
晴天とら日和    8550.1
あんち・アンチエイジング・メロディ    8405.8
憧れの風    7662.2
嗚呼、負け犬の遠吠え日記    7415.2
ミクロネシアの小さな島・ヤップより    7368.4
Die Weblogtagesschau laut dem Kaetzchen    5786.4
多文化・多民族・多国籍社会で「人として」    4711.2
うみおくれクラブ    4316
タカマサのきまぐれ時評    4270
とりあえずガスパーチョ    4108
★遊牧民★のメディア棒読み!    3417.6
神州の泉    3077.1
人類猫化計画    2221.2
植草一秀氏を応援するブログ    1532.7
JIROの独断的日記ココログ版    865.8
なごなぐ雑記    764.4
ちょっと一言    276

 有名ブログを別枠で調べてみました。ここも実感とあってます。原田武夫国際戦略情報研究所公式ブログは内容からみてこれから伸びそうな気がします。

宮台真司のBlog    43650
保坂展人のどこどこ日記    33179.9
シバレイのblog    11947.6
山口二郎.com    8470
弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版    7248.8
原田武夫国際戦略情報研究所公式ブログ    543.4

 最後に9条ネット関連、天木さんに比べて、ZAKIさんが意外なほどに少ない。街宣の報告が多くて、ご自身からの意見・思いを述べるメッセージ発信が弱いからだと思います。あとでアドバイスしようと思います。

[公式] 天木直人のブログ - 日本の動きを伝えたい    15230.8
野生化の時代    3239.6

関連投稿
ぶいっちゃん、反戦な家づくりさん、そのほか、天木直人さんや9条ネットの趣旨を理解し共感しているすべての人々に訴えます。
2001年の第19回参院選から導入の比例代表の「非拘束名簿式」、政党名だけでなく、候補者名でもOKに、全ての護憲派は結集・利用すべきだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月20日 (水)

6月20日の地方紙:沖縄タイムス、琉球新報、東京新聞、河北新報、京都新聞 主要紙:朝日、毎日、読売、産経、日経の社説&コラムです。

 来る参院選は、これからの日本の運命を決定付けてしまう重大な選挙だと思います。

 「日本の9・11」衆院・郵政選挙では、特に朝日新聞(系列TVも含む)に見られた小泉政権へのすり寄りはひどいものでした。まさか産経と朝日が同じ論調になるとは思いもよらない事態でした。

 参院選投票日までに、これからどのようなマスコミをわれわれは目撃することになるのかここに資料として保存します。(資料保存スタート時の考え

※広告:SHARP 電子辞書 Papyrus パピルス PW-AT760-S シルバー 選べる手書きパッド/100コンテンツ収録 音声・カードスロット対応 


【沖縄タイムス・社説】(2007年6月20日朝刊)

[「集団自決」意見書]党派超えた対応が大切

 県議会がやっと高校歴史教科書の「集団自決(強制集団死)」の記述から旧日本軍が関与したとする文言の削除を求めた文部科学省の教科書検定意見について、撤回を求める意見書案をまとめた。

 沖縄全戦没者追悼式の前日、二十二日の本会議で採択する予定だ。

 「集団自決」に「軍命」や「軍の関与」があったことは、多くの戦争体験者の証言から明らかになっている。

 それが太平洋戦争末期の沖縄における実相であり、歴史的事実として忘れてならない沖縄戦の真実なのである。

 問題に危機感を抱き素早く反応したのは市町村だ。その多くが「「日本軍による命令、強制、誘導などなしに『集団自決』は起こり得なかった」とする意見書を採択している。

 だが、与党内部に意見の相違があったとはいえ、県議会は文科省の検定意見を撤回させることに逡巡し、きちんとした対応が取れなかった。

 少なくとも「この問題が政治的な主義主張の問題ではなく、実際に沖縄で起こった歴史的事実の問題」であることは誰の目にも明らかではないか。

 であれば、県議会が率先して動くべきであったのであり、その意味で対応の遅れには疑問を覚える。

 言うまでもないが、この問題を政治化させたのは、教科書を審査する「教科用図書検定調査審議会」に軍命がなかったかのような記述を調査意見書で求めた文科省側にある。

 軍命や軍による誘導、強制があったのに、それをなかったかのようにあいまいな表現にするのは恥ずべき行為であり、歴史に学ぶ謙虚な姿勢とは言えまい。

 それが安倍晋三首相の思想信条と軌を一にする流れであるなら、なおさらのことだ。史実をねじ曲げる動きを諌め、真実に目を向けるよう求めていくのは私たちの責務と受け止めたい。

 沖縄戦では、避難先の壕から兵士に追い出された住民は多い。方言しか話せなかったためにスパイの嫌疑をかけられた住民もいた。

 これは厳然としてある沖縄戦の実相と言っていい。そのことを文科省はきちんと把握すべきなのであり、「知らない」では済まされないということを認識する必要があろう。

 与野党が合意した意見書案は「沖縄戦における『集団自決』が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実」と記している。

 当然であり、歴史の歪曲は絶対に許してはならない。沖縄戦の史実を書き換える動きには、党派を超えて当たることが県議会の責務である。

[流出燃料調査拒否]なぜ「安全」と言えるのか

 またしてもと言うべきか。米空軍嘉手納基地内で約二千三百ガロン(約八・七キロリットル)ものジェット燃料が流出した問題で、空軍当局は県が求めている土壌などのサンプル調査を拒否した。

 理由は「周辺地域への被害および長期にわたる環境への悪影響はないと判断した」からだという。

 どのような調査をしたから、環境への影響がないと断言するのか疑問と言うしかない。安全と言い張るのなら、それだけの調査資料を提示すべきではないのか。

 これまでにも触れたが、嘉手納基地内と周辺には地下水源があり、県企業局北谷浄水場が基地内外にある二十三の「嘉手納井戸群」から一日約二万トンの水をくみ上げている。浄化した水は嘉手納町、北谷町、沖縄市、那覇市を含む七市町村に給水されている。

 つまり、水は県民の飲み水などに使用されているのである。もちろん嘉手納基地にも同じ水が供給されているのは言うまでもない。

 その「命の水」をきちんとした調査に基づく科学的データを示さず、ただ「大丈夫だ」と言われても県民が納得できないのは当然だろう。

 裏を返せば、県民には知られてはならない「環境への悪影響」があるために調査を許可しないのではないか。さらに言えば、調査する考えは全くない。米軍当局の態度を見ると、そう考えたくなる。

 私たちが「安全」にこだわるのは、かつて基地内から漏れ出た航空機燃料がそのまま地下に染み込み屋良区などの井戸を汚染した歴史があるからだ。

 油の匂いがする井戸水を汲んで火を近づけると、真っ赤な炎を出して燃え上がったという恐怖はまだ地域の人たちの脳裏から消え去ってはいない。

 県民に迷惑を掛けておいて、いざと言うときには日米安保条約における地位協定を盾に逃げる。これが「良き隣人」のすることなのであれば何をかいわんやだ。県もそのまま引き下がってはならず、県民の健康のためにも土壌調査を実施してもらいたい。

【沖縄タイムス・大弦小弦】(2007年6月20日 朝刊 1面)

 ユッカヌヒーは航海安全と豊漁祈願の祭りだが、子どもの健やかな成長を願う意味もある。かつては張り子の人形が売り出された。今では伝統工芸品である。

 出店でおもちゃが売られる光景はその名残だろう。貧しい時代でもこの日ばかりは少しぜいたくをさせてもらった。幼いころ、兄に連れられて映画館へ行ったら、買ってもらったばかりの水鉄砲をなくし、泣きべそをかいた思い出がある。

 二年ぶりに糸満ハーレーを見た。梅雨の最中のハーレーはあまり記憶にない。競漕に合わせて打ち上げられる花火の音と雷鳴を聞き間違えるような悪コンディションのなか、シンカたちは懸命に舟を漕いだ。

 最後を飾るアガイスーブ終了と同時にどしゃぶりに。ほどなくして小降りになったのを見計らって祝女殿内へ。祭りの無事完了を神へ感謝する重要な儀礼の場だ。ところが今年はノロがいない。厳かな祈りの空間が見られないのは残念だ。

 村ごとに殿内を訪れたハーレーシンカの若者らは戸惑いながらも先輩の指示に従って線香を上げ、手を合わせ杯を受けていた。エークを手に堂内や庭で円陣を描きながら歌うハーレー歌も妙に寂しげだった。

 漁協の会場はイベントでにぎわっていた。さっきまでいた祝女殿内の寂しい状況とは好対照に。時代や社会の変化に伴って地域の伝統行事の正しい継承も難しくなる。しかし、祭りの根幹にある沖縄の精神文化は大事にしたい。(真久田巧)


【琉球新報・社説】

米軍調査拒否 立ちふさがる地位協定の壁

 米軍の対応は県民軽視も甚だしい。嘉手納基地内で起きたジェット燃料漏れ事故で、県が求めていた基地内の土壌採取調査を拒否したからだ。
 嘉手納基地内で約2万リットルの燃料が漏出、約8700リットルが回収できないという事故が5月25日に発生した後、県文化環境部環境保全課、県企業局は6月7日に基地内で現場を確認したが、土壌採取や写真撮影は許可されなかった。
  その後も土壌採取を求めていた県環境保全課に対し、米空軍第18航空団は18日「基地幹部が技術官や環境保全官、上級司令部と協議し、周辺地域への被害、 長期にわたる環境への悪影響はないと判断した。地元関係者による、さらなる検査や調査は必要ない」などと、ファクスで回答した。
 米軍が「悪影響はない」といくら繰り返しても額面通り受け取る人が果たして何人いるだろうか。
 「周辺地域への被害はないと判断した」というのは米軍の一方的な見解にすぎず、客観性が欠如している。
 県や地元自治体が詳細な調査を実施した上で「問題ない」という結論が出ない限り安心できない。
 米側は回答文の中で「県内の政府機関、地元自治体関係者に現場への立ち入りを許可し浄化作業や環境保全の手順の情報を提供した」と述べているが、土壌採取による調査を認めない理由などは一切示されていない。
 しかも県に対し一方的にファクスで回答文を送りつけただけで、電話連絡なども一切なかったという。「問答無用」の姿勢が顕著だ。
 これでは県民の不信感は増すばかりである。
 ジェット燃料が時間をかけて地中に浸透し地下水を汚染する恐れはないのか。この間の豪雨で汚染が拡大してはいないか。地元には懸念の声が強い。
 パイプ破損で地下水を汚染した嘉手納基地のジェット燃料が、周辺の井戸に浸出し、くんだ水が燃えるという事態が1967年に起きている。今回の事故で、当時の「燃える井戸」を思い起こした地元住民も少なくない。
 燃料漏れ事故に対しては、北谷町議会、嘉手納町議会、沖縄市議会が抗議決議を全会一致で可決し、自治体による立ち入り調査を認めるよう要求している。
 米軍が、県や地元自治体の基地内調査を拒否できるのは日米地位協定第三条(施設・区域内の合衆国の管理権)によるものだ。理不尽で不平等な地位協定を改正する以外にない。立ち入り調査は、危険な基地と隣り合わせに暮らす住民にとって当然の要求だ。
 米軍は、基地内での土壌採取などの調査を直ちに認めるべきである。「よき隣人」を目指すのなら、まず態度で示してもらいたい。

(6/20 10:00)

表示違反 原産地の明示が信頼生む

 ベトナム産が含まれているにもかかわらず、すべてが県内産のように誤解させる紛らわしい表示を商品カタログやホームページに掲載したとして、公正取引委員会が琉球ガラス工芸協業組合など3事業者に対し、景品表示法違反(原産国の不当表示)で排除命令を出した。
 観光客が沖縄産と思って買い求めた土産品が実際は海外で製造されていたというのでは県産品全体のイメージダウンを招きかねない。
 海外の工場で製造したのなら、その旨をきちんと明示し、了解の上で購入してもらうことが何よりも大切だ。それによって、純県産品の差別化が図られ、信頼性を高めることになるだろう。
 今回、排除命令を受けたケースでは、通信販売用カタログに掲載されている商品の約7割がベトナムの現地法人で製造されていたにもかかわらず、すべてが県内産であるかのように表示していた。
 直営店の商品については既にシールを張り替えて訂正したほか、カタログやホームページも6月末までに変更するという。
 業者は「決して故意ではなく、勉強不足と認識の甘さによるものだった。速やかに改善する」と説明している。
 原材料費や人件費が安い海外では、少ないコストで労働力を確保できるメリットがあるため、その分、低価格で商品を提供できる。
 観光客の需要に応え、より安い経費で品質の高い土産品を製造しようと、海外に工場を建設する県内企業も出始めている。
 中には、純粋な沖縄産と比べても、ほとんど遜色(そんしょく)のないような製品もあるようだ。
 公取委も指摘しているように、海外に生産拠点を設置し生産拡大を図る企業努力自体を否定することはあってはならない。
 重要なのは原産地、原材料、製造方法などの情報を正確に表示することだ。その上で、どちらを選ぶかは消費者に判断してもらえばいい。
 昨年、沖縄には過去最多の560万人余の観光客が来県した。土産品の不当表示が横行するようでは観光産業にも影響しかねない。

(6/20 9:59)

【琉球新報・金口木舌】

 東京・青山のライブハウスで「まるで六文銭のように」と題するコンサートを見た。出演者は1970年代初めに活躍したフォークグループ・六文銭の元メンバーの小室等、及川恒平、四角佳子の3人
▼ステージの後半、「戦争」をキーワードに大岡信、谷川俊太郎らの詩に曲を付けた作品が並んだ。「幾時代かがありまして 茶色い戦争ありました」で始まる中原中也の「サーカス」も取り上げられた
▼いずれも反戦詩というわけではないが、「サーカス」を歌い終えた後、「こういう詩が教科書からなくなるかもしれない」とメンバーの一人が不安げに語ったのが印象に残った
▼言葉にこだわり、現代詩の楽曲化に挑んできたフォーク歌手は“放送禁止”という壁と闘ってきた。為政者に都合の悪い言葉を消し去ろうという動きには敏感だ
▼今回の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に関する記述から「日本軍の軍命・強制」の文字が消えた。犠牲者がなぜ自ら命を絶たざるを得なかったのか、検定後の記述から読み取ることはできない
▼集団自決の生存者は、今も癒えぬ心の傷を抱えたまま23日の慰霊の日を迎える。事実の重さを直視せず、言葉のみを消そうとする人たちの鈍感さに怒りを覚える。

(6/21 9:42)


【東京新聞・社説】

消えた年金 まだ全容が見えない

2007年6月20日

 “消えた年金”問題で、納付の証拠がない場合の給付の妥当性を判断する第三者委員会の発足が正式に決まった。同時に進めなければならないのは、手書きの紙台帳など関係する情報の全面開示だ。

 第三者委員会の当面の任務は、保険料納付の際の領収書に代わるものとして、預貯金通帳、家計簿、関係者の証言などをどこまで認めるか、その具体的な指針づくりだが、一人でも多く給付に結びつく内容にしてもらいたい。

 もっとも第三者委員会の設置で問題が解決するわけではない。年金記録管理の実態が依然不透明なのだ。

 政府は先月、社会保険庁のオンラインシステムに入力されていて該当者不明の約五千万件の納付記録について一年以内に照合作業を終えることを明言した。対象者が判明して年金の差額分を請求する場合に五年の時効をなくす法案を、社保庁改革法案とともに衆院で強行採決した。

  その後、五千万件とは別にオンラインに未入力の厚生年金の納付記録が千四百万件、船員保険の記録が三十六万件あり、一部が該当者不明になっていることなど が分かった。いずれも野党に追及されてボロボロ出てきたものだ。この分だと、隠された記録不備がさらに明らかになる可能性がある。これでは保険料を納付し た国民の不安は高まるばかりだ。

 その払拭(ふっしょく)には、関係する全資料の開示が必要である。まず、年金の納付記録をすべての加入 者に送付することだ。社保庁は三月から三十五歳になった加入者に納付記録を伝える「ねんきん定期便」を始めたが、いま必要なのは「臨時便」だ。正しい納付 記録を確認しないと加入者は安心できないだろう。

 国民年金の納付記録の原本である手書きの紙台帳を全国の自治体の約一割が廃棄したが、その自治体名を公表することも必要だ。オンラインから漏れていても、自分が保険料を納付した自治体が台帳を廃棄していないことが分かるだけでも、いまの混乱状態は多少でも和らぐだろう。

 さらにどこにどんな紙台帳やマイクロフィルムが残っているか、データベースをつくることも必要だ。そのうえで全加入者について、台帳、マイクロフィルムとオンラインを照合し、オンラインの入力ミスをただすべきである。

 総務省には先に今回の問題の「検証委員会」が設けられた。必要な作業だが、歴代の社保庁長官や労働組合の責任追及だけでは行方不明の年金記録の回復にはつながらない。

 政府がいま全力で取り組むべきは“消えた年金”記録を一件でも多く元に戻すことである。

イラク特措法 説明不足は不信を招く

2007年6月20日

 イラク復興支援特別措置法の期限延長が、成立する見通しになった。航空自衛隊の輸送協力の実態などをめぐる政府の説明は不透明だった。出口戦略も含め、説明責任を果たし続けねばならない。

 イラク特措法の二年間延長が参院外交防衛委員会で可決された。近く本会議で成立する見込みだ。

 特措法は、戦争の大義や現地情勢など前提条件が制定時から大きく変化した以上、詳細な再点検が求められた。それが、参院の委員会で約十五時間審議した段階で、与党が野党の反対を押し切って採決に至ったのは残念だ。

 審議で解消されなかった疑問のひとつは、イラク戦争で米国を支持した政府の判断をめぐる問題だ。

  米英両国は、イラクの大量破壊兵器保有に関する情報が誤っていた事情は認めたものの、武力行使の決定については謝罪していない。審議では、政府は米英両国 のこうした態度を引き合いに出し、自らの判断の失敗を認めなかったが、空輸協力の継続にあたっては、政府の道義的な責任の清算が先決ではないか。

 空自の輸送協力は、イラクから陸自部隊が撤収した後、内容や目的が大きく変質したとみられる。陸自のため物資を輸送する任務がなくなれば、米軍を中心とする外国や国連の要員、機材を輸送する任務に重点が移ったに違いないからだ。

 今後の空輸協力の意義を判定するには、実態に憲法上の問題がないことを確認せねばならないのに、情報開示はきわめて限定的だった。

 政府は、情報を明かすと、輸送する要員らの安全にもかかわると説明する。しかし、審議の中で、情報不開示の要請がいつ、どこで、だれから伝えられたのかという質問に対してさえ答弁を控えた政府の姿勢は、理解できない。

 米軍に対する協力の比重が大きくなっているとすれば、背景には、安全保障分野における日米間の信頼関係があるはずだ。しかし、北朝鮮問題などに対する日米両国の協力への影響といった“本音”の議論は深まらず、もどかしさが残った。

 空輸協力の意義の確認は、支援終了の条件の整理につながる。政府側はイラクの政治や治安の状況、多国籍軍の活動の変化など、さまざまな要素を総合的に判断して空自撤収時期を考えるとしているが、さらに具体的な基準を検討すべきだ。

 特措法延長後、空輸協力の妥当性をめぐる説明がおろそかになれば、政府の信頼が損なわれる。特措法延長を成立させた国会も、監視する責任を忘れてはいけない。

【東京新聞・筆洗】2007年6月20日

 憲政の神様といわれる尾崎行雄は九十三歳で『わが遺 言』と題した本を著している。無形の財産である知識や経験は年とともに増し、死ぬ前がもっとも豊富になる。故に最後まで利用の道を考えねばならぬ。これが 尾崎の考え方だった。<越し方は今より後のしるべぞと/知れば貴し悔いも悩みも>という一首も残している▼国会はいかにあるべきか。「遺言」に耳を傾ける と、「打ちとけて国家全体のために懇談熟議すべき場所」と論じている。熟議とは「おのおの己の主張はあるけれども、それはごく穏やかに述べてお互いに譲 る」ことを意味する▼現在の国会を尾崎はどう論評するのだろう。会期末が迫る中、年金記録の不備に対応する特例法案や社会保険庁改革関連法案など、まさに 重要法案をめぐり与野党が全面的に対立している。熟議の世界とはほど遠い▼政府と与党の論理では、法案を成立させることが責任を果たすことになる。参議院 における「数の力」で野党の抵抗を封じていくのだろう。安倍晋三首相には、下降した内閣支持率を反転させるには強い指導力を発揮することが必要、との判断 があるのかもしれない▼もちろん無制限で審議を続けるわけにはいかない。審議を尽くしたら採決を行うのは当然だ。しかし政府と与党は、衆院の七割から八割 の審議時間を参院で確保することを採決の判断基準にしているという。それで審議を尽くしたとは言えない▼参議院選挙も迫っている。国会で熟議できないこと は、国民に直接判断を仰げばいい。小泉政権に例がある。


【河北新報・社説】

「骨太の方針」/中身の薄さが気になる

 自民党はこれで夏の参院選を戦えるのだろうか。また国民に何を問うというのか。きのうの閣議で決定された安倍晋三政権初の「骨太の方針」のことだ。

 政権政党が政府のこの重要政策方針を参院選公約の下敷きとするのはいいとしても、中身は「生煮え」「先送り」「ばらまき」のオンパレード―と言われても仕方がない。

 「生煮え」の代表と言えば、地域格差是正策として、個人住民税の一部を故郷や世話になった自治体などに納められるとする「ふるさと納税」である。

 「骨太」は税の実現に向け「検討する」と言うが、総務省の研究会は6月に検討作業を始めたばかりで、税をどんな仕組みにするか全く詰まっていない。

 第一、大都市部と地方の税収格差を縮めるのに、国税ではなく個人住民税という地方税を原資にするとすれば、それは説得力がないのではないか。地方の側から「まずは地方交付税の財政調整機能を生かせ」などという声が出るのも当然だろう。

 参院選の勝敗を左右するのは改選定数1人の地方選挙区と言われるだけに、地方受け戦術を重視したいのは分かる。しかし、イメージ先行の公約では住民が戸惑うばかりではないか。

 「先送り」とは、昨年の「骨太」が「2007年度をめどに改革を」と明記したはずの消費税の議論を完全に封印し、参院選後のテーマにしたことだ。

 「骨太」をつくった政府の経済財政諮問会議の消費税論議は、自民党税制調査会の津島雄二会長が4月に「税制は参院選の焦点にすべきでない」と発言したことなどを受け事実上のタブーになったいきさつがある。

 もっとも、前回の参院選で、年金一元化の財源に消費税率3%引き上げを公約した民主党も今回の公約では撤回している。つまり有権者は消費税論議に目隠しをされたまま、参院選を迎えなければならないわけだ。

 選挙対策で「痛み」を先送りするのはいつものことだ。が、税制という国民生活に直結する重大なテーマの信を選挙時に問わずしていつ問うというのか。

 小泉純一郎前政権時代の「骨太」は構造改革の「誓文」のようなものだった。それもそのはずで、当時の経財諮問会議は実質的に政府の各種審議会や諮問機関などの最上位に君臨し、改革推進のために各省庁の省益や自民党の族議員の動きを強く押さえつけていたからだ。

 しかし今回は、同会議の民間議員が提案した「公共事業費3%削減」が、地方重視を求める国土交通省側の反対で消えた。

 大田弘子経済財政相も「歳出削減計画を守るのは想像以上に難しい」と与党や省庁の歳出増圧力が強かったことを認める。

 公共事業削減の善しあしは別にして、「ばらまき」や族議員が息を吹き返す兆しである。

 今回の「骨太」は責任感に欠ける公約が散見される点で「骨細」の印象があるし、重要なテーマで信を問うことをしていない点で空虚な印象が残る。

 経財諮問会議が霞が関や永田町との調整機関に後退したのなら、その役目は終わった。

2007年06月20日水曜日

【河北新報・河北春秋】

 歴史遺産は身近な所にもある。明治から昭和初期にかけて築かれた建造物を「ヘリテージ(遺産)」と呼び、価値を見直そうという動きが、全国的に広 がってきた▼観光スポットに加え、工場や倉庫から一般住宅まで、対象は幅広い。探訪記をホームページに載せたり町おこしに活用したり。レトロな雰囲気に癒 やしを求める現代人の心をつかんでいる

 ▼ いわき市では1月、「ヘリテージツーリズム協議会」が発足した。かつてまちを支えた炭坑の跡や関連施設などを観光資源として売り出すのが狙い。「産業遺産 を地域の宝としてアピールしたい」と関係者は意気込む▼一方で、老朽化する建造物の維持・保存が共通の課題として浮上してきた。所有者の財政的負担は大き い。登録有形文化財でも補修費などへの支援制度は不十分。取り壊しを望む所有者は多いという

 ▼問題解決に向け先月発足したのが、米国人 建築家ヴォーリズの作品保存を目指す全国ネットワーク。近代建築史に独自の足跡を残したヴォーリズの功績紹介に乗り出した▼作品は東北にも残る。福島市の 福島教会はヴォーリズが日本で最初に手掛けた教会だ。建造したのは宮城県の大工。ヘリテージには誕生をめぐるさまざまな物語がある。物語が広く語られるよ うになれば、保存への道も開ける。

2007年06月20日水曜日


【京都新聞・社説】

昇降機点検  安全性認識のずれ怖い

 六本木ヒルズ・森タワー(東京)の今年四月のぼやの原因となったエレベーターロープのストランド(金属線の束)破断が各地で同様に見つかっている。
 国土交通省はその都度、緊急点検を指示しているが、事態を重く見て業界大手五社に過去一年間のエレベーター点検記録調査を命じた。
 その結果、国内エレベーターの約八割にあたる約五十万基のうち四十二基でストランド破断があったことが判明した。
 いずれもが、年一回の定期点検や日常の保守点検で「問題なし」とされた後、発覚していたことは重大だ。
 点検不十分の可能性が高いが、業界が「まれではあるが破断もあり得る」として、危機意識が薄いのが気になる。
 エレベーターはかごをつる複数のロープがすべて切れても安全装置が働いて落下しないように設計されている。
 だがそれに安心して点検をおろそかにしていると重大事態を招きかねない。破断を甘く見てはならない。
 ストランド破断の推定原因では、経年劣化が十五基、異物が金属線を傷めたのが七基と多かった。さびによる劣化、異常摩耗といった深刻な原因と考えられるものや、新設一年以内の破断もあった。
 ストランドは金属素線約二十本を寄り合わしたもので、ストランド六-八本で一本のロープができる。
 エレベーターは建築基準法で年一回、法定検査が義務づけられ、JISの検査標準では素線が五本以上切れていればロープごと交換するとしている。
 日ごろしっかり点検し、適正にロープ交換していれば、ストランド破断はまず考えにくい。
 国交省も今回の破断を「率直にいって多い」と憂慮し、「あってはならないこと」と厳しく受け止める。
 だが日本エレベーター協会は「メーカーごとの差は別として、一万基に一基弱という数字」で、この程度の破断はあり得るとして重大視するふうがない。
 かごをつるロープの金属素線がプツプツ切れていると思うと恐怖感が募るが、国交省と業界でこれだけ安全性への認識がずれるのは驚きだ。業界の認識は甘いと言わざるを得ない。
 避難騒ぎとなった森タワーのぼやは切れた金属線がこすれて発火した。他のエレベーターのストランド破断で異常音に気づいた人が連絡したケースもあった。
 不十分な点検となるのは、対応能力に欠ける一部業者があったり、設置ビル側の都合で十分な時間が取れないケースや経費問題で適正なロープ交換ができない場合も考えられるだろう。
 だが最大の問題は、現行制度ではエレベータートラブルは人身事故でない限り直ちに行政報告する義務がないことだ。業界の安全意識を高めるためにも、事故報告の義務化など点検のあり方を総合的に検討し直すべきではないか。

[京都新聞 2007年06月20日掲載]

年金第三者委  判断基準を早急に示せ

 年金保険料を確かに支払ったが、証明する領収書が手元にない。そのような場合でも年金を支給するのが可能かどうかを審査する政府の「第三者委員会」が設置される。きのう閣議決定された。
 年金の記録漏れなどの問題は、社会保険庁のずさんな管理によって引き起こされたものだ。国には一人でも多くの国民の不利益を償う責任がある。第三者委を実効性のある仕組みとして十分に機能させなければならない。
 第三者委は、総務省に中央第三者委、全国五十カ所の同省出先機関(行政評価事務所など)に地方第三者委を置く。弁護士や社会保険労務士、税理士などに委員を委嘱し、合議で審査する。
 中央第三者委は二十五日に初会合を開き、地方で個別審査する際のガイドラインづくりに着手する。地方第三者委は来月半ばの発足が予定されている。
 運用などについては課題も多い。地方第三者委は、社会保険事務所で年金記録を確認できなかった人たちを対象に審査するが、どの程度の証拠があれば支払ったと判断されるのかが明確でない。一番知りたいのはそこだ。
 給与明細書や、年金保険料を引き落とした金融機関の通帳があれば有力な証拠になろう。では家計簿ならどうか。直接間接に証明できる文書類がない場合、口頭での説明ではだめなのか。雇用主の証言なども要るのか。
 そうした疑問に答えるためにも、中央第三者委は早急に判断基準を示してもらいたい。
  これまで社会保険事務所の窓口に照会があり、支払った記憶があるのに「記録がない」と却下された事例は約二万件に上る。これらの人たち以外に記録漏れに まったく気づいていないケースも相当数あるだろう。審査にあたっては、申し立てをした人の思いを十分にくみ取り、可能な限り年金の支給を認めるべきだ。
 地方第三者委は十人以内の委員で構成し、必要に応じて臨時委員や専門委員を置くことになっている。申請状況をみて万全の審査態勢をとってもらいたい。
 総務省は、行政評価事務所から遠い地域の住民負担を軽減するために、各市町村に配置されている総務相委嘱の行政相談員(全国で約五千人)が必要書類などについて事前相談にあたることを検討している。だが住民にはなじみが薄い。利用方法など十分な広報が必要だろう。
 同時に、社会保険事務所での親身な対応を求めたい。第三者委を通じた措置について丁寧に説明し、アドバイスを惜しんではなるまい。
 「宙に浮いた」年金に、「消えた」年金。さらに未入力や重複、廃棄…と底なしの様相だ。対象者全員に、個々の全納付記録を送り、チェックしてもらうことが先決だ。心配だったら申し出なさい、とでもいわんばかりの姿勢では、国民の年金への不満や不信はぬぐえない。

[京都新聞 2007年06月20日掲載]

【京都新聞・凡語】

奥只見ダム湖                                        

  四国の水がめ早明浦ダムが、またピンチだという。貯水率が30%を切るのも目前で、第三次の取水制限が始まっている▼干上がるダム湖の一方で満々と水をた たえるダム湖もある。六億百万トン、日本一の貯水量を誇る奥只見湖(新潟、福島県)を先日訪れ、雄大さに目を奪われた。新潟県側の最深部から奥只見ダム堤 まで、観光船で渡ると四十分の小旅行になった▼水量の豊かさは「一年の半分が雪」という立地条件からだろう。越後駒ケ岳はじめ周囲の山々は、六月でも稜線 (りょうせん)のあちこちに雪を抱く。湖が干上がった年はないのか。電源開発会社の奥只見電力館でただすと「聞きませんねえ」▼奥只見ダムは、戦後不足し た電力をまかなうため建設された。二〇一一年に五十歳を迎える。出力五十六万キロワットは、水力発電では国内最大。その取水口は水深二十五メートルの浅い 場所にある。水量に自信があるからできる構造だ▼故人で作家の開高健さんは、奥只見の自然をこよなく愛した。開高さんらの活動が実り、湖に注ぐ北の又川は イワナなどの魚が通年禁漁とされている。川の魚は湖に至り、より大きく育つようになった▼ダム開発は功罪を伴う。時に自然に手ひどい傷を与える。奥只見湖 でも豊かな水を得る代わりに、多くが失われていよう。どこまで取り戻せるか、自然の回復力を後押しする人間の活動を止めないことだ。

               

[京都新聞 2007年06月20日掲載]


【朝日・社説】2007年06月20日(水曜日)付

骨太の方針―「構造改革」の旗が消えた

 「美しい国」へは、痛みを伴わずに行けるものだろうか。

 安倍内閣最初の骨太の方針が19日決まった。じつに盛りだくさんの政策が掲げられている。しかし、「痛み」については、ほとんど語られていない。

 たとえば、高齢化社会を支えるためには避けられない負担増への道筋は提示していない。経済のグローバル化に立ち向かうため欧米と経済連携協定(EPA)を結ぶには、農業などの国内改革が不可欠となるが、そこにも踏み込んだ記述が見当たらない。

 その一方では、近づく参院選を意識してなのか、「ふるさと納税」や「地域力再生機構」の検討といった、地方の票田への目配りが目立つ。

 こんどの方針を象徴しているのが、その正式名称だ。昨年までの「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」を、今回は「経済財政改革の基本方針」に変えた。「構造改革」の文字を消したところに、安倍首相の本音が垣間見える。

 そもそも構造改革は、小泉政権の旗印だった。「改革なくして成長なし」と唱え、痛みに耐えるよう訴えた。

 その総設計士だった竹中平蔵氏は、こう位置づけた。「失われた10年」といわれた長期不況の泥沼から再生するには、たとえ当面は痛みがあっても、長期的視点に立ち、病んでいる経済社会の基礎体力を徹底して強化する、と。

 不良債権の抜本処理や規制緩和、民営化を大胆に進め、政官業による既得権を排除する、という路線である。

 安倍政権はこれを引き継いだはずだった。だが、じっさいには構造改革との距離をだんだんと広げてきた。

  昨秋には、小泉改革の本丸だった郵政民営化に反対した国会議員の復党を許し、暮れの道路特定財源の改革は早めの妥協で頓挫した。その後はさしたる改革策を 打ち出さず、来年度予算の公共事業費削減でも数値目標を出していない。政策の立案も、各省庁の官僚組織に委ねる手法に回帰してきた。

 今回の骨太の方針は、前政権の構造改革路線から抜け出したい、との意思表示と受け止めるべきだろう。

 たしかに一方では、改革がもたらした副作用が問題になっている。賃金が低く昇給の見込みがない非正社員が急増したことに対して、安倍政権は「再チャレンジ支援策」に乗り出した。

 しかし、支援策が中心にしているはずの25~35歳の世代では、安倍内閣の支持率が他世代にくらべ目立って低い。支援策が不十分なせいだけではない。改革姿勢の後退に対して批判が強いのだ。

 05年秋の郵政総選挙で、この世代が小泉改革の支持に回り、自民大勝の原動力になったのとは正反対だ。

 骨太の方針は、参院選に向けて、安倍政権の経済政策面での公約である。こうした路線に対して、有権者はどんな審判を下すだろうか。

パレスチナ―分裂より和解への努力を

 パレスチナ自治が分裂の危機に陥っている。イスラム過激派のハマスと解放闘争組織ファタハの武力抗争が激化したためだ。非常事態宣言の下で首相が解任されるなど、事態は深刻さを増している。

 自治区のうち、エジプト国境に面したガザをハマスが制圧した。これに対して、ヨルダン川西岸にいるファタハ出身のアッバス自治政府議長は、ハマス系閣僚を排除した非常事態内閣を指名した。

 だが、ハマスはこれを拒否した。ガザと西岸の二つに分かれて両者がにらみ合う構図になっている。

 発端は06年の自治評議会選挙で、ハマスが多数派を握ったことだ。94年の自治実施以来、自治政府を独占してきたファタハが政権を失い、ハマスによる新政権との対立が深まっていった。

 米国や欧州連合(EU)は、自治政府への支援を停止して圧力をかけた。サウジアラビアの仲介で今年3月、ハマスとファタハの連立政権が誕生したが、米欧の冷たい態度は変わらなかった。

 今回の危機で、米欧はアッバス議長支持を打ち出し、制裁を解除して支援再開を表明した。ハマス排除を歓迎してのことだ。しかし、それでは分裂が固定化され、危機を深めることにならないか。

 第一に、欧米の支援を受けたファタハが、西岸でハマス排除を強めると予想される。しかし、ハマスは西岸でも支持基盤を持っており、抗争がますます激しくなる危険がある。

 第二に、ハマスが支配するガザが封鎖されて孤立化すれば、飢餓などの人道的な危機が進む。イスラム社会全体に反米欧の機運を生みかねない。

 ハマスは、イスラエルとの和平を目指したオスロ合意を受け入れず、イスラエルの存在も認めようとしない。それが政権を握ってしまったことへの、米欧などのいら立ちは理解できる。

 だが、彼らが民主的な選挙で勝利したことも忘れてはならない。ファタハが敗れたのは、援助の私物化といった腐敗が目に余り、人々の信頼を失ったからだ。

 5月に退任した国連中東和平担当特別調整官のデソト氏は「国連は対話を通じてハマス政権の変化を促すべきだった」「ハマスはうまくすれば、イスラエルとの共存をめざす現実路線をとる可能性があった」と内部報告書で書いている。

 ハマスの背後にある民衆の支持に目を向けなければ、本当の安定は得られないとの見立てである。私たちはこの見方に賛成だ。

 パレスチナは中東の紛争の根っこである。その混乱は中東全域、さらにはイスラム社会全体に影響する。危機が進めば、アルカイダなどの過激派に格好の宣伝材料を与え、世界に新たな危機の種をまき散らす恐れがある。

 いま一度、サウジやエジプトなどアラブ有力国が、パレスチナ両派の和解に動き出すよう求めたい。日本も、和解を促す立場から外交努力を強めるべきだ。

【朝日・天声人語】2007年06月20日(水曜日)付

 大手時計メーカーの調査によれば、仕事の電話を保留にされて、気持ちよく待てるのは「30秒以内」らしい。それを過ぎるとイライラする。保留どころか一向につながらない社会保険庁の電話は、どれほどの不満を国民にもたらしただろう。

 それも一因かどうか。本社の世論調査で安倍首相には厳しい結果が出た。「最後の一人に至るまでチェックし、年金はすべてお支払いする」。首相のこの発言を「信用できない」という人は67%を占め、「信用できる」の25%を大きく引き離した。

 「言葉は翼を持つが、思うところには飛ばない」。英国の作家ジョージ・エリオットの至言は、首相の身にしみるだろう。不安を一掃すべく繰り出した決意表明だが、国民の胸には届いていなかったようだ。

 内閣の不支持率も51%と、初めて5割を超えた。参院選への暗雲と見てとれる数字である。憲法や教育など、理念の高みを仰ぎ見るうちに足をすくわれた形だ。一転して年金対決となった土俵から、「記録照合は1年」「責任を徹底的に調べる」……と首相の大声が飛ぶ。

 待たされればいら立つが、時の流れは早いものだ。時のもたらす忘却を、荷物をまとめて去っていくサーカスに例えた人がいる。責任をめぐって、自民党内には早くも「選挙が終われば『何のこと?』になる」とタカをくくる声があると聞く。

 選挙が済めば、サーカスの人波が引くように幕、とは問屋が卸すまい。国民に約束した言葉である。あらぬ翼が生えてどこかに消えることなど、ないとは思うが。


【毎日・社説】

社説:じん肺訴訟 国は過ちをはばからず改めよ

 国側が5回連続で敗訴した「トンネルじん肺訴訟」で、国がようやく和解に応じ、じん肺対策の強化を約束する合意文書を原告側と交わした。20日の東京高裁を皮切りに、全国14の地・高裁で係争中の訴訟で正式に和解が成立する見通しだ。

  最初の提訴から約4年7カ月。国が早期解決に方針を転じたのは好ましいことではあるが、遅きに失した面は否めない。和解条件として合意書に盛り込まれた新 たなじん肺対策は、工事現場での粉じん濃度測定や高性能防じんマスク使用、換気の義務づけなどで、ほとんどがこれまでの判決で不備を指摘された項目だ。国 は速やかに実行に移さなければならない。

 司法の場では勝訴の流れが定まったかと思われたのに、原告側は和解に当たって賠償請求をあっさ りと放棄し、合意文書にもこだわりを捨てて、国側が謝罪の文言を書き加えぬことを容認した。裁判の勝ち負けや金銭よりも、国に積極的な取り組みを促し、じ ん肺を根絶させたいとの一心からだ。

 そうした原告側の思いをくみ取ることなく、国側は判決で繰り返し違法行為を断罪されても、「従来、 必要な対策を講じてきた」と言い張ってきた。裁判での勝ち目がなくなり、損害賠償のための予算措置が不要となったことを確かめるようにして、渋々和解に応 じた国側の姿勢を潔しとしない。安倍晋三首相も原告団と首相官邸で面会した際、お見舞いと哀悼の意を表したものの、謝罪の言葉は口にしなかった。この時期 に対決姿勢を改めた以上、参院選対策を念頭に置いているのだろうが、その割には踏ん切りがよくない印象を残した。

 じん肺は、多量の粉じ んを長期間吸入すると発症する職業病だ。決め手となる治療法がなく、症状が悪化した患者は酸素吸入に頼って一生を終えるしかない。被害は悲惨極まる。昔か ら危険性が指摘されてきたが、トンネル内の工事現場での対策は、炭鉱や金属鉱山に比べて後手に回ってきた。しかも、トンネル工事に携わる作業員の多くは 「渡り工夫」と呼ばれる出稼ぎ労働者で、元請け、下請け、孫請けという建設業界の重層構造の中で、極めて弱い立場に置かれてきた。

 国は 厳しい職場環境や就労条件を承知していたはずなのに、じん肺を防止するための規制権限を行使しなかった。対策を強化すれば工期が長引き、コストアップにつ ながることを勘案すれば、行政はゼネコンなど受注企業の利益を優先し、労働者の命や健康を軽んじていたと言わざるを得ない。国側の関係者は深刻な被害を直 視し、不作為の過ちと責任の重大さを明確に認めてしかるべきだ。

 司法に繰り返し指弾されるまで強弁を続け、施策を見直そうとしない国の 対応は、国民の信頼を裏切る背信行為にほかならない。非があれば率直に認め、法廷でいたずらに争うようなまねは慎むべきだ。敗訴が続く肝炎訴訟、原爆症訴 訟などへの取り組みも、抜本的に見直す必要がある。

毎日新聞 2007年6月20日 東京朝刊

社説:基本方針07 「美しい国」は経済政策か

 08年度政府予算編成の基本的考え方と向こう数年の経済運営の方向を提示する「経済財政改革に関する基本方針2007」(「骨太の方針07」)が、19日閣議決定された。

 行財政改革や経済活性化対策から環境立国戦略、教育再生、さらには社会保険庁問題まで網羅されている。また、「美しい国」へのシナリオという副題を付けたように、安倍晋三政権の経済政策は小泉純一郎前政権時代の構造改革路線とはひと味違うことをアピールしている。

  しかし、経済財政運営や構造改革にまで、美しい国を持ち出す意味は、どこにあるのだろうか。美しいなどという抽象的概念を経済政策に持ち込むことは混乱を もたらしかねない。無益といっていいだろう。また、戦後レジームからの脱却を経済政策にあえて持ち込むのならば、自民党政治の総括が必要だろう。

 骨太の方針に求められているのは、時の政権が翌年度の予算編成にどう臨むのか、向こう数年の経済運営の重点をどこに置くのか、明快に提示することである。

 今回はどうか。予算編成への基本的考え方はたった2ページを割いているに過ぎない。その他に、予算制度改革や歳出歳入一体改革も盛り込まれているが、参院選後にも決定される概算要求基準に向けて、十分なものとはいえない。

 経済政策運営でも、総花的であるがゆえに焦点が定まらない。さらに、成長力加速プログラムをこなしていけば、格差問題に代表されるこれまでの政策のツケは解決されるという楽観論が全体を貫いている。

 しかも、議論のあるテーマについては、所管官庁や与党などへの配慮から妥協的な表現にとどめられた。経済財政諮問会議の民間議員が提案していた、新自由主義的色彩の強い労働市場改革や航空自由化は内容が大幅に弱められた。

 内閣が代われば骨太の方針の性格や位置付けが変わることは、何ら不思議ではない。ただ、経済政策の根幹部分が妥協的、調整的な方向に向かっていることは見過ごすことができない。

  折から、06年度の一般会計税収は補正後の見込み額である50兆4000億円を下回る恐れが出てきた。法人税、所得税ともに税収の伸びが鈍化してきたから だ。国民に安全、安心を約束するのであれば、適正な給付とそれを支える負担の問題に踏み込むことは避けて通ることができない。

 今回の骨太の方針が与党の参院選対策色を帯びていることを割り引いても、明るい展望だけでは政治としての責任を果たしているとはいえない。

 財政再建にせよ、経済活性化にせよ、それを達成していく上では、国民にとって厳しい政策も講じていかなければならない。経済財政、国民生活の安定はそうした苦しい過程を経て得られる。

 最近、政府は骨太の方針という言葉をあまり使わない。それも無理はない。今年の基本方針は骨太ではない。

毎日新聞 2007年6月20日 東京朝刊

【毎日・余禄】

余録:「100%効果ありのゴキブリ駆除器」を注文して…

 「100%効果ありのゴキブリ駆除 器」を注文して送られてきたのは1、2と番号のついた木片だった。説明書には「1の上にゴキブリを置いて2で叩(たた)く」。趣味の悪い冗談グッズではな く、かつて米国で実際あった詐欺という(「詐欺とペテンの大百科」青土社)▲では詐欺ではないが、次の問いを考えていただきたい。客に75セントのケーキ だといって、今日だけ特別にとクッキーのおまけをつけて売ってみる。はなからケーキとクッキーのセットを75セントで売った時より売り上げはどのくらい多 かったろう▲心理学者のR・レヴィーン著「あなたもこうしてダマされる」(草思社)が紹介する実験によると倍近い差が出た。こちらは、ケーキよりも得した 気分を味わいたくてつい手を出した人もいよう。買い手の欲望を掘り起こす訪問販売や通信販売にもみられる販売促進のテクニックだ▲詐欺的な商法をもくろむ 悪意や、抜け目ない販売促進の術策に消費者が操られるトラブルも少なくない訪問販売や通信販売、電話勧誘販売である。一定期間内なら違約金なしの解約をで きるクーリングオフ制度は消費者保護の決め手だが、現在は一部の商品・サービスしか対象でない▲経済産業省はこのクーリングオフをほとんどの商品・サービ スについて適用する法改正を来年の通常国会にも提出する。現状では次々に新手の悪徳商法が登場するようでは、当然の対応だろう。とくに高齢者を狙う詐欺的 商法は成り立つ余地をなくしたい▲とはいえ消費者も自らのふところは自分で守る知恵が必要な時代である。先の心理学者は「自分だけはだまされない」と人は 思いがちで、また自分の弱さを認めない人ほどだまされやすいと述べている。消費者に自信過剰は禁物か。

毎日新聞 2007年6月20日 東京朝刊


【読売・社説】

骨太の方針 まだまだ詰めるべき点が多い(6月20日付・読売社説)

 名称を簡略化しただけでは、政府がどんな改革を、どのように実現していこうとしているのか、国民に伝わらない。肝心なのは中身だ。

 「骨太の方針2007」が閣議決定された。正式名称は、これまでの「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」から「経済財政改革の基本方針」へと短くなった。国民がわかりやすく、覚えやすいようにとの狙いだ。

 だが、盛り込まれた施策は、素案段階から指摘されたように総花的だ。人口減でも活力を維持できるよう、日本経済の構造を変えていく。そのために、どの政策に優先順位を置き、どう実現していくのか。それがなかなか見えてこない。

 「骨太の方針」に盛り込まれた施策には、詰めるべき点が多い。

 歳出・歳入一体改革が筆頭だ。昨年の「骨太の方針」で示した5年間の歳出削減を実現するとしているが、それには公共事業、社会保障など分野別に、制度改革の内容を定める必要がある。

 財政健全化は、秋から本格的な議論を始める税制改革はもちろん、新たな財政再建目標の設定も含め、全体的な青写真の作成を急ぐべきだ。

 景気の回復や税収増を受けて、与党からの歳出増圧力が強まっている。首相の指導力が問われよう。

 経済のグローバル化の恩恵を受けられるよう、経済連携協定(EPA)への取り組みを強化することが明記された。だが日本との貿易量が多く、戦略的に重要な米国、欧州連合(EU)との交渉は「将来の課題として検討していく」とされるにとどまった。

 農産物の市場開放が農業に及ぼす影響を懸念する声が強いためだ。日本農業の体質強化をどう進めるかの検討を、急がねばならない。世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)などもにらみながら、EPA戦略を練り上げることが大事だ。

 ふるさと納税の導入や地域力再生機構の創設など、実現に向けた制度設計が難しいテーマもある。

 安倍首相は、アジア・ゲートウエー戦略会議や教育再生会議など、自らが発足させた様々な有識者会議の報告を「骨太の方針」に取り込んだ。国民の批判が強まっている年金記録問題への対応策も、詳細に盛り込んだ。

 だが、歳出削減などへの踏み込み不足も目立つのは、参院選を目前にしているからだろう。首相にとって初めての「骨太の方針」である。首相は、目指す改革の姿と手順を、より明確に示していかねばならない。
(2007年6月20日1時28分  読売新聞)

エレベーター こんなずさん点検では不安だ(6月20日付・読売社説)

 これではエレベーターに対する不安感が募るばかりだ。

 過去1年間に、計42基のエレベーターでワイヤロープの破断事故が起きていた。

 保守管理大手の5社が担当する全国の約50万9000基について、国土交通省が日本エレベータ協会を通じて調査した結果である。

 1万基に1基弱の割合だが、命綱ともいえるロープの点検漏れである。建築基準法で義務付けられている定期検査制度を早急に見直すべきだ。

 エレベーターは数本のワイヤロープでつるされている。さらに1本のロープは鉄線をより合わせた数本の束で構成されている。この束の一部がそっくり破断した状態で見逃されていた。

 非常止め装置が義務化されており、仮にすべてのロープが切れても最下階までは落下しないという。しかし、どんな不測の事態が起きないとも限らない。

 42基のうち15基は、時間の経過に伴う経年劣化が原因だった。国交省は「鉄線の何本かが切れるのは、想定の範囲内だが、鉄線をより合わせた束自体が破断することは、通常ではあり得ない。ずさんな検査・点検で劣化が見過ごされた可能性がある」としている。

 東京・六本木ヒルズのエレベーター機械室で4月に起きた火災も、鉄線の束1本が破断し、それが別の部品と接触して火花が飛び、粉じんに引火したのが原因だった。フロアに煙が充満して、850人が避難する騒ぎになった。

 事故機のロープには、赤さびや油がこびりつき、縄目も見えない状態になっていた。定期検査の際もロープの太さを調べただけで済ましていたという。

 その後、破断事故が各地で相次いで明るみに出ていた。一部の保守管理会社の問題ではない。国交省の調査も、こうした事態を深刻に受け止めたためだ。

 東京・港区の高層住宅のエレベーターで昨年6月、男子高校生が死亡した事故は、ドアが開いた状態のまま突然上昇し始めたために起きた。警視庁が業務上過失致死容疑で捜査しているが、やはり定期検査の不備が指摘されている。

 保守管理会社2社の社員など計67人が実務経験を偽ってエレベーターの法定検査の資格を得ていた問題も発覚した。国交省は「会社ぐるみの不正行為」と断じたが、法人に対する罰則や行政処分がないのも問題である。

 エレベーターのドアが開かず、閉じこめられるトラブルも頻発している。乗るのもこわごわ、というのでは困ったものだ。業界としても、安全性の向上に取り組むべきである。
(2007年6月20日1時28分  読売新聞)

【読売・編集手帳】6月20日付

 東京市長などを務めた後藤新平には、腹が立ってたまらぬ時に つぶやく呪文(じゅもん)があったという。内務官僚当時の部下で、戦前の拓務相などを務めた永田秀次郎に「教えてやろう」と言った◆永田の耳もとに口を寄 せ、極秘事項を明かすように声を低めていわく、「相手に聞こえないように、馬鹿(ばか)、馬鹿、馬鹿と、三度言うのだよ」。後藤の没後、永田が追悼のラジ オ放送で語った回想にある◆旧幕府側、陸奥水沢藩士の家に生まれ、薩長閥が幅をきかす明治新政府で頭角を現した人である。若い日には歯を食いしばり、「馬 鹿、馬鹿、馬鹿」と胸につぶやくことが幾度となくあったに違いない◆関東大震災後の首都建設など、「大風呂敷」と呼ばれるほどに規模の大きな国家戦略を構 想した人の、今年は生誕150年にあたる。参院選に向かう政治の季節、折に触れて思い出される指導者だろう◆大きな風呂敷で包まねばならない「憲法」や 「外交・安保」もある。同じ正方形の布でも袱紗(ふくさ)で茶器を慈しみつつ拭(ぬぐ)うように、国民の不安を丹念に拭わねばならない「年金」もある。風 呂敷か、袱紗か。「風呂敷も袱紗も」だろう◆会期の延長問題が大詰めを迎えている。選挙を目前にした終盤国会はときに、感情と感情が衝突しがちである。立 腹時の呪文はくれぐれも相手に聞こえぬように。
(2007年6月20日1時54分  読売新聞)


【産経・社説】

【主張】骨太の方針 改革の指針たり得るのか

 経済財政諮問会議が経済財政運営と構造改革の指針となる「骨太の方針2007」をまとめた。安倍晋三政権最初の骨太方針ということで注目されたが、教育再生から環境問題まで網羅するなど、構造改革の処方箋(せん)という本来の性格は大きく変質したようだ。

 今年の骨太方針の基本認識は人口減の中でどう新しい成長を目指すかで、成長力底上げ戦略や労働市場改革、地域活性化などを柱としている。アジア経済との連携を強化するため、「開かれた市場」を強調したのも特徴だ。

 方向性としてはその通りだろうが、残念ながら具体性と実効性は乏しい。成長力底上げの目玉はフリーター対策の「ジョブ・カード制度」だし、アジアとの連携では空の自由化程度で、ネックとなる農業では農地法改正など根本問題に踏み込んでいない。

 逆に守備範囲はどんどん広がり、教育再生や環境立国戦略にまで及んでいる。財政と関係があるとの理由かららしいが、その関連性についての言及は極めて少ない。各省庁からの要望を網羅的に盛り込んだからだろう。

 この結果、究極の構造改革である財政再建に対する姿勢があいまいとなった。消費税を含む税制改革の論議は今秋以降に先送りしたままで、歳出削減については昨年の骨太方針が示した「歳出・歳入一体改革」の実行を繰り返すにとどまった。

 とりわけ、公共事業では参院選に配慮したためか、具体的削減幅も示していない。年内に結論を出さねばならない基礎年金国庫負担率引き上げに向けた新たな安定財源の確保や、道路特定財源の一般財源化にからむ道路整備中期計画への言及も避けている。

 来年度予算ではこの骨太方針にも盛り込んだ少子化対策など新たな歳出圧力が高まる。これを歳出のメリハリで吸収できるのか。できない場合はどうするのか。明確な方針を示さないと、財政規律は緩む一方となろう。

 小泉純一郎前政権は骨太方針を構造改革の指針として金融再生や郵政民営化を実行した。最大の課題として残された財政構造改革は緒に就いたばかりで、その一里塚である基礎的財政収支の黒字化で